IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-制御装置および制御方法 図1
  • 特開-制御装置および制御方法 図2
  • 特開-制御装置および制御方法 図3
  • 特開-制御装置および制御方法 図4
  • 特開-制御装置および制御方法 図5
  • 特開-制御装置および制御方法 図6
  • 特開-制御装置および制御方法 図7
  • 特開-制御装置および制御方法 図8
  • 特開-制御装置および制御方法 図9
  • 特開-制御装置および制御方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162193
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/80 20180101AFI20221017BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20221017BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20221017BHJP
   G08B 21/12 20060101ALI20221017BHJP
   B60H 1/24 20060101ALI20221017BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221017BHJP
【FI】
G16H50/80
G08B25/04 K
G08B25/00 510M
G08B21/12
B60H1/24 661A
B60H1/24 661Z
G06T7/00 510F
G06T7/00 660A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066884
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】舘 陽介
【テーマコード(参考)】
3L211
5B043
5C086
5C087
5L096
5L099
【Fターム(参考)】
3L211BA12
3L211EA02
3L211EA03
5B043AA09
5B043BA04
5B043DA05
5B043EA02
5B043FA10
5B043GA01
5C086AA22
5C086BA07
5C086BA22
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA33
5C087DD14
5C087EE10
5C087EE18
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG10
5C087GG20
5C087GG59
5C087GG66
5L096BA02
5L096BA18
5L096CA04
5L096FA02
5L096JA11
5L096JA22
5L099AA21
(57)【要約】
【課題】不必要に騒音を発生させることなく、かつ、不必要に電力を消費することなく換気装置を利用して効果的に車内における感染症の飛沫感染のリスクを低減する「制御装置および制御方法」を提供する。
【解決手段】制御装置1は、車内の状況が、車内における飛沫感染のリスクが高い或いは高まる状況である高リスク状況であるか否かを判別する判別部20と、判別部20により高リスク状況であると判定された場合、換気処理が所定レベル以上で実行されるように車両用空気調和装置6を制御する制御部21とを備え、高リスク状況と判定したときに換気処理が所定レベル以上で実行されるようにしている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車内を換気する換気処理を実行する機能を有する換気装置を制御可能な制御装置であって、
車内の状況が、車内における飛沫感染のリスクが高い或いは高まる状況である高リスク状況であるか否かを判別する判別部と、
前記判別部により前記高リスク状況であると判定された場合、前記換気処理が所定レベル以上で実行されるように前記換気装置を制御する制御部とを備える
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記判別部は、車内を撮影するカメラから撮影画像を入力し、入力した撮影画像を分析し、車両に搭乗する頻度が一定以下の人物が車内に存在する場合に、前記高リスク状況であると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記判別部は、
車両に搭乗したことのある人物について、前記カメラの撮影画像に基づく顔画像を登録顔画像として記憶部に記憶させると共に、前記登録顔画像と対応付けて車両への搭乗の履歴を示す履歴情報を前記記憶部に記憶させ、
ある人物が車両に新たに乗車したときに、前記カメラから入力した撮影画像に基づいて、その人物の顔画像を認識顔画像として認識すると共に、認識した前記認識顔画像が示す顔が、前記記憶部に記憶された何れかの前記登録顔画像が示す顔と同一人物の顔であるか否かを判別し、
前記認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る前記登録顔画像が1つも存在しない場合、前記高リスク状況であると判定し、
前記認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る前記登録顔画像が存在する場合、前記認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る前記登録顔画像と対応付けられた前記履歴情報に基づいて、前記履歴情報に対応する人物が車両に搭乗する頻度が一定以下であるか否かを判別し、一定以下である場合、前記高リスク状況であると判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記判別部は、
ユーザから顔画像の入力を受け付ける機能を有し、ユーザから顔画像が入力された場合、入力された顔画像を登録顔画像として記憶部に記憶させ、
ある人物が車両に新たに乗車したときに、車内を撮影するカメラから入力した撮影画像に基づいて、その人物の顔画像を認識顔画像として認識すると共に、認識した前記認識顔画像が示す顔が、前記記憶部に記憶された何れかの前記登録顔画像が示す顔と同一人物の顔であるか否かを判別し、前記認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る前記登録顔画像が1つも存在しない場合、前記高リスク状況であると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記判別部は、車内を撮影するカメラから撮影画像を入力し、入力した撮影画像を分析し、マスクを正常な態様で着用していない乗員が車内に存在する場合に、前記高リスク状況であることを検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記判別部は、車内を撮影するカメラから撮影画像を入力し、入力した撮影画像を分析し、マスクを正常な態様で着用していない乗員が車内で会話している場合、食事をしている場合または電話をしている場合に、前記高リスク状況であることを検出する
ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記判別部は、車内の音声を収音するマイクが収音した音声、または、前記マイクが収音した音声と車内を撮影するカメラから入力した撮影画像とに基づいて、乗員が車内で会話しているか否かを判別し、乗員が車内で会話している場合に前記高リスク状況であることを検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記判別部が前記高リスク状況であると判定する要因となった人物が車両を降車したときに、前記高リスク状況であったため前記換気装置を制御したことを乗員に通知する
ことを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、車両から全ての乗員が降車した後、少なくとも一定期間、前記換気装置に前記換気処理を実行させる
ことを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
車両の車内を換気する換気処理を実行する機能を有する換気装置を制御可能な制御装置による制御方法であって、
前記制御装置の判別部が、車内における飛沫感染のリスクが高い或いは高まる状況である高リスク状況であるか否かを判定するステップと、
前記制御装置の制御部が、前記判別部により前記高リスク状況であると判定された場合、前記換気処理が所定レベル以上で実行されるように前記換気装置を制御するステップとを含む
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関し、特に車内を換気する換気処理を実行する機能を有する換気装置を制御可能な制御装置、および、この制御装置による制御方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
車両には多くの場合、空気調和装置等の車内を換気する換気処理を実行する機能を有する装置(以下「換気装置」という)が設けられている。例えば特許文献1には、車両に設けられ、車内(車室内)に外気を導入し換気する機能を有する空気調和装置(エアコン10)が記載されている。また近年、車内において感染症に飛沫感染する事例が報告されており、車内における飛沫感染の防止が注目を浴びている。そして車内を換気することが、車内における感染症の飛沫感染のリスクを低減するのに有効であることが分かっており、換気装置は、当該リスクを低減するために用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-087745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで車内における感染症の飛沫感染のリスクを効果的に低減するためには車内をハイペースで換気することが有効であり、車内をハイペースで換気するためには、換気装置に換気処理を高いレベルで行わせることが有効である。これを踏まえ、車内における感染症の飛沫感染のリスクの低減のために換気装置を利用するに際して、車内における感染症の飛沫感染のリスクの低減を最優先し、換気装置に常に高いレベルで換気処理を行わせることが考えられる。しかしこの場合、常に高いレベルで換気処理が行われることに起因して常に騒音が発生していまい、更に常に高いレベルで換気処理が行われることに起因して消費電力が多大になるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、不必要に騒音を発生させることなく、かつ、不必要に電力を消費することなく換気装置を利用して効果的に車内における感染症の飛沫感染のリスクを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために本発明は、車内における飛沫感染のリスクが高まい或いは高まる状況である高リスク状況であるか否かを判別する機能を有し、高リスク状況である場合に換気処理が所定レベル以上で実行されるように換気装置を制御するようにしている。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した本発明によれば、車内が飛沫感染のリスクが高い或いは高まる状況である高リスク状況となったときに、そのことが自動で判定されると共に、自動で換気処理が所定レベル以上で実行される。このため、車内における飛沫感染のリスクが高い或いは高まる状況の場合にのみ、高いレベルで換気処理が実行されることになり、車内における飛沫感染のリスクが低い状況であるにもかかわらず高いレベル換気処理が実行されて不必要に騒音が発生したり、不必要に電力が消費されたりすることを防止できる。また車内における飛沫感染のリスクが高い或いは高まる状況のときには高いレベルで換気処理が実行されることになり、効果的に車内における感染症の飛沫感染のリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る制御システムが適用された車両の様子を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
図3】高リスク状況であると判定される期間を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図10】本発明の一実施形態に係る制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る制御装置1を含む制御システム2が適用された車両3の内部を説明に適した態様で単純化し、模式的に示す図である。図1で示すように、制御システム2は本実施形態に係る制御装置1、前部座席カメラ4(特許請求の範囲の「カメラ」に相当)、後部座席カメラ5(特許請求の範囲の「カメラ」に相当)、車両用空気調和装置6(特許請求の範囲の「換気装置」に相当)、物理インタフェイス7およびタッチスクリーン8を含んで構成されている。図1では、図面の都合上、各部材を単純な矩形のブロックによって表している。
【0010】
図1で示すように本実施形態に係る制御装置1は、車両3のダッシュボード9の内部に設置される。ただし制御装置1が設けられる場所はどこでもよい。
【0011】
前部座席カメラ4は、前部座席10に着座する乗員(運転手または助手席に着座する乗員)の顔を撮影可能な位置に設けられる。本実施形態では前部座席カメラ4は、前部座席10付近の天井に設けられる。後部座席カメラ5は、後部座席11に着座する乗員の顔を撮影可能な位置に設けられる。本実施形態では後部座席カメラ5は、後部座席11付近の天井に設けられる。前部座席カメラ4は、車両3の前部座席10に対応する領域を所定の周期で撮影し、撮影画像(撮影結果に基づいて生成される画像データ)を制御装置1に出力する。同様に後部座席カメラ5は、車両の後部座席11に対応する領域を所定の周期で撮影し、撮影画像を制御装置1に出力する。
【0012】
車両用空気調和装置6は、いわゆるカーエアコンであり、車両3の車内の空気を調和する機能を有する。特に本実施形態に係る車両用空気調和装置6は、外気を車両3の車内へ導入する処理を行う外気導入機能を有する。近年、多くのカーエアコンについて、このような外気導入機能が実装されている。周知の通り、車両3の車内に外気を導入することによって、車両3の車内の空気が換気される。以下、車両用空気調和装置6が外気導入機能に基づいて行う、外気を車両3の車内に導入する処理(つまり車両3の車内を換気する処理)を「換気処理」という。
【0013】
図1で示すように車両3のインストルメンタルパネル12には、車両用空気調和装置6の電源のオン/オフおよび空気調和に関する各種設定を行うための物理インタフェイス7が設けられている。この物理インタフェイス7には、換気処理の実行の開始/停止を指示するスイッチ、および、換気処理のレベルを設定するスイッチが設けられている。換気処理のレベルとは、車両用空気調和装置6により単位時間あたりに導入される外気の量の大きさの度合いのことを意味し、レベルが大きいほど、単位時間あたりに導入される外気の量が大きい。以下、換気処理のレベルのことを「換気処理レベル」という。なお物理インタフェイス7に代えて、タッチスクリーン8にユーザインタフェイス(画面)がユーザの指示に応じて表示され、このユーザインタフェイスを介して車両用空気調和装置6の各種設定を実行可能な構成でもよい。
【0014】
図1で示すように車両3のインストルメンタルパネル12には、タッチスクリーン8が設けられている。タッチスクリーン8は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示パネルと、表示パネルに重ねて配置されたタッチパネルとを備え、各種画面を表示する機能、および、ユーザによるタッチ操作を受け付ける機能を有する。
【0015】
図2は、本実施形態に係る制御装置1の機能構成例を示すブロック図である。図2で示すように本実施形態に係る制御装置1は機能構成として、判別部20および制御部21を備えている。上記各機能ブロック20、21は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック20、21は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。また制御装置1は記憶手段として、記憶部22を備えている。
【0016】
ところで飛沫感染が起こりうる感染症について、車内において感染症に飛沫感染する事例が報告されており、車内における飛沫感染を防止することは非常に重要である。そして車内における感染症の飛沫感染のリスクを低減するのには、車内を換気することが有効であることが判明している。これを踏まえ、本実施形態に係る車両用空気調和装置6を、当該リスクを低減するために用いることが可能である。
【0017】
そして車内における感染症の飛沫感染のリスクを効果的に低減するためには車内をハイペースで換気することが有効であり、車内をハイペースで換気するためには、車両用空気調和装置6に換気処理を高いレベルで行わせることが有効である。これを踏まえ、車内における感染症の飛沫感染のリスクの低減のために車両用空気調和装置6を利用するに際して、車内における感染症の飛沫感染のリスクの低減を最優先し、車両用空気調和装置6に常に高いレベルで換気処理を行わせることが考えられる。しかしこの場合、常に高いレベルで換気処理が行われることに起因して常に騒音が発生していまい、更に常に高いレベルで換気処理が行われることに起因して消費電力が多大になるという問題がある。
【0018】
この問題を解消するため、車両3の乗員が、感染症の飛沫感染のリスクが高まるような状況となったかどうかを常に監視し、このような状況となったと認識した場合に物理インタフェイス7を操作して換気処理レベルを上げ、また、このような状況が解消したと認識した場合に物理インタフェイス7を操作して換気処理レベルを下げることが考えられる。しかしながらこの場合、乗員は、常に状況を監視し、更に都度、物理インタフェイス7を操作するという作業を行わなければならず、乗員にとって負担が大きい。
【0019】
以上の事情を踏まえ、本実施形態に係る制御装置1は以下の処理を実行する。
【0020】
判別部20は、車内の状況が車内における飛沫感染のリスクが高い或いは高まる状況である高リスク状況であるか否かを判別する。以下、判別部20の処理について詳述する。
【0021】
判別部20は制御装置1の電源がオンされている間、以下の処理を実行する。すなわち判別部20は、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から継続して撮影画像を入力する。判別部20は、各カメラから入力する撮影画像を分析し、車両3の車内に新たに一人以上の人物が搭乗したかどうかを監視する。車両3の車内に新たに一人以上の人物が搭乗したことを検出した場合、判別部20は、新たに乗車した各人物について、撮影画像に含まれる顔画像を認識する。ある人物の顔画像とは、撮影画像において、その人物の顔の領域を包含する矩形の領域の画像を意味する。車両3の車内に新たに一人以上の人物が乗車したか否かの監視、および、新たに乗車した各人物の顔画像の認識は、既存の画像処理技術(既存の顔認識技術、人体姿勢推定技術、その他の画像認識技術を含む)を用いて適切に行われる。
【0022】
以上の処理が行われる結果、例えば車両3によるドライブに際し、3人の人物が車両3に乗車した場合、これら3人の人物の顔画像が判別部20により認識される。また例えば一人の運転手が車両3を運転している途中で、新たに一人の人物が車両3に乗車した場合、この新たに乗車した一人の人物の顔画像が判別部20により認識される。
【0023】
判別部20は、車両3の車内に新たに一人以上の人物が搭乗したことを検出し、各人物の顔画像を認識した後、以下の処理を実行する。以下では、判別部20が、一人の人物が乗車したことを検出したものとして、判別部20の処理について説明する。また、認識した顔画像を「認識顔画像」といい、認識した顔画像に対応する人物を「検出人物」という。
【0024】
判別部20は、記憶部22に記憶された顔画像テーブルを参照する。顔画像テーブルは、人物ごとにレコードを有するテーブルである。顔画像テーブルの一の人物に対応するレコードは、当該一の人物を識別する識別情報と、当該一の人物の顔画像と、当該一の人物についての最終乗車日時情報(特許請求の範囲の「履歴情報」に相当)とを含んでいる。以下、顔画像テーブルに登録された顔画像を「登録顔画像」という。顔画像テーブルのレコードがどのようにして生成されるか、および、顔画像テーブルの意義は後に明らかとなる。
【0025】
顔画像テーブルを参照した後、判別部20は、認識顔画像が示す顔が、顔画像テーブルに登録された何れかの登録顔画像が示す顔と同一人物の顔であるか否かを判別する。認識顔画像が示す顔と、登録顔画像が示す顔とが同一人物の顔であるか否かの判別は、既存の顔認識技術を用いて適切に行われる。一例として判別部20は、認識顔画像が示す顔、および、登録顔画像が示す顔の双方について、ローカルバイナリパターンを用いた特徴量を導出し、NN(nearest neighbor method)法、その他の手法により各顔が一定以上類似しているかどうかを判別し、一定以上類似している場合に、各顔が同一人物の顔であると判定する。
【0026】
ここで顔画像テーブルに登録された登録顔画像の中に、認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像が1つも存在しない場合というのは、検出人物が車両3に初めて乗車した人物であったということである。この場合、検出人物は、車両3に搭乗する頻度が低い人物であるとみなすことができる。これを踏まえ顔画像テーブルに登録された登録顔画像の中に、認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像が1つも存在しない場合、判別部20は、検出人物が、車両3に搭乗する頻度が一定よりも低いことを示す「注目乗車人物」であると判定する。
【0027】
更に判別部20は、顔画像テーブルに登録された登録顔画像の中に、認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像が1つも存在しない場合、顔画像テーブルに1件のレコードを登録する。具体的には判別部20は、一意な値の識別情報を生成し、更に現時点の日時(日付+時刻)を示す最終日時乗車情報を生成する。次いで判別部20は、生成した識別情報と、認識顔画像と、生成した最終日時乗車情報とを含む1件のレコードを顔画像テーブルに登録する。
【0028】
以上の通り、顔画像テーブルに登録された登録顔画像の中に、認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像が1つも存在しない場合、換言すれば、検出人物が車両3に初めて登場する人物の場合、判別部20は、検出人物を注目乗車人物と判定すると共に、顔画像テーブルに検出人物についてのレコードを新たに登録する。
【0029】
一方、顔画像テーブルに登録された登録顔画像の中に、認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像が存在する場合、判別部20は、同一人物の顔に係る登録顔画像を含むレコードの最終乗車日時情報を参照し、最終乗車日時情報が示す日時(日付+時刻)を認識する。ある一の人物についての最終乗車日時情報は、当該一の人物が最後に車両3に乗車したときの日時を示す情報である。なお検出誤差により、認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像が複数、発見される場合もあり得るが、説明の明確化のため、本実施形態では、認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像として、1つの画像が検出されるものとする。
【0030】
最終乗車日時情報が示す日時を認識した後、判別部20は、最終乗車日時情報が示す日時と現時点の日時とを比較し、最終乗車日時情報が示す日時から現時点の日時に至るまでの時間の長さが、予め定められた時間の長さよりも長いか否かを判別する。最終乗車日時情報が示す日時から現時点の日時に至るまでの時間の長さが予め定められた時間の長さよりも長いということは、検出人物が、最後に車両3に乗車したタイミングから、今回、車両3に乗車したタイミングまでに、予め定められた時間の長さよりも長いタイムラグがあったということである。このような場合、検出人物は、車両3に搭乗する頻度が一定以下の人物であるとみなすことができる。
【0031】
これを踏まえ最終乗車日時情報が示す日時から現時点の日時に至るまでの時間の長さが、予め定められた時間の長さよりも長い場合、判別部20は、検出人物が注目乗車人物であると判定する。更に判別部20は、最終乗車日時情報の値を、現時点の日時を示す値へと更新する。一方、最終乗車日時情報が示す日時から現時点の日時に至るまでの時間の長さが、予め定められた時間の長さよりも短い場合、判別部20は、検出人物が注目乗車人物ではないと判定する。更に判別部20は、最終乗車日時情報の値を、現時点の日時を示す値へと更新する。
【0032】
なお、最終乗車日時情報が示す日時から現時点の日時に至るまでの時間の長さが、予め定められた時間の長さよりも長いか否かを判別部20が判別する処理は、特許請求の範囲の「履歴情報(最終乗車日時情報が履歴情報)に基づいて、履歴情報に対応する人物が車両3に搭乗する頻度が一定以下であるか否かを判別する処理」に相当する。
【0033】
以上のようにして判別部20は、新たに人物が乗車する度に、新たに乗車した人物のそれぞれについて注目乗車人物であるか否かを判別する。そして判別部20は、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から入力する撮影画像を継続して分析し、注目乗車人物が一人でも車両3に搭乗している期間の間、車内の状況が高リスク状況であると判定する。従って例えば、一人以上の注目乗車人物が搭乗している状態のときは判別部20は、高リスク状況であると判定する一方、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から入力する撮影画像に基づいて、全ての注目乗車人物が車両3から降車したことを検出した場合、基本的には高リスク状況でないと判定する(ただし、後述するように車内に注目乗車人物が一人もいない状況においても、判別部20が高リスク状況と判定するケースはある)。
【0034】
ここで車両3に搭乗する頻度が高い人物(つまり車両3に普段から乗っている人物)にとって、車両3に搭乗する頻度が低い人物(つまり車両3に普段乗らない人物)がどの程度、普段から感染症への対策を行っているかどうかが未知であることがあり、少なくとも、その人物からの飛沫感染を警戒した方がよい状況であると言える。すなわち車両3に搭乗する頻度が低い人物が車両3に搭乗している状況は、このような人物が搭乗していない状況と比較して、車内における飛沫感染のリスクが高まっている状況であると言える。以上のことを踏まえ、判別部20は、車両3に搭乗する頻度が一定以下である注目乗車人物が一人でも車内に存在する場合、車内の状況が高リスク状況と判定する。
【0035】
なお「予め定められた時間の長さ」は、感染症の飛沫感染のリスクという点から検出人物が搭乗する頻度が高いか低いかを判定する基準とするとの観点の下、事前のシミュレーションまたはテストの結果に基づいて適切に定められる。
【0036】
なお顔画像テーブルの1件のレコードに、1つの顔画像ではなく、複数の顔画像が登録され、判別部20が、認識顔画像と登録顔画像との同一性の有無の判別に際し、複数の登録顔画像を用いる構成でもよい。
【0037】
また顔画像テーブルの1件のレコードには、1つの登録顔画像が含まれている構成であったが、登録顔画像に代えて或いは登録顔画像と共に、顔の特徴を示す情報、その他の顔認識/顔識別に供する情報が登録される構成でもよい。この場合、判別部20は、認識顔画像と登録顔画像との比較に際し、登録顔画像に代えて或いは登録顔画像と共に、顔認識/顔識別に供する情報を用いて比較する。この場合において、判別部20が、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から入力した撮影画像、その他の情報に基づいて、顔認識/顔識別に供する情報を随時、更新する構成でもよい。
【0038】
また判別部20が、最後に車両3に乗車したタイミングから、今回、車両3に乗車したタイミングに至るまでのタイムラグによって、検出人物が注目乗車人物であるか否かを判別するのではなく、以下の方法で検出人物が注目乗車人物であるか否かを判別する構成でもよい。すなわち判別部20は、各人物について、車両3に乗車した日時を累積的に記録しておく。そして判別部20は、検出人物が注目乗車人物であるか否かの判定に際し、検出人物について記録した情報に基づいて統計学的手法により、検出人物が一定期間あたりに車両3に乗車する回数を導出する。そして判別部20は、一定期間あたりに乗車する回数が一定以下の場合に、検出人物が注目乗車人物であると判別する。以上の構成でもよい。
【0039】
更に以下の構成でもよい。すなわち判別部20は、各人物について、車両3に乗車した累積時間を記録しておく。そして判別部20は、検出人物が注目乗車人物であるか否かの判定に際し、検出人物について記録した情報に基づいて統計学的手法により、検出人物が一定期間あたりに車両3に搭乗する時間の長さを導出する。そして判別部20は、一定期間あたりに搭乗する時間の長さが一定以下の場合に、検出人物が注目乗車人物であると判別する。以上の構成でもよい。
【0040】
以上の通り、注目乗車人物が一人でも車両3に搭乗している期間の間、車内の状況が高リスク状況であると判定するが、注目乗車人物が一人も車両3に搭乗していない期間の間、判別部20は更に以下の処理を実行する。
【0041】
すなわち判別部20は、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から入力する撮影画像を分析し、車両3の車内にマスクを正常な態様で着用していない人物がいるか否かを判別する。判別部20は、この判別を既存の顔認識技術、その他の画像処理技術を用いて実行する。マスクを正常な態様で着用していないとは、乗員がマスクを着用していない状態は勿論のこと、乗員がマスクを着用している場合であっても、口(口+鼻孔としてもよい)が覆われている状態となっていない状態のことを意味する。以下、マスクを正常な態様で着用していない乗員ことを、「要注意人物」という。
【0042】
判別部20は、以上の判別を継続して行った上で、要注意人物が一人でも車内にいる期間は、高リスク状況であると判定する。なお車内にマスクを正常な態様で着用していない乗員が一人でもいる場合、当然に車内における飛沫感染のリスクが高まることになる。例えば、車両3に3人の乗員が搭乗しており、3人の乗員の全てが正常にマスクを着用している状態であったとする。この状態において、ある一人が、口が露出する程度にマスクをずらしたとする。この場合、判別部20は、その一人のマスクがずらされている期間の間、高リスク状況であると判定する。
【0043】
図3は、判別部20により高リスク状況であると判定される期間を説明するための図である。図3の(A)は、時間の経過を示す軸上で、判別部20により注目乗車人物が一人でも車両3に搭乗していると判定されている期間を示している。図3の(B)は、時間の経過を示す軸上で、判別部20により要注意人物が一人でも車両3に存在していると判定されている期間を示している。
【0044】
図3においてタイミングT0からタイミングT1までの期間は、判別部20により注目乗車人物が車両3に搭乗していると判定されている。従ってタイミングT0からタイミングT1までの期間は、判別部20により高リスク状況であると判定される。タイミングT1からタイミングT2までの期間は、判別部20により注目乗車人物が車両3に搭乗していないと判定されている。さらにタイミングT1からタイミングT2までの期間は、判別部20により要注意人物が車両3にいないと判定されている。従ってタイミングT1からタイミングT2までの期間は、判別部20により高リスク状況でないと判定される。
【0045】
タイミングT2からタイミングT3までの期間は、判別部20により注目乗車人物が車両3に搭乗していないと判定されている。さらにタイミングT2からタイミングT3までの期間は、判別部20により要注意人物が車両3にいると判定されている。従ってタイミングT2からタイミングT3までの期間は、判別部20により高リスク状況であると判定される。タイミングT3からタイミングT4までの期間は、判別部20により注目乗車人物が車両3に搭乗していないと判定されている。さらにタイミングT3からタイミングT4までの期間は、判別部20により要注意人物が車両3にいないと判定されている。従ってタイミングT1からタイミングT2までの期間は、判別部20により高リスク状況でないと判定される。
【0046】
以上が判別部20の処理である。以下、注目乗車人物、および、判別部20によって1回でも要注意人物と判定された人物のことを総称して「リスク要因人物」という。
【0047】
制御部21は、判別部20により高リスク状況と判定されている期間、換気処理が所定レベル以上で実行されるように車両用空気調和装置6を制御する。制御装置1と車両用空気調和装置6の制御ユニットとは通信可能に接続されており、制御部21は、車両用空気調和装置6を制御する制御ユニットに制御コマンドを送信することによって車両用空気調和装置6を制御する。所定レベルとは、飛沫感染のリスクの低減に効果がある程度に高いレベルのことを意味する。この結果、一人以上の注目乗車人物が車両3に搭乗している期間の間、或いは、注目乗車人物が一人も車両3に搭乗していないものの、マスクを正常な態様で着用していい人物が車内にいる間、車両用空気調和装置6は所定レベル以上で換気処理を実行する。
【0048】
なお制御部21は、判別部20が高リスク状況であると判定している状態から、高リスク状況でないと判定している状態へと変化した場合、換気処理レベルを、所定レベル以上とする前のレベルへと戻す。ただし高リスク状況が解消したときに制御部21が実行する処理はこれに限られず、例えば、換気処理レベルを所定レベルよりも低い特定のレベルへと変化させてもよく、また、換気処理の実行を停止させるようにしてもよい。
【0049】
以上の通り、本実施形態に係る制御装置1は、車内における飛沫感染のリスクが高まい或いは高まる状況である高リスク状況であるか否かを判別する機能を有しており、高リスク状況である場合には、換気処理が所定レベル以上で実行されるように車両用空気調和装置6(換気装置)を制御する。
【0050】
この構成によれば、高リスク状況となったときに、そのことが自動で判定されると共に、自動で換気処理が所定レベル以上で実行される。このため、車内における飛沫感染のリスクが高い或いは高まる状況の場合にのみ、高いレベルで換気処理が実行されることになり、車内における飛沫感染のリスクが低い状況であるにもかかわらず高いレベルで換気処理が実行されて不必要に騒音が発生したり、不必要に電力が消費されたりすることを防止できる。また車内における飛沫感染のリスクが高い或いは高まる状況のときには高いレベルで換気処理が実行されることになり、効果的に車内における感染症の飛沫感染のリスクを低減できる。
【0051】
更に上記構成によれば、乗員は、「常に状況を監視し、都度、物理インタフェイス7を操作する」という作業を行う必要がなく、乗員の負担が小さい。更に上記構成によれば、ある一の乗員が原因で高リスク状況となった場合に、別の他の乗員が物理インタフェイス7を操作することなく、自動で高いレベルで換気処理が実行される。ここで、ある一の乗員が原因で高リスク状況となった場合に、別の他の乗員が物理インタフェイス7を操作して換気処理のレベルを上げた場合、当該一の乗員が気を悪くする可能性があるが、本実施形態によれば、当該一の乗員が気を悪くする可能性を排除できる。
【0052】
更に本実施形態では判別部20は、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5(車内を撮影するカメラ)から撮影画像を入力し、入力した撮影画像を分析し、車両3に搭乗する頻度が一定以下の人物が車内に存在する場合に、高リスク状況であると判定する。
【0053】
詳細には判別部20は、車両3に搭乗したことのある人物について、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5の撮影画像に基づく顔画像を登録顔画像として記憶部22に記憶させると共に、登録顔画像と対応付けて車両3への搭乗の履歴を示す最終乗車日時情報(履歴情報)を記憶部22に記憶させる。そして判別部20は、ある人物が車両3に新たに乗車したときに、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から入力した撮影画像に基づいて、その人物の顔画像を認識顔画像として認識すると共に、認識した認識顔画像が示す顔が、記憶部22に記憶された何れかの登録顔画像が示す顔と同一人物の顔であるか否かを判別する。認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像が1つも存在しない場合、判別部20は、車内の状況が高リスク状況であると判定する。一方、認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像が存在する場合、判別部20は、認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像と対応付けられた最終乗車日時情報(履歴情報)に基づいて、最終乗車日時情報(履歴情報)に対応する人物が車両3に搭乗する頻度が一定以下であるか否かを判別し、一定以下である場合、高リスク状況であると判定する。
【0054】
この構成によれば、車両3に搭乗する頻度が一定以下の人物が車両3に新たに乗車したときに、その人物が車両3に搭乗する頻度が一定以下であることを的確に検出できると共に、車両3に搭乗する頻度が一定以下の人物が車両3に搭乗しているときに的確に車内の状況が高リスク状況であると判定することができる。
【0055】
以上の処理に加え制御部21は、以下の処理を実行する。すなわち制御部21は、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から入力する撮影画像を継続して分析し、リスク要因人物(注目乗車人物または1回でも要注意人物と判定された人物)が車両3から降車し、かつ、リスク要因人物以外の人物が一人以上、乗車している状態となったか否かを監視する。その際、リスク要因人物が複数、存在する場合、制御部21は、全てのリスク要因人物が降車し、かつ、リスク要因人物以外の人物が一人以上、乗車している状態となったか否かを監視する。なお制御部21は、撮影画像からリスク要因人物の画像を特定するための情報を判別部20から取得する。
【0056】
全てのリスク要因人物が車両3から降車したことを検出すると制御部21は、高リスク状況であったため、車両用空気調和装置6に所定レベル以上で換気処理を実行させたこと、および、判別部20が高リスク状況であると判定した理由を示す情報をタッチスクリーン8の表示領域に表示する。例えば制御部21は、リスク要因人物が注目乗車人物の場合は、『普段、車両に搭乗しない人物が車両に搭乗していたため、カーエアコンによる換気を高レベルで行いました』との文言をタッチスクリーン8に表示する。また例えば制御部21は、リスク要因人物がマスクを正常な態様で着用していなかった者(上述したように、一時的にマスクを正常な態様で着用していなかった者を含む)の場合は、『マスクをしていない乗員を検知したため、カーエアコンによる換気を高レベルで行いました』との文言をタッチスクリーン8に表示する。
【0057】
以上の通り、本実施形態に係る制御部21は、判別部20が高リスク状況であると判定する要因となった人物が車両3を降車したときに、高リスク状況であったため車両用空気調和装置6(換気装置)を制御したことを乗員に通知する。
【0058】
この構成によれば、通知を受けた乗員は、飛沫感染のリスクが排除されるように動作が行われたことを認識でき、一定の安心感を得ることができる。
【0059】
更に以上の処理に加え制御部21は、以下の処理を実行する。すなわち制御部21は、車両3の全ての乗員が降車した状況となったか否かを判定する。全ての乗員が降車した状況とは、全ての乗員が短時間の間に降車する蓋然性が高い状況を含む。例えば制御部21は、アクセサリ電源がオン状態からオフ状態とされた場合に、車両3の全ての乗員が降車するものとみなし、車両3の全ての乗員が降車した状況となったと判定する。なお本実施形態では、アクセサリ電源およびエンジンスイッチがオフされた後も少なくとも、制御装置1および車両用空気調和装置6が後述する処理を実行する間は、所定のバックアップ電源から制御装置1、車両用空気調和装置6およびこれらに付随する装置に対して電力が供給される仕組みとなっているものとする。
【0060】
なお制御部21が車両3の全ての乗員が降車した状況となったか否かを判別する方法は、例示した方法に限られない。一例として、アクセサリ電源がオフとなった後も前部座席カメラ4および後部座席カメラ5(および付随する装置)には電力が供給される構成とされ、制御部21が前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から入力する撮影画像に基づいて、上記判別を行う構成でもよい。
【0061】
車両3の全ての乗員が降車した状況となったことを検出した場合、制御部21は、車両用空気調和装置6を制御して、少なくとも一定期間、車両用空気調和装置6に換気処理を実行させる。
【0062】
この構成によれば、車両3の全ての乗員が降車した状況となった後に、適切に車内の換気が行われる。このため、次回、車両3に人間が乗車したときに、その人間が車内における飛沫感染するリスクを効果的に低減することができる。なお車両3の全ての乗員が降車した後に、車両用空気調和装置6に換気処理を実行させる機能は、車両3が、不特定の者が乗車することが想定されているシェアカーやレンタカーである場合に特に有効である。
【0063】
次に、制御装置1による制御方法についてフローチャートを用いて説明する。図4は、制御装置1による主要な処理についての動作例を示すフローチャートである。図4で示すように、制御装置1の判別部20は、車内における飛沫感染のリスクが高い或いは高まる状況である高リスク状況であるか否かを判定する(ステップSA1)。次いで制御装置1の制御部21は、判別部20により高リスク状況であると判定された場合、換気処理が所定レベル以上で実行されるように車両用空気調和装置6を制御する(ステップSA2)。
【0064】
図5は、制御装置1の詳細な処理についての動作例を示すフローチャートである。特に図5は、検出人物が注目乗車人物であるか否かを判定するときの制御装置1の動作例を示している。図5で示すように、判別部20は、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から入力した撮影画像に基づいて、車両3の車内に新たに一人以上の人物が搭乗したかどうかを監視する(ステップSB1)。車両3の車内に新たに一人以上の人物が搭乗したことを検出した場合、判別部20は、新たに乗車した各人物について、撮影画像に含まれる顔画像を認識する(ステップSB2)。
【0065】
次いで判別部20は、記憶部22に記憶された顔画像テーブルを参照する(ステップSB3)。次いで判別部20は、認識顔画像が示す顔が、顔画像テーブルに登録された何れかの登録顔画像が示す顔と同一人物の顔であるか否かを判別する(ステップSB4)。認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像が1つも存在しない場合(ステップSB4:NO)、判別部20は、検出人物が、車両3に搭乗する頻度が一定よりも低いことを示す「注目乗車人物」であると判定する(ステップSB5)。次いで判別部20は、顔画像テーブルに1件のレコードを登録する(ステップSB6)。
【0066】
一方、顔画像テーブルに登録された登録顔画像の中に、認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像が存在する場合(ステップSB4:YES)、判別部20は、対応する最終乗車日時情報が示す日時と現時点の日時とを比較し、最終乗車日時情報が示す日時から現時点の日時に至るまでの時間の長さが、予め定められた時間の長さよりも長いか否かを判別する(ステップSB7)。予め定められた時間の長さよりも長い場合(ステップSB7:YES)、判別部20は、検出人物が注目乗車人物であると判定する(ステップSB8)。次いで判別部20は、最終乗車日時情報の値を、現時点の日時を示す値へと更新する(ステップSB9)。
【0067】
一方、予め定められた時間の長さよりも短い場合(ステップSB7:NO)、判別部20は、検出人物が注目乗車人物ではないと判定する(ステップSB10)。次いで判別部20は、最終乗車日時情報の値を、現時点の日時を示す値へと更新する(ステップSB11)。
【0068】
図6は、制御装置1の詳細な処理についての動作例を示すフローチャートである。特に図6は、検出人物が注目乗車人物であるか否かを判別した状態において、制御装置1が前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から撮影画像を入力する度に実行する処理を示している。
【0069】
図6で示すように制御装置1の判別部20は、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から撮影画像を入力する(ステップSC1)。次いで判別部20は、撮影画像を分析し、注目乗車人物が一人でも車両3に搭乗している状態か否かを判定する(ステップSC2)。注目乗車人物が一人でも車両3に搭乗している状態の場合、判別部20は、車内の状況が高リスク状況であると判定する(ステップSC3)。以上の処理が行われる結果、一人以上の注目乗車人物が搭乗している期間の間、判別部20により高リスク状況であると判定される。
【0070】
図7は、制御装置1の詳細な処理について動作例を示すフローチャートである。特に図7は、注目乗車人物が一人も車両3に搭乗していない期間に制御装置1が前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から撮影画像を入力する度に実行する処理を示している。
【0071】
図7で示すように判別部20は、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から撮影画像を入力する(ステップSD1)。次いで判別部20は、撮影画像を分析し、車両3の車内にマスクを正常な態様で着用していない人物がいるか否かを判別する(ステップSD2)。マスクを正常な態様で着用していない人物が一人でも存在している状態の場合、判別部20は、車内の状況が高リスク状況であると判定する(ステップSD3)。以上の処理が行われる結果、マスクを正常な態様で着用していない人物が一人でも存在している期間の間、判別部20により高リスク状況であると判定される。
【0072】
図8は、制御装置1の詳細な処理について動作例を示すフローチャートである。特に図8は、制御部21の処理を示している。図8で示すように制御部21は、判別部20により高リスク状況と判定されていない状態から、判定されている状態へと移行したか否かを監視する(ステップSE1)。移行した場合(ステップSE1:YES)、制御部21は、換気処理が所定レベル以上で実行されるように車両用空気調和装置6を制御する(ステップSE2)。次いで制御部21は、判別部20により高リスク状況と判定されている状態から、判定されていない状態へと移行したか否かを監視する(ステップSE3)。移行した場合(ステップSE3:YES)、制御部21は、換気処理レベルを元に戻す(ステップSE4)。ステップSE4の処理後、制御部21は、ステップSE1へ処理手順を戻す。
【0073】
図9は、制御装置1の詳細な処理について動作例を示すフローチャートである。特に図9は、制御部21の処理を示している。図9で示すように制御部21は、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から入力する撮影画像を継続して分析し、リスク要因人物が車両3から降車し、かつ、リスク要因人物以外の人物が一人以上、乗車している状態となったか否かを監視する(ステップSF1)。このような状態となった場合(ステップSF1:YES)、制御部21は、高リスク状況であったため、車両用空気調和装置6に所定レベル以上で換気処理を実行させたこと、および、判別部20が高リスク状況であると判定した理由を示す情報をタッチスクリーン8の表示領域に表示する(ステップSF2)。
【0074】
図10は、制御装置1の詳細な処理について動作例を示すフローチャートである。特に図10は、制御部21の処理を示している。制御部21は、車両3の全ての乗員が降車した状況となったか否かを監視する(ステップSG1)。車両3の全ての乗員が降車した状況となった場合(ステップSG1:YES)、制御部21は、車両用空気調和装置6を制御して、少なくとも一定期間、車両用空気調和装置6に換気処理を実行させる(ステップSG2)。
【0075】
<第1変形例>
次に第1変形例について説明する。第1変形例に係る判別部20は、ユーザから顔画像の入力を受け付ける機能を有する。なお車両3の所有者或いは管理者が、車両3に普段から搭乗している人物、或いは、車内における飛沫感染を考慮しなくてよい人物(例えば家族)の顔画像を入力することが想定されている。顔画像の入力は例えば、以下の方法で行われる。例えば顔画像が記憶されたUSBメモリ、その他の記憶媒体がユーザによって制御装置1に接続され、記憶媒体から制御装置1に顔写真がダウンロードされることによって行われる。また例えば、前部座席カメラ4または後部座席カメラ5により、対象となる人物の顔が撮影され、撮影画像が判別部20に入力されることによって行われる。この他、制御装置1と通信可能な外部装置から通信によって顔画像が入力される構成でもよい。
【0076】
第1変形例に係る判別部20は、顔画像が入力されると、記憶部22に記憶された事前登録テーブルに1件のレコードを生成する。事前登録テーブルは、人物毎にレコードを有しており、各レコードは、対応する人物の識別情報と、対応する人物の顔画像とを有する。
【0077】
そして第1変形例に係る判別部20は、車両3の車内に新たに乗員が乗車した後、検出人物が注目乗車人物であるか否かを判定するまでの処理が上記実施形態と異なっている。すなわち第1変形例に係る判別部20は、車両3の車内に新たに一人以上の人物が乗車したかどうかを監視する。そして車両3の車内に新たに一人以上の人物が乗車したことを検出した場合、第1変形例に係る判別部20は、検出人物についての認識顔画像を認識すると共に、事前登録テーブルを参照する。
【0078】
次いで第1変形例に係る判別部20は、認識顔画像が示す画像が、事前登録テーブルに登録された何れかの顔画像(以下、事前登録テーブルに登録された顔画像を上記実施形態に準じて「登録顔画像」という)が示す顔と同一人物の顔であるか否かを判別する。第1変形例に係る判別部20は、認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像が1つも存在しない場合、検出人物が注目乗車人物であると判定する。この場合、検出人物がユーザによって事前に登録された人物ではないということである。一方、認識顔画像が示す顔と同一人物の顔に係る登録顔画像が存在する場合、第1変形例に係る判別部20は、検出人物が注目乗車人物でないと判定する。この場合、検出人物がユーザによって事前に登録された人物であるということである。検出人物が注目乗車人物であるか否かを判定した後の処理は、上記実施形態と同じである。
【0079】
ここでユーザが登録していない人物が車内に存在していない状況は、ユーザが想定していない人物が車内に存在する状況であり、高リスク状況であるということができる。これを踏まえ、第1変形例によれば、ユーザに対して事前に人物(正確には人物の顔写真)を入力する手段を提供することにより、高リスク状況を適切に検出できる。
【0080】
以上、第1変形例を説明したが、第1変形例を応用し、以下の構成としてもよい。すなわち上記実施形態の顔写真テーブルおよび第1変形例の事前登録テーブルの双方が記憶部22に記憶される。そして判別部20は、ある人物が新たに車両3に乗車した場合において、その人物が事前登録テーブルに登録された人物である場合には、検出人物が注目乗車人物であると判定しない。この理由は第1変形例で説明した通りである。更に判別部20は、新たに車両3に乗車した人物が事前登録テーブルに登録された人物ではない場合、顔写真テーブルを用いて、上記実施形態と同様の方法で、検出人物が注目乗車人物であるか否かを判定する。
【0081】
この構成によれば、ある人物について車両3に搭乗する頻度が低い場合であっても、その人物が一律に注目乗車人物と判定されるのではなく、ユーザにより事前に登録された人物である場合には注目乗車人物と判定されない。このため、検出人物が注目乗車人物か否かの判定をより的確に行うことができる。
【0082】
<第2変形例>
次に第2変形例について説明する。第2変形例に係る判別部20は、要注意人物か否かの判定の処理について、上記実施形態と異なる処理を実行する。すなわち第2変形例に係る判別部20は、前部座席カメラ4および後部座席カメラ5から入力した撮影画像を分析し、正常な態様でマスクを着用していない乗員が「発話している」か、「食事をしている」か、「電話をしている」場合に、その乗員について要注意人物であると判定する。つまり第1実施形態では判別部20は、正常な態様でマスクを着用していない乗員が存在することをもって高リスク状況であると判定したが、第2変形例では判別部20は、正常な態様でマスクを着用していない乗員が会話しているか、食事をしているか、電話していることをもって高リスク状況であると判定する。
【0083】
正常な態様でマスクを着用していない乗員が発話しているか否かの判別は例えば、以下の方法で行われる。以下、正常な態様でマスクを着用していない乗員を「対象乗員」という。すなわち第2変形例に係る判別部20は、撮影画像に含まれる対象乗員の顔画像における口の領域(以下、「口領域」という。)を特定し、口領域を追跡して分析する。口領域の分析の結果に基づいて、判別部20は、口が一定時間以上連続して動いている状態の場合、「対象乗員が発話している」と判定する。ここで人間は、発話する場合、口を連続して動かすという特徴がある。従って、対象乗員の口が連続して動いている場合、当該対象乗員が発話している状態である可能性が高い。これを踏まえ、判別部20は、対象乗員の口が動いているか否かを判定することによって、対象乗員が発話している状態か否かを判定している。対象乗員が食事をしているかどうか、および、電話しているかどうかについても、判別部20は、既存の画像処理技術(例えば人体姿勢推定技術)を用いて判別する。
【0084】
ここで、飛沫感染のリスクは、人間が実際に飛沫を発生させるような動作を発生させたときにより大きくなると想定される。これを踏まえ、本実施形態によれば、人間が実際に飛沫を発生させるような動作を発生させた場合にのみ、車両用空気調和装置6にレベルで換気処理を実行させることができる。
【0085】
なお車両3に、車内に発生した音声を収音するマイクを設け、判別部20が、マイクが収音した音声を更に利用して、正常な態様でマスクを着用していない乗員が発話しているか、食事をしているか、電話をしているかを判定する構成でもよい。
【0086】
<第3変形例>
次に第3変形例について説明する。第3変形例では車両3の車内にマイクが設けられる。マイクは、前部座席10に着座する乗員、および、後部座席11に着座する乗員のいずれの発話音声も収音可能な位置に設けられる。
【0087】
第3変形例に係る判別部20は、上記実施形態の第2処理に代えて以下の処理を実行する。すなわち第3変形例に係る判別部20は、マイクにより収音された音声(なお詳細は省略するがA/D変換を含む音声処理および音声データバッファリングは適切に行われる)に基づいて、乗員により会話が行われているか否かを監視する。そして第3変形例に係る判別部20は、乗員により会話が行われている期間は高リスク状況であると判定する。つまり第3変形例では判別部20は、マスクを正常に着用しているか否かにかかわらず、乗員による会話が行われている間、判別部20により高リスク状況であると判定される。
【0088】
ここで、マスクを着用しているか否かにかかわらず、会話が行われていれば飛沫感染のリスクがあると考えることができる。これを踏まえ、第3変形例によれば、マスクを着用しているか否かにかかわらず、会話が行われている状況のときに高リスク状況であると判定することができ、かつ、このような状況のときに車両用空気調和装置6に高いレベルで換気処理を実行させることができる。
【0089】
<その他の変形例>
その他、第1実施形態において第1処理と第2処理との何れか一方を行う構成でもよい。また各変形例について第1実施形態に組み合わせて適用できる場合には、組み合わせて適用してもよいことは勿論である。
【0090】
以上、本発明の実施形態(変形例を含む)を説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0091】
例えば上記実施形態について、制御装置1は、上記実施形態で説明した各種処理を実行するための専用機である必要ない。一例として車両3に搭載されたカーナビゲーションを制御装置1として機能させることができる。
【0092】
また上記実施形態では、換気処理を実行する換気装置は車両用空気調和装置6であったが、換気処理を実行する装置(つまり制御装置1の制御の対象となる装置)は、車両用空気調和装置6に限られない。例えば車内の換気を行う専用の装置が設けられている場合には、これを換気装置として制御装置1が制御する構成でもよい。
【0093】
また前部座席カメラ4および後部座席カメラ5の位置はどこでもよく、また、カメラの台数は2台に限られない。すなわち車両3に搭乗する乗員の顔を撮影可能な態様で1台以上のカメラが設けられていればよい。
【0094】
また上記実施形態で説明した各種画像処理について、所定の機械学習手法(一例としてディープラーニング)により学習されたモデルを利用して行われる構成でもよい。
【0095】
また上記実施形態では、制御装置1が記憶部22を備えていたが、記憶部22は制御装置1が備えている必要はなく、制御装置1に直接接続される装置や、制御装置1とネットワークを介して通信可能な装置が備えている構成でもよい。
【0096】
また上記実施形態では、制御部21は、判別部20により高リスク状況であると判定されている期間のみ、車両用空気調和装置6に高いレベルで換気処理を実行させる構成であった。この点に関し、制御部21が、判別部20により高リスク状況であると判定されている状態から、高リスク状況であると判定されていない状態へと移行した後も、しばらくの間、車両用空気調和装置6に高いレベルで換気処理を実行させる構成でもよい。この場合、状態の移行後、車両用空気調和装置6に高いレベルで換気処理を実行させている間に、再び判別部20により高リスク状況であると判定された場合、制御部21は、高いレベルを維持する。
【0097】
また判別部20が、車内の状況にかかわらず、車両3に搭乗している人物が一人のときは、高リスク状況でないと判定する構成でもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 制御装置
3 車両
4 前部座席カメラ(カメラ)
5 後部座席カメラ(カメラ)
6 車両用空気調和装置(換気装置)
20 判別部
21 制御部
22 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10