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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162207
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】ラジエータファン
(51)【国際特許分類】
   F01P 5/02 20060101AFI20221017BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
F01P5/02 G
F01P11/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066902
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】置田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智則
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太郎
(57)【要約】
【課題】ラジエータの排風を阻害することなくノイズ低減部材を配置して、ファンモータで発生するノイズを低減する。
【解決手段】ラジエータファン(60)は、エンジン前方のラジエータ(40)に外気を導入している。ラジエータファンには、ラジエータの後方に配置されたプロペラ(61)と、プロペラを回転駆動させるファンモータ(62)と、ファンモータをラジエータに固定するファンシュラウド(63)と、ファンモータから延びるケーブル(72)の外周を覆うノイズ低減部材(73)と、が設けられている。ファンシュラウドにはノイズ低減部材が支持されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン前方のラジエータに外気を導入するラジエータファンであって、
前記ラジエータの後方に配置されたプロペラと、
前記プロペラを回転駆動させるファンモータと、
前記ファンモータを前記ラジエータに固定するファンシュラウドと、
前記ファンモータから延びるケーブルの外周を覆うノイズ低減部材と、を備え、
前記ファンシュラウドの後面側には前記ノイズ低減部材が支持されていることを特徴とするラジエータファン。
【請求項2】
後面視にて、前記ノイズ低減部材が前記プロペラの径方向外側に位置していることを特徴とする請求項1に記載のラジエータファン。
【請求項3】
前記ファンシュラウドは、前記ファンモータの取付位置から外方に延びるステーを有しており、
後面視にて、前記ノイズ低減部材が前記ステーに重なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のラジエータファン。
【請求項4】
前記ファンシュラウドが前記ラジエータの左右方向一方側に位置し、前記ノイズ低減部材が前記ファンモータよりも左右方向一方側に位置していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のラジエータファン。
【請求項5】
前記ラジエータは、外気と冷却水の熱交換を行うラジエータコアと、当該ラジエータコアの左右方向両側に設けられた一対のサイドタンクと、を備え、
後面視にて、前記ノイズ低減部材が前記サイドタンクに重なることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のラジエータファン。
【請求項6】
前記ラジエータが左右方向外側から内側に向かって前記エンジンに近づくように湾曲しており、
後面視にて、前記ノイズ低減部材が前記ラジエータの左右方向外側の端部に重なることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のラジエータファン。
【請求項7】
前記エンジンの前面から下方に排気管が湾曲しており、当該排気管の湾曲部分よりも上方に前記ノイズ低減部材が位置していることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のラジエータファン。
【請求項8】
上面視にて、前記ノイズ低減部材が前記エンジンのシリンダヘッドカバーよりも左右方向外側に位置していることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のラジエータファン。
【請求項9】
前記エンジンは、ヘッドパイプから後方に延びるメインフレームと、当該ヘッドパイプから下方に延びるダウンフレームと、によって支持されており、
前面視にて、前記ノイズ低減部材が前記エンジンと前記ダウンフレームの間に位置していることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のラジエータファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータファンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラジエータファンのファンモータで生じたノイズがケーブルから放射され、この放射ノイズが周辺機器の制御に悪影響を与えることが知られている。ノイズ対策としてケーブルにノイズ低減部材を取り付けて、ケーブル内のノイズ成分を低減する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のノイズ低減部材は、ケーシングの内側に環状のフェライトコアが収容されており、フェライトコアの内側にケーブルが通されている。放射ノイズの原因となる特定周波数成分に対するインピーダンスが高くなってノイズ低減効果が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-188045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノイズ低減部材がノイズ発生源に近づけられることで、高いノイズ低減効果を得ることができる。しかしながら、ラジエータファンのファンモータにノイズ低減部材が近づけられると、ノイズ低減部材によってラジエータの排風が阻害されて、ラジエータの冷却効率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ラジエータの排風を阻害することなくノイズ低減部材を配置して、ファンモータで発生するノイズを低減することができるラジエータファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のラジエータファンは、エンジン前方のラジエータに外気を導入するラジエータファンであって、前記ラジエータの後方に配置されたプロペラと、前記プロペラを回転駆動させるファンモータと、前記ファンモータを前記ラジエータに固定するファンシュラウドと、前記ファンモータから延びるケーブルの外周を覆うノイズ低減部材と、を備え、前記ファンシュラウドの後面側には前記ノイズ低減部材が支持されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のラジエータファンによれば、ファンシュラウドにノイズ低減部材が支持されることで、ファンモータにノイズ低減部材が近づけられてケーブル内のノイズ成分が低減される。後面視にてファンシュラウドにノイズ低減部材が重なるため、ノイズ低減部材の追加によってラジエータに対するラジエータファンの投影面積が大きく増加することがない。また、ファンシュラウドの後面側にノイズ低減部材が位置するため、ラジエータとノイズ低減部材の間に隙間が形成される。よって、ノイズ低減部材の追加によるラジエータの排風への影響が抑えられている。また、ノイズ低減部材の専用ブラケット等の追加が不要になって、専用ブラケット等によってラジエータの排風が阻害されることもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の鞍乗型車両の車両前部の右側面図である。
図2】本実施例のラジエータ周辺の側面図である。
図3】本実施例のラジエータの上面図である。
図4】本実施例のラジエータの後面図である。
図5】本実施例のラジエータ周辺の上面図である。
図6】本実施例のノイズ低減部材周辺の前面図である。
図7】変形例のラジエータの後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のラジエータファンはエンジン前方のラジエータに外気を導入している。ラジエータファンは、ラジエータの後方に配置されたプロペラをファンモータで駆動させている。ファンモータはファンシュラウドによってラジエータに固定され、ファンモータから延びるケーブルの外周がノイズ低減部材に覆われている。ファンシュラウドの後面側にノイズ低減部材が支持されており、ファンモータにノイズ低減部材が近づけられてケーブル内のノイズ成分が低減される。後面視にてファンシュラウドにノイズ低減部材が重なるため、ノイズ低減部材の追加によってラジエータに対するラジエータファンの投影面積が大きく増加することがない。また、ファンシュラウドの後面側にノイズ低減部材が位置するため、ラジエータとノイズ低減部材の間に隙間が形成される。よって、ノイズ低減部材の追加によるラジエータの排風への影響が抑えられている。また、ノイズ低減部材の専用ブラケット等の追加が不要になって、専用ブラケット等によってラジエータの排風が阻害されることもない。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例のラジエータファンが適用された鞍乗型車両について説明する。図1は本実施例の鞍乗型車両の車両前部の右側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。なお、図1では車体フレームから車体外装となるボディカバーを外した状態を示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、アルミ鋳造によって形成されるツインスパー型の車体フレーム10に、エンジン16や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10は、ヘッドパイプ11から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム12と、ヘッドパイプ11から左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム13とを有している。一対のメインフレーム12によってエンジン16の後部が支持され、一対のダウンフレーム13によってエンジン16の前部が支持されている。エンジン16が車体フレーム10に支持されることで車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム12の前側部分はタンクレールになっており、タンクレール上に燃料タンク17が配置されている。メインフレーム12の後側部分はボディフレームになっており、ボディフレームの上部からシートレール14及びバックステー(不図示)が後方に向かって延びている。シートレール14上にはライダーシート18が配置されている。ヘッドパイプ11にはステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク21が操舵可能に支持されている。フロントフォーク21の下部には前輪22が回転可能に支持されており、前輪22の上部はフロントフェンダ23によって覆われている。
【0013】
ヘッドパイプ11の下方でエンジン16のシリンダヘッド32の前方にはラジエータ40が配置されている。エンジン16内部で暖められた冷却水がラジエータ40に送り出され、ラジエータ40に流れる冷却水とラジエータ40を通過する走行風の間で熱交換が実施されている。ラジエータ40の後面側には、ラジエータ40に外気を導入するラジエータファン60が設けられている。停車時や低速走行時等に冷却水が所定温度を超えると、ラジエータファン60が回転駆動されてラジエータ40に外気が送り込まれ、ラジエータ40内の冷却水が強制的に冷却される。
【0014】
ところで、ラジエータファン60のファンモータ62(図4参照)ではノイズが発生し、ファンモータ62のケーブルをアンテナとして周辺機器に向かってノイズが放射されるおそれがある。ファンモータ62のケーブルにノイズ低減部材73を設置することで放射ノイズが低減されるが、高い低減効果を得るためにファンモータ62にノイズ低減部材73を近づけると、ノイズ低減部材73によってラジエータ40の排風が阻害されて冷却効率が低下する。そこで、本実施例では、ノイズ低減部材73のレイアウトを工夫して、十分なノイズ低減効果を得つつ、ノイズ低減部材73の追加に伴うラジエータ40の冷却効率の低下を抑えている。
【0015】
以下、図2から図4を参照して、ラジエータファンの詳細構成について説明する。図2は本実施例のラジエータ周辺の側面図である。図3は本実施例のラジエータの上面図である。図4は本実施例のラジエータの後面図である。
【0016】
図2に示すように、ラジエータ40の上面から上方に左右一対の上部ステー41が延びており、ラジエータ40の下面中央から単一の下部ステー42が突き出している。一対の上部ステー41の上端部にはゴムクッション43(図4参照)が装着され、ゴムクッション43を介してラジエータ40が車体フレーム10に取り付けられている。下部ステー42にはゴムクッション44(図4参照)が装着され、ゴムクッション44を介してエンジン16から前方に延びるアーム37に連結されている。ゴムクッション43、44を介してラジエータ40が車体フレーム10とエンジン16に浮動支持されている。
【0017】
ラジエータ40はエンジン16の前方に配置されており、エンジン16とラジエータ40の前後間隔が広く確保されている。ラジエータ40の後方空間が広く確保されるていため、ラジエータ40から後方空間に排風が流れ易くなってラジエータ40の冷却効率が高められている。エンジン16のシリンダヘッド32の前面から下方に複数の排気管34が延びており、右側の排気管34の前方かつラジエータ40の後面側にはラジエータファン60が設けられている。このように、ラジエータファン60は、ラジエータ40に対して右側(左右方向一方側)に寄せて配置されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、ラジエータ40は、矩形板状のラジエータコア51と、ラジエータコア51の左側に設けられた左サイドタンク52と、ラジエータコア51の右側に設けられた右サイドタンク53と、を備えている。ラジエータコア51は、左サイドタンク52及び右サイドタンク53を連ねる多数のウォータチューブ(不図示)と、多数のウォータチューブに交差する多数の放熱フィン(不図示)と、を有している。ラジエータコア51は上面視アーチ状に湾曲しており、ラジエータコア51の放熱面積が広がってラジエータ40の冷却効率が高められている。
【0019】
左サイドタンク52はラジエータコア51の左側縁に沿って延びており、左サイドタンク52の後面にはインレットパイプ54が設けられている。インレットパイプ54はインレットホース(不図示)を介してエンジン16に接続され、エンジン16から左サイドタンク52に冷却水が送り出されている。右サイドタンク53はラジエータコア51の右側縁に沿って延びており、右サイドタンク53の後面にはアウトレットパイプ55が設けられている。アウトレットパイプ55はアウトレットホース(不図示)を介してエンジン16に接続され、右サイドタンク53からエンジン16に冷却水が送り出されている。
【0020】
右サイドタンク53の上面には冷却水の注水口が形成されており、注水口にはラジエータキャップ56が装着されている。左サイドタンク52から右サイドタンク53に向かって冷却水が流れ、ラジエータコア51の前面から後面に外気が通過することで、冷却水と外気の間で熱交換が実施されている。高速走行時にはラジエータコア51を走行風が通過して、走行風によってラジエータ40が放熱される。停車時や低速走行時等にはラジエータ40の後面側のラジエータファン60が作動して、ラジエータファン60によって導入された外気によってラジエータ40が放熱される。
【0021】
図3及び図4に示すように、ラジエータファン60は軸流式のプロペラファンであり、ラジエータ40の後方にプロペラ61が配置されている。ここでは、プロペラ61の形状が簡略化されているが、実際にはプロペラ61は周方向に並んだ複数のブレードを有している。プロペラ61の中央部はファンモータ62の出力軸に連結されており、ファンモータ62によってプロペラ61が回転駆動される。ファンモータ62は扁平状に形成されており、ラジエータファン60の前後方向の厚みが抑えられている。ファンモータ62は樹脂製のファンシュラウド63によってラジエータ40に固定されている。
【0022】
ファンシュラウド63は、ラジエータ40の右側(左右方向一方側)かつ上側に位置している。ファンシュラウド63は、ファンモータ62が固定された円形状のベース64と、ベース64から径方向外側に延びる複数のファンステー65a-65dと、プロペラ61の右側を覆う防護ガード66a、66bと、プロペラ61の左方に設けれた導風板67と、を有している。ベース64の中央部が開口しており、開口縁にはファンモータ62を仕切るように遮熱板68が庇状に形成されている。遮熱板68によってエンジン16(図2参照)や排気管34からファンモータ62に向かう熱が遮られている。
【0023】
右側のファンステー65a、65bの先端は右サイドタンク53の上下2箇所にネジ止めされている。左側のファンステー65cの先端は導風板67の内面側でブラケット71にネジ止めされ、ブラケット71を介してファンステー65cがラジエータコア51の上面中央に固定されている。左側のファンステー65bの先端は導風板67と一体に形成されている。防護ガード66aはファンステー65aとラジエータコア51の上面の間に設けられ、防護ガード66bはファンステー65a、65bの間に設けられている。防護ガード66a、66bは、同心円状に並んだ複数のガードによってプロペラ61への指の接触を防止している。
【0024】
導風板67は、プロペラ61よりもラジエータコア51の中央寄りに配置されている。上記したようにラジエータコア51が湾曲しているため、ラジエータコア51の中央側ではラジエータコア51の後面とプロペラ61の前面の隙間が広がっている。ラジエータコア51の後面とプロペラ61の前面の隙間は導風板67に覆われており、導風板67によって隙間からプロペラ61への外気の流入が遮断されている。ラジエータファン60の作動時には、導風板67によってラジエータコア51の排風がプロペラ61側にスムーズに導かれて、ラジエータ40の冷却効率が高められている。
【0025】
ファンモータ62のリード線(ケーブル)72はベース64の開口から延出してハーネス(不図示)に接続されている。リード線72には、リング状のフェライトコアを収容したノイズ低減部材73が取り付けられている。ノイズ低減部材73はリード線72の外周を覆っており、フェライトコアの内側をリード線72が貫通することで、放射ノイズの原因となるリード線72内のノイズ成分が低減される。ファンシュラウド63の防護ガード66bにはホルダ74が取り付けられており、ホルダ74を介してファンシュラウド63にノイズ低減部材73が支持されている。
【0026】
ホルダ74は、防護ガード66bの一部に形成された支持面69(図2参照)に取り付けられている。支持面69には取付穴(不図示)が形成されており、ホルダ74の基端側のスナップフィット式の爪部75(図6参照)が取付穴に挿し込まれている。ホルダ74の先端はリング状に形成されており、ホルダ74のリング状の先端部分によってノイズ低減部材73の外周面が保持されている。ホルダ74にノイズ低減部材73が保持されることで、ノイズ低減部材73がファンモータ62の近づけられると共に、ラジエータ40から後方にノイズ低減部材73が離されている。
【0027】
図2図4から図6を参照して、ノイズ低減部材のレイアウトについて説明する。図5は本実施例のラジエータ周辺の上面図である。図6は本実施例のノイズ低減部材周辺の前面図である。
【0028】
図4に示すように、ノイズ低減部材73はファンシュラウド63に支持されており、ファンモータ62にノイズ低減部材73が近づけられている。より詳細には、ファンシュラウド63の後面において、ファンモータ62の右側方でファンモータ62の上端から下端までの高さ範囲内にノイズ低減部材73が位置付けられている。これにより、ファンモータ62の近くでノイズ低減部材73によってリード線72内のノイズ成分が低減される。ノイズ低減部材73によるノイズ低減効果が高められて、ラジエータファン60の周辺機器の制御に対する放射ノイズの悪影響が抑えられている。
【0029】
後面視にて、ファンシュラウド63にノイズ低減部材73が重なることで、ノイズ低減部材73の追加によってラジエータ40に対するラジエータファン60の投影面積が大きく増加することがない。また、ファンシュラウド63の後面からノイズ低減部材73が離されているため、ラジエータ40とノイズ低減部材73の間に隙間C(図3参照)が形成されている。ラジエータ40の排風の通り路が十分に確保されて、ラジエータ40の排風がノイズ低減部材73に阻害され難くなっている。ノイズ低減部材73の専用ブラケットが不要になり、専用ブラケットによってラジエータ40に対するラジエータファン60の投影面積が増加することがない。
【0030】
後面視にて、ファンシュラウド63がラジエータ40の右側に位置し、ファンシュラウド63に固定されたファンモータ62よりも右側にノイズ低減部材73が位置している。ラジエータ40の中央側で走行風が前方から後方に流れ易くなっているため、ファンモータ62よりも右側のノイズ低減部材73によってラジエータ40の排風が阻害され難くなっている。また後面視にて、ノイズ低減部材73が右サイドタンク53に重なることで、ラジエータコア51からノイズ低減部材73が外れて、ノイズ低減部材73によってラジエータコア51の排風が阻害され難くなっている。
【0031】
さらに後面視にて、ノイズ低減部材73がプロペラ61の径方向外側に位置している。より詳細には、プロペラ61の外縁よりも防護ガード66bが径方向外側まで広がっており、プロペラ61の径方向外側で防護ガード66bにホルダ74を介してノイズ低減部材73が支持されている。ラジエータファン60の排風の通り路が十分に確保され、ラジエータファン60の排風もノイズ低減部材73によって阻害され難くなっている。なお、プロペラ61の径方向外側とは、プロペラ61から完全に外れた位置に限定されず、プロペラ61に部分的に重なる位置も含んでいる。
【0032】
図5に示すように、ラジエータ40は左右方向外側から内側に向かってエンジン16に近づくように湾曲しており、ラジエータ40の端部に向かうほどエンジン16とラジエータ40の前後間隔が広がっている。また上面視にて、ノイズ低減部材73がシリンダヘッドカバー33よりも右側に位置し、ノイズ低減部材73の後方にはシリンダヘッドカバー33が存在していない。上記したように、後面視にてノイズ低減部材73がラジエータ40の右端部に重なっていても(図4参照)、ラジエータ40の排風抵抗が小さくなってラジエータ40の冷却効率の低下が抑えられている。
【0033】
図2に示すように、ノイズ低減部材73は、ファンモータ62の後端よりも前方でラジエータ40のアウトレットパイプ55の上方に位置している。側面視にて、ノイズ低減部材73がアウトレットパイプ55に干渉することなくファンモータ62に近づけられてノイズ低減効果が高められている。排気管34がエンジン16の前面から下方に湾曲し、この排気管34の湾曲部分39よりも上方にノイズ低減部材73が位置している。湾曲部分39よりも上方でラジエータ40とエンジン16の前後間隔が広がるため、ラジエータ40の排風抵抗が小さくなってラジエータ40の冷却効率の低下が抑えられている。
【0034】
図6に示すように、前面視にてノイズ低減部材73がエンジン16とダウンフレーム13の間に位置し、シリンダヘッド32とダウンフレーム13の隙間にノイズ低減部材73が重なっている。また、ダウンフレーム13の下端にシリンダ31が懸架されており、前面視にてシリンダヘッド32の排気口35よりも右側方で懸架部36とシリンダヘッドカバー33の間にノイズ低減部材73が位置している。ノイズ低減部材73の後方にシリンダヘッド32とダウンフレーム13の隙間が空いているため、ラジエータ40の排風抵抗が小さくなってラジエータ40の冷却効率の低下が抑えられている。
【0035】
以上、本実施例によれば、ファンシュラウド63にノイズ低減部材73が支持されることで、ファンモータ62にノイズ低減部材73が近づけられてリード線72内のノイズ成分が低減される。後面視にてファンシュラウド63にノイズ低減部材73が重なるため、ノイズ低減部材73の追加によってラジエータ40に対するラジエータファン60の投影面積が大きく増加することがない。また、ファンシュラウド63の後面側にノイズ低減部材73が位置するため、ラジエータ40とノイズ低減部材73の間に隙間が形成される。よって、ノイズ低減部材73の追加によるラジエータ40の排風への影響が抑えられている。
【0036】
なお、本実施例では、ファンシュラウドの防護ガードの裏面側にノイズ低減部材が支持されているが、ノイズ低減部材はファンシュラウドに支持されていればよい。例えば、図7に示すように、ファンシュラウド84がファンモータ85の取付位置から外方に延びる複数のファンステー86を有しており、ノイズ低減部材87がいずれかのファンステー86(図では右サイドタンク81の下側のファンステー86)に重なるように支持されていてもよい。これにより、ファンシュラウド84がコンパクトに形成され、ラジエータ80の排風に対するノイズ低減部材87の追加の影響をより抑えることができる。
【0037】
また、ノイズ低減部材はファンシュラウドの導風板に支持されていてもよい。導風板にノイズ低減部材が支持されても、ファンモータにノイズ低減部材が近づけられると共に、ノイズ低減部材の追加によるラジエータの排風への影響が抑えられる。
【0038】
また、本実施例では、ファンシュラウドがラジエータの右側に位置し、ノイズ低減部材がファンモータよりも右側に位置しているが、ファンシュラウドがラジエータの左側に位置し、ノイズ低減部材がファンモータよりも左側に位置していてもよい。
【0039】
また、本実施例では、後面視にてノイズ低減部材が右サイドタンクに重なっているが、後面視にてノイズ低減部材が左サイドタンクに重なってもよいし、ノイズ低減部材がサイドタンクに重ならなくてもよい。
【0040】
また、本実施例では、ラジエータが左右方向外側から内側に向かってエンジンに近づくように湾曲しているが、ラジエータが湾曲せずにストレートに形成されていてもよい。この場合、後面視にてノイズ低減部材がラジエータの中央に重なっていてもよい。
【0041】
また、本実施例では、排気管の屈曲部分よりも上方にノイズ低減部材が位置しているが、排気管の屈曲部分とノイズ低減部材の位置関係は特に限定されない。
【0042】
また、本実施例では、エンジンのシリンダヘッドカバーよりも左右方向外側で、エンジンとダウンフレームの間にノイズ低減部材が位置しているが、エンジンとノイズ低減部材の位置関係は特に限定されない。
【0043】
また、本実施例では、ノイズ低減部材がホルダを介してファンシュラウドに支持されているが、ノイズ低減部材がファンシュラウドに直に支持されていてもよい。
【0044】
また、鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。
【0045】
以上の通り、本実施例のラジエータファン(60)は、エンジン(16)前方のラジエータ(40)に外気を導入するラジエータファンであって、ラジエータの後方に配置されたプロペラ(61)と、プロペラを回転駆動させるファンモータ(62)と、ファンモータをラジエータに固定するファンシュラウド(63)と、ファンモータから延びるケーブル(リード線72)の外周を覆うノイズ低減部材(73)と、を備え、ファンシュラウドの後面側にはノイズ低減部材が支持されている。この構成によれば、ファンシュラウドにノイズ低減部材が支持されることで、ファンモータにノイズ低減部材が近づけられてケーブル内のノイズ成分が低減される。後面視にてファンシュラウドにノイズ低減部材が重なるため、ノイズ低減部材によってラジエータに対するラジエータファンの投影面積が大きく増加することがない。また、ファンシュラウドの後面側にノイズ低減部材が位置するため、ラジエータとノイズ低減部材の間に隙間が形成される。よって、ノイズ低減部材の追加によるラジエータの排風への影響が抑えられている。また、ノイズ低減部材の専用ブラケット等の追加が不要になって、専用ブラケット等によってラジエータの排風が阻害されることもない。
【0046】
本実施例のラジエータファンにおいて、後面視にて、ノイズ低減部材がプロペラの径方向外側に位置している。この構成によれば、ノイズ低減部材によってラジエータファンの排風も阻害され難くなる。
【0047】
本実施例のラジエータファンにおいて、ファンシュラウド(84)は、ファンモータ(85)の取付位置から外方に延びるステー(ファンステー86)を有しており、後面視にて、ノイズ低減部材(87)がステーに重なる。この構成によれば、ファンシュラウドがコンパクトに形成され、ラジエータの排風に対するノイズ低減部材の追加の影響をより抑えることができる。
【0048】
本実施例のラジエータファンにおいて、ファンシュラウドがラジエータの左右方向一方側に位置し、ノイズ低減部材がファンモータよりも左右方向一方側に位置している。この構成によれば、ラジエータの中央部分を走行風が流れ易いため、ファンモータよりも左右方向一方側のノイズ低減部材によってラジエータの排風が阻害され難くなる。
【0049】
本実施例のラジエータファンにおいて、ラジエータは、外気と冷却水の熱交換を行うラジエータコア(51)と、当該ラジエータコアの左右方向両側に設けられた一対のサイドタンク(右サイドタンク53、左サイドタンク52)と、を備え、後面視にて、ノイズ低減部材がサイドタンクに重なる。この構成によれば、ラジエータコアからノイズ低減部材が外れるため、ノイズ低減部材によってラジエータコアの排風が阻害され難くなる。
【0050】
本実施例のラジエータファンにおいて、ラジエータが左右方向外側から内側に向かってエンジンに近づくように湾曲しており、後面視にて、ノイズ低減部材がラジエータの左右方向外側の端部に重なる。この構成によれば、ラジエータの左右方向外側でラジエータとエンジンの前後間隔が広がっているため、ラジエータの左右方向外側の端部にノイズ低減部材が重なっていても、ラジエータの排風抵抗が小さくなってラジエータの冷却効率の低下が抑えられている。
【0051】
本実施例のラジエータファンにおいて、エンジンの前面から下方に排気管(34)が湾曲しており、当該排気管の湾曲部分(39)よりも上方にノイズ低減部材が位置している。この構成によれば、排気管の湾曲部分よりも上方でラジエータとエンジンの前後間隔が広がって、ラジエータの排風抵抗が小さくなってラジエータの冷却効率の低下が抑えられている。
【0052】
本実施例のラジエータファンにおいて、上面視にて、ノイズ低減部材がエンジンのシリンダヘッドカバー(33)よりも左右方向外側に位置している。この構成によれば、ノイズ低減部材の後方にはシリンダヘッドカバーが存在していないため、ラジエータの排風抵抗が小さくなってラジエータの冷却効率の低下が抑えられている。
【0053】
本実施例のラジエータファンにおいて、エンジンは、ヘッドパイプ(11)から後方に延びるメインフレーム(12)と、当該ヘッドパイプから下方に延びるダウンフレーム(13)と、によって支持されており、前面視にて、ノイズ低減部材がエンジンとダウンフレームの間に位置している。この構成によれば、ノイズ低減部材の後方にシリンダヘッドとダウンフレームの隙間が空いているため、ラジエータの排風抵抗が小さくなってラジエータの冷却効率の低下が抑えられている。
【0054】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0055】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0056】
11 :ヘッドパイプ
12 :メインフレーム
13 :ダウンフレーム
16 :エンジン
33 :シリンダヘッドカバー
34 :排気管
39 :湾曲部分
40、80:ラジエータ
51 :ラジエータコア
52 :左サイドタンク(サイドタンク)
53 :右サイドタンク(サイドタンク)
60 :ラジエータファン
61 :プロペラ
62、85:ファンモータ
63、84:ファンシュラウド
72 :リード線(ケーブル)
73、87:ノイズ低減部材
86 :ファンステー(ステー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7