(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162253
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】トンネル掘削機の画像処理システム、および、トンネル掘削機の画像処理方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
E21D11/40 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066974
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】516308364
【氏名又は名称】JIMテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大堀 潔
(72)【発明者】
【氏名】村上 賢
(72)【発明者】
【氏名】熊尾 義光
(72)【発明者】
【氏名】星山 悟志
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA01
2D155BB01
2D155CA01
2D155GB04
2D155GB08
2D155LA12
2D155LA13
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】エレクタ装置の操作性を向上させる。
【解決手段】トンネル掘削機1の画像処理システム2は、トンネル掘削機のエレクタ装置19の把持部196または吊りビーム193に取り付けられる複数のカメラ23と、複数のカメラ23により撮像された画像を画像処理する画像処理装置200と、を備え、複数のカメラ23は、エレクタ装置19が把持対象セグメント20bを把持する把持時における把持対象セグメント20bの内周面と、把持された把持済セグメントをエレクタ装置19が既設セグメントに組み付ける組み付け時における既設セグメントの内周面と、組み付け時における把持済セグメントの内周面とのうちの少なくとも1つを撮像し、画像処理装置200は、複数のカメラ23により撮像された複数の画像を合成することによって、エレクタ装置19の把持部196の周辺が映る合成画像を生成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削機のエレクタ装置の把持部または吊りビームに取り付けられる複数のカメラと、
前記複数のカメラにより撮像された画像を画像処理する画像処理装置と、
を備え、
前記複数のカメラは、前記エレクタ装置が把持対象セグメントを把持する把持時における前記把持対象セグメントの内周面と、把持された把持済セグメントを前記エレクタ装置が既設セグメントに組み付ける組み付け時における前記既設セグメントの内周面と、前記組み付け時における前記把持済セグメントの内周面とのうちの少なくとも1つを撮像し、
前記画像処理装置は、前記複数のカメラにより撮像された複数の画像を合成することによって、前記エレクタ装置の前記把持部の周辺が映る合成画像を生成する、
トンネル掘削機の画像処理システム。
【請求項2】
前記複数のカメラは、前記把持対象セグメントの内周面に形成されている被係合部を撮像するカメラを含む、
請求項1に記載のトンネル掘削機の画像処理システム。
【請求項3】
前記複数のカメラは、前記既設セグメントの切羽側において露出された縁部を撮像するカメラを含む、
請求項1または2に記載のトンネル掘削機の画像処理システム。
【請求項4】
前記複数のカメラは、前記把持済セグメントの周方向の縁部を撮像するカメラを含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のトンネル掘削機の画像処理システム。
【請求項5】
前記複数のカメラは、前記把持済セグメントの坑口側の縁部を撮像するカメラを含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載のトンネル掘削機の画像処理システム。
【請求項6】
前記複数のカメラは、前記把持済セグメントの切羽側の縁部を撮像するカメラを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載のトンネル掘削機の画像処理システム。
【請求項7】
前記エレクタ装置の前記把持部には、セグメントの内周面に形成されている被係合部と係合する係合部が設けられ、
前記画像処理装置は、前記把持時に、前記係合部を示す係合部オブジェクトを前記合成画像に重畳する、
請求項1~6のいずれか一項に記載のトンネル掘削機の画像処理システム。
【請求項8】
前記画像処理装置は、前記組み付け時に、前記把持済セグメントを示す把持済セグメントオブジェクトを前記合成画像に重畳する、
請求項1~7のいずれか一項に記載のトンネル掘削機の画像処理システム。
【請求項9】
前記画像処理装置は、前記組み付け時に、前記把持済セグメントの縁部を示す縁部オブジェクト、および、前記既設セグメントの縁部を示す縁部オブジェクトの少なくとも一方を前記合成画像に重畳する、
請求項1~8のいずれか一項に記載のトンネル掘削機の画像処理システム。
【請求項10】
前記画像処理装置は、前記組み付け時に、前記把持済セグメントと前記既設セグメントとの位置関係を示す位置関係オブジェクトを前記合成画像に重畳する、
請求項1~9のいずれか一項に記載のトンネル掘削機の画像処理システム。
【請求項11】
前記エレクタ装置によるセグメントの自動組立を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記自動組立において、前記合成画像に基づいて前記エレクタ装置の動作を制御する、
請求項1~10のいずれか一項に記載のトンネル掘削機の画像処理システム。
【請求項12】
トンネル掘削機のエレクタ装置の把持部または吊りビームに取り付けられる複数のカメラによって、前記エレクタ装置が把持対象セグメントを把持する把持時における前記把持対象セグメントの内周面と、把持された把持済セグメントを前記エレクタ装置が既設セグメントに組み付ける組み付け時における前記既設セグメントの内周面と、前記組み付け時における前記把持済セグメントの内周面とのうちの少なくとも1つを撮像し、
画像処理装置により、前記複数のカメラにより撮像された複数の画像を合成することによって、前記エレクタ装置の前記把持部の周辺が映る合成画像を生成する、
トンネル掘削機の画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機の画像処理システム、および、トンネル掘削機の画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネル掘削機は、カッタヘッドを回転させ、カッタヘッドの前面に装着された複数のカッタビットが前方の地山を掘削し切羽を形成することにより、トンネルを掘削する。カッタヘッドは筒状の掘削機本体の前端部に取り付けられており、掘削機本体が前方に推進されることによって、トンネルが掘削される。この掘削に伴う掘削機本体の前進に対して、掘削機本体内部の後方部分において、トンネルの構造部材であるセグメントが、既設のセグメントの前端に継ぎ足され、トンネルが構築される。
【0003】
セグメントの組立作業は、例えば、特許文献1に開示されているように、掘削機本体の内部に設置されたエレクタ装置によって行われる。セグメントは、エレクタ装置の把持部によって把持され、既設セグメントに対して組付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セグメントの組立作業では、一般に、作業者は、坑口側からエレクタ装置を目視しながら、エレクタ装置を無線で操作している。ゆえに、作業者の視界がエレクタ装置自体によって遮られてしまうことに起因して、エレクタ装置の操作の難易度が高くなり、作業者の負担および作業時間が増大しやすい。よって、エレクタ装置の操作性を向上させることが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、エレクタ装置の操作性を向上させることが可能なトンネル掘削機の画像処理システム、および、トンネル掘削機の画像処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のトンネル掘削機の画像処理システムは、トンネル掘削機のエレクタ装置の把持部または吊りビームに取り付けられる複数のカメラと、複数のカメラにより撮像された画像を画像処理する画像処理装置と、を備え、複数のカメラは、エレクタ装置が把持対象セグメントを把持する把持時における把持対象セグメントの内周面と、把持された把持済セグメントをエレクタ装置が既設セグメントに組み付ける組み付け時における既設セグメントの内周面と、組み付け時における把持済セグメントの内周面とのうちの少なくとも1つを撮像し、画像処理装置は、複数のカメラにより撮像された複数の画像を合成することによって、エレクタ装置の把持部の周辺が映る合成画像を生成する。
【0008】
複数のカメラは、把持対象セグメントの内周面に形成されている被係合部を撮像するカメラを含んでもよい。
【0009】
複数のカメラは、既設セグメントの切羽側において露出された縁部を撮像するカメラを含んでもよい。
【0010】
複数のカメラは、把持済セグメントの周方向の縁部を撮像するカメラを含んでもよい。
【0011】
複数のカメラは、把持済セグメントの坑口側の縁部を撮像するカメラを含んでもよい。
【0012】
複数のカメラは、把持済セグメントの切羽側の縁部を撮像するカメラを含んでもよい。
【0013】
エレクタ装置の把持部には、セグメントの内周面に形成されている被係合部と係合する係合部が設けられ、画像処理装置は、把持時に、係合部を示す係合部オブジェクトを合成画像に重畳してもよい。
【0014】
画像処理装置は、組み付け時に、把持済セグメントを示す把持済セグメントオブジェクトを合成画像に重畳してもよい。
【0015】
画像処理装置は、組み付け時に、把持済セグメントの縁部を示す縁部オブジェクト、および、既設セグメントの縁部を示す縁部オブジェクトの少なくとも一方を合成画像に重畳してもよい。
【0016】
画像処理装置は、組み付け時に、把持済セグメントと既設セグメントとの位置関係を示す位置関係オブジェクトを合成画像に重畳してもよい。
【0017】
エレクタ装置によるセグメントの自動組立を制御する制御装置を備え、制御装置は、自動組立において、合成画像に基づいてエレクタ装置の動作を制御してもよい。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明のトンネル掘削機の画像処理方法は、トンネル掘削機のエレクタ装置の把持部または吊りビームに取り付けられる複数のカメラによって、エレクタ装置が把持対象セグメントを把持する把持時における把持対象セグメントの内周面と、把持された把持済セグメントをエレクタ装置が既設セグメントに組み付ける組み付け時における既設セグメントの内周面と、組み付け時における把持済セグメントの内周面とのうちの少なくとも1つを撮像し、画像処理装置により、複数のカメラにより撮像された複数の画像を合成することによって、エレクタ装置の把持部の周辺が映る合成画像を生成する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エレクタ装置の操作性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るトンネル掘削機の全体構成を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るエレクタ装置を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るエレクタ装置の把持部の周辺を示す拡大図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るセグメントの把持穴および把持部のツイストロックを示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るエレクタ装置が把持対象セグメントを把持している様子を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る把持対象セグメントの把持時に得られる合成画像を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る把持済セグメントの組み付け時に得られる合成画像を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る把持済セグメントの組み付けが完了した後に得られる合成画像を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る把持済セグメントの組み付け時に得られる第1の変形例における合成画像を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る把持済セグメントの組み付け時に得られる第2の変形例における合成画像を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る把持済セグメントの組み付け時に得られる第3の変形例における合成画像を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る制御装置が行うセグメントの自動組立に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
まず、
図1および
図2を参照して、本発明の実施形態に係るトンネル掘削機1の全体構成について説明する。
図1は、トンネル掘削機1の全体構成を示す断面模式図である。なお、
図1中の矢印Fはトンネル掘削機1の前方向(つまり、進行方向)を示し、矢印Bはトンネル掘削機1の後方向を示す。つまり、
図1中の矢印Fは切羽側を向き、矢印Bは坑口側を向く。
【0023】
トンネル掘削機1は、地盤を掘削可能な土圧式(泥土圧式を含む。)のシールド掘削機である。
図1に示すように、トンネル掘削機1は、掘削機本体10を備える。掘削機本体10は、筒状(例えば、円筒状または矩形筒状等)である。掘削機本体10の軸方向は、トンネル掘削機1の前後方向と一致する。以下では、掘削機本体10の軸方向を単に軸方向とも呼び、掘削機本体10の径方向を単に径方向とも呼び、掘削機本体10の周方向を単に周方向とも呼ぶ。
【0024】
掘削機本体10の前端には、カッタヘッド11が設けられる。カッタヘッド11は、略円盤状の回転体である。カッタヘッド11の中心部には、カッタ中心軸12の前端が嵌入されており、カッタヘッド11は、カッタ中心軸12を中心に回転可能に軸支されている。
【0025】
カッタヘッド11は、外周リング11aと、内周リング11bと、カッタスポーク11cと、フィッシュテールカッタ11dと、カッタビット11eなどを有する。このうち、外周リング11aは、カッタヘッド11の外周部を形成しており、内周リング11bは、外周リング11aよりも径方向内側に配置されている。また、複数のカッタスポーク11cは、カッタヘッド11の前面において、カッタ中心軸12を中心として放射状に配置されている。カッタヘッド11の前面の中心部には、フィッシュテールカッタ11dが装着されている。さらに、カッタスポーク11cの前面には、多数のカッタビット11eが装着されている。なお、フィッシュテールカッタ11dおよびカッタビット11eは、着脱可能であってもよく、着脱可能でなくてもよい。
【0026】
そして、カッタヘッド11には、上記外周リング11a、内周リング11bおよびカッタスポーク11cの相互の間に、複数の開口部が形成されている。当該開口部は、カッタヘッド11によって地盤(切羽)を掘削した際に発生する掘削土砂を、掘削機本体10内(後述するチャンバ17内)に取り込むための掘削土砂取込口として機能する。
【0027】
掘削機本体10におけるカッタヘッド11よりも後方には、隔壁13が配置されている。隔壁13は、軸方向(トンネル延伸方向)に対して垂直に配置される板状(例えば、円板状)の壁体であり、隔壁13の外周縁は掘削機本体10の内周面に取り付けられる。カッタヘッド11と隔壁13は、軸方向(トンネル延伸方向)に所定間隔を空けて配置される。隔壁13の後方側には、トンネル掘削機1の各種設備が配置されており、隔壁13は、切羽で生じる掘削土砂から当該設備を隔離する。隔壁13の下部には、掘削土砂を排出するための開口部である排出口13aが形成されている。
【0028】
隔壁13の中心部には、カッタ中心軸12が回転可能に支持されている。さらに、隔壁13には、環状の回転リング14が、カッタ中心軸12を中心として回転可能に支持されている。回転リング14の前部には、複数の連結ビーム15が周方向に所定の間隔で設けられている。複数の連結ビーム15は、カッタヘッド11と回転リング14を連結する。連結ビーム15の前端は、カッタヘッド11の内周リング11bとカッタスポーク11cとの接続部に連結されている。一方、回転リング14の後部には、リングギヤ14aが設けられている。なお、リングギヤ14aは、外歯式であってもよく、内歯式であってもよい。さらに、隔壁13の後方にはカッタ旋回用モータ16が設けられている。このカッタ旋回用モータ16の駆動ギヤ16aは、回転リング14のリングギヤ14aと噛み合っている。
【0029】
カッタ旋回用モータ16を駆動させることにより、その駆動ギヤ16aの回転がリングギヤ14aから回転リング14および連結ビーム15に伝達される。これにより、カッタヘッド11を、カッタ中心軸12を中心として回転させることができる。この結果、回転するカッタヘッド11の前面を後述するシールドジャッキ21を利用して地盤(切羽)に押し付けて、地盤を掘削することができる。
【0030】
カッタヘッド11と隔壁13との間には、チャンバ17が画成されている。チャンバ17は、カッタヘッド11の後面と、隔壁13の前面と、掘削機本体10の内周面とにより区画された空間(例えば、略円柱状の空間)である。カッタヘッド11による地盤の掘削に伴って発生する掘削土砂は、カッタヘッド11に貫通形成された上記開口部(掘削土砂取込口)を通じて、チャンバ17内に取り込まれる。チャンバ17は、掘削土砂を一時的に蓄えるための空間(室)として機能する。チャンバ17内に取り込まれた掘削土砂は、隔壁13の下部にある排出口13aを通じて、チャンバ17からスクリューコンベヤ18内に排出される。
【0031】
スクリューコンベヤ18は、掘削機本体10内における隔壁13の後方側に設けられる。スクリューコンベヤ18は、掘削機本体10内において、後方側に向かうにつれて上方に傾斜して配置される。スクリューコンベヤ18の前端の開口部は、隔壁13の排出口13aに接続されている。これにより、スクリューコンベヤ18の内部空間は、隔壁13の排出口13aを通じてチャンバ17と連通する。スクリューコンベヤ18内には、螺旋状の羽根を備えたスクリュー状の回転体であるスクリュー羽根18aが設けられている。スクリュー羽根18aを回転駆動させることで、チャンバ17内に蓄えられた掘削土砂をスクリューコンベヤ18内に取り込んで、掘削機本体10の後方に向けて運搬し、排出することができる。
【0032】
また、掘削機本体10の隔壁13よりも後方側には、エレクタ装置19が設けられる。エレクタ装置19は、覆工部材であるセグメント20を把持可能であり、把持したセグメント20をトンネルTの内壁面(坑壁)に沿って組み立てる。セグメント20は、掘削されたトンネルTの内壁面に沿った湾曲形状を有する環片である。エレクタ装置19を駆動させることにより、複数のセグメント20を周方向に沿って環状に組み立てることができる。これにより、トンネルTの内壁面が複数のセグメント20により覆工され、内壁面の崩落を防止できる。
【0033】
ここで、
図1に加えて
図2を参照して、エレクタ装置19について、より詳細に説明する。
図2は、エレクタ装置19を示す正面図である。具体的には、
図2は、エレクタ装置19を後方から見た図である。
図1および
図2に示すように、エレクタ装置19は、リングフレーム191と、支持ローラ192と、吊りビーム193と、ガイドロッド194と、昇降ジャッキ195と、把持部196とを備える。
【0034】
リングフレーム191は、掘削機本体10の内周面に沿って設けられる円環状の部材である。リングフレーム191は、掘削機本体10の周方向に延在する。リングフレーム191の中心軸は、掘削機本体10の中心軸と同軸上に配置される。リングフレーム191は、当該リングフレーム191の中心軸を中心に回動可能に複数の支持ローラ192によって支持されている。支持ローラ192は、掘削機本体10の内周面に掘削機本体10の中心軸と平行に取り付けられる。支持ローラ192は、
図2に示すように、掘削機本体10の周方向に間隔を空けて複数配置される。
図2に示すリングフレーム191の回動方向D3は、掘削機本体10の周方向と一致する。リングフレーム191は、図示しない駆動用モータ等のアクチュエータによって回動駆動される。
【0035】
吊りビーム193は、リングフレーム191にガイドロッド194を介して取り付けられている。具体的には、リングフレーム191の後部には、後方に突出するブラケット191aが設けられる。ブラケット191aの先端には、径方向に昇降可能にガイドロッド194が取り付けられている。
図2に示すように、リングフレーム191のうち径方向に離隔した2つの部分のそれぞれにガイドロッド194が設けられる。リングフレーム191において各ガイドロッド194が設置される周方向位置は、例えば、略180°ずれている。2つのガイドロッド194は、当該2つのガイドロッド194の離隔方向に直交する方向に延びており、当該方向に伸縮可能である。吊りビーム193は、2つのガイドロッド194の間に掛け渡されている。
【0036】
また、
図1に示すように、ブラケット191aのうち各ガイドロッド194の近傍には、昇降ジャッキ195が各ガイドロッド194の延在方向に沿って取り付けられている。昇降ジャッキ195の先端は、吊りビーム193に当接している。吊りビーム193は、昇降ジャッキ195の伸縮に伴って昇降ジャッキ195の伸縮方向に移動する。吊りビーム193の移動方向D1(つまり、昇降ジャッキ195の伸縮方向)は、掘削機本体10の径方向と一致する。
【0037】
吊りビーム193は、2つのガイドロッド194の間において、リングフレーム191に沿って周方向に延びている。吊りビーム193の延在方向における中央側には、支持フレーム193aが設けられる。支持フレーム193aは、吊りビーム193における他の部分に対して掘削機本体10の軸方向後側に突出している。支持フレーム193aは、吊りビーム193の移動方向D1に略直交する平面上に延在する。支持フレーム193aの径方向外側には、把持部196が取り付けられている。把持部196は、掘削機本体10の軸方向に移動可能に支持フレーム193aによって支持されている。
図1に示す把持部196の移動方向D2は、掘削機本体10の軸方向と一致する。把持部196の移動方向D2の移動は、図示しないジャッキ等のアクチュエータによって駆動される。
【0038】
把持部196は、セグメント20を把持可能である。なお、把持部196によりセグメント20が把持される仕組みの詳細については、後述する。エレクタ装置19は、セグメント20を把持部196に把持させた状態で把持部196を移動させることによって、セグメント20を所望の位置に移動させることができる。具体的には、吊りビーム193を移動方向D1に移動させることによって、把持部196および把持されたセグメント20を掘削機本体10の径方向に移動させることができる。また、把持部196を移動方向D2に移動させることによって、把持部196および把持されたセグメント20を掘削機本体10の軸方向に移動させることができる。また、リングフレーム191を回動方向D3に回動させることによって、把持部196および把持されたセグメント20を掘削機本体10の周方向に移動させることができる。なお、把持部196を各方向に移動させるための機構は、
図1および
図2を参照して説明した例に特に限定されず、適宜設計され得る。
【0039】
以下では、セグメント20のうち、トンネルTの内壁面に既に覆工されている既設のセグメント20を既設セグメント20aと呼ぶ。また、セグメント20のうち、トンネルTの内壁面に覆工される前のものであり、エレクタ装置19により把持される対象となるセグメント20を把持対象セグメント20bと呼ぶ。
【0040】
図1および
図2に示すように、既設セグメント20aは周方向に沿って環状に組み立てられている。把持対象セグメント20bは、トンネルTの坑口側から切羽側に搬送されて、複数の既設セグメント20aのうちの下側かつ切羽側に位置する既設セグメント20a上に載置される。掘削機本体10内には、図示しないセグメント搬送装置が設けられており、セグメント搬送装置によって把持対象セグメント20bが搬送される。このように搬送された把持対象セグメント20bが、エレクタ装置19により把持され、既設セグメント20aに対して取り付けられることによって、セグメント20が組み立てられる。
【0041】
図1に示すように、掘削機本体10内には、複数のシールドジャッキ21が、周方向に相互に間隔を空けて設けられている。各シールドジャッキ21は、掘削機本体10の内周面に沿って、掘削機本体10の軸方向に延びるように設けられる。シールドジャッキ21は、例えば、油圧ジャッキであるが、トンネル掘削機1の推力を発生可能であれば、他の種類のジャッキ、アクチュエータ等であってもよい。シールドジャッキ21の後端には、伸縮可能な駆動ロッド21aが設けられている。駆動ロッド21aの先端は、既設セグメント20aの前端面と対向している。シールドジャッキ21の駆動ロッド21aを、後方に向けて伸長し、既設セグメント20aを押圧することにより、掘削機本体10に推進反力(つまり、推力)を付与することができる。すなわち、シールドジャッキ21が既設セグメント20aを押圧したときに発生する推力によって、掘削機本体10は前進可能である。
【0042】
掘削機本体10の後端部内周と既設セグメント20aの外周との間には、テールブラシ22が設けられる。テールブラシ22は、掘削機本体10の後端部内周に取り付けられており、既設セグメント20aの外周と摺接する。テールブラシ22は、掘削機本体10内への水、土砂または裏込材等の侵入を防止するために設けられている。
【0043】
トンネル掘削機1には、制御装置100が設けられている。制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、および、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0044】
制御装置100は、エレクタ装置19の動作を制御する装置である。セグメント20の組立作業では、作業者は、例えば、制御装置100と接続される入力装置を使用することによって、エレクタ装置19を操作する。なお、後述するように、制御装置100は、エレクタ装置19によるセグメント20の自動組立を制御することもできる。自動組立は、作業者による入力操作によらずに、自動でセグメント20を組み立てることである。
【0045】
セグメント20の組立作業では、一般に、作業者は、坑口側からエレクタ装置19を目視しながら、エレクタ装置19を無線で操作する。ゆえに、作業者の視界がエレクタ装置19自体によって遮られてしまうことに起因して、エレクタ装置19の操作の難易度が高くなり、作業者の負担および作業時間が増大しやすい。
【0046】
例えば、把持対象セグメント20bを把持する際に、作業者は、把持対象セグメント20bの把持穴(後述する
図3等の把持穴24を参照)と、ツイストロック(後述する
図3等のツイストロック196aを参照)との位置関係を目視にて確認しながらエレクタ装置19を操作する。ここで、把持穴が把持対象セグメント20bの内周面より奥まっていて、覗き込まないと見えないが、エレクタ装置19の把持部196が把持対象セグメント20bの内周面に覆いかぶさった状態になるので、覗き込むことができず、視認性が悪い状態となるので、操作が難しくなる。また、作業者は、エレクタ装置19に対して坑口側から対峙しているので、エレクタ装置19よりも切羽側のシールドジャッキ21の動作状況を把握できないため、操作に手間がかかる。また、作業者は、把持したセグメント20(つまり、後述する把持済セグメント20c)を既設セグメント20aに対して組み付ける際に、把持したセグメント20の端部を見ていると、他の部分を見渡せず操作に手間がかかる状況が発生する。これは、エレクタ装置19の周辺が、掘削機本体10の内部の限られた空間となっていることで、広い視野を確保する操作場所がないことに起因する。そこで、本実施形態に係るトンネル掘削機1には、エレクタ装置19の操作性を向上させるために、
図3に示す画像処理システム2が設けられている。
【0047】
図3は、エレクタ装置19の把持部196の周辺を示す拡大図である。
図3に示すように、画像処理システム2は、複数のカメラ23と、画像処理装置200とを備える。
【0048】
複数のカメラ23は、エレクタ装置19の把持部196または吊りビーム193に取り付けられ、セグメント20の内周面(例えば、把持対象セグメント20bを把持する際の把持対象セグメント20bの内周面)を撮像する。
図3の例では、複数のカメラ23は、把持部196に取り付けられた複数のカメラ23aと、吊りビーム193に取り付けられた複数のカメラ23bとを含む。
【0049】
カメラ23aは、把持部196の径方向外側(
図3中の下側)の面の縁部近傍に取り付けられる。カメラ23aは、把持部196よりも径方向外側の範囲(例えば、
図3の例では、把持部196の直下の範囲)を主に撮像する。カメラ23bは、吊りビーム193の支持フレーム193aの径方向外側(
図3中の下側)の面の縁部近傍に取り付けられる。カメラ23bは、カメラ23aの撮像範囲の周囲を主に撮像する。ただし、カメラ23aの設置数、設置位置および撮像範囲は、特に限定されない。また、カメラ23bの設置数、設置位置および撮像範囲は、特に限定されない。
【0050】
画像処理装置200は、演算処理装置であるCPU、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM、および、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM等を含む。画像処理装置200は、複数のカメラ23により撮像された画像を画像処理する。
【0051】
画像処理装置200は、複数のカメラ23により撮像された複数の画像を合成することによって、エレクタ装置19の把持部196の周辺が映る合成画像を生成する。画像処理装置200により得られる合成画像は、例えば、作業者が利用する液晶ディスプレイ等の表示装置に表示される。ここで、各カメラ23の撮像範囲は、他のカメラ23の撮像範囲と部分的に重複している。ゆえに、画像処理装置200は、複数のカメラ23により撮像される画像を公知のアルゴリズムを用いて繋ぎ合わせることによって、1つのカメラ23により撮像される画像と比較して広い範囲を映す合成画像を得ることができる。得られる合成画像は、セグメント20を把持部196側から俯瞰した画像(アラウンドビュー)となる。
【0052】
以下、画像処理装置200により得られる合成画像の説明に先立って、
図3~
図5を参照して、把持部196によりセグメント20が把持される仕組みの詳細について説明する。
【0053】
図3に示すように、エレクタ装置19の把持部196には、セグメント20の内周面に形成されている把持穴24と係合するツイストロック196aが設けられる。把持穴24は、本発明に係る被係合部の一例に相当する。ツイストロック196aは、本発明に係る係合部の一例に相当する。
図4は、セグメント20の把持穴24および把持部196のツイストロック196aを示す平面図である。具体的には、
図4は、セグメント20の把持穴24を径方向内側から見た図に対してツイストロック196aを重ね合わせた図である。
【0054】
図3および
図4に示すように、ツイストロック196aは、把持部196の径方向外側(
図3中の下側)に設けられる。ツイストロック196aは、支持棒196aaと、係止突起196abとを有する。支持棒196aaは、把持部196から径方向外側(
図3中の下側)に突出する。係止突起196abは、支持棒196aaの先端に設けられ、支持棒196aaに交差(例えば、直交)する方向に延在する。係止突起196abは、支持棒196aaの先端から両側に突出する。ツイストロック196aは、略T字形状を有する。支持棒196aaの横断面形状は、例えば、円形状である。係止突起196abの横断面形状は、例えば、矩形状である。ただし、支持棒196aaおよび係止突起196abの横断面形状は、上記の例と異なっていてもよい。
【0055】
ここで、把持部196の他の部分に対するツイストロック196aの姿勢は、変更可能となっていてもよい。例えば、ツイストロック196aの姿勢は、ロール方向(つまり、トンネル掘削機1の軸方向(つまり、前後方向)の軸を中心に回動する方向)、ピッチ方向(つまり、トンネル掘削機1の周方向(
図3では左右方向)の軸を中心に回動する方向)、および、ヨー方向(つまり、トンネル掘削機1の径方向(
図3では上下方向)の軸を中心に回動する方向)の3方向に変更可能であってもよい。なお、この場合、上記3方向の姿勢の変更は、球面軸受および各種アクチュエータを用いることによって実現され得る。また、例えば、ツイストロック196aの姿勢は、上記3方向のうちの一部の方向に変更可能であってもよい。なお、ツイストロック196aの姿勢を各方向に変更するための機構は、特に限定されず、適宜設計され得る。なお、ここにおいて、ツイストロック196aの姿勢は、把持対象セグメント20bの把持穴24に対するツイストロック196aの姿勢調整として機能するが、ツイストロック196aの係合により把持対象セグメント20bを把持した後は、ツイストロック196aの姿勢調整は、そのまま把持済みのセグメント20(つまり、後述する把持済セグメント20c)の姿勢調整として機能する。以後では、セグメント把持後のツイストロック196aの姿勢調整を把持済みのセグメント20の姿勢調整と記述する。
【0056】
また、把持部196自体を径方向(
図3中の矢印D1の方向)に移動させることによってツイストロック196aを径方向D1に移動させることができるが、本実施形態においては、把持部196の他の部分に対してツイストロック196aを径方向D1に伸縮させることによっても、ツイストロック196aを径方向D1に移動させることができる。これは、把持対象セグメント20bの把持において、把持部196全体を動かすよりもツイストロック196aだけを動かした方が装置の動きがコンパクトになる点でメリットがあるからである。ツイストロック196aの姿勢の変更および伸縮は、図示しないジャッキ等のアクチュエータによって実現される。
【0057】
セグメント20の把持穴24は、セグメント20の内周面(例えば、内周面の中央側)に形成されている。把持穴24の径方向に直交する断面(以下、単に断面と呼ぶ)の形状は、矩形状を有する。把持穴24のうちセグメント20の内周面側の部分24aの断面は、把持穴24のうちセグメント20の内部側の部分24bの断面と比べて小さくなっている。
図4に示すように、把持穴24の内周面側の部分24aの周方向の幅d1(
図3、
図4中の左右方向の幅)は、把持穴24の内部側の部分24bの周方向の幅d2より短い。
【0058】
図4に示すように、径方向内側から見た場合、把持穴24の内周面側の部分24aの周方向の幅d1(
図4中の左右方向の幅)は、ツイストロック196aの係止突起196abの短辺(
図4中の左右方向の辺)の長さd4より長い。また、把持穴24の内周面側の部分24aの軸方向の幅d3(
図4中の上下方向の幅)は、ツイストロック196aの係止突起196abの長辺(
図4中の上下方向の辺)の長さd5より長い。
【0059】
ここで、把持穴24の内周面側の部分24aの周方向の幅d1は、ツイストロック196aの係止突起196abの長辺の長さd5より短い。ゆえに、
図4のように、係止突起196abが軸方向に延びる姿勢を取る場合、ツイストロック196aを径方向外側に移動させることによって、係止突起196abを把持穴24内に進入させることができる。
【0060】
図4に示すように、径方向内側から見た場合、把持穴24の内部側の部分24bの軸方向の幅d3は、把持穴24の内周面側の部分24aの軸方向の幅d3と一致している。ゆえに、把持穴24の内部側の部分24bの軸方向の幅d3は、ツイストロック196aの係止突起196abの長辺の長さd5より長い。ここで、把持穴24の内部側の部分24bの周方向の幅d2も、ツイストロック196aの係止突起196abの長辺の長さd5より長くなっている。
【0061】
図4には、係止突起196abを把持穴24の内部側の部分24bまで進入させた状態で、ツイストロック196aをヨー方向に略90°回動させた場合の係止突起196abが二点鎖線によって示されている。このように、把持穴24の内部側の部分24bで係止突起196abを周方向に延びる姿勢にした場合、ツイストロック196aを径方向内側に引き上げると、係止突起196abが把持穴24と係合する。それにより、セグメント20をツイストロック196aにより把持して、移動させることができる。
【0062】
図5は、エレクタ装置19が把持対象セグメント20bを把持している様子を示す図である。
図5では、
図4で二点鎖線によって示される状態と同様に、把持穴24の内部側の部分24bで係止突起196abが周方向に延びる姿勢を取っている。それにより、係止突起196abが把持穴24と係合し、把持対象セグメント20bがツイストロック196aにより把持されている。この状態で、把持部196を移動させることによって、セグメント20を所望の位置に移動させることができる。以下では、セグメント20のうち、エレクタ装置19の把持部196により把持されているセグメント20を把持済セグメント20cと呼ぶ。
【0063】
セグメント20の組立作業では、把持対象セグメント20bの把持、および、把持済セグメント20cの既設セグメント20aへの組み付けが順に繰り返される。ここで、セグメント20の組立作業において、画像処理システム2の複数のカメラ23は、セグメント20の内周面の特定の部分を撮像する。そして、セグメント20の内周面の特定の部分が映る合成画像が、画像処理装置200によって得られる。以下、
図6~
図8を参照して、画像処理装置200により得られる合成画像の例である合成画像im1、im2、im3について説明する。
【0064】
図6は、把持対象セグメント20bの把持時に得られる合成画像im1を示す図である。
図6に示すように、合成画像im1には、把持対象セグメント20bの全体が映っている。また、合成画像im1には、把持対象セグメント20bの周辺の既設セグメント20aの一部、および、切羽側の既設セグメント20aを押圧しているシールドジャッキ21の一部も映っている。
【0065】
合成画像im1の中央には、把持対象セグメント20bの把持穴24が映っている。把持対象セグメント20bの把持穴24は、例えば、把持部196に取り付けられたカメラ23aによって撮像される。このように、複数のカメラ23には、把持対象セグメント20bの把持穴24を撮像するカメラ23aが含まれるので、把持対象セグメント20bの把持穴24が映る合成画像im1を得ることができる。
【0066】
作業者は、把持対象セグメント20bの把持穴24が映る合成画像im1を目視しながら、エレクタ装置19を操作することができる。それにより、把持対象セグメント20bの把持時において、把持対象セグメント20bの内周面のうち把持穴24が形成されていない部分にツイストロック196aを衝突させることなく、把持穴24内にツイストロック196aを容易に進入させることができる。
【0067】
また、合成画像im1には、把持対象セグメント20bの切羽側の縁部L1、坑口側の縁部L2、および、周方向の縁部L3、L4が映っている。把持対象セグメント20bの縁部L1、L2、L3、L4は、例えば、吊りビーム193に取り付けられたカメラ23bによって撮像される。
図6に示すように、合成画像im1には、把持対象セグメント20bの内周面の全域が映っている。ただし、合成画像im1に、把持対象セグメント20bの内周面の一部のみが映っていてもよい。
【0068】
ここで、画像処理装置200は、把持対象セグメント20bの把持時に、係合部としてのツイストロック196aを示す係合部オブジェクトoj1を合成画像im1に重畳してもよい。係合部オブジェクトoj1は、例えば、ツイストロック196aを径方向内側から見た様子を模した画像である。係合部オブジェクトoj1の画像データは、例えば、画像処理装置200の記憶素子に予め記憶されている。
【0069】
上述したように、各カメラ23は、エレクタ装置19に設置されている。ゆえに、画像処理装置200は、各カメラ23により撮像される画像内でのツイストロック196aの位置および姿勢を、制御装置100から取得されるエレクタ装置19の各種制御量(例えば、把持部196を各方向に移動させるためのアクチュエータの制御量、および、ツイストロック196aの姿勢を各方向に変更するためのアクチュエータの制御量)に基づいて、算出できる。よって、画像処理装置200は、係合部オブジェクトoj1の位置がツイストロック196aの位置と一致し、かつ、係合部オブジェクトoj1の姿勢がツイストロック196aの姿勢と一致するように、係合部オブジェクトoj1を合成画像im1に重畳することができる。
【0070】
なお、画像処理装置200は、各カメラ23により撮像される画像を用いて、把持対象セグメント20bの縁部L1、L2、L3、L4の一部または全部を画像処理により認識し、その認識結果に基づいて、係合部オブジェクトoj1の合成画像im1上における重畳位置を決定してもよい。
【0071】
これにより、作業者は、合成画像im1を目視して、把持穴24とツイストロック196aとの位置関係を把握しながら、エレクタ装置19を操作することができる。この際、作業者は、係合部オブジェクトoj1が合成画像im1上で把持穴24内に納まるようにエレクタ装置19を操作することによって、把持対象セグメント20bの内周面のうち把持穴24が形成されていない部分にツイストロック196aを衝突させることなく、把持穴24内にツイストロック196aを容易に進入させることができる。
【0072】
ここで、各カメラ23の撮像範囲には、限界があるので、作業者が所望の範囲を1つの画面で確認するためには、複数のカメラ23により撮像された複数の画像を合成する必要性が生じる。
【0073】
例えば、吊りビーム193に取り付けられたカメラ23bでは、把持対象セグメント20bの把持時に、把持部196が邪魔になり把持穴24を撮像できないことが考えられる。把持部196に取り付けられたカメラ23aは、把持部196中央(把持対象セグメント20bの把持穴24の直上の位置)には取り付けられず、斜め方向からの撮像になるため、手前側が撮像の死角になることから、坑口側のカメラ23aでは、把持穴24のうち坑口側が死角となり撮像できず、切羽側のカメラ23aでは、同様の理由により、把持穴24のうち切羽側が死角となり撮像できない場合がある。その場合、複数のカメラ23aにより撮像された複数の画像を合成することによって、把持穴24全体が映る合成画像im1を得ることができる。
【0074】
また、例えば、吊りビーム193に取り付けられたカメラ23bにおいては把持部196が邪魔となる場合があり、坑口側のカメラ23bでは、把持対象セグメント20bの端部のうち切羽側を撮像できなく、切羽側のカメラ23bでは、把持対象セグメント20bの端部のうち坑口側を撮像できない場合がある。その場合、複数のカメラ23bにより撮像された複数の画像を合成することによって、把持対象セグメント20bの端部全体が映る合成画像im1を得ることができる。
【0075】
上記のように、把持対象セグメント20bの把持時に、複数のカメラ23により撮像された複数の画像から合成画像im1を得ることによって、作業者は、把持穴24を含む把持対象セグメント20b全体およびその周囲を1つの画面で確認することができる。ゆえに、把持対象セグメント20bの把持時に、従来には死角になっていた部分を見えるようにし、かつ、各部分を1つの画面により一括で確認できるので、エレクタ装置19の操作性を向上させる(例えば、操作を容易化し、操作の確実性を向上させる)ことができる。
【0076】
なお、画像処理装置200は、エレクタ装置19の各種制御量(例えば、把持部196を各方向に移動させるためのアクチュエータの制御量、および、ツイストロック196aの姿勢を各方向に変更するためのアクチュエータの制御量)に基づいて、複数のカメラ23により撮像された複数の画像を合成することが好ましい。それにより、複数の画像を精度良く合成することができる。なお、画像の合成の方法としては、公知の画像処理方法が適宜用いられ得る。
【0077】
ここにおいて、複数のカメラ23は把持部196または吊りビーム193に取り付けられており、吊りビーム193は伸縮方向(D1方向)に移動する。そして、この伸縮方向の移動に伴い、複数のカメラ23の撮像している把持対象セグメント20bや既設セグメント20aとの相対距離が変化するため、撮像領域が変化する。ここにおいて、画面の合成方法としては、公知の画像処理方法の適用で問題ないが、伸縮方向の移動状態を考慮して画像の重ね合わせ方法を補正する必要がある。具体的には、この伸縮方向の移動状態の変化で、撮像範囲が変化したり、撮像範囲の変化に伴い合成処理をする場合の重複領域の範囲が変化したり、撮像対象との相対距離の変化に伴いカメラ23と撮像対象の撮像角(つまり、カメラ23を基準とする撮像対象の方向を示す角度)が変化するような事象など、画像の合成において、とくにこれらの変化を考慮した処理が必要になる状況が発生する。よって、適切な合成画像を得るためには、伸縮方向の移動状態を考慮して画像の重ね合わせ方法を補正することが好ましい。具体的には、伸縮方向の移動状態を合成画像作成の1つのパラメータとして取り込んで、画像作成の制御(作成アルゴリズム)を行うこととすればよい。
【0078】
図7は、把持済セグメント20cの組み付け時に得られる合成画像im2を示す図である。合成画像im2は、把持済セグメント20cを組付位置の近傍に移動させた状態で得られる画像である。組付位置は、把持済セグメント20cの組み付けが完了する際の位置である。
図7に示すように、合成画像im2には、把持済セグメント20cの全体が映っている。また、合成画像im2には、把持済セグメント20cの周辺の既設セグメント20aの一部、および、シールドジャッキ21の一部も映っている。把持済セグメント20cの組付位置の近傍では、一部のシールドジャッキ21が引き戻され、シールドジャッキ21による既設セグメント20aの押圧(押付け)が解除されている。
【0079】
合成画像im2には、既設セグメント20aの切羽側において露出された縁部L5、L6(以下、単に既設セグメント20aの切羽側の縁部L5、L6とも呼ぶ)が映っている。既設セグメント20aの切羽側において露出された縁部L5、L6は、トンネルTの内壁面に既に組み立てられている複数の既設セグメント20aの集合体のうちの切羽側の縁部である。縁部L5は周方向に延びており、縁部L6は軸方向に延びている。既設セグメント20aの切羽側において露出された縁部L5、L6は、例えば、吊りビーム193に取り付けられたカメラ23bによって撮像される。このように、複数のカメラ23には、既設セグメント20aの切羽側において露出された縁部L5、L6を撮像するカメラ23bが含まれるので、既設セグメント20aの切羽側において露出された縁部L5、L6が映る合成画像im2を得ることができる。
【0080】
作業者は、既設セグメント20aの切羽側において露出された縁部L5、L6が映る合成画像im2を目視し、シールドジャッキ21の引き戻し状況(具体的には、把持済セグメント20cの組付位置の近傍のシールドジャッキ21が引き戻されているか否かの状況)を確認しながら、エレクタ装置19を操作することができる。具体的には、掘削機下部で把持対象セグメント20bを把持部196に把持させた後、旋回動作にて旋回位置として
図7に示す組立位置近傍まで移動させ、その後、伸縮の伸び動作にてD1の外方向に把持済セグメント20cを伸縮方向として組立位置近傍まで移動させる。この伸縮方向の伸び動作を行うにあたっては、当該把持済セグメント20cの組立位置近傍に配置されているシールドジャッキ21が引き戻されていなければ干渉が発生することになるので、作業者は、このシールドジャッキ21の引き戻し状況を確認した上で組み付ける操作を行うこととなる。それにより、把持済セグメント20cの組み付け時において、既設セグメント20aの切羽側の端部(例えば、縁部L5、L6)に把持済セグメント20cの坑口側の端部(例えば、縁部L8)、または、周方向の端部(例えば、縁部L10)を衝突させることなく、既設セグメント20aに把持済セグメント20cを容易に組み付けることができる。
【0081】
また、合成画像im2には、把持済セグメント20cの切羽側の縁部L7が映っている。把持済セグメント20cの切羽側の縁部L7は、例えば、吊りビーム193に取り付けられたカメラ23bによって撮像される。このように、複数のカメラ23には、把持済セグメント20cの切羽側の縁部L7を撮像するカメラ23bが含まれるので、把持済セグメント20cの切羽側の縁部L7が映る合成画像im2を得ることができる。それにより、シールドジャッキ21の引き戻し状況をより適切に確認することができるので、既設セグメント20aに把持済セグメント20cを容易に組み付けることができる。
【0082】
また、合成画像im2には、把持済セグメント20cの坑口側の縁部L8が映っている。把持済セグメント20cの坑口側の縁部L8は、例えば、吊りビーム193に取り付けられたカメラ23bによって撮像される。このように、複数のカメラ23には、把持済セグメント20cの坑口側の縁部L8を撮像するカメラ23bが含まれるので、把持済セグメント20cの坑口側の縁部L8が映る合成画像im2を得ることができる。
【0083】
作業者は、把持済セグメント20cの坑口側の縁部L8が映る合成画像im2を目視し、把持済セグメント20cの坑口側の縁部L8と既設セグメント20aとの位置関係を確認しながら、エレクタ装置19を操作することができる。それにより、把持済セグメント20cの組み付け時において、把持済セグメント20cの坑口側の縁部L8と既設セグメント20aとの位置合わせを容易に行うことができるので、既設セグメント20aに把持済セグメント20cを容易に組み付けることができる。
【0084】
また、合成画像im2には、把持済セグメント20cの周方向の縁部L9、L10が映っている。把持済セグメント20cの周方向の縁部L9、L10は、例えば、吊りビーム193に取り付けられたカメラ23bによって撮像される。このように、複数のカメラ23には、把持済セグメント20cの周方向の縁部L9、L10を撮像するカメラ23bが含まれるので、把持済セグメント20cの周方向の縁部L9、L10が映る合成画像im2を得ることができる。
【0085】
縁部L9、L10のうちの縁部L10が、既設セグメント20a(
図7中では、把持済セグメント20cの右側の既設セグメント20a)に組み付けられる。ゆえに、把持済セグメント20cの組み付けを容易化する観点では、特に、合成画像im2に、把持済セグメント20cの縁部L10が映っていることが好ましい。
【0086】
作業者は、把持済セグメント20cの周方向の縁部L10が映る合成画像im2を目視し、把持済セグメント20cの周方向の縁部L10と既設セグメント20a(具体的には、縁部L6)との位置関係を確認しながら、エレクタ装置19を操作することができる。それにより、把持済セグメント20cの組み付け時において、把持済セグメント20cの周方向の縁部L10と既設セグメント20a(具体的には、縁部L6)との位置合わせを容易に行うことができるので、既設セグメント20aに把持済セグメント20cを容易に組み付けることができる。
【0087】
上述したように、各カメラ23の撮像範囲には、限界があるので、作業者が所望の範囲を1つの画面で確認するためには、複数のカメラ23により撮像された複数の画像を合成する必要性が生じる。例えば、吊りビーム193に取り付けられたカメラ23bのうち、坑口側のカメラ23bでは、把持済セグメント20cのうち切羽側を撮像できなく、切羽側のカメラ23bでは、把持済セグメント20cのうち坑口側を撮像できない場合がある。その場合、複数のカメラ23bにより撮像された複数の画像を合成することによって、把持済セグメント20c全体が映る合成画像im2を得ることができる。
【0088】
上記のように、把持済セグメント20cの組み付け時に、複数のカメラ23により撮像された複数の画像から合成画像im2を得ることによって、作業者は、把持済セグメント20c全体およびその周囲を1つの画面で確認することができる。ゆえに、把持済セグメント20cの組み付け時に、従来では作業者が操作をする際に死角になっていた部分を見えるようにし、かつ、各部分を1つの画面により一括で確認できるので、エレクタ装置19の操作性を向上させる(例えば、操作を容易化し、操作の確実性を向上させる)ことができる。
【0089】
上記のように、合成画像im2には、把持済セグメント20cの全ての縁部L7、L8、L9、L10が映っている。つまり、合成画像im2には、把持済セグメント20cの縁部が全域にわたって映っている。ただし、合成画像im2に、把持済セグメント20cの縁部の一部のみ(例えば、縁部L7、L8、L9、L10のうちの一部の縁部のみ)が映っていてもよい。
【0090】
把持対象セグメント20bの把持時に得られる合成画像(例えば、
図6に示す合成画像im1)と、把持済セグメント20cの組み付け時に得られる合成画像(例えば、
図7に示す合成画像im2)とでは、使用されるカメラ23が異なることが考えられる。ゆえに、把持時と組み付け時とで、複数のカメラ23のうちのいずれのカメラ23を使用するかを切り替えてもよい。また、使用するカメラ23が異なる複数の合成画像を常時表示させておき、把持時と組み付け時などで、状況に応じて表示する画像を選択式などで作業者が適宜切り替え可能としたり、また、微調整作業などのために拡大表示を可能としたりするなど、合成画像の表示は作業に応じて柔軟な対応を行えるものとしてもよい。
【0091】
図8は、把持済セグメント20cの組み付けが完了した後に得られる合成画像im3を示す図である。
図8に示すように、合成画像im3には、把持済セグメント20cの組み付けが完了し、把持済セグメント20cが組み付け位置に配置されている様子が映っている。把持済セグメント20cの組み付けの完了後には、把持済セグメント20cの坑口側の縁部L8が既設セグメント20aの切羽側において露出された縁部L5と接し、把持済セグメント20cの周方向の縁部L10が既設セグメント20aの切羽側において露出された縁部L6と接した状態となる。なお、把持済セグメント20cの組み付けでは、リング間継手やピース間継手と呼ばれる接続用部材を用いて、把持済セグメント20cが既設セグメント20aに組み付けられる。
【0092】
把持済セグメント20cの組み付けが完了した後においても、複数のカメラ23により撮像された複数の画像から合成画像im3を得ることによって、把持済セグメント20c全体およびその周囲を1つの画面で確認するメリットがある。例えば、セグメント20間の位置関係やセグメント組み付け後のシールドジャッキ21の再押し付け状況を確認することによって、把持済セグメント20cの組み付けが問題なく完了したか否かを確認することができる。ゆえに、把持済セグメント20cの組み付けが完了した後においても、従来には死角になっていた部分を見えるようにし、かつ、各部分を1つの画面により一括で確認できるので、エレクタ装置19の操作性を向上させる(例えば、操作を容易化し、操作の確実性を向上させる)ことができる。
【0093】
上記で説明した例では、複数のカメラ23は、把持対象セグメント20bの把持時における把持対象セグメント20bの内周面と、把持済セグメント20cの組み付け時における既設セグメント20aの内周面と、把持済セグメント20cの組み付け時における把持済セグメント20cの内周面とを撮像する。ただし、複数のカメラ23は、把持対象セグメント20bの把持時における把持対象セグメント20bの内周面と、把持済セグメント20cの組み付け時における既設セグメント20aの内周面と、把持済セグメント20cの組み付け時における把持済セグメント20cの内周面とのうちの少なくとも1つを撮像すればよい。
【0094】
本実施形態では、画像処理装置200は、複数のカメラ23により撮像された複数の画像を合成することによって、エレクタ装置19の把持部196の周辺が映る合成画像を生成する。上述したように、画像処理装置200により得られる合成画像には、作業者が直接的に目視することが困難な把持部196の周辺が映っている。さらに、得られる合成画像には、把持部196の周辺の各部分が一括で映っている。ゆえに、作業者は、このような合成画像を目視することによって、従来では作業者が操作をする際に死角になっていた部分を確認し、かつ、各部分を1つの画面により一括で確認できる。よって、作業者は、エレクタ装置19の把持部196の周辺を死角なく確認しながら、エレクタ装置19を操作することができる。したがって、エレクタ装置19の操作性を向上させることができる。それにより、エレクタ装置19の操作の難易度を低下させ、作業者の負担および作業時間を低減することができる。
【0095】
なお、カメラ23の撮像範囲内にレーザーマーカーを照射する照射装置がエレクタ装置19に設けられる場合、制御装置100は、照射装置によって、カメラ23の撮像範囲内にレーザーマーカーを照射させることが好ましい。例えば、把持済セグメント20cの組み付け時に、把持済セグメント20cと、その把持済セグメント20cが組付けられる既設セグメント20aとに跨ってレーザーマーカーを照射することによって、作業者は、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの位置合わせの操作を容易、かつ、確実に行うことができる。例えば、直線線分を照射するレーザーマーカーを使用し、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとに跨って直線線分のレーザーマーカーを照射すると、両者の位置のずれ状況に応じた折れ曲がりのある折れ線となって表示(照射)されるので、作業者は、両者の位置ずれ状況を画面上でより容易に把握でき、操作性の向上に結び付けられる点でメリットがある。
【0096】
上記では、
図7を参照して、把持済セグメント20cの組み付け時に得られる合成画像の例として合成画像im2について説明した。ただし、把持済セグメント20cの組み付け時に得られる合成画像は、上記の例に限定されない。例えば、画像処理装置200は、把持済セグメント20cの組み付け時に、上記で言及していない各種オブジェクトを合成画像に重畳してもよい。以下、
図9~
図11を参照して、把持済セグメント20cの組み付け時に得られる第1の変形例における合成画像im4、第2の変形例における合成画像im5、および、第3の変形例における合成画像im6について説明する。
【0097】
図9は、把持済セグメント20cの組み付け時に得られる第1の変形例における合成画像im4を示す図である。第1の変形例は、把持済セグメント20cの縁部L7、L8、L9、L10がカメラ23により撮像されない場合の例である。
図9に示すように、第1の変形例では、画像処理装置200は、把持済セグメント20cの組み付け時に、把持済セグメント20cを示す把持済セグメントオブジェクトoj2を合成画像im4に重畳する。
【0098】
把持済セグメントオブジェクトoj2は、例えば、把持済セグメント20cを径方向内側から見た様子を模した画像である。把持済セグメントオブジェクトoj2の画像データは、例えば、画像処理装置200の記憶素子に予め記憶されている。
【0099】
上述したように、各カメラ23は、エレクタ装置19に設置されている。ゆえに、画像処理装置200は、各カメラ23により撮像される画像内での把持済セグメント20cの位置および姿勢を、制御装置100から取得されるエレクタ装置19の各種制御量(例えば、把持部196を各方向に移動させるためのアクチュエータの制御量、および、ツイストロック196aおよび把持済セグメント20cの姿勢を各方向に変更するためのアクチュエータの制御量)に基づいて、算出できる。よって、画像処理装置200は、把持済セグメントオブジェクトoj2の位置が把持済セグメント20cの位置と一致し、かつ、把持済セグメントオブジェクトoj2の姿勢が把持済セグメント20cの姿勢と一致するように、把持済セグメントオブジェクトoj2を合成画像im4に重畳することができる。
【0100】
作業者は、把持済セグメントオブジェクトoj2が重畳された合成画像im4を目視し、把持済セグメント20cの位置を確認しながら、エレクタ装置19を操作することができる。それにより、把持済セグメント20cの組み付け時において、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの位置合わせを容易に行うことができるので、既設セグメント20aに把持済セグメント20cを容易に組み付けることができる。
【0101】
図10は、把持済セグメント20cの組み付け時に得られる第2の変形例における合成画像im5を示す図である。
図10に示すように、第2の変形例では、画像処理装置200は、把持済セグメント20cの組み付け時に、把持済セグメント20cの縁部L7、L8、L9、L10を示す縁部オブジェクトoj3、および、既設セグメント20aの縁部L5、L6を示す縁部オブジェクトoj4を合成画像im5に重畳する。
【0102】
縁部オブジェクトoj3は、把持済セグメント20cの縁部L7、L8、L9、L10を強調表示するオブジェクトであり、例えば、透過性を有する枠状のオブジェクトである。縁部オブジェクトoj4は、既設セグメント20aの縁部L5、L6を強調表示するオブジェクトであり、例えば、透過性を有する線状のオブジェクトである。縁部オブジェクトoj3、oj4の画像データは、例えば、画像処理装置200の記憶素子に予め記憶されている。
【0103】
上述したように、各カメラ23は、エレクタ装置19に設置されている。ゆえに、画像処理装置200は、各カメラ23により撮像される画像内での把持済セグメント20cの位置および姿勢と、既設セグメント20aの位置および姿勢とを、制御装置100から取得されるエレクタ装置19の各種制御量(例えば、把持部196を各方向に移動させるためのアクチュエータの制御量、および、ツイストロック196aの姿勢を各方向に変更するためのアクチュエータの制御量)に基づいて、算出できる。よって、画像処理装置200は、合成画像im5上で、縁部オブジェクトoj3を把持済セグメント20cの縁部L7、L8、L9、L10に重畳し、縁部オブジェクトoj4を既設セグメント20aの縁部L5、L6に重畳することができる。
【0104】
なお、画像処理装置200は、各カメラ23により撮像される画像を用いて、把持済セグメント20cの縁部L7、L8、L9、L10の一部または全部を画像処理により認識し、その認識結果に基づいて、縁部オブジェクトoj3の合成画像im5上における重畳位置を決定してもよい。また、画像処理装置200は、各カメラ23により撮像される画像を用いて、既設セグメント20aの縁部L5、L6の一部または全部を画像処理により認識し、その認識結果に基づいて、縁部オブジェクトoj4の合成画像im5上における重畳位置を決定してもよい。
【0105】
作業者は、縁部オブジェクトoj3、oj4が重畳された合成画像im5を目視し、把持済セグメント20cの縁部L7、L8、L9、L10と既設セグメント20aの縁部L5、L6との位置関係を確認しながら、エレクタ装置19を操作することができる。この際、縁部オブジェクトoj3、oj4は、把持済セグメント20cと既設セグメント20aを明確に見分け、それらの位置関係を明確に把握するための印として機能する。例えば、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとは同色系であるため、光の当たり具合によっては、作業者が把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの境界を画面上で区別しにくい場合がある。このような場合に、作業者は、縁部オブジェクトoj3、oj4を目印にして、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの境界を把握することができる。それにより、把持済セグメント20cの組み付け時において、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの位置合わせを容易に行うことができるので、既設セグメント20aに把持済セグメント20cを容易に組み付けることができる。なお、合成画像im5には、縁部オブジェクトoj3と縁部オブジェクトoj4の一方のみが重畳されてもよい。合成画像im5に、縁部オブジェクトoj3、および、縁部オブジェクトoj4の少なくとも一方が重畳されれば、上記のように組み付け作業が容易化される。
【0106】
図11は、把持済セグメント20cの組み付け時に得られる第3の変形例における合成画像im6を示す図である。
図11に示すように、第3の変形例では、画像処理装置200は、把持済セグメント20cの組み付け時に、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの位置関係を示す位置関係オブジェクトoj5、oj6、oj7、oj8を合成画像im6に重畳する。
【0107】
位置関係オブジェクトoj5、oj6は、把持済セグメント20cの現在位置から設置位置までの方向を示す矢印である。
図11の例では、把持済セグメント20cの坑口側の縁部L8が既設セグメント20aの切羽側において露出された縁部L5と離隔しているので、
図11中で下向きの矢印である位置関係オブジェクトoj5が合成画像im6に重畳されている。また、把持済セグメント20cの周方向の縁部L10が既設セグメント20aの切羽側において露出された縁部L6と離隔しているので、
図11中で右向きの矢印である位置関係オブジェクトoj6が合成画像im6に重畳されている。
【0108】
位置関係オブジェクトoj7、oj8は、把持済セグメント20cの現在位置から設置位置までの距離を示す文字である。位置関係オブジェクトoj7は、位置関係オブジェクトoj5の近傍に重畳され、把持済セグメント20cの坑口側の縁部L8と既設セグメント20aの切羽側の縁部L5との距離を示す。位置関係オブジェクトoj8は、位置関係オブジェクトoj6の近傍に重畳され、把持済セグメント20cの周方向の縁部L10と既設セグメント20aの切羽側の縁部L6との距離を示す。
【0109】
位置関係オブジェクトoj5、oj6、oj7、oj8の画像データは、例えば、画像処理装置200の記憶素子に予め記憶されている。画像処理装置200は、把持済セグメント20cの位置および姿勢を、制御装置100から取得されるエレクタ装置19の各種制御量(例えば、把持部196を各方向に移動させるためのアクチュエータの制御量、および、ツイストロック196aおよび把持済セグメント20cの姿勢を各方向に変更するためのアクチュエータの制御量)に基づいて、算出できる。よって、画像処理装置200は、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの位置関係を適切に示す位置関係オブジェクトoj5、oj6、oj7、oj8を合成画像im6に重畳することができる。なお、画像処理装置200は、合成画像im6を用いて、把持済セグメント20cおよび既設セグメント20aを画像処理により認識し、その認識結果に基づいて、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの位置関係を算出してもよい。
【0110】
作業者は、位置関係オブジェクトoj5、oj6、oj7、oj8が重畳された合成画像im6を目視し、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの位置関係を確認しながら、エレクタ装置19を操作することができる。ここで、画像は二次元的な情報であり、作業者は、表示された画像ではセグメント20間の距離感を把握しにくい。ゆえに、作業者は、位置関係オブジェクトoj5、oj6、oj7、oj8を確認することによって、セグメント20間の距離を感覚的ではなく、具体的に把握することができる。それにより、把持済セグメント20cの組み付け時において、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの位置合わせを容易に行うことができるので、既設セグメント20aに把持済セグメント20cを容易に組み付けることができる。
【0111】
図11の例では、位置関係オブジェクトoj5、oj6、oj7、oj8が把持穴24の近傍に重畳されている。ただし、位置関係オブジェクトoj5、oj6、oj7、oj8の合成画像im6上での表示位置は、
図11の例に限定されない。また、合成画像im6上に重畳される位置関係オブジェクトは、上記の位置関係オブジェクトoj5、oj6、oj7、oj8に限定されない。例えば、上記では、位置関係オブジェクトとして、周方向および軸方向についての位置関係を示すオブジェクトを説明したが、位置関係オブジェクトは、これら以外の他の方向(例えば、径方向、ロール方向、ピッチ方向またはヨー方向)についての位置関係を示してもよい。また、例えば、位置関係オブジェクトとして、表形式のオブジェクトが用いられてもよい。
【0112】
上述したことをもとにすれば、本実施形態に係るトンネル掘削機1では、制御装置100(
図1参照)は、エレクタ装置19によるセグメント20の自動組立を制御することも可能となる。ここにおいて、制御装置100は、セグメント20の自動組立において、画像処理装置200により得られる合成画像に基づいてエレクタ装置19の動作を制御する。具体的には、エレクタ装置19の各種制御量に加えて、合成画像から取得される情報(例えば、把持部196の周囲における部材間の位置関係、または、把持部196の周囲のシールドジャッキ21の引き戻し状況等の各種状況)に基づいてエレクタ装置19の制御を行うことで、セグメント20の自動組立を行うことができる。例えば、合成画像から取得される情報で、対象セグメント(把持対象セグメント20b、把持済セグメント20c)と周囲の状況(目標とする位置に対するズレ量を含む)を把握できるので、これに対して、エレクタ装置19の各種制御量を制御装置100から、この把握した状況に基づいて制御装置にて作成した指令で動かすことにより、目的とする各動作を達成することができる。また、例えば、制御装置100は、想定外の異物が合成画像に映っている場合に、エレクタ装置19の動作の停止、または、制御量の変更を行うこともできる。
【0113】
図12は、制御装置100が行うセグメント20の自動組立に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12に示す処理フローは、例えば、予め設定された時間間隔で繰り返し行われる。
【0114】
図12に示す処理フローが開始されると、ステップS101において、制御装置100は、把持対象セグメント20bの近傍にエレクタ装置19の把持部196を移動させる。ステップS101では、制御装置100は、エレクタ装置19の把持部196を、制御装置100に予め設定されている所定の把持位置まで移動させる。それにより、エレクタ装置19の把持部196が、把持対象セグメント20bの近傍におおまかに位置決めされる。
【0115】
ステップS101の次に、ステップS102において、制御装置100は、把持対象セグメント20bをエレクタ装置19の把持部196に把持させる。ステップS102では、制御装置100は、把持対象セグメント20bの把持時に画像処理装置200により得られる合成画像(例えば、
図6に示す合成画像im1)に基づいて、エレクタ装置19の動作を制御する。例えば、制御装置100は、合成画像im1に基づいて、把持部196と把持穴24との位置関係を導出する。そして、制御装置100は、導出した把持部196と把持穴24との位置関係を監視しながら、把持部196を移動させ、ツイストロック196aと把持穴24を位置合わせした後に、ツイストロック196aの動作を制御する。それにより、ツイストロック196aを把持穴24に係止させ、把持対象セグメント20bを把持部196に把持させることができる。
【0116】
ステップS102の次に、ステップS103において、制御装置100は、把持済セグメント20cの組付位置の近傍に把持済セグメント20cを移動させる。ステップS103では、制御装置100は、把持済セグメント20cを把持している把持部196を、制御装置100に予め記憶されている組付位置まで移動させる。それにより、把持済セグメント20cが組付位置の近傍におおまかに位置決めされる。なお、ステップS103では、具体的には、把持部196の各方向への移動と、ツイストロック196aおよび把持済セグメント20cの各方向の姿勢調整が行われる。
【0117】
ステップS103の次に、ステップS104において、制御装置100は、把持済セグメント20cを既設セグメント20aに組み付ける。ステップS104では、制御装置100は、把持済セグメント20cの組み付け時に画像処理装置200により得られる合成画像(例えば、
図7に示す合成画像im2)に基づいて、エレクタ装置19の動作を制御する。例えば、制御装置100は、合成画像im2に基づいて、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの位置関係を導出する。そして、制御装置100は、導出した把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの位置関係を監視しながら、把持部196を移動させる。それにより、把持済セグメント20cを組付位置まで移動させ、把持済セグメント20cを既設セグメント20aに組み付けることができる。
【0118】
ステップS104の次に、ステップS105において、制御装置100は、エレクタ装置19の把持部196による把持済セグメント20cの把持を解除し、
図12に示される制御フローは終了する。その後、
図12に示される制御フローが再度実行され、次の把持対象セグメント20bの組立が繰り返される。
【0119】
上記のように、制御装置100は、セグメント20の自動組立において、画像処理装置200により得られる合成画像に基づいてエレクタ装置19の動作を制御する。それにより、エレクタ装置19の把持部196の周囲における部材間の位置関係(例えば、把持部196と把持穴24との位置関係、または、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの位置関係)に基づいて、セグメント20の自動組立を行うことができる。さらに、エレクタ装置19の把持部196の周囲の状況(例えば、シールドジャッキ21の引き戻し状況)に基づいて、セグメント20の自動組立を行うことができる。ゆえに、セグメント20の自動組立を適切に実現することができる。
【0120】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0121】
例えば、上記では、土圧式(泥土圧式を含む。)のトンネル掘削機1を説明したが、本発明に係るトンネル掘削機は、泥水式であってもよい。
【0122】
また、例えば、上記では、図面を参照して、トンネル掘削機1の各構成要素を説明したが、図面における各構成要素の寸法および位置関係はあくまでも例示に過ぎないので、トンネル掘削機1の各構成要素の寸法および位置関係は図面に示す例に限定されない。また、図面に例示されたトンネル掘削機1に対して構成要素が適宜追加、削除または変更されてもよい。
【0123】
また、例えば、上記では、図面を参照して、エレクタ装置19の各構成要素を説明したが、図面における各構成要素の寸法および位置関係はあくまでも例示に過ぎないので、エレクタ装置19の各構成要素の寸法および位置関係は図面に示す例に限定されない。また、図面に例示されたエレクタ装置19に対して構成要素が適宜追加、削除または変更されてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 トンネル掘削機
2 画像処理システム
19 エレクタ装置
20 セグメント
20a 既設セグメント
20b 把持対象セグメント
20c 把持済セグメント
23、23a、23b カメラ
24 把持穴(被係合部)
100 制御装置
191 リングフレーム
191a ブラケット
192 支持ローラ
193 吊りビーム
193a 支持フレーム
194 ガイドロッド
195 昇降ジャッキ
196 把持部
196a ツイストロック(係合部)
196aa 支持棒
196ab 係止突起
200 画像処理装置
im1、im2、im3、im4、im5、im6 合成画像
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10 縁部
oj1 係合部オブジェクト
oj2 把持済セグメントオブジェクト
oj3、oj4 縁部オブジェクト
oj5、oj6、oj7、oj8 位置関係オブジェクト