(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162080
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/42 20060101AFI20221014BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G01S17/42
G01C3/06 120Q
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133379
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2018058974の分割
【原出願日】2018-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加園 修
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
(57)【要約】
【課題】
レーザ光の出力に関する安全基準を順守し、かつ遠方に位置する対象物の測距を精度良く行うことが可能な測距装置を提供する。
【解決手段】
測距装置は、出射光が対象物で反射した反射光の方向を可変に偏向する反射光偏向素子及び前記反射光偏向素子によって偏向された前記反射光を受光する受光素子を含む受光部と、少なくとも1つが前記受光部の光軸と垂直な方向において前記受光部と離間して配され、かつ前記出射光を出射する光源及び前記出射光の方向を可変に偏向する出射光偏向素子を各々が含む複数の投光部と、を有する。前記複数の投光部の前記出射光の方向に基づいて、前記複数の投光部のうちから選択される1又は複数の投光部から前記出射光が出射される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射光が対象物で反射した反射光の方向を可変に偏向する反射光偏向素子及び前記反射光偏向素子によって偏向された前記反射光を受光する受光素子を含む受光部と、
少なくとも1つが前記受光部の光軸と垂直な方向において前記受光部と離間して配され、かつ前記出射光を出射する光源及び前記出射光の方向を可変に偏向する出射光偏向素子を各々が含む複数の投光部と、
前記複数の投光部の前記出射光の方向に基づいて、前記複数の投光部のうちから選択される1又は複数の投光部から前記出射光が出射されることを特徴とする測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物までの距離を計測する測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学測距装置は、例えば、レーザ光を対象領域内で走査して対象物までの距離を計測する、すなわち測距する。
【0003】
このような測距装置としては、例えば、光走査装置の光反射面を揺動駆動する駆動部が位相差変更部及び振幅変更部の少なくとも一方を備えた光測距装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ光は対象物に照射されると散乱する。このため、対象物が測距装置から遠くなるにつれて測距装置が受光するレーザ光の強度が弱くなる。したがって、測距装置から遠方に位置する対象物の測距を行うためには、レーザ光の出力を高くして出射することが望まれる。
【0006】
しかし、レーザ光はパワー密度が高く人体に有害となる場合があるため、安全基準によってレーザ光の出力が制限されている。この安全基準を順守すると、遠距離を測定する場合戻り光の光量が小さくなることが課題の1つとして挙げられる。
【0007】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、レーザ光の出力に関する安全基準を順守し、かつ遠方に位置する対象物の測距を精度良く行うことが可能な測距装置を提供することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に記載の測距装置は、出射光が対象物で反射した反射光の方向を可変に偏向する反射光偏向素子及び前記反射光偏向素子によって偏向された前記反射光を受光する受光素子を含む受光部と、少なくとも1つが前記受光部の光軸と垂直な方向において前記受光部と離間して配され、かつ前記出射光を出射する光源及び前記出射光の方向を可変に偏向する出射光偏向素子を各々が含む複数の投光部と、前記複数の投光部の前記出射光の方向に基づいて、前記複数の投光部のうちから選択される1又は複数の投光部から前記出射光が出射されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係る測距装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施例1に係る測距装置の投光系の動作原理を説明する説明図である。
【
図3】実施例1に係る測距装置の受光系の動作原理を説明する説明図である。
【
図4A】
図1の投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図4B】実施例1に係る測距装置からの距離に応じた投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図5】実施例2に係る測距装置からの距離に応じた投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図6】実施例3に係る測距装置からの距離に応じた投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図7】実施例4に係る測距装置からの距離に応じた投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図8】実施例5に係る測距装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】実施例5に係る測距装置の投光部と受光部の配置例を示す斜視図である。
【
図10】
図9の投光部から出射光が出射される態様を示す概念図である。
【
図11】実施例5の変形例に係る測距装置から出射された出射光を説明する概念図である。
【
図12A】実施例5の変形例に係る測距装置からの所定の距離における投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図12B】実施例5の変形例に係る測距装置からの所定の距離における投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図12C】実施例5の変形例に係る測距装置からの所定の距離における投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図13A】実施例5の変形例に係る測距装置からの所定の距離における投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図13B】実施例5の変形例に係る測距装置からの所定の距離における投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図13C】実施例5の変形例に係る測距装置からの所定の距離における投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図14A】実施例5の変形例に係る測距装置からの所定の距離における投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図14B】実施例5の変形例に係る測距装置からの所定の距離における投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【
図14C】実施例5の変形例に係る測距装置からの所定の距離における投光部の瞬間投光野と受光部の瞬間視野を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0010】
図1は、本実施例に係る測距装置100の機能ブロックを示している。
図1において、投光部10a,10bは、出射光を出射する発光装置である。投光部10a,10bは、互いに同一の構成を有する。投光部10a、10bの光源11は、例えば出射光としてパルス光を出射可能なレーザ素子である。
【0011】
光偏向素子12は、光反射面(図示せず)を含む出射光反射部材を有している。光偏向素子12は、当該光反射面にてパルス光を反射して、走査対象となる所定の領域(以下、走査対象領域とする)に向けて走査光を出射可能である。したがって、光偏向素子12は、出射光偏向素子として機能する
光偏向素子12は、出射光の方向を可変に偏向させることができる。走査対象領域に存在する物体に反射された走査光は、測距装置100に向けて反射光として戻ってくる。尚、光偏向素子12は、MEMSミラー装置、ポリゴンミラー等を用いることができる。また、光偏向素子12は、光反射面を持たない光偏向素子であってもよい。このような光偏向素子としては、音響光学偏向器(AO偏向器)等が挙げられる。
【0012】
投受光部20は、出射光を出射する発光装置であると共に、反射光を受光して、電気信号である受光信号を生成する受光装置でもある。したがって、投受光部20は、投光部として機能すると共に、受光部としても機能する。
【0013】
投受光部20の光源21は、例えば出射光としてパルス光を出射可能なレーザ素子である。投受光部20は、反射光を受光して、電気信号である受光信号を生成可能な受光素子22を有している。尚、受光素子22としては、例えば、アバランシェフォトダイオード(APD)等を採用することができる。
【0014】
光偏向素子23は、当該光反射面にて光源21から出射されたパルス光を反射して、走査対象領域に向けて走査光を出射可能である。また、光偏向素子23は、光反射面にて走査対象領域内の物体によってパルス光が反射された反射光を受光素子22に向けて反射可能である。したがって、光偏向素子23は、出射光偏向素子及び反射光偏向素子として機能する。言い換えれば、光偏向素子23は、出射光の方向を可変に偏向させることができ、かつ物体からの反射光の方向を可変に偏向させ受光素子22へと導くことができる。光偏向素子23は、光反射面(図示せず)を含む出射光反射部材を有し、この出射光偏向部材は反射光偏向部材としても機能する。
【0015】
制御部30は、投受光部20の光源21及び投光部10a,10bの各々の光源11から出射するパルス光の制御並びに投受光部20の光偏向素子23及び投光部10a,10bの各々の光偏向素子12の光反射面の角度の制御を行う。
【0016】
光源制御部31は、投受光部20の光源21及び投光部10a,10bの各々の光源11の発光制御を行う。具体的には、例えば、光源21及び光源11がパルス発光をするように発光タイミングを規定したテーブル(図示せず)を参照して、その発光を制御する。
【0017】
ミラー制御部32は、投受光部20の光偏向素子23及び投光部10a,10bの各々の光偏向素子12の光反射面の傾きの角度を制御する。具体的には、ミラー制御部32は、光源11及び光源21によって出射されて光反射面(図示せず)によって反射されたパルス光によって、走査対象領域の走査がなされるように光偏向素子12及び光偏向素子23を制御する。また、ミラー制御部32は、投受光部20の光偏向素子23の出射光反射部材の光反射面の方向と投光部10a及び投光部10bの光偏向素子12の出射光反射部材の光反射面との方向が連動するように、光偏向素子23及び光偏向素子12を制御する。
【0018】
測距部としての距離測定部40は、測距装置100と走査対象領域内にある物体との間の距離を算出する。測距装置100と走査対象領域内にある物体との距離の算出は、受光素子22によって生成された受光信号に基づいて行われ、例えばタイムオブフライト法が用いられる。
【0019】
具体的には、距離測定部40は、光源11及び光源21によって出射された1のパルス光の出射時刻と、当該1のパルス光が走査対象領域内の物体によって反射されて反射光として受光素子22で検出された受光時刻を取得する。そして、当該出射時刻と当該受光時刻の時刻差に基づいて、測距装置100と物体との距離を算出する。
【0020】
図2は、投受光部20、および投光部10a、10bの投光系の動作を示す概念図である。
図2において、光源21と光偏向素子23との間には、ビームスプリッタBSが設けられている。ビームスプリッタBSは、光源21側から入射した光ビームを光偏向素子23側に通す光学素子である。したがって、光源21から出射された光ビームがビームスプリッタBSを介して光偏向素子23に入射される。光偏向素子23は、入射した出射光ELを走査対象領域Rに向けて反射させる。尚、投光部10a、10bではビームスプリッタBSは配されない。
【0021】
具体的には、光偏向素子23は、可動部を揺動して走査する態様で光ビームを走査対象領域R内に向けて反射させる。この結果、光偏向素子23によって反射された出射光ELの照射方向が変化する。具体的には、出射光ELは、出射光ELの反射方向にある仮想の面である仮想面VSにおいて所望の軌跡が描かれるように、光偏向素子23で反射される。測距装置100は、走査対象領域Rに存在する対象物OBの測距を行う。尚、仮想面VSは実在するものではない。尚、仮想面VSで描かれる軌跡は、ラスタ走査軌跡、リサジュ走査軌跡等が望ましいがこれに限るものではない。
【0022】
図3は、投受光部20の受光系の動作を示す概念図である。
図3において、走査対象領域Rに対象物OBが存在すると、対象物OBから反射された反射光RLが光偏向素子23に入射され、ビームスプリッタBSを介して受光素子22に入射される。受光素子22は、入射された反射光RLに基づいて電気信号に変換し距離測定部40に供給する。距離測定部40は、光ビームを出射した時刻と光ビームを受光した時刻に基づいて、対象物OBまでの距離を計測する。
【0023】
図4Aは、投受光部20及び投光部10a,10bの瞬間投光野(iFOI)(Instantaneous Field of Illumination)と投受光部20の瞬間視野(iFOV)(Instantaneous Field of View)の光軸AXに垂直な方向から見た領域を示している。
尚、光軸AXは、光偏向素子12の反射面MRの傾きがない状態で投受光部20から出射された出射光ELの光軸である。反射面MRの傾きがない状態とは、例えば、MEMSミラー装置の光反射面MRが揺動していない静止状態である。
【0024】
図4Bは、本実施例に係る測距装置100からの距離に応じた投受光部20及び投光部10a,10bの瞬間投光野(iFOI)及び投受光部20の瞬間視野(iFOV)の光軸AXに対して垂直な方向の断面を示している。
【0025】
ここで、瞬間投光野(iFOI)とは、瞬間的に出射光ELが照射される領域である。また、瞬間視野(iFOV)とは、投受光部20の受光面が見込む角度であって、受光素子22が瞬間的に見ることができる領域である。
【0026】
図中の一点鎖線は、投光部10aの瞬間投光野(iFOI(b)及び投光部10bの瞬間投光野(iFOI(c))を示している。また、図中の破線は、投受光部20の瞬間投光野(iFOI(a))及び瞬間視野(iFOV)を示している。
【0027】
投光部10a及び10bは、投受光部20の光軸AXと垂直な方向において投受光部20と離間して配されている。具体的には、投光部10a及び10bは、投受光部20と出射点が異なる。すなわち、投光部10a及び10bは、投受光部20と光軸が異なる。
【0028】
距離L1は、投受光部20の光軸AX上の測距装置100からの距離であり、安全基準で定められている距離である。距離L1は、例えば、測距装置100から100mmである。尚、安全基準は、所定の距離における光の強度に基づいて定められている。
【0029】
投受光部20及び投光部10a,10bの各々は、安全基準を満たす出力でパルス光を出射する。すなわち、距離L1における投受光部20及び投光部10a、10bの強度は、安全基準を満たしている。また、投光部10a及び投光部10bが出射する出射光ELの瞬間投光野(iFOI(b),iFOI(c))は、投受光部20が出射する出射光ELの瞬間投光野(iFOI(a))よりも大きい。投受光部20が出射する出射光ELの瞬間投光野(iFOI(a))は、瞬間視野(iFOV)と互いに等しい大きさである。すなわち、投光部10a及び投光部10bが出射する出射光ELの瞬間投光野(iFOI(b),iFOI(c))は瞬間視野(iFOV)よりも大きい。
【0030】
図4Bに示すように、注目する断面の測距装置100からの距離に応じて瞬間視野(iFOV)と瞬間投光野(iFOI(a)~(c))の重なり方は変化する。ここで、投受光部20及び投光部10a,10bから出射された各々の出射光ELのうち、測距装置100からの距離において瞬間視野(iFOV)内に照射される出射光ELの強度の和を、測距装置100からの距離における照射光強度とする。
【0031】
距離L1の位置において、瞬間視野(iFOV)の中で投受光部20の瞬間投光野(iFOI(a))、投光部10aの瞬間投光野(iFOI(b))及び投光部10bの瞬間投光野(iFOI(c))は、重なっていない。
【0032】
距離L1の位置においては、投受光部20は、対象物OBの測距を行うにあたり十分な反射光RLを受光することができる。このため、測距装置100は、精度が高い測距を行うことができる。尚、安全基準は、距離L1の位置において判断される。したがって、本実施例に係る測距装置100は、安全基準を満たしている。
【0033】
距離L2は、投受光部20の光軸AX上の測距装置100からの距離であり、距離L1よりも長い。距離L2は、例えば、測距装置100から50mである。
【0034】
距離L2の位置において、瞬間視野(iFOV)の中で投受光部20の瞬間投光野(iFOI(a))、投光部10aの瞬間投光野(iFOI(b))及び投光部10bの瞬間投光野(iFOI(c))は、重なっていない。距離L2の位置においては、投受光部20は、対象物OBの測距を行うにあたり十分な反射光を得ることができる。このため、測距装置100は、精度が高い測距を行うことができる。
【0035】
距離L3は、投受光部20の光軸AX上の測距装置100からの距離であり、距離L2よりも長い。距離L3は、例えば、測距装置100から100mである。
【0036】
距離L3の位置において、瞬間視野(iFOV)の中で投受光部20の瞬間投光野(iFOI(a))は、投光部10aの瞬間投光野(iFOI(b))の一部と重なっている。
【0037】
したがって、投受光部20及び投光部10a、10bのうちの一組の投受光部20及び投光部10aから出射された出射光ELの各々の瞬間投光野(iFOI(a)、iFOI(b))は、瞬間視野(iFOV)上の投受光部20の光軸AXに沿った所定の位置、すなわち距離L3の位置で互いに重なる。
【0038】
距離L3の位置においては、瞬間視野(iFOV)の中で瞬間投光野(iFOI(a))が瞬間投光野(iFOI(b))の一部と重なる。このため、瞬間視野(iFOV)範囲内に存在する対象物OBに照射される照射光強度は高くなる。したがって、距離L3の位置において、投受光部20は、対象物OBの測距を行うにあたり十分な反射光RLが得ることができる。このため、測距装置100は、精度が高い測距を行うことができる。
【0039】
距離L4は、投受光部20の光軸AX上の測距装置100からの距離であり、距離L3よりも長い。距離L4は、例えば、測距装置100から200mである。
【0040】
距離L4の位置において、瞬間視野(iFOV)の中で投受光部20の瞬間投光野(iFOI(a))は、投光部10aの瞬間投光野(iFOI(b))及び投光部10bの瞬間投光野(iFOI(c))の一部と重なっている。
【0041】
距離L4の位置においては、瞬間投光野(iFOI(a))が瞬間投光野(iFOI(b))及び瞬間投光野(iFOI(c))と重なるため、瞬間視野(iFOV)範囲内に存在する対象物OBに照射される照射光強度は高くなる。したがって、距離L4の位置において、投受光部20は、対象物OBの測距を行うにあたり十分な反射光RLが得られる。このため、測距装置100は、精度が高い測距を行うことができる。
【0042】
以上のように、投光部10a、10bは、投受光部20と離間して配される。また、投受光部20、投光部10a、10bから出射される各々の出射光ELの強度は、距離L1の位置において安全基準を満たしている。
【0043】
また、測距装置100から遠く離れた距離L3の位置においては、投受光部20及び投光部10aの瞬間投光野(iFOI(a)、iFOI(b))が重なるため、瞬間視野(iFOV)範囲内に存在する対象物OBに照射される照射光強度を高くすることが可能となる。同様に、距離L4の位置においては、投受光部20、投光部10a及び10bの瞬間投光野(iFOI(a)iFOI(b)及びiFOI(c))の各々が重なるため、瞬間視野(iFOV)範囲内に存在する対象物OBに照射される照射光強度を高くすることが可能となる。したがって、本実施例に係る測距装置100によれば、レーザ光の出力に関する安全基準を順守し、かつ遠方に位置する対象物OBの測距を行うことが可能となる。
【0044】
尚、本実施例においては、投光部10a及び投光部10bの瞬間投光野(iFOI(b)、iFOI(c))は、投受光部20の瞬間視野(iFOV)よりも大きいものとして説明した。投光部10a及び投光部10bの瞬間投光野(iFOI(b)、iFOI(c))を投受光部20の瞬間視野(iFOV)と等しくしてもよいが、遠方で重ね合わせるためには光偏向素子12,23の偏向角度の精度が求められる。そのため、投光部10a及び投光部10bの瞬間投光野(iFOI(b)、iFOI(c))を投受光部20の瞬間視野(iFOV)より大きくすることで、光偏向素子12,23の偏向角度の精度を緩めることが出来る。尚、投受光部20の瞬間投光野(iFOI(a))は瞬間視野(iFOV)と光偏向素子23を共用することから偏向角度の精度の問題は発生せず、投受光部20の瞬間投光野(iFOI(a))と瞬間視野(iFOV)は同一でもよい。
【0045】
また、本実施例においては、投受光部20は、投光部及び受光部として機能するように構成した。しかし、投受光部20は、投光部及び受光部として機能を分離して設けてもよい。すなわち、投受光部20の構成のうち、光源21及び光偏向素子23を投光部として設け、また、投受光部20の構成のうち、受光素子22及び光偏向素子23を受光部として設けてもよい。
【0046】
さらに、投受光部20及び投光部10a、10bは、出射光ELの出射方向に応じて異なる出射タイミングで出射光ELを出射するようにしてもよい。具体的には、出射光ELの出射方向上の所定の位置から最も遠い投光部から順に出射光ELを出射するようにしてもよい。このように、出射光ELを出射させることによって、投受光部20が反射光RLを受光するタイミングを揃えることが可能となる。したがって、精度が高い測距を行うことができる。
実施例2に係る測距装置100について説明する。実施例2に係る測距装置100は、実施例1の測距装置100とは、投光部の配置数及び各々の瞬間投光野の重なる態様が異なる。尚、実施例1と同一の構成については同一箇所に同一符号を付すことによって説明を省略し、以後同様とする。
投光部10a~10dは、投受光部20の光軸AXに対して垂直な方向に投受光部20と離間して配されている。具体的には、各々の投光部10a~10dは、等間隔に配置されている。すなわち、投受光部20から投光部10aまでの距離Laは、投光部10aから投光部10bまでの距離Lbと等しい。また、投受光部20から投光部10aまでの距離Laは、投受光部20から投光部10cまでの距離Lcと等しい。また、投光部10cから投光部10dまでの距離Ldは、投受光部20から投光部10cまでの距離Lcと等しい。
ここで、投受光部20の瞬間投光野を瞬間投光野(iFOI(a))とする。また、投光部10aの瞬間投光野を瞬間投光野(iFOI(b))、投光部10bの瞬間投光野を瞬間投光野(iFOI(c))、投光部10cの瞬間投光野を瞬間投光野(iFOI(d))、投光部10dの瞬間投光野を瞬間投光野iFOI(e))とする。
投受光部20及び投光部10a~10dの出射光ELの瞬間投光野(iFOI(a)、iFOI(b)、iFOI(c)、iFOI(d)、iFOI(e))は、投受光部20の瞬間視野(iFOV)と等しい。距離L2~L4は、投受光部20の光軸AX上の測距装置100からの距離であり、実施例1と同様の距離である。また、投受光部20及び投光部10a~10dから出射された各々の出射光ELのうち、測距装置100からの距離において瞬間視野(iFOV)内に照射される出射光ELの強度の和を、測距装置100からの距離における照射光強度とする。尚、本実施例においても投受光部20及び投光部10a~10dは、安全基準を満たす出射光ELを出射するため、距離L1の位置における説明を省略する。
距離L2の位置において、瞬間視野(iFOV)の中で投受光部20の瞬間投光野(iFOI(a))及び投光部10a~10dの瞬間投光野(iFOI(b)~iFOI(e))は、重なっていない。
距離L3の位置において、瞬間視野(iFOV)の中で投受光部20の瞬間投光野(iFOI(a))は、投光部10aの瞬間投光野(iFOI(b))及び投光部10cの瞬間投光野(iFOI(c))の一部と重なっている。
距離L3の位置においては、瞬間視野(iFOV)の中で、瞬間投光野(iFOI(a))、瞬間投光野(iFOI(b))及び瞬間投光野(iFOI(d))が重なる。このため、瞬間視野(iFOV)範囲内に存在する対象物OBに照射される照射光強度は2倍弱になる。したがって、距離L3の位置においては、対象物OBの測距を行うにあたり十分な反射光RLが得られる。
距離L4の位置において、瞬間視野(iFOV)の中で、投受光部20及び投光部10a~10dの瞬間投光野(iFOI(a)~iFOI(e))の全体が重なっている。言い換えれば、瞬間視野(iFOV)は、投受光部20及び投光部10a~10dの瞬間投光野(iFOI(a)~iFOI(e))の全てを包含する。すなわち、投光部10a~10dの光軸E1~E5の各々と、投受光部20の光軸AXとは、同一の領域RCで互いに重なる。尚、各々の光軸E1~E5が領域RCで互いに重なるとは、領域RC内で光軸E1~E5同士が交差することだけでなく、光軸E1~E5同士がねじれの関係で近接することをも意味する。この.ように光軸E1~E5の各々及び光軸AXを領域RCで互いに重ねることにより、投受光部20及び投光部10a~10dから出射された出射光ELを効率よく測距に用いることが可能となる。
具体的には、距離L4の位置においては、全ての瞬間投光野(iFOI(a)~iFOI(e))が重なるため、瞬間視野(iFOV)範囲内に存在する対象物OBに照射される照射光強度は5倍になる。したがって、距離L4において、対象物OBの測距を行うにあたり十分な反射光RLが得られる。
以上のように、投光部10a~10dは、投受光部20と離間して配される。また、投受光部20及び投光部10a~10dから出射される出射光ELの強度は、距離L1において安全基準を満たしている。
また、測距装置100から遠く離れた距離L3の位置においては、瞬間視野(iFOV)の中で投受光部20、投光部10aの瞬間投光野及び投光部10cの瞬間投光野(iFOI(a)、iFOI(b)及びiFOI(d))が重なるため、瞬間視野(iFOV)範囲内に存在する対象物OBに照射される照射光強度を高くすることが可能となる。同様に、距離L4の位置においては、瞬間視野(iFOV)の中で投受光部20及び投光部10a~10dの瞬間投光野(iFOI(a)~iFOI(e))の各々が重なるため、瞬間視野(iFOV)範囲内に存在する対象物OBに照射される照射光強度を高くすることが可能となる。したがって、本実施例に係る測距装置100によれば、レーザ光の出力に関する安全基準を順守し、かつ遠方に位置する対象物OBの測距を行うことが可能となる。