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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162272
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】精製水製造装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20221017BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20221017BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20221017BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20221017BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/58
B01D65/02
B01D65/06
C02F1/44 J
A61M1/16 167
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067012
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】591083299
【氏名又は名称】東レ・メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕久
【テーマコード(参考)】
4C077
4D006
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD14
4C077DD18
4C077EE03
4C077GG02
4C077GG09
4D006GA02
4D006JA58A
4D006JA59A
4D006JA67A
4D006KA02
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA56
4D006KB11
4D006KB12
4D006KB14
4D006KC02
4D006KC03
4D006KC15
4D006KC16
4D006KC24
4D006PA01
4D006PB02
4D006PC41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】直列2段式の膜モジュールを配した精製水製造装置において、2段目の膜モジュールの洗浄・消毒効果が1段目の膜モジュールと比較して劣らず、効率の良い優れた洗浄が可能な精製水製造装置を提供する。
【解決手段】前処理手段11と、前処理水を第1透過水と第1濃縮水とに分離する第1膜分離手段と、第1透過水を第2透過水と第2濃縮水とに分離する第2膜分離手段と、第2透過水を貯留する透過水タンク10と、第2透過水を第1膜分離手段の上流へ戻す開閉可能な第1返送ライン16と、第2透過水を第2膜分離手段の上流へ戻す開閉可能な第2返送ライン17と、第1透過水を、第2膜分離手段をバイパスして透過水タンクへ送る開閉可能なバイパスライン13を備え返送ラインおよびバイパスラインを閉止した状態で精製水が製造され、バイパスラインを開放した状態で第1膜分離手段および第2膜分離手段が洗浄されることを特徴とする精製水製造装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水から前処理水を得る前処理手段と、
前記前処理水を第1透過水と第1濃縮水とに分離する第1膜分離手段と、
第1透過水を第2透過水と第2濃縮水とに分離する第2膜分離手段と、
第2透過水を貯留する透過水タンクと、
第2透過水を第1膜分離手段の上流へ戻す第1返送ラインと、
第1返送ラインを開閉可能な第1返送弁と、
第2透過水を第2膜分離手段の上流へ戻す第2返送ラインと、
第2返送ラインを開閉可能な第2返送弁と、
第1透過水を、第2膜分離手段をバイパスして前記透過水タンクへ送るバイパスラインと、
前記バイパスラインを開閉可能なバイパス弁を備えた精製水製造装置であって、
第1返送ライン、第2返送ラインおよび前記バイパスラインを閉止した状態で精製水が製造され、前記バイパスラインを開放した状態で第1膜分離手段および第2膜分離手段が洗浄されることを特徴とする精製水製造装置。
【請求項2】
前記バイパスラインおよび第1返送ラインを開放した状態で第1洗浄用水を通水することにより第1膜分離手段が洗浄され、前記バイパスラインおよび第2返送ラインを開放した状態で第2洗浄用水を通水することにより第2膜分離手段が洗浄される、請求項1に記載の精製水製造装置。
【請求項3】
第1洗浄用水および/または第2洗浄用水が、前記透過水タンク内の第2透過水を加熱して得られた消毒用熱水である、請求項2に記載の精製水製造装置。
【請求項4】
第1膜分離手段の直近の下流の第1透過水ラインに洗浄用薬液を注入する洗浄用薬液注入手段を設けた精製水製造装置であって、第1洗浄用水および/または第2洗浄用水が、第1透過水に前記洗浄用薬液を注入して得られた洗浄用薬液希釈液である、請求項2または3に記載の精製水製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
血液透析システムにおいて透析液作製用希釈水などに用いられる、高純度の精製水を作製する精製水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多人数の透析患者のための透析液を集中して調製する『セントラル透析液供給システム(CDDS)』は、現在 国内で主流のシステムとなっている。大量の透析液の調製には、大量の希釈用の精製水が必要であり、これを主に水道水などを原水として、逆浸透法による分離技術を用いた精製水製造装置によって精製水を得ている。ダイアライザーなどの血液浄化器の内部で、中空糸膜を介して患者の血液と接する透析液を希釈作製する精製水に対する清浄化の要求は高まる一方となっている。
【0003】
1段の逆浸透膜モジュールを備えた精製水製造装置に加え、1段目のナノ濾過膜モジュール(NF)と2段目の逆浸透膜モジュール(RO)の組合せや、1段目・2段目ともに逆浸透膜モジュール(RO+RO)という組合せの、いわゆる直列2段で膜モジュールを配置して、さらなる水質の向上を図った装置も知られている。
【0004】
高い清浄度の精製水を得るためには、これらの膜モジュールに対して、熱水による消毒や低濃度の薬液による洗浄を定期的に確実に実施することが重要となるが、直列2段で膜モジュールを配置した精製水製造装置においては、1段目の膜モジュールを通過して2段目の膜モジュールへ到達するのが、1段目の膜モジュールで分離される透過水分の洗浄液や熱水であって、流量・熱量・薬液成分量ともに減少することから、装置内の配管全体を十分に洗浄・消毒するためには、コスト・時間ともに効率が悪いという問題があった。
【0005】
このような課題の解決のため、同出願人は特許文献1(特開2010-194092号公報22)において、1段目の膜モジュールで分離された濃縮水を廃棄することなく、透過水とともに原水貯留槽との間で循環させることで、熱水消毒時の加温時間を短縮することが可能な透析液作製用希釈水の製造装置の提案を行った。
【0006】
しかし、このような技術においても、2段目の膜モジュールに熱水や洗浄液が到達した段階で、1段目の膜モジュールに導入された時点と比較して、熱水の温度や洗浄液の洗浄効果が低下することは否めず、改善の余地が残された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-194092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
直列2段式の膜モジュールを配した精製水製造装置において、2段目の膜モジュールの洗浄・消毒効果が、1段目の膜モジュールと比較して劣ることが無く、装置全体として効率の良い優れた洗浄が可能な精製水製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の精製水製造装置は、
原水から前処理水を得る前処理手段と、
前記前処理水を第1透過水と第1濃縮水とに分離する第1膜分離手段と、
第1透過水を第2透過水と第2濃縮水とに分離する第2膜分離手段と、
第2透過水を貯留する透過水タンクと、
第2透過水を第1膜分離手段の上流へ戻す第1返送ラインと、
第1返送ラインを開閉可能な第1返送弁と、
第2透過水を第2膜分離手段の上流へ戻す第2返送ラインと、
第2返送ラインを開閉可能な第2返送弁と、
第1透過水を、第2膜分離手段をバイパスして前記透過水タンクへ送るバイパスラインと、
前記バイパスラインを開閉可能なバイパス弁を備えた精製水製造装置であって、
第1返送ライン、第2返送ラインおよび前記バイパスラインを閉止した状態で精製水が製造され、前記バイパスラインを開放した状態で第1膜分離手段および第2膜分離手段が洗浄されることを特徴とするものからなる。
【0010】
このような構成を採用することにより、洗浄時には透過水タンクから第1返送ラインおよび第2返送ラインを通して、それぞれ第1膜分離手段と第2膜分離手段の上流に送液できるので、透過水タンクを介して第1膜分離手段と第2膜分離手段を互いに独立して洗浄することができる。
【0011】
本発明の精製水製造装置において、前記バイパスラインおよび第1返送ラインを開放した状態で第1洗浄用水を通水することにより第1膜分離手段が洗浄され、前記バイパスラインおよび第2返送ラインを開放した状態で第2洗浄用水を通水することにより第2膜分離手段が洗浄されるように構成することが好ましい。これにより、第1膜分離手段と第2膜分離手段を、個別的あるいは並列的に洗浄することができるので、第2膜分離手段においても第1膜分離手段と同等の洗浄効果を得ることができる。さらに、個別的な洗浄が可能となるので、精製水製造時により大きな負荷のかかる第1膜分離手段の洗浄頻度や洗浄時間を選択的に増やすなどして、装置全体の洗浄時間を削減したり洗浄効率を最適化することができる。
【0012】
本発明の精製水製造装置において、第1洗浄用水および/または第2洗浄用水が、前記透過水タンク内の第2透過水を加熱して得られた消毒用熱水であることが好ましい。これにより、熱水消毒の際には、第1膜分離手段を洗浄した後の第1洗浄用水を前記バイパスラインを通して前記透過水タンクに戻す第1循環流路と、第2膜分離手段を洗浄した後の第2洗浄用水を前記透過水タンクに戻す第2循環流路とで循環させながら加温することで、短時間で所定温度の熱水を作製することができ、熱水の温度低下も最小限に抑えることができる。
【0013】
本発明の精製水製造装置は、第1膜分離手段の直近の下流の第1透過水ラインに洗浄用薬液を注入する洗浄用薬液注入手段を設けた精製水製造装置であって、第1洗浄用水および/または第2洗浄用水が、第1透過水に前記洗浄用薬液を注入して得られた洗浄用薬液希釈液であることが好ましい。これにより、高濃度の洗浄用薬液の原液が第1膜分離手段を劣化させることを効果的に防止しつつ、第1透過水ラインの注入点から透過水タンクまでの配管内を洗浄することができる。さらに、洗浄薬液成分の減少も最小限に抑えることができるので、装置全体の洗浄時間を削減することができる。また、最初に比較的低濃度の洗浄用薬液希釈液で膜分離手段を洗浄した後に、比較的高濃度の洗浄用薬液希釈液を作製して、精製水製造装置の下流に設けられた別の装置へ供給することにより、精製水製造装置を含むシステム全体の洗浄を効率的に実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る精製水製造装置によれば、直列2段式の膜分離手段を配した精製水製造装置において、1段目の膜分離手段に比べて洗浄効果が低くなりがちな2段目の膜分離手段を効果的に洗浄し、装置全体として優れた洗浄効率を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の精製水製造装置の構成例を示すフロー図である。
図2】精製水を製造する造水工程を示すフロー図である。
図3】配管の薬液洗浄工程を示すフロー図である。
図4】第1分離膜モジュールの洗浄工程において形成される循環流路を示すフロー図である。
図5】第2分離膜モジュールの洗浄工程において形成される循環流路を示すフロー図である。
図6】第1分離膜モジュールおよび第2分離膜モジュールの同時洗浄工程における並列的な通水の状態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の精製水製造装置1の構成を示すフロー図であり、図2は精製水を製造する造水工程を示すフロー図である。精製水を製造する造水工程において、原水源から流入して原水タンク2に貯留された原水は、プレフィルター3、軟水器4および活性炭濾過フィルター5からなる前処理手段11を経て、第1ポンプ6および第1分離膜モジュール7からなる第1膜分離手段に送られる。前処理水は第1膜分離手段によって第1透過水と第1濃縮水とに分離され、第1濃縮水は系外に排出される。第1透過水は、第2ポンプ8および第2分離膜モジュール9からなる第2膜分離手段によって第2透過水と第2濃縮水とに分離され、第2濃縮水の一部は原水タンク2に返送されて原水により希釈され、精製水の製造に再利用される。第2透過水は透過水タンク10に貯留され、送液ポンプ18によって送液ライン19を通して、例えば透析液作製装置に送られて透析液の希釈液として利用される。
【0017】
図1に示すように、精製水製造装置1には、第2分離膜モジュール9をバイパスして第1透過水を直接透過水タンク10へ送るためのバイパスライン13と、バイパスライン13を開閉可能なバイパス弁14が設けられている。また、透過水タンク10には加温手段15が設けられている。系内を洗浄する洗浄工程においては、加温手段15を用いて、貯留した第2透過水を加熱して系内を消毒するための熱水を作製することができる。
【0018】
図3は、配管の薬液洗浄工程を示すフロー図である。造水工程を継続実施した後に所定の頻度で実施される配管の薬液洗浄工程において、原水源から流入して原水タンク2に貯留された原水は、プレフィルター3、軟水器4および活性炭濾過フィルター5からなる前処理手段11を経て、第1ポンプ6および第1分離膜モジュール7からなる第1膜分離手段に送られる。前処理水は第1膜分離手段によって第1透過水と第1濃縮水とに分離され、第1濃縮水は系外に排出される。第1透過水は、バイパス弁14により開放されたバイパスライン13を通して透過水タンク10に流入するが、途中の第1分離膜モジュール7とバイパスライン13の間に設けられた薬液注入手段12で洗浄用薬液が注入されることにより、第1分離膜モジュール7から透過水タンク10までの配管を高濃度の洗浄用薬液を含む洗浄用水で効果的に洗浄することができる。高濃度の洗浄用薬液は、造水工程において透過水タンク10に送られて貯留されていた第2透過水により希釈される。このようにして透過水タンク10内に洗浄用薬液希釈液が満たされた状態で分離膜モジュールの洗浄工程を開始すれば、洗浄用薬液への耐性が劣る分離膜モジュールを洗浄する場合であっても分離膜モジュールに高濃度の洗浄用薬液が流入することを防止することができる。また、送液ポンプ18により透過水タンク10内の第1洗浄用水を循環して撹拌することにより、薬液注入手段12で注入された高濃度の洗浄用薬液を十分に希釈することができる。
【0019】
図4は、第1分離膜モジュールの洗浄工程において形成される循環流路を示すフロー図である。透過水タンク10に貯留された第2透過水は、第1洗浄用水として第1ポンプ6によって第1返送ライン16を経て第1分離膜モジュール7に送られ、第1分離膜モジュール7の透過側と濃縮側に分かれて流出する。濃縮側から流出した第1洗浄用水は系外に排出され、透過側から流出した第1洗浄用水は、バイパス弁14により開放されたバイパスライン13を通して透過水タンク10に戻る。
【0020】
図5は、第2分離膜モジュールの洗浄工程において形成される循環流路を示すフロー図である。透過水タンク10に貯留された第2透過水は、第2洗浄用水として第2ポンプ8によって第2返送ライン17を経て第2分離膜モジュール9に送られ、第2分離膜モジュール9の透過側と濃縮側に分かれて流出する。濃縮側から流出した第2洗浄用水は系外に排出され、透過側から流出した第2洗浄用水は透過水タンク10に戻る。
【0021】
第2分離膜モジュール9の洗浄工程は、図6に示すように、第1分離膜モジュール7の洗浄工程と並行して同時に実施することにより、第1洗浄用水を第2洗浄用水としても用いることができる。あるいは、第2分離膜モジュール9の洗浄工程を第1分離膜モジュール7の洗浄工程の終了後に引き続き実施することにより、透過水タンク10に貯留されていた第1洗浄用水を第2洗浄用水として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の精製水製造装置は、血液透析システムその他の精製水を使用する用途において広く利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 精製水製造装置
2 原水タンク
3 プレフィルター
4 軟水器
5 活性炭濾過フィルター
6 第1ポンプ
7 第1分離膜モジュール
8 第2ポンプ
9 第2分離膜モジュール
10 透過水タンク
11 前処理手段
12 薬液注入手段
13 バイパスライン
14 バイパス弁
15 加温手段
16 第1返送ライン
17 第2返送ライン
18 送液ポンプ
19 送液ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6