(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016215
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】湿気硬化性ウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/30 20060101AFI20220114BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20220114BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20220114BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20220114BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
C08G18/30 070
C08G18/10
C08G18/08 038
C08G18/32 053
C08L75/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119586
(22)【出願日】2020-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000105648
【氏名又は名称】コニシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(74)【代理人】
【識別番号】100185258
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 宏理
(72)【発明者】
【氏名】乾 匡志
(72)【発明者】
【氏名】乾 純
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002EV316
4J002FD036
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GJ02
4J034BA07
4J034CA02
4J034CB01
4J034CE01
4J034CE04
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF11
4J034DF12
4J034DF20
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG18
4J034GA05
4J034GA06
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KE02
4J034MA12
4J034MA14
4J034MA15
4J034MA18
4J034QA03
4J034QB11
4J034QB12
4J034QB19
4J034RA07
4J034RA08
4J034RA10
(57)【要約】
【課題】 良好な硬化性を有し、かつ貯蔵安定性に優れる湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を得ること。
【解決手段】 分子内に複数のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物と、サッカリンとを含有することを特徴とする1液湿気硬化性ウレタン樹脂組成物とすることで、貯蔵安定性を貯蔵後の分離や粘度上昇のない良好な状態に保持しつつも、優れた硬化性を同時に発揮する1液湿気硬化性ウレタン樹脂組成物とすることが可能となる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマーと、
サッカリンと
を含有することを特徴とする1液湿気硬化性ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、
分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物と、
サッカリンと
を含有することを特徴とする1液湿気硬化性ウレタン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な硬化性を有し、かつ貯蔵安定性に優れる湿気硬化性ウレタン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
湿気硬化性ウレタン樹脂組成物は、イソシアネート基が湿気と反応してアミノ基となり、生成したアミノ基が残りのイソシアネート基と反応することで硬化が進行する。しかしながら、上記硬化の過程において炭酸ガス発生による発泡を生じうるために品質に問題が生じかねないものとなっており、改善が求められている。
【0003】
また、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物においては、使用性の面から適度な硬化速度を有することも求められている。樹脂組成物の硬化促進剤としては、金属系およびアミン系触媒などが広く知られるところであるが、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の硬化の過程における硬化速度を高めるためにそれらの硬化促進剤を用いると、炭酸ガス発生による発泡がさらに著しくなる傾向がある。
【0004】
そこで、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の硬化時の発泡を抑制するために、オキサゾリジン環を有するポリマーを用いる方法が提案されている(特許文献1を参照。)。オキサゾリジン環を有するポリマーにおけるオキサゾリジン環が湿気により加水分解し、生成したアミノ基およびヒドロキシ基がイソシアネート基と反応することにより硬化が進行する。硬化の過程で炭酸ガス等の気体が発生しないため、発泡を抑制することが可能である。そしてさらに、オキサゾリジン環の加水分解を促進し、硬化速度を高める硬化促進剤として、酸触媒またはp-トルエンスルホニルイソシアネートと水との反応物を用いることが提案されている(特許文献2を参照。)。p-トルエンスルホニルイソシアネートは湿気硬化性ウレタン樹脂組成物中の含水分と速やかに反応するため、貯蔵時の粘度上昇を抑制する効果もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-226720号公報
【特許文献2】特許第5345281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、良好な硬化性を有し、かつ、貯蔵安定性に優れる湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが行った様々な検討により、オキサゾリジン環を含有する湿気硬化性ウレタン樹脂組成物において、オキサゾリジン環の加水分解を促進し硬化速度を高める硬化促進剤としてp-トルエンスルホニルイソシアネートを用いる従来の手法では、貯蔵時の粘度上昇は抑えられるものの、貯蔵後に油膜、液滴などの分離現象が生じる場合があることが判明した。このような貯蔵後の分離現象は、当該湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の利用者に対してその品質に対する疑念を生じさせ得るために商品価値が低下する。よって、その改善が強く求められることとなる。
【0008】
そこで本発明者らは、上記課題を解決するために様々な試行錯誤を行い、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物とするにあたり、分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物に加えて、サッカリンを用いることにより、貯蔵安定性を良好な状態に保持しつつも、優れた硬化性を同時に発揮する1液湿気硬化性ウレタン樹脂組成物とすることが出来ることを新たに見出し、本願発明を完成させた。本願発明は以下の構成の手段を採用したものである。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の第1の手段は、分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマーと、サッカリンとを含有することを特徴とする1液湿気硬化性ウレタン樹脂組成物である。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明の第2の手段は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物と、サッカリンとを含有することを特徴とする1液湿気硬化性ウレタン樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の手段によって、硬化性を良好な状態に保持しつつも、優れた貯蔵安定性を同時に発揮するという顕著な効果を奏する新たな湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を提供することができることとなった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0013】
[分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマーについて]
本発明に係る「分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー」は、従来公知の分子内にイソシアネート基及びオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマーを用いることができる。従来公知の分子内にイソシアネート基及びオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマーは、分子内にイソシアネート基を1個以上及びオキサゾリジン環を1個以上有すればよく、好ましくはイソシアネート基を1~2個及びオキサゾリジン環を1~2個有する。
【0014】
本発明に係る「分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー」は、大気中の水分(湿気)と反応して加水分解を受け、オキサゾリジン環が2級アミノ基とヒドロキシ基を生成し、2級アミノ基とヒドロキシ基とが分子内のイソシアネート基と反応することにより、硬化が進行する。
【0015】
分子内にイソシアネート基及び分子内オキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのイソシアネート基と、ヒドロキシ基及びオキサゾリジン環を有する化合物のヒドロキシ基とを付加反応させることで得ることができる。
【0016】
前記のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、従来公知のウレタンプレポリマーを用いることができる。従来公知のウレタンプレポリマーは、分子末端に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物とポリイソシアネート化合物との反応により得られる、分子末端に活性なイソシアネート基を有するものである。分子末端にヒドロキシ基を2個以上有する化合物としては、数平均分子量が、好ましくは500~8000、より好ましくは800~3000の2官能以上のポリオール化合物が使用される。ポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールやポリオレフィンポリオール等を単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
前記のポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA等のジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール類、ソルビトール等、更に、アンモニア、エチレンジアミン、尿素、モノメチルジエタノールアミン、モノエチルジエタノールアミン等のアミン類の1種又は2種以上の存在下、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等を開環重合して得られるランダム又はブロック共重合体等、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0018】
前記のポリエステルポリオールとしては、例えば、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等のジカルボン酸単独又は混合物と上記ジオール類単独又は混合物を重縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、バレロラクトン等の開環重合物等、ヒマシ油等のヒドロキシ基を2個以上有する化合物等が挙げられる。
【0019】
前記のポリオレフィンポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールやその水添物等が挙げられる。
【0020】
前記の分子末端に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物と反応してウレタンプレポリマーを生成するポリイソシアネート化合物も、従来公知のポリイソシアネート化合物が用いられる。従来公知のポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物等を用いることができる。
以下、それらの具体例を挙げる。
【0021】
脂肪族ポリイソシアネート化合物:トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアネートオクタン、1,6,11-トリイソシアネートウンデカン、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアネートヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタン等。
【0022】
脂環式ポリイソシアネート化合物:1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3,5-トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、3-イソシアネートメチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2-(3-イソシアネートプロピル)-2,5-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2-(3-イソシアネートプロピル)-2,6-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、3-(3-イソシアネートプロピル)-2,5-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、6-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、6-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等。
【0023】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物:1,3-若しくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はそれらの混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-若しくは1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン又はそれらの混合物、1,3,5-トリイソシアネートメチルベンゼン等。
【0024】
芳香族ポリイソシアネート化合物:m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-トルイジンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4′,4″-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、4,4′-ジフェニルメタン-2,2′,5,5′-テトライソシアネート等。
【0025】
このようなポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらポリイソシアネート化合物のうち、反応後は低粘度となり、ウレタンプレポリマーを含む組成物の取り扱いが容易となる理由から、芳香族ポリイソシアネート化合物の中では、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、脂肪族ポリイソシアネート化合物の中ではヘキサメチレンジイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート化合物の中では、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートが、それぞれ好ましい。
【0026】
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの合成方法は、従来公知の方法が用いられる。
【0027】
例えば、撹拌機、コンデンサー、減圧脱水装置、窒素気流装置を備えた密閉式反応釜に、ポリオール等の末端にヒドロキシ基を2個以上有する化合物を仕込み減圧脱水後、イソシアネート化合物を配合して窒素気流下で70~100℃にて3~8時間反応させて、ウレタンプレポリマーを得るのである。必要に応じて、有機錫化合物やアミンなどのウレタン化触媒を用いることが出来る。
【0028】
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成する際のイソシアネート基とヒドロキシ基のモル比(NCO/OH比)は、1.6以上が好ましく、1.8~4.0がより好ましく、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのイソシアネート基の含有率は、0.5%~20%が好ましく、1%~10%がより好ましい。
【0029】
前記のヒドロキシ基及びオキサゾリジン環を有する化合物は、従来公知のヒドロキシ基及びオキサゾリジン環を有する化合物が用いられる。従来公知のヒドロキシ基及びオキサゾリジン環を有する化合物としては、例えば、アルカノールアミンの2級アミノ基と、ケトン化合物またはアルデヒド化合物のカルボニル基との脱水縮合反応により得られるN-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンが挙げられる。
【0030】
前記のアルカノールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(2-ヒドロキシプロピル)アミンなどが挙げられる。ケトン化合物としては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、イソプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、イソブチルケトン、メチル-t-ブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。アルデヒド化合物としては、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、n-へキシルアルデヒド、2-メチルペンチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、3,5,5-トリメチルへキシルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物;ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、イソプロピルベンズアルデヒド、イソブチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ジメトキシベンズアルデヒド、トリメトキシベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物などが挙げられる。
【0031】
これらのうち、ヒドロキシ基及びオキサゾリジン環を有する化合物の製造の容易さと、得られる1液湿気硬化性ウレタン樹脂組成物が硬化するときの発泡防止性により優れている点で、アルカノールアミンとしてはジエタノールアミンが好ましく、ケトン化合物とアルデヒド化合物のうちアルデヒド化合物が好ましく、アルデヒド化合物のうち、イソブチルアルデヒド、2-メチルペンチルアルデヒド、ベンズアルデヒドが好ましい。
【0032】
前記のヒドロキシ基及びオキサゾリジン環を有する化合物としては、例えば、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2-(1-メチルブチル)-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、3-(2-ヒドロキシエチル)-2-(1-メチルブチル)オキサゾリジン、2-フェニル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジンなどが挙げられる。
【0033】
分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマーの合成方法は、従来公知の方法が用いられる。例えば、攪拌機、コンデンサー、窒素気流装置を備えた密閉式反応釜に、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとヒドロキシ基及びオキサゾリジン環を有する化合物を仕込み、窒素気流下で60~80℃にて3~8時間反応させて、分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマーを得るのである。必要に応じて、有機錫化合物やアミンなどのウレタン触媒を用いることができる。
【0034】
[分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物について]
本発明に係る「分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物」は、従来公知の分子内に複数のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物やウレタンプレポリマーを用いることができ、本発明に係る「分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー」の原料として使用される前記のポリイソシアネート化合物やイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーである。
【0035】
[分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物]
本発明に係る「分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物」は、従来公知のオキサゾリジン環を有する化合物を用いることができる。従来公知のオキサゾリジン環を有する化合物は、オキサゾリジン環を分子内に1個以上有すればよく、好ましくは1~2個のオキサゾリジン環を有する。
【0036】
オキサゾリジン環を有する化合物は、大気中の水分(湿気)と反応して加水分解を受け、オキサゾリジン環が2級アミノ基とヒドロキシ基を生成することにより、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物の潜在性硬化剤として機能するものである。
【0037】
オキサゾリジン環を有する化合物としては、例えば、ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物、エステル基含有オキサゾリジン化合物、オキサゾリジンシリルエーテル化合物、カーボネート基含有オキサゾリジン化合物が挙げられる。これらのオキサゾリジン化合物は、ヒドロキシ基及びオキサゾリジン環を有する化合物のヒドロキシ基と、ポリイソシアネート化合物又はウレタンプレポリマーのイソシアネート基や有機カルボン酸化合物のカルボキシル基とを反応させる等により得られる。これらのオキサゾリジン環を有する化合物のうち、製造し易く粘度が低いということから、ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物が好ましい。
【0038】
ヒドロキシ基及びオキサゾリジン環を有する化合物としては、前記の従来公知のヒドロキシ基及オキサゾリジン環を有する化合物が用いられる。
【0039】
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物は、ヒドロキシ基及びオキサゾリジン環を有する化合物のヒドロキシ基と、イソシアネート基を有するポリイソシアネート又はウレタンプレポリマーのイソシアネート基とを反応させることにより得られる。
【0040】
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の製造に用いられる、ヒドロキシ基及びオキサゾリジン環を有する化合物としては、例えば、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2-(1-メチルブチル)-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、3-(2-ヒドロキシエチル)-2-(1-メチルブチル)オキサゾリジン、2-フェニル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジンなどが挙げられる。ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の製造に用いられる、イソシアネート基を有するポリイソシアネート又はウレタンプレポリマーとしては、前述のポリイソシアネート又はイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと同様のものを用いることができる。
【0041】
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の合成方法は、従来公知の方法が用いられる。例えば、攪拌機、コンデンサー、窒素気流装置を備えた密閉式反応釜に、ポリイソシアネート化合物またはイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとヒドロキシ基及びオキサゾリジン環を有する化合物を仕込み、窒素気流下で60~80℃にて3~8時間反応させて、ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物を得るのである。必要に応じて、有機錫化合物やアミンなどのウレタン触媒を用いることができる。
【0042】
[サッカリンについて]
本発明に係る湿気硬化性ウレタン樹脂組成物には、サッカリン(1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン-1,1-ジオキシド)を用いる。本発明において特徴的なことは、サッカリンを用いることにより、貯蔵安定性を良好な状態に保持しつつも、優れた硬化性を同時に発揮する事が可能になることである。
【0043】
本発明の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物中のサッカリンの配合量は、特に限定されないが、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物100重量部に対して、0.01~0.5重量部が好ましく、0.05~0.2重量部が特に好ましい。サッカリンの配合量が0.01重量部未満の場合、硬化促進効果が弱まる傾向があり、0.5重量部を超えた場合、貯蔵安定性が悪化する傾向がある。
【0044】
[湿気硬化性ウレタン樹脂組成物について]
本発明に係る湿気硬化性ウレタン樹脂組成物中のオキサゾリジン環に対するイソシアネート基のモル比(OZ/NCO比)は、硬化性の観点から0.5~3.0であることが好ましく、0.8~2.0であることが特に好ましい。0.5未満の場合、発泡および硬化不良となる傾向があり、3.0を超えた場合、耐水性が悪化する傾向がある。
【0045】
[その他の成分について]
本発明の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物は、上述した各成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。従来公知の他の任意成分が含有されていてもよい。このような成分としては、例えば、重質炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、珪砂、シリカ等の充填剤、酸化チタン、カーボンブラック、その他の染料或いは顔料等の着色剤、ケトン類、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素等の希釈剤、粘接着付与剤、増粘剤、シランカップリング剤、顔料分散剤、消泡剤、チタンカップリング剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。なお、充填剤には、イソシアネート化合物と反応する水分を含有することがあるため、含水率が0.2%以下、好ましくは0.1%以下となるように、脱水処理を行ってから添加含有するのが好ましい。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0047】
1.試薬について
【0048】
以下に示す各種試験のために、ポリプロピレンエーテルジオール(数平均分子量1000)、ポリプロピレンエーテルジオール(数平均分子量2000)、ポリプロピレンエーテルトリオール(数平均分子量5000)、フタル酸ジイソノニル、ジオクチル錫バーサテート、イソホロンジイソシアネート、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、平均粒子径2.2μmの重質炭酸カルシウム、BYK-P 105(低分子量不飽和カルボン酸ポリマー、酸価:365mgKOH/g、ビックケミー・ジャパン株式会社、日本)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、脂肪族系炭化水素溶剤 T-SOL 3040(ENEOS株式会社、日本)、サッカリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、サリチル酸をそれぞれ用いた。
【0049】
2.湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の調製について
【0050】
[分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマーの調製(調製例1)]
【0051】
数平均分子量1000のポリプロピレンエーテルジオール(以下、「ポリプロピレンエーテルジオール1」という。)を11.6g、数平均分子量2000のポリプロピレンエーテルジオール(以下、「ポリプロピレンエーテルジオール2」という。)を14.8g、数平均分子量5000のポリプロピレンエーテルトリオールを22.1g、フタル酸ジイソノニルを27.5g、およびジオクチル錫バーサテートを0.002gとなるようにそれぞれ量り取り、それらを混合して混合物とした。
【0052】
イソホロンジイソシアネートを16.6g(NCO/OH=2.5)を量り取り、前記混合物に添加した。そして、窒素雰囲気下、液温95℃にて2時間撹拌しながら反応させ、イソシアネート基含有率が4.03%のウレタンプレポリマーを得た。
【0053】
次いで、液温を70℃になるまで降温させた後、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン(以下、オキサゾリジン化合物1という。)を6.96g(NCO/OH=2.04)を添加した。そして、窒素雰囲気下、液温70℃にて4時間撹拌しながらウレタンプレポリマーの一部と反応させることで、イソシアネート基が1.91%の、分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマーを含む混合物(以下、「プレポリマー1」という。)を得た。
【0054】
[分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物の調製(調製例2)]
【0055】
ポリプロピレンエーテルジオール1を11.3g、ポリプロピレンエーテルジオール2を14.4g、数平均分子量5000のポリプロピレンエーテルトリオールを21.5g、フタル酸ジイソノニルを26.8g、およびジオクチル錫バーサテートを0.002gとなるようにそれぞれ量り取り、それらを混合して混合物とした。
【0056】
イソホロンジイソシアネートを11.3g(NCO/OH=1.75)を量り取り、前記混合物に窒素雰囲気下、液温95℃にて2時間撹拌しながら反応させることで、イソシアネート基含有率が2.14%の、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を含む混合物(以下、「プレポリマー2」という。)を得た。
【0057】
[分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマーの調製(調製例3)]
【0058】
前記調製例1と同様の方法により、プレポリマー1を調製した。
【0059】
次いで、該プレポリマー1にp-トルエンスルホニルイソシアネートを0.2g添加し、窒素雰囲気下、液温70℃にて30分撹拌して、分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマーを含む混合物(以下、「プレポリマー3」という。)を得た。
【0060】
プレポリマー1~3における各原料の配合を、表1にまとめた。
【0061】
【0062】
[湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の調製(実施例1)]
【0063】
密閉した混合容器内に、プレポリマー1を54.5g、重質炭酸カルシウムを41.0g、BYK-P 105を0.05g、ジエチレングリコールジメチルエーテルを4.5g、およびサッカリンを0.1g添加した。そして、均一に混合し、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
【0064】
[湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の調製(実施例2)]
【0065】
密閉した混合容器内に、プレポリマー2を48.1g、重質炭酸カルシウムを41.0g、BYK-P 105を0.05g、イソホロンジイソシアネートとオキサゾリジン化合物1との反応物(オキサゾリジン化合物2、化審法番号 5-7050)6.4g(NCO/OH=1)およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.6gの混合物、ジエチレングリコールジメチルエーテルを2.9g、およびサッカリンを0.1g添加した。そして、均一に混合し、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
【0066】
[湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の調製(実施例3)]
密閉した混合容器内に、プレポリマー1を54.5g、重質炭酸カルシウムを41.0g、BYK-P 105を0.1g、ジエチレングリコールジメチルエーテルを2.75g、T-SOL 3040を2.75gおよびサッカリンを0.05g添加した。そして、均一に混合し、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
【0067】
[湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の調製(比較例1)]
【0068】
サッカリンを用いないこと以外は実施例1と同様にして、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
【0069】
[湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の調製(比較例2)]
【0070】
プレポリマー1の代わりに54.5gのプレポリマー3を用いること以外は比較例1と同様にして、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
【0071】
[湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の調製(比較例3)]
【0072】
サッカリンの代わりに0.03gのサリチル酸を用いること以外は実施例1と同様にして、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
【0073】
3.評価について
【0074】
[湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の貯蔵安定性を評価する試験]
【0075】
実施例1~3および比較例1~3の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物について、それぞれ貯蔵安定性を評価する試験を行った。
【0076】
実施例1~3および比較例1~3の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を調製した後、速やかに湿気を遮断する容器の中に入れて包装し密封した。そして、該容器を23℃に調温した恒温槽中に1時間静置した。その後、粘度測定を行い、測定した粘度を「初期粘度」として記録した。なお、粘度測定は、B型粘度計により行い、測定環境温度は23℃、スピンドルはNo.6、および回転速度は20r/minに設定して行った。
【0077】
湿気を遮断する容器に包装して密封した湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を50℃に設定したオーブン中に1週間静置した後、23℃に調温した恒温槽中に1時間静置した。その後、目視にて分離等のといった外観の異常の有無を評価し、「貯蔵後の外観」として記録した。また、粘度測定を行い、測定した粘度を「貯蔵後粘度」として記録した。なお、粘度測定は、B型粘度計により行い、測定環境温度は23℃、スピンドルはNo.6、および回転速度は20r/minに設定して行った。
【0078】
[湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の硬化性を評価する試験]
【0079】
実施例1~3および比較例1~3の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物について、それぞれ硬化性を評価する試験を行った。
【0080】
実施例1~3および比較例1~3の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を調製した後、各湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を、フレキシブルボード上に厚さ1.5mmで塗布した。そして、23℃、50%湿度環境下に静置し、表面に硬化皮膜が生じるまでの時間を測定し、皮張り時間として記録した。
【0081】
3.結果について
【0082】
貯蔵安定性および硬化性の評価の結果を表2に記載した。
【0083】
【0084】
まず、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物調製後の発泡の程度について評価を行った。調製した実施例1~3および比較例1~3の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物をフレキシブルボード上に厚さ1.5mmで塗布して塗膜を形成させ、23℃、50%湿度環境下に静置して7日間養生した後、塗膜の外観を観察した。
【0085】
実施例1~実施例3の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物においては、いずれの場合においても塗膜に発泡は認められなかった。分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物に、さらにサッカリンを用いる本発明の手段の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物は、硬化後の塗膜に発泡が生じない優れた性状を有するものであることが確認された。
【0086】
次に、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物調製後の初期粘度について評価を行った。
【0087】
本評価において、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物における実用的な粘度として、作業性を考慮し、8,000mPa・s以下であることを基準に判断した。分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物に、さらにサッカリンを用いる実施例1~実施例3の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の初期粘度を評価したところ、それぞれ5,520mPa・s、5,420mPa・s、5,040mPa・sと、いずれの場合においても良好な初期粘度のものが得られることが明らかとなった。この値は、サッカリンを用いない湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(比較例1)および従来の硬化促進剤であるp-トルエンスルホニルイソシアネートを用いる湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(比較例2)と同程度のものであった(表2)。
【0088】
他方、実施例1の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物におけるサッカリンに代えて、従来の硬化促進成分であるサリチル酸を用いると(比較例3)、初期粘度が8,000mPa・sを超え、実用に適さない高い粘度になることが明らかとなった(表2)。
【0089】
このように、分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物に、さらにサッカリンを用いる本発明の手段の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物は、従来同様に調製後の初期粘度が良好なものが得られるものであることが確認された。
【0090】
さらに、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物調製後の貯蔵後粘度、および、初期粘度と貯蔵後粘度の粘度比について評価を行った。
【0091】
分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物に、さらにサッカリンを用いる実施例1~実施例3の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の貯蔵後粘度を評価したところ、それぞれ6,655mPa・s、5,930mPa・s、6,080mPa・sと、いずれの場合においても十分に実用的な貯蔵後粘度のものが得られることが明らかとなった。また、実施例1~実施例3の初期粘度と貯蔵後粘度の粘度比は、それぞれ1.21、1.09、1.21となっており、いずれの場合においても貯蔵後に過剰な粘度上昇は起きず、良好な使用性が保持されていることが明らかとなった(表2)。これらの値は、サッカリンを用いない湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(比較例1)および従来の硬化促進剤であるp-トルエンスルホニルイソシアネートを用いる湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(比較例2)と同程度のものであった(表2)。
【0092】
他方、実施例1の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物におけるサッカリンに代えて、従来の硬化促進成分であるサリチル酸を用いると(比較例3)、貯蔵後粘度が14,000mPa・sを超えるとともに初期粘度と貯蔵後粘度の粘度比は1.62と極めて高くなり、貯蔵後にさらに過剰な粘度上昇が生じ、全く実用に適さない高い粘度になることが明らかとなった(表2)。
【0093】
このように、分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物に、さらにサッカリンを用いる本発明の手段の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物は、従来同様に貯蔵後粘度および初期粘度と貯蔵後粘度の粘度比が良好なものが得られるものであることが確認された。
【0094】
また、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物調製後の貯蔵後の外観について評価を行った。
【0095】
分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物に、さらにサッカリンを用いる実施例1~実施例3の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の貯蔵後の外観を評価したところ、比較例1のサッカリンを用いない湿気硬化性ウレタン樹脂組成物および従来の硬化促進成分であるサリチル酸を用いる比較例3の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物と同様、外観に異常は認められず、良好な品質が保持されていることが明らかとなった(表2)。
【0096】
他方、従来の硬化促進剤であるp-トルエンスルホニルイソシアネートを用いる湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(比較例2)では、液滴の浮きが視認され、品質に問題が生じているものであることが明らかとなった(表2)。
【0097】
このように、分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物に、さらにサッカリンを用いる本発明の手段の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物は、従来同様に、外観に異常は認められず、良好な品質が保持されているものが得られるものであることが確認された。
【0098】
さらに、湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の硬化性について評価を行った。
【0099】
分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物に、さらにサッカリンを用いる実施例1~実施例3の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の硬化性について評価したところ、皮張り時間はそれぞれ40分、40分、40分と、いずれの場合においても良好な使用性が保持されていることが明らかとなった(表2)。これらの値は、従来の硬化促進剤であるp-トルエンスルホニルイソシアネートを用いる湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(比較例2)や、従来の硬化促進成分であるサリチル酸を用いる湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(比較例3)と同程度のものであった(表2)。
【0100】
他方、サッカリンを用いないこと以外は実施例1と同様にして調製された湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(比較例1)では、皮張り時間は120分以上となり、実用に耐えないものとなることが明らかとなった(表2)。
【0101】
このように、分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物に、さらにサッカリンを用いる本発明の手段の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物は、従来同様に良好な使用性を有する硬化時間のものとなることが確認された。
【0102】
上記試験の結果、分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物に、さらにサッカリンを加えて、本発明の手段の湿気硬化性ウレタン樹脂組成物になるようにすると(実施例1~実施例3)、貯蔵安定性および硬化性の点において共に優れた特性を発揮するものが得られることが明らかとなった。
本発明の手段のように、1液湿気硬化性ウレタン樹脂組成物とすべく分子内に1個以上のイソシアネート基及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するウレタンプレポリマー、又は、分子内に複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及び分子内に1個以上のオキサゾリジン環を有するオキサゾリジン化合物、及びサッカリンを用いることにより、貯蔵後の油膜、液滴などの貯蔵後の分離現象や粘度上昇のない極めて優れた貯蔵安定性を保持しつつも、優れた硬化性を同時に発揮するという顕著な効果を奏し、接着剤、シーリング材、ウレタンの塗膜防水材などとして用いることにおいて好適な、新たな1液湿気硬化性ウレタン樹脂組成物を提供することが可能となる。