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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162297
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】横スリットシート
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/02 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
B65D81/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067057
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】514192756
【氏名又は名称】株式会社ネオックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】安野 民雄
【テーマコード(参考)】
3E066
【Fターム(参考)】
3E066AA21
3E066CA01
3E066CA03
3E066CA09
3E066DB02
3E066JA23
(57)【要約】
【課題】スリットを開いたあとの立体形状を維持できるようにするとともに、スリットを形成する際のスリット形成刃の長寿命化をはかって生産性を向上する。
【解決手段】横方向に延びる複数のスリット12が千鳥状に配置され、縦方向Yへの引き伸ばしによってスリット12が開いて立体化する横スリットシート11において、スリット12を、縦方向Yと直交する真横にまっすぐ延びる部分を持たず縦方向Yにうねる曲線部13を有した波形(なみがた)に形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に延びる複数のスリットが千鳥状に配置され、縦方向への引き伸ばしによって前記スリットが開いて立体化する横スリットシートであって、
前記スリットが、真横にまっすぐ延びる部分を持たず縦方向にうねる曲線部を有した波形である
横スリットシート。
【請求項2】
前記スリットが曲線部のみで構成された
請求項1に記載の横スリットシート。
【請求項3】
前記スリットが2以上の曲線部を有している
請求項1または請求項2に記載の横スリットシート。
【請求項4】
前記曲線部が縦方向と交差する方向に指向する突端部を有している
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の横スリットシート。
【請求項5】
前記突端部が2個連続して形成され、
これら突端部が縦方向で隙間をあけて並んでいる
請求項4に記載の横スリットシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、梱包や包装などにおいて例えば緩衝材等として使用される、引き伸ばして立体化できる横スリットシートに関する。
【背景技術】
【0002】
スリットシートは、下記特許文献1に開示されているように、紙などのシート材に一方向に延びる直線からなる多数のスリットを千鳥状に配設して形成されている。具体的には、スリットと連続部を交互に一直線上に並べたスリット列が多数平行に並設され、並設に際して一のスリット列におけるスリットの中間位置と、その隣のスリット列における連続部の中間位置を並べている。つまり、引っ張りによってスリット列のスリットが開き、スリットの周囲が起伏して立体化する構成である。
【0003】
このようなスリットシートには、縦スリットシートと横スリットシートの二種類がある。縦スリットシートは縦方向に延びる縦スリットを有し、横スリットシートは横方向に延びる横スリットを有している。
【0004】
これらいずれのタイプのスリットシートも、緩衝材として使用する場合には、スリット列の法線方向に引っ張って伸ばし、スリットをおおよそハニカム状に変形してから使用される。引っ張る作業は主に手で行う。
【0005】
また、スリットシートの製造は次のように行われる。すなわち、原反ロールからシート材を引き出して、スリットを形成するためのスリット形成刃を周面に備えたカッターローラを押し付けてシート材にスリットを形成する。スリットが形成されたスリットシートは、ロール状に巻き取られて使用に供される。
【0006】
前述のようにスリットシートは使用に際して引き伸ばされるが、二種類のスリットシートのうち縦スリットシートでは、ロール状に巻かれた状態から引き出す方向と引き伸ばす方向が90°異なるので、引き出しながら引き伸ばすことは行いにくい。一方、横スリットシートでは、引き出す方向と引き伸ばす方向が同一であるので、梱包等の自動化に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1-226574号公報
【特許文献2】実開平4-50647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、使用に際してスリットシートを引き伸ばしてスリットを開いても、引っ張り力を解除するとスリットは閉じて元の平らなシートに戻ってしまう。特にスリットが直線からなるので、スリットのどの部位でも同様に閉じようとする力が働く。しかも、スリットを構成する縁は直線であるので縁同士が元の閉じた状態に戻りやすい。このため、使用に際してスリットを一旦開いても、直ちに丸めたり包装等に供したりしないと、立体形状は維持されない。
【0009】
下記特許文献2の第6図には、スリット(切目)を曲線状にすることが開示されているが、その形状は一つの円弧からなる一つ山形状であるので、直線状のスリットの場合と大きな違いはない。しかも、特許文献2のスリットは縦スリットであるため、横スリットシートのような利点は得られない。
【0010】
また、スリットシートの製造においては前述のようにカッターローラのスリット形成刃がシート材に押し付けられる。このときにスリット形成刃はシート材を押し切ってアンビルローラに当たる。縦スリットシートの場合には、スリット形成刃は連続的に当たるが、横スリットシートの場合には、スリット形成刃がシート材をひっかくように断続的に当たるので、スリット形成刃にかかる負担が大きく、寿命が短い傾向にある。
【0011】
そこで、この発明は、横スリットシートにおいてスリットを開いたあとの立体形状を維持できるようにするとともに、スリット形成刃の長寿命化をはかって生産性を向上することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのための手段は、横方向に延びる複数のスリットが千鳥状に配置され、縦方向への引き伸ばしによって前記スリットが開いて立体化する横スリットシートであって、前記スリットが、真横にまっすぐ延びる部分を持たず縦方向にうねる曲線部を有した波形(なみがた)である、横スリットシートである。
【0013】
この構成では、スリットは真横、つまり水平にまっすぐ延びる部分を持たず縦方向にうねった波形にして、縦方向に並ぶスリット同士の間隔を部分的に異ならせることなどによってスリット間の剛性に部分的な相違を生じさせる。つまり、縦方向に引き伸ばしてスリットを開こうとするときに開きやすい部分と開きにくい部分を有している。このため、開きやすい部分が開いたあとに開きにくい部分が開いたときには、開きやすい部分は開きにくい部分に比べて大きく変形しており、引っ張り力を解除したときでも変形状態が保たれる。
【0014】
そのうえ、スリットは波形であるので、一旦開いて変形したスリットの縁同士は、その形状からも元通りには閉じにくい。
【0015】
また、スリット形成刃については、形成するスリットが横方向に延びるものであるものの、スリットは真横にまっすぐに延びる部分を有しない形であり、尖ったギザギザ部分を有する形でもないので、スリット形成刃に対する負荷を軽減できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、いったん立体化した後の横スリットシートのスリットは、部分的に変形態様が異なるうえに元通りには戻りにくい形状であるので、スリットの開いた形状は維持しやすく、スリットシートの立体形状は保たれる。このため、梱包等の作業に際して引き伸ばし直しは不要であり、作業性が向上する。
【0017】
また、スリット形成刃にかかる負荷を低減できるので、横スリットシートであっても、スリット形成刃の長寿命化をはかって横スリットシートの生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】横スリットシートの平面図。
図2】横スリットシートの断面構造と立体化を示す断面図。
図3】スリット構造を示す平面図。
図4】他の例に係るスリット構造を示す平面図。
図5】他の例に係るスリット構造を示す平面図。
図6】他の例に係るスリット構造を示す平面図。
図7】他の例に係るスリット構造を示す平面図。
図8】他の例に係るスリット構造を示す平面図。
図9】他の例に係るスリット構造を示す平面図。
図10】他の例に係るスリット構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0020】
図1に、横スリットシート11の平面図を示す。横スリットシート11は、横方向Xに延びる複数のスリット12が千鳥状に配置され、縦方向Yの引き伸ばしによって、図2に示したようにスリット12が開いて、スリット12の周囲が隆起又は倒伏して、立体化するものである。スリット12は、シートの厚み方向に貫通しており、平面視において線状に延びている。
【0021】
「横方向X」とは、シートの流れ方向・長手方向(縦方向Y)に対して厳格に90度の方向のみを指すのではなく、例えば15度程度の適宜の傾きを包含する意味である。
【0022】
この横スリットシート11のスリット12は、横方向Xのうちの真横、つまり横スリットシート11の長手方向と直交する水平に一直線に延びる形状ではなく、次のように構成されている。
【0023】
すなわちスリット12は、図1に一部を拡大して示したように、真横にまっすぐ延びる部分を持たず縦方向Yにうねる曲線部13を有した波形である。換言すればスリット12は、シートの長手方向と直交する水平に延びる直線部分を有さず、曲線や、長手方向と直交する方向に対して傾いた直線で構成される。曲線部13とは、例えば円や長円、楕円の一部のように、一定の関係を有するひとつながりの曲線からなる部分であり、曲線部13は両端に端点13a,13bを有することになる。
【0024】
なお、シートの材料については、クラフト紙などの紙や、樹脂フィルム・シート、不織布、布帛など、用途に応じて必要な素材のものが選択される。
【0025】
スリット12の長さとスリット12の配置間隔は、横スリットシート11の用途に応じて適宜の規模に設定される。
【0026】
スリット12の具体的構成について説明する。平面図である図3に示したように、この例のスリット12は2本の円弧(円周の一部)で構成されている。図3の(b)はスリット12の配置を表し、(a)は一つのスリット12の形状を表している。
【0027】
つまり、スリット12は方向性が異なる2つの曲線部13のみで構成されている。一方の曲線部13は縦方向Yの一方に突出しており、他方の曲線部13は縦方向Yの他方に突出している。ここで、突出方向は図3の(a)に矢印で示しており、曲線部13の両端の端点13a,13b同士を結んだ線の垂線上の、円弧の内側から外側に向けての方向を突出方向としている。
【0028】
これらの曲線部13は、スリット12の中間に位置する内側の端点13aにおける接線14を共通にした態様で互いに接続されている。この接線14は、シートの真横方向と平行ではなく傾きを有している。接線14の勾配はスリット12形成時のカッターローラの刃当たりを考慮して、刃に対して過大な負荷がかからないように設定される。
【0029】
図3に示したスリット12では、2つの曲線部13は同一形状である。つまり、2つの曲線部13は曲率と突出高さと長さが同一であり、半円よりも、4分の1円弧よりも短く、一方の曲線部13をスリット12の中間に位置する端点13aを中心に180度回転すると2つの曲線部13が互いに重なり合う形状である。
【0030】
またスリット12の両端、つまり2つの曲線部13における外側の端点13bの縦方向Yにおける高さは同一であり、これら端点13bは真横で並んでおり、2つの曲線部13の内側の端点13aは、スリット12の両端同士を結ぶ仮想直線の中点に位置している。
【0031】
前述のように曲線部13は4分の1円弧よりも短い円弧で形成されているので、曲線部13の円弧のうち、スリット12の端点、つまり曲線部13における外側の端点13b部分も真横方向に対して傾いている。この部分の真横方向に対する勾配は、接線14の勾配と同じである。
【0032】
曲線部13の高さ、つまり両方の端点13a,13b同士を結ぶ仮想線と曲線部13の頂部との間の距離H1、又は2つの曲線部13の高さを合わせたスリット12全体の高さH2は、スリット12の長さLと曲線部13の数や曲線部13の形状に応じて設定される。このとき、曲線部13の端点13a,13b部分が前述したように真横方向に対して所定以上の勾配を有するように設計される。
【0033】
このような形状のスリット12は、左右非対称であるので、配設に際してすべて同じ態様で配設するのではなく、スリット列15ごとに向きを変えて配設されるとよい。
【0034】
すなわち、横方向Xに並ぶ複数のスリット12からなる一のスリット列15aではすべて同じ向きにスリット12を並べる一方、このスリット列15aに縦方向Yで隣接する別のスリット列15bでは、スリット12の向きを一のスリット列15aとは違えている。向きの異なるスリット12は、左右の中間位置を対称軸として線対称に反転して、又は上下反転して得る。
【0035】
これによって、縦方向Yの上に凸の曲線部13と下に凸の曲線部13がそれぞれ縦方向Yでおおよそ並ぶことになる。縦方向Yに同じ態様の曲線部13が並んでも、縦方向Yにおける曲線部13同士の間隔は曲線部13上の位置によって相違する。
【0036】
スリット12の配置をすべて同じ態様で行った場合でも、縦方向Yにおける曲線部13同士の間隔は曲線部13上の位置によって相違する。
【0037】
スリット12パターンの他の例について、図4図10を用いて説明する。この説明において前述の構成と同一の構成については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。図4図6図8図9においても、(b)はスリット12の配置を表し、(a)は一つのスリット12の形状を表している。
【0038】
図4は、スリット12が曲線部13のみからなるものであって、3個の曲線部13を有する例である。
【0039】
つまり、スリット12は方向性の異なる3つの曲線部13のみで構成されている。3つの曲線部13は同一形状である。両端に位置する曲線部13は縦方向Yの一方(図4(a)の例では下)に突出しており、中間の曲線部13は縦方向Yの他方(図4(a)の例では上)に突出している。これらの曲線部13は、内側に位置する端点13aにおける接線14を共通にした態様で互いに接続されている。
【0040】
またスリット12の両端、つまり両端に位置する2つの曲線部13における外側の端点13bの縦方向Yにおける高さは同一であり、これら端点13bは真横で並んでいる。これら2つの曲線部13の内側の端点13aは、スリット12の両端同士を結ぶ仮想直線上に位置している。
【0041】
前述のように曲線部13は円弧で形成されているので、曲線部13の円弧のうち、スリット12の端点に相当する曲線部13における外側の端点13b部分も真横方向に対して傾いている。この部分の真横方向に対する勾配は、スリット12形成時のカッターローラの刃当たりを考慮して設定された、曲線部13における接続側の端点13aでの接線14の勾配と同じである。
【0042】
このような形状のスリット12は、配設に際して、スリット列15ごとにスリット12の向きを変えずに、すべて同じ態様で配設することができる。
【0043】
このようなスリット12パターンでは、図示例のようにスリット列15におけるスリット12間の間隔W1をスリット12の中間の曲線部13の幅W2と同一にすると、縦方向Yに並ぶ両側の曲線部13同士の間隔は曲線部13上の位置によって異なることはない。しかし、両側の曲線部13部分は、中間に位置する曲線部13同士の間の部分に比べて剛性が低いうえにスリット12が複数の円弧を描いているので、直線からなるスリットを有する場合に比べて引き伸ばされて開く時の変形動作に偏りが生じやすい形状である。
【0044】
スリット列15におけるスリット12間の間隔W1をスリット12の中間の曲線部13の幅W2よりも狭く又は広くして配設すると、縦方向Yにおけるスリット12同士の間隔はスリット12上のすべての位置において相違することになるので、好ましい。
【0045】
図5は、スリット12が曲線部13のみからなるものであって、3個の曲線部13を有するものの、図3の2つの山を有する態様や、図4の3つの山を有する態様とは異なり、曲線部13の数と山の数が同一ではなく、山が1つである例を示している。
【0046】
つまり、スリット12は方向性の異なる3つの曲線部13で構成され、そのうち中間に位置する一つの曲線部13と両側の曲線部13で長さが異なる。具体的には、3つの曲線部13は同じ曲率の円弧で構成されており、中間の曲線部13は両側の曲線部13よりも長さが長く形成され、中間の曲線部13は縦方向Yの一方に突出し、両側の曲線部13は縦方向Yの他方斜め内側に突出している。ここで、「内側」とはスリット12の長手方向の内側のことであり、スリット12の中間に寄る方向性を示している。「外側」とする場合は、これとは逆であり、スリット12の長手方向に離れる方向性を示す。
【0047】
またスリット12の両端、つまり両端に位置する2つの曲線部13における外側の端点13bの縦方向Yにおける高さは同一であり、これら端点13bは真横で並んでいる。しかし、これら2つの曲線部13の内側の端点13aは、スリット12の両端同士を結ぶ仮想直線上よりも縦方向Yの一方に寄った位置に存在する。
【0048】
言うまでもなく、3つの曲線部13は、内側に位置する端点13aにおける接線14を共通にした態様で互いに接続されている。
【0049】
前述のように短い円弧で構成された両端の曲線部13は縦方向Yの他方斜め内側に突出しており、それらの外側の端点13b部分は真横方向に対して傾いている。この部分の真横方向に対する勾配は、曲線部13における内側に位置する端点13aでの接線14の勾配よりも小さいが、スリット12形成時のカッターローラの刃当たりを考慮して設定される。
【0050】
このような形状のスリット12は、配設に際してすべて同じ態様で配設するのではなく、スリット列15ごとに向きを変えて配設される。
【0051】
すなわち、横方向Xに並ぶ複数のスリット12からなる一のスリット列15aについては、すべて同じ向きにスリット12が並び、このスリット列15aに縦方向Yで隣接する別のスリット列15bについては、上下反転した形態のスリット12を並べている。
【0052】
このようなスリット12パターンでは、図示例のようにスリット列15におけるスリット12間の間隔W1をスリット12の中間の曲線部13の幅W2と同一にしても、縦方向Yに並ぶ両側に位置する曲線部13同士の間隔は、曲線部13上の位置によって相違する。
【0053】
図6は、スリット12が曲線部13と直線部16からなるものであって、2個の曲線部13が真横方向に対して傾斜する1本の直線部16で接続された形状の例を示している。
【0054】
つまり、スリット12は方向性の異なる2つの曲線部13が離間配置され、これらが直線部16で接続されている。具体的には、2つの曲線部13は同じ曲率の円弧で構成されており、長さは4分の1円弧よりも短い。一方の端の曲線部13は縦方向Yの一方斜め外側に突出しており、他方の端の曲線部13は縦方向Yの他方斜め外側に突出している。これら曲線部13の縦方向Yにおける位置は同一であり、各曲線部13の内側の端点13aは縦方向Yにおいて異なる高さに位置している。これらの高さの異なる端点13a同士を直線部16が接続している。
【0055】
直線部16は、2つの曲線部13の内側に位置する端点13aにおける接線14と共通である。直線部16の真横方向に対する勾配は、スリット12形成時のカッターローラの刃当たりを考慮して設定される。
【0056】
またスリット12の両端、つまり両端に位置する2つの曲線部13における外側の端点13bの縦方向Yでの高さは相違しており、2つの曲線部13の内側の端点13aの縦方向Yにおける高さとも相違している。
【0057】
前述のように短い円弧で構成された両端の曲線部13は縦方向Yの斜め外側に突出しており、それらの外側の端点13b部分は真横方向に対して傾いている。この部分の真横方向に対する勾配は、曲線部13における内側に位置する端点13aでの接線14の勾配と同様に、スリット12形成時のカッターローラの刃に係る負荷をより低減できる勾配である。
【0058】
このような形状のスリット12は、配設に際してすべて同じ態様で配設される。
【0059】
このスリット12パターンでは、縦方向Yに並ぶスリット12同士の間隔は、曲線部13が縦方向Yに並ぶ部位において、スリット12上の位置によって相違する。
【0060】
図7は、図6に示した形状のスリット12配置の他の例を示している。図6においてはスリット12をすべて同じ態様で配設したが、図7においては、スリット列15ごとに向きを変えている。
【0061】
すなわち、横方向Xに並ぶ複数のスリット12からなる一のスリット列15aでは、すべて同じ向きにスリット12を並べる一方、このスリット列15aに縦方向Yで隣接する別のスリット列15bでは、スリット12の向きを一のスリット列15aとは違えている。スリット12の向きの変更は、左右の中間位置を対称軸として線対称に反転して、又は上下反転して行う。この場合でも、縦方向Yに並ぶスリット12同士の間隔は、曲線部13が縦方向Yに並ぶ部位において、スリット12上の位置によって相違する。
【0062】
図8は、スリット12が曲線部13のみからなるものであって、2個の曲線部13で二山を有する形態であり、各曲線部13は、縦方向Yと交差する方向に指向する突端部17を有している。これら突端部17は2個連続して形成されるとともに、突端部17が縦方向Yで隙間をあけて並んでいる。ここで、「指向する」とは、ある方向に向かっていることを指し、曲線部13が円弧で構成されている場合には、前述した突出方向と同義となる。図面上、指向する方向は突出方向と同じ矢印で示している。
【0063】
スリット12は方向性の異なる2つの曲線部13で構成され、この例の曲線部13は、円弧ではなく、楕円の円周(弧)で構成されている。
【0064】
具体的には、スリット12の2つの曲線部13は同一形状であり、偏平な楕円の円周の、長軸の端点18を含む半分弱くらいの長さの部分からなる。2つの曲線部13は長軸の端点18に近い位置の端点13a同士が接続されており、スリット12は、一方の曲線部13をスリット12の中間に位置する端点13aを中心に180度回転すると2つの曲線部13が互いに重なり合う形状である。
【0065】
一方の曲線部13は縦方向Yの一方斜め内側に指向し、他方の曲線部13は縦方向Yの他方斜め内側に指向している。指向する方向は楕円の中心と長軸の端点18を結ぶ線上を楕円の内側から外側に向ける方向である。各曲線部13の長軸の端点18は、スリット12の中間に位置する端点13aよりも指向方向に突出している。この突出している部分が前述した突端部17である。
【0066】
またスリット12の両端、つまり2つの曲線部13における外側の端点13bの縦方向Yにおける高さは同一であり、これら端点13bは真横で並んでいる。2つの曲線部13の内側の端点13aは、スリット12の両端同士を結ぶ仮想直線の中点に位置している。
【0067】
2つの曲線部13は、前述と同様、内側に位置する端点13aにおける接線14を共通にした態様で互いに接続されている。
【0068】
前述のように楕円の弧で構成された曲線部13は縦方向Yの斜め内側に指向する突端部17を有し、曲線部13の内側の端点13aと同様、曲線部13の外側の端点13b部分も真横方向に対して傾いている。この部分の真横方向に対する勾配は、曲線部13における内側に位置する端点13aでの接線14の勾配と同様に、スリット12形成時のカッターローラの刃にかかる負荷をより低減できる勾配である。
【0069】
このような形状のスリット12は、配設に際してすべて同じ態様で配設するのではなく、スリット列15ごとに向きを変えて配置される。
【0070】
すなわち、横方向Xに並ぶ複数のスリット12からなる一のスリット列15aでは、すべて同じ向きにスリット12並べる一方、このスリット列15aに縦方向Yで隣接する別のスリット列15bでは、スリット12の向きを一のスリット列15aとは違えている。スリット12の向きの変更は、左右の中間位置を対称軸として線対称に反転して、又は上下反転して行う。
【0071】
このようなスリット12パターンでは、縦方向Yに並ぶスリット12同士の間隔は、曲線部13が縦方向Yに並ぶほとんどの部位において、スリット12上の位置によって相違する。
【0072】
また、曲線部13の突端部17同士が噛み合った状態になっており、これら突端部17は引き伸ばされてスリット12が開くときには捻じれるようにして分離し、引き伸ばし力を解除しても元通りの位置関係には戻らない形状である。
【0073】
図9は、図8のスリット12と同様に、曲線部13のみからなるものであって、2個の曲線部13で二山を有する形状であり、各曲線部13は縦方向Yと交差する方向に指向する突端部17を有したスリット12の例を示している。しかし、図9のスリット12は、図8のスリット12とは異なり、突端部17をスリット12の端部に有している。
【0074】
すなわち、スリット12は図8のスリット12を構成する曲線部13と同じ形状の曲線部13を有しており、長軸の端点18から遠いほうの端点13a同士が接続された形状である。各曲線部13の指向方向は、縦方向Yの一方斜め外側又は他方斜め外側である。
【0075】
このような形状のスリット12は、配設に際して図8に示したスリット12とスリット列15ごとに交互に配設する。
【0076】
すなわち、横方向Xに並ぶ複数のスリット12からなる一のスリット列15aでは、図9(a)のスリット12を同じ向きで並べる一方、このスリット列15aに縦方向Yで隣接する別のスリット列15bでは、図8(a)のスリット12を同じ向きで並べている。
【0077】
このようなスリット12パターンでは、スリット列15におけるスリット12同士の間隔W1に関係なく、縦方向Yに並ぶスリット12同士の間隔は、スリット12上のすべての位置において相違する。
【0078】
また、曲線部13の突端部17は、スリット12の形状についてその端部を内側に向けて折り返したような形状とする。この部分は引き伸ばされてスリット12が開くときには捻じれるようにして開き、引き伸ばし力を解除しても元通りの閉じた状態には戻らない形状である。
【0079】
図10は、図9に示した形状のスリット12配置の他の例を示している。すなわち、図9においては2種類のスリット12を配設したが、図10においては、図9の(a)のスリット12のみをスリット列15ごとに向きを変えている。
【0080】
すなわち、横方向Xに並ぶ複数のスリット12からなる一のスリット列15aでは図9(a)のスリット12を並べる一方、このスリット列15aに縦方向Yで隣接する別のスリット列15bでは、スリット12の向きを一のスリット列15aとは違えている。スリット12の向きの変更は、左右の中間位置を対称軸として線対称に反転して、又は上下反転して行っている。この場合でも、縦方向Yに並ぶスリット12同士の間隔は、スリット12上のすべての位置において相違する。
【0081】
以上のような構成の横スリットシート11では、使用に際しては縦方向Yに引き伸ばして、スリット12を開いて立体化する。このとき、スリット12は縦方向Yにうねる波形であるので、縦方向Yに並ぶスリット同士の間で部分的に剛性が異なっており、スリット12が開く時の変形動作に違いが生じる。つまり、開くタイミングや変形の態様に差を生じさせ、開きやすい部分が開いたあとで開きにくい部分が開いたときには、開きやすい部分は開きにくい部分に比べて大きく変形して、引っ張り力を解除しても元に戻らない状態が得られる。
【0082】
しかも、スリット12は波形であるので、直線からなるスリットの場合に比べて、その形状からも元のように閉じにくい状態である。
【0083】
このため、スリット12が開いた形状を維持しやすく、一旦引き伸ばした横スリットシート11の立体形状は直線状のスリットのみからなるスリットシートに比べて良好に保持される。この結果、梱包等の作業に際して引き伸ばし直しを不要とすることができ、作業性を向上できる。
【0084】
また、横スリットシート11のスリット12は、真横にまっすぐに延びる部分を有しない波形であるうえに、スリット12の端部や曲線部13の端点部分に適宜の傾斜を付けてスリット形成時におけるスリット形成刃に対する負荷を軽減している。このため、横スリットシート11であっても、スリット形成刃の長寿命化をはかって横スリットシート11の生産性を向上できる。
【0085】
スリット12を構成する曲線部13などの接続部分は、その端点における接線14を共通にした態様で互いに接続されるので、スリット12は全体として滑らかで角がない形状である。この点からも、スリット形成刃の長寿命化をはかれる。
【0086】
そのうえ、図3図5図8図10に例示したスリットパターンのようにスリット12が曲線部13のみで構成されている場合には、立体化時の変形によって全体的な変形を生じさせることができる。このため、引き伸ばし力を解除したときに特に戻りにくい横スリットシート11が得られる。
【0087】
スリット12が2以上の曲線部13を有している場合でも同様に、立体化時の変形によってより複雑な変形を生じさせることができるので、引き伸ばし力を解除したときに特に戻りにくい横スリットシート11が得られる。
【0088】
図8図10のスリットパターンのように曲線部13に突端部17を形成した場合、特に図8のように突端部17を2個連続して形成してこれらを縦方向Yで隙間をあけて並べた場合には、突端部17がより積極的に元の平らな状態への戻りを防止できる。
【0089】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなくその他の構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0090】
11…横スリットシート
12…スリット
13…曲線部
17…突端部
X…横方向
Y…縦方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10