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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162226
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】暖房機
(51)【国際特許分類】
   F24D 13/02 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
F24D13/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066928
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】栗林 清人
(72)【発明者】
【氏名】笠輪 裕士
【テーマコード(参考)】
3L072
【Fターム(参考)】
3L072AA01
3L072AB02
3L072AC02
3L072AE01
3L072AF01
3L072AG02
(57)【要約】
【課題】速暖運転時における室温の大幅な変動を抑えた暖房機を提供する。
【解決手段】室温を早期に高める速暖運転の実施時、室温サーミスタ71の検知値と第1設定温度より所定値だけ高い第2設定温度との差に応じてヒータ20の出力を変更し、室温サーミスタ71の検知値が第1設定温度と第2設定温度との間にある所定温度に達したと判断したら、第2設定温度を徐々に低下させるので、室温サーミスタ71と設定温度との差に応じたヒータ20の出力レベルが急激に低下せず、実際の室温値が緩やかに低下して設定温度付近に達することから、短時間で大幅に室温が変動することでのユーザの不快感を未然に阻止できる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
当該筐体内に収容されたヒータと、
室温を検知する室温センサと、
当該室温センサの検知値と予め設定された第1設定温度との差に応じて前記ヒータの出力を変更する制御部と、を備え、
前記制御部は、室温を早期に高める速暖運転の実施時、前記室温センサの検知値と前記第1設定温度より所定値だけ高い第2設定温度との差に応じて前記ヒータの出力を変更し、前記室温センサの検知値が前記第1設定温度と前記第2設定温度との間にある所定温度に達したと判断したら、前記第2設定温度を徐々に低下させることを特徴とした暖房機。
【請求項2】
前記制御部は、前記室温センサの検知値が前記第1設定温度と前記第2設定温度との間にある前記所定温度に達したと判断したら、前記第2設定温度を所定時間毎に所定値だけ低下させることを特徴とした請求項1記載の暖房機。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2設定温度が前記第1設定温度まで低下したら、前記速暖運転を終了することを特徴とした請求項2記載の暖房機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、暖房機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、筐体内にヒータを複数有し、筐体の鉛直方向下面に形成された吸込口から流入した室内空気をヒータで加熱し、筐体の鉛直方向上面に形成された吹出口から加熱された空気を室内へ放出する自然対流型の暖房機があり、筐体に設置された室温センサでの検知値と予め設定された設定温度との差に基づき、ヒータの出力を変更していた。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-21496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、室内温度を設定温度まで早期に高める速暖運転に関して開示がない。速暖運転を実施する方法として、運転開始時における設定温度を予め設定された値よりも高めに設定して、予め設定された設定温度を超えてもヒータの出力が高めに維持されるようにし、高めに設定した設定温度を室温センサが検知したら、設定温度を通常運転時における設定値に戻す方法が考えられる。
【0005】
上記の速暖運転では、室温センサでの検知値が高めに設定した設定温度に達し設定温度を通常運転時における設定値に戻すと、室温センサの検知値が設定温度を大幅に上回ることでヒータの出力が急激に低下するため、暖房感が喪失することから改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、筐体と、
当該筐体内に収容されたヒータと、
室温を検知する室温センサと、
当該室温センサの検知値と予め設定された第1設定温度との差に応じて前記ヒータの出力を変更する制御部と、を備え、
前記制御部は、室温を早期に高める速暖運転の実施時、前記室温センサの検知値と前記第1設定温度より所定値だけ高い第2設定温度との差に応じて前記ヒータの出力を変更し、前記室温センサの検知値が前記第1設定温度と前記第2設定温度との間にある所定温度に達したと判断したら、前記第2設定温度を徐々に低下させることを特徴とした。
【0007】
また、請求項2では、前記制御部は、前記室温センサの検知値が前記第1設定温度と前記第2設定温度との間にある前記所定温度に達したと判断したら、前記第2設定温度を所定時間毎に所定値だけ低下させることを特徴とした。
【0008】
また、請求項3では、前記制御部は、前記第2設定温度が前記第1設定温度まで低下したら、前記速暖運転を終了することを特徴とした。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、速暖運転時にヒータの出力が急激に低下することがないため、暖房感の喪失を未然に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る暖房機の一実施形態を示す暖房機の右前方から見た斜視図。
図2】暖房機の前板および左右パネルを取り外し、右前方から見た斜視図。
図3図1のIII-III線に沿う断面図
図4】暖房機の機能ブロック図。
図5】本発明の速暖運転を説明するフローチャート
図6】本発明の速暖運転時における室温サーミスタの検知値と実際の室温値の変化、及びヒータの出力変化を説明する図
図7】比較例の速暖運転時における室温サーミスタの検知値と実際の室温値の変化、及びヒータの出力変化を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る暖房機の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る暖房機の一実施形態を示す暖房機1の右前方から見た斜視図である。
図2は、暖房機1の前板31および左右パネル35を取り外し、右前方から見た斜視図である。
図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4は、暖房機1の機能ブロック図である。
【0013】
以下の説明において、「前(前面)」、「後(背面)」、「上」、「下」、「右」、および「左」は、図1から図3における定義に従う。また、上下方向は、暖房機1の設置時における鉛直方向に対応する。前後方向および左右方向は、暖房機1の設置時における水平方向に対応する。
【0014】
暖房機1は、放熱部10と、ヒータ20と、筐体30と、主制御基板70と、電源基板80と、を主に有する。
【0015】
放熱部10は、暖房機1の設置時における上下方向に沿って配列された上段放熱部10a、中段放熱部10b、および下段放熱部10cを有する複数の放熱部10(複数のヒータ20)である。上段放熱部10a、中段放熱部10b、および下段放熱部10c(以下これらを区別しない場合、単に「放熱部10」という。)は、それぞれ上段ヒータ20a、中段ヒータ20b、および下段ヒータ20c(以下これらを区別しない場合、単に「ヒータ20」という。)を内部に収容し、ヒータ20の熱を外表面から放熱する。
【0016】
放熱部10は、例えばアルミニウム合金のダイカスト成形品である。放熱部10は、ヒータ収容部11と、複数のフィン12と、を有する。ヒータ収容部11は、前後方向に沿う面方向を有する2枚の板状部材13の間に形成され、ヒータ20を収容する。フィン12は、板状部材13から略垂直に左右方向に突出し、上下方向に延びる(上下方向に沿う面方向を有する)。フィン12は、前後方向に沿って、例えば略等間隔で配列される。放熱部10は、左右側面においてボルト14により固定具15と連結される。放熱部10は、この固定具15を介して一対の遮熱板50に固定(架設)される。
【0017】
ヒータ20は、両端に端子21を有する、例えばシーズヒータである。ヒータ20は、主に前後方向に延びたU字形状を有する。ヒータ20は、端子21を放熱部10から露出してヒータ収容部11に収容されている。ヒータ20は、放熱部10の内部に鋳込まれることにより、放熱部10と一体成形される。
【0018】
筐体30は、放熱部10を収容し、暖房機1の外郭をなす。筐体30は、前板31と、後板32と、下板33と、上カバー34と、左右パネル35と、遮熱板50と、仕切板60と、を有する。前板31、後板32、下板33、上カバー34、および左右パネル35は、例えば冷間圧延鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板などの薄鋼板からなる。遮熱板50および仕切板60は、例えば薄鋼板からなる。
【0019】
前板31は、暖房機1の前面に沿って配置される。前板31は、表示部37と、操作部38と、前側取っ手39と、を有する。表示部37は、暖房機1の運転状態や操作内容を表示する、例えば液晶表示パネルである。操作部38は、暖房機1の電源のオン、オフや、運転内容の指示を受け付ける。前側取っ手39は、表示部37の上方に配置され、ユーザによる暖房機1の移動に用いられる。後板32は、暖房機1の後面に沿って配置される。後板32は、前側取っ手39と前後方向において対になる位置に、後側取っ手(図示せず)を有する。
【0020】
下板33は、筐体30の下方に配置される。下板33は、前板31、後板32、および遮熱板50のベースとなる。下板33は、前後方向においてヒータ室30aおよび基板室30bに亘って配置される。ヒータ室30a側に位置する下板33は、ヒータ室30aへ空気を取り入れるヒータ室側吸込口40aを有する。基板室30b側に位置する下板33は、基板室30bへ空気を取り入れる基板室側吸込口40bを有する。下板33は、暖房機1を移動するために用いられる一対のキャスター付脚41を有する。キャスター付脚41は、筐体30の鉛直方向下方に固定される。キャスター付脚41の詳細については、後述する。
【0021】
上カバー34は、暖房機1の上面に沿って配置される。上カバー34は、グリル42と、金網43と、パネル取付具45と、を有する。グリル42は、ヒータ室側吸込口40aまたは基板室側吸込口40bから取り入れられ、暖房機1内を下から上に向かって流れる空気を吹き出すヒータ室側吹出口46aを有する。金網43は、ヒータ室側吹出口46aを塞ぐように、グリル42の下方に配置される。パネル取付具45は、金網43の下方に配置され、一対の遮熱板50間に前後に架設された枠部材である。パネル取付具45は、左右パネル35を固定するための構造である爪部45aを左右の枠面に有する。
【0022】
左右パネル35は、暖房機1の左右側面に沿ってそれぞれ配置される。左右パネル35は、放熱部10からの高温の熱に対するユーザの安全性を確保するため、放熱部10を覆って遮蔽する。これにより、暖房機1の内部はユーザにより視認されない。
【0023】
左右パネル35は、上端に内面方向の折返し(図示せず)を有する。左右パネル35の上端は、この折り返しをパネル取付具45の爪部45aに引っ掛けることにより固定されている。左右パネル35の下端は、下板33にネジ止めされることにより固定されている。また、左右パネル35の前後端は、前板31および後板32にそれぞれ係止されている。左右パネル35の中央部36aは、外縁部36bに対して放熱部10から離れるように膨出した形状を有している。これにより左右パネル35は、遮熱板50とは非接触に固定されているとともに、放熱部10との間に一定の隙間が設けられている。このため、左右パネル35は、過剰な温度上昇が抑制されている。
【0024】
遮熱板50は、放熱部10からの熱を、前板31および後板32と放熱部10との間で遮熱する。遮熱板50は、下板33に下部が固定され、遮熱板50の上方に位置するパネル取付具45に上部が固定される。これにより、遮熱板50、パネル取付具45および下板33は、暖房機1(ヒータ室30a)の内部骨格を構成している。
【0025】
前方に配置され、前板31と対向する前遮熱板51は、筐体30内部を仕切り、放熱部10と電子部品とを隔離する。すなわち、前遮熱板51は、筐体30がヒータ20を収容するヒータ室30aと、電源基板80、サーモスタット85、リード線87および主制御基板70を収容する基板室30bと、を有するように、筐体30内部を区画する。基板室30bは、ヒータ室30aと前後方向(鉛直方向に直交する水平方向)において区画されている。前遮熱板51は、鉛直方向上方に、基板室側吹出口46b(吹出口)を有する。基板室側吹出口46bは、基板室30bを自然対流で上昇する空気をヒータ室30a側に放出する。
【0026】
仕切板60は、基板室30b内に配置され、基板室30bを電源基板80およびリード線87を含む第一空間90と、主制御基板70を含む第二空間91と、に仕切る。第二空間91は、仕切板60が位置する上下方向の範囲において、仕切板60より前方に位置する空間である。第一空間90は、基板室30bにおける第二空間91以外の空間である。なお、図2および図3から明らかなとおり、第一空間90と第二空間91とは、仕切板60により全ての境界が明確に隔離されているわけではない。
【0027】
仕切板60は、基面61と、傾斜面62と、固定片63と、を有する。基面61は、上下方向に沿う面方向を有する平板である。基面61は、図3に示すように、主制御基板70よりも後方であって、電源基板80およびリード線87よりも前方に配置される。基面61の上端61a(仕切板60の上端)は、電源基板80からの放熱、およびリード線87からのノイズを考慮して、主制御基板70の上方に位置する。基面61の左右の辺61bと遮熱板50との間には、遮熱性およびノイズに対する遮蔽性から、隙間が設けられないのが好ましい。
【0028】
傾斜面62は、基面61の下端(基面下端61c)と連続的に形成された平板であり、基面下端61c位置から下方に向けて前板31に近づくように傾斜する。傾斜面62の下端(傾斜面下端62c)は、前板31に対して隙間92を有する。傾斜面下端62cは、主制御基板70よりも下方に位置する。固定片63は、基面61の左右の辺61bに断続的に設けられ、仕切板60を前遮熱板51の左右側面51aに固定する。
【0029】
仕切板60は、傾斜面下端62c(仕切板60の下端)において、基板室側吸込口40bから吸い込まれ基板室側吹出口46bに向う空気の流路を、第一流路と、第二流路と、に分岐する。第一流路は、第一空間90を経由する、すなわち仕切板60の後方を経由する流路である。第二流路は、第二空間91を経由する、すなわち仕切板60の前方を経由する流路である。
【0030】
主制御基板70は、暖房機1を統括的に制御するマイクロコンピュータを有する回路基板である。主制御基板70は、操作部38を介してユーザの指示を受け付け、この指示に基づいて電源基板80からヒータ20への電源の供給を制御する。
【0031】
また、主制御基板70は、必要な情報を表示するため表示部37を制御する。主制御基板70は、表示部37および操作部38とともに、前板31の表示部37および操作部38の背面側に固定されている。
【0032】
主制御基板70は、室温サーミスタ71およびプラグサーミスタ72と接続されている。室温サーミスタ71(室温センサ)は、キャスター付脚41に固定され、暖房機1の外部の温度を室温とし、主制御基板70に室温に関する情報を供給する。主制御基板70は、室温サーミスタ71から得られた室温に応じて、ヒータ20への電源の供給を制御する。プラグサーミスタ72は、電源プラグ86内に収容されたサーミスタであり、電源プラグ86の温度を検出する。主制御基板70は、プラグサーミスタ72から、トラッキング現象などが発生したとみなされる異常な高温を検出した場合、暖房機1の電源をオフする(ヒータ20への電力供給を停止する)。
【0033】
電源基板80は、主制御基板70の制御に基づいて、各ヒータ20へ電源を供給する。電源基板80は、トライアック81と、ヒートシンク82と、を主に有する。トライアック81は、ヒータ20への電源供給をオン、オフ制御する。ヒートシンク82は、トライアック81の熱を放熱する。
【0034】
また、電源基板80は、サーモスタット85および電源プラグ86と接続されている。サーモスタット85は、リード線87および電源基板80を介して電源プラグ86と直列に接続されている。サーモスタット85は、電源基板80の鉛直方向上方であって、かつ主制御基板70および仕切板60よりも上方に配置される。サーモスタット85は、前遮熱板51に固定され、基板室30bの雰囲気温度が異常な高温となった場合、暖房機1の電源をオフする(ヒータ20への電力供給を遮断する)。
【0035】
主制御基板70は、電源基板80とサーモスタット85の間であって、第二空間91に配置されている。電源基板80は、主制御基板70の下方であって、第一空間90に配置されている。また、リード線87は、第一空間90を上下方向に延びている。
【0036】
ここで、本実施形態においては、主制御基板70は、ヒータ20の出力が、選択された出力レベルになるよう、各ヒータの出力を個別に制御する制御部として機能する。以下、主制御基板70による、ヒータ20の出力制御の詳細について説明する。
【0037】
各ヒータ20の出力は、電源基板80のトライアック81の制御により、0%、50%および100%の間で、可変となっている。出力0%は、ヒータ20が非通電となっている状態である。出力100%は、ヒータ20が通電されている状態である。出力50%は、所定時間(例えば1分)において同時間ずつ(例えば30秒ずつ)、ヒータ20が通電および非通電となる状態である。また、上段ヒータ20aは300W、中段ヒータ20bおよび下段ヒータ20cは600Wの出力を有する。
【0038】
主制御基板70は、予めプログラムされた複数の出力レベルを切り換えながら、室温サーミスタ71から得られる室温に応じて、ヒータ20の出力を制御する。出力レベルは、ヒータ20の出力の合計が出力値として段階的に割り当てられた、複数のレベルを含み、例えば、レベル1からレベル5まで設定されている。各出力レベルの出力は、レベルに応じて段階的に変化し、レベル1が最も出力が小さく、レベル5が最も出力が大きい。
【0039】
例えば、暖房機1が自動で出力を制御する自動運転中である場合、主制御基板70は、室温サーミスタ71での検知値と、操作部38を介してユーザより受け付けた設定温度との差に応じて、出力レベルを制御する。具体的には、室温が上昇し設定温度に近づくと、出力レベルを下げる。また、室温が低下し設定温度から離れると、出力レベルを上げる。また、暖房機1は、操作部38を介して、ユーザから直接出力レベルの選択を受け付ける手動運転中である場合には、主制御基板70は、ユーザの選択に基づいて出力レベルを制御する。
【0040】
次に、室温を早期に設定温度まで上昇させる速暖運転について、図5のフローチャートに基づいて詳述する。
なお、以下の説明において、ユーザにより操作部38を介して予め設定された設定温度を第1設定温度とし、第1設定温度より所定値である+2.0℃だけ高い値を第2設定温度とする。
【0041】
操作部38を介して運転開始指示を受け付けたら、主制御基板70は、室温サーミスタ71での検知値が予め操作部38で設定された第1設定温度(以下、Aと記載)から2.0℃を差し引いた値以下である速暖運転開始温度か判断し(ステップS101)、室温サーミスタ71での検知値がA-2.0℃以下であれば、設定温度をA+2.0℃とした第2設定温度(以下、Ptと記載)に変更する(ステップS102)。第2設定温度と室温サーミスタ71との差に基づき、ヒータ20の出力レベルを決定して駆動する。また、主制御基板70は、前記ステップS101で室温サーミスタ71での検知値がA-2.0℃より高いと判断したら、速暖運転の必要はないとして通常運転制御を実施する(ステップS107)。
【0042】
前記ステップS102の処理が完了したら、主制御基板70は、室温サーミスタ71の検知値がAとPtとの間にある所定温度のPt-0.5℃以上か判断し(ステップS103)、Pt-0.5℃以上であれば、Ptを所定値である0.1だけ低下させたPt-0.1℃となるよう変更する(ステップS104)。また、主制御基板70は、室温サーミスタ71の検知値がPt-0.5℃未満であれば、ステップS103の判断を繰り返す。
【0043】
前記ステップS104の処理が完了したら、主制御基板70は、前記ステップS104の処理が完了してから所定時間である3分経過したか判断し(ステップS105)、3分経過していれば、PtがAと同値か判断し(ステップS106)、PtがAと同値になったと判断したら、通常の運転制御に切り替えて速暖運転を終了する(ステップS107)。また、主制御基板70は、前記ステップS106でPtがAと同値になっていないと判断したら、前記ステップS104に戻り、Ptを所定値である0.1だけ更に低下させる。
【0044】
前記ステップS106でPtがAと同値でないと判断されたら、前記ステップS104でPt-0.1℃が3分経過毎に繰り返される。Ptが徐々に低下してAになったら、速暖運転を終了させ通常の運転制御に戻る。
【0045】
次に、速暖運転時における室温サーミスタ71での検知値と実際の室温値との関係を図6に基づいて説明する。
【0046】
速暖運転の開始後、室温サーミスタ71での検知値は筐体30から離れた位置で計測した室温である実際の室温値とほぼ同一の温度で推移するが、室温サーミスタ71はヒータ20による放熱の影響を受けることで、時間経過と共に実際の室温値と乖離する。具体的には、室温サーミスタ71での検知値が実際の室温値よりも高めとなる。速暖運転時、室温サーミスタ71での検知値は設定温度より大幅に低いことから、最大出力である出力レベル5でヒータ20が駆動し続ける。室温サーミスタ71はヒータ20による放熱の影響を大きく受け、時間経過に伴い室温サーミスタ71での検知値と実際の室温値との差は大きくなる。
【0047】
室温サーミスタ71での検知値が第1設定温度と第2設定温度との間にある所定温度の21.5℃に達するT1のタイミングで、所定時間である3分経過毎に第2設定温度を0.1℃ずつ低下させる。第2設定温度が低下すると、第2設定温度と室温サーミスタ71での検知値との差が縮まる。ヒータ20は、室温サーミスタ71と設定温度との差が縮まると出力レベルが小さくなるので、時間経過に伴いヒータ20の出力レベルが徐々に小さくなる。
【0048】
ヒータ20の出力レベルが徐々に小さくなると、室温サーミスタ71の検知値は緩やかに低下する。実際の室温値もヒータ20の出力レベルが徐々に低下することで緩やかに低下する。ヒータ20の出力レベルが低下したことで、室温サーミスタ71の検知値が実際の室温値に近い温度となる。室温サーミスタ71での検知値と実際の室温値とが時間経過と共に近づく。
【0049】
第2設定温度が操作部38で予め設定した第1設定温度まで低下するT2のタイミングで速暖運転を終了し、第1設定温度に基づいた出力レベルでヒータ20を駆動させる通常運転を実施する。通常運転の実施時、室温サーミスタ71での検知値は、第1設定温度、及び実際の室温値の近傍にあり、大きな出力レベルでヒータ20が駆動しない。室温サーミスタ71での検知値と実際の室温値とが乖離せず、実際の室温値を第1設定温度の近傍に保持することができる。
【0050】
次に、比較例として速暖運転時に室温サーミスタ71が第2設定温度を検知したら、設定温度をすぐに第1設定温度に変更した場合を、図7に基づき説明する。
【0051】
通常運転時における設定温度である第1設定温度を20℃、速暖運転時における設定温度である第2設定温度を22℃とする。操作部38で運転開始指示があり、室温サーミスタ71での検知値が設定温度より大幅に低いことで、速暖運転が開始される。速暖運転が開始されると、第2設定温度を設定温度としてヒータ20を制御する。室温サーミスタ71が第2設定温度である22℃付近を検知するまで、5の出力レベルでヒータ20を駆動させる。
【0052】
室温サーミスタ71が第2設定温度である22℃を検知するT1のタイミングで、設定温度を第1設定温度である20℃にする。室温サーミスタ71での検知値が設定温度を大幅に超えていることから、ヒータ20の出力レベルが0になる。室温サーミスタ71での検知値が20℃付近になるまでヒータ20の出力レベルが0の状態が継続することから、室温サーミスタ71での検知値、及び実際の室温値が急激に低下する。
【0053】
室温サーミスタ71での検知値が20℃以下になるT2のタイミングで、ヒータ20の出力レベルが上昇することから、室温サーミスタ71での検知値が上昇する。これに伴い、実際の室温値も上昇する。この後、室温サーミスタ71での検知値と設定温度との差でヒータ20の出力レベルが変化することで、室温サーミスタ71での検知値と実際の室温値とが設定温度付近を変動する。
【0054】
よって、速暖運転時に室温サーミスタ71が第2設定温度を検知した後、すぐに通常運転時の設定温度である第1設定温度に設定温度を戻すと、実際の室温値が大きく変動する。筐体30が設置された室内に存在するユーザは、速暖運転時に室温が大きく変動することを体感し不快に感じる。
【0055】
これに対し、本発明の実施例のように速暖運転時に室温サーミスタ71が第2設定温度を検知したら、所定時間毎に所定値だけ第2設定温度を低下させることで、ヒータ20の出力レベルが徐々に低下し実際の室温値の低下が緩やかになることから、短時間で大幅に室温が上下することでのユーザの不快感を阻止できる。
【0056】
次に、本発明の効果を説明する。
【0057】
室温を早期に高める速暖運転の実施時、室温サーミスタ71の検知値と第1設定温度より所定値だけ高い第2設定温度との差に応じてヒータ20の出力を変更し、室温サーミスタ71の検知値が第1設定温度と第2設定温度との間にある所定温度に達したと判断したら、第2設定温度を徐々に低下させるので、室温サーミスタ71と設定温度との差に応じたヒータ20の出力レベルが急激に低下せず、実際の室温値が緩やかに低下して設定温度付近に達することから、短時間で大幅に室温が変動することでのユーザの不快感を未然に阻止できる。
【0058】
また、室温サーミスタ71の検知値が第1設定温度と第2設定温度との間にある所定温度に達したと判断したら、第2設定温度を所定時間毎に所定値だけ低下させるので、ヒータ20の出力レベルが徐々に低下することから、急激な室温低下を招くことがなく、ユーザの不快感を未然に阻止できる。
【0059】
また、第2設定温度が第1設定温度まで低下したら、速暖運転を終了するので、実際の室温が設定温度付近を上下する安定した状態で暖房運転を継続することができ、ユーザが室内で快適に過ごすことができる。
【0060】
なお、ここで実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0061】
例えば、ここでの実施例では、速暖運転時の開始条件を設定温度-室温サーミスタ71の検知値が+2.0℃とし、第2設定温度を第1設定温度+2.0℃とし、室温サーミスタ71が第2設定温度と第1設定温度との間にある所定温度の第2設定温度-0.5℃に到達した後、3分経過毎に0.1℃の幅で第2設定温度を低下させる内容で説明したが、各数値は種々の事情に合わせて変更してもよい。例えば、断熱性の高い家屋では、第2設定温度を第1設定温度+2.0℃よりも低くしてもよい。断熱性の高い家屋は断熱性の低い家屋と比較し、ヒータ20により実際の室温が素早く上昇し、室温の低下速度も低いことから、速暖運転による室温の上昇、低下をより適切に制御することができる。
【0062】
また、ヒータ20が主に前後方向に延びるU字形状のシーズヒータである例を説明したが、上下方向に延びたり、I字、L字形状などの他の形状であったり、シーズヒータ以外の他の種類のヒータであったりしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 暖房機
20 ヒータ
20a 上段ヒータ
20b 中段ヒータ
20c 下段ヒータ
30 筐体
70 主制御基板(制御部)
71 室温サーミスタ(室温センサ)
図1
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