(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162214
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】加工管受発注と工場生産管理システムおよび加工管受発注と工場生産管理方法ならびに加工管受発注と工場生産管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20221017BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B19/418 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066909
(22)【出願日】2021-04-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】598007274
【氏名又は名称】ジャパン・エンヂニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513183913
【氏名又は名称】南雲 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(72)【発明者】
【氏名】村木 大作
(72)【発明者】
【氏名】蒔田 大輔
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA36
3C100AA65
3C100BB05
3C100BB06
3C100BB38
3C100BB39
3C100CC03
3C100EE18
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】建物に設置される各種配管およびこれに付随する各種装置の受注から納入までの期間(日数)を大幅に短縮できると共に、発注側への請求書作成までの作業を容易にできる新規な加工管受発注と工場生産管理システムおよび管理方法並びに管理プログラムの提供。
【解決手段】発注側から提供されたBIM用CADデータを取り込み、そのBIM用CADデータを生成したソフトウェアと同じソフトウェアを用いて管割図面データを作成し、その後、この管割図面からアイソメ図や加工注文書、請求書などを作成する。これによって、発注側はその管割図面の確認作業を自己が所有するソフトウェア上で行うことができるため、確認作業が簡単となって受注から納入までの期間(日数)を大幅に短縮できる。また、納入完了後、注文番号を利用して自己のソフトウェアのデータを連動させることで見積書及び請求書の作成を容易に行うことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置からなる加工管受発注と工場生産管理システムであって、
提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータを取り込み、当該BIM用CADデータを生成したソフトウェアと同じ、またはデータ互換性のあるソフトウェアを用いて管割図面データを作成する管割手段と、
前記管割手段で作成された管割図面データに基づいてアイソメ図データを作成するアイソメ図作成手段と、
前記アイソメ図作成手段で作成されたアイソメ図データから加工注文書データを作成する加工注文書作成手段とを備えたことを特徴とする加工管受発注と工場生産管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の加工管受発注と工場生産管理システムにおいて、
前記加工注文書作成手段で作成された加工注文書データから請求書を作成する請求書作成手段を備えたことを特徴とする加工管受発注と工場生産管理システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の加工管受発注と工場生産管理システムにおいて、
製品ラベルに印刷する識別コードを生成する識別コード生成手段を備え、
前記識別コードには、前記納入する各種配管の製品情報が記録されていることを特徴とする加工管受発注と工場生産管理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の加工管受発注と工場生産管理システムにおいて、
前記発注側から提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータに、各種情報を付加する情報付加手段を備えたことを特徴とする加工管受発注と工場生産管理システム。
【請求項5】
ソフトウェアの制御によってコンピュータが行う情報処理方法としての加工管受発注と工場生産管理方法であって、
提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータを取り込み、当該BIM用CADデータを生成したソフトウェアと同じ、またはデータ互換性のあるソフトウェアを用いて管割図面データを作成する管割工程と、
前記管割工程で作成された管割図面データに基づいてアイソメ図データを作成するアイソメ図作成工程と、
前記アイソメ図作成工程で作成されたアイソメ図データから加工注文書データを作成する加工注文書作成工程とを含むことを特徴とする加工管受発注と工場生産管理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータを取り込み、当該BIM用CADデータを生成したソフトウェアと同じ、またはデータ互換性のあるソフトウェアを用いて管割図面データを作成する管割手段と、
前記管割手段で作成された管割図面データに基づいてアイソメ図データを作成するアイソメ図作成手段と、
前記アイソメ図作成手段で作成されたアイソメ図データから加工注文書データを作成する加工注文書作成手段として機能させることを特徴とする加工管受発注と工場生産管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルやマンションや工場およびプラントなどの建物に設置される各種配管およびこれに付随する各種装置や管材類”を、購買代理業務または販売代理業務などとして、設計、仕様検討、品質管理、納期調整、価格確認、施工などを協力し、受注から納入と発注側への請求までを一括管理する加工管受発注と工場生産管理システムおよび加工管受発注と工場生産管理方法ならびに加工管受発注と工場生産管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンションや工場およびプラントなどの建物や構造物には、上下水道用の配管や冷暖房用の冷媒を流す配管、ケーブル類を通す管などの多くの配管およびこれに付随する継手や接合材またはバルブなどの各種装置が、他の配管や構造物などと干渉しないように複雑な形態で備え付けられている。そして、一般にこれら各種配管およびこれに付随する各種装置の設計は、建築用の3次元CADシステム(ソフトウェア)を用いて建物の躯体の設計と並行して行われている。
【0003】
建築用の3次元CADシステムとしては従来から様々なものが用いられているが、そのうちBIM(Building Information Modeling)を用いた建築用のCAD(以下、BIM用CADという)は、ビルやマンションなどの建物や構造物を最初から3次元で設計し、その3次元モデルから平面図や立面図、断面図などの必要な2次元図面を切り出して自動生成することが可能となっている。
【0004】
加えてこのBIM用CADは、その3Dデータをデータベース化できることから、建物や構造物の設計、施工、メンテナンスまで一元的に管理することが可能となっている。さらに、建設業界のソフトウェア・アプリケーション間のデータ共有化とその相互運用が可能であることから最近では国内外の多くの企業での採用が進んでいる。
【0005】
また、このBIM用CADと他のソフトウェアとを連携させることでその機能を向上させる事例も増えてきている。例えば以下の特許文献1では、BIMを用いた建物設計用の3次元CADと、汎用の表計算ソフトと、前記3次元CADと前記表計算ソフトとを連携する連携ソフトによって、2次元図面を作成することなく、容易にBIMデータを作成することができ、かつ見る角度や質感を含めた建物デザインを確認できるという建物企画設計システムが提案されている。また、以下の特許文献2では、このBIMを実現する建築CADシステムと表計算ソフトとを連携して熱負荷計算データの作成を行う方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6429380号公報
【特許文献2】特開2016-122284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、配管設備業者などの受注側が前記のようにBIM用CADを用いて各種設計を行っている発注側企業から建物の各種配管やそれに付随する各種装置を受注するに際しては、それらに関する情報はその発注側企業からそのBIM用CADデータのかたちで直接提供されることが多い。この場合、受注側はそのBIM用CADデータに基づいて独自に管割りしてアイソメ図(配管計装線図)を作成した後、このアイソメ図から製造工場へ送る加工注文書などを作成し、その後、この加工注文書に基づいて各種配管を製造すると共に、必要に応じて付属製品を準備し、納期までに発注側に納入するような流れになっている。その後、受注側は納入した製品に係る請求書を発行して発注側に送るようになっている。
【0008】
しかしながら、受注側は発注側から提供されたBIM用CADデータに基づいてアイソメ図を作成したときや、そのアイソメ図から工場加工注文書に添付する図面を作成した際には、その都度その図面を紙媒体などに印刷したり、汎用の電子ファイルにしてから発注側に送り、内容に間違いがないかどうかを確認してもらい、誤りがあれば修正して再確認してもらうといった工程が必要とある。そのため、各種配管やそれに付随する各種装置の受注から納入までに多くの期間(日数)を要するといった不都合がある。
【0009】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は建物に設置される各種配管およびこれに付随する各種装置の受注から納入までの期間(日数)を大幅に短縮できると共に、発注側への請求書作成までの作業を容易にできる新規な加工管受発注と工場生産管理システムおよび加工管受発注と工場生産管理方法ならびに加工管受発注と工場生産管理プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために第1の発明は、情報処理装置からなる加工管受発注と工場生産管理システムであって、提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータを取り込み、当該BIM用CADデータを生成したソフトウェアと同じ、またはデータ互換性のあるソフトウェアを用いて管割図面データを作成する管割手段と、前記管割手段で作成された管割図面データに基づいてアイソメ図データを作成するアイソメ図作成手段と、前記アイソメ図作成手段で作成されたアイソメ図データから加工注文書データを作成する加工注文書作成手段とを備えたことを特徴とする加工管受発注と工場生産管理システムである。
【0011】
このような構成によれば、まず管割手段によって、提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータを取り込み、当該BIM用CADデータを生成したソフトウェアと同じ、またはデータ互換性のあるソフトウェアを用いて情報処理装置(コンピュータ)上で管割図面データを作成するため、発注側はその管割図面の確認作業を自己が所有するBIM用CAD(ソフトウェア)上で行うことができる。これにより、管割図面の確認作業が簡単となり、発注側の確認作業に要する期間(日数)を大幅に短縮できる。なお、BIM用CADで作成された部材にはGUID(Globally Unique Identifier)という固有のIDが自動的に振られ、これによりデータ互換性のあるソフトウェアで、データをやり取りしても同じ部材であることを認識し続けることができる。また、本発明でいう情報処理装置とは、入出力部(インターネット、キーボード、モニター、プリンタ、記録媒体読書装置など)、演算部(CPU、RAM、ROMなど)、記憶部(ハードディスク、半導体記憶装置など)などを備えたハードウェア資源と、これを機能させる基本ソフトウェア(OS)や各種のアプリケーションなどのソフトウェア資源とが協働するコンピュータシステムをいう(以下、同じである)。
【0012】
次に、発注側に確認してもらった管割図面データは、その後アイソメ図作成手段によって自動的にアイソメ図(配管計装線図)が作成されるため、アイソメ図を作成するための作業が省略されると共に、そのアイソメ図がコンピュータ上で自動作成されるため、人為的なミスが発生しない。これにより、発注側による作成されたアイソメ図の確認作業が不要となるため、その分の期間(日数)の短縮や手間の削減が可能となる。
【0013】
また、その後加工注文書作成手段によって、アイソメ図作成手段で作成されたアイソメ図データから工場加工注文書データがコンピュータ上で自動生成されるため、同じく人為的なミスが発生しない。これにより、受注側の工場加工注文書の作成作業と、発注側による加工注文書の確認作業が不要となるため、さらにその分の期間(日数)や手間が削減できる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、前記加工注文書作成手段で作成された加工注文書データから請求書を作成する請求書作成手段を備えたことを特徴とする加工管受発注と工場生産管理システムである。このような構成によれば、その後、請求書作成手段によって加工注文書作成手段で作成された加工注文書データから請求書がコンピュータ上で自動生成されるため、人為的なミスが発生しない。これにより、請求書の作成に要する時間や手間が不要となって労力が軽減される。
【0015】
第3の発明は、第1または第2の発明において、製品ラベルに印刷する識別コードを生成する識別コード生成手段を備え、前記識別コードには、前記納入する各種配管の製品情報が記録されていることを特徴とする加工管受発注と工場生産管理システムである。このような構成によれば、発注側に納入する各種配管およびこれに付随する各種装置に付加された識別コードを発注側で専用の読み取り装置で読み取ることで、発注側が求める必要な情報を容易に取得できる。
【0016】
第4の発明は、第1乃至第3の発明において、前記提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータに、各種情報を付加して発注側に戻す情報付加手段を備えたことを特徴とする加工管受発注と工場生産管理システムである。このような構成によれば、発注側から提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータの内容が更新されて充実するため、それらの一連の情報を発注側のBIM用CADでも一元的に管理できる。これは、第1の発明で記述したGUIDという固有のIDを、各種配管や各種装置が常にシステム上で保有され続けることで、発注側にデータを戻すことが可能となる。
【0017】
第5の発明は、ソフトウェアの制御によってコンピュータが行う情報処理方法としての配管受注管理方法であって、提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータを取り込み、当該BIM用CADデータを生成したソフトウェアと同じ、またはデータ互換性のあるソフトウェアを用いて管割図面データを作成する管割工程と、前記管割工程で作成された管割図面データに基づいてアイソメ図データを作成するアイソメ図作成工程と、前記アイソメ図作成工程で作成されたアイソメ図データから加工注文書データを作成する加工注文書作成工程とを含むことを特徴とする加工管受発注と工場生産管理方法である。このような方法によれば、第1の発明と同様な効果が得られる。
【0018】
第6の発明は、コンピュータを、提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータを取り込み、当該BIM用CADデータを生成したソフトウェアと同じ、またはデータ互換性のあるソフトウェアを用いて管割図面データを作成する管割手段と、前記管割手段で作成された管割図面データに基づいてアイソメ図データを作成するアイソメ図作成手段と、前記アイソメ図作成手段で作成されたアイソメ図データから加工注文書データを作成する加工注文書作成手段として機能させることを特徴とする加工管受発注と工場生産管理プログラムである。このようなコンピュータプログラムと汎用のコンピュータとを協働させることにより、第1の発明と同様な効果が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、発注側から提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータを生成したソフトウェアと同じ、またはデータ互換性のあるソフトウェアを用いて管割処理やアイソメ図作成処理などを行うようにしたことから、建物に設置される各種配管およびこれに付随する各種装置の受注から納入までの期間(日数)を大幅に短縮できると共に、注文書や請求書作成時の人為的なミスも回避できる。また、納入した製品に識別コードやRFIDを付加することにより、発注側が必要な情報を容易に取得することができる。また、納入完了後、注文番号を利用して自己のソフトウェアのデータを連動させることで見積書及び請求書の作成を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る配管受注管理システム100の実施の一形態を示す説明図である。
【
図2】本発明に係る配管受注管理システム100を実現するハードウェア構成図である。
【
図3】本発明に係る配管受注管理システム100を用いた配管受注管理方法の流れを示すフロー図である。
【
図4】提供されたBIM用CADデータ510の一例を示す図である。
【
図5】BIM用CADによる管割
図520の一例を示す図である。
【
図8】製品550とそれに貼付する製品ラベル580の一例を示す図である。
【
図10】BIM用CADデータの更新の流れを示すフロー図である。
【
図11】更新後のBIM用CADデータ600の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る加工管受発注と工場生産管理システム100の実施の一形態を示す機能ブロック図、
図2はそのハードウェア構成図である。図示するようにこの配管受注管理システム100は、入力部10と、演算部20と、出力部30とを有する情報処理装置から構成されている。
【0022】
入力部10は、オペレータが操作してBIM用CADや各種情報を入力するものであり、例えば
図2に示すようなキーボードの他、USBインタフェース、記憶媒体読取装置などの汎用の入力機器から構成されている。一方、出力部30は、図面データや加工注文書、製品に貼り付けるラベルデータ、請求書などの各種情報を出力するものであり、例えば
図2に示すようなモニターやプリンタなどの汎用の出力機器から構成されている。
【0023】
演算部20は、
図1に示すように管割手段21と、アイソメ図作成手段22と、加工注文書作成手段23と、請求書作成手段24と、情報付加手段25と、識別コード生成手段26といった各種機能を発揮するようになっている。具体的には
図2に示すような汎用のコンピュータシステムのハードウェア(CPU20a、CLC20b、RAM20c、ROM20d、データバス20e、インタフェース(I/F)20f、記憶装置20gなど)と、その記憶装置20gなどに格納された専用のコンピュータプログラム(オペレーションシステム、アプリケーションソフトウェア)によって各機能を実現するようになっている。
【0024】
また、この演算部20のインタフェース(I/F)20fには、入力部10および出力部30と共に、インターネットNなどの情報通信回線が接続されており、
図1に示すように外部の発注企業(発注側)200や製造工場300、建設現場400などとの間で通話やデータ送受信が可能となっている。
【0025】
図3は、このような構成をした本発明の加工管受発注と工場生産管理システム100を用いた受注側の処理の流れの一例を示したものである。まず、最初のステップS100において、発注側(発注企業200)から提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータを受領してこれを本発明の加工管受発注と工場生産管理システム100に入力する。具体的には、
図1に示すようにBIM用CADデータが所定のデータ形式でUSBメモリやSDカードなどの記録媒体に記録された状態で提供されたときは、それを入力部10の読取装置で読み取り、演算部20に入力する。また、インターネットNを介して提供されたときは、インタフェース(I/F)20fを介して受信して入力する。
【0026】
図4は、このBIM用CADデータ510の一例を示したものであり、建物に配設される冷水往き管を示したものである。図の右側には、3次元の配管構造図が示されており、その左側にはレイヤーグループ(空調)、レイヤー、色、太さ、線種、材料などの各種情報が記録されている。
【0027】
次に、このようにしてBIM用CADデータ510を入力したならば、管割手段21によってこのBIM用CADデータ510を生成したソフトウェアと同じソフトウェア(BIM用CAD)を立ち上げて管割処理を行う(ステップS102)。例えば、発注側でこのBIM用CADデータ510を生成したソフトウェアがRebro(登録商標)やAutodesk Revit(登録商標)などのように建設業界で広く流通しているものであれば、それと同じソフトウェアか、またはデータ互換性のあるソフトウェアを予めインストールしておき、これを立ち上げて管割手段21によって管割処理を行う。なお、前述したようにこれらの広く流通しているBIM用CADで作成された部材にはGUID(Globally Unique Identifier)という固有のIDが自動的に振られるため、データ互換性のあるソフトウェアであれば、データをやり取りしても同じ部材であることを認識することができる。
【0028】
この管割手段21による管割処理(作業)とは、図面上の配管図を分割し、管などの必要な部品に管番号を設定し、配管順序等の計画に使用するための管割
図520(
図5)(管割図面データ)を作るための作業(管割工程)をいい、具体的には次のような工程によって行われる。すなわち、前記BIM用CAD上で様々な配管や部材があるなかから加工対象となる配管を確認し、管割に必要な継手をその前記BIM用CAD上で選択し、本発明システムの定尺割り機能によってある程度規則性を持たせて自動で管割継手を配置したり、手動割り機能によって必要に応じて任意の寸法を入力して管割継手を配置する。このとき寸法は、規格寸法という工場で製作し易い寸法や、形状によっては工場で製作できないものもあり、オペレータがそれを確認しながら管割作業を行う。その後、前記BIM用CAD上でナンバリングという機能を使用して管番号をつける。なお、このナンバリングにも規則性をもって自動で番号を振ってくれる機能があるが、任意で番号を振ることも可能となっている。
【0029】
このようにして管割
図520が作成されたならば、その管割図面データを発注側に送り、管割位置の確認と干渉がないかどうかなどをチェックしてもらう(ステップS104)。この管割
図520のチェックは、発注側のBIM用CAD上で直ちに行えるため、発注側は迅速且つ容易にその作業を行うことができる。そして、誤りがあればその修正作業を行って再チェックしてもらい(ステップS106、108)、修正がなければ、アイソメ図作成手段22によってその管割図面データから建設現場で施工するための配管用のアイソメ図(配管計装線図)530(アイソメ図データ)を作成(アイソメ図作成工程)する(ステップS110)。
【0030】
また、このアイソメ図作成手段22による配管用アイソメ図作成処理とは、具体的には次に示すような5つの工程によって行われる。まず、前記BIM用CAD上で、BIMのデータを流通させるためのファイル形式であるIFCのデータと表計算ソフトExcel(登録商標)のデータをエクスポートする(第1工程)。「IFC」は3D部材データを持っており、「Excel」(登録商標)はIFCデータに保存されないアイソメ描画に必要なデータ(例えば継手を連動するための情報や名称)や、発注側が必要な情報(管番号、会社名他)を持っている。
【0031】
次に、前記第1の工程で得られたデータをインポートし(第2工程)、回転角などを設定する(第3工程)。その後、現場名や管種等、長さの表現調整等の必要情報を入力することでアイソメ図が入力される(第4の工程)。なお、この長さ表現調整とは、前記BIM用CADで入力された実際の長さでアイソメ図が入力されでも、図面の枠に収まらない場合が多いため、表現される長さを規則性もたせて調整することをいう。また、入力後にそれを任意の長さに調整することもできる。そして、最後にそのアイソメ図に必要な寸法線を記入する(第5の工程)。なお、寸法は前記BIM用CADのデータが自動で表示されるが、あとから寸法修正することも可能となっている。
【0032】
図6は、この配管用アイソメ
図530の一例を示したものであり、このようなアイソメ
図530を作成することにより、上がり下がりなどの勾配やダクトなどの複雑で立体的な配管ルートを視覚的にわかりやすく表現することができるため、建設現場で配管施工が容易になる。そして、この配管用アイソメ
図530は、アイソメ図作成手段22によってその管割図面データからコンピュータソフトウェア上で自動的に作成されるため、人為的なミスがなくなる。このため、発注側によるアイソメ
図530のチェックが不要、または大幅に簡略化することができる。なお、発注側の要望に応じて、管割
図520と配管用アイソメ
図530を同時に送る場合もある。管割
図520から配管用アイソメ
図530を容易に作成することができるため、発注側の要望に応じた迅速な対応が可能になる。
【0033】
次に、このようにして配管用のアイソメ
図530が作成されたならば、加工注文書作成手段23によってそのアイソメ図データから製造工場へ送る加工注文書540を自動的に作成して(加工注文書作成工程)その加工注文書データを工場に送る(ステップS112)。具体的には、アイソメ図が完成したら、本発明システムの加工注文書選択のコマンドをクリックし、加工注文書を作成するための情報(受注番号、管種、配管場所、管番号)を入力または選択し、実行をクリックすると加工注文書が自動的にできあげる。
図7はこの加工注文書540の一例を示したものであり、配管ルートを構成する各種配管ごとの図面とそのサイズや種類、管番号、納期などを一覧表形式で表示したものである。
【0034】
そして、
図1に示すようにこの加工注文書540を受領した製造工場200は、この加工注文書540に従って各種配管を製造する(ステップS113)。一方、受注側においては本発明の配管受注管理システム100を用いてその後、この加工注文書540のデータ内容からその製品1つ1つに貼り付けるための製品ラベル(シール)580を作成する(ステップS114)。
図8はこの製品ラベル580の一例を示したものであり、工場で製造された製品550の表面には管番号560や識別コード570などが表示(印刷)された製品ラベル580が納品時に貼り付けられるようになっている。
【0035】
この製品ラベル580に表示された管番号560は、建設現場400に納入された各種配管を現場で施工する際に、アイソメ
図530に記された管番号と照らし合わせることで配管の経路を確認しながら施工できるようになっている。なお、建設現場400は、発注側によって管理されており、発注した製品が納期までに納入されているかどうかなどの情報を逐一建設現場400から報告を受けている。
【0036】
図8に示す識別コード570は、公知の識別コードのなかでも代表的なQRコード(登録商標)を採用したものである。このQRコード(登録商標)には、事前に発注側と打ち合わせして決めた任意の製品情報が記録されており、受け取った建設現場の担当者は、このQRコード(登録商標)をコードリーダーで読み取ることにより、必要に応じてその製品情報を発注側の専用システムに連動して利用することができる。なお、この識別コードは、このQRコード(登録商標)の他にCPコード(Computer Purpose Code)やData Matrix、PDF417などでもよく、さらにバーコードのような一次元コードでもよい。また、次世代カラーバーコードのカメレオンコードであってもよい。また、RFID(radio frequency identifier)というICチップを利用したものでもよい。たとえば、ICチップを搭載したシール等に発注側と打合わせしてきめた製品情報を組み込んでおき製品貼り、RFIDを読み込むリーダーを使用しスキャニングすることで、読み込みリーダーの数m~数十m付近に存在するRFIDの情報を一括に読み込むことが出来る。これにより必要に応じてその製品を発注側の専用システムに連動して利用する事ができる。
【0037】
また、このようにして製造工場への加工注文書540が作成されたならば、請求書作成手段24による請求書作成処理によってその加工注文書540のデータと連動してそれらの製品の請求書590が自動的に作成される(ステップS116)。
図9はこの請求書590の一例を示したものであり、納入された製品の明細と価格などが一覧表示されている。そして、この請求書590を後日発注側へ送付して一連の処理を終了する。
【0038】
この請求書作成手段24による請求書作成処理とは、具体的には次のような工程によって行われる。すなわち、本発明システムの請求見積書作成画面で、現場へ納品した、加工注文番号(受注番号)を選び請求用の見積書の作成ボタンをクリックすると、納品された材料、加工に伴う見積書が自動で作成される。必要であれば発注側の注番等を追記する。これによって見積条件や客先提示金額を記載した客先提出用の見積が完成する。発注側に請求する見積を選択し(納入日が違ったり、商社であれば、納入先や、物件が複数違う場合がある)、作成ボタンをクリックすると請求書が完成する。なお、客先のお支払日や手形の振替日等も本発明システムのマスタに客先別に記録されているので請求書作成時に自動で客先毎の必要な情報が表示される。
【0039】
このように本発明は、発注側から提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータを生成したソフトウェアと同じ、またはデータ互換性のあるソフトウェアを用いて管割処理やアイソメ図作成処理などを行うようにしたことから、建物に設置される各種配管の受注から納入まで期間(日数)を大幅に短縮できる。具体的には、従来方式では例えばA3図面1枚(約30本)の発注から製品納入までの期間が17日程度かかっていたものが、本発明の配管受注管理システム100を採用することにより10日となり、従来よりも約40%その期間を短縮することができる。
【0040】
また、発注側と同じBIM用CADで作成した管割
図520からアイソメ
図530や加工注文書540、製品ラベル580、請求書590などを自動的に作成するようになっているため、作成に要する手間が省けると共に作成時の人為的なミスも回避できる。また、識別コード作成手段26によって納入する製品に貼付する製品ラベル580に識別コード570を付加することにより、発注側において任意の必要な製品情報をコードリーダーで読み取り、発注側の専用のシステムと連動して利用することができる。
【0041】
また、
図10のフローに示すように発注側からBIM用CADデータ510を受領したならば(ステップS200)、情報付加手段25によって
図11に示すようにそのBIM用CADデータ510に製品の加工会社名や注文番号、納入日、継手種類などの各種情報を更新データとして付加したBIM用CADデータ(更新)600を作成し(ステップS202)、発注側に提供する(ステップS202)。これにより、発注側から提供された各種配管およびこれに付随する各種装置に関するBIM用CADデータの内容が更新されて充実するため、それらの一連の情報を発注側のBIM用CADでも一元的に管理することができる。これは、前述したようにGUIDという固有のIDを各種配管や各種装置が常にシステム上で保有され続けることで可能となる。また、納入完了後、注文番号を利用して自己のソフトウェアのデータを連動させることで見積書及び請求書の作成を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
100…加工管受発注と工場生産管理システム
200…発注企業(発注側)
300…製造工場
400…建設現場
10…入力部
20…演算部
30…出力部
21…管割手段
22…アイソメ図作成手段
23…加工注文書作成手段
24…請求書作成手段
25…情報付加手段
26…識別コード生成手段
N…:インターネット