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特開2022-162074医薬品の用法及び用量の少なくとも一方の決定を支援するための方法、プログラム、装置及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162074
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】医薬品の用法及び用量の少なくとも一方の決定を支援するための方法、プログラム、装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20221014BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133257
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2021521060の分割
【原出願日】2020-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2019207045
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519409257
【氏名又は名称】株式会社カルディオインテリジェンス
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】田村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】波多野 薫
(57)【要約】
【課題】医療従事者が患者により適した医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を特定できるようにする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る方法は、患者に投与可能な医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を決定するために用いられる方法であって、プロセッサが実行する、用法及び用量で医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を示す心電図データを取得するステップと、心電図データに基づいて、患者において、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定し、判定した結果に基づいて用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を出力するステップと、を有する。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に投与可能な医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を決定するために用いられる方法であって、
プロセッサが実行する、
前記用法及び用量で前記医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を示す心電図データを取得するステップと、
前記心電図データに基づいて、前記患者において、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定し、判定した結果に基づいて前記用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を出力するステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記用法及び用量の少なくとも一方が変更された後に、変更された前記用法及び用量で前記医薬品を投薬された前記患者の前記心電図データを再取得するステップと、
再取得された前記心電図データに基づいて前記可能性の有無を判定し、判定した結果に基づいて前記用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を再出力するステップと、
をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記取得するステップは、生活中の前記患者が装着している心電計から前記心電図データを逐次取得する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記出力するステップは、前記波形異常として、不整脈が生じていること又は不整脈を生じ得ることを示す波形が発生している可能性の有無を判定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記出力するステップは、前記波形異常として、心電図で評価できる有害事象が生じていることを示す波形が発生している可能性の有無を判定する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記出力するステップは、前記心電図データにおいて、QT延長と、心房細動と、心室頻拍と、上室性期外収縮と、心室性期外収縮と、心房粗動と、心房頻拍とのうち少なくとも1つを検出することによって、前記波形異常が発生している可能性の有無を判定する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記出力するステップは、前記心電図データと、平常時の前記患者の心電図を示す平常時心電図データとを比較することによって、前記波形異常が発生している可能性の有無を判定する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記出力するステップは、前記用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を、前記患者を診察する医療従事者に関連付けられた情報端末へ送信する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記再出力するステップは、前記用量で前記医薬品を投薬された前記患者の前記心電図データと、変更された前記用量で前記医薬品を投薬された前記患者の前記心電図データとに基づいて、前記用量の増量の危険性を表す情報を出力する、
請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記取得するステップは、治療を目的として又は臨床試験を目的として前記医薬品を投薬された前記患者の前記心電図データを取得する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
患者に投与可能な医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を決定するために用いられるプログラムであって、
プロセッサに、
前記用法及び用量で前記医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を示す心電図データを取得するステップと、
前記心電図データに基づいて、前記患者において、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定し、判定した結果に基づいて前記用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を出力するステップと、
を実行させる、プログラム。
【請求項12】
患者に投与可能な医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を決定するために用いられる装置であって、
前記用法及び用量で前記医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を示す心電図データを取得する取得部と、
前記心電図データに基づいて、前記患者において、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定し、判定した結果に基づいて前記用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を出力する出力部と、
を有する、装置。
【請求項13】
患者に投与可能な医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を決定するために用いられるシステムであって、
情報出力装置と、
心電計と、
を備え、
前記心電計は、
前記用法及び用量で前記医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を測定する測定部と、
前記心電図を示す心電図データを送信する送信部と、
を有し、
前記情報出力装置は、
前記心電計が送信した前記心電図データを取得する取得部と、
前記心電図データに基づいて、前記患者において、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定し、判定した結果に基づいて前記用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を出力する出力部と、
を有する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の用法及び用量の少なくとも一方の決定を支援するための方法、プログラム、装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品には、患者に投与する方法を示す用法と、患者に投与する量を示す用量が定められている。特許文献1には、患者の体重の入力を受け付け、入力された体重に基づいて医薬品の用量を決定し、決定した用量の医薬品を患者の体に注入するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-064309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医薬品には、副作用があるため、安全性を確保できるように万人共通の用法及び用量が予め定められている。しかしながら、医薬品の投与によって発生し得る副作用の程度には、患者の体質により個人差がある。そのため、医薬品には、予め定められた用法及び用量よりも、患者に適した用法及び用量が存在する場合がある。特許文献1に記載されたシステムは、単に体重に比例した用量の医薬品を患者に投与するため、体重以外の患者の体質は考慮されていない。そのため、医薬品に対して予め定められた用法とは異なる、個々の患者に適した用法や、医薬品に対して予め定められた用量よりも多い又は少ない、個々の患者に適した用量が存在する可能性がある。また、新薬の用法及び用量を決定するための臨床試験においても、被験者としての患者の体質を考慮することによって、患者に適した用法及び用量を発見できる可能性がある。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、医療従事者が患者により適した医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を特定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の方法は、患者に投与可能な医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を決定するために用いられる方法であって、プロセッサが実行する、前記用法及び用量で前記医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を示す心電図データを取得するステップと、前記心電図データに基づいて、前記患者において、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定し、判定した結果に基づいて前記用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を出力するステップと、を有する。
【0007】
前記方法は、前記用法及び用量の少なくとも一方が変更された後に、変更された前記用法及び用量で前記医薬品を投薬された前記患者の前記心電図データを再取得するステップと、再取得された前記心電図データに基づいて前記可能性の有無を判定し、判定した結果に基づいて前記用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を再出力するステップと、をさらに有してもよい。
【0008】
前記取得するステップは、生活中の前記患者が装着している心電計から前記心電図データを逐次取得してもよい。
【0009】
前記出力するステップは、前記波形異常として、不整脈が生じていること又は不整脈を生じ得ることを示す波形が発生している可能性の有無を判定してもよい。
【0010】
前記出力するステップは、前記波形異常として、心電図で評価できる有害事象が生じていることを示す波形が発生している可能性の有無を判定してもよい。
【0011】
前記出力するステップは、前記心電図データにおいて、QT延長と、心房細動と、心室頻拍と、上室性期外収縮と、心室性期外収縮と、心房粗動と、心房頻拍とのうち少なくとも1つを検出することによって、前記波形異常が発生している可能性の有無を判定してもよい。
【0012】
前記出力するステップは、前記心電図データと、平常時の前記患者の心電図を示す平常時心電図データとを比較することによって、前記波形異常が発生している可能性の有無を判定してもよい。
【0013】
前記出力するステップは、前記用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を、前記患者を診察する医療従事者に関連付けられた情報端末へ送信してもよい。
【0014】
前記再出力するステップは、前記用量で前記医薬品を投薬された前記患者の前記心電図データと、変更された前記用量で前記医薬品を投薬された前記患者の前記心電図データとに基づいて、前記用量の増量の危険性を表す情報を出力してもよい。
【0015】
前記取得するステップは、治療を目的として又は臨床試験を目的として前記医薬品を投薬された前記患者の前記心電図データを取得してもよい。
【0016】
本発明の第2の態様のプログラムは、患者に投与可能な医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を決定するために用いられるプログラムであって、プロセッサに、前記用法及び用量で前記医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を示す心電図データを取得するステップと、前記心電図データに基づいて、前記患者において、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定し、判定した結果に基づいて前記用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を出力するステップと、を実行させる。
【0017】
本発明の第3の態様の装置は、患者に投与可能な医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を決定するために用いられる装置であって、前記用法及び用量で前記医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を示す心電図データを取得する取得部と、前記心電図データに基づいて、前記患者において、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定し、判定した結果に基づいて前記用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を出力する出力部と、を有する。
【0018】
本発明の第4の態様のシステムは、患者に投与可能な医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を決定するために用いられるシステムであって、情報出力装置と、心電計と、を備え、前記心電計は、前記用法及び用量で前記医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を測定する測定部と、前記心電図を示す心電図データを送信する送信部と、を有し、前記情報出力装置は、前記心電計が送信した前記心電図データを取得する取得部と、前記心電図データに基づいて、前記患者において、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定し、判定した結果に基づいて前記用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報を出力する出力部と、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、医療従事者が患者により適した医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を特定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る情報出力システムの概要を説明するための図である。
図2】実施形態に係る情報出力システムのブロック図である。
図3】患者の平常時心電図及び初期用量心電図の模式図である。
図4】支援情報画面を表示している医師端末の正面図である。
図5】患者の変更用量心電図の模式図である。
図6】実施形態に係る情報出力システムが実行する情報出力方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[情報出力システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る情報出力システムSの概要を説明するための図である。情報出力システムSは、心電図に基づいて検出可能な副作用が発生し得る医薬品の用法及び用量の少なくとも一方の決定を支援するためのシステムである。すなわち、情報出力システムSは、心電図に基づいて検出可能な副作用によって用法及び用量が制限されている医薬品(例えば、不整脈がボトルネックになっている医薬品)に対して、主に適用される。情報出力システムSは、情報出力装置1と、心電計2と、医師端末3とを備える。
【0022】
心電計2は、患者が装着する心電計であり、例えば、患者の手首、手掌、胸部等に装着された状態で脈拍や電位を測定することにより、患者の心電図を示す心電図データを生成する心電図測定機器である。すなわち、心電計2は、ウェアラブル心電計(連続装着型心電計)である。心電計2は、無線通信回線を含むネットワークNを介して、生成した心電図データを情報出力装置1に送信する。心電計2が生成した心電図データは、ネットワークNを介することなく、例えば記憶媒体を用いて情報出力装置1に届けられてもよい。
【0023】
医師端末3は、患者を診察する医師等の医療従事者が使用する情報端末であり、例えばディスプレイ及びコンピュータを含む。医師端末3は、医療従事者に付与されたID等によって、医師端末3を使用する医療従事者に予め関連付けられている。医師端末3は、心電計2において生成された心電図データに基づいて情報出力装置が出力した支援情報を表示する。
【0024】
情報出力装置1は、心電計2において生成された心電図データに基づいて、医薬品の用法及び用量の少なくとも一方の決定を支援するための支援情報を生成する装置であり、例えばサーバである。支援情報は、医薬品の用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する情報である。支援情報は、例えば心電図データと、心電図において波形異常が発生している可能性の有無を示す情報とを含む。
【0025】
図2は、本実施形態に係る情報出力システムSのブロック図である。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示していないデータの流れがあってよい。図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0026】
情報出力装置1は、制御部11と、通信部12と、記憶部13とを有する。制御部11は、取得部111と、判定部112と、出力部113とを有する。通信部12は、ネットワークNを介して心電計2及び医師端末3との間でデータを送受信するための通信コントローラを有する。通信部12は、心電計2からネットワークNを介して受信したデータを制御部11に通知する。また、通信部12は、ネットワークNを介して、制御部11から出力されたデータを医師端末3に送信する。
【0027】
記憶部13は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部13は、制御部11が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部13は、情報出力装置1の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークNを介して制御部11との間でデータの授受を行ってもよい。
【0028】
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部13に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部111、判定部112及び出力部113として機能する。制御部11の機能の少なくとも一部は電気回路によって実行されてもよい。また、制御部11の機能の少なくとも一部は、制御部11がネットワーク経由で実行されるプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0029】
本実施形態に係る情報出力システムSは、図2に示す具体的な構成に限定されない。例えば情報出力装置1は、単一のコンピュータによって構成されてもよく、互いに連携する複数のコンピュータによって構成されてもよく、コンピュータ資源の集合であるクラウドによって構成されてもよい。また、情報出力装置1、心電計2及び医師端末3のうち2つ以上が1つの装置として構成されてもよい。
【0030】
[情報出力方法の説明]
以下、本実施形態に係る情報出力システムSが実行する情報出力方法を詳細に説明する。まず心電計2は、平常時の患者の心電図を測定する。平常時の患者は、情報出力システムSを用いて用法及び用量が決定される医薬品が投薬されていない状態の患者である。心電計2は、測定した心電図を示す心電図データを生成し、情報出力装置1へ送信する。
【0031】
情報出力装置1において、取得部111は、心電計2が生成した、平常時の患者の心電図を示す心電図データを、ネットワークNを介して取得する。取得部111は、病院等で予め測定された平常時の患者の心電図を示す心電図データを取得してもよい。
【0032】
図3(a)は、平常時の患者の平常時心電図H0の模式図である。判定部112は、取得部111が取得した心電図データが示す平常時心電図H0に基づいて、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定する。判定部112が心電図に基づいて波形異常が発生している可能性の有無を判定する方法については後述する。
【0033】
判定部112が、平常時の患者に対して波形異常が発生している可能性があると判定した場合に、出力部113は、当該患者については波形異常に基づいて用法及び用量を決定することができないことを示す情報を医師端末3に送信し、処理を終了する。
【0034】
判定部112が、平常時の患者に対して波形異常が発生している可能性がないと判定した場合に、出力部113は、当該患者の平常時心電図H0の心電図データを、記憶部13に記憶させる。また、出力部113は、平常時心電図H0の心電図データを記憶部13に記憶させなくてもよい。
【0035】
次に心電計2は、治療を目的として初期用量X1で医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を測定する。すなわち、心電計2は、心電計2が装着された状態で生活を送っている患者の心電図を測定する。生活中の患者は、自宅や職場等で活動していてもよく、病院に入院していてもよい。初期用量X1は、予め定められた用量(すなわち変更前の用量)である。心電計2は、測定した心電図を示す心電図データを生成し、情報出力装置1へ送信する。
【0036】
情報出力装置1において、取得部111は、心電計2が生成した、初期用量X1で投薬中の患者の心電図を示す心電図データを、ネットワークNを介して取得する。取得部111は、生活中の患者が装着している心電計2から心電図データを逐次取得してもよい。これにより、情報出力装置1は、投薬中の患者に発生し得る心電図の波形異常を早期に検出し、安全性を高めることができる。また、取得部111は、心電計2から所定期間の心電図データをまとめて取得してもよい。
【0037】
図3(b)は、初期用量X1で投薬中の患者の初期用量心電図H1の模式図である。判定部112は、取得部111が取得した心電図データが示す初期用量心電図H1に基づいて、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定する。
【0038】
波形異常として、判定部112は、例えば心電図において不整脈が生じていること又は不整脈を生じ得ることを示す波形が発生している可能性の有無を判定する。判定部112は、例えば、心電図において、QT延長と、心房細動と、心室頻拍と、上室性期外収縮と、心室性期外収縮と、心房粗動と、心房頻拍とのうち少なくとも1つを検出することによって、不整脈が生じていること又は不整脈を生じ得ることを示す波形が発生している可能性があるか否かを判定する。すなわち、判定部112は、QT延長、心房細動、心室頻拍、上室性期外収縮、心室性期外収縮、心房粗動及び心房頻拍のうち、患者に投与された医薬品に応じて所定の1つ又は複数を検出した場合に、不整脈が生じていること又は不整脈を生じ得ることを示す波形が発生している可能性があると判定し、そうでない場合に当該可能性がないと判定する。
【0039】
具体的には、判定部112は、心電図に、QT延長、心房細動、心室頻拍、上室性期外収縮、心室性期外収縮、心房粗動及び心房頻拍それぞれに対して予め定義された波形が現れていることを検出する。判定部112は、例えば、心電図において、QRS波の始まりからT波の終わりまでの時間が所定値以上に延長していることを示す波形が現れている場合に、QT延長を検出する。判定部112は、例えば、心電図において、不規則で細かい振れ(f波)が発生していることを示す波形が現れている場合に、心房細動を検出する。判定部112は、例えば、心電図において、心拍数が所定値以上であり、かつQRS波の幅が所定値以上であることを示す波形が現れている場合に、心室頻拍を検出する。同様に、判定部112は、心電図に所定の波形が現れている場合に、心室性期外収縮、心房粗動又は心房頻拍を検出する。
【0040】
また、波形異常として、判定部112は、例えば心電図において評価できる、不整脈に限らない有害事象が生じていることを示す波形が発生している可能性の有無を判定してもよい。有害事象は、例えば、洞調律でないことである。この場合に、判定部112は、心電図において、正常な洞調律とは異なる形状又はタイミングの波形を検出した場合に、有害事象が生じていることを示す波形が発生している可能性があると判定し、そうでない場合に当該可能性がないと判定する。
【0041】
また、判定部112は、平常時心電図H0と、初期用量心電図H1とを比較することによって、波形異常が発生している可能性の有無を判定してもよい。この場合に、判定部112は、記憶部13に記憶された心電図データが示す平常時心電図H0と、取得部111が取得した心電図データが示す初期用量心電図H1とを比較し、それらの間の差(例えばQT時間の差)が所定値以上である場合に、波形異常が発生している可能性があると判定し、そうでない場合に当該可能性がないと判定する。これにより、判定部112は、心電図においてQT延長、心房細動又は心室頻拍自体が検出されない場合であっても、平常時との差異に基づいて波形異常が発生している可能性の有無を判定できる。
【0042】
判定部112は、ここに示した判定方法に限られず、その他の判定方法によって、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定してもよい。また、判定部112は、波形異常が発生している可能性の有無に限られず、洞調律であることを判定してもよい。
【0043】
判定部112は、心電図を学習することによって生成された機械学習モデルを用いて、心電図において波形異常が発生している可能性の有無を判定してもよい。この場合に、記憶部13は、正常時及び異常時の心電図を既知の学習方法によって学習することによって生成された機械学習モデルを予め記憶している。異常時の心電図は、例えば、上述のQT延長、心房細動、心室頻拍、上室性期外収縮、心室性期外収縮、心房粗動、心房頻拍及び洞調律の異常のうち、患者に投与された医薬品に応じて所定の1つ又は複数が発生している患者の心電図である。
【0044】
判定部112は、記憶部13に記憶された機械学習モデルに、心電図を入力することによって、波形異常が発生している可能性があるか否かを示す判定結果を取得する。これにより、判定部112は、波形異常に対応する具体的な波形が予め定義されていなくとも、機械学習モデルによって波形異常が発生している可能性の有無を判定できる。
【0045】
出力部113は、判定部112による判定結果に基づいて、医薬品の用量の変更の可否に関する支援情報を、ネットワークNを介して医師端末3に出力する。出力部113は、例えば、心電図データと、判定部112によって判定された波形異常が発生している可能性があるか否かを示す判定情報とを含む支援情報を出力する。判定部112によって判定された波形異常が発生していると判定された場合に、判定情報は、発生している可能性がある波形異常の内容を示してもよい。
【0046】
さらに出力部113は、判定部112によって波形異常が発生している可能性がないと判定された場合に、増量候補値を特定してもよい。増量候補値は、初期用量X1からの増量に用いられることが想定された、初期用量X1に加算又は乗算される値である。出力部113は、例えば、記憶部13に予め記憶された、増量候補値を示す増量テーブルに従って、増量候補値を特定する。増量テーブルは、一定の増量候補値を示してもよく、初期用量X1によって異なる増量候補値を示してもよい。そして出力部113は、心電図データ及び判定情報に加えて、特定した増量候補値を含む支援情報を出力する。
【0047】
医師端末3は、情報出力装置1が出力した支援情報に基づいて、支援情報画面をディスプレイ(表示部)上に表示する。図4(a)、図4(b)は、支援情報画面Dを表示している医師端末3の正面図である。
【0048】
図4(a)は、情報出力装置1の判定部112によって波形異常が発生している可能性がないと判定された場合の支援情報画面Dを表している。この場合に、支援情報画面Dは、心電図D1と、判定情報D2と、投薬量D3と、増量候補値D4とを含む。心電図D1は、心電図データが示す心電図である。判定情報D2は、波形異常が発生している可能性がないことを表す情報である。投薬量D3は、患者に投薬されている医薬品の量(ここでは初期用量X1)である。増量候補値D4は、情報出力装置1の出力部113によって特定された増量候補値である。
【0049】
図4(b)は、情報出力装置1の判定部112によって波形異常が発生している可能性があると判定された場合の支援情報画面Dを表している。この場合に、支援情報画面Dは、心電図D1と、判定情報D2と、投薬量D3とを含む。心電図D1は、心電図データが示す心電図全体を表してもよく、心電図データの中から波形異常が発生している可能性があると判定された部分を抽出した心電図を表してもよい。判定情報D2は、波形異常の内容を表す情報である。投薬量D3は、患者に投薬されている医薬品の量である。
【0050】
このように、医療従事者は、支援情報画面Dに表示された支援情報を参照することによって、医薬品が投薬されている患者に心電図で評価できる波形異常が発生しているか否かを容易に把握し、患者により適した医薬品の用量を特定できる。
【0051】
医療従事者は、支援情報に基づいて、用量の増量の可否を判定し、次に患者に投薬する際の変更用量X2を決定する。例えば医療従事者は、投薬量D3に、増量候補値D4を加算又は乗算した値を、変更用量X2として決定する。また、医療従事者は、支援情報に基づいて、その他の値を変更用量X2として決定してもよい。医療従事者は、医師端末3を操作することによって、決定した変更用量X2を入力する。
【0052】
用量が変更された後、すなわち変更用量X2が決定された後に、心電計2は、変更用量X2で医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を測定する。心電計2は、測定した心電図を示す心電図データを生成し、情報出力装置1へ送信する。取得部111は、心電計2が生成した、変更用量X2で投薬中の患者の心電図を示す心電図データを、ネットワークNを介して再取得する。
【0053】
図5は、変更用量X2で投薬中の患者の変更用量心電図H2の模式図である。判定部112は、取得部111が再取得した心電図データが示す変更用量心電図H2に基づいて、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定する。判定部112が変更用量心電図H2に基づいて波形異常が発生している可能性の有無を判定する方法は、初期用量心電図H1の場合と同様である。
【0054】
出力部113は、判定部112による判定結果に基づいて、医薬品の用量の変更の可否に関する支援情報を、ネットワークNを介して医師端末3に出力する。出力部113は、例えば、心電図データと、判定部112によって判定された波形異常が発生している可能性があるか否かを示す判定情報とを含む支援情報を再出力する。判定部112によって判定された波形異常が発生していると判定された場合に、判定情報は、発生している可能性がある波形異常の内容を示してもよい。
【0055】
さらに出力部113は、判定部112によって波形異常が発生している可能性がないと判定された場合に、増量候補値を特定してもよい。増量候補値は、変更用量X2からの増量に用いられることが想定された、変更用量X2に加算又は乗算される値である。出力部113が増量候補値を特定する方法は、初期用量X1の場合と同様である。そして出力部113は、心電図データ及び判定情報に加えて、特定した増量候補値を含む支援情報を再出力する。
【0056】
さらに出力部113は、用量の増量の危険性の程度を表す危険性情報を含む支援情報を出力してもよい。この場合に、出力部113は、複数の用量(例えば初期用量X1及び変更用量X2)における複数の心電図を比較し、それらの間の差(例えばQT時間の差)が大きいほど危険性の程度が大きく、小さいほど危険性の程度が小さいように、危険性の程度を特定する。そして出力部113は、心電図データ及び判定情報に加えて、特定した危険性の程度を表す危険性情報を出力する。これにより、医療従事者は、支援情報を参照することによって、波形異常の有無だけでなく、増量の危険性の程度を把握できるため、増量の可否を判定しやすくなる。
【0057】
医師端末3は、情報出力装置1が出力した支援情報に基づいて、図4(a)、図4(b)に示した支援情報画面をディスプレイ上に再び表示する。医療従事者は、支援情報に基づいて、用量の増量の可否を再び判定し、次に患者に投薬する際の変更用量X2を決定する。
【0058】
情報出力システムSは、変更用量X2が所定の上限値に達するまで、又は増量が所定の回数に達するまで、変更用量X2で投薬された患者の心電図の取得と、支援情報の出力とを繰り返す。変更用量X2が所定の上限値に達した場合、又は増量が所定の回数に達した場合に、医療従事者は、例えば、判定部112によって波形異常が発生している可能性がないと判定された際の初期用量X1又は変更用量X2の中で最大の初期用量X1又は変更用量X2を、患者に適した用量として決定する。これにより、医療従事者は、支援情報に基づいて、波形異常が発生しない範囲で用量の増量を繰り返し試行し、患者により適した医薬品の用量を効率的に探すことができる。
【0059】
変更用量X2で投薬中の患者の変更用量心電図H2について、判定部112によって波形異常が発生している可能性があると判定された場合に、医療従事者は、支援情報に基づいて、変更用量X2を減量してもよい。例えば医療従事者は、変更用量X2に、所定値を減算又は除算した値を、減量された変更用量X2として決定する。
【0060】
心電計2は、減量された変更用量X2で医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を測定する。心電計2は、測定した心電図を示す心電図データを生成し、情報出力装置1へ送信する。情報出力装置1は、減量された変更用量X2で投薬中の患者の変更用量心電図H2に対して波形異常が発生している可能性の有無を判定し、支援情報を再出力する。医師端末3は、情報出力装置1が出力した支援情報に基づいて、図4(a)、図4(b)に示した支援情報画面をディスプレイ上に再び表示する。
【0061】
医療従事者は、減量された変更用量X2について判定部112によって波形異常が発生している可能性がないと判定された場合に、減量された変更用量X2を、患者に適した用量として決定する。医療従事者は、減量された変更用量X2について判定部112によって波形異常が発生している可能性があると判定された場合に、変更用量X2をさらに減量してもよく、あるいは用量の変更を中止してもよい。このように、医療従事者は、用量を増量だけでなく減量することによって、患者にさらに適した医薬品の用量を効率的に探すことができる。
【0062】
情報出力装置1は、医薬品の用量だけでなく、医薬品の用法を変更して患者の心電図の取得と、支援情報の出力とを繰り返すことによって、患者により適した医薬品の用法を特定可能にしてもよい。この場合に、情報出力装置1において、取得部111は、心電計2が生成した、所定の用量及び用法(例えば1日に3回投薬)で投薬中の患者の心電図を示す心電図データを、ネットワークNを介して取得する。判定部112は、所定の用量及び用法における心電図に基づいて、上述の方法で波形異常が発生している可能性の有無を判定する。
【0063】
出力部113は、判定部112による判定結果に基づいて、支援情報を、ネットワークNを介して医師端末3に出力する。医療従事者は、情報出力装置1が出力した支援情報に基づいて、用法の変更の可否を判定し、次に患者に投薬する際の用法を決定する。このとき、医療従事者は、用法のみを変更してもよく、用法及び用量の両方を変更してもよい。例えば医療従事者は、1日に3回投薬する用法を、1日に4回投薬する用法に変更する。用量のみを変更する場合と同様に、医療従事者は、支援情報に基づいて、波形異常が発生しない範囲で用法及び用量の少なくとも一方の変更を繰り返し試行し、患者に適した医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を決定する。
【0064】
このように、医療従事者は、情報出力装置1が出力した支援情報を参照することによって、波形異常が発生しない範囲で用法及び用量の少なくとも一方の変更を繰り返し試行しながら、医薬品が投薬されている患者に心電図で評価できる波形異常が発生しているか否かを容易に把握し、患者により適した医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を特定できる。
【0065】
[変形例]
以上の実施形態では、情報出力システムSが実際の患者に投薬する際の用法及び用量の少なくとも一方を決定するために用いられる例を説明したが、情報出力システムSは、医薬品の臨床試験において用法及び用量の少なくとも一方を決定するために用いられてもよい。この場合には、心電計2は、臨床試験を目的として医薬品を投薬される、患者としての被験者に装着される。心電計2は、所定の用法及び用量で医薬品を投薬された被験者の心電図を測定する。情報出力装置1は、医薬品が投薬された被験者において波形異常が発生している可能性の有無を判定し、支援情報を出力する。
【0066】
医療従事者は、波形異常が発生しない範囲で用法及び用量の少なくとも一方の変更を繰り返し試行しながら、被験者の心電図に基づいて情報出力装置1が出力した支援情報を参照する。医療従事者は、支援情報に基づいて、波形異常が発生している可能性がないと判定された際の用法及び用量のうちいずれかの用法及び用量を、医薬品の用法及び用量として決定する。これにより、医療従事者は、支援情報に基づいて、被験者において波形異常が発生しない範囲で、適切な医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を効率的に探すことができる。
【0067】
[情報出力方法のフローチャート]
図6は、本実施形態に係る情報出力システムSが実行する情報出力方法のフローチャートを示す図である。図6に例示したフローチャートは、医薬品の用量を変更する場合を表しているが、医薬品の用法を変更する場合も同様である。図6において、情報出力システムSが行わないステップ(具体的には、患者に投薬するステップ)は、破線で表されている。
【0068】
まず心電計2は、平常時の患者の心電図を測定する。心電計2は、測定した心電図を示す心電図データを生成し、情報出力装置1へ送信する。情報出力装置1において、取得部111は、心電計2が生成した、平常時の患者の心電図を示す心電図データを、ネットワークNを介して取得する(S11)。
【0069】
判定部112は、取得部111が取得した心電図データが示す平常時心電図に基づいて、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定する(S12)。判定部112が、平常時の患者に対して波形異常が発生している可能性があると判定した場合に(S13のNO)、出力部113は、当該患者については波形異常に基づいて用法及び用量を決定することができないことを示す情報を医師端末3に送信し、処理を終了する。
【0070】
判定部112が、平常時の患者に対して波形異常が発生している可能性がないと判定した場合に(S13のYES)、出力部113は、当該患者の平常時心電図の心電図データを、記憶部13に記憶させる。
【0071】
医療従事者又は患者は、初期用量X1で医薬品を患者に投薬する(S14)。心電計2は、初期用量X1で医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を測定する。心電計2は、測定した心電図を示す心電図データを生成し、情報出力装置1へ送信する。情報出力装置1において、取得部111は、心電計2が生成した、初期用量X1で投薬中の患者の心電図を示す心電図データを、ネットワークNを介して取得する(S15)。
【0072】
判定部112は、取得部111が取得した心電図データが示す初期用量心電図に基づいて、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定する(S16)。判定部112が、初期用量X1で投薬中の患者に対して波形異常が発生している可能性があると判定した場合に(S17のNO)、出力部113は、心電図データ及び判定情報を含む支援情報を医師端末3に送信する。医師端末3は、情報出力装置1が出力した支援情報を表示し、処理を終了する。
【0073】
判定部112が、初期用量X1で投薬中の患者に対して波形異常が発生している可能性がないと判定した場合に(S17のYES)、出力部113は、心電図データ、判定情報及び増量候補値を含む支援情報を医師端末3に送信する。医師端末3は、情報出力装置1が出力した支援情報を表示する。
【0074】
医療従事者は、支援情報に基づいて、用量の増量の可否を判定し、次に患者に投薬する際の変更用量X2を決定する。医療従事者又は患者は、増量された変更用量X2で医薬品を患者に投薬する(S18)。
【0075】
心電計2は、変更用量X2で医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を測定する。心電計2は、測定した心電図を示す心電図データを生成し、情報出力装置1へ送信する。取得部111は、心電計2が生成した、変更用量X2で投薬中の患者の心電図を示す心電図データを、ネットワークNを介して再取得する(S19)。
【0076】
判定部112は、取得部111が再取得した心電図データが示す変更用量心電図に基づいて、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定する(S20)。判定部112が、変更用量X2で投薬中の患者に対して波形異常が発生している可能性がないと判定した場合であって(S21のYES)、所定の終了条件(例えば、変更用量X2が上限値に達していること)が満たされていない場合に(S22のNO)、出力部113は、心電図データ、判定情報及び増量候補値を含む支援情報を医師端末3に送信する。ここで出力部113は、初期用量X1で投薬中の患者の心電図データが示す初期用量心電図と、変更用量X2で投薬中の患者の心電図データが示す変更用量心電図とに基づいて、用量の増量の危険性の程度を表す危険性情報を含む支援情報を出力してもよい。
【0077】
医師端末3は、情報出力装置1が出力した支援情報を表示する。医療従事者は、支援情報に基づいて、用量の増量の可否を再び判定し、次に患者に投薬する際の変更用量X2を決定する。そして情報出力システムSは、ステップS18~S21を繰り返す。
【0078】
判定部112が、変更用量X2で投薬中の患者に対して波形異常が発生している可能性がないと判定した場合であって(S21のYES)、所定の終了条件が満たされている場合に(S22のYES)、出力部113は、心電図データ及び判定情報を含む支援情報を医師端末3に送信する。医師端末3は、情報出力装置1が出力した支援情報を表示する。医療従事者は、例えば、判定部112によって波形異常が発生している可能性がないと判定された際の初期用量X1又は変更用量X2の中で最大の初期用量X1又は変更用量X2を、患者に適した用量として決定する。
【0079】
判定部112が、変更用量X2で投薬中の患者に対して波形異常が発生している可能性があると判定した場合に(S21のNO)、出力部113は、心電図データ及び判定情報を含む支援情報を医師端末3に送信する。医師端末3は、情報出力装置1が出力した支援情報を表示する。医療従事者は、支援情報に基づいて、減量された変更用量X2を決定する。医療従事者又は患者は、減量された変更用量X2で医薬品を患者に投薬する(S23)。そして情報出力システムSは、ステップS19~S21を繰り返す。
【0080】
心電計2は、減量された変更用量X2で医薬品を投薬された患者の生活中の心電図を測定する。心電計2は、測定した心電図を示す心電図データを生成し、情報出力装置1へ送信する。取得部111は、心電計2が生成した、減量された変更用量X2で投薬中の患者の心電図を示す心電図データを、ネットワークNを介して取得する(S24)。
【0081】
判定部112は、取得部111が取得した心電図データが示す変更用量心電図に基づいて、心電図で評価できる波形異常が発生している可能性の有無を判定する(S25)。出力部113は、心電図データ及び判定情報を含む支援情報を医師端末3に送信する。医師端末3は、情報出力装置1が出力した支援情報を表示する。医療従事者は、減量された変更用量X2について判定部112によって波形異常が発生している可能性がないと判定された場合に、減量された変更用量X2を、患者に適した用量として決定する。医療従事者は、減量された変更用量X2について判定部112によって波形異常が発生している可能性があると判定された場合に、変更用量X2をさらに減量してもよく、あるいは用量の変更を中止してもよい。
【0082】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る情報出力システムSによれば、情報出力装置1は、医薬品を投薬された患者の生活中の心電図に基づいて、波形異常が発生している可能性の有無を判定し、医薬品の用法及び用量の少なくとも一方の変更の可否に関する支援情報を、医師端末3に送信する。医療従事者は、医師端末3において支援情報を参照することによって、波形異常が発生しない範囲で用法及び用量の少なくとも一方の変更を繰り返し試行しながら、医薬品が投薬されている患者に心電図で評価できる波形異常が発生しているか否かを容易に把握し、患者により適した医薬品の用法及び用量の少なくとも一方を特定できる。
【0083】
以上、実施の形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0084】
情報出力装置1のプロセッサは、図6に示す情報出力方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、情報出力装置1のプロセッサは、図6に示す情報出力方法を実行するためのプログラムを記憶部から読み出し、該プログラムを実行して情報出力システムSの各部を制御することによって、図6に示す情報出力方法を実行する。図6に示す情報出力方法に含まれるステップは一部省略されてもよく、ステップ間の順番が変更されてもよく、複数のステップが並行して行われてもよい。
【符号の説明】
【0085】
S 情報出力システム
1 情報出力装置
11 制御部
111 取得部
112 判定部
113 出力部
2 心電計
3 医師端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6