(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162288
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】インクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置
(51)【国際特許分類】
D06P 5/30 20060101AFI20221017BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20221017BHJP
C09B 48/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
D06P5/30
C09B67/20 H
C09B48/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067034
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】石谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
(72)【発明者】
【氏名】中村 正樹
【テーマコード(参考)】
4H157
【Fターム(参考)】
4H157AA02
4H157BA15
4H157DA01
4H157GA06
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、マルチパス方式で画像を形成しつつ、処理液とインクの塗布の順番による布帛の表面及び裏面における印字部の濃度差を低減することができるインクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置を提供することである。
【解決手段】本発明のインクジェット捺染方法は、インクを布帛表面に留める処理液をインクジェットヘッドにて塗布するインクジェット捺染方法であって、前記処理液を吐出する前記インクジェットヘッドと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドが、同一キャリッジに配置され、マルチパス方式にて画像を形成し、往路が、前記処理液を塗布後に前記インクを塗布し、復路が前記インクを塗布後に前記処理液を塗布し、前記往路と前記復路で、前記布帛への前記インクの浸透度を制御する条件を変えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを布帛表面に留める処理液をインクジェットヘッドにて塗布するインクジェット捺染方法であって、
前記処理液を吐出する前記インクジェットヘッドと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドが、同一キャリッジに配置され、
マルチパス方式にて画像を形成し、
往路が、前記処理液を塗布後に前記インクを塗布し、復路が前記インクを塗布後に前記処理液を塗布し、
前記往路と前記復路で、前記布帛への前記インクの浸透度を制御する条件を変えることを特徴とするインクジェット捺染方法。
【請求項2】
前記往路に対して、前記復路の方が、前記布帛への前記インクの浸透を抑制する方向に制御条件を変えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項3】
前記制御条件として、前記往路に対して、前記復路の前記処理液の塗布量を増やすことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項4】
前記往路に対して、前記復路の前記処理液の塗布量を増やす方法として、前記往路に対して、前記復路の前記処理液の塗布面積を増やす、又は、前記処理液の吐出の液滴量を多くすることのうち、少なくとも一方を行うことを特徴とする請求項3に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項5】
前記制御条件として、前記往路に対して、前記復路の前記処理液と前記インクの塗布の時間間隔を短くすることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項6】
前記制御条件が、前記布帛を構成する繊維の種類又は前記布帛の繊維密度によって変えることができることを特徴とする請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項7】
前記インクが水性インクで、前記布帛を構成する繊維の種類が綿であるとき、
前記綿以外の繊維に対して、前記往路及び前記復路での前記制御条件による差を小さくすることを特徴とする請求項2から請求項6までのいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項8】
インクを布帛表面に留める処理液をインクジェットヘッドにて塗布するインクジェット捺染装置であって、
前記処理液を吐出する前記インクジェットヘッドと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドが、同一キャリッジに配置され、
マルチパス方式にて画像を形成し、
往路が、前記処理液を塗布後に前記インクを塗布し、復路が前記インクを塗布後に前記処理液を塗布し、
スキャンの前記往路と前記復路で、前記布帛への前記インクの浸透度を制御する条件を変えることを特徴とするインクジェット捺染装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置に関し、特に、マルチパス方式で画像を形成しつつ、処理液とインクの塗布の順番による布帛の表面及び裏面における印字部の濃度差を低減することができるインクジェット捺染方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、織布、不織布などの布帛上に文字、絵、図柄などの画像を形成する方法として、インクジェット記録装置(印捺装置)を用いたインクジェット捺染方法が用いられている。
このようなインクジェット捺染方法では、通常、前処理液を使って色材インク(以下、単に「インク」ともいう。)を凝集させ、布帛表面にインクを留めることにより、色濃度を向上させる方法が一般的である。
また、前処理液を塗布する工程と、インクを塗布して染色する工程とを連続して行うことにより、生産性向上や発色安定性向上が見込める。さらに、前処理液の塗布をインクジェットヘッドにて塗布し、インク吐出のためのインクジェットヘッドと同一のキャリッジに配置することで、画像印字部の前処理液が必要な部分のみに塗布でき、また、小型化できるというメリットがある。
【0003】
例えば、特許文献1では、インクジェットヘッドから、にじみ防止剤を含む処理液も吐出可能にしておき、プリントする画像の色濃度に応じて処理液の濃度が制御されるように、反応染料インクとともに処理液の吐出量を制御する技術が開示されている。
【0004】
ところで、ヘッドキャリッジが動くマルチパス方式(「スキャン方式」ともいう。)では、ヘッドが持つ個体差を軽減するために、画像をパス分解し、印刷したい布帛の搬送方向に対して横方向に複数回往復して画像形成することが一般的であるが、処理液(「前処理液」ともいう。)及びインクを同一キャリッジに入れる場合、キャリッジの往復動作によって、処理液とインクの塗布順序が逆転してしまう。
そのため、処理液を塗布した後にインクが塗布される場合と、インクが塗布されてから処理液が塗布される場合によって、布帛表面の濃度や裏面の濃度が変わってきてしまうという問題が発生する。
これを改善するために、キャリッジの両サイドに前処理液用のヘッドを両サイドに持たせる構造とすることが考えられるが、装置の大型化やコストが上がるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、マルチパス方式で画像を形成しつつ、処理液とインクの塗布の順番による布帛の表面及び裏面における印字部の濃度差を低減することができるインクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、マルチパス方式において往路と復路で、布帛へのインクの浸透度を制御する条件を変えることにより、処理液とインクの塗布の順番による布帛の表面及び裏面における印字部の濃度差を低減することができるインクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
1.インクを布帛表面に留める処理液をインクジェットヘッドにて塗布するインクジェット捺染方法であって、
前記処理液を吐出する前記インクジェットヘッドと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドが、同一キャリッジに配置され、
マルチパス方式にて画像を形成し、
往路が、前記処理液を塗布後に前記インクを塗布し、復路が前記インクを塗布後に前記処理液を塗布し、
前記往路と前記復路で、前記布帛への前記インクの浸透度を制御する条件を変えることを特徴とするインクジェット捺染方法。
【0009】
2.前記往路に対して、前記復路の方が、前記布帛への前記インクの浸透を抑制する方向に制御条件を変えることを特徴とする第1項に記載のインクジェット捺染方法。
【0010】
3.前記制御条件として、前記往路に対して、前記復路の前記処理液の塗布量を増やすことを特徴とする第2項に記載のインクジェット捺染方法。
【0011】
4.前記往路に対して、前記復路の前記処理液の塗布量を増やす方法として、前記往路に対して、前記復路の前記処理液の塗布面積を増やす、又は、前記処理液の吐出の液滴量を多くすることのうち、少なくとも一方を行うことを特徴とする第3項に記載のインクジェット捺染方法。
【0012】
5.前記制御条件として、前記往路に対して、前記復路の前記処理液と前記インクの塗布の時間間隔を短くすることを特徴とする第2項に記載のインクジェット捺染方法。
【0013】
6.前記制御条件が、前記布帛を構成する繊維の種類又は前記布帛の繊維密度によって変えることができることを特徴とする第2項から第5項までのいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法。
【0014】
7.前記インクが水性インクで、前記布帛を構成する繊維の種類が綿であるとき、
前記綿以外の繊維に対して、前記往路及び前記復路での前記制御条件による差を小さくすることを特徴とする第2項から第6項までのいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法。
【0015】
8.インクを布帛表面に留める処理液をインクジェットヘッドにて塗布するインクジェット捺染装置であって、
前記処理液を吐出する前記インクジェットヘッドと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドが、同一キャリッジに配置され、
マルチパス方式にて画像を形成し、
往路が、前記処理液を塗布後に前記インクを塗布し、復路が前記インクを塗布後に前記処理液を塗布し、
スキャンの前記往路と前記復路で、前記布帛への前記インクの浸透度を制御する条件を変えることを特徴とするインクジェット捺染装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記手段により、マルチパス方式で画像を形成しつつ、処理液とインクの塗布の順番による布帛の表面及び裏面における印字部の濃度差を低減することができるインクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
マルチパス方式における往路では、処理液を塗布後にインクを塗布し、復路ではインクを塗布後に処理液を塗布するので、往路においてはインクが浸透する前に布帛表面の処理液と反応して、インクが凝集するため、布帛の表面に介在するインク(色材)量が多くなる。
一方、復路においては、処理液を塗布する前にインクが少し浸透してからインク(色材)凝集が起こるため、より布帛内部でインクが留まることになり、往路と復路において印字部に濃度差が発生する。
そこで、本発明では、往路と復路で、布帛へのインクの浸透度を制御する条件を変えることにより、往路と復路での布帛へのインクの浸透差を低減することができ、布帛の表面と裏面における印字部の濃度差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】インクジェット捺染装置の一例を模式的に示した概略図
【
図2】マルチパス方式のインクジェット塗布装置の主要部の一例を模式的に示した概略図
【
図3】インクジェット捺染装置の内部構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のインクジェット捺染方法は、インクを布帛表面に留める処理液をインクジェットヘッドにて塗布するインクジェット捺染方法であって、前記処理液を吐出する前記インクジェットヘッドと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドが、同一キャリッジに配置され、マルチパス方式にて画像を形成し、往路が、前記処理液を塗布後に前記インクを塗布し、復路が前記インクを塗布後に前記処理液を塗布し、前記往路と前記復路で、前記布帛への前記インクの浸透度を制御する条件を変えることを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0019】
本発明の実施態様としては、前記往路に対して、前記復路の方が、前記布帛への前記インクの浸透を抑制する方向に制御条件を変えることが、布帛の表面及び裏面濃度差をより低減することができる点で好ましい。
【0020】
前記インクの浸透を抑制する前記制御条件として、前記往路に対して、前記復路の前記処理液の塗布量を増やすこと、又は、前記往路に対して、前記復路の前記処理液と前記インクの塗布の時間間隔を短くすることが、往路、復路でインクと処理液が布帛表面で混ざる量の差を小さくできる点で好ましい。
【0021】
また、前記往路に対して、前記復路の前記処理液の塗布量を増やす方法として、前記往路に対して、前記復路の前記処理液の塗布面積を増やす、又は、前記処理液の吐出の液滴量を多くすることのうち、少なくとも一方を行うことが、制御が容易で、生産性にも影響を与えない点で好ましい。
【0022】
前記制御条件が、前記布帛を構成する繊維の種類又は前記布帛の繊維密度によって変えることができることが、布帛の表面及び裏面濃度差をより低減することができる点で好ましい。
【0023】
さらに、前記インクが水性インクで、前記布帛を構成する前記繊維の種類が綿であるとき、前記綿以外の繊維に対して、前記往路及び前記復路での前記制御条件による差を小さくすることが、表面に処理液が残りやすい綿での適正条件となる点で好ましい。
【0024】
本発明のインクジェット捺染装置は、インクを布帛表面に留める処理液をインクジェットヘッドにて塗布するインクジェット捺染装置であって、前記処理液を吐出する前記インクジェットヘッドと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドが、同一キャリッジに配置され、マルチパス方式にて画像を形成し、往路が、前記処理液を塗布後に前記インクを塗布し、復路が前記インクを塗布後に前記処理液を塗布し、スキャンの前記往路と前記復路で、前記布帛への前記インクの浸透度を制御する条件を変えることを特徴とする。これにより、マルチパス方式で画像を形成しつつ、処理液とインクの塗布の順番による布帛の表面及び裏面における印字部の濃度差を低減することができる。
【0025】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0026】
[インクジェット捺染装置]
以下、本発明のインクジェット捺染装置について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明のインクジェット捺染装置の一例を模式的に示した概略図である。
【0027】
図1に示すように、本発明のインクジェット捺染装置(以下、単に「捺染装置」ともいう。)100は、布帛T1を繰り出す布帛繰り出し部101と、布帛を搬送する搬送部103と、布帛T1に処理液Pr及びインクInを塗布する塗布部10と、処理液Pr及びインクIn等を乾燥する乾燥部105と、印捺された布帛T3(以下、「印捺布帛T3」ともいう。)を回収する布帛回収部102、及び各部材を制御する制御部106等を備える。
さらに、本発明の捺染装置100では、塗布部10が、処理液Prを吐出する処理液用ヘッド(処理液用のインクジェットヘッド、
図2における1Pr)と、インクInを吐出するインク用ヘッド(インク用のインクジェットヘッド、
図2における1Y、1M、1C及び1K)と、これら処理液用ヘッド1Pr及びインク用ヘッド(1Y、1M、1C及び1K)を搭載する一つのキャリッジ22とを備え、マルチパス方式にて画像形成する。すなわち、処理液用ヘッド1Prとインク用ヘッド(1Y、1M、1C及び1K)とは同一のキャリッジ22に搭載されている。
【0028】
図1において布帛T1の搬送方向を矢印で示す。捺染装置100において、必須の構成部材は、処理液用ヘッド1Pr、インク用ヘッド(1Y、1M、1C及び1K)及び制御部106である。捺染装置100は、必要に応じて、
図1に示される構成部材以外にその他の構成部材を有してもよい。その他の構成部材としては、例えば乾燥部105の搬送方向下流側に設けられる定着部(図示しない)等がある。
以下、捺染装置100の各構成部材を説明する。
【0029】
<布帛繰り出し部>
布帛T1は、塗布部10の搬送方向上流側に設けられた布帛繰り出し部101に設置されている。布帛繰り出し部101は、ロール状の布帛T1が装着される回転軸と、回転軸を所定の回転方向に回転駆動するモーター(図示しない)等を備える。布帛繰り出し部101は、モーターを駆動することにより回転軸の回転に沿って布帛T1を搬送方向下流側に繰り出す。なお、布帛T1は、上記のような連続した布帛であってもよいし、1枚ずつ分離された布帛であってもよい。
【0030】
<搬送部>
搬送部103は、布帛繰り出し部101から繰り出された布帛T1を搬送する。
図1では、布帛T1を搬送ローラーによって搬送する構成としたが、例えば、布帛T1を搬送ベルトに貼り付けて搬送する構成としてもよい。
【0031】
<塗布部>
塗布部10は、布帛T1に処理液Pr及びインクInを塗布する処理を行い、具体的には、マルチパス方式のインクジェット塗布装置である。
図2は、マルチパス方式のインクジェット塗布装置の主要部の一例を模式的に示した図である。
図2に示すように、布帛T1上をインクジェット塗布装置の液滴吐出手段20が、各色のインクIn(イエローインクY、マゼンタインクM、シアンインクC、ブラックインクK)及び処理液Prを吐出しながら走査方向X(以下、「X方向」ともいう。)に移動することで画像の形成が行われる。
布帛T1は、搬送手段(図示せず)により、走査方向Xに直交する方向Y(以下、「搬送方向Y」又は「Y方向」ともいう。)に、順次搬送されることで布帛T1の表面(画像形成面)の略全体に画像が形成可能である。
【0032】
液滴吐出手段20は、処理液用ヘッド1Pr、イエローインク用ヘッド1Y、マゼンタインク用ヘッド1M、シアンインク用ヘッド1C、ブラックインク用ヘッド1K(以下、これらをまとめて「ヘッドユニット1」ともいう。)と、このヘッドユニット1を走査方向Xに沿って配置、保持するためのキャリッジ22を有する。すなわち、処理液用ヘッド1Prと各インク用ヘッド1Y、1M、1C及び1Kが、同一のキャリッジ22に搭載されている。
ヘッドユニット1は、液滴吐出手段20が走査方向Xに1回移動する往路において、走査方向の先頭から、処理液用ヘッド1Pr、イエローインク用ヘッド1Y、マゼンタインク用ヘッド1M、シアンインク用ヘッド1C及びブラックインク用ヘッド1Kの順に配置されている。逆に、復路においては、走査方向の先頭から、ブラックインク用ヘッド1K、シアンインク用ヘッド1C、マゼンタインク用ヘッド1M、イエローインク用ヘッド1Y及び処理液用ヘッド1Prの順に配置されている。
【0033】
各ヘッドの布帛T1の表面と対向する面(ノズル面)には、それぞれノズル(図示しない)が走査方向Xと直交する搬送方向Yに沿って複数配列されて設けられており、インクIn及び処理液Prに対して適切に圧力が印加されることでこれらのノズルから微小な液滴を吐出する。液滴吐出手段20は、ヘッドユニット1におけるノズル面が布帛T1の表面に直交する方向(高さ方向)に当該表面から所定の距離離隔した状態で支持されている。
【0034】
液滴吐出手段20は、走査部30により走査方向Xに走査される。走査部30は、例えば、ノズル面が高さ方向に布帛T1の表面から上述の所定の距離離隔した状態でキャリッジ22を支持するレールを備え、走査方向Xに沿って延在するレールに沿ってキャリッジ22を移動可能とする。
【0035】
液滴吐出手段20が、往路において走査方向Xに1回移動すると、ヘッドユニット1の走査方向Xに沿って、所定の幅で処理液Prが付与された直後に各インクInの付与が行われる。
その後、布帛T1が搬送方向Yに移動し、液滴吐出手段20が、復路において走査方向Xに1回移動すると、ヘッドユニット1の走査方向Xに沿って、所定の幅で各インクInが付与された直後に処理液Prの付与が行われる。
図2に示すようなマルチパス方式の塗布方法では、液滴吐出手段20の走査方向Xへの1回の移動によりインクIn及び処理液Prを布帛T1に付与する操作を1回の印刷パスとして、同じ領域に複数回の印刷パスを行い、最終的に布帛T1上に所望の画像を形成することが行われる。
【0036】
本発明のインクジェット捺染方法は、例えば、
図2に示すインクジェット塗布装置を用いて、処理液Pr及びインクInを、それぞれ液滴吐出手段20により布帛T1表面に上記のように付与し合一させることにより画像を形成する。
【0037】
なお、ヘッドユニット1における処理液Pr及び各インクInの吐出方式は、特に制限されず、オンデマンド方式及びコンティニュアス方式のいずれのヘッドでもよい。オンデマンド方式のヘッドの例には、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型及びシェアードウォール型を含む電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型及びバブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン株式会社の登録商標)型を含む電気-熱変換方式等が含まれる。
【0038】
上記の中では、オンデマンド方式のヘッドが好ましく、電気-機械変換方式に用いられる電気-機械変換素子として圧電素子を用いたヘッド(「ピエゾ型インクジェットヘッド」ともいう。)であることが好ましい。
【0039】
<乾燥部>
乾燥部105は、塗布部10で塗布された処理液Pr及びインクInを乾燥する。乾燥手段としては、特に限定されず、温風、ホットプレート、又はヒートローラーによる加熱であることが好ましい。短時間で十分に溶媒成分を除去する観点では、加熱乾燥がより好ましい。乾燥温度は、100~130℃の範囲内であることが好ましい。
【0040】
<定着部>
捺染装置100は、必要に応じて乾燥部105の搬送方向下流側に定着部(図示しない)を有してもよい。定着部は、乾燥部105で処理液Pr及びインクIn中の揮発成分を除去した後、その残部(処理液Pr及びインクInの固形分)を、さらなる加熱等により布帛に定着させる部材である。
乾燥部105及び任意の定着部を経ることにより、インクPrは所期の色相を発現させることができる。定着部における加熱手段としては、例えば、常圧スチーム法、高圧スチーム法、サーモフィックス法等による加熱手段が挙げられる。なお、乾燥部105が定着部を兼ねることも可能である。
【0041】
<布帛回収部>
布帛回収部102は、乾燥部105の下流側に設けられ、乾燥部105で処理液Pr及びインクInが乾燥された印捺布帛T3を巻き取りながら回収する。或いはまた、1枚ずつ分離された布帛T1が搬送される構成の場合の布帛回収部102は、印捺布帛T3が排出される布帛排出部であってもよい。
【0042】
<制御部>
図3は、
図1に示す捺染装置の内部構成を示すブロック図である。
制御部106は、インクジェット塗布装置におけるスキャンの往路と復路で、布帛T1へのインクInの浸透度を制御する条件を変える、すなわち、往路に対して、復路の方が、布帛T1へのインクInの浸透を抑制する方向に制御条件を変えるために、塗布部10であるインクジェット塗布装置を制御する。
インクの浸透を抑制する前記制御条件としては、(i)往路に対して、復路の処理液の塗布量を増やすことや、(ii)往路に対して、復路の処理液とインクの塗布の時間間隔を短くすること等が挙げられる。
【0043】
(i)往路に対して、復路の処理液の塗布量を増やすための手段としては、例えば、往路に対して、復路の処理液の塗布面積を増やす(すなわち、復路の印字率を大きくする。)、又は、往路に対して、復路の処理液の吐出の液滴量を多くすることなどが挙げられる。本発明では、これらのうち少なくとも一方を行うことが好ましく、両方を組み合わせて行うことがより好ましい。
「前記往路に対して、復路の処理液の塗布面積を増やす」とは、処理液の吐出の液滴量が往路と復路とで同一で、塗布する面積を往路に対して復路を増やすということである。
「前記往路に対して、復路の処理液の吐出の液滴量を多くする」とは、往路及び復路の処理液の塗布面積は同一で、処理液の吐出の液滴量(すなわち、1ドットの射出量)を往路に対して復路を多くするということである。
【0044】
具体的には、往路に対して、復路の処理液の塗布量を1~3倍の範囲内の塗布量とすることが好ましい。
すなわち、塗布面積(印字率)については、往路に対して、復路の印字率を25~100%程度増やすことが好ましく、処理液の吐出の液滴量については、往路に対して、復路の吐出の液滴量を5~30plの範囲内で多くすることが好ましい。
【0045】
(ii)往路に対して、復路の処理液とインクの塗布の時間間隔を短くするための手段としては、例えば、キャリッジの復路の搬送速度を往路の搬送速度よりも速くすることが挙げられる。
具体的には、キャリッジの搬送速度が500~1500mm/secで、各ヘッドの間隔が100mm程度とした場合、往路に対して、復路の処理液とインクの塗布の時間間隔を60~200msec程度短くすることが好ましい。
【0046】
また、制御部106は、その他、布帛繰り出し部101、搬送部103、乾燥部105及び布帛回収部102等もそれぞれ制御している。
【0047】
制御部106には、ユーザーが操作部(図示しない)を操作する際に入力された塗布情報が入力される。
また、制御部106は、CPU107、RAM108及びROM109等を有する。CPU107は、ROM109等の記憶装置から処理内容に応じた各種のプログラムやデータ等を読み出して実行し、実行された処理内容に応じて、捺染装置100の各部の動作を制御する。RAM108は、CPU107により処理される各種のプログラムやデータ等を一時的に記憶する。ROM109は、CPU107等により読み出される各種のプログラムやデータ等を記憶する。
【0048】
具体的に、制御部106は、操作部(図示しない)から入力された塗布情報に応じて塗布部10を動作させて、布帛Tに処理液Pr及びインクInを塗布する。
前記塗布情報としては、例えば、布帛T1の態様情報、往路又は復路の処理液Prの塗布量、往路又は復路のキャリッジ22の速度又は速度比、などが挙げられる。
【0049】
前記布帛の態様情報としては、例えば、布帛を構成する繊維の種類、布帛の厚さ、布帛の繊維密度、布帛を構成する繊維における化学繊維比率、布帛の織り方及び布帛を構成する繊維の太さ等が挙げられ、特に、繊維の種類又は繊維密度が好ましい。
【0050】
布帛を構成する繊維の種類としては、綿、麻、羊毛、又は絹等の天然繊維(親水性繊維)、レーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル又はアセテート等の化学繊維が挙げられる。
【0051】
布帛の厚さとしては、概ね0.1~2.0mmの範囲が本発明に適用可能であり、本発明の効果を顕著に発現できる点で0.1~1.0mmの範囲が好ましい。
布帛の繊維密度としては、概ね10~1000g/m2の範囲が本発明に適用可能であり、本発明の効果を顕著に発現できる点で50~300g/m2の範囲が好ましい。
【0052】
布帛の作製に用いられる糸は、純糸に限らず、混紡糸又は交撚糸であってもよい。縦糸と横糸とが同じ種類の繊維である布帛については、縦糸又は横糸の一方の糸の繊維の種類情報が特定されればよい。交織の布帛のように縦糸と横糸が異なる種類の繊維を用いた布帛については、縦糸と横糸のそれぞれの繊維の種類情報が特定されることが好ましい。
【0053】
繊維の太さを表す単位は、番手、テックス又はデニール等であってもよい。繊維の太さは概ね、10~100デニールの範囲で本発明に適用可能である。
【0054】
布帛の織り方としては、織布、不織布、編布等があり、織布における織り方の種類には、縦糸と横糸の組み合わせにより、平織、綾織、及び繻子織などがある。布帛は、2種類以上の繊維の混紡織布又は混紡不織布であってもよい。
【0055】
布帛を構成する繊維における化学繊維比率は、布帛の全量に対する含有する化学繊維の質量%として示される。
【0056】
前記往路及び復路のキャリッジの速度比とは、往路に対する復路のキャリッジの速度比(復路のキャリッジ速度/往路のキャリッジ速度)のことである。
【0057】
ROM109は、例えば、操作部から入力された塗布情報に対応して、往路又は復路の処理液の塗布量のデータや、往路又は復路のキャリッジの速度又は速度比のデータ等が記憶されている。
具体的には、例えば下記表I~表Vに示すテーブルデータが記憶されている。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
表Iは、布帛の態様情報(繊維の種類及び繊維密度)によらずに、往路に対して復路の処理液の塗布量を増やした補正テーブル(液量補正テーブル)である。
表IIは、表Iにおいて、さらに布帛の態様情報(繊維の種類及び繊維密度)によって補正を行った、往路復路の処理液の塗布量を示したテーブル(液量補正+布種補正テーブル)である。
表IIIは、表IIのテーブルにおいて、さらに往路においても、布帛の態様情報(繊維の種類及び繊維密度)によって補正を行った、往路復路の処理液の塗布量を示したテーブル(液量補正+布種補正+往路液量補正テーブル)である。すなわち、往路と復路の両方において、布帛の繊維密度に応じて処理液の塗布量を補正している。
表IVは、布帛の態様情報(繊維の種類及び繊維密度)によらずに、往路に対して復路のキャリッジの速度を速くした補正テーブル(往復路キャリッジの速度補正テーブル)である。
表Vは、表IVのテーブルにおいて、さらに布帛の態様情報(繊維の種類及び繊維密度)によって補正を行ったテーブル(布種補正+往復路キャリッジの速度補正テーブル)である。
【0064】
なお、表I~表Vに示すテーブルデータは一例であって、これらに限定されるものではない。例えば、布帛の態様情報として、布帛の繊維密度ではなく、前記した布帛の厚さ、布帛の化学繊維比率、織り方や繊維の太さ等によって、補正したテーブルであってもよい。
また、表I~表IIIに示すテーブルデータでは、処理液の塗布量を規定したが、さらに具体的に処理液の印字率(塗布面積)や処理液の液滴吐出量を規定したテーブルとしてもよい。
【0065】
さらに、上記捺染装置では、前記テーブルデータをあらかじめ実験値から作成して、このテーブルデータに基づいて、処理液の塗布量やキャリッジの速度等を制御するように構成したが、これに限らず、印捺後の布帛の表面又は裏面の濃度を測定する装置を用意しておき、当該装置を用いて、往路と復路で濃度差がなくなるように、処理液の塗布量やキャリッジの速度等をユーザーが設定するようにしてもよい。
【0066】
また、上記捺染装置では、マルチパス方式の最初の印字の際のみ処理液を塗布する構成としたが、スキャンの度に処理液を塗布するように構成してもよい。また、その際に、最初のスキャンのみに、前記したように布帛へのインクの浸透度を制御してもよいし、スキャンの度に、前記浸透度の制御を行ってもよい。
【0067】
布帛へのインクの浸透度の制御は、布帛の態様情報に応じて変えるが、布帛の繊維の種類によっては、マルチパスにおける往復時に全く制御を行わなくてもよい。
また、インクが水性インクで、布帛を構成する前記繊維の種類が綿であるとき、綿以外の繊維に対して、往路及び復路での前記制御条件(例えば、処理液の塗布量や往復路のキャリッジの搬送速度)による差を小さくすることが好ましい。
【0068】
[インクジェット捺染方法]
本発明のインクジェット捺染方法は、インクを布帛表面に留める処理液をインクジェットヘッドにて塗布するインクジェット捺染方法であって、前記処理液を吐出する前記インクジェットヘッドと、前記インクを吐出するインクジェットヘッドが、同一キャリッジに配置され、マルチパス方式にて画像を形成し、往路が、前記処理液を塗布後に前記インクを塗布し、復路が前記インクを塗布後に前記処理液を塗布し、前記マルチパス方式における前記往路と前記復路で、前記布帛への前記インクの浸透度を制御する条件を変えることを特徴とする。すなわち、本発明のインクジェット捺染方法は、処理液及びインクを塗布する工程を具備し、処理液及びインクを塗布する工程において、往路に対して、復路の方が布帛へのインクの浸透を抑制する方向に塗布条件を制御する。
【0069】
処理液及びインクを塗布する工程では、前記した
図1に示す本発明のインクジェット捺染装置100を用いて布帛T1に処理液Pr及びインクInを塗布する。
ここで、布帛T1への処理液Pr及びインクInの塗布は、往路に対して、復路の方が、布帛T1へのインクInの浸透を抑制する方向に制御条件を変えて塗布する。前記したとおり、操作部から入力された塗布情報に基づいて制御部106が、布帛T1への処理液Prの塗布量や、キャリッジ22の速度が所定の値となるように、塗布部10を制御して、布帛T1に処理液Pr及びインクInを塗布する。
【0070】
処理液Pr及びインクInを塗布する工程後、乾燥部105によって塗布された処理液Pr及びインクInを乾燥する。
その後、必要に応じて定着部によって、乾燥部105で処理液Pr及びインクIn中の揮発成分を除去した後、その残部をさらなる加熱等により布帛T1に定着させる。
さらに、布帛回収部T3によって、乾燥部105で乾燥された印捺後の印捺布帛T3を巻き取りながら回収する。
【0071】
上記のとおり、往路と復路で、布帛へのインクの浸透度を制御する条件を変えることにより、処理液とインクの塗布の順番による布帛の表面及び裏面における印字部の濃度差を低減することができる。
さらに、布帛情報に応じて、処理液の塗布量や往復路のキャリッジの搬送速度を制御することで、布帛へのインク及び処理液の適正な浸透を制御することができる。特に、処理液の塗布量及び往復路のキャリッジの搬送速度を最適に組み合わせることでより効果を出すことができる。
【0072】
[処理液]
本発明に係る処理液は、布帛の表面に、インクの定着性を高めるような成分を含むものであればよく、特に制限されない。そのような成分の例には、アニオン性基(例えばカルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基及びスルホン酸基など)を有する化合物、カチオン性基(例えばアミノ基や第4級アンモニウム基など)を有する化合物などが含まれる。
【0073】
カチオン性基を有する化合物の例には、多価金属塩、カチオン性基を有する樹脂(例えばカチオン性のウレタン系樹脂、カチオン性のオレフィン系樹脂など)、カチオン性界面活性剤などが含まれる。
【0074】
アニオン性基を有する化合物の例には、アニオン性基を有する樹脂(例えばペクチン酸などの植物皮類、カルボキシメチルセルロースなどの繊維素誘導体、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉などの加工澱粉、アクリル酸・アクリル酸エステル共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体などのアクリル酸を共重合成分とするアクリル系重合体)、アニオン性界面活性剤が含まれる。
【0075】
前記処理剤は、必要に応じてpH調整剤、防腐剤などをさらに含んでもよい。防腐剤としては、後述するインクの防腐剤として挙げたものと同様のものを使用できる。
【0076】
[インク]
本発明に係るインクは、顔料と水とを含む。
【0077】
<顔料>
顔料は、特に限定されないが、例えばカラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料又は無機顔料でありうる。
【0078】
赤又はマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36が含まれる。
【0079】
青又はシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、60が含まれる。
【0080】
緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50が含まれる。
黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193が含まれる。
黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26が含まれる。
【0081】
顔料の市販品の例には、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF-1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレット RE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS-3、5187、5108、5197、5085N、SR-5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN-EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G-550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA-1103、セイカファストエロー10GH、A-3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY-260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR-116、1531B、8060R、1547、ZAW-262、1537B、GY、4R-4016、3820、3891、ZA-215、セイカファストカーミン6B1476T-7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B-430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN-EP、4940、4973(大日精化工業製); KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(大日本インキ化学製);Colortex Yellow 301、314、315、316、P-624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA-414、U263、Finecol Yellow T-13、T-05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P-625、102、H-1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、ColortexBlue516、517、518、519、A818、P-908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(山陽色素製);Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP-S(東洋インキ製)、Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG-02、Hostapeam BlueB2G(ヘキストインダストリ製);Novoperm P-HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(クラリアント製);カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(三菱化学製)が含まれる。
【0082】
(自己分散性顔料)
顔料は、自己分散性顔料であってもよい。自己分散性顔料は、顔料粒子の表面を、親水性基を有する基で修飾したものであり、顔料粒子と、その表面に結合した親水性を有する基とを有する。
【0083】
親水性基の例には、カルボキシル基、スルホン酸基、及びリン含有基が含まれる。リン含有基の例には、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、ホスファイト基、ホスフェート基が含まれる。
【0084】
自己分散性顔料の市販品の例には、Cabot社Cab-0-Jet(登録商標)200K、250C、260M、270V(スルホン酸基含有自己分散性顔料)、Cab-0-Jet(登録商標)300K(カルボン酸基含有自己分散性顔料)、Cab-0-Jet(登録商標)400K、450C、465M、470V、480V(リン酸基含有自己分散性顔料)が含まれる。
【0085】
顔料の含有量は、特に限定されないが、インクの粘度を上記範囲内に調整しやすく、かつ高濃度の画像を形成可能にする観点では、インクに対して1.5~15質量%の範囲内であることが好ましい。顔料の含有量が1.5質量%以上であると、高濃度の画像を形成しやすく、15質量%以下であると、インクの粘度が高くなりすぎないため、射出安定性が損なわれにくい。顔料の含有量は、同様の観点から、インクに対して5~15質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0086】
<他の成分>
本発明に係るインクは、必要に応じて他の成分をさらに含みうる。他の成分の例には、水以外の溶媒や高分子分散剤、バインダー樹脂、防腐剤、pH調整剤などが含まれてもよい。
【0087】
(溶媒)
溶媒は、特に制限されないが、好ましくは水溶性有機溶剤である。水溶性有機溶剤は、水と相溶するものであれば特に制限されないが、インクを布帛の内部まで浸透させやすくする観点、インクジェット方式での射出安定性を損なわれにくくする観点では、インクが乾燥により増粘しにくいことが好ましい。したがって、インクは、沸点が200℃以上の高沸点溶媒を含むことが好ましい。
【0088】
沸点が200℃以上の高沸点溶媒は、沸点が200℃以上である水溶性有機溶剤であればよく、ポリオール類やポリアルキレンオキサイド類であることが好ましい。
【0089】
沸点が200℃以上のポリオール類の例には、1,3-ブタンジオール(沸点208℃)、1,6-ヘキサンジオール(沸点223℃)、ポリプロピレングリコールなどの2価のアルコール類;グリセリン(沸点290℃)、トリメチロールプロパン(沸点295℃)などの3価以上のアルコール類が含まれる。
【0090】
沸点が200℃以上のポリアルキレンオキサイド類の例には、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点245℃)、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点305℃)、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点256℃);及びポリプロピレングリコールなどの2価のアルコール類のエーテルや、グリセリン(沸点290℃)、ヘキサントリオールなどの3価以上のアルコール類のエーテルが含まれる。
【0091】
溶媒は、上記高沸点溶媒以外の他の溶媒をさらに含んでもよい。他の溶媒としては、前処理液に含まれる溶媒の具体例と挙げたものと同様のものを使用できる。
【0092】
(高分子分散剤)
顔料が自己分散性顔料ではない場合、顔料を分散させやすくする観点から、インクは、高分子分散剤をさらに含むことが好ましい。
【0093】
高分子分散剤の種類は、特に制限されず、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤、非イオン性分散剤のいずれであってもよい。
【0094】
カチオン性分散剤が有するカチオン性基の例には、第2級アミノ基(イミノ基)、第3級アミノ基又は第4級アンモニウム基などでありうる。
【0095】
そのようなカチオン性分散剤は、顔料分散体を形成しうるものであればよく、特に制限されないが、例えばカチオン性基(第3級アミノ基又は第4級アンモニウム基)を有するアクリル系(共)重合体が含まれる。
【0096】
アニオン性分散剤は、カルボン酸基、リン含有基及びスルホン酸基からなる群より選ばれる親水性基を有する高分子分散剤である。
【0097】
カルボン酸基を有する高分子分散剤の例には、ポリカルボン酸又はその塩が含まれる。ポリカルボン酸の例には、アクリル酸又はその誘導体、マレイン酸又はその誘導体、イタコン酸又はその誘導体、フマル酸又はその誘導体から選ばれる単量体の(共)重合体及びこれらの塩が含まれる。
【0098】
リン含有基を有する高分子分散剤は、リン酸基又はホスホン酸基を有する高分子分散剤である。リン酸基又はホスホン酸基を有する高分子分散剤の例には、アルキルリン酸エステル又はその塩が含まれる。
【0099】
スルホン酸基を有する高分子分散剤の例には、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸のホルマリン縮合物が含まれ、好ましくは芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物である。芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物の例には、縮合ナフタレンスルホン酸ナトリウムが含まれる。
【0100】
非イオン性分散剤の例には、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが含まれる。
【0101】
高分子分散剤の含有量は、顔料に対して10~50質量%であることが好ましい。高分子分散剤の含有量が10質量%以上であると、顔料の分散性を十分に高めやすく、50質量%以下であると、粘度の過剰な上昇を抑制しやすい。高分子分散剤の含有量は、同様の観点から、顔料に対して20~40質量%であることが好ましい。
【0102】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、水溶性樹脂又は樹脂粒子(水分散性樹脂)でありうる。
【0103】
バインダー樹脂の重量平均分子量は、1万以上でありうる。重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算にて測定することができる。
【0104】
ただし、布帛の生地の風合いを損なわれにくくする観点では、高分子分散剤とバインダー樹脂の含有割合は少ないことが好ましい。一方で、当該含有割合が少ないと、顔料の含有割合が多くなるため、色材層の表面の凹凸は大きくなりやすい。そのような場合に、本発明は特に有効となる。
【0105】
具体的には、高分子分散剤とバインダー樹脂の合計含有量の、顔料の含有量に対する比率は、質量比で、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。
【0106】
(防腐剤、pH調整剤)
防腐剤、pH調整剤は、処理剤に任意に含まれる防腐剤、pH調整剤の具体例として挙げたものと同様のものを使用できる。
【0107】
<インクの物性>
インクの、25℃における粘度は、インクジェット方式による射出性が良好となる程度であればよく、特に制限されないが、3~20mPa・sであることが好ましく、4~12mPa・sであることがより好ましい。インクの粘度は、E型粘度計により、25℃で測定することができる。
【0108】
<インクの調製>
インクは、任意の方法、例えば前述の顔料と、水と、任意の分散剤などを混合するステップを経て製造することができる。
【実施例0109】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0110】
[処理液の調製]
カチオン性基を有する化合物、溶剤及び他の成分として、下記に示される組成となるように混合して、処理液Aを得た。
カチオン性基を有する化合物:MZ477(ウレタン樹脂系、高松油脂社製)
25質量部
溶剤:グリセリン 10質量部
溶剤:プロピレングリコール 20質量部
防腐剤:Proxel GXL(S) 0.05質量部
界面活性剤:オルフィンE1010(日信化学工業社製)
0.1質量部
イオン交換水 44.85質量部
【0111】
[インクの調製]
顔料、顔料分散剤、溶剤及び他の成分として、下記に示される組成となるように混合してインクBを得た。
顔料:Pigment Red122 3質量部
顔料分散剤:スチレン・アクリル共重合体 0.9質量部
溶剤:グリセリン 10質量部
溶剤:プロピレングリコール 20質量部
防腐剤:Proxel GXL(S) 0.05質量部
界面活性剤:オルフィンE1010(日信化学工業社製)
0.1質量部
イオン交換水 69.95質量部
【0112】
[捺染方法]
以下の布帛を準備した。
・T/Cブロード(ポリエステル65質量%/綿35質量%)
・綿ブロード40(綿100質量%)
・レーヨン(綿100質量%)
・デシン(ポリエステル100質量%)
・ポンジ(ポリエステル100質量%)
【0113】
次いで、下記表VIに示される各布帛の表面に、前記で調製した処理液A及びインクBを、表Iに記載の「制御方法1」及び「制御方法2」で塗布した。
ここで、「制御方法1」は、処理液の塗布量の制御方法であり、前記した表I~表IIIに示すテーブルデータにしたがって処理液の塗布量を制御したものである。
「制御方法2」は、往路及び復路の処理液とインクの塗布の時間間隔の制御方法であり、表IV及び表Vに示すテーブルデータにしたがって往路及び復路のキャリッジの速度を制御したものである。
前記したとおり処理液及びインクを布帛に塗布した後、150℃、3分で加熱乾燥し、印捺した布帛を得た。
【0114】
[画像形成]
印捺装置におけるインクジェットヘッドの印字方式はスキャン方式とし、コニカミノルタ社製のPro120を用いた。処理液Aを充填した処理液専用ヘッドとインクBを充填したヘッドとを用いて画像形成を行った。画像は2パス(一応復:2回スキャン)で作製したため、往路/復路の順で印字した部分と復路/往路で印字した部分の色の違いを評価した。処理液は、1パス目のみ塗布して実験を行った。(処理液、インク、インクの順で塗布した部分とインク、処理液、インクの順で塗布した部分の濃度差を下記のとおり評価した。)
なお、形成した画像は、ベタ100%カバレッジの単色画像とした。
【0115】
[評価]
上記で得られた印捺した各布帛について、裏面濃度差を以下の方法で評価した。
<裏面濃度差>
評価機:分光測色計(CM25cG:コニカミノルタ社製)
濃度測定場所:処理液、インク、インクの順で塗布した部分と、インク、処理液、インクの順で塗布した部分
上記で得られた印捺した布帛において、印字部裏面の上記2つの部分について、それぞれ10箇所の濃度を測定し平均値を算出した。そして、2つの部分における平均濃度値から平均濃度差(ΔE)を算出し、以下の基準で評価した。〇1、〇2及び〇3を実用上好ましいとした。
(基準)
×:ΔEが2以上
〇1:ΔEが1以上2未満
〇2:ΔEが0.5以上1未満
〇3:ΔEが0.5未満
【0116】
【0117】
上記結果に示されるように、マルチパス方式において往路に対して、復路の方が、布帛へのインクの浸透を抑制する方向に制御条件を変える(具体的には、往路に対して、復路の処理液の塗布量を増やす、又は、往路に対して、復路の処理液とインクの塗布の時間間隔を短くする)ことにより、布帛の表面及び裏面における印字部の濃度差を低減することができることが認められる。
特に、布帛を構成する繊維の種類及び繊維密度によって、前記制御条件をさらに補正することによって、布帛の表面及び裏面における印字部の濃度差をより低減することができる。
【0118】
なお、前記の評価では裏面濃度差を評価したが、表面濃度差も裏面濃度差を全く同様の傾向(表面濃度が薄くなると裏面濃度は濃くなるが、濃度差は同様の傾向)が得られるが、裏面の濃度差の方が感度が高いため、裏面での濃度差を評価した。