(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162179
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】飲食可能な開閉可動式マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20221017BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
A41D13/11 A
A62B18/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066853
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】321003717
【氏名又は名称】有限会社サンライズ
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】吉井 由紀夫
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA20
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】通常は鼻、口等の呼吸器を覆っていても、取り外すことなくそのままで会話・飲食を可能にし、また顔面下部を覆い隠すことなく透視でき、周囲に呼気を飛散させない。
【解決手段】顔面における鼻部分、左右の両頬部分、口上部分を覆っているマスク上部体1と、顎、及び顎部分に当接した状態で下顎の左右部分を覆っているマスク下部体10とを、マスク下部体10がマスク上部体1に対してスライド手段20によって上下にスライド自在となして連結する。マスク上部体1、マスク下部体10相互間を、耳に掛ける弾性紐材16によって連繋して成る。口の開閉によるマスク下部体10の下方への移動時では、飲料容器、飲食物等をそのまま口まで持ち来し可能な状態で、マスク上部体1に下方傾斜させて折曲形成した口上覆い片4によって口上前方が覆われているようにしてある。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面における鼻部分、左右の両頬部分、口上部分を覆っているマスク上部体と、顎、及び顎部分に当接した状態で下顎の左右部分を覆っているマスク下部体とを、マスク下部体がマスク上部体に対してスライド手段によって上下にスライド自在となして連結すると共に、マスク上部体、マスク下部体相互間を、耳に掛ける弾性紐材によって連繋して成り、口の開閉によるマスク下部体の下方への移動時では、マスク上部体によって口上前方が覆われているようにしてあることを特徴とする飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項2】
マスク上部体、マスク下部体それぞれは透視可能な素材によって構成してある請求項1に記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項3】
マスク上部体は、上部中央に鼻部分を覆うよう膨出された鼻覆い部と、左右の頬部分を覆う頬覆い部と、口部分に被さり、口上部分の前方が開放されるよう口上部分から口下部分に至るに伴い次第に前方に張り出し状に傾斜した口上覆い片とから成る請求項1または2に記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項4】
鼻覆い部は、上縁が鼻上部の外面にほぼ密着するようにしてあって、下部は鼻孔との間に若干の空隙が存するようにしてある請求項3に記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項5】
口上覆い片は、鼻下部分からマスク上部体の前方に向かって下開き傾斜状に折曲拡開した状態で口部分の前方に位置している請求項3または4に記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項6】
口上覆い片は、正面から見て下部に至るに伴い次第に広幅となる台形状を呈している請求項3乃至5のいずれかに記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項7】
マスク下部体は、上部中央に顎部に当接することで下顎部の開閉に伴いマスク下部体自体を上下動させる顎当接部と、顎の左右部分を覆う顎覆い部と、マスク上部体の頬覆い部に上下方向に沿ってスライド自在にして重ね合わせられるスライド支持部とから成る請求項1乃至6のいずれかに記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項8】
スライド支持部は、顎覆い部の左右部分における上部から連続形成されていて、マスク上部体における頬覆い部の裏側で重ね合わされている請求項7に記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項9】
スライド手段は、頬覆い部あるいはスライド支持部のいずれか一方に、上下方向に沿って穿設されたスライド長孔と、このスライド長孔に挿通されてスライド支持部あるいは頬覆い部のいずれかに止着される連結体とから成る請求項2または7に記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項10】
顎当接部の内側面には、軟弾性素材製のクッション材を介装してある請求項7乃至9のいずれかにに記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項11】
弾性紐材は、マスク上部体の側部と、マスク下部体の側部との間に掛け渡されている請求項1乃至10のいずれかに記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項12】
弾性紐材は、弾性伸縮性を有する中空状で、マスク上部体、マスク下部体との連結部位では、マスク上部体、マスク下部体に貫挿後の端末部を弾性紐材自体の側部から中空部内に強制挿入して止着して成る請求項1乃至11のいずれかに記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常使用時では鼻、口等の呼吸器を覆っていても、取り外すことなく装着した儘で飲食を可能にし、また顔面下部を覆い隠すことなく透視でき、周囲に呼気を飛散させることなく飲食時の会話も可能にした飲食可能な開閉可動式マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の疾病・感染防止を図るために鼻、口等の呼吸器を覆うようにしたマスクを顔面に装着している。マスクを装着することは、呼気中に存することがある微細菌・ウィルス等の飛散防止に有効な手段とされている。ただ、会話時では開閉される口を経て身体の内外で呼気が流動するから、遮蔽物がない場合には会話者の双方にとって感染される危険性がある。
【0003】
ところが、例えば飲食を伴う会合では、会話時は顔面に装着したマスクによってその防止を図ることができても、飲食時はマスクを取り外さざるを得ないから、飲食時に感染を防止することはほとんど不可能となる。
【0004】
こうした点から、従来、例えば特許文献1に示されるマスク、特許文献2に示されるマスク、特許文献3に示されるフェイスシールド、特許文献4に示される他者保護用の衛生マスク等が提案されている。特許文献1のマスクはマスク本体の一部に、例えば飲料を飲用するストロー等を通すようにした開閉する蓋片を設けるとする。特許文献2のマスクはマスク本体と開閉部とに上下で分割し、顎に係止した開閉部を顎の上下動に伴い上下させて開口部を開閉させると共に、開閉部を上方に弾発傾向に付勢させるスプリングを設けるとする。特許文献3のフェイスシールドは頭部を囲繞するバンドに、顔面を覆うシールド部を支持して成る。特許文献4の衛生マスクは耳によって支持される下部ボディ部に、口・鼻等の呼吸器から離隔した呼吸器前方カバー体を設けて成る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-2430号公報
【特許文献2】実用新案登録第3228472号公報
【特許文献3】特許第6830559号公報
【特許文献4】特許第5174984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のマスクは飲用時にはその都度蓋片を開閉操作する必要があり、面倒である。特許文献2のマスクは飲食時に上下動する顎に追随することで開閉されるも、開放された開口部で口等が露出するから、呼気等を周囲に飛散する恐れがあるばかりでなく、スプリングを設けることは構造的に複雑となる。特許文献3のフェイスシールドは顔面の表情等を透視できるから会話等に支障はないが、装着したままでの飲食ではフェイスシールドの下端が突き当たるようになり、フェイスシールドを持ち上げるとすると、大きく開放させることになり、不都合である。特許文献4の衛生マスクは装着者自身の呼気による他者や飲食物に対する汚染を防止するもので、装着者自身の飲食時の呼気を周囲に飛散させないようにするものではない。
【0007】
そこで本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、装着している通常使用時では顔面の表情等をそのまま透視でき、特に飲食時では取り外すことなく装着したままで呼気等を周囲に飛散させることなく飲食可能にし、しかも簡素な構造でスムーズに作動し、フェイスシールドとしても安全に使用できる飲食可能な開閉可動式マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、顔面における鼻部分、左右の両頬部分、口上部分を覆っているマスク上部体1と、顎、及び顎部分に当接した状態で下顎の左右部分を覆っているマスク下部体10とを、マスク下部体10がマスク上部体1に対してスライド手段20によって上下にスライド自在となして連結すると共に、マスク上部体1、マスク下部体10相互間を、耳に掛ける弾性紐材16によって連繋して成り、口の開閉によるマスク下部体10の下方への移動時では、マスク上部体1によって口上前方が覆われているようにしてあることを特徴とする。
マスク上部体1、マスク下部体10それぞれは透視可能な素材によって構成することができる。
マスク上部体1は、上部中央に鼻部分を覆うよう膨出された鼻覆い部2と、左右の頬部分を覆う頬覆い部3と、口部分に被さり、口上部分の前方が開放されるよう口上部分から口下部分に至るに伴い次第に前方に張り出し状に傾斜した口上覆い片4とを備えて構成することができる。
鼻覆い部2は、上縁が鼻上部の外面にほぼ密着するようにしてあって、下部は鼻孔との間に若干の空隙が存するようにして構成することができる。
口上覆い片4は、鼻下部分からマスク上部体1の前方に向かって下開き傾斜状に折曲拡開した状態で口部分の前方に位置して、また正面から見て下部に至るに伴い次第に広幅となる台形状にして構成することができる。
マスク下部体10は、上部中央に顎部に当接することで下顎部の開閉に伴いマスク下部体10自体を上下動させる顎当接部11と、顎の左右部分を覆う顎覆い部13と、マスク上部体1の頬覆い部3に上下方向に沿ってスライド自在にして重ね合わせられるスライド支持部15とを備えて構成することができる。
スライド支持部15は、顎覆い部13の左右部分における上部から連続形成されていて、マスク上部体1における頬覆い部3の裏側で重ね合わされて構成することができる。
スライド手段20は、頬覆い部3あるいはスライド支持部15のいずれか一方に、上下方向に沿って穿設されたスライド長孔21と、このスライド長孔21に挿通されてスライド支持部15あるいは頬覆い部3のいずれかに止着される連結体22とから構成することができる。
顎当接部11の内側面には、軟弾性素材製のクッション材12を介装して構成することができる。
弾性紐材16は、マスク上部体1の側部と、マスク下部体10の側部との間に掛け渡されて構成することができる。
弾性紐材16は、弾性伸縮性を有する中空状で、マスク上部体1、マスク下部体10との連結部位では、マスク上部体1、マスク下部体10に貫挿後の末端部16Aを弾性紐材16自体の側部から中空部内に強制挿入して止着して成ることで構成することができる。
【0009】
以上のように構成された本発明に係る飲食可能な開閉可動式マスクにあって、鼻覆い部2によって鼻部分を覆うようにマスク上部体1を、また顎覆い部13によって下顎部分にあてがうようにマスク下部体10をそれぞれ位置決め装着すると共に、弾性紐材16によって耳に掛ける。装着状態では、マスク上部体1が口前方を常時覆わせていて、口の開閉に伴いマスク下部体10が下方にスライド移動しても、口前方を大きく開放することなく、本発明マスクを装着したまままで飲食物を喫食可能にさせ、更に装着者からの呼気等を前方に飛散させない。
マスク上部体1の口上覆い片4は、口部分の前方で、前方への張り出し状にして下開き傾斜状に拡開していることにより、口からの呼気を装着者の前面下方に案内排出させ、会話相手方に向かわせることなく、安全、円滑に会話させ、正面から見て台形状とすることで前方への飛散防止を一層有効にさせる。また、下方が開放されていることで、飲食物等を下方から口に持ち来させ、何らの支障もなく喫食させる。
マスク上部体1に対してマスク下部体10をスライド手段20によってスライド自在にしてあることで、口の開閉に伴う下顎の上下動によってマスク下部体10をスムーズに上下にスライドさせる。口を開放しても口上覆い片4が口の前方を覆い、口の閉鎖は弾性紐材16の弾性伸縮作用と相俟ち、マスク下部体10を上方の原位置に復帰させ、次動作に備えさせる。
マスク上部体1とマスク下部体10とは、スライド長孔21に挿通した連結体22によってスライド支持部15が頬覆い部3に重ね合わせられた状態であることで、スライド手段20によってマスク下部体10をマスク上部体1に対して円滑にスライドさせる。
顎当接部の内側面に介装のクッション材12は、マスク下部体10を下顎部分に装着したときの下顎部分に対してソフトに宛がわせ、弾性紐材16の弾発作用による弾発的当接を和らげ、下顎の上下動にマスク下部体10をスムーズに追随させる。
マスク上部体1、マスク下部体10相互間を連結する中空状の弾性紐材16は、連結部位においてマスク上部体1、マスク下部体10を貫挿後の末端部16Aを、弾性紐材16自体の中空部に強制挿入することで、弾性紐材16の結着用の紐材固定具17を不要にし、構成の簡素化し、体裁性を良好にさせる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上説明したように構成されているため、鼻部分、口部分を覆うマスク上部体1に上下でスライド自在に連結したマスク下部体10を顎部分を覆って装着することで、装着したままで喫食可能にし、また装着者自身の呼気等を前方に飛散させず、例えば会食時での会話、喫食等でもマスク自体を取り外すことなくスムーズに行える。こうすることで、近時の例えば新型コロナウイルス、更にはインフルエンザその他の空気感染等による疾病等の感染防止に大きく役立てることができる。
【0011】
そればかりでなく、例えば会食時では付け外しの手間が不要となり、飛沫拡散のリスクを低減でき、不使用時ではコンパクトに纏められることで携帯に便利であり、組立不要で装着に手間もかからず、しかも声がこもりにくいことでスムーズに会話が可能であり、眼鏡もそのままで装用できる等の利点がある。
【0012】
すなわちこれは本発明において、顔面における口上部分等を覆っているマスク上部体1と、顎部分等に宛がわれるマスク下部体10とを、マスク下部体10がマスク上部体1に対してスライド手段20によって上下にスライド自在となして連結すると共に、マスク上部体1、マスク下部体10相互間を弾性紐材16によって連繋して成り、口の開閉によるマスク下部体10の下方への移動時でも、マスク上部体1によって口上前方が覆われているようにしてあるからである。これによって、マスク上部体1によって口部分等を常時覆った状態で維持しながら、例えば喫食時のマスク下部体10の口部分の前方の開放を可能にし、例えば会食時でも会話、喫食をマスク装着状態で行うことができる。
【0013】
また、マスク上部体1の鼻覆い部2は、鼻を介しての呼吸気を外部に飛散させず、口上覆い片4は、口部分に被さり、口上部分の前方が下方に向かって開放されるよう口上部分から口下部分に至るに伴い次第に前方に張り出し状に傾斜していることによって、口部分の前方を覆っているから、口部分が会話時、喫食時に開いていても、口からの呼気を装着者の前方に飛散させることはない。
【0014】
正面から見て台形状の口上覆い片4は、口部分を大きく覆い、装着者の呼気は装着者自身に向かうことになり、例えば会話時での会話相手方に向かっての呼気の放散をより一層有効に阻止できる。
【0015】
しかも、前方に向かって下開き傾斜状に折曲拡開した状態で口部分の前方に位置していることで、例えば飲料容器等を口部分に持ち来したときに飲料容器(S)等が触れることであっても上方に開くように一時的にでも更に折曲されるから、喫食に際し邪魔にならず、そのままで通常通りに喫食可能である。
【0016】
マスク下部体10において、顎部に当接する顎当接部11は、下顎部の開閉に伴いマスク下部体10自体を上下動させ、マスク下部体10のスライド支持部15がマスク上部体1の頬覆い部3と重なり状となっていることで、マスク下部体10を上下方向に沿って円滑にスライドするのであり、口の開閉に追随するから、会話、喫食に不都合は生じない。また、顎当接部11に介装したクッション材12によって、顎部分とマスク下部体10とのソフトな当接状態とし、装着者に違和感を与えない。
【0017】
スライド手段20は、頬覆い部3あるいはスライド支持部15のいずれか一方に穿設されたスライド長孔21と、スライド長孔21に挿通されてスライド支持部15あるいは頬覆い部3のいずれかに止着される連結体22とから成り、スライドするときにマスク上部体1、マスク下部体10のいずれも歪形させることなくスムーズにスライドさせることができる。
【0018】
マスク上部体1とマスク下部体10とは、それらの側部相互間で耳に掛け渡される弾性紐材16によって連結してあることで、その弾性伸縮作用で、マスク下部体10の上下動を円滑にし、上方の原位置への復帰を速やかにし、また特別な復帰構成を設ける必要もない。
【0019】
中空状の弾性紐材16は、マスク上部体1、マスク下部体10それぞれに貫挿後の末端部16Aを自体の中空部に強制挿入して止着することで、紐材固定具17を要せずに弾性紐材16を縛結固定でき、構成を簡素にし、良好な体裁とする。
【0020】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項それぞれにおいて付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付した。本発明は、これらの記載、図面中の符号等によって示された構造・形状等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明を実施するための一形態を示す分解斜視図である。
【
図2】同じく顔面に装着した使用状態の斜視図である。
【
図4】同じく会話・飲食時等で口を開放したことに伴い、マスク下部体が下方に移動したときの側断面図である。
【
図5】同じくグラス等の食器によって直接に飲用しているときの斜視図である。
【
図7】同じく他の実施の形態における斜視図である。
【
図8】同じく更に他の実施の形態における斜視図である。
【
図10】同じく弾性紐材自体の連結構成を示す一部切り欠きの要部側面図である。
【
図11】同じくその(a)乃至(c)は、弾性紐材の連結構成の作業手順の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を実施するための一形態を説明すると、図において示される符号1はマスク上部体であり、このマスク上部体1は、顔面における鼻部分、左右の両頬部分、口上部分を覆っている。
【0023】
マスク上部体1には、このマスク上部体1に対してスライド手段20によって上下方向にスライド自在にしたマスク下部体10が連結されており、このマスク下部体10は、顎、及び顎部分に当接した状態で下顎の左右部分を覆っている。
【0024】
そして、マスク上部体1の側部と、マスク下部体10の側部との間に、耳に掛け渡される弾性紐材16を連結してあって、この弾性紐材16を耳に掛け渡すことで、マスク上部体1は鼻部分、両頬部分、口上部分に装着されると共に、マスク下部体10は顎部分に装着され、下顎の上下動に追随してマスク上部体1に対して弾発的に上下動されるようにしている。
図1乃至
図7において、この弾性紐材16は、マスク上部体1、マスク下部体10の所定位置に開穿した透孔に貫挿後、その末端部16Aと弾性紐材16自体とを重ね合わせた状態で固定する紐材固定具17によって連結固定してある。
【0025】
尚、これらのマスク上部体1、マスク下部体10は、所定肉厚の透明な合成樹脂製シート、例えば肉薄のPET樹脂によって軽量となるように配慮して、例えば真空成型法その他によって形成されており、顔面の湾曲された部位にしっくりと馴染むような柔軟性を備えている。また、透明な構成樹脂製シートを素材とすることで、本発明マスクはフェイスシールド機能をも備える。
【0026】
マスク上部体1は、上部中央に鼻部分、すなわち鼻先部分を覆うように例えば膨出された鼻覆い部2と、左右の頬部分を覆う頬覆い部3と、口部分に被さり、口上部分の前方が開放されるよう口上部分から口下部分に至るに伴い次第に前方に張り出し状に傾斜した口上覆い片4とを備えて成る。
【0027】
鼻覆い部2は、これの上縁が鼻上部の外面にほぼ密着するようにしてあって、また、下部は鼻を覆ったときに鼻孔からの呼吸気を阻害しないように鼻孔との間に若干の空隙が存するように形成されている。
【0028】
頬覆い部3は、顔面における曲面状の頬部分にしっくりと沿うように例えば湾曲したプレート状に形成されていて、この頬覆い部3の左右側部の上部に連結される前記弾性紐材16の弾発作用で頬部分に密着されるようにしている。
【0029】
口上覆い片4は、鼻下部分からマスク上部体1の前方に向かって下開き傾斜状に拡開した状態で口部分の前方に位置している。口部分の前方で傾斜拡開状に位置することで、口部分の前方において、例えば飲食時に使用される飲料容器・グラスS等の縁、箸・フォーク等の食事器によっての飲食物等の口への持ち来しに支障がないようにしている。また、この口上覆い片4の基部は、鼻下部分で折曲されて前方に突出するも、その折曲部位で任意の傾斜角度となっていて、必要に応じ揺動開閉されるようにしてある(
図4参照)。
【0030】
この口上覆い片4は、本発明マスクの装着時において、装着者の口部分を直接に覆うものではなく、口部分から上記のように飲食物等を口から摂取するに足りる程度の空隙を設けることで離隔しており、また口からの呼気を前方に飛散させずに、装着者の顎部分に沿って下方に案内させるようにしている。また、この口上覆い片4は図示のように平坦な形状となるようにしても、両脇部分を部分的にでも前方に出張るような湾曲状にして呼気が後方に案内排出されるようにしてもよい。
【0031】
図8、
図9に示すように、口上覆い片4は、正面から見て下部に至るに伴い次第に広幅となる台形状として形成することができる。この口上覆い片4の幅員は、顔面における口の幅員に比し大きくしてあり、装着者から放散される呼気が装着者の前方に向かって排出されずに、装着者側の前下方、更には左右側後方に向かって排出案内させるようにしている。
【0032】
一方、前記マスク下部体10は、上部中央に顎部に当接することで下顎部の開閉に伴いマスク下部体10自体を上下動させる顎当接部11と、顎の左右部分を覆う顎覆い部13と、マスク上部体1の頬覆い部3に上下方向に沿ってスライド自在にして重ね合わせられるスライド支持部15とを備える。
【0033】
顎当接部11は、顎部前面である口下部分に当接し、口の開閉すなわち下顎部分の上下動に追随することで、口を開けた状態時では、マスク上部体1に対してマスク下部体10自体が下方にスライド移動するようにしている。
【0034】
この顎当接部11は、口下部分に当接するも、装着者をして口下部分における違和感がないようしておくことが望ましいと共に、顎の動きを阻害しないようにしておく。例えば
図7に示すように、この顎当接部11の内側面に軟弾性素材例えば発泡ポリエチレン等の樹脂材を素材とするクッション材12を介装することで顎部分の動きに速やかに追随し、弾性紐材16による牽引圧迫感を和らげることができる。
【0035】
顎覆い部13は、顔面における顎の左右部分及び顎下方をも覆うようにしてあり、この顎覆い部13の側部に弾性紐材16を連繋してある。弾性紐材16を耳に掛けることによってマスク上部体1、マスク下部体10を共に顔面に装着状態で支持させる。そして、この弾性紐材16の弾性的伸縮作用で、口の開放によってマスク下部体10が下方に移動した後に口が閉鎖されたときにはマスク下部体10を上方に持ち上げ、原位置に復帰させるようにしている。
【0036】
また、
図7に示すように、この顎覆い部13の下部における中央部の両側に、後方に向かって顎覆い部13自体の両側部を折曲させる折曲線14を設けておくことで、顎覆い部13の両側部分を顎の左右部分にしっくりと当接させることができる。
【0037】
スライド支持部15は、頬部分の左右に位置するよう、顎覆い部13の左右部分における上部から連続形成されていて、マスク上部体1における、左右の頬部分に位置する前記頬覆い部3の裏側で重ね合わされている。そして、スライド手段20によって、頬覆い部3、スライド支持部15両者の重ね合わせ状態を維持し、また重ね合わせ状態の儘でスライド支持部15をスライドさせるようにしている。
【0038】
このスライド手段20は、頬覆い部3あるいはスライド支持部15のいずれか一方に、上下方向に沿って穿設されたスライド長孔21と、このスライド長孔21に挿通されてスライド支持部15あるいは頬覆い部3のいずれかに止着される連結体22とから成る(
図6参照)。スライド長孔21の長さは、マスク下部体10がマスク上部体1に対してスライドする長さ、すなわち喫食時に開閉される口大きさに比し小さくない長さとしてある。また、連結体22は、例えば頭部径がスライド長孔21の幅員に比しやや大きい扁平な雌雄嵌合式のボタン構造としてあるも、スライド連結構成はこれに限定されない。
【0039】
図示にあっては、スライド長孔21を頬覆い部3に開穿してあることで、このスライド長孔21の側縁に沿って、頬覆い部3には例えば断面で細溝形状の補強部を形成することができ(図示せず)、この補強部によってスライド長孔21によって頬覆い部3自体が脆弱となるのを防止することもできる。
【0040】
また、
図10、
図11においては、弾性紐材16において、マスク上部体1、マスク下部体10それぞれとの連結構成につき、例えば貫挿後にループ状として縛結するように固定する場合の他例を示している。この弾性紐材16は、弾性伸縮性を有する中空状に形成して成り、天然ゴム、合成ゴム等の弾性素材からなる伸縮性糸と、ナイロン、ポリエステル等の非弾性素材からなる非伸縮性糸を、適宜の本数比で編み込んだ中空の編紐として形成され、伸縮性を有するものである。一般的には、例えば組紐やいわゆるリリアン編紐として提供されている。
【0041】
弾性紐材16が中空状であることで、
図11に示すように、例えば鋭角状の先端を備えて、幅方向では弾性的に伸縮するほぼ菱形状を呈する紐握持部31を備えた紐通し具30を使用する。この紐通し具30における紐握持部31の先端を弾性紐材16の中空部に刺し込み、その先端を弾性紐材16から外出させる(
図11(a)参照)。外出させた紐握持部31内に、折り返してループ状とする弾性紐材16自体の末端部16Aを挿入する(
図11(b)参照)。次いで、紐通し具30を後退させて末端部16Aを弾性紐材16の中空部内に引き込み、中空部内に止めるか、あるいは弾性紐材が16から外出させるかして、末端部16Aを紐握持部31から解放し、紐通し具30自体は弾性紐材16から抜去すればよい(
図11(c)参照)。
【0042】
なお、弾性紐材16の末端部16Aを折返しのループ状とするとき、例えばマスク上部体1あるいはマスク下部体10における前記透孔に挿通させた末端部16Aとすることで、マスク上部体1、マスク下部体10相互を弾性的に伸縮可能な状態で連繋するのである。
【0043】
弾性紐材16の中空部に挿入された末端部16Aは、弾性紐材16自体が伸張していることで、周囲から圧迫されて末端部16Aが弾性紐材16自体から抜去されることはなく、挿通連結状態は維持される。
【0044】
次にこれの使用の一例を説明すると、マスク上部体1、マスク下部体10をスライド手段20によってスライド自在にしてある状態で、マスク上部体1の鼻覆い部2を鼻部分に、マスク下部体10の顎当接部11を口下の顎部分にそれぞれあてがい、弾性紐材16を耳に掛けることで、顔面の下部に装着する。
【0045】
こうすることで、例えば会食時であっても、会話時における口の開閉に伴ってマスク下部体10が上下動しても、マスク上部体1における口上覆い片4によって口からの呼気は装着者自身側に排出され、相手方には届かない。
【0046】
また、喫食時では、飲用するときのグラスS等は口上覆い片4の下方の開口部から口元に持ち来すことができ、飲食物等は食事具によって同様に口上覆い片4の下方の開口部を経て口元に運ぶことができ、本発明マスクを外す必要は全くない。このように口を開けるときでも口上覆い片4によって口の前方が覆われていることによって喫食時でも会話時でも装着者の呼気等を装着者の前方に飛散させることがない。
【符号の説明】
【0047】
S…グラス(食器)
1…マスク上部体
2…鼻覆い部
3…頬覆い部
4…口上覆い片
10…マスク下部体
11…顎当接部
12…クッション材
13…顎覆い部
14…折曲線
15…スライド支持部
16…弾性紐材
16A…末端部
17…紐材固定具
20…スライド手段
21…スライド長孔
22…連結体
30…紐通し具
31…紐握持部
【手続補正書】
【提出日】2022-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面における鼻部分、左右の両頬部分、口上部分を覆っているマスク上部体と、顎、及び顎部分に当接した状態で下顎の左右部分を覆っているマスク下部体とを、マスク下部体がマスク上部体に対してスライド手段によって上下にスライド自在となして連結すると共に、マスク上部体、マスク下部体相互間を、耳に掛ける弾性紐材によって連繋して成り、口の開閉によるマスク下部体の下方への移動時では、マスク上部体によって口上前方が覆われているようにしてあることを特徴とする飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項2】
マスク上部体、マスク下部体それぞれは透視可能な素材によって構成してある請求項1に記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項3】
マスク上部体は、上部中央に鼻部分を覆うよう膨出された鼻覆い部と、左右の頬部分を覆う頬覆い部と、口部分に被さり、口上部分の前方が開放されるよう口上部分から口下部分に至るに伴い次第に前方に張り出し状に傾斜した口上覆い片とから成る請求項1または2に記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項4】
鼻覆い部は、上縁が鼻上部の外面に密着するようにしてあって、下部は鼻孔との間に空隙が存するようにしてある請求項3に記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項5】
口上覆い片は、鼻下部分からマスク上部体の前方に向かって下開き傾斜状に折曲拡開した状態で口部分の前方に位置している請求項3または4に記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項6】
口上覆い片は、正面から見て下部に至るに伴い次第に広幅となる台形状を呈している請求項3乃至5のいずれかに記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項7】
マスク下部体は、上部中央に顎部に当接することで下顎部の開閉に伴いマスク下部体自体を上下動させる顎当接部と、顎の左右部分を覆う顎覆い部と、マスク上部体の頬覆い部に上下方向に沿ってスライド自在にして重ね合わせられるスライド支持部とから成る請求項1乃至6のいずれかに記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項8】
スライド支持部は、顎覆い部の左右部分における上部から連続形成されていて、マスク上部体における頬覆い部の裏側で重ね合わされている請求項7に記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項9】
スライド手段は、頬覆い部あるいはスライド支持部のいずれか一方に、上下方向に沿って穿設されたスライド長孔と、このスライド長孔に挿通されてスライド支持部あるいは頬覆い部のいずれかに止着される連結体とから成る請求項2または7に記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項10】
顎当接部の内側面には、軟弾性素材製のクッション材を介装してある請求項7乃至9のいずれかに記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項11】
弾性紐材は、マスク上部体の側部と、マスク下部体の側部との間に掛け渡されている請求項1乃至10のいずれかに記載の飲食可能な開閉可動式マスク。
【請求項12】
弾性紐材は、弾性伸縮性を有する中空状で、マスク上部体、マスク下部体との連結部位では、マスク上部体、マスク下部体に貫挿後の端末部を弾性紐材自体の側部から中空部内に強制挿入して止着して成る請求項1乃至11のいずれかに記載の飲食可能な開閉可動式マスク。