(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162243
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】バイオ酵素散布装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/60 20220101AFI20221017BHJP
【FI】
B09B3/00 A ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066956
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】599174339
【氏名又は名称】株式会社天神製作所
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天神 一利
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA01
4D004BA04
4D004CA20
4D004CB36
4D004CC07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有機性廃棄物の堆肥化処理に際し、発酵促進用の加熱源を別途用いることなく、経済的に良質な堆肥を得ることができるバイオ酵素散布装置を提供する。
【解決手段】外気吸引管路12から大気を吸引して発酵槽11内に蓄積された畜糞厨芥(有機廃棄物)Sへ温風を噴出する温風噴出管路13が連通された高圧送風機1内に吸引した外気を巡回させてインバーター制御して昇温するリターン通気管路16と、発酵促進用のバイオ酵素液が貯留された貯留タンク10からベンチュリ効果によって減圧状態を創出するアスピレーター8にイジェクターノズル7を介して連通され、バイオ酵素液を発酵槽11に散布するアスピレーター8を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引口から外気を吸引するとともに発酵槽へ送風する高圧送風機と、当該高圧送風機内に吸引した外気を巡回させてインバーター制御して昇温するリターン通風路と、発酵促進酵素が貯留されたタンクからイジェクターノズルを介して前記通風路に連通され、前記発酵促進酵素を発酵槽に散布する送風口を設けたことを特徴とするバイオ酵素散布装置。
【請求項2】
吸引口にフィルタサイレンサーを設けたことを特徴とする請求項1記載のバイオ酵素散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業系資源廃棄物、畜産排泄物、農業集落排水汚泥、下水汚泥、食品廃棄物、水産系資源廃棄物、木質系資源廃棄物等の有機廃棄物を発酵処理して堆肥化するために使用される発酵処理槽に対し、特にその発酵促進及び舎屋の消臭に使用するバイオ酵素散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、畜産排泄物や生ゴミ等の有機性廃棄物の処理において、廃棄物に微生物を加えて発酵処理して堆肥化する方法が多く採用されている。この微生物による発酵処理方法では、有機物を微生物で発酵分解して、均一な低分子化合物を主成分とする有機肥料に変成処理する。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機性廃水を生物学的に処理する方法において、第1分解処理槽内の有機性廃水に高温で増殖する複合活性微生物群を混合し、空気を吹き込むとともに有機廃水を高温に維持し、複合活性微生物群を増殖させ、次いで第二分解処理槽内で生物学的処理を進行させ、固形分を分離した分離水を蒸発処理槽で蒸発処理させるための処理装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、生ゴミと牛糞と水分調整剤と粉砕した竹炭と有効微生物を含む発酵促進剤と竹酢液とを順次混合ブレンダー装置に投入して混合・攪拌し、水分の調整を行って含水率55~60%の腐敗性有機廃棄物とし、この腐敗性有機廃棄物を有効微生物群により好気的・嫌気的に70~85℃まで第1次発酵させ、更にこれを好気的・嫌気的に50~68℃まで第2次中等度発酵させ、第2次中等度発酵したこの中間有機発酵物を30~40℃の常温にて好気的・嫌気的に第3次成熟発酵させて完熟有機質肥料を製造することが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003-205295号公報
【特許文献2】特開2001-354487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような有機性廃棄物に発酵微生物の発酵促進を図るためにはヒーター等の加熱設備を要するという課題があった。本発明は、上記のような従来技術の課題に鑑み、有機性廃棄物の堆肥化処理に際し、発酵促進用の加熱設備を別途用いることなく、経済的かつ良質な堆肥を得ることができるバイオ酵素散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的達成のため本発明のバイオ酵素散布装置は、吸引口から外気を吸引するとともに発酵槽へ送風する高圧送風機と、当該高圧送風機内に吸引した外気を巡回させてインバーター制御して昇温するリターン通風路と、発酵促進酵素が貯留されたタンクからベンチュリ効果によって減圧状態を創出するイジェクターノズルを介して前記通風路に連通され、前記発酵促進酵素を発酵槽に散布する送風口とからなることを第1の特徴とする。また、吸引口にフィルタサイレンサーを設けたことを第2の特徴とする。
【0008】
本発明の高圧送風機においては、インバーターが電力変換の際に発生する熱を利用して空気を加熱する。また、高圧空気をパイプ又はノズルの中で、ある一定の方向に噴射するとそのパイプ内全体の空気の流れがその方向に引っ張られる作用が生じるイジェクターノズルを使用してバイオ酵素TM液の噴出を霧状かつ高圧で行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
バイオ酵素を散布することで、堆肥舎内の堆肥の発酵促進と消臭ができる。また、高圧送風機を利用し、インバーター制御で送風出口を絞るとともにリターンバルブで戻し空気を巡回することで、熱源(ヒーター等)を別途設備することなく、送風温度を外気温度の約3~4倍に上昇させることができる。さらに、イジェクター方式でバイオ酵素TM液を霧状に散布するとともに堆肥舎の既設床送風ブロワと配管接続することで、発酵を効率良く促進することができる。これにより、寒冷地や水分量の高い被処理物に対しても、より短時間で良質な堆肥化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るバイオ酵素散布装置を用いた堆肥化システムを模式的に示す説明図である。
【
図2】本発明に係るバイオ酵素散布装置の概要を示す(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図3】本発明に係るバイオ酵素散布装置の概要を示す正面図である。
【
図4】本発明に係るバイオ酵素散布装置の具体例を示す(a)は正面図、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。尚、本実施例は畜糞堆肥化処理に適用したものである。
【実施例0012】
図1乃至
図3に示すように、本発明に係るバイオ酵素散布装置は、吸引口12aにフィルタサイレンサー9を設けた外気吸引管路12から大気を吸引して発酵槽11内に蓄積された畜糞厨芥(有機廃棄物)Sへ温風を噴出する温風噴出管路13が連通された高圧送風機1と、この高圧送風機1内に吸引した外気を巡回させてインバーター制御して昇温するリターン通気管路16と、発酵促進用のバイオ酵素TM液が貯留された貯留タンク10からベンチュリ効果によって減圧状態を創出するアスピレーター8にイジェクターノズル7を介して連通され、バイオ酵素TM液を発酵槽11内にその底面から散布するように概略構成されている。
【0013】
そして、インバーター制御されるモーターMのファンFが備えられた高圧送風機1は外気吸引管路12から吸引された大気温度を昇温させて温風として送出すことができる。高圧送風機1から排気される温風の送気管路15と、この温風送気管路15を外気吸引管路14にバイパスするリターン通気管路16が連通され、高圧送風機1の立ち上げ時には、高圧送風機1の設定温度と温度センサー(図示せず)で検出される外気温度との温度偏差に応じて周波数制御を行って誘引通風量を制御する。いわゆる、ゾーンPID(Proportinal Integral Differential)制御を行う。
【0014】
具体的には、畜糞厨芥(有機廃棄物)Sを、その中の微生物が好む38℃~40℃まで昇温するために外気温度を45℃~60℃まで引き上げる。その方法は、モーターMの回動周波数帯域ごとにPIDの値を段階的に変えるものである。例えば、設置温度に対して-5℃の温度偏差となるまでは60Hzでの加速運転域として、±2℃の温度偏差までの範囲を定常運転域として45Hzで運転し、設定温度を超える減速運転域では40Hzでの運転とする。本発明では、送風バルブ4を絞るとともにリターンバルブ3で戻し巡回させることで、送風温度をインバーター制御し、熱源(ヒーター等)を別途設備することなく、送風温度を外気温度の約3~4倍(例えば、外気温5℃で20分稼働した場合、60℃に昇温した)に上昇させることができる。
【0015】
尚、本実施例装置では、温風センサー(図示せず)の検知信号によりフィードバック回路を介して自働制御し、それらにより熱風温度、熱風量、熱風圧力等を正確に一定範囲に収めることができる。
【0016】
一般に、乾燥ブロワー装置では、ブロワー内蔵ヒーターが一定熱量容量であることから吸気量を絞って行くと熱風温度が上昇し、逆に吸気量を大きくすると熱風温度が低下することが分かっている。そこで、吸気量を調節することにより熱風温度、熱風量、熱風圧力等を迅速且つ容易に調節するようにした。
【0017】
また、本発明の高圧送風機1においては、高圧空気をパイプ又はノズルの中で、ある一定の方向に噴射するとそのパイプ内全体の空気の流れがその方向に引っ張られる作用が生じるベンチュリ効果を利用して、発酵促進用のバイオ酵素TM液が貯留された貯留タンク10からベンチュリ効果によって減圧状態を創出するアスピレーター8にイジェクターノズル7を介して連通し、バイオ酵素TM液を発酵槽11にバイオ酵素TM液の噴出を霧状かつ高圧で行うことができる。
【0018】
本実施例では、主として畜糞の堆肥化を目的としているが、市場から排出される食品の残渣物や生ゴミ等の有機性廃棄物を完熟有機質肥料化する。有機微生物群を含むバイオ酵素TM液としては、糸状菌、細菌、放線菌などに属する菌群より選択した菌類を含む発酵促進剤を使用してもよい。具体的には糸状菌は、アスペルギルス、ムコール、ケトミウヌ、フリザルリウム、ミロセシウム、トリコデマルなどに属する群から選択され、細菌は、バチルス、セルロモナス、コリネバクテリウム、シトファーガクロロビウム、プロピオニバクテリウム、ロドスピリウム、ロドシュードモナスなどに属する菌、および白色木材腐朽菌や光合成菌を含む細菌群もしくは菌類から選択され、放線菌は、ミクロモノスポラ、ノカルディア、ストレプトミセス、コリネバクテリウム、アクチノミセス、ストレプトバーチシリウム、ロドコッカスなどに属する菌を含む群から選択され、選択した複数種類の菌類を混合して使用される。
【0019】
図4乃至
図5に示すように、本発明装置の具体的態様としては、底面に移動用のキャスター22が取り付けられた筐体17内に、実施例1と同様の主たる構成要素を収納し、かつ、筐体17正面側に、温度計18、真空度計19及び圧力計20の各計装機器と操作盤21を配置して構成される。