(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162127
(43)【公開日】2022-10-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20221014BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20221014BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20221014BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
H01L29/78 655G
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 657D
H01L29/91 L
H01L29/91 F
H01L29/91 C
H01L29/78 652T
H01L29/78 652D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134714
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2017139452の分割
【原出願日】2017-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達也
(57)【要約】
【課題】半導体装置においてターンオン損失等の特性を改善させる。
【解決手段】ゲート電極と接続されるゲート導電部を含むゲートトレンチ部と、エミッタ電極と接続されるダミー導電部を含むダミートレンチ部と、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた部分であって、トランジスタ部においてゲートトレンチ部に隣接する第1メサ部と、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた部分であって、ダイオード部においてダミートレンチ部に隣接する第2メサ部と、半導体基板の上面に設けられた層間絶縁膜と、層間絶縁膜を貫通する複数のコンタクトホールと、を備え、ゲートトレンチ部が延伸する第1方向と垂直な第2方向において、第2メサ部の幅は第1メサ部の幅よりも大きく、第2方向に平行な断面において、第2メサ部の上方に、複数のコンタクトホールが設けられている半導体装置を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタ部とダイオード部とを備える半導体装置であって、
半導体基板の上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、ゲート電極と接続されるゲート導電部を含むゲートトレンチ部と、
前記半導体基板の上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、エミッタ電極と接続されるダミー導電部を含むダミートレンチ部と、
隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた部分であって、前記トランジスタ部において前記ゲートトレンチ部に隣接する第1メサ部と、
隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた部分であって、前記ダイオード部において前記ダミートレンチ部に隣接する第2メサ部と、
前記半導体基板の上面に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜を貫通する複数のコンタクトホールと、
を備え、
前記ゲートトレンチ部が延伸する第1方向と垂直な第2方向において、前記第2メサ部の幅は前記第1メサ部の幅よりも大きく、
前記第2方向に平行な断面において、前記第2メサ部の上方に、複数の前記コンタクトホールが設けられている
半導体装置。
【請求項2】
前記第2メサ部の幅は、前記第1メサ部の幅の2倍以上である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2メサ部は、前記ダミートレンチ部に囲まれている
請求項1にまたは2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1メサ部は、前記コンタクトホールと前記ゲートトレンチ部とをつなぐ第1導電型の第1半導体領域を有し
前記第2メサ部は、前記第2方向において、一方の前記ダミートレンチ部から他方のダミートレンチ部にわたって形成される第2導電型の第2半導体領域を有する
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2メサ部は、前記第2方向に平行な断面において、前記ゲートトレンチ部と同じピッチで繰り返され前記ゲートトレンチ部の幅と等しい第1の幅の範囲に前記コンタクトホールが存在しない
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2メサ部は、前記第2方向に平行な断面において、前記ゲートトレンチ部の幅と等しい第1の幅と、前記コンタクトホールが設けられ、前記第1メサ部の幅と等しい第2の幅とが複数繰り返されている
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2メサ部は、前記第1の幅を有する第2導電型のフローティング領域を有する
請求項5または6に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等の半導体装置が知られている(例えば、特許文献1、2および3参照)。
特許文献1 特開2007-266133号公報
特許文献2 特開2008-177297号公報
特許文献3 特開2016-39215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置においては、ターンオン損失等の特性を改善することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、トランジスタ部とダイオード部とを備える半導体装置であって、半導体基板の上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、ゲート電極と接続されるゲート導電部を含むゲートトレンチ部と、前記半導体基板の上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、エミッタ電極と接続されるダミー導電部を含むダミートレンチ部と、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた部分であって、前記トランジスタ部において前記ゲートトレンチ部に隣接する第1メサ部と、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた部分であって、前記ダイオード部において前記ダミートレンチ部に隣接する第2メサ部と、前記半導体基板の上面に設けられた層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜を貫通する複数のコンタクトホールと、を備え、前記ゲートトレンチ部が延伸する第1方向と垂直な第2方向において、前記第2メサ部の幅は前記第1メサ部の幅よりも大きく、前記第2方向に平行な断面において、前記第2メサ部の上方に、複数の前記コンタクトホールが設けられている半導体装置を提供する。
【0005】
本発明の第2の態様においては、第1導電型のドリフト領域が形成された半導体基板を備える半導体装置を提供する。半導体装置は、半導体基板の上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、上面において予め定められた延伸方向に延伸して設けられたゲートトレンチ部を備えてよい。半導体装置は、ゲートトレンチ部の一方の側壁に隣接した第1メサ部と、ゲートトレンチ部の他方の側壁に隣接した第2メサ部とを備えてよい。半導体装置は、ドリフト領域の上方でゲートトレンチ部に隣接して設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の蓄積領域を備えてよい。半導体装置は、蓄積領域の上方でゲートトレンチ部に隣接して設けられた第2導電型のベース領域を備えてよい。半導体装置は、少なくとも第1メサ部において、半導体基板の上面に設けられ、ゲートトレンチ部の一方の側壁に隣接し、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域を備えてよい。第2メサ部には、ゲートトレンチ部から離間して、ベース領域の下方に、電気的にフローティングとなっている第2導電型のフローティング領域が設けられてよい。延伸方向に垂直な配列方向の第2メサ部の幅は、配列方向の第1メサ部の幅よりも大きくてよい。フローティング領域は、配列方向に複数設けられてよい。複数のフローティング領域は、配列方向に、第1メサ部の幅と同じ間隔で複数設けられてよい。
【0006】
フローティング領域の配列方向の幅は、ゲートトレンチ部の配列方向のゲートトレンチ部の幅と等しくてよい。第1メサ部の幅と、ゲートトレンチ部の配列方向の幅との和が、複数のフローティング領域のうちの一のフローティング領域と、一のフローティング領域とゲートトレンチ部の配列方向で隣り合う他のフローティング領域との間隔と、フローティング領域の配列方向の幅との和に等しくてよい。複数のフローティング領域のうち、第2メサ部の中央側に位置するフローティング領域の配列方向の幅が、ゲートトレンチ部に最近接のフローティング領域の配列方向の幅よりも大きくてよい。
【0007】
半導体装置は、第2メサ部において、半導体基板の上面に設けられ、ゲートトレンチ部の他方の側壁に隣接し、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域をさらに備えてよい。フローティング領域は、半導体基板の深さ方向において、第2メサ部に設けられたエミッタ領域の下方の少なくとも一部には存在しなくてよい。
【0008】
半導体装置は、半導体基板上に形成された層間絶縁膜をさらに備えてよい。層間絶縁膜はコンタクトホールを有してよい。フローティング領域は、半導体基板の深さ方向において、コンタクトホールの下方には存在しなくてよい。
【0009】
フローティング領域は、半導体基板の深さ方向において、蓄積領域の下方に設けられてよい。フローティング領域は、半導体基板の深さ方向において、半導体基板の上面から2.6μm以上4.8μm以下の距離に設けられてよい。フローティング領域は、半導体基板の深さ方向において、フローティング領域の下面とゲートトレンチ部の底部までの深さが1.9μm以下に設けられてよい。
【0010】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面を部分的に示す図である。
【
図4】
図1におけるa-a'断面の一例を示す図である。
【
図5】比較例の半導体装置150の上面を部分的に示す図である。
【
図6】
図5におけるa-a'断面の一例を示す図である。
【
図8】
図4における領域Cの他の一例を示す図である。
【
図9】
図4における領域Cの他の一例を示す図である。
【
図11】距離Wfdとオン電圧Vonとの関係を示す図である。
【
図12】距離Wgfdとオン電圧Vonとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
【0014】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、半導体基板の上面と平行な面をXY面とし、半導体基板の深さ方向をZ軸とする。
【0015】
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面を部分的に示す図である。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70およびダイオード部80を備える半導体チップである。トランジスタ部70は、IGBT等のトランジスタを含む。ダイオード部80は、半導体基板の上面においてトランジスタ部70と隣接して設けられ、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含む。トランジスタ部70のうち、トランジスタ部70とダイオード部80の境界に位置する領域が、境界部90である。
図1においてはチップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
【0017】
また、
図1においては半導体装置100における半導体基板の活性領域を示すが、半導体装置100は、活性領域を囲んでエッジ終端構造部を有してよい。活性領域は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に電流が流れる領域を指す。エッジ終端構造部は、半導体基板の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0018】
本例の半導体装置100は、半導体基板の内部に設けられ、且つ、半導体基板の上面に露出するゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。また、本例の半導体装置100は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート電極50を備える。エミッタ電極52およびゲート電極50は互いに分離して設けられる。
【0019】
エミッタ電極52およびゲート電極50と、半導体基板の上面との間には層間絶縁膜が形成されるが、
図1では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56、コンタクトホール49およびコンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して形成される。
【0020】
また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部25が設けられてよい。接続部25と半導体基板の上面との間には、酸化膜等の絶縁膜が形成される。
【0021】
ゲート電極50は、コンタクトホール49を通って、ゲート配線48と接触する。ゲート配線48は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。ゲート配線48は、半導体基板の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲート配線48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。本例のゲート配線48は、コンタクトホール49の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部まで形成される。ゲート配線48と半導体基板の上面との間には、酸化膜等の絶縁膜が形成される。ゲートトレンチ部40の先端部においてゲート導電部は半導体基板の上面に露出しており、ゲート配線48と接触する。
【0022】
エミッタ電極52およびゲート電極50は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成される。各電極は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよく、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。
【0023】
本例のゲートトレンチ部40は、半導体基板の上面に平行であって配列方向と垂直な延伸方向(本例ではX軸方向)に沿って延伸する2つの延伸部分39と、2つの延伸部分39を接続する接続部分41を有してよい。接続部分41の少なくとも一部は曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分39の端部を接続することで、延伸部分39の端部における電界集中を緩和できる。ゲート配線48は、ゲートトレンチ部40の接続部分41において、ゲート導電部と接続してよい。
【0024】
本例のダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に半導体基板の上面においてU字形状を有してよい。つまり、本例のダミートレンチ部30は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分29と、2つの延伸部分29を接続する接続部分31を有してよい。
【0025】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に形成される。ウェル領域11は第2導電型であり、ゲート電極50が設けられる側の活性領域の端部から、予め定められた範囲で形成される。ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート電極50側の一部の領域は、ウェル領域11に形成される。ダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域11に覆われてよい。
【0026】
コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に形成される。ダイオード部80において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびベース領域14の上方に形成される。いずれのコンタクトホール54も、第1メサ部60および第2メサ部62のX軸方向両端に配置されたベース領域14およびウェル領域11の上方には配置されていない。
【0027】
半導体基板の上面と平行な方向において、各トレンチ部の延伸方向と垂直な方向には、各トレンチ部に隣接してメサ部が設けられる。メサ部とは、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板の部分であって、半導体基板の上面から、各トレンチ部の最も深い底部の深さまでの部分であってよい。
【0028】
本例の半導体装置100は、トランジスタ部70において、各トレンチ部の延伸方向に平行な一方の側壁に隣接して、第1メサ部60が設けられる。また、各トレンチ部の延伸方向に平行な他方の側壁に隣接して、第2メサ部62が設けられる。第2メサ部62の内部には、フローティング領域17が設けられる。第1メサ部60の内部には、フローティング領域17が設けられない。
図1では、半導体基板の上面視で、フローティング領域17が設けられる領域を破線で示している。
【0029】
図1に示すように、第1メサ部60および第2メサ部62は、各トレンチ部の延伸方向に垂直な配列方向に交互に設けられてよい。各第1メサ部60および各第2メサ部62のX軸方向における両端部には、一例としてベース領域14が配置されている(
図1においては、X軸方向の一方の端部のみを示している)。また、トランジスタ部70のダイオード部80と隣接する領域に、境界メサ部64が設けられる。また、ダイオード部80の半導体基板の下面側の領域には、第1導電型のカソード領域82が設けられる。
図1に、半導体基板の上面視でカソード領域82が設けられる領域を破線部で示している。
【0030】
半導体装置100は、半導体基板の内部において、ベース領域14の下方に、ゲートトレンチ部40の延伸方向に平行な一方の側壁および他方の側壁に隣接して、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の蓄積領域16を有する。蓄積領域16は、それぞれのトレンチ部の下端よりも上側に配置されてよい。蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
図1においては、蓄積領域16が形成される範囲を破線で示している。
【0031】
図2は、
図1における領域Aを拡大した図である。
図2に示すように、第1メサ部60および第2メサ部62は、各トレンチ部の延伸方向に垂直な配列方向に交互に設けられてよい。また、ゲートトレンチ部40の延伸方向に、エミッタ領域12およびコンタクト領域15が交互に設けられてよい。第2メサ部62の内部には、半導体基板の上面視で、破線部の領域にフローティング領域17が設けられる。すなわち、フローティング領域17は、第2メサ部62において、上面視で、Y軸方向に沿って離散的に設けられる。
【0032】
第1メサ部60の上面には、第1メサ部60を挟む2つのゲートトレンチ部40と接して、エミッタ領域12が設けられる。本例のエミッタ領域12はN+型である。エミッタ領域12は、2つのトレンチをつなぐように形成してよい。コンタクトホール54の下部にトレンチコンタクトが形成される場合は、トレンチコンタクトと一方のゲートトレンチ部40をつなぐように、エミッタ領域12が形成されてよい。
【0033】
また、第1メサ部60の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が選択的に形成される。コンタクト領域15は、2つのトレンチをつなぐように接して形成してよい。コンタクトホール54の下部にトレンチコンタクトが形成される場合は、トレンチコンタクトと一方のゲートトレンチ部40をつなぐように、コンタクト領域15が形成されてよい。また、トレンチコンタクトの底部にコンタクト領域15を形成してもよい。
【0034】
第1メサ部60において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40の延伸方向に、交互に隣接して配置されてよい。第1メサ部60の上面において、エミッタ領域12はダミートレンチ部30と接して設けられてよく、離れて設けられてもよい。
図2の例におけるエミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接して設けられている。
【0035】
第2メサ部62の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が形成される。また、第2メサ部62の上面には、ゲートトレンチ部40と隣接して、エミッタ領域12が設けられてよいが、設けられなくてもよい。
図2は、第2メサ部62の上面にエミッタ領域12が設けられる一例を示している。第2メサ部62の上面にエミッタ領域12が設けられない場合の方が、設けられる場合よりも、トランジスタ部70のオン電圧Vonを小さくすることができる。また、第2メサ部62の上面において、コンタクト領域15はダミートレンチ部30と接して設けられてよく、離れて設けられてもよい。
図2の例におけるコンタクト領域15は、ダミートレンチ部30と接して設けられている。
【0036】
第2メサ部62のゲートトレンチ部40の配列方向の第2メサ部62の幅Wfmは、第1メサ部60のゲートトレンチ部40の配列方向の第1メサ部60の幅Wmよりも大きくてよい。Wfmは、Wmの2倍以上あってよい。第2メサ部62の幅Wfmとは、半導体基板の上面と平行な面内において、第2メサ部62を挟む2つのトレンチ部に挟まれた、半導体基板のY軸方向の幅である。第1メサ部60の幅Wmとは、半導体基板の上面と平行な面内において、第1メサ部60を挟む2つのトレンチ部に挟まれた、半導体基板のY軸方向の幅である。第2メサ部62の幅Wfmを第1メサ部60の幅Wmより大きくすることで、半導体基板の下面側から正孔を良好に引き抜くことができる。このため、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを良好にすることができる。このため、半導体装置100のターンオン損失を抑制することができる。
【0037】
図2に示すように、半導体基板の上面と平行な面内において、第2メサ部62に、フローティング領域17がゲートトレンチ部40の延伸方向と垂直な方向に複数設けられてよい。フローティング領域17を複数有することで、半導体基板の下面から、正孔をより良好に引き抜くことができる。このため、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを、より良好にすることができる。また、第2メサ部62にはダミートレンチ部30を形成しない。これにより、正孔が、ダミートレンチ部30に形成されるP型反転層からエミッタ領域12に引き抜かれないので、ターンオン損失の増加を抑制することができる。
【0038】
図3は、
図1における領域Bを拡大した図である。本例の半導体装置100は、ダイオード部80において、ダミートレンチ部30に隣接して第2メサ部62が設けられる。本例のダイオード部80の第2メサ部62には、エミッタ領域12が形成されていない。ダイオード部80の第2メサ部62には、コンタクト領域15またはベース領域14が、第2メサ部62を挟む一方のダミートレンチ部30から、他方のダミートレンチ部30に渡って形成されている。つまり、半導体基板の上面において、ダイオード部80の第2メサ部62のY軸方向の幅と、ダイオード部80の第2メサ部62に設けられたコンタクト領域15またはベース領域14のY軸方向の幅は等しい。
【0039】
ダイオード部80の第2メサ部62には、トランジスタ部70の境界メサ部64のコンタクト領域15よりも半導体基板の上面に露出する面積の小さいコンタクト領域15が設けられてよい。一例として、ダイオード部80の第2メサ部62には、ベース領域14に挟まれた領域のX軸方向の両端部にコンタクト領域15が設けられ、コンタクト領域15に挟まれる領域全体にベース領域14が設けられている。
【0040】
ダイオード部80は、半導体基板の下面側の領域において、第1導電型のカソード領域82を有する。
図3に、半導体基板の上面視でカソード領域82が設けられる領域を破線部で示している。ダイオード部80は、カソード領域82を半導体基板の上面に投影した領域であってよい。
【0041】
X軸方向の両端部に形成されたコンタクト領域15とベース領域14との境界から、上面に投影したカソード領域82の端までの距離Lcは、正孔または電子の拡散長以上であってよい。これにより、コンタクト領域15からドリフト領域を経てカソード領域82へ、正孔が過剰に注入されることを防ぐことができる。
【0042】
図4は、
図1におけるa-a'断面の一例を示す図である。a-a'断面は、トランジスタ部70およびダイオード部80において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を通過するYZ面である。本例の半導体装置100は、a-a'断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上面に形成される。
【0043】
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に形成される。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向を深さ方向(Z軸方向)と称する。
【0044】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。半導体基板10は、第1導電型のドリフト領域18を備える。本例のドリフト領域18はN-型である。ドリフト領域18は、他のドーピング領域が形成されずに残存した領域であってよい。
【0045】
コンタクト領域15は、第1メサ部60および第2メサ部62の内部において、半導体基板10の上面21とドリフト領域18との間に設けられる。本例のコンタクト領域15は、ダミートレンチ部30に挟まれる第2メサ部62または境界メサ部64において、ベース領域14の上面21側に設けられる。また、コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40に挟まれる第1メサ部60において、ベース領域14の上面21側に設けられる。
【0046】
半導体基板10には、上面21とドリフト領域18との間に、コンタクト領域15よりもドーピング濃度の低いP型のベース領域14が設けられる。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、上面21からベース領域14を貫通して、半導体基板10の内部まで設けられる。本例では、ドリフト領域18まで設けられる。ベース領域14は、ゲートトレンチ部40の側壁のうち、少なくともXZ平面に平行な側壁に接する。
【0047】
第2メサ部62において、ベース領域14の下方には、ゲートトレンチ部40から離間して、電気的にフローティングとなっている第2導電型のフローティング領域17が設けられる。第1メサ部60においては、ベース領域14の下方には、当該フローティング領域17と同等の深さには、第2導電型のフローティング領域17が設けられない。
【0048】
第2メサ部62にはダミートレンチ部30を形成しないので、オフ状態の電界強度分布が一様になりにくい。本例のフローティング領域17を離散的に設けることで、ダミートレンチ部30を形成する場合と同様に、電界強度を一様に分布させることができ、耐圧低下を防止する。フローティング領域17は、Y軸方向に沿って、第1メサ部に接する2つのゲートトレンチ部40と同じピッチで配置されてよい。
【0049】
ダイオード部80の第2メサ部62には、上面21までベース領域14が設けられる。また、ダイオード部80の第2メサ部には、カソード領域82を投影した上面21において、コンタクト領域15およびエミッタ領域12のいずれも設けられなくてよい。
【0050】
ダイオード部80は、バッファ領域20の下方にN+型のカソード領域82を有する。カソード領域82は、トランジスタ部70のコレクタ領域22と略同じ深さに設けられる領域であってよい。これにより、ダイオード部80は、インバータ等の電力変換回路で、他の半導体装置100のトランジスタ部70がターン・オフする時に、逆方向に導通する還流電流を流す還流ダイオード(FWD)として機能してよい。
【0051】
境界メサ部64の下方には、下面23にコレクタ領域22が設けられる。当該コレクタ領域22は、トランジスタ部70のコレクタ領域22が延伸していてもよい。境界メサ部64の下面23側までコレクタ領域22が延伸しているため、トランジスタ部70のエミッタ領域12と、ダイオード部80のカソード領域82との距離を確保することができる。このため、トランジスタ部70のエミッタ領域12を含むゲート構造部からドリフト領域18に注入される電子が、ダイオード部80のカソード領域82に流出するのを防ぐことができる。また、トランジスタ部70のコンタクト領域15と、ダイオード部80のカソード領域82との距離を確保することができる。これにより、トランジスタ部70のコンタクト領域15からカソード領域82に流入する過剰な正孔を抑制することができる。
【0052】
本例においては、カソード領域82が境界メサ部64の直下まで設けられる場合と比べて、境界メサ部64のコンタクト領域15と、ダイオード部80のカソード領域82との距離も長くすることができる。これにより、ダイオード部80が導通するときに、ベース領域14よりも高いドーピング濃度のコンタクト領域15から、カソード領域82への正孔の注入を抑えることができる。
【0053】
トランジスタ部70およびダイオード部80の双方において、ドリフト領域18の下方にはN+型のバッファ領域20が形成される。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0054】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下方には、P+型のコレクタ領域22が形成される。当該コレクタ領域22は、境界メサ部64の下面23側の領域まで延伸していてよい。ダイオード部80において、バッファ領域20の下方には、N+型のカソード領域82が形成される。
【0055】
半導体基板10の上面21には、1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30が形成される。各トレンチ部は、上面21から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達する。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0056】
ゲートトレンチ部40は、上面21に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0057】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んで、少なくとも隣接するベース領域14と対向する領域を含む。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0058】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、上面21側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。
【0059】
ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えば、ダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。当該断面におけるダミートレンチ部30は、上面21において層間絶縁膜38により覆われる。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は下方側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0060】
図5は、第2メサ部62を有さない比較例の半導体装置150の上面を部分的に示す図である。比較例の半導体装置150においては、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板の部分は、第1メサ部60で構成される。
【0061】
図6は、
図5におけるa-a'断面の一例を示す図である。比較例の半導体装置150においては、いずれの第1メサ部60においてもフローティング領域17を有さない。
【0062】
図6の比較例の半導体装置150は、ゲートトレンチ部40と隣り合ってダミートレンチ部30が設けられる。このため、ターンオン時にダミートレンチ部30の底部にP型反転層が生じる。ターンオン時には、正孔がこのP型反転層からエミッタ領域12に引き抜かれる。このため、ターンオン損失が大きくなる。
図4の本例の半導体装置100は、ゲートトレンチ部40に隣り合ってフローティング領域17が設けられる。このフローティング領域17が存在するので、半導体基板10の下面23側から正孔を良好に引き抜くことができる。このため、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを良好にすることができる。また、フローティング領域17の位置にダミートレンチ部30が存在しないので、正孔がこのP型反転層からエミッタ領域12に引き抜かれることによるターンオン損失を抑制することができる。
【0063】
図7は、
図4において破線部で囲まれた領域Cの拡大図である。
図7に示すように、上面21と平行な方向において、隣り合うフローティング領域17相互のY軸方向の間隔Wffは、第1メサ部60の幅Wmと等しくてよい。ここで、等しいとは10%以内の誤差範囲を含んでよい。本明細書において「等しい」、「同じ」、「同一」等と記載した場合、10%以内の誤差を含んでよい。
【0064】
第1メサ部60の幅Wmとゲートトレンチ幅Wgの和は、上面21と平行な面内において、隣り合うフローティング領域17相互のY軸方向の間隔Wffとフローティング領域幅Wfとの和と等しくてよい。さらに、上面21と平行な面内において、フローティング領域17のゲートトレンチ部40の配列方向のフローティング領域幅Wfは、ゲートトレンチ部40の配列方向のゲートトレンチ幅Wgと等しくてよい。フローティング領域幅Wfをゲートトレンチ幅Wgと等しくすることで、フローティング領域17をゲートトレンチ部40と同じマスク幅で製造することができる。
【0065】
図7に示すように、フローティング領域17は、半導体基板10の深さ方向において、第2メサ部62に設けられたエミッタ領域12の下方の少なくとも一部には存在しなくてよい。また、フローティング領域17は、半導体基板10の深さ方向において、半導体基板10上に設けられた層間絶縁膜38に形成されたコンタクトホール54の下方に存在しなくてよい。また、フローティング領域17は、上面21からゲートトレンチ部40の底部までのゲート深さWgdよりも浅い深さに位置してよい。また、隣り合うフローティング領域17相互のY軸方向の間隔Wffは、フローティング領域幅Wfよりも小さくてよい。本例のフローティング領域17を上述のように設けることで、ダミートレンチ部30と同様に、オフ時の電界強度を一様に分布させることができ、耐圧低下を防止する。
【0066】
図8は、
図4における領域Cの他の一例を示す図である。
図8に示す半導体装置100は、上面21と平行な面内において、ゲートトレンチ部40に最近接のフローティング領域17のY軸方向のフローティング領域幅Wfよりも、第2メサ部62の中央側に位置するフローティング領域17のY軸方向の幅Wwfの方が大きい。
【0067】
第2メサ部62の中央に位置するフローティング領域17のフローティング領域幅Wwfを、ゲートトレンチ部40に最近接のフローティング領域17のフローティング領域幅Wfよりも大きくすることで、下面23側から正孔をより良好に引き抜くことができる。このため、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを、より良好にすることができる。また、正孔がP型反転層からエミッタ領域12に引き抜かれることによるターンオン損失を抑制することができる。さらに、本例のフローティング領域17により、電界強度を一様に分布させることができ、耐圧低下を防止する。
【0068】
図9は、
図4における領域Cの他の一例を示す図である。
図9に示す半導体装置100は、
図7において、フローティング領域17が蓄積領域16よりも半導体基板10の深さ方向の下方に設けられる。ここで下方とは、上面21と平行な方向のフローティング領域17の上面17-1が、蓄積領域16の下面16-1以下の深さにあることをいう。
図9は、フローティング領域17の上面17-1が、蓄積領域16の下面16-1より下方に設けられる一例を示している。蓄積領域16の下面16-1とは、ベース領域14よりも5倍高いドーピング濃度を示す境界をいう。フローティング領域17の上面17-1は、蓄積領域16の下面16-1と同一深さに設けられてもよい。
【0069】
フローティング領域17の上面17-1が蓄積領域16の下面16-1より下方に設けられることで、下面23側から正孔をより良好に引き抜くことができる。このため、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを、より良好にすることができる。また、正孔がP型反転層からエミッタ領域12に引き抜かれることによるターンオン損失を抑制することができる。さらに、本例のフローティング領域17により、電界強度を一様に分布させることができ、耐圧低下を防止する。
【0070】
また、
図8と同様に、上面21と平行な面内において、ゲートトレンチ部40に最近接のフローティング領域17のY軸方向のフローティング領域幅Wfよりも、第2メサ部62の中央側に位置するフローティング領域17のY軸方向のフローティング領域幅Wwfの方が、大きくてもよい。
【0071】
図10は、
図7において破線部で囲まれた領域Dの拡大図である。
図10に示すように、フローティング領域17のZ軸方向の幅をWftと定義する。上面21から、フローティング領域17の深さ方向のドーピング濃度のピークまでの深さをWfdと定義する。フローティング領域17の深さ方向のドーピング濃度分布が一様な場合は、Wfdはフローティング領域17の深さ方向の中心までの深さであってよい。
【0072】
ゲートトレンチ部40の第2メサ部62側の側壁から、ゲートトレンチ部40最近接のフローティング領域17までの距離をWgfと定義する。Wgfは、ゲートトレンチ部40と最近接のフローティング領域17と同じ深さのゲートトレンチ部40の側壁から、当該フローティング領域17までの距離であってよい。
【0073】
上面21からゲートトレンチ部40の底部までの深さをWgdと定義する。Wgdと、上面21からフローティング領域17の下面までの深さの差をWgfdと定義する。上面21から、コンタクト領域15の下面までの深さをWcと定義する。コンタクト領域15の下面とは、第2メサ部62におけるドーピング濃度が、第1メサ部60のベース領域14におけるドーピング濃度と等しいドーピング濃度を示す境界をいう。また、コンタクト領域15の下方におけるベース領域14のZ軸方向の深さをWbと定義する。
【0074】
フローティング領域17の下面からゲートトレンチ部40の底部までの深さWgfdは、フローティング領域17のZ軸方向の幅Wftよりも大きくてよい。また、フローティング領域17の下面からゲートトレンチ部40の底部までの深さWgfdは、ゲートトレンチ部40の第2メサ部62側の側壁から、ゲートトレンチ部40と隣り合ったフローティング領域17までの距離Wgfよりも大きくてよい。Wgfd、Wft、およびWgfの大小関係をこのようにすることで、半導体基板10の下面23側から、正孔をより良好に引き抜くことができる。特に、Wgfdを所定の長さにすることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めつつ、正孔の引き抜きも多くすることができる。このため、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフをより良好にすることができる。また、正孔がP型反転層からエミッタ領域12に引き抜かれることによるターンオン損失を抑制することができる。さらに、本例のフローティング領域17により、電界強度を一様に分布させることができ、耐圧低下を防止する。
【0075】
図11は、
図10において、一例としてWftを1μm、Wgfを0.7μm、Wfを1.2μm、Wgdを6.0μm、Wcを1.7μm、Wbを1.1μmとした場合に、Wfdとトランジスタ部70のオン電圧Vonとの関係をシミュレーションした図である。縦軸は、オン電圧Vonの最大値を100%として規格化して示している。
図11から分かるように、Wfdが2.3μmの場合にオン電圧Vonは最大値を示す。Wfdを増加させるとオン電圧Vonは急減する。Wfdが2.9μmの場合にオン電圧Vonは最小値を示す。さらにWfdを増加させると、オン電圧Vonは単調に増加する。
【0076】
図11において、Wfdが2.9μmよりも小さい場合、フローティング領域17が、Wgdと比較して上面21からZ軸方向に浅い位置に存在するため、蓄積領域16がフローティング領域17で打ち消される。これにより、ゲートトレンチ部40の底部に集中する正孔がフローティング領域17に引き抜かれやすくなり、オン電圧が高くなる。また、Wfdが2.9μmよりも大きい場合、ゲートトレンチ部40の底部に集中する正孔はフローティング領域17に引き抜かれ易くなる。しかし、フローティング領域17とエミッタ領域12との距離が大きくなるため、トランジスタ部70全体としての正孔の引き抜き能力が小さくなる。このため、正孔の蓄積効果が減じてオン電圧Vonが大きくなる。
図11から分かるように、Wfdが2.6μm以上4.8μm以下の場合に、オン電圧Vonは最小値から2%以内の増加とすることができる。
【0077】
図12は、
図11のWfdを、フローティング領域17の下面からゲートトレンチ部40の底部までの距離Wgfdに換算した図である。
図12から分かるように、Wgfdが2.2μmの場合にオン電圧Vonは最大値を示す。Wgfdを減少させるとオン電圧Vonは急減する。Wgfdが1.6μmの場合にオン電圧Vonは最小値を示す。さらにWgfdを減少させると、Wgfdは単調に増加する。
図12から分かるように、Wgfdに換算すると、Wgfdが-0.3μm以上1.9μm以下の場合に、オン電圧Vonは最小値から2%以内の増加とすることができる。ここで、負の値は、フローティング領域17がゲートトレンチ部40の底部よりも深い位置にある場合である。フローティング領域17の下面からゲートトレンチ部40までの深さでいえば、Wgfdが1.9μm以下の場合に、オン電圧Vonは最小値から2%以内の増加とすることができる。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0079】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0080】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、16-1・・・蓄積領域の下面、17・・・フローティング領域、17-1・・・フローティング領域の上面、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、25・・・接続部、29・・・延伸部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・接続部分、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・延伸部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・接続部分、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、48・・・ゲート配線、49・・・コンタクトホール、50・・・ゲート電極、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、60・・・第1メサ部、62・・・第2メサ部、64・・・境界メサ部、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、82・・・カソード領域、100・・・半導体装置、150・・・半導体装置