(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162242
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】基板の接続構造
(51)【国際特許分類】
H05K 1/14 20060101AFI20221017BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
H05K1/14 D
H05K1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066955
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増山 聖人
(72)【発明者】
【氏名】菊池 瑶子
【テーマコード(参考)】
5E338
5E344
【Fターム(参考)】
5E338AA02
5E338BB13
5E338BB15
5E338BB17
5E338BB61
5E338EE22
5E338EE31
5E344AA08
5E344AA09
5E344AA19
5E344AA22
5E344AA28
5E344BB06
5E344CC05
5E344CC11
5E344CC14
5E344DD03
5E344DD15
5E344EE12
5E344EE21
(57)【要約】
【課題】サブ基板のメイン基板に対する差し込み荷重の大きな変動を抑え、両基板が損傷するのを抑制する。
【解決手段】貫通穴36の一側に、貫通穴36の貫通方向と交差する方向に交互に並ぶ第1凸部P1および第1凹部D1を設け、貫通穴36の他側に、貫通穴36の貫通方向と交差する方向に交互に並ぶ第2凸部P2および第2凹部D2を設けた。第1凸部P1は第1面S1を支持し、第1凹部D1は第1面S1との間に隙間を形成し、第2凸部P2は第2面S2を支持し、第2凹部D2は第2面S2との間に隙間を形成する。貫通穴36と差込部55との接触面積を十分に減らしつつ、貫通穴36と差込部55との接触部分を貫通穴36の貫通方向と交差する方向に分散させることができる。熱膨張等によるサブ基板50のメイン基板30に対する差し込み荷重の大きな変動が抑えられ、両基板30,50が損傷するのを抑制できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン基板とサブ基板とを接続するための基板の接続構造であって、
前記メイン基板に設けられ、当該メイン基板の板厚方向に貫通された貫通穴と、
前記サブ基板に設けられ、第1面および第2面を有するとともに前記貫通穴に差し込まれる差込部と、
前記貫通穴の一側に設けられ、前記貫通穴の貫通方向と交差する方向に交互に並ぶ第1凸部および第1凹部と、
前記貫通穴の他側に設けられ、前記貫通穴の貫通方向と交差する方向に交互に並ぶ第2凸部および第2凹部と、
を備え、
前記第1凸部は前記第1面を支持し、前記第1凹部は前記第1面との間に隙間を形成し、
前記第2凸部は前記第2面を支持し、前記第2凹部は前記第2面との間に隙間を形成することを特徴とする、
基板の接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の基板の接続構造において、
前記差込部に、前記第1面および前記第2面に対して交差する方向に延び、かつ前記貫通穴の貫通方向に延びる第3面および第4面が設けられ、
前記貫通穴に、前記第3面との間に隙間を形成する第3凹部および前記第4面との間に隙間を形成する第4凹部が設けられていることを特徴とする、
基板の接続構造。
【請求項3】
前記貫通穴をその貫通方向から見たときに、前記第1凹部ないし前記第4凹部が、それぞれ円弧形状に形成されていることを特徴とする、
請求項2に記載の基板の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイン基板とサブ基板とを接続するための基板の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線が施されたメイン基板に取付孔を設け、当該取付孔にプリント配線が施されたサブ基板の接続片を挿入し、メイン基板およびサブ基板を互いにはんだ付けにより電気的に接続した技術が、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された技術では、メイン基板の取付孔の長手方向一側寄りの部分に切欠きを設け、当該切欠きにサブ基板のジャンパー線を通過可能として、サブ基板の接続片とメイン基板の取付孔との接続方向性を無くすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された技術では、切欠きの部分を除く殆どの部分において、取付孔(メイン基板)および接続片(サブ基板)が互いに接触している。したがって、例えば、周辺温度の変化に伴いメイン基板およびサブ基板がそれぞれ個別に熱膨張すると、接続片の取付孔への挿入荷重が大きくなり、その結果、サブ基板のメイン基板への組み付けが困難になるという問題が生じていた。そこで、接続片の取付孔への挿入荷重を大きくすることも考えられるが、この場合には、サブ基板のプリント配線を損傷させたり、それぞれの基板が歪んではんだクラック等を生じさせたりする虞があった。
【0006】
本発明の目的は、サブ基板のメイン基板に対する差し込み荷重の大きな変動を抑えて、両基板が損傷することを抑制できる基板の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、メイン基板とサブ基板とを接続するための基板の接続構造であって、前記メイン基板に設けられ、当該メイン基板の板厚方向に貫通された貫通穴と、前記サブ基板に設けられ、第1面および第2面を有するとともに前記貫通穴に差し込まれる差込部と、前記貫通穴の一側に設けられ、前記貫通穴の貫通方向と交差する方向に交互に並ぶ第1凸部および第1凹部と、前記貫通穴の他側に設けられ、前記貫通穴の貫通方向と交差する方向に交互に並ぶ第2凸部および第2凹部と、を備え、前記第1凸部は前記第1面を支持し、前記第1凹部は前記第1面との間に隙間を形成し、前記第2凸部は前記第2面を支持し、前記第2凹部は前記第2面との間に隙間を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貫通穴と差込部との接触面積を十分に減らしつつ、貫通穴と差込部との接触部分を貫通穴の貫通方向と交差する方向に分散させることができる。したがって、熱膨張等によるサブ基板のメイン基板に対する差し込み荷重の大きな変動が抑えられ、ひいては両基板が損傷することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明を適用したセンサ基板の表側の斜視図である。
【
図2】
図1のセンサ基板の裏側を部分的に拡大した斜視図である。
【
図3】(a),(b)は、メイン基板の表裏を示す図である。
【
図4】(a),(b)は、サブ基板の表裏を示す図である。
【
図5】貫通穴と差込部との関係を説明する図である。
【
図6】(a),(b),(c)は、貫通穴の成形手順を示す図である。
【
図8】センサ基板の組み立て工程(1)を説明する斜視図である。
【
図9】センサ基板の組み立て工程(2)を説明する斜視図である。
【
図10】(a),(b),(c)は、本実施形態,比較例Aおよび比較例Bの比較結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明を適用したセンサ基板の表側の斜視図を、
図2は
図1のセンサ基板の裏側を部分的に拡大した斜視図を、
図3(a),(b)はメイン基板の表裏を示す図を、
図4(a),(b)はサブ基板の表裏を示す図を、
図5は貫通穴と差込部との関係を説明する図を、
図6(a),(b),(c)は貫通穴の成形手順を示す図を、
図7は貫通穴の寸法を説明する図を、
図8はセンサ基板の組み立て工程(1)を説明する斜視図を、
図9はセンサ基板の組み立て工程(2)を説明する斜視図を、
図10(a),(b),(c)は本実施形態,比較例Aおよび比較例Bの比較結果を説明する図をそれぞれ示している。
【0012】
図1に示されるセンサ基板10は、回転軸SHの回転状態を検出するために用いられるもので、回転軸SHに固定された環状のセンサマグネットMGの径方向外側に、所定間隔(エアギャップ)を持って配置されている。ここで、回転軸SHには、例えば、正逆回転が可能なブラシレスモータ(図示せず)の回転軸が挙げられる。
【0013】
より具体的には、センサ基板10には、一対の磁気センサSEが設けられ、これらの磁気センサSEは、センサマグネットMGの径方向外側において、センサマグネットMGの周方向に所定間隔で配置されている。そして、センサマグネットMGは、その周方向にN極,S極,N極…と交互に並ぶように着磁されており、これらのN極とS極との切り替わりを一対の磁気センサSEがそれぞれ所定のタイミングで検出する。これにより、コントローラ(図示せず)は、ブラシレスモータの回転方向や回転速度を制御可能となっている。
【0014】
なお、磁気センサSEには、ホールICやMRセンサ等を採用することができる。また、センサ基板10に対する磁気センサSE等の配置関係を分かり易くするために、
図1ないし
図4および
図8,
図9では、他の電子部品を含めて電気を通す部品に網掛けを施している。
【0015】
センサ基板10は、1つの大きなメイン基板30と、2つの小さなサブ基板50と、を備えている。メイン基板30は、センサ基板10の大部分を占めており、一対のサブ基板50は、小さな磁気センサSEをそれぞれ実装可能な程度の大きさとなっている。ここで、一対のサブ基板50は、その差込部55(
図4参照)をメイン基板30の貫通穴36(
図3参照)に差し込んで固定されている。
【0016】
このとき、差込部55は、貫通穴36に対して、比較的小さな押圧力を付加することにより嵌り込むようになっている。すなわち、差込部55は、貫通穴36に対して、緩い状態でガタを有するように入り込むことがない。これにより、センサ基板10の組み立て作業性を向上させることができ、かつメイン基板30に対するサブ基板50の位置決めを精度良く行うことができる。
【0017】
図1ないし
図3に示されるように、メイン基板30は、基材31の表面SF1および裏面SF2に、銅箔等からなる第1電子回路32および第2電子回路33がそれぞれ印刷されたプリント基板(PCB)となっている。なお、銅箔等からなる第1,第2電子回路32,33は、実装面である表面SF1および裏面SF2において、複数の電子部品EP(
図2および
図3(b)参照)が電気的に接続される露出部分を除き、その他の部分がソルダレジスト(絶縁保護膜)SRによって覆われている。
【0018】
ここで、メイン基板30の基材31には、本実施の形態では、ガラス布基材エポキシ樹脂(FR-4)を用いている。ただし、基材31に必要とされる仕様によっては、その他の素材、例えば、複合基材エポキシ樹脂(CEM-3)を用いることもできる。
【0019】
図3(a)に示されるように、メイン基板30の表面SF1には、略箱形状に形成されたコネクタ接続部34が設けられている。コネクタ接続部34は、プラスチック等の絶縁材料からなり、当該コネクタ接続部34には、回転軸SHの回転状態を制御するコントローラからの接続コネクタ(図示せず)が接続されるようになっている。これにより、一対の磁気センサSE(
図1および
図2参照)からの検出信号(磁極の切り替わり信号)が、コントローラに送出される。よって、コントローラは、回転軸SHの回転状態を把握しつつ、回転軸SHの回転状態を制御可能となっている。
【0020】
コネクタ接続部34の内部には、黄銅等の導電性に優れた材料からなる合計6本のターミナルTM(オス型端子)が設けられている。そして、ターミナルTMの基端部はメイン基板30に固定されており、ターミナルTMの先端部はコネクタ接続部34の内部に露出されている。具体的には、ターミナルTMの基端部は、メイン基板30の裏面SF2において、はんだ付け(Soldering)により第2電子回路33に電気的に接続されている。
【0021】
また、
図3(b)に示されるように、メイン基板30の裏面SF2には、コンデンサや抵抗、さらにはツェナーダイオード等からなる複数の電子部品EPが実装されている。これらの電子部品EPについても、はんだ付けにより第2電子回路33にそれぞれ電気的に接続されている。
【0022】
図1ないし
図3に示されるように、メイン基板30には、センサマグネットMGと対向する円弧状対向部35が設けられている。円弧状対向部35は、表面SF1および裏面SF2が広がる方向に対して交差する方向に延びており、メイン基板30の側壁の一部を形成している。
【0023】
円弧状対向部35の近傍には、一対の貫通穴36が設けられている。これらの貫通穴36は、メイン基板30の板厚方向(
図3の奥行方向)に貫通しており、
図3に示されるように、細長い長孔となっている。これらの貫通穴36は、それぞれリュータービットRB1,RB2(
図6参照)を用いて形成される。これらの貫通穴36の詳細形状および成形手順については、後で詳述する。なお、リュータービットとは、電動工具の回転部に装着される先端治具(ドリル等)のことである。
【0024】
また、一対の貫通穴36は、円弧状対向部35に沿うようにして延びており、これにより、それぞれの貫通穴36に装着されたサブ基板50の磁気センサSE(
図1および
図2参照)は、センサマグネットMGの外周部分と対向する。具体的には、それぞれの磁気センサSEの検出面DF(
図2参照)の真正面に、センサマグネットMGの外周部分が対向する。よって、一対の磁気センサSEの検出精度がそれぞれ同等に保たれている。
【0025】
さらに、
図2,
図3および
図9に示されるように、メイン基板30の裏面SF2における一対の貫通穴36の周囲には、第2電子回路33の一部を形成する合計6つのメイン基板側端子T1が、それぞれ露出されている。これらのメイン基板側端子T1には、サブ基板50のサブ基板側端子t1(
図4参照)がそれぞれはんだ付けにより電気的に接続される。
【0026】
また、
図3に示されるように、メイン基板30には、合計3つのねじ挿通孔37が設けられている。つまり、メイン基板30(センサ基板10)は、合計3つの固定ねじ(図示せず)により、固定対象物(ブラシレスモータのハウジング等)に固定される。3つのねじ挿通孔37のうちの2つは、円弧状対向部35の長手方向両側に配置されている。これは、円弧状対向部35の近傍に配置される一対のサブ基板50のがたつき等を、効果的に抑制するためである。よって、一対の磁気センサSEの検出精度がそれぞれ向上されている。
【0027】
図1,
図2および
図4に示されるように、サブ基板50は、基材51の表面SF1および裏面SF2に、銅箔等からなる第1電子回路52および第2電子回路53がそれぞれ印刷されたプリント基板(PCB)となっている。なお、第1,第2電子回路52,53は、表面SF1および裏面SF2において、互いに鏡像対称となるように同じ形状に形成されている。これらの第1,第2電子回路52,53には、磁気センサSEの第1端子部TM1,第2端子部TM2および第3端子部TM3が、それぞれ電気的に接続されている。また、サブ基板50においても、基材51の表面SF1および裏面SF2に、ソルダレジスト(絶縁保護膜)SRが塗布されている。
【0028】
ここで、サブ基板50の基材51においても、本実施の形態では、ガラス布基材エポキシ樹脂(FR-4)を用いている。ただし、基材51に必要とされる仕様によっては、その他の素材、例えば、複合基材エポキシ樹脂(CEM-3)を用いることもできる。ただし、メイン基板30およびサブ基板50の熱膨張および熱収縮を互いに同等とするために、メイン基板30およびサブ基板50の素材は、互いに同一の素材に設定するのが望ましい。
【0029】
サブ基板50は、センサ実装部54と差込部55とを備えている。そして、センサ実装部54の表面SF1に、磁気センサSEが実装されている。一方、差込部55は、略長方形に形成されたセンサ実装部54に一体に設けられ、メイン基板30の貫通穴36(
図3参照)に差し込まれて固定される部分となっている。ここで、
図4(a),(b)では、センサ実装部54と差込部55との境界部分に基準線(一点鎖線)を施している。そして、第1,第2電子回路52,53は、センサ実装部54と差込部55との間を跨ぐようにして配置されている。
【0030】
図4(a)に示されるように、サブ基板50の表面SF1側でかつ差込部55の部分は、第1面S1となっている。第1面S1は、差込部55を貫通穴36に差し込んだ状態で、貫通穴36の内側の第1凸部P1および第1凹部D1(
図5参照)と対向する部分となっている。そして、差込部55の第1面S1の差し込み方向先端寄りの部分には、第1電子回路52の一部を形成する合計3つのサブ基板側端子t1が露出されている。これらのサブ基板側端子t1は、メイン基板30の裏面SF2側でかつ貫通穴36の周囲に設けられたメイン基板側端子T1(
図2および
図3(b)参照)に、それぞれはんだ付けにより電気的に接続される。
【0031】
また、
図4(b)に示されるように、サブ基板50の裏面SF2側でかつ差込部55の部分は、第2面S2となっている。第2面S2は、差込部55を貫通穴36に差し込んだ状態で、貫通穴36の内側の第2凸部P2および第2凹部D2(
図5参照)と対向する部分となっている。そして、差込部55の第2面S2の差し込み方向先端寄りの部分には、第2電子回路53を形成する合計3つのサブ基板側端子t1が露出されている。これらのサブ基板側端子t1は、メイン基板30の裏面SF2側でかつ貫通穴36の周囲に設けられたメイン基板側端子T1(
図2および
図3(b)参照)に、それぞれはんだ付けにより電気的に接続される。
【0032】
このように、サブ基板50の差込部55における第1面S1および第2面S2には、メイン基板30に設けられた合計6つのメイン基板側端子T1に対して、それぞれ電気的に接続される合計6つのサブ基板側端子t1が設けられている。
【0033】
さらに、
図2,
図4および
図5に示されるように、差込部55の第1面S1と第2面S2の周囲で、かつ第1面S1と第2面S2との間には、第3面S3および第4面S4が設けられている。これらの第3面S3および第4面S4は、第1面S1および第2面S2に対して交差する方向に延び、かつメイン基板30の貫通穴36の貫通方向(
図5の奥行方向)に延びている。
【0034】
第3面S3は、差込部55を貫通穴36に差し込んだ状態で、貫通穴36の内側に設けられた第3凹部D3(
図5参照)と対向する部分となっている。一方、第4面S4は、差込部55を貫通穴36に差し込んだ状態で、貫通穴36の内側に設けられた第4凹部D4(
図5参照)と対向する部分となっている。
【0035】
図5に示されるように、メイン基板30に設けられる貫通穴36の一側(図中下側)には、差込部55の第1面S1と接触して、当該第1面S1を支持する複数の第1凸部P1が設けられている。また、第1面S1との間に微小な隙間(非接触部分)を形成する複数の第1凹部D1が設けられている。そして、これらの第1凸部P1および第1凹部D1は、貫通穴36の貫通方向と交差する方向(貫通穴36の長手方向)にそれぞれ交互に並べられている。具体的には、
図5に示されるように、貫通穴36の長手方向(図中左右方向)に対して、合計5つの第1凹部D1と合計4つの第1凸部P1とが、1つずつ交互に並べられている。
【0036】
また、貫通穴36の他側(図中上側)には、差込部55の第2面S2と接触して、当該第2面S2を支持する複数の第2凸部P2が設けられている。さらに、第2面S2との間に微小な隙間(非接触部分)を形成する複数の第2凹部D2が設けられている。そして、これらの第2凸部P2および第2凹部D2は、貫通穴36の貫通方向と交差する方向(貫通穴36の長手方向)にそれぞれ交互に並べられている。具体的には、
図5に示されるように、貫通穴36の長手方向(図中左右方向)に対して、合計5つの第2凹部D2と合計4つの第2凸部P2とが、1つずつ交互に並べられている。
【0037】
なお、第1凸部P1と第2凸部P2および第1凹部D1と第2凹部D2は、それぞれ差込部55を挟むようにして、互いに真正面となるように対向配置されている。また、貫通穴36は、第3凹部D3および第4凹部D4を備えており、これらの第3凹部D3および第4凹部D4においても、差込部55を挟むようにして、互いに真正面となるように対向配置されている。そして、第3凹部D3は、差込部55の第3面S3との間に微小な隙間(非接触部分)を形成し、第4凹部D4は、差込部55の第4面S4との間に微小な隙間(非接触部分)を形成している。
【0038】
さらに、
図5に示されるように、貫通穴36をその貫通方向(
図5の奥行方向)から見たときに、第1凹部D1ないし第4凹部D4は、それぞれ角部が無い略円弧形状に形成されている。これにより、差込部55の貫通穴36への差し込み時において、仮に第1凸部P1および第2凸部P2のそれぞれに大きな負荷が掛かったとしても、応力集中する角部が無いため、貫通穴36の周辺に亀裂等が生じることが効果的に抑えられる。
【0039】
また、
図5に示されるように、貫通穴36の長手方向に対して、第1凸部P1と第1凹部D1および第2凸部P2と第1凹部D2が、それぞれ分散して配置されている。これにより、差込部55の貫通穴36への差し込み時に作用する差し込み荷重を、貫通穴36の周囲に分散させることが可能となっている。したがって、これによっても、貫通穴36の周辺に亀裂等が生じることが効果的に抑えられる。
【0040】
次に、貫通穴36の成形手順について図面を用いて詳細に説明する。
【0041】
まず、貫通穴36が形成されていない穴空け加工前のメイン基板30を準備する。次いで、
図6(a)に示されるように、0.95mmの直径寸法の穴を空けることができるリュータービットRB1を用いて、6.25mmの長さ寸法の長穴H1を形成する。このとき、メイン基板30の表面SF1および裏面SF2(
図3参照)に対して直交する方向からリュータービットRB1を複数回(例えば10回)上下動させ、かつ矢印M1に示されるように少しずつずらしながら複数の穴を空けていく。これにより、
図6(a)に示されるような長穴H1が形成される。
【0042】
なお、リュータービットRB1により形成される長穴H1の長さ寸法6.25mmは、
図7に示されるように、完成後の貫通穴36の長さ寸法6.25mmに一致している。また、リュータービットRB1の直径寸法0.95mmは、
図7に示されるように、第1凸部P1と第2凸部P2との離間距離に一致している。
【0043】
次に、
図6(b)に示されるように、1.05mmの直径寸法の穴を空けることができるリュータービットRB2を用いて、長穴H1の長手方向両側に、長さ寸法が1.55mmの楕円穴H2をそれぞれ形成する。このとき、リュータービットRB2の取り扱いについても上述と同様であり、メイン基板30の表面SF1および裏面SF2に対して直交する方向からリュータービットRB2を複数回(例えば2回)上下動させ、かつ矢印M2および矢印M3に示されるように少しだけずらして、0.95mmの幅を1.05mmの幅に広げる。これにより、
図6(b)に示されるように、長穴H1の長手方向両側に楕円穴H2がそれぞれ形成される。
【0044】
その後、
図6(c)に示されるように、再び直径寸法が1.05mmのリュータービットRB2を用いて、長穴H1の長手方向中央部から、その両側に向けて、矢印M4および矢印M5に示されるように、合計5つの仕上穴H3を形成していく。ここで、長穴H1の長手方向中央部から仕上穴H3を形成することで、リュータービットRB2の位置制御を容易にしている。ただし、仕上穴H3を形成する順序は、上述に限らず、例えば、長穴H1の長手方向一側から長手方向他側(例えば、図中左側から図中右側)に向けて順番に形成しても良い。これにより、リュータービットRB2により加工される箇所(
図6(c)の1ないし5の箇所)、つまり仕上穴H3の箇所に、互いに対向配置された第1凹部D1および第2凹部D2が形成される。
【0045】
なお、仕上穴H3の中心間距離は、1.00mmに設定されている。また、長穴H1の長手方向両側の楕円穴H2の部分においては、第1凹部D1および第2凹部D2のそれぞれが、他の部分の第1凹部D1および第2凹部D2よりも長さ寸法が長くなっている。これにより、最終的に、
図7に示されるような寸法関係の貫通穴36が形成される。
【0046】
なお、リュータービットRB2により形成される合計5つの仕上穴H3の直径寸法1.05mmは、
図7に示されるように、対向配置された第1凹部D1と第2凹部D2との離間距離に一致し、かつ第3凹部D3および第4凹部D4の直径寸法にも一致している。
【0047】
次に、以上のように形成されたセンサ基板10の組み立て手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0048】
図8に示されるように、まず、それぞれ別の製造工程で製造された1つのメイン基板30および2つのサブ基板50を準備する。次いで、図中矢印M6に示されるように、一対のサブ基板50を、メイン基板30の表面SF1側から一対の貫通穴36にそれぞれ臨ませる。このとき、サブ基板50の差込部55側を貫通穴36に向けつつ、サブ基板50に実装された磁気センサSEを、メイン基板30の円弧状対向部35側に向けるようにする。そして、サブ基板50のセンサ実装部54を所定圧で押圧しつつ、差込部55を貫通穴36に嵌め込む。このとき、サブ基板50に実装された磁気センサSEを押圧しないようにし、かつ差込部55をその根元まで貫通穴36に差し込む。これにより、サブ基板50のメイン基板30への仮装着が完了する。
【0049】
ここで、
図5に示されるように、差込部55を形成する第1面S1,第2面S2,第3面S3および第4面S4のうちの、第1面S1および第2面S2のみが合計4つの第1凸部P1および合計4つの第2凸部P2にそれぞれ接触する。そのため、貫通穴36と差込部55との接触面積を十分に小さくすることができ、ひいては熱膨張等によるサブ基板50のメイン基板30に対する差し込み荷重の大きな変動が抑えられる。
【0050】
また、貫通穴36と差込部55との接触部分が、貫通穴36の貫通方向と交差する方向に分散され、かつ第1凹部D1,第2凹部D2,第3凹部D3および第4凹部D4が、それぞれ角部が無い略円弧形状に形成されている。そのため、貫通穴36の周辺の一部への応力集中が緩和されて、ひいては貫通穴36の周辺の損傷等が効果的に抑えられる。
【0051】
次に、
図9の矢印M7に示されるように、メイン基板30の裏面SF2において、サブ基板50のサブ基板側端子t1(
図2参照)と、メイン基板30のメイン基板側端子T1(
図2参照)とをそれぞれはんだ付けにより電気的に接続する。ここで、はんだ付けの方法には、フローソルダリング(フローはんだ)が用いられる。具体的には、一対のサブ基板50および複数の電子部品EP等を仮装着したメイン基板30を、例えば、コンベア等ではんだ槽の槽内に搬送して、当該はんだ槽の内部で溶融されたはんだをメイン基板30の裏面SF2に噴き上げて電気的な接続を行う。これにより、センサ基板10の組み立てが完了する。
【0052】
差込部55が差し込まれる貫通穴36について、上述の本実施形態とは異なる形状について検討した。以下、その比較結果(比較例Aおよび比較例B)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0053】
図10(a)は、上述の本実施形態の貫通穴36であって、差込部55(
図5参照)と貫通穴36との接触面積(
図10(a)の破線部分参照)は「小」となり、接触面積が大きいもの、具体的には、第1凹部D1および第2凹部D2を備えないものに比して、差し込み荷重が十分に低減されていることが判った。よって、貫通穴36および差込部55の周辺に損傷等は全く無く、組み付け作業性を含めて、その評価結果は最良の「◎」となった。
【0054】
図10(b)の比較例Aは、上述の実施形態の貫通穴36に比して、仕上穴H3の数を5つから3つ(
図10(b)の1ないし3の箇所)とした点のみが異なっている。比較例Aにおいては、差込部55と貫通穴36との接触面積(
図10(b)の破線部分参照)は「中」となり、上述の実施形態よりも、差込部55の貫通穴36に対する差し込み荷重が若干大きくなることが判った。ただし、貫通穴36および差込部55の周辺に損傷等は全く無く、組み付け作業性を含めて、その評価結果は良好の「〇」となった。
【0055】
図10(c)の比較例Bは、上述の実施形態の貫通穴36に対して、1.05mmの直径寸法の穴を空けることができるリュータービットRB2に替えて、1.00mmの直径寸法の穴を空けることができるリュータービットRB3を用いた点のみが異なっている。すなわち、比較例Bにおいては、第1凹部D1と第2凹部D2との離間距離が小さくなっている。比較例Bにおいても、差込部55と貫通穴36との接触面積(
図10(c)の破線部分参照)は「中」となり、上述の実施形態よりも、差込部55の貫通穴36に対する差し込み荷重が若干大きくなることが判った。ただし、貫通穴36および差込部55の周辺に損傷等は全く無く、組み付け作業性を含めて、その評価結果は良好の「〇」となった。
【0056】
以上詳述したように、本実施の形態に係る基板の接続構造によれば、貫通穴36の一側に、貫通穴36の貫通方向と交差する方向に交互に並ぶ第1凸部P1および第1凹部D1を設け、貫通穴36の他側に、貫通穴36の貫通方向と交差する方向に交互に並ぶ第2凸部P2および第2凹部D2を設けた。そして、第1凸部P1は第1面S1を支持し、第1凹部D1は第1面S1との間に隙間を形成し、第2凸部P2は第2面S2を支持し、第2凹部D2は第2面S2との間に隙間を形成する。
【0057】
これにより、貫通穴36と差込部55との接触面積を十分に減らしつつ、貫通穴36と差込部55との接触部分を貫通穴36の貫通方向と交差する方向に分散させることができる。したがって、熱膨張等によるサブ基板50のメイン基板30に対する差し込み荷重の大きな変動が抑えられ、ひいては両基板30,50が損傷することを抑制することが可能となる。
【0058】
また、本実施の形態に係る基板の接続構造によれば、差込部55に、第1面S1および第2面S2に対して交差する方向に延び、かつ貫通穴36の貫通方向に延びる第3面S3および第4面S4が設けられ、貫通穴36に、第3面S3との間に隙間を形成する第3凹部D3および第4面S4との間に隙間を形成する第4凹部D4が設けられている。
【0059】
これによっても、貫通穴36と差込部55との接触面積をさらに減らすことが可能となり、ひいては熱膨張等によるサブ基板50のメイン基板30に対する差し込み荷重の大きな変動をさらに抑えることができる。
【0060】
さらに、本実施の形態に係る基板の接続構造によれば、貫通穴36をその貫通方向から見たときに、第1凹部D1ないし第4凹部D4が、それぞれ円弧形状に形成されている。
【0061】
これにより、差込部55の貫通穴36への差し込み時において、仮に第1凸部P1および第2凸部P2のそれぞれに大きな負荷が掛かったとしても、応力集中する角部が無いため、貫通穴36の周辺に亀裂等が生じることを効果的に抑えることができる。
【0062】
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上述の実施の形態では、1つのリュータービットRB2により1つの仕上穴H3を形成し、これにより、互いに対向配置された第1凹部D1および第2凹部D2を形成したものを示したが、本発明はこれに限らず、それぞれ個別のリュータービットを用いて、第1凹部D1および第2凹部D2を別々に形成しても良い。
【0063】
また、上述の実施の形態では、第1凸部P1および第1凹部D1と、第2凸部P2および第2凹部D2とを、それぞれ貫通穴36の長手方向に等間隔となるように設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、第1凸部P1および第1凹部D1と、第2凸部P2および第2凹部D2とを、それぞれ貫通穴36の長手方向に不等間隔となるように設けても良い。
【0064】
さらに、複数の第1凹部D1および第2凹部D2を、1つのリュータービットRB2で形成したものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、大径のリュータービットRB2と小径のリュータービットRB3とを組み合わせることで、複数の第1凹部D1および第2凹部D2を形成しても良い。
【0065】
また、上述の実施の形態では、本発明が適用されたセンサ基板10を、ブラシレスモータの回転軸の回転状態を検出するものとしたが、本発明はこれに限らず、例えば、ブラシ付きのモータの回転軸の回転状態を検出したり、小型の農機具や除雪機等の回転部分の回転状態を検出したりするセンサ基板や、その他のメイン基板およびサブ基板を備えた基板にも適用することができる。
【0066】
その他、上述の実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上述の実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0067】
10:センサ基板,30:メイン基板,31:基材,32:第1電子回路,33:第2電子回路,34:コネクタ接続部,35:円弧状対向部,36:貫通穴,37:挿通孔,50:サブ基板,51:基材,52:第1電子回路,53:第2電子回路,54:センサ実装部,55:差込部,D1:第1凹部,D2:第2凹部,D3:第3凹部,D4:第4凹部,DF:検出面,EP:電子部品,H1:長穴,H2:楕円穴,H3:仕上穴,MG:センサマグネット,P1:第1凸部,P2:第2凸部,RB1~RB3:リュータービット,S1:第1面,S2:第2面,S3:第3面,S4:第4面,SE:磁気センサ,SF1:表面,SF2:裏面,SH:回転軸,SR:ソルダレジスト,t1:サブ基板側端子,T1:メイン基板側端子,TM:ターミナル,TM1:第1端子部,TM2:第2端子部,TM3:第3端子部