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  • 特開-複合体、及び複合体の製造方法 図1
  • 特開-複合体、及び複合体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162256
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】複合体、及び複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20221017BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021066978
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 致漢
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL031
4J002DJ046
4J002FD016
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規な複合体を提供する。
【解決手段】複合体は、下記一般式(1)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(2)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(3)で表される特定のジアミン単位と、を含有するポリアミド化合物と、タルクと、を含む。

(xは6~12の整数。yは8~18の整数。)

(zは2~18の整数。)

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(2)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(3)で表されるジアミン単位と、を含有するポリアミド化合物と、
タルクと、
を含む複合体。
【化1】

(xは6~12の整数を示し、yは8~18の整数を示す。)
【化2】

(zは2~18の整数を示す。)
【化3】

【化4】
【請求項2】
一般式(1)で表されるジカルボン酸単位:一般式(2)で表されるジカルボン酸単位のモル比が、95:5~5:95である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記タルクの含有量は、1質量%以上40質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の複合体の製造方法であって、
前記ポリアミド化合物と、前記タルクとを二軸混練押出機にて混練する、複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合体、及び複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止や資源リスク低減の観点から石油系ポリマーに代わって、植物由来の化合物を出発原料としたポリアミド化合物等のバイオポリマーが注目されている(例えば非特許文献1-2、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-137788号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C. -H. Lee, H. Takagi, H. Okamoto, M. Kato, A. Usuki. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 47, 6025 (2009).
【非特許文献2】C. -H. Lee, H. Takagi, H. Okamoto, M. Kato. J. Appl. Polym. Sci. 127, 530 (2013).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のバイオポリマーは、用途によっては特性が必ずしも十分でなく、特性の向上が求められていた。
本開示は、上記課題を解決するためのものであり、以下の形態として実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.下記一般式(1)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(2)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(3)で表されるジアミン単位と、を含有するポリアミド化合物と、
タルクと、
を含む複合体。
【化1】

(xは6~12の整数を示し、yは8~18の整数を示す。)
【化2】

(zは2~18の整数を示す。)
【化3】

【化4】
【発明の効果】
【0007】
本開示の複合体は、従来のポリアミド化合物よりも優れた特性を有する。
本開示の製造方法によれば、従来のポリアミド化合物よりも優れた特性を有する複合体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、引張強さを示すグラフである。
図2図2は、引張弾性率を示すグラフである。
図3図3は、曲げ弾性率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の他の例を示す。
一般式(1)で表されるジカルボン酸単位:一般式(2)で表されるジカルボン酸単位のモル比が、95:5~5:95である、複合体。
前記タルクの含有量は、1質量%以上40質量%以下である、複合体。
複合体の製造方法であって、前記ポリアミド化合物と、前記タルクとを二軸混練押出機にて混練する、複合体の製造方法。
【0010】
以下、本開示の実施形態を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0011】
以下、本開示を詳しく説明する。
1.複合体
複合体は、下記一般式(1)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(2)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(3)で表されるジアミン単位と、を含有するポリアミド化合物と、タルクと、を含む。
【化5】

(xは6~12の整数を示し、yは8~18の整数を示す。)
【化6】

(zは2~18の整数を示す。)
【化7】

【化8】
【0012】
1.1 ポリアミド化合物
本開示のポリアミド化合物は、本開示の効果を損なわない範囲で、上記以外の構成単位を更に含んでいてもよい。
【0013】
本開示のポリアミド化合物において、ジカルボン酸単位の含有量は、特に限定されない。ジカルボン酸単位の含有量は、通常、5~50モル%であり、好ましくは20~50モル%であり、更に好ましくは30~50モル%である。
本開示のポリアミド化合物において、ジアミン単位の含有量は、特に限定されない。ジアミン単位の含有量は、通常、5~50モル%であり、好ましくは20~50モル%であり、更に好ましくは30~50モル%である。
ジカルボン酸単位とジアミン単位との含有量の割合は、重合反応の観点から、ほぼ同量であることが好ましく、ジカルボン酸単位の含有量がジアミン単位の含有量の±1モル%であることがより好ましい。
【0014】
1.1.1 ジカルボン酸単位
本開示のポリアミド化合物では、上述のように下記一般式(1)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(2)で表されるジカルボン酸単位と、を含有する。
【化9】

(xは6~12の整数を示し、yは8~18の整数を示す。
xは8~10の整数が好ましく、yは8~14の整数が好ましい。)
【化10】

(zは2~18の整数を示す。
zは2~6の整数が好ましい。)
【0015】
一般式(1)で表されるジカルボン酸単位は、植物由来であり、地球温暖化防止や資源リスク低減に寄与する。
【0016】
本開示のポリアミド化合物中のジカルボン酸単位の合計を100モル%とした場合に、上述の一般式(1)(2)で表されるジカルボン酸単位の合計の含有量は特に限定されない。一般式(1)(2)で表されるジカルボン酸単位を合計で30~100モル%含むことが好ましく、50~100モル%含むことが更に好ましく、70~100モル%含むことが特に好ましい。一般式(1)(2)で表されるジカルボン酸単位の含有量をこの範囲にすると、曲げ弾性率が高い複合体が得られる。また、この範囲にすると、ガラス転移温度(Tg)が高い複合体が得られる。
【0017】
ポリアミド化合物において、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位と、一般式(2)で表されるジカルボン酸単位と、のモル比は特に限定されない。
一般式(1)で表されるジカルボン酸単位:一般式(2)で表されるジカルボン酸単位のモル比は95:5~5:95であることが好ましく、90:10~10:90であることが更に好ましく、80:20~20:80であることが更に好ましい。
【0018】
一般式(1)(2)で表されるジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物は、特に限定されない。
例えば、ジカルボン酸化合物の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸などの炭素数2~25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、又は、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数14~48の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、および、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3-ベンゼン二酢酸、1,4-ベンゼン二酢酸などの芳香族ジカルボン酸を例示できる。また、これらのジカルボン酸化合物の誘導体を用いてもよい。誘導体としては、カルボン酸ハロゲン化物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示のポリアミド化合物中のジカルボン酸単位の合計を100モル%とした場合に、上述の一般式(1)(2)で表されるジカルボン酸以外のジカルボン酸単位の含有量は特に限定されない。一般式(1)(2)で表されるジカルボン酸以外のジカルボン酸単位の含有量は、50モル%未満であることが好ましく、20モル%未満であることが更に好ましく、10モル%未満であることが特に好ましい。一般式(1)(2)で表されるジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位の含有量をこの範囲とすると、引張強さ、引張弾性率、曲げ弾性率等が向上するからである。
【0019】
1.1.2 ジアミン単位
本開示のポリアミド化合物中のジアミン単位には、少なくとも一般式(3)で表されるジアミン単位が含まれる。
【化11】

【化12】
【0020】
本開示のポリアミド化合物中のジアミン単位の合計を100モル%とした場合に、上述の一般式(3)で表されるジアミン単位の含有量は特に限定されない。一般式(3)で表されるジアミン単位を5~100モル%含むことが好ましく、50~100モル%含むことが更に好ましく、80~100モル%含むことが特に好ましい。一般式(3)で表されるジアミン酸単位の含有量をこの範囲とすると、引張強さ、引張弾性率、曲げ弾性等が優れるからである。
【0021】
ポリアミド化合物中に含有される可能性のあるくり返し単位には、次のジカルボン酸単位と、ジアミン単位の組み合わせがある。
〔A〕一般式(1)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位の組み合わせ。
〔B〕一般式(2)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位の組み合わせ。
異種のくり返し単位が、ランダムにポリアミド化合物中に存在していてもよい。
また、同種のくり返し単位がブロック状になってポリアミド化合物中に存在していてもよい。
【0022】
一般式(3)で表されるジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物は、特に限定されない。
例えば、一般式(3)で表されるジアミン単位以外のジアミンとしては、公知の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。
【0023】
一般式(3)で表されるジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる脂肪族ジアミンとして、例えば1,1-メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミンなどを挙げることができる。
脂環式ジアミンとして、例えば4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを挙げることができる。
芳香族ジアミンとして、例えばo-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7-ジアミノフルオレン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノアクリジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾール、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチルベンジジン、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、3,5-ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、ドデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5-ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5-ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6-ビス(4-アミノフェノキシ)コレスタン、4-(4’-トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル-3,5-ジアミノベンゾエート、4-(4’-トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル-3,5-ジアミノベンゾエート、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ブチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ヘプチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)-4-ヘプチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-(4-ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4-ジアミノ―N,N―ジアリルアニリン、4-アミノベンジルアミン、3-アミノベンジルアミン、1-(2,4-ジアミノフェニル)ピペラジン-4-カルボン酸、4-(モルホリン-4-イル)ベンゼン-1,3-ジアミン、1,3-ビス(N-(4-アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン、α-アミノ-ω-アミノフェニルアルキレンなどを挙げることができる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本開示のポリアミド化合物中のジアミン単位の合計を100モル%とした場合に、上述の一般式(3)で表されるジアミン以外のジアミン単位の含有量は特に限定されない。一般式(3)で表されるジアミン以外のジアミン単位の含有量は、50モル%未満であることが好ましく、30モル%未満であることが更に好ましく、10モル%未満であることが特に好ましい。一般式(3)で表されるジアミン単位以外のジアミン単位の含有量をこの範囲とすると、引張強さ、引張弾性率、曲げ弾性等が向上するからである。
【0025】
1.1.3 ポリアミド化合物の重合度
本開示のポリアミド化合物の重合度は、特に制限がない。以下のように測定した粘度数が、4.0~10.0の範囲、特に5.0~8.0の範囲のものが好ましい。
なお、粘度数測定は以下のように行う。
試験方法:JIS K6933準拠
試験条件:測定溶媒;96%硫酸
粘度計:ウベローデ粘度計
溶液濃度:0.005g/mL
測定温度:25℃

計算式:粘度数(mL/g)=(t/t-1)×1/C
t0:測定溶媒の流下時間(s)
t:試料溶液の流下時間(s)
C:溶液濃度(g/mL)
【0026】
1.1.4 ポリアミド化合物の製造方法
本開示のポリアミド化合物の製造方法は、特に限定されない。本開示のポリアミド化合物は、例えば、ジカルボン酸化合物と、ジアミン化合物と、を反応させることで製造できる。
【0027】
ジカルボン酸化合物としては、ジカルボン酸の他、ジカルボン酸のカルボキシル基の水酸基が他のヘテロ原子(炭素、水素、金属以外の原子)に置換したカルボン酸誘導体も用いることができる。カルボン酸誘導体としては、例えば、水酸基がハロゲンに代わったハロゲン化アシル(酸ハロゲン化物)が挙げられる。
【0028】
本開示のポリアミド化合物は、ジアミン単位を構成しうるジアミン成分と、ジカルボン酸単位を構成しうるジカルボン酸成分と、を重縮合させることで製造することができる。重縮合条件等を調整することで重合度を制御できる。
ポリアミド化合物を製造する方法は、特に限定されない。ポリアミド化合物を製造する方法としては、例えば、(1)酸または塩基触媒を利用する方法、(2)カルボン酸の活性法、(3)トランスエステル化を利用する方法、(4)縮合剤を利用する方法などが好適に用いられる。
【0029】
好適な製造方法として、例えば、ジカルボン酸を活性化して酸クロリドとし、酸クロリドとジアミンとを反応させてポリアミド化合物とする製造方法が採用される。すなわち、上述の一般式(1)で表されるジカルボン酸単位を構成しうる酸クロリドと、上述の一般式(2)で表されるジカルボン酸単位を構成しうる酸クロリドと、上述の一般式(3)で表されるジアミン単位を構成しうるジアミンと、反応させる製造方法が好適に採用される。
なお、ジカルボン酸を活性化して酸クロリドとしてからジアミンと反応させると、効率的に、ポリアミド化合物を製造することができる。
【0030】
また、重縮合時に分子量調整剤としてモノアミンやモノカルボン酸を加えてもよい。また、重縮合反応を抑制して所望の重合度とするために、ポリアミド化合物を構成するジアミン成分とカルボン酸成分との比率(モル比)を1からずらして調整してもよい。
【0031】
上述の酸クロリド等のカルボン酸ジハライドとジアミンとの反応により脱ハロゲン化水素反応で重合する場合には、反応が急激に進行するため反応速度制御のため比較的低温で反応させることが好ましい。
例えば、-10℃~100℃の範囲で行なうことが好ましい。
反応溶媒としては、特に限定されず、公知の溶媒は広く適用できる。例えば、反応溶媒としての有機極性溶媒として、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、テトラメチル尿素、N,N′-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は2種以上の混合溶媒として用いてもよい。また、必要に応じて塩化水素、ハロゲン化金属塩、たとえば塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等を併用して溶解性を向上してもよい。
【0032】
また、生成したポリアミド化合物の溶媒への溶解度、溶液粘度によって異なるが、ポリアミド化合物の濃度(ポリマー濃度)は特に限定されない。ポリアミド化合物の濃度は、例えば、生産性等の観点から、0.1~40質量%が好ましい。
ポリアミド化合物の濃度は、ポリアミド化合物組成の内容と組成比、溶解度、溶液粘度、取扱性、脱泡の容易性から総合的に判断して決められる。
【0033】
原料の添加方法は、特に限定されない。例えば、反応溶媒にジアミンを添加し、低温下で溶解したのち、一方の原料である酸クロライド等のジカルボン酸ハライドを添加する。この場合ジアミンの劣化を防ぐために不活性雰囲気下(例えば窒素雰囲気下、アルゴンガス雰囲気下)で行うことが好ましい。ジアミンと酸ハライドとのモル比率は、基本的には等モルとすべきであるが、重合度の制御のため一方の原料であるジアミンあるいは酸成分を過剰に加えてもよいし、単官能の有機物、たとえばアニリン、ナフチルアミン、酢酸クロライド、ベンゾイルクロライド等の化合物を適量加えてもよい。
【0034】
また、本開示のポリアミド化合物の場合、特性を改良するために、ジアミンあるいは酸クロライドの一部を反応せしめたのち、残りの原料を添加するというようにポリマーのブロック化を意図した添加方法も採用してよい。
【0035】
このようにして得た重合反応物(ポリアミド化合物)は、副生物であるハロゲン化水素を伴うために、中和を必要とする。中和剤は一般に知られている塩基性化合物であれば特に限定されない。
中和剤としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、テトラエチルアンモニウム塩等を好適に用いることができる。また、このような中和剤は、単独に粉体で添加してもよいが、微粉化して有機溶媒中にスラリーとして分散せしめたものを用いるのが、反応性,操作性の上からも好ましい。
【0036】
以上の方法で得たポリアミド化合物溶液は、水,メタノール等の貧溶媒中で分離することができる。また、中和反応後の溶液もそのまま成形用溶液として用いることもできる。
【0037】
また、本開示のポリアミド化合物の工業的な重縮合方法としては、特に限定されず、公知の方法が広く用いられる。例えば、加圧塩法、常圧滴下法、加圧滴下法、反応押出法等が挙げられる。また、反応温度は出来る限り低い方が、ポリアミド化合物の黄色化やゲル化を抑制でき、安定した性状のポリアミド化合物が得られる。
【0038】
加圧塩法では、ナイロン塩を原料として加圧下にて溶融重縮合を行う方法である。具体的には、ジアミン成分と、ジカルボン酸成分と、必要に応じて他成分とを含むナイロン塩水溶液を調製した後、該水溶液を濃縮し、次いで加圧下にて昇温し、縮合水を除去しながら重縮合させる。缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド化合物の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド化合物を回収する。
【0039】
常圧滴下法では、常圧下にて、ジカルボン酸成分と、必要に応じて他成分とを加熱溶融した混合物に、ジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。なお、生成するポリアミド化合物の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。
【0040】
加圧滴下法では、まず、重縮合缶にジカルボン酸成分と、必要に応じて他の成分とを仕込み、各成分を撹拌して溶融混合し混合物を調製する。次いで、缶内を好ましくは0.3~0.4MPaG程度に加圧しながら混合物にジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。この際、生成するポリアミド化合物の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。設定モル比に達したらジアミン成分の滴下を終了し、缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド化合物の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド化合物を回収する。
反応押出法は、アミド交換反応により、ポリアミドの骨格中に組み込む方法である。
【0041】
1.2 タルク
タルクは、特に限定されない。例えば、タルクは、層状構造をもったケイ酸マグネシウムの板状粒子であり、その組成は例えば、MgSi10(OH)等の鉱物である。
複合体のおけるタルクの含有量は、特に限定されない。タルクの含有量は、複合体の引張強さ、引張弾性率、曲げ弾性率等が向上する観点から、複合体全体を100質量%として、1質量%以上40質量%以下が好ましく、2質量%以上30質量%以下がより好ましく、5質量%以上20質量%以下が更に好ましい。
【0042】
1.2.1 粒子径(D50)
タルクの粒子径(D50)(メディアン径)は、特に限定されない。タルクの粒子径(D50)は、複合体の引張強さ、引張弾性率、曲げ弾性率等が向上する観点から、0.1μm以上50μm以下が好ましく、0.5μm以上25μm以下がより好ましく、2μm以上8μm以下が更に好ましい。粒子径(D50)の測定は、レーザー回折法で行うことができる。
【0043】
1.2.2 見かけ密度
タルクの見かけ密度は、特に限定されない。タルクの見かけ密度は、複合体の引張強さ、引張弾性率、曲げ弾性率等が向上する観点から、0.05g/mL以上0.7g/mL以下が好ましく、0.08g/mL以上0.6g/mL以下がより好ましく、0.1g/mL以上0.5g/mL以下が更に好ましい。見かけ密度の測定は、JIS K5101に準じて行うことができる。
【0044】
1.2.3 比表面積
タルクの比表面積は、特に限定されない。タルクの比表面積は、複合体の引張強さ、引張弾性率、曲げ弾性率等が向上する観点から、1.5m/g以上100m/g以下が好ましく、3m/g以上20m/g以下がより好ましく、5m/g以上10m/g以下が更に好ましい。比表面積の測定は、BET法により行うことができる。
【0045】
1.2.4 水分
タルクの水分は、特に限定されない。タルクの水分は、複合体の引張強さ、引張弾性率、曲げ弾性率等が向上する観点から、0.1%以上0.5%以下が好ましく、0/1%以上0.3%以下がより好ましい。水分はの測定は、JIS K5101に準じて行うことができる。
【0046】
1.2.5 吸油量
タルクの吸油量は、特に限定されない。タルクの吸油量は、複合体の引張強さ、引張弾性率、曲げ弾性率等が向上する観点から、20ml/100g以上60ml/100g以下が好ましく、20ml/100g以上60ml/100g以下がより好ましい。吸油量の測定は、JIS K5101に準じて行うことができる。
【0047】
1.2.6 色度
タルクの白色度は、特に限定されない。タルクの白色度は、不純物による複合体の引張強さ、引張弾性率、曲げ弾性率等への影響を抑制すべく、90%以上100%以下が好ましく、95%以上100%以下がより好ましい。白色度の測定は、ハンター法で行うことができる。
【0048】
1.3 複合体の特性
本開示の複合体では、タルクがポリアミド化合物に良好に分散されている。よって、複合体の引張強さ、引張弾性率、曲げ弾性が高い。
一般的な合成高分子ではタルクの分散性はそれ程高くない。しかし、本開示の複合体では、タルクの分散性が高い。その理由は、以下のように推測される。本開示の複合体に用いられているポリアミド化合物では、アミド結合がタルクの水酸基と親和性が高く、しかも、長いアルキル鎖(n-C2x+1)がタルクのMg,Si等と親和性が高いため、タルクの分散性が高くなっていると推測される。
また、上記一般式(1)でx=9,y=11の場合には、上記一般式(1)で表されるジカルボン酸単位は植物由来となり、タルクは天然鉱石であるので、複合体として環境に優しくなる。
これらの特徴は、従来の合成高分子を用いた複合体にはない特徴である。
【0049】
1.4 添加剤
本開示の複合体に、用途や性能に応じて、滑剤、結晶化核剤、白化防止剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良材等の添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は、本開示の複合体の効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加することができる。
【0050】
1.5 複合体の用途
本開示の複合体は、幅広い用途に利用できる。
【0051】
2.複合体の製造方法
複合体の製造方法は、特に限定されない。複合体は、ポリアミド化合物と、タルクとを二軸混練押出機にて混練して好適に製造できる。
【実施例0052】
以下、実施例により本開示を更に具体的に説明する。なお、以下の説明では、ポリアミド化合物を「バイオポリマー」ともいう場合がある。また、複合体を「バイオポリマー複合材料(Bio-polymer compound)」ともいう場合がある。
【0053】
1.ポリアミド化合物の合成(PA80AC20BPE100の合成)
ポリアミド化合物(PA80AC20BPE100)の合成は、下記のスキームに沿って行った。下記スキームにおいてZ=4である。
【0054】
【化13】
【0055】
詳細には、セパラブルフラスコ(Separable flask(1000mL))に窒素雰囲気下、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(41.1g,100.0mmol)とTHF(300mL)を入れ、0℃で10分間メカニカル攪拌機を用い攪拌後、トリエチルアミン(30.8mL,220.0mmol)を加えた後、0℃で10分間攪拌した。その後、酸クロリド(1’)(57.2g,80.0mmol)とアジポールクロリド(3.7g,20.0mmol)をTHF(100mL)に溶解させ滴下、0℃で4時間反応させた。反応終了後、水を用い生成物を再沈殿させて精製し、水とメタノールで洗浄した。生成物は真空乾燥(80℃,16時間)した。白色繊維状、収量:92.0g。FT-IR(ATR,cm-1):3290.0(NH,amide),2918.7,2854.1,1653.7(C=O,carbonyl),1601.6,1533.1,1497.5,1461.8,1409.7,1222.6,1174.4,1014.4,831.2,727.0,512.0.
ポリアミド化合物は、ペレットにした。
このポリアミド化合物の化学式を以下に示す。
【0056】
【化14】
【0057】
2.複合体の製造
上述のように合成したポリアミド化合物(PA80AC20BPE100)90質量部と、タルク10質量部とを二軸混練押出機にて混練して複合体(複合材)を得た。複合体は、ペレットにした。
複合体を電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、ポリアミド化合物中にタルクが均一に分散されているモルフォロジーが確認された。
【0058】
3.機械的物性評価
3.1 試験片作製
ペレットから射出成形機(小型電動射出成形機 SE18DUZ、住友重機械工業(株)製)を用い試験片を作製した。成形条件としては樹脂温度を160~240℃とし、金型温度は14~18℃とした。試験片としてJIS K7161(t=2mm)の多目的試験片5A型(ダンベル状)、幅10mmx長さ80mmx厚み4mm試験片(短冊状)を成形した。ダンベル状の試験片は引張試験に用いた。短冊状試験片は、K7110のタイプ1試験片に加工し、シャルピー衝撃試験と曲げ試験に用いた。
【0059】
3.2 引張試験
引張特性は、JIS K 7161-2に準拠して引張試験を行い、降伏応力(引張強さ)、引張破断ひずみ、引張弾性率を評価した。測定に当たっては、試験片の幅、厚みを測定して用いた。測定には万能材料試験機 5966型(インストロン社製)を用いた。測定条件は、引張速度100 mm/min、引張荷重50kN、測定温度23℃とした。
【0060】
3.3 曲げ試験
曲げ特性は、曲げ試験を行い、曲げ弾性率、曲げ強さを評価した。曲げ試験は、JIS K7171に準拠した。試験に当たっては、試験片の幅、厚みを測定した。測定には万能材料試験機 5966型(インストロン社製)試験機を用いた。測定条件は、試験速度2mm/min、最大荷重10kN、測定温度23℃とした。
【0061】
3.4 シャルピー衝撃試験
衝撃特性は、ノッチ付シャルピー試験を行い、シャルピー衝撃値を求めて評価した。曲げ試験は、JIS K7111-1に準拠した。試験に当たっては、試験片の幅、厚みを測定した。測定にはシャルピー衝撃試験機、株式会社 東洋精機製作所DG-UBを用いた。
【0062】
3.5 試験結果
表1及び図1~3に試験結果を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1及び図1~3の試験結果から複合体は、バイオポリマー単体に比べて、引張強さ、引張弾性率、及び曲げ弾性率が非常に高いことが分かる。
【0065】
4.物理的物性評価
4.1 測定方法
ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量分析(DSC)により求めた。5%重量減少温度(Td)は熱重量・示差熱量同時分析(TG/DTA)により求めた。なお、Tg測定についてはJIS K7121に準拠して評価した。Tdと熱分解温度測定については、JIS K7120に準拠して評価した。
測定には、(株)日立ハイテクサイエンス製 熱分析装置EXSTAR DSC7020と(株)リガク製 TG8120を用い、測定条件は以下のとおりとした。
DSC測定については、測定温度範囲:-50~280℃、昇温速度:10℃/分、窒素気流中(50mL/min)で測定を行った。
TG/DT測定については、測定温度:室温~500℃、昇温速度:10℃/分、窒素気流中(150mL/min)で測定を行った。
【0066】
4.2 測定結果
表2に測定結果を示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2の測定結果から、複合体は、バイオポリマー単体に比べて、熱安定性が高いことが確認された。
【0069】
5.実施例の効果
実施例の複合体は、優れた機械的物性を有し、優れた熱的安定性も有する。
【0070】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本開示を限定するものと解釈されるものではない。本開示を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本開示の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的及び例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本開示の範囲又は本質から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本開示の詳述に特定の構造、材料及び実施例を参照したが、本開示をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本開示は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0071】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、本開示の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示の複合体は、従来のポリアミド化合物が適用されていた用途はもちろんのこと、その他の幅広い用途に利用できる。例えば、自動車、鉄道車両、船舶、飛行機等のあらゆる部材として利用できる。例えば、内装材及び外装材等として用いられる。このうち自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等が挙げられる。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、サイドパネル、アームレスト、自動車用ドアトリム、シート構造材、シートバックボード、天井材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー、カウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物、家具等の内装材及び外装材等が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材、パーティション部材等が挙げられる。
図1
図2
図3