(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162251
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
B25F5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066972
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】519157727
【氏名又は名称】マクセルイズミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上條 敬一郎
(72)【発明者】
【氏名】河内山 勝利
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA20
3C064AB01
3C064AC02
3C064AC05
3C064AC08
3C064AD02
3C064BA10
3C064BA36
3C064BB03
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA23
3C064CA42
3C064CA53
3C064CB62
3C064CB72
3C064DA02
3C064DA24
3C064DA31
3C064DA59
3C064DA78
(57)【要約】
【課題】温度や粘度など作動油の状態に応じて、油圧ポンプの送液動作どおりに作動油が送液されるようにモータの回転数を制御することで、従来よりも効率的に昇圧可能な構成の電動工具を提供する。
【解決手段】電動工具1は、シリンダ部4と、オイルタンク3と、作動油3aをシリンダ部4に送液する油圧ポンプ7aと、油圧ポンプ7aを駆動するモータ7bと、制御回路7cとが配された本体部2と、本体部2に連結された状態でピストン4aによって作動する工具ヘッド8と、モータ7bに電力を供給する二次電池6と、作動油3aの状態を検知するセンサ9とを備え、制御回路7cはセンサ9からの検知信号に基づいてモータ7bを駆動制御する構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンを有するシリンダ部と、オイルタンクと、前記オイルタンク内の作動油を前記シリンダ部に送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するモータと、制御回路とが配された本体部と、前記本体部に連結された状態で前記ピストンによって作動する工具ヘッドと、前記モータに電力を供給する二次電池と、前記作動油の状態を検知するセンサとを備え、前記制御回路は前記センサからの検知信号に基づいて前記モータを駆動制御する構成であること
を特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記センサは温度センサ、粘度センサ、流量センサ、圧力センサのうちいずれか一種以上であること
を特徴とする請求項1記載の電動工具。
【請求項3】
前記センサは前記オイルタンク内に配されている構成であること
を特徴とする請求項1または2記載の電動工具。
【請求項4】
前記センサは前記オイルタンクの外側に接している構成であること
を特徴とする請求項1または2記載の電動工具。
【請求項5】
前記センサは前記シリンダ部の外側に接している構成であること
を特徴とする請求項1または2記載の電動工具。
【請求項6】
前記センサは前記シリンダ部内に配されている構成であること
を特徴とする請求項1または2記載の電動工具。
【請求項7】
前記制御回路は前記検知信号に基づいて前記作動油の温度を算出し、算出した前記作動油の温度が基準値よりも低いときは前記モータの回転数を設定値よりも下げる構成であること
を特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式の電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧式の電動工具が知られている(特許文献1:特開2018-086696号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動工具を、気温が低い場所で使用する場合など、本体部が低温になっている状態で使用する場合がある。作動油は温度が低下すると粘度が大きくなる性質があるため、作動油の粘度が大きい状態でモータの回転数を高くすると、油圧ポンプの送液動作どおりには作動油が送液されない現象が生じ、昇圧時間が長くなることが最近になって判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、温度や粘度など作動油の状態に応じて、油圧ポンプの送液動作どおりに作動油が送液されるようにモータの回転数を制御することで、従来よりも効率的に昇圧可能な構成の電動工具を提供することを目的とする。
【0006】
一実施形態として、以下に開示する解決策により、前記課題を解決する。
【0007】
本発明に係る電動工具は、ピストンを有するシリンダ部と、オイルタンクと、前記オイルタンク内の作動油を前記シリンダ部に送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するモータと、制御回路とが配された本体部と、前記本体部に連結された状態で前記ピストンによって作動する工具ヘッドと、前記モータに電力を供給する二次電池と、前記作動油の状態を検知するセンサとを備え、前記制御回路は前記センサからの検知信号に基づいて前記モータを駆動制御する構成であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、制御回路が作動油の状態を検知したセンサの検知信号に基づいてモータを駆動制御するので、より効率的に昇圧できて、昇圧時間が従来工具よりも短縮できる。また、効率的な動作によってバッテリーが長持ちする。
【0009】
前記センサは温度センサ、粘度センサ、流量センサ、圧力センサのうちいずれか一種以上であることが好ましい。温度センサの場合は、作動油の温度が低いときにモータの回転数を意図的に下げることで、油圧ポンプの送液動作どおりに作動油を送液できる。粘度センサの場合は、作動油の粘度が高い場合にモータの回転数を意図的に下げることで、油圧ポンプの送液動作どおりに作動油を送液できる。流量センサの場合は、作動油の流量が設定値より少ないときにモータの回転数を意図的に下げることで、油圧ポンプの送液動作どおりに作動油を送液できる。圧力センサの場合は、作動油の圧力上昇が設定値より遅いときにモータの回転数を意図的に下げることで、油圧ポンプの送液動作どおりに作動油を送液できる。
【0010】
一例として、前記制御回路は前記検知信号に基づいて前記作動油の温度を算出し、算出した前記作動油の温度が基準値よりも低いときは前記モータの回転数を設定値よりも下げる構成である。前記モータとして、ブラシレスモータ、カーボンブラシモータ、ユニバーサルモータ、その他既知の電動機が適用できる。ブラシレスモータの場合は、ホール素子によって回転子の位置検出を行ってインバータによって回転数制御を行うことができる。カーボンブラシモータやユニバーサルモータの場合は、温度上昇に対応させて入力電圧値を高くするリニア制御、温度上昇に対応させて入力電圧パルスのデューティ比を大きくするパルス制御、温度が設定値に達すると入力電圧値を切り換える電圧切り換え制御などによって回転数制御を行うことができる。
【0011】
前記センサは接触式温度センサであることがより好ましい。これにより、簡易な構成にできるとともに本体内にセンサを収容することが容易にできる。
【0012】
一例として、前記センサは前記オイルタンク内に配されている構成である。これにより、作動油の状態を直接検知できるので高精度に制御することが容易にできる。一例として、前記センサをオイルタンクの金属部分に取り付ける構成にしてもよい。
【0013】
一例として、前記センサは前記オイルタンクの外側に接している構成である。これにより、オイルタンクは既存の構成にしてセンサを後付けできるので組立が容易にできてメンテナンスも容易にできる。
【0014】
一例として、前記センサは前記シリンダ部の外側に接している構成である。これにより、シリンダ部は既存の構成にしてセンサを後付けできるので組立が容易にできてメンテナンスも容易にできる。一例として、前記センサをシリンダ部の金属部分に取り付ける。
【0015】
一例として、前記センサは前記シリンダ部内に配されている構成である。これにより、オイルタンクは既存の構成にしつつ、作動油の状態を直接検知できるので高精度に制御することが容易にできる。一例として、前記作動油を送液する第1管路が前記シリンダ部内に形成されており、前記センサは前記第1管路に接続された第2管路内に配されている構成である。これにより、作動油の流れを維持しつつ、作動油の状態を直接検知できるので高精度に制御することが容易にできる。
【0016】
一例として、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池が構成された電池パックが前記本体部のアダプタに接続されており、前記アダプタが前記本体部のハンドルに連結している構成である。これにより、可搬性に優れた電動工具にできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、温度や粘度など作動油の状態に応じて、油圧ポンプの送液動作どおりに作動油が送液されるようにモータの回転数を制御することで、従来工具よりも効率的に昇圧可能な構成の電動工具にできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る電動工具の例を示す概略の側面図である。
【
図2】
図2Aは
図1に示す電動工具におけるセンサ配置の第1例を示す概略の構造図であり、
図2Bは
図1に示す電動工具におけるセンサ配置の第2例を示す概略の構造図であり、
図2Cは
図1に示す電動工具におけるセンサ配置の第3例を示す概略の構造図であり、
図2Dは
図1に示す電動工具におけるセンサ配置の第3例を示す概略の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。本実施形態は、電動圧縮機、電動圧着機、電動切断機、その他既知の油圧式の電動工具である。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0020】
図1は、本実施形態に係る電動工具1の例を示す概略の図である。電動工具1は、本体部2と、本体部2に連結された状態で本体部2のシリンダ部4におけるピストン4aによって作動する工具ヘッド8と、本体部2のモータ7bに電力を供給する二次電池6とを備え、現場で作業者が手に持って使用するコードレスタイプの工具である。ここで、電動工具1の各部の位置関係を説明し易くするため、図中にX,Y,Zの矢印で向きを示している。ピストン4aは、第1軸線P1に沿って往復動する。つまり、ピストン4aは、図中のY方向矢印の側に前進し、図中のY方向矢印の反対側に後退する。
図1の例は、電動圧縮機の工具ヘッド8であり、工具ヘッド8を交換する多機能式の電動工具1である。なお、電動工具1は、作業する際の向きに依らずいずれの向きにおいても正常に作動する。
【0021】
本体部2は、ピストン4aがピストン室4bに配されたシリンダ部4と、シリンダ部4の油圧ポンプ7a寄りの外側に取り付けられたオイルタンク3と、オイルタンク3内の作動油3aをシリンダ部4のピストン室4bに送液するためにシリンダ部4に連結された油圧ポンプ7aと、油圧ポンプ7aを駆動するために油圧ポンプ7aに連結されたモータ7bと、モータ7bを駆動制御する制御回路7cとが設けられている。モータ7bと制御回路7cに電力供給する二次電池6は、電池パックの状態で本体部2のアダプタ5に接続されており、アダプタ5は本体部2のハンドル2dに連結している。ハンドル2dは作業者が把持する持ち手部分であり、起動スイッチ2cが配されている。本実施形態は、作動油3aの状態を検知するセンサ9が本体部2に配されており、制御回路7cはセンサ9からの検知信号に基づいてモータ7bを駆動制御する構成である。
【0022】
一例として、油圧ポンプ7aは、モータ7bの駆動軸によって回転する斜板カムを有する斜板式のピストンポンプである。シリンダ部4のピストン室4bと油圧ポンプ7aとはシリンダ部4で連結されているとともに、作動油3aを送液する第1管路11がシリンダ部4の内部に形成されている。
【0023】
一例として、制御回路7cは、接触式の温度センサ9の検知信号に基づいて作動油3aの温度を算出し、算出値が基準値よりも低いときはモータ7bの回転数を設定値よりも下げる構成である。また、制御回路7cは、接触式の温度センサ9の検知信号に基づいて作動油3aの温度を算出し、算出値が基準値よりも高いときはモータ7bの回転数を設定値よりも上げる構成である。
【0024】
[第1例]
図2Aは、電動工具1におけるセンサ配置の第1例を示す概略の構造図である。温度センサ9はオイルタンク3の内部に配されている。一例として、温度センサ9をオイルタンク3の金属部分に取り付ける。これにより、作動油3aの状態を直接検知できるので高精度に制御することが容易にできる。
【0025】
[第2例]
図2Bは、電動工具1におけるセンサ配置の第2例を示す概略の構造図である。温度センサ9はオイルタンク3の外側に接して配されている。一例として、温度センサ9をオイルタンク3の金属部分に取り付ける。これにより、オイルタンク3は既存の構成にして温度センサ9を後付けできるので組立が容易にできてメンテナンスも容易にできる。
【0026】
[第3例]
図2Cは、電動工具1におけるセンサ配置の第3例を示す概略の構造図である。温度センサ9はシリンダ部4の外側に接して配されている。一例として、温度センサ9をシリンダ部4の金属部分に取り付ける。これにより、オイルタンク3およびシリンダ部4は既存の構成にして温度センサ9を後付けできるので組立が容易にできてメンテナンスも容易にできる。
【0027】
[第4例]
図2Dは、電動工具1におけるセンサ配置の第4例を示す概略の構造図である。作動油3aを送液する第1管路11と温度センサ9を取付ける第2管路12とがそれぞれシリンダ部4の内部に形成されており、第1管路11と第2管路12とは管路接続部13にて接続されており、温度センサ9は第2管路12の内部に配されている。これにより、作動油3aの流れを維持しつつ、作動油3aの状態を直接検知できるので高精度に制御することが容易にできる。
【0028】
上述の例では、センサ9として温度センサを用いてモータ7bを駆動制御する構成について説明したが、この例に限定されない。本実施形態は、センサ9として温度センサのみならず、粘度センサ、流量センサ、圧力センサなどが適用できる。またセンサ9として、異なる物理量を検知するセンサを二種以上組み合わせる場合がある。或いはセンサ9として、同種のセンサを複数用いる場合がある。
【0029】
上述の例では、本体部2に着脱可能に二次電池6が電池パックの状態で取り付けられている構成を説明したが、この例に限定されない。本実施形態は、二次電池6が内蔵されている構成や、これらを組み合わせた構成とする場合がある。
【0030】
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 電動工具
2 本体部、2a 筐体、2c 起動スイッチ、2d ハンドル
3 オイルタンク、3a 作動油
4 シリンダ部、4a ピストン、4b ピストン室
5 アダプタ
6 二次電池
7a 油圧ポンプ、7b モータ、7c 制御回路
8 工具ヘッド
9 センサ
11 第1管路
12 第2管路
13 管路接続部
P1 第1軸線