(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162176
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 M
A41D13/11 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066842
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】513007930
【氏名又は名称】テクナード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(72)【発明者】
【氏名】原 真澄
(57)【要約】
【課題】マスクを装着した状態で食事をすることができると共に、ウイルス対策にも有効なマスクを提供する。
【解決手段】使用者の鼻を覆うと共に、使用者の耳に掛ける耳掛け部15を有するマスク本体部10と、使用者の口元を覆う口元カバー部12と、を備え、マスク本体部10は、弾性層の両面に抗菌層が形成されてなり、口元カバー部20は、着脱部材40を介してマスク本体部10の一端部に着脱自在に取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の鼻を覆うと共に、前記使用者の耳に掛ける耳掛け部を有するマスク本体部と、
前記使用者の口元を覆う口元カバー部と、を備え、
前記マスク本体部は、弾性層の両面に抗菌層が形成されてなり、
前記口元カバー部は、着脱部材を介して前記マスク本体部の一端部に着脱自在に取り付けられている
ことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記マスク本体部は、生地の片面に、シリカゲルとポリアミド樹脂とを含有する調湿層を備えた調湿シートが、前記マスク本体部の片面であって前記使用者の鼻を覆う位置に、前記調湿層を介して接着されている
請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記口元カバー部は、透明シートにより構成されている
請求項1または2に記載のマスク。
【請求項4】
前記口元カバー部は、弾性層の両面に抗菌層が形成されてなる
請求項1または2に記載のマスク。
【請求項5】
前記口元カバー部の片面には、生地の片面に、シリカゲルとポリアミド樹脂とを含有する調湿層を備えた調湿シートが、前記調湿層を介して接着されている
請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
前記口元カバー部は、前記着脱部材を支点として上下方向に可動することができる
請求項1~5のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項7】
前記着脱部材は、スナップボタンである
請求項1~6のいずれか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関し、特に衛生・医療・医学等の分野を中心に用いられ、人体のうち顔の一部を覆うマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉対策、風邪対策、ウイルス対策、防寒対策、防塵対策等としてマスクの着用が拡大している。コロナ禍での会食として、対面して食卓を囲む等の際に、飛沫を受けない、飛ばないようにするため、マスクをギリギリまでつけ、食事の間はマスクを外して飲食と会話を普通に行う「マスク会食」が注目されている。
【0003】
ところが、食事のときに外したマスクを無造作にテーブル等に置くと、見た目にも衛生的にも好ましくないとのことから、近年ではマスクケースを見かけることも多くなった。飲食店ではオリジナルのマスクケースを用意している場合も多い。
【0004】
しかしながら、食事の際にその都度マスクをマスクケースに保管し、会話を楽しむ際にはマスケースからマスクを取り出して装着するのは非常に面倒でストレスになりがちであり、衛生的にも好ましくない。
【0005】
そこで、マスクを装着したまま食事ができるフェイスシールドに似たマスクとして、例えば、「他人への呼気の飛散を防止し、併せて他人が飛散した呼気の吸引を防止することが出来ると共に、かつ口鼻前展開部のマスク本体を上に動かすことで、或いは前記マスク本体をそのままの状態にして、食べ物や飲み物を前記マスク本体の下から口に運ぶことが出来る食事用・応援用に活用できるマスクであって、口鼻前展開部の前記マスク本体と、この前記マスク本体とつながり、これを顔に装着するために、額の部分を抑える額抑え、および左右の耳の上から頭の後ろにかけて、頭の後ろでとめるマスク支えとで成り、前記マスク本体と前記額抑えおよび前記マスク支えとは、透明のポリプロビレンないし塩化ビニール製の1枚の大きな牛顔形シートとして、一体につながって切り抜かれ、それらによって装着者の口前展開部がV字形に形成される強度を有し、前記大きな牛顔形シートの上部分の目に当たる部分は横に細長いハート形にくり抜かれ、その上部が前記額抑え、下部が前記マスク本体となり、左右に突き出た角(つの)の形をした部分は前記マスク支えとなって、前記マスク支えの左右両端に刻まれているL字形の数か所の切込みをそれぞれ装着者の頭の大きさに合わせて、頭の後ろで上下にかませることにより装着出来、前記マスク本体の目空き部分及び前記マスク本体の下の方から空気が移動することにより、猛暑における熱中症の予防となり、かつ原材料費が安く、企業のノベルティとして活用できることを特徴としたフェイスシールドに似たマスク。」が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のフェイスシールドに似たマスクは、ポリプロビレンないし塩化ビニール製の1枚の大きな牛顔形シートが額の部分を抑える額抑えを備えるため、日常的に使用するのは非常に面倒でストレスになりがちである。また、花粉対策、風邪対策、ウイルス対策、防寒対策、防塵対策等としても不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、マスクを装着した状態で食事をすることができると共に、ウイルス対策にも有効なマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマスクは、使用者の鼻を覆うと共に、前記使用者の耳に掛ける耳掛け部を有するマスク本体部と、前記使用者の口元を覆う口元カバー部と、を備え、前記マスク本体部は、弾性層の両面に抗菌層が形成されてなり、前記口元カバー部は、着脱部材を介して前記マスク本体部の一端部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マスクを装着した状態で食事をすることができると共に、ウイルス対策にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るマスクを示す正面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るマスクを示す背面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るマスクのマスク本体部と口元カバー部とを分離した状態を示す正面図であり、(a)はマスク本体部を示す正面図、(b)は口元カバー部を示す正面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るマスクのマスク本体部と口元カバー部とを分離した状態を示す背面図であり、(a)はマスク本体部を示す背面図、(b)は口元カバー部を示す背面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るマスクの口元カバー部を上方向に可動させた状態を示す側面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るマスクを示す正面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るマスクを示す背面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係るマスクのマスク本体部と口元カバー部とを分離した状態を示す正面図であり、(a)はマスク本体部を示す正面図、(b)は口元カバー部を示す正面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係るマスクのマスク本体部と口元カバー部とを分離した状態を示す背面図であり、(a)はマスク本体部を示す背面図、(b)は口元カバー部を示す背面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係るマスクの口元カバー部を上方向に可動させた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<概要>
本発明の一態様に係るマスクは、使用者の鼻を覆うと共に、前記使用者の耳に掛ける耳掛け部を有するマスク本体部と、前記使用者の口元を覆う口元カバー部と、を備え、前記マスク本体部は、弾性層の両面に抗菌層が形成されてなり、前記口元カバー部は、着脱部材を介して前記マスク本体部の一端部に着脱自在に取り付けられていることを特徴としている。
この態様によれば、マスクを装着した状態で食事をすることができると共に、ウイルス対策にも有効である。
【0013】
また、前記マスク本体部は、生地の片面に、シリカゲルとポリアミド樹脂とを含有する調湿層を備えた調湿シートが、前記マスク本体部の片面であって前記使用者の鼻を覆う位置に、前記調湿層を介して接着されている。
この態様によれば、使用者の吸気を吸収してウイルス対策により有効である。
【0014】
前記口元カバー部は、透明シートにより構成されている。
この態様によれば、マスクを付けた状態でも、使用者の口元の動きを見ることができる。
【0015】
前記口元カバー部は、弾性層の両面に抗菌層が形成されてなる。
この態様によれば、ウイルス対策により有効である。
【0016】
前記口元カバー部の片面には、生地の片面に、シリカゲルとポリアミド樹脂とを含有する調湿層を備えた調湿シートが、前記調湿層を介して接着されている。
この態様によれば、ウイルス対策により有効である。
【0017】
前記口元カバー部は、前記着脱部材を支点として上下方向に可動することができる。
この態様によれば、食事をする際に口元カバー部が邪魔になりにくい。
【0018】
前記着脱部材は、スナップボタンである。
この態様によれば、口元カバー部の着脱が容易となる共に、口元カバー部も可動も容易となる。
【0019】
<第1の実施形態>
以下、本発明の一態様に係るマスクについて、図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマスク1を示す正面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係るマスク1を示す背面図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係るマスク1のマスク本体部10と口元カバー部20とを分離した状態を示す正面図であり、(a)はマスク本体部10を示す正面図、(b)は口元カバー部20を示す正面図である。
図4は、本発明の第1の実施形態に係るマスク1のマスク本体部10と口元カバー部20とを分離した状態を示す背面図であり、(a)はマスク本体部10を示す背面図、(b)は口元カバー部20を示す背面図である。
【0021】
以下、図面において、矢印UPの方向は上方向、矢印DNの方向は下方向、矢印Lの方向は左方向、矢印Rの方向は右方向をそれぞれ示す。
【0022】
なお、左方向(矢印Lの方向)、右方向(矢印Rの方向)を、マスクの「耳方向もしくは耳側」と呼ぶ場合がある。また、左方向(矢印Lの方向)もしくは右方向(矢印Rの方向)から中心方向、すなわちマスク本体部10の仮想の中心線方向を、マスクの「中心方向もしくは中心部側」と呼ぶ場合がある。
【0023】
1.全体構成
本実施形態のマスク1は、使用者の鼻を覆うと共に、使用者の耳に掛ける耳掛け部15を有するマスク本体部10と、使用者の口元を覆う口元カバー部20とを備えている。
【0024】
2.マスク本体部
マスク本体部10は、左右のマスク本体11,12の一端部同士を山型に縫い合わせて接合してなる左右対称の矩形形状である。
【0025】
マスク本体部10は、中心の接合部13を頂点として山型に突出した突出部14を左右に有する(
図1,3参照)。突出部14は、マスク1の背面側(使用者の鼻と直接接する側)から表面側(背面側の反対側の面であって、外気に直接触れる側)に向けてなだらかに突出した山型の形状である。
【0026】
マスク1を装着した場合、接合部13が使用者の鼻の中心(鼻骨)と当接し、突出部14は使用者の鼻翼と当接するようになる。
【0027】
マスク本体部10は、弾性層(図示せず)の両面に抗菌層(図示せず)が形成されてなる3層構造である。
【0028】
2-1.弾性層
弾性層の材質は特に限定はないが、ポリウレタンが好ましく、特に多孔質の発砲ポリウレタンが好ましい。多孔質の発砲ポリウレタンは、弾性があることから伸縮性に優れ、マスク1を耳に掛けた際に顔への密着性が良好となる。
【0029】
弾性層の厚さは、通常1~10mmであり、好ましくは1~3mmである。
【0030】
2-2.抗菌層
抗菌層の材質は特に限定はないが、抗菌剤を練り込んだポリエステル糸が好ましい。具体的には、抗菌剤を練り込んだ抗菌ポリエステル糸(リブフレッシュ(登録商標)Pスーパー、KBセーレン社製)と、吸水速乾ポリエステル糸(ソアリオン(登録商標)YC、KBセーレン社製)とを織編したポリエステル糸があげられる。このポリエステル糸を使用することにより、銀イオンの優れた抗菌効果によりさまざまな菌の増殖を抑制できるとともに、Y型異型断面の毛細管現象により水分を素早く吸収・乾燥しマスク内を快適に保つことができる。また、吸水速乾性に優れるため、洗濯しても直ぐに乾くという利点もある。
【0031】
抗菌層の厚さは、通常0.1~1mmであり、好ましくは0.2~0.8mmである。
【0032】
2-3.調湿シート
マスク本体部10の背面側(使用者の鼻と直接接する側)の中央部には、調湿シート30が形成されている(
図2,4参照)。
【0033】
調湿シート30は、生地(図示せず)の片面に、シリカゲルとポリアミド樹脂とを含有する調湿層(図示せず)を備えている。調湿シート30は、調湿層を介してマスク本体部10の背面側に直接接着されている。
【0034】
2-3-1.生地
生地の材質は特に限定はなく、例えば綿、不織布、ガーゼ、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂、レーヨン等があげられるが、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂製生地であれば抗ウイルス生地等の機能性生地も選択でき、機能性が増すため好ましい。
【0035】
2-3-2.調湿層
調湿層は、シリカゲルとポリアミド樹脂とを用いて形成されている。ここでのポリアミド樹脂は、シリカゲルを生地に接着するためのいわゆるバインダーとしての役割を果たすものである。
【0036】
シリカゲルとポリアミド樹脂とを所定の割合で配合したものを、生地(例えば、ポリエステル樹脂製生地)の片面にコーティング加工(シングルドット加工)することにより、シリカゲルがドット状に転写、固着させて調湿層を形成している。
【0037】
2-3-2-1.シリカゲル
シリカゲルは、調湿機能や吸湿機能に優れているため、マスク内側の吸気(使用者が吐いた息)の湿度を一定以上に保つことができる。そのため、のどの粘膜が乾燥した外気にさらされることがなく、粘膜の潤いを良好に保つことができ、ウイルスへの防御力を高めることができる。
【0038】
また、シリカゲルは水分の他に空気中に飛散する臭いの元であるアンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メルカプタンや、加齢臭の原因となるノネナールガス等も吸着する消臭機能も有する。
【0039】
シリカゲルの粒は、多数の微細貫通孔を有しており、高湿度雰囲気下では表面吸着又は毛細管現象により空気中の水分を吸収し、乾燥雰囲気下では吸収した水分を放出し得る機能を有するものが好ましい。そのため、かかる吸湿機能及び放湿機能を良好にするべく、本実施形態におけるシリカゲルには微細空間容積が0.5~1.0ml/g及び表面積が350~650m2/gの範囲内にあるものが好ましい。
【0040】
また、微細貫通孔の孔径は30~120オングストロームのものが吸湿機能等を良好に発揮する上で好ましい。
【0041】
2-3-2-2.ポリアミド樹脂
シリカゲルとポリアミド樹脂との配合割合は特に限定はないが、シリカゲル40~80重量%:ポリアミド樹脂60~20重量%が好ましく、特に好ましくはシリカゲル50~70重量%:ポリアミド樹脂50~30重量%、最も好ましくはシリカゲル60重量%:ポリアミド樹脂40重量%である。このような範囲であれば、ポリアミド樹脂がシリカゲルを生地に接着するためのバインダーとしての役割を良好に果たすからである。
【0042】
2-3-2-3.調湿シートの作製
シリカゲルとポリアミド樹脂とを所定の割合で配合したものを、生地(例えば、ポリエステル樹脂製生地)の片面に、転写、固着させて調湿シート30を作製する。具体的には、シリカゲル60重量%とポリアミド樹脂40重量%とを配合し、これを生地(例えば、ポリエステル樹脂製生地)の片面にコーティング加工(シングルドット加工)(条件:ヒートロール温度:150~250℃、加工速度:1~10m/分)してシリカゲルをドット状に転写、固着させて調湿層を形成する。ドット状に転写されたシリカゲルの表面にポリアミド樹脂が存在するため、バインダーを使用することなく他の素材(例えば、マスク本体部10の抗菌層)と接着することができる。
【0043】
調湿シート30の調湿層は、シリカゲルがドット状に転写・固着させており、ドット間に空間があるため、通気性に優れている。また、軟らかい生地(例えばポリエステル樹脂製生地等)に加工をした場合にも、生地の風合いを損なうことがない。
【0044】
調湿シート30を設ける位置は、マスク本体部10の背面側であって、少なくとも使用者の鼻を覆う位置であれば特に限定はなく、マスク本体部10の背面側の一部もしくは全部に設けることができる。
【0045】
図2,
図4に示すように、調湿シート30の上下両端が、マスク本体部10の周縁(外縁)と重なるように調湿シート30を設けることが好ましい。
【0046】
調湿シート30の大きさ(寸法、厚さ等)は、特に限定はなく、マスク本体部10の大きさ等に応じて適宜変更可能である。
【0047】
2-4.耳掛け部
マスク本体部10は、両端部に使用者の耳に掛ける耳掛け部15を有する。ここで、マスク本体部10の両端部とは、マスク本体部10の仮想の中心線側から左右方向(耳方向)に向かう端部をいう。
【0048】
本実施形態では、マスク本体部10と耳掛け部15とは同一材料で一体的に形成されている。すなわち、マスク本体部10と耳掛け部15とは継ぎ目なく一体に接続している。
【0049】
耳掛け部15は、使用者の耳に掛けるための開口16を有する。
【0050】
開口16の形状は特に限定はないが、ここでは横長の楕円形状をしている。
この開口16を使用者の耳に掛けることにより、マスクの中心部が耳の後方に引っ張られ、マスクが使用者の顔に密接して保持されるようになる。
また、耳掛け部15はマスク本体部10と同一材料の3層構造(抗菌層/弾性層/抗菌層)であり、生地自体が強化されているため、耳掛け部15の両端に切り込みを入れることもできる。この切り込みにより、使用者の耳の形状等に応じて開口16の大きさ等を調整することができ、耳への密着性が向上する。
【0051】
2-5.切欠き
本実施形態に係るマスク1は、マスク本体部10の周縁(外縁)の上部に、三角形状の切欠き17,18を有する。
【0052】
切欠きの形状は特に限定はないが、本実施形態の切欠き17,18は、マスク本体部10の内側から周縁に向かって拡幅する三角形状の切り込み(スリット)である。
【0053】
本実施形態のように、切欠き17,18を設けることにより、マスク本体部10が中心部から耳方向に約10%程度伸縮可能になる。そのため、マスク本体部10の顔への密着性がより向上し、ウイルス対策としてさらに有効である。
【0054】
切欠き17,18を設ける位置、切欠き17,18の形状や数等については、特に限定はなく、この実施形態に限定されるものではない。例えば、マスク本体部10の下側の周縁にも切欠きを設けてもよく、具体的には切欠き17,18のマスク本体部10の幅方向と対向する位置に切欠きをそれぞれ設けてもよい(切欠きの合計4個)。このようにすれば、マスク本体部10の顔への密着性がさらに向上し、ウイルス対策としての有効性もさらに向上する。
【0055】
切欠きは全て同じ形状であっても、場所毎に異なる形状であっても差し支えない。
【0056】
4.マスク本体部の製法
4-1.型紙の作製
まず、マスク本体部10を作製するための1枚の型紙を作製する。すなわち、弾性層(例えば、多孔質の発砲ポリウレタン)の両面に、抗菌層(例えば、抗菌剤を練り込んだ抗菌ポリエステル糸(リブフレッシュ(登録商標)Pスーパー、KBセーレン社製)と、吸水速乾ポリエステル糸(ソアリオン(登録商標)YC、KBセーレン社製)とを織編したポリエステル糸)が形成されてなる3層構造のシートを作製する。具体的には、軟質ウレタンフォームを熔融して、抗菌層(抗菌生地)と貼り合わせをするフレームラミネート加工により、3層構造のシートを作製する。もしくは、軟質ウレタンフォームの両面に抗菌層(抗菌生地)を貼り合わせてもよい。
【0057】
また、前述の方法に準じて、生地(例えば、ポリエステル樹脂製生地)の片面に、シリカゲルとポリアミド樹脂とを含有する調湿層を形成した調湿シートを作製する。
【0058】
次に、3層構造のシートの片面(抗菌層)側の中央部に、調湿シートの調湿層側を載置し、コーティング加工(シングルドット加工)(条件:ヒートロール温度:150~250℃、加工速度:1~10m/分)して、シリカゲルをドット状に転写、固着させる。このようなシートを、所定の形状に打ち抜き、マスク本体部10を作製するための型紙(マスク本体11,12)を作製する。
【0059】
4-2.マスク本体部の作製
型紙の左右のマスク本体11,12の一端部同士を山型に縫い合わせて接合することにより、中心の接合部13を頂点として山型に突出した突出部14(
図1,3参照)を有するマスク本体部10を作製する。
【0060】
このようにして、調湿シート30が、マスク本体部10の片面(背面)であって使用者の鼻を覆う位置に、調湿層を介して接着されている、本実施形態のマスク本体部10を作製することができる。
【0061】
5.口元カバー部
図5は、本発明の第1の実施形態に係るマスク1の口元カバー部20を上方向に可動させた状態を示す側面図である。
【0062】
第1の実施形態では、口元カバー部20が透明シートにより構成されていることが最大の特徴である。
これにより、マスク1を付けた状態でも、使用者400の口元401の動きを見ることができる。そのため、保育園、幼稚園、介護施設、英会話教室等での使用に適している。
【0063】
透明シートとしては、特に限定はないが、塩化ビニルシートが好ましい。また、透明シートは抗菌処理を施したものが好ましく、具体的には、明和グラビア株式会社の抗ウイルス抗菌シートが好ましい。
【0064】
口元カバー部20は、
図3に示すように、透明シートを接合部22で山型に縫い合わせてなる略五角形状である。また、口元カバー部20の下部21は、下方に向かって末広がりに形状になっている。
【0065】
口元カバー部20は、
図5に示すように、スナップボタン40(41)を支点として上下方向(矢印方向)に可動することができる。これにより、食事の際に口元カバー部20が邪魔にならないため、マスク1を装着した状態で食事をすることができる。食べ物を口に運び入れる毎にマスク1を外す必要がないので、便利である。
【0066】
口元カバー部20は、
図5に示すように、使用者400の口元401を覆うことができればよいが、下部21により使用者400の顎部402まで覆うことができるようになっている。また、口元カバー部20は、下方に向かって末広がりに形状になっているため、口元カバー部20の下部21は使用者400の顎402との距離がある程度確保できるようになっている。したがって、使用者400がマスク1を装着した場合に、口元カバー部20の下部21が使用者400の顎部402に密着しないため、食べ物を口元401まで運びやすく、食事の際に邪魔にならないようになっている。
【0067】
略五角形状の口元カバー部20の上端には、口元カバー部20をマスク本体部10に着脱自在に取り付けるためのスナップボタン(通称、ホック)1が取付けられている。
実施形態では、
図3に示すように、マスク本体部10側のスナップボタン41がオス、口元カバー部20側のスナップボタン40がメスとなっているが、オスとメスが逆であっても差し支えない。
【0068】
口元カバー部20は、スナップボタン40,41を介して、マスク本体部10の一端部に着脱自在に取り付けられているため、交換可能である。口元カバー部20が汚れた際等には、別の新しい口元カバー部20と交換することができ衛生的である。
【0069】
略五角形状の口元カバー部20の上端は、左端から右端に亘って、表側及び裏側が補強部材50により補強されている。これにより、スナップボタン40を取り付けた際の口元カバー部20の強度を保つことができる。
【0070】
補強部材50としては特に限定はないが、例えばポリエチレン製のバイアステープを使用することができる。口元カバー部20の上端の左端から右端に亘って、表側及び裏側をポリエチレン製のバイアステープで縫製することにより、口元カバー部20が補強されている。
【0071】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態に係るマスクについて、図面を参照して説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係るマスク100を示す正面図である。
図6は、本発明の第2の実施形態に係るマスク100を示す背面図である。
図7は、本発明の第2の実施形態に係るマスク100のマスク本体部10と口元カバー部120とを分離した状態を示す正面図であり、(a)はマスク本体部10を示す正面図、(b)は口元カバー部120を示す正面図である。
図8は、本発明の第2の実施形態に係るマスク100のマスク本体部10と口元カバー部120とを分離した状態を示す背面図であり、(a)はマスク本体部10を示す背面図、(b)は口元カバー部120を示す背面図である。
【0072】
第2の実施形態に係るマスク100は、第1の実施形態に係る口元カバー部20に代えて、口元カバー部121を使用した以外は、第1の実施形態に係るマスク1と略同様の構成である。
【0073】
1.口元カバー部
図10は、本発明の第2の実施形態に係るマスク100の口元カバー部120を上方向に可動させた状態を示す側面図である。
【0074】
第2の実施形態に係る口元カバー部121は、第1の実施形態に係る透明の口元カバー部20に代えて、マスク本体部10と同様の材料、すなわち弾性層の両面に抗菌層が形成されてなる3層構造(抗菌層/弾性層/抗菌層)であることが最大の特徴である。
【0075】
第2の実施形態では、口元カバー部121が透明な材料で構成されていないため、マスク100を付けた状態で使用者400の口元401の動きを見ることはできない。しかしながら、口元カバー部121が抗菌性に優れるため、花粉対策、風邪対策、ウイルス対策、防寒対策、防塵対策等としてさらに効果的である。
【0076】
口元カバー部120は、
図8に示すように、3層構造の生地(抗菌層/弾性層/抗菌層)を接合部122で山型に縫い合わせてなる略五角形状である。また、口元カバー部120の下部121は、下方に向かって末広がりに形状になっている。
【0077】
口元カバー部120は、
図10に示すように、スナップボタン140(41)を支点として上下方向(矢印方向)に可動することができる。これにより、食事の際に口元カバー部20が邪魔にならないため、マスク1を装着した状態で食事をすることができる。食べ物を口に運び入れる毎にマスク1を外す必要がないので、便利である。
【0078】
口元カバー部120は、
図10に示すように、使用者400の口元401を覆うことができればよいが、下部121により使用者400の顎部402まで覆うことができるようになっている。また、口元カバー部120は、下方に向かって末広がりに形状になっているため、口元カバー部120の下部121は使用者400の顎402との距離がある程度確保できるようになっている。したがって、使用者400がマスク100を装着した場合に、口元カバー部120の下部121が使用者400の顎部402に密着しないため、食べ物を口元401まで運びやすく、食事の際に邪魔にならないようになっている。
【0079】
略五角形状の口元カバー部120の上端には、口元カバー部120をマスク本体部10に着脱自在に取り付けるためのスナップボタン(通称、ホック)140が取付けられている。
実施形態では、
図8に示すように、マスク本体部10側のスナップボタン41がオス、口元カバー部120側のスナップボタン140がメスとなっているが、オスとメスが逆であっても差し支えない。
【0080】
口元カバー部120は、スナップボタン41,140を介して、マスク本体部10の一端部に着脱自在に取り付けられているため、交換可能である。口元カバー部120が汚れた際等には、別の新しい口元カバー部120と交換することができ衛生的である。
【0081】
2.調湿シート
図8及び
図9に示すように、第2の実施形態に係る口元カバー部121は、背面側(使用者の口と接する側)に調湿シートを備えていないが、マスク本体部10に形成した調湿シート30(
図2,
図4参照)と同様の調湿シートを備えていてもよい。すなわち、調湿シート30が、調湿層を介して口元カバー部121の背面側に直接接着されていてもよい。
これにより、花粉対策、風邪対策、ウイルス対策、防寒対策、防塵対策等としての効果がさらに向上するため好ましい。
【0082】
調湿シート30を設ける位置は、口元カバー部121の背面側であって、少なくとも使用者の口元を覆う位置であれば特に限定はなく、口元カバー部121の背面側の一部もしくは全部に設けることができる。
【実施例0083】
〔実施例1〕
図4に示したように、3層構造の生地(抗菌層/弾性層/抗菌層)からなるマスク本体部10の片面に、調湿シート30(生地/調湿層)を直接接着してなるマスク本体部10を作製した。なお、3層構造の生地(抗菌層/弾性層/抗菌層)及び調湿シート30(生地/調湿層)は、以下のようにして作製した。
【0084】
1.3層構造の生地(抗菌層/弾性層/抗菌層)
ポリウレタンからなる弾性層(厚さ1.5mm)の両面に、抗菌剤を練り込んだ抗菌ポリエステル糸(リブフレッシュ(登録商標)Pスーパー、KBセーレン社製)と、吸水速乾ポリエステル糸(ソアリオン(登録商標)YC、KBセーレン社製)とを織編したポリエステル糸からなる抗菌層(厚さ0.5mm)を形成してなる3層構造の生地(抗菌層/弾性層/抗菌層)を作製した。
【0085】
2.調湿シート30(生地/調湿層)
シリカゲル60重量%とポリアミド樹脂40重量%とを配合し、これをポリエステル樹脂製生地の片面にコーティング加工(シングルドット加工)(条件:ヒートロール温度:150~250℃、加工速度:1~10m/分)してシリカゲルをドット状に転写、固着させて調湿層を形成してなる調湿シート30を作製した。
【0086】
〔実施例2〕
実施例1のマスク本体部について、前処理を行った。すなわち、実施例1のマスク本体部を、SKE標準洗濯法(JAFET標準配合洗剤使用)により10回洗濯を行った。
【0087】
上記実施例1及び実施例2のマスク本体部について、一般社団法人繊維評価技術協議会(JTETC)が実施する認証制度(業界自主基準)に従い、抗菌活性値[A]を測定した。
その結果、実施例1は抗菌活性値[A]が4.0、実施例2は抗菌活性値[A]が5.9であった。
SEKマーク認証基準では、抗菌活性値[A]≧2.2を「抗菌防臭加工」としているため、実施例1及び実施例2の何れも抗菌防臭加工に優れていることがわかる。しかも、前処理をした実施例2は、実施例1に比べてさらに抗菌防臭加工に優れていることもわかった。
なお、SEKマークは、一般社団法人繊維評価技術協議会(JTETC)が実施する認証制度(業界自主基準)である。同協議会では、抗菌防臭加工を施した繊維製品の表示用語、評価方法・基準、安全性等に自主基準を設け、基準に合格した商品には「SEKマーク」を表示できるマーク制度を実施している。
【0088】
<変形例>
以上、一実施形態に係るマスクを説明したが、本発明はこの実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例とを組み合わせたものでもよいし、変形例同士を組み合わせたものでもよい。また、実施形態や変形例に記載していない例や要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
【0089】
1.口元カバー部
口元カバー部は、使用者の口元を覆うことができればよく、形状、材質等については、第1の実施形態、第2の実施形態に限定されるものではない。
【0090】
2.着脱部材
実施形態では、着脱部材としてスナップボタンを使用したがこれに限定されるものではなく、例えば面ファスナー等を使用しても差し支えない。
【0091】
を
3.補強部材
第1の実施形態では、口元カバー部20を補強部材50により補強したが、補強部材は必須ではなく、省略しても差し支えない。
【0092】
4.マスク本体部
実施形態のマスク本体部10は、左右のマスク本体11,12の一端部同士を縫い合わせて接合してなるが、これに限定されるものでなく、例えば左右のマスク本体11,12同士を溶着(高周波ウエルダーによる溶接)や接着剤等により接合してもよい。
マスク本体部10は、使用者の口元を覆うことができればよく、形状、材質等については、第1の実施形態、第2の実施形態に限定されるものではない。
【0093】
5.耳掛け部
実施形態では、マスク本体部10と耳掛け部15とは同一材料で一体的に形成したが、別部材で構成してもよく、例えば耳掛け部15は耳の後ろで結ぶ紐状タイプであっても差し支えない。