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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016231
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】飛沫拡散防止具
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135450
(22)【出願日】2020-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2020119555
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】708004050
【氏名又は名称】石橋 浩二
(72)【発明者】
【氏名】石橋 浩二
(57)【要約】
【課題】食事に対する不便さがなく、見た目の悪さも改善した、飛沫の拡散を防止することのできる飛沫拡散防止具を提供すること。
【解決手段】使用者Uの開いた口を覆うことが可能な大きさのシート2を含んで構成される飛沫拡散防止具1であって、シート2は、使用者Uが声を発する際に、手を使って口元に配置されるものであり、シートUの上下方向(V方向)の大きさは、使用者Uの口が開いた状態で、少なくとも鼻尖から下唇までを十分覆うことが可能な大きさで、シート2の下隅部に、使用者Uの首から吊り下げるための紐部材3を取り付けるための穿孔21を設け、穿孔21に紐部材3を取り付ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の開いた口を覆うことが可能な大きさのシートを含んで構成される飛沫拡散防止具であって、
前記シートは、前記使用者が声を発する際に、手を使って口元に配置されるものであり、
前記シートの幅方向と交差する上下方向の大きさは、前記使用者の口が開いた状態で、少なくとも鼻尖から下唇までを十分覆うことが可能な大きさで、
前記シートに、前記使用者の首から吊り下げるための紐部材が取り付けられている、又は当該紐部材を取り付けるための穿孔若しくは引っ掛けるための引掛部が設けられていることを特徴とする飛沫拡散防止具。
【請求項2】
前記シートには、当該シートの表裏の区別を示す、視覚上及び触覚上の少なくともいずれか一方の目印が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の飛沫拡散防止具。
【請求項3】
前記シートの前記幅方向の端部に、前記紐部材が取り付けられている、又は前記穿孔若しくは前記引掛部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の飛沫拡散防止具。
【請求項4】
前記シートの下端部又は下隅部に、前記紐部材が取り付けられている、又は前記穿孔若しくは前記引掛部が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかの項に記載の飛沫拡散防止具。
【請求項5】
前記シートの前記幅方向の大きさは、成人男性の平均的な顔幅相当であることを特徴とする請求項1~4のいずれかの項に記載の飛沫拡散防止具。
【請求項6】
前記シートは、口元に配置されたときに、前記幅方向の中央が前方に凸となり、顔に沿うように湾曲若しくは屈曲した形状に形成されている、又は前記屈曲した形状に折り曲げるための加工が施されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかの項に記載の飛沫拡散防止具。
【請求項7】
使用者の開いた口を覆うことが可能な大きさの被覆部材と、その一端が前記被覆部材に取り付けられ、当該被覆部材の幅方向と交差する上下方向に延びる棒状部材と、を含んで構成される飛沫拡散防止具であって、
前記被覆部材は、前記使用者が声を発する際に、前記棒状部材を把持して口元に配置されるものであり、
前記被覆部材の前記上下方向の大きさは、前記使用者の顔面の上半分を覆わないが、前記使用者の口が開いた状態で、少なくとも鼻尖から下唇までを十分覆うことが可能な大きさであることを特徴とする飛沫拡散防止具。
【請求項8】
前記被覆部材に、当該被覆部材を口元に配置したときに前記使用者と対面する人から視認可能となる装飾が施されていることを特徴とする請求項7に記載の飛沫拡散防止具。
【請求項9】
前記被覆部材は、部材本体と、当該部材本体に着脱可能な、前記装飾が施されている装飾部と、を含んで構成されていることを特徴とする請求項8に記載の飛沫拡散防止具。
【請求項10】
前記棒状部材は、前記被覆部材の裏面に、当該被覆部材の前記幅方向の中央から離れた位置に取り付けられると共に、前記幅方向及び前記上下方向を含む面方向に、前記被覆部材に取り付けられた部分を中心にして回転可能に構成されていることを特徴とする請求項7~9のいずれかの項に記載の飛沫拡散防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛沫の拡散を防止する飛沫拡散防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
令和2年7月9日22時30分時点において、NHK(日本放送協会)のまとめによると、国内における1日の新型コロナウイルスの新たな感染者は355人である。新規感染者数は、一旦は大きく減少したが、今は増加傾向にある。新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の解除(同年5月25日発出)後、感染者が多く確認されている場として、会食の場が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)”,[online],令和2年6月30日,厚生労働省,[令和2年7月2日検索],インターネット<URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html#Q2-2>
【非特許文献2】“くしゃみのシミュレーションにより、マスクの着用効果を解析”,[online],令和2年4月10日,エムエスシーソフトウェア株式会社,[令和2年7月2日検索],インターネット<URL:https://www.mscsoftware.com/ja/news/scflow/sneezing/cfd/analysys/20200410>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近距離での会話は、飛沫感染のリスクがあるのでマスクの着用が求められる。ところが、食事の際は、マスクを取り外すので、会食の場では、マスクを着用せずに近距離での会話が行われることがある。
【0005】
日本フードサービス協会、全国生活衛生同業組合中央会が令和2年5月14日に発表した、新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(改正)に基づく「外食業の事業継続のためのガイドライン」には、「お客様の安全」の項目に「グループ間の安全を確保するために、他のグループとはできるだけ2m(最低1m)以上の間隔を空け、会話は控えめにし、BGMを聞くなどを勧めることを検討する。」とある。
【0006】
会話を控えれば、飛沫感染のリスクを大幅に下げられるが、会話のない食事は会食とは言えないと思う。会話をしないのであれば、人が集まって飲食店で一緒に食事をする利点はほとんどないと考えられる。従って、外食業において「会話を控えめに」は、感染症対策になり得ない。
【0007】
大分県が「新しい生活様式」として、フェイスシールドで顔を覆って、飲食を楽しむという方式を試していた。参加者からは「慣れれば食事や会話は不自由なくできた」、「食べやすいような、着用してもおかしく見えないフェイスシールドがあればよい」、「違和感ありすぎ」などという意見があったようだ。
【0008】
フェイスシールドを着用しての食事には、飛沫感染予防の効果はあると思われるが、これが広く利用されるようになるとは、とても思えない。「慣れれば食事や会話は不自由なくできた」との参加者の意見はあるが、多くの人は食事に対する不便さを感じるはずである。
【0009】
そして、最大の問題は「着用してもおかしく見えないフェイスシールドがあればよい」、「違和感ありすぎ」といった参加者からの意見にあるように、見た目の悪さである。周りから見て格好の悪いものは、人に受け入れられるものではない。少なくとも、私は嫌である。
【0010】
新型コロナウイルスの感染が拡大していても、マスクの着用を拒否するアメリカ人は少なくない。その理由として、格好の悪さもあるようである。これは、極端な例かもしれないが、何事にも見た目は大切である。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、食事に対する不便さがなく、見た目の悪さも改善した、飛沫の拡散を防止することのできる飛沫拡散防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記非特許文献1には、新型コロナウイルスについて「一般的には飛沫感染、接触感染で感染します。閉鎖した空間で、近距離で多くの人と会話するなどの環境では、咳やくしゃみなどの症状がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされています。(WHOは、一般に、5分間の会話で1回の咳と同じくらいの飛まつ(約3,000個)が飛ぶと報告しています。)」とある。
【0013】
すなわち、上記非特許文献1には、咳やくしゃみなどの症状の出ていない感染者(無症状での感染者)が発声することで、感染者の口から出てくる飛沫(ウイルスを含む飛沫)がその周りの人(特に対面する人)の顔にかかり、ウイルスの伝播が起こる、といった内容が記載されている。
【0014】
上記非特許文献2には、株式会社クレイドルソフトウェアが「くしゃみによる微粒子の飛距離がひじによる防護やマスクの着用でどのように変化するのか」を、ソフトウェアを用いて解析した結果について記載され、肘で口元をふさいだ場合(衣類の影響は考慮せず、腕の表面は滑らかな壁として計算)、「口をふさがない場合と比較すると、前方へ向かう流れは減衰して周囲に拡散し、液滴は対面する人物には到達しない結果となりました。液滴の到達距離は約1mとなり、口をふさがないケースに比べると大幅に短くなっていることが分かります。」とある。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る飛沫拡散防止具(1)は、使用者の開いた口を覆うことが可能な大きさのシートを含んで構成される飛沫拡散防止具であって、前記シートは、前記使用者が声を発する際に、手を使って口元に配置されるものであり、前記シートの幅方向と交差する上下方向の大きさは、前記使用者の口が開いた状態で、少なくとも鼻尖から下唇までを十分覆うことが可能な大きさで、前記シートに、前記使用者の首から吊り下げるための紐部材が取り付けられている、又は当該紐部材を取り付けるための穿孔若しくは引っ掛けるための引掛部が設けられていることを特徴としている。
【0016】
上記飛沫拡散防止具(1)によれば、シートは、その上下方向の大きさが、使用者の口が開いた状態で、少なくとも鼻尖から下唇までを十分覆うことが可能な大きさで、上記非特許文献2に記載されている「壁」のような役割を果たすことができるので、使用者が声を発する際に、シートを口元に配置することで、使用者の口から出てくる飛沫の拡散が防止される。特に、使用者と対面する人への飛沫の到達を防ぐことができる。これにより、会食の場での会話による飛沫感染のリスクを大幅に下げることが可能になる。
【0017】
また、従来のように、フェイスシールドを常時着用するのではなく、必要なとき(声を発するとき)にだけ、シートを口元に配置すればよいので、食事に対する不便さはない。シートは、首から吊り下げられるので、テーブル等に置いておく必要はなく、置くスペースにも困らず、シートの行方が分からなくなる心配もない。また、首から吊り下げている限りにおいては、他人の使用するシートを誤って使用する可能性は極めて低い。
【0018】
シートを口元に配置するまでの使用者の動きや、シートを口元に配置している状態での見た目の良し悪しについては、それぞれの好みがあるので、判断は難しい。しかしながら、シートを口元に配置するのは、声を発する時だけで良いので、もし仮に、見た目が悪かったとしても、その時間は限定される。
【0019】
よって、見た目の悪さについては、従来のフェイスシールドと比べ、大幅に改善される。個人的な意見であるが、シートを口元に配置するまでの動きは、品の良い仕草に映るかもしれない。従って、食事に対する不便さを解消し、見た目の悪さも改善できて、飛沫の拡散を防止することできる。
【0020】
また、本発明に係る飛沫拡散防止具(2)は、上記飛沫拡散防止具(1)において、前記シートには、当該シートの表裏の区別を示す、視覚上及び触覚上の少なくともいずれか一方の目印が形成されていることを特徴としている。
【0021】
シートの表裏の区別がつかないと、表裏を区別せずにシートが使用されるので、シートの両面がウイルスによって汚染される可能性がある。シートの両面が汚染されると、片面だけが汚染しているときに比べ、汚染されたシートを他人が触れる可能性が高く、接触感染のリスクが高くなるおそれがある。
【0022】
上記飛沫拡散防止具(2)によれば、シートには、その表裏の区別を示す、視覚上及び触覚上の少なくともいずれか一方の目印が形成され、使用者がシートの表裏を過誤しないようになっている。これにより、シートの両面が汚染される可能性が下がり、接触感染のリスクを下げることができる。
【0023】
また、本発明に係る飛沫拡散防止具(3)は、上記飛沫拡散防止具(1)又は(2)において、前記シートの前記幅方向の端部に、前記紐部材が取り付けられている、又は前記穿孔若しくは前記引掛部が設けられていることを特徴としている。
【0024】
例えば、後述する図6(A)に示すように、使用者Uの首から吊り下げるための紐部材3が、シート2Aの上端中央部に取り付けられている場合、シート2Aは、図6(B)に示すように、使用者Uの口元に配置されることになる。図6(B)に示したように、シート2Aが口元に配置されると、紐部材3がシート2Aと口元との間に位置し、紐部材3が邪魔になってシート2Aと口元との隙間が大きく広がり、飛沫拡散の防止効果が低下するおそれがある。また、紐部材3が汚染されるリスクが高くなる。
【0025】
上記飛沫拡散防止具(3)によれば、紐部材はシートの幅方向の端部に取り付けられるので、紐部材がシートと口元との間に位置するのを回避することが可能になる。これにより、紐部材が邪魔になってシートと口元との隙間が広がる可能性を下げることができる。また、紐部材が汚染されるリスクについても下げることができる。
【0026】
また、本発明に係る飛沫拡散防止具(4)は、上記飛沫拡散防止具(1)~(3)のいずれかにおいて、前記シートの下端部又は下隅部に、前記紐部材が取り付けられている、又は前記穿孔若しくは前記引掛部が設けられていることを特徴としている。
【0027】
上記飛沫拡散防止具(4)によれば、紐部材はシートの下端部又は下隅部に取り付けられるので、紐部材がシートと口元との間に位置するのをより確実に回避することができる。これにより、紐部材が邪魔になってシートと口元との隙間が広がらないようにすることができる。また、紐部材が汚染されるリスクについても大幅に下げることができる。
【0028】
また、本発明に係る飛沫拡散防止具(5)は、上記飛沫拡散防止具(1)~(4)のいずれかにおいて、前記シートの前記幅方向の大きさは、成人男性の平均的な顔幅相当であることを特徴としている。
【0029】
シートで口元が覆われていたとしても、シートの幅があまりに短いと、対面する人が飛沫拡散の防止効果に不安を抱くおそれがある。例えば、シートが少し横にずれただけで、使用者の口角がシートからはみ出て見えてしまうのは好ましくない。
【0030】
上記飛沫拡散防止具(5)によれば、シートの幅方向の大きさが、成人男性の平均的な顔幅相当であるので、シートが少しずれただけでは、口角がシートからはみ出ることはまずない。これにより、対面する人の不安を和らげることが可能になる。
【0031】
また、本発明に係る飛沫拡散防止具(6)は、上記飛沫拡散防止具(1)~(5)のいずれかにおいて、前記シートは、口元に配置されたときに、前記幅方向の中央が前方に凸となり、顔に沿うように湾曲若しくは屈曲した形状に形成されている、又は前記屈曲した形状に折り曲げるための加工が施されていることを特徴としている。
【0032】
上記飛沫拡散防止具(6)によれば、顔を沿うような形状のシートで口元を覆うことができるので、使用者の口から出てくる飛沫の拡散を、前方だけでなく、左右の方向にも、より適切に防止することが可能になる。
【0033】
また、本発明に係る飛沫拡散防止具(7)は、使用者の開いた口を覆うことが可能な大きさの被覆部材と、その一端が前記被覆部材に取り付けられ、当該被覆部材の幅方向と交差する上下方向に延びる棒状部材と、を含んで構成される飛沫拡散防止具であって、前記被覆部材は、前記使用者が声を発する際に、前記棒状部材を把持して口元に配置されるものであり、前記被覆部材の前記上下方向の大きさは、前記使用者の顔面の上半分を覆わないが、前記使用者の口が開いた状態で、少なくとも鼻尖から下唇までを十分覆うことが可能な大きさであることを特徴としている。
【0034】
上記飛沫拡散防止具(7)によれば、被覆部材は、その上下方向の大きさが、使用者の口が開いた状態で、少なくとも鼻尖から下唇までを十分覆うことが可能な大きさで、上記非特許文献2に記載されている「壁」のような役割を果たすことができるので、使用者が声を発する際に、被覆部材を口元に配置することで、使用者の口から出てくる飛沫の拡散が防止される。特に、使用者と対面する人への飛沫の到達を防ぐことができる。これにより、会食の場での会話による飛沫感染のリスクを大幅に下げることが可能になる。
【0035】
また、従来のように、フェイスシールドを常時着用するのではなく、必要なとき(声を発するとき)にだけ、被覆部材を口元に配置すればよいので、食事に対する不便さはない。
【0036】
被覆部材を口元に配置するまでの使用者の動きや、被覆部材を口元に配置している状態での見た目の良し悪しについては、それぞれの好みがあるので、判断は難しい。しかしながら、被覆部材を口元に配置するのは、声を発する時だけで良いので、もし仮に、見た目が悪かったとしても、その時間は限定される。
【0037】
よって、見た目の悪さについては、従来のフェイスシールドと比べ、大幅に改善される。従って、食事に対する不便さを解消し、見た目の悪さも改善できて、飛沫の拡散を防止することできる。
【0038】
使用者の表情が分からなくなると、コミュニケーションを図るのが難しくなるが、被覆部材の上下方向の大きさは、使用者の顔面の上半分を覆わない大きさで、被覆部材で顔面全体は覆われないので、使用者の表情が全く分からなくなることはない。従って、円滑なコミュニケーションを可能にする会食を実現することができる。
【0039】
また、本発明に係る飛沫拡散防止具(8)は、上記飛沫拡散防止具(7)において、前記被覆部材に、当該被覆部材を口元に配置したときに前記使用者と対面する人から視認可能となる装飾が施されていることを特徴としている。
【0040】
上記飛沫拡散防止具(8)によれば、被覆部材に、使用者と対面する人から視認可能となる装飾が施されているので、見た目を優雅なものにすることが可能になる。見た目が良くなれば、本発明に係る飛沫拡散防止具の使用率は高くなるはずである。特に、女性には、機能だけでなく、見た目も重要である。使用率の増大は、飛沫拡散量の減少に繋がり、延いては、新型コロナウイルスの新規感染者数の増加を抑えることができる。
【0041】
また、被覆部材の表裏の区別がつかないと、表裏を区別せずに被覆部材が使用され、被覆部材の両面がウイルスによって汚染される可能性があるが、被覆部材に装飾が施されているので、使用者は被覆部材の表裏を過誤する可能性は低い。これにより、被覆部材の両面が汚染される可能性は下がり、接触感染のリスクを下げることができる。
【0042】
また、本発明に係る飛沫拡散防止具(9)は、上記飛沫拡散防止具(8)において、前記被覆部材は、部材本体と、当該部材本体に着脱可能な、前記装飾が施されている装飾部と、を含んで構成されていることを特徴としている。
【0043】
デザイン的に優れていても、同じものを使用し続けるのを嫌がる人は少なくない。使用を嫌がれば、使用率は低下してしまう。だからと言って、使用者がデザインの異なる飛沫拡散防止具を数多く所持するのは、難しい。
【0044】
上記飛沫拡散防止具(9)によれば、装飾部を交換することが可能となるので、使用者はデザインの異なる飛沫拡散防止具を数多く所持しなくても、装飾部を交換するだけで、デザインの異なるものを使用することができる。これにより、使用率の向上を図ることができる。
【0045】
また、本発明に係る飛沫拡散防止具(10)は、上記飛沫拡散防止具(7)~(9)のいずれかにおいて、前記棒状部材は、前記被覆部材の裏面に、当該被覆部材の前記幅方向の中央から離れた位置に取り付けられると共に、前記幅方向及び前記上下方向を含む面方向に、前記被覆部材に取り付けられた部分を中心にして回転可能に構成されていることを特徴としている。
【0046】
上記飛沫拡散防止具(10)によれば、棒状部材を回転させて、被覆部材の裏面に移動させることで、本飛沫拡散防止具をコンパクトにすることができる。これにより、本飛沫拡散防止具の持ち運びに対する使用者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の第1実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す正面図である。
図2】(A)は、飛沫拡散防止具を構成するシートを使用者の首から吊り下げた状態を示す正面図であり、(B)は、シートを使用者の手を使って口元に配置した状態を示す正面図である。
図3】(A)は、図1に示したシートを拡大した図であり、(B)は、上下方向を回転軸として表裏を反転させたシートを示す図である。
図4】(A)は、飛沫拡散防止具を構成する紐部材のシートに対する取り付け部分を示す正面図であり、(B)は、紐部材の先端部分を示す平面図である。
図5】(A)~(E)は、首から吊り下げた状態のシートを口元に配置するまでの使用者の手及びシートの動きの一例を説明するための説明図である。
図6】(A)は、別の実施の形態に係る飛沫拡散防止具を構成するシートを使用者の首から吊り下げた状態を示す正面図であり、(B)は、シートを使用者の手を使って口元に配置した状態を示す正面図である。
図7】(A)は、第2実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す斜視図であり、(B)は、第3実施形態に係る飛沫拡散防止具を示す斜視図である。
図8】別の実施形態に係る飛沫拡散防止具を構成するシートを示す正面図である。
図9】(A)又は(B)は、別の実施形態に係る飛沫拡散防止具を構成するシートを示す正面図である。
図10】(A)又は(B)は、更に別の実施形態に係る飛沫拡散防止具を構成するシートを示す正面図である。
図11】第3実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す概略図であり、(A)は正面図を示し、(B)は背面図を示している。
図12】飛沫拡散防止具を構成する被覆部材を口元に配置した状態を示す正面図である。
図13】第4実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す背面図である。
図14】(A)又は(B)は、第5実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す背面図である。
図15】別の実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す背面図である。
図16】(A)又は(B)は、第6実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す背面図である。
図17】第7実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す正面図である。
図18】(A)又は(B)は、第7実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す背面図である。
図19】(A)~(C)は、装飾部の別の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の一実施形態に係る飛沫拡散防止具について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す正面図である。図中1は、飛沫拡散防止具を示している。飛沫拡散防止具1は、使用者の開いた口を覆うことが可能な大きさのシート2と、当該シート2を使用者の首から吊り下げるための紐部材3と、を含んで構成されている。
【0049】
シート2は、使用者が声を発する際に、手を使って口元に配置されるものである。シート2は、透明な樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン)で形成されている。シート2の下隅部C1に、紐部材3を取り付けるための穿孔21が設けられ、当該穿孔21に、紐部材3が取り付けられている。従って、紐部材3は、シート2の下隅部C1に取り付けられている。
【0050】
図2(A)は、シート2を使用者の首から吊り下げた状態を示す正面図であり、図2(B)は、シート2を使用者の手を使って口元に配置した状態を示す正面図である。シート2の上下方向(図中V方向)は、使用者Uの口が開いた状態で、少なくとも鼻尖から下唇までを十分覆うことが可能な大きさである。シート2の上下方向の大きさについては、例えば、使用者Uの目は覆わず、口が開いた状態でも、鼻尖から下顎までが隠れる程度が好ましい。使用者Uは、平均的な成人男性がモデルである。
【0051】
シート2の幅方向(図中W方向)の大きさは、成人男性の平均的な顔幅相当(約16cm)又はそれに近い大きさが好ましい。シート2の幅は、使用者Uの顔幅より小さくても、飛沫感染防止の効果は十分見込まれるかもしれないが、シート2の幅があまりに短いと、対面する人が飛沫拡散の防止効果に不安を抱くおそれがある。例えば、シート2が少し横にずれただけで、使用者Uの口角がシート2からはみ出て見えてしまうのは好ましくない。
【0052】
シート2のサイズとしては、例えば、多くの人が慣れ親しんだサイズが、使いやすく、好ましい。例えば、四六判の書籍サイズ(W188mm×V127mm)やB6判(W182mm×V128mm)、A5判(W210mm×V148mm)などが挙げられる。
【0053】
図3(A)は、図1に示したシート2を拡大した図であり、図3(B)は、上下方向を回転軸として表裏を反転させたシート2を示す図である。シート2には、その下隅部C1(オモテ面で向かって左下)に、穿孔21が設けられている。また、シート2のオモテ面には、向かって左上に、シート2の表裏及び上下の区別を示す、視覚上の目印22が形成されている。具体的には、シート2のオモテ面に、目印22として「防止シート」という文字が印刷されている。
【0054】
シート2は、透明な樹脂で形成されているので、目印22はウラ面からも見ることは可能であるが、「防止シート」の文字は鏡文字になっている。そのため、使用者Uは目印22からシート2の表裏を区別することができる。また、使用者Uは「防止シート」の上下の向きから、シート2の上下を区別することもできる。なお、シート2の表裏及び上下の区別を示す目印22は、文字に限定されない。図形や記号等の目印であってもよいし、表面のデザインや形状、模様であってもよい。また、視覚上の目印ではなく、触覚上の目印であってもよい。例えば、シート2のウラ面だけに小さな突起を多数作成して、目印を形成するようにしてもよい。
【0055】
図4(A)は、紐部材3のシート2に対する取り付け部分を示す正面図であり、図4(B)は、紐部材3の先端部分を示す平面図である。紐部材3は、シート2を首から吊り下げるための帯状部材31と、シート2と帯状部材31とを連結するための連結部32と、を含んで構成されている。
【0056】
連結部32は、帯状部材31に取り付けられる第1部材33と、シート2に取り付けられる第2部材34と、を有する。第1部材33と、第2部材34とは互いに回転可能に構成されている。
【0057】
第2部材34は、図4(B)に示すように、フック部を有する。当該フック部をシート2の穿孔21に挿通して引っ掛け、シート2と帯状部材31とを連結することで、シート2に紐部材3が取り付けられる。上記フック部は弾性で、紐部材3はシート2から取り外し可能に構成されている。
【0058】
図5(A)~(E)は、首から吊り下げた状態のシート2を口元に配置するまでの使用者Uの手及びシート2の動きの一例を説明するための説明図である。図5(A)は、シート2が使用者Uの手によって支持されずに、首から吊り下げられた状態を示している。図5(B)は、シート2の下隅部C1が使用者Uの右手で掴まれた状態を示し、図5(C)又は図5(D)は、シート2が口元に配置されるまでの途中の状態を示し、そして、図5(E)は、シート2が口元に配置された状態を示している。
【0059】
紐部材3はシート2の下隅部C1に取り付けられているので、シート2が使用者Uの手によって支持されず、首から吊り下げられた状態であるときは、図5(A)に示したように、シート2の下隅部C1の位置は、シート2の最上点にある。一方、シート2が口元に配置された状態では、図5(E)に示したように、シート2の下隅部C1の位置は、シート2の最下点にある。つまり、下隅部C1を掴む使用者Uの右手の動く距離は短い。また、図5(B)~(E)に示したように、使用者Uの手首と肘の動きで、回転運動によって、シート2は口元に移動する。
【0060】
上記第1実施形態によれば、シート2は、その上下方向(V方向)の大きさが、使用者Uの口が開いた状態で、少なくとも鼻尖から下唇までを十分覆うことが可能な大きさで、上記非特許文献2に記載されている「壁」のような役割を果たすことができるので、使用者Uが声を発する際に、シート2を口元に配置することで、使用者Uの口から出てくる飛沫の拡散が防止される。特に、使用者Uと対面する人への飛沫の到達を防ぐことができる。これにより、会食の場での会話による飛沫感染のリスクを大幅に下げることが可能になる。
【0061】
また、従来のように、フェイスシールドを常時着用するのではなく、必要なとき(声を発するとき)にだけ、シート2を口元に配置すればよいので、食事に対する不便さはない。シート2は、首から吊り下げられるので、テーブル等に置いておく必要はなく、置くスペースにも困らず、シート2の行方が分からなくなる心配もない。また、首から吊り下げている限りにおいては、他人の使用するシート2を誤って使用する可能性は極めて低い。
【0062】
シート2を口元に配置するまでの使用者Uの動きや、シート2を口元に配置している状態での見た目の良し悪しについては、それぞれの好みがあるので、判断は難しい。しかしながら、シート2を口元に配置するのは、声を発する時だけで良いので、もし仮に、見た目が悪かったとしても、その時間は限定される。
【0063】
よって、見た目の悪さについては、従来のフェイスシールドと比べ、大幅に改善される。個人的な意見であるが、シート2を口元に配置するまでの動き(図5に示した回転運動)は、品の良い仕草に映るかもしれない。従って、食事に対する不便さを解消し、見た目の悪さも改善できて、飛沫の拡散を防止することできる。
【0064】
また、シート2には、その表裏の区別を示す目印22が形成され、使用者Uがシート2の表裏を過誤しないようになっている。これにより、シート2の両面が汚染される可能性が下がり、汚染されたシート2を他人が触れることによる接触感染のリスクを下げることができる。また、シート2は、樹脂で形成されているので、再利用しやすい。また、シート2は、透明な樹脂で形成されているので、使用者Uの口元をシート2で覆っても、対面する人から口元が見えるので、コミュニケーションが取りづらくなるのを防止することができる。
【0065】
なお、シート2については、透明でなくてもよい。また、シート2の素材は、樹脂に限定されず、その他の素材であってもよい。例えば、シート2が紙で形成されていれば、飛沫拡散防止具1の軽量化を図ると共に、生産コストを抑えることができる。新型コロナウイルスは、プラスチックの表面で最大72時間、ボール紙で最大24時間生存するとの報告がある。印刷物(紙類)については、3時間後に死滅した、との報告もある。いずれにしても、新型コロナウイルスは、紙の方がプラスチックよりも生存期間は短いので、感染予防の観点から言えば、取り扱いが容易になる。よって、流通や保管に要するコストについても大幅に抑えることができる。
【0066】
次に、シート2を口元に配置するまでの使用者Uの動きの一例について説明する。使用者Uは、声を発する際、例えば、シート2の上端に注目し、その部分を鼻尖に当てる、又は近付ける。そうすることで、使用者Uの口元はシート2で適切に覆われる。従って、シート2で口元を覆う作業は極めて単純で、簡単である。
【0067】
また、図5(B)~(E)に示したように、使用者Uの手の動く距離は短く、回転運動によって、シート2を口元に配置することができる。人間の動きは関節を中心にした回転運動のみであるので、人間工学的な観点から言って、回転運動の方が直線運動よりも実施しやすく、高速に行える。従って、人間工学的な観点からも、疲れにくい、行いやすい動きで、使用者Uはシート2を口元に移動させることができる。
【0068】
図6(A)は、別の実施の形態に係る飛沫拡散防止具を構成するシートを使用者Uの首から吊り下げた状態を示す正面図である。図中1Aは、飛沫拡散防止具を示している。飛沫拡散防止具1Aは、使用者Uの開いた口を覆うことが可能な大きさのシート2Aと、当該シート2Aを使用者Uの首から吊り下げるための紐部材3と、を含んで構成されている。
【0069】
シート2Aは、その上端中央部に、紐部材3を取り付けるための穿孔21が設けられている。図6(B)に示したように、シート2Aを口元に配置するには、使用者Uは、回転運動ではなく、直線運動によって、シート2を口元に移動させることになる。
【0070】
また、上端中央部に紐部材3が取り付けられる場合、図6(B)に示したように、シート2Aが口元に配置されると、紐部材3がシート2Aと口元との間に位置し、紐部材3が邪魔になって、シート2Aと口元との隙間が大きく広がり、飛沫拡散の防止効果が低下するおそれがある。また、紐部材3が汚染されるリスクが高くなる。そのため、紐部材3は、上記第1実施形態に係る飛沫拡散防止具1を構成するシート2のように、下隅部C1に取り付けるのがよい。すなわち、紐部材3は、シート2の幅方向の端部や下端部に取り付けるのが好ましい。
【0071】
図7(A)は、第2実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す斜視図であり、図7(B)は、第3実施形態に係る飛沫拡散防止具を示す斜視図である。図中1Bは、上記第2実施形態に係る飛沫拡散防止具を示し、図中1Cは、上記第3実施形態に係る飛沫拡散防止具を示している。飛沫拡散防止具1B又は1Cは、使用者の開いた口を覆うことが可能な大きさのシート2B又は2Cと、当該シート2B又は2Cを使用者の首から吊り下げるための紐部材3と、を含んで構成されている。
【0072】
シート2B又は2Cは、使用者が声を発する際に、手を使って口元に配置されるものである。シート2B又は2Cは、透明な樹脂で形成されている。シート2B又は2Cの下隅部C1に、紐部材3を取り付けるための穿孔21が設けられ、当該穿孔21に、紐部材3が取り付けられている。従って、紐部材3は、シート2B又は2Cの下隅部C1に取り付けられている。
【0073】
また、シート2B又は2Cは、口元に配置されたときに、幅方向の中央が前方に凸となり、顔に沿うように湾曲又は屈曲した形状に形成されている。
【0074】
上記第2又は第3実施形態によれば、顔を沿うような形状のシート2B又は2Cで口元を覆うことができるので、使用者の口から出てくる飛沫の拡散を、前方だけでなく、左右の方向にも、より適切に防止することが可能になる。もちろん、これらシートについても、素材は樹脂に限定されず、紙などで形成されてもよい。
【0075】
なお、別の実施形態では、図8に示すように、上記屈曲した形状に折り曲げるための加工が施されているシート2Dを採用するようにしてもよい。シート2Dには、折り曲げ線23が複数形成され、使用者は折り曲げ線23に沿って、シート2Dを折り曲げることによって、図7(B)に示したようなシート2Cを得ることができる。
【0076】
また、ここまで、紐部材3を取り付けるための穿孔21を、シートに1つだけ設ける場合について説明しているが、穿孔21についてはシートに複数設けてもよい。例えば、図9(A)に示すように、シート2Eに、向かって左下の下隅部C1だけでなく、向かって右下の下隅部C2にも穿孔21を設け、紐部材3の取り付け位置を変更可能にすれば、利き手に応じた位置に紐部材3を取り付けることができる。
【0077】
また、ここまで、紐部材3をシートに取り付けるために、当該シートに穿孔21を設ける場合について説明しているが、別の実施形態では、図9(B)に示すように、使用者の首から吊り下げるための紐部材を引っ掛けるための引掛部24をシート2Fに設けるようにしてもよい。この場合、上記紐部材に、シート2Fに連結させるための連結部は不要であり、紐部材を構成する帯状部材を引掛部24に直接引っ掛ければよい。
【0078】
また、更に別の実施形態では、例えば、図10(A)又は(B)に示すように、シートを手で持つ位置を示す目印を形成するようにしてもよい。図10(A)は、穿孔21が設けられた支持部25を有するシート2Gを示している。支持部25は、シート2Gを支持するもので、シート2Gを手で持つ位置を示す目印となり、シート2Gの下隅部から延設されている。図10(B)は、その下隅部C1の近くに「右手」のイラスト26が描かれたシート2Hを示している。イラスト26は、シート2Hを手で持つ位置を示す目印である。シートを手で持つ位置を示す目印を形成することで、シートを持つための適切な位置を使用者が容易に認識することができる。
【0079】
図11は、第3実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す概略図であり、(A)はその正面図であり、(B)はその背面図である。図中4は、飛沫拡散防止具を示している。飛沫拡散防止具4は、使用者の開いた口を覆うことが可能な大きさの被覆部材5と、その一端が被覆部材5の裏面に取り付けられ、当該被覆部材5の幅方向(図中W方向)と交差する上下方向(図中V方向)に延びる棒状部材6と、を含んで構成されている。ここでは、棒状部材6が、被覆部材5の裏面に取り付けられている場合を示しているが、棒状部材6は、被覆部材5の表面に取り付けても構わない。
【0080】
被覆部材5は、使用者が声を発する際に、棒状部材6を把持して口元に配置されるものである。また、被覆部材5には、当該被覆部材5を口元に配置したときに使用者と対面する人から視認可能となる装飾が施されている。装飾としては、平面的な形状でも、立体的な形状でもよい。また、アクセサリーや羽根、花などを取り付けて、被覆部材5に装飾を施してもよい。例えば、被覆部材5に、煌びやかなベネチアンマスクを彷彿とさせる装飾を施す。被覆部材5の主たる部分の素材としては、樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ABS樹脂)などが挙げられる。
【0081】
図12は、被覆部材5を口元に配置した状態を示す正面図である。被覆部材5の上下方向(図中V方向)の大きさは、使用者U2の顔面の上半分を覆わないが、使用者U2の口が開いた状態で、少なくとも鼻尖から下唇までを十分覆うことが可能な大きさである。
【0082】
上記第3実施形態によれば、被覆部材5は、その上下方向(V方向)の大きさが、使用者U2の口が開いた状態で、少なくとも鼻尖から下唇までを十分覆うことが可能な大きさで、上記非特許文献2に記載されている「壁」のような役割を果たすことができるので、使用者U2が声を発する際に、被覆部材5を口元に配置することで、使用者U2の口から出てくる飛沫の拡散が防止される。特に、使用者U2と対面する人への飛沫の到達を防ぐことができる。これにより、会食の場での会話による飛沫感染のリスクを大幅に下げることが可能になる。
【0083】
また、従来のように、フェイスシールドを常時着用するのではなく、必要なとき(声を発するとき)にだけ、被覆部材5を口元に配置すればよいので、食事に対する不便さはない。
【0084】
被覆部材5には、装飾が施されているので、見た目を優雅なものにすることが可能になる。見た目が良くなれば、飛沫拡散防止具4の使用率は高くなるはずである。特に、女性には、機能だけでなく、見た目も重要である。使用率の増大は、飛沫拡散量の減少に繋がり、延いては、新型コロナウイルスの新規感染者数の増加を抑えることができる。
【0085】
従って、食事に対する不便さを解消し、見た目の悪さも改善できて、飛沫の拡散を防止することできる。
【0086】
使用者U2の表情が分からなくなると、コミュニケーションを図るのが難しくなるが、被覆部材5の上下方向の大きさは、使用者U2の顔面の上半分を覆わない大きさで、被覆部材5で顔面全体は覆われないので、使用者U2の表情が全く分からなくなることはない。従って、円滑なコミュニケーションを可能にする会食を実現することができる。
【0087】
図13は、第4実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す背面図である。図中4Aは、上記第4実施形態に係る飛沫拡散防止具を示している。飛沫拡散防止具4Aは、使用者の開いた口を覆うことが可能な大きさの被覆部材5Aと、その一端が被覆部材5Aに取り付けられ、当該被覆部材5Aの幅方向(図中W方向)と交差する上下方向(図中V方向)に延びる棒状部材6Aと、を含んで構成されている。
【0088】
棒状部材6Aは、複数の部材から構成されている。ここでは、棒状部材6Aは、固定部材61と自由部材63とを含んで構成されている。固定部材61の一端は、被覆部材5Aの裏面に固定され、他端には連結凸部62が設けられている。一方、自由部材63は、固定部材61と簡単に連結させることが可能であり、その一端に連結凹部64が設けられている。連結凸部62と連結凹部64とを嵌め合わせることで、両者は連結される。
【0089】
上記第4実施形態によれば、棒状部材6Aが複数の部材から構成され、これらの着脱が可能なので、被覆部材5Aを支持する部材の長さを調整することができる。これにより、状況の応じた使い分けが可能となり、飛沫拡散防止具4Aの使い勝手を良くすることができる。
【0090】
図14(A)又は(B)は、第5実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す背面図である。図中4Bは、上記第5実施形態に係る飛沫拡散防止具を示している。飛沫拡散防止具4Bは、使用者の開いた口を覆うことが可能な大きさの被覆部材5Bと、その一端が被覆部材5Bに取り付けられ、当該被覆部材5Bの幅方向(図中W方向)と交差する上下方向(図中V方向)に延びる棒状部材6Bと、を含んで構成されている。
【0091】
被覆部材5Bの裏面に、当該被覆部材5Bの幅方向(W方向)の中央から離れた位置に、棒状部材6Bを取り付けるための取付部51が形成されている。取付部51には、棒状部材6Bの端部を挿入するための挿入孔52が形成され、挿入孔52に棒状部材6Bの端部を挿入することで、棒状部材6Bを被覆部材5Bに取り付けることができるようになっている。すなわち、棒状部材6Bは、被覆部材5Bに対して着脱可能に構成されている。
【0092】
上記第5実施形態によれば、棒状部材6Bは、被覆部材5Bに対して着脱可能に構成されているので、飛沫拡散防止具4Bをコンパクトにすることができる。これにより、飛沫拡散防止具4Bの持ち運びに対する使用者の負担を軽減することができる。
【0093】
図15は、別の実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す背面図である。図15に示した飛沫拡散防止具4Cでは、被覆部材5Cの裏面に取付部51が2つ設けられている。また、2つの取付部51は、被覆部材5Cの幅方向(図中W方向)の中央線CLを軸にして、線対称となる位置に設けられている。これにより、使用者の利き手に関係なく、持ち易い位置に棒状部材6Cを取り付けることが可能になる。
【0094】
また、図14又は図15に示した、棒状部材6B,6Cについても、図13に示したように、複数の部材から成る組み立て可能な構成にすれば、飛沫拡散防止具4B,4Cをよりコンパクトにすることができる。
【0095】
図16(A)又は(B)は、第6実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す背面図である。図中4Dは、上記第6実施形態に係る飛沫拡散防止具を示している。飛沫拡散防止具4Dは、使用者の開いた口を覆うことが可能な大きさの被覆部材5Dと、その一端が被覆部材5Dに取り付けられ、当該被覆部材5Dの幅方向(図中W方向)と交差する上下方向(図中V方向)に延びる棒状部材6Dと、を含んで構成されている。
【0096】
棒状部材6Dは、被覆部材5Dの裏面に、当該被覆部材5Dの幅方向(W方向)の中央から離れた位置に、ネジ等の回転軸65を介して取り付けられ、幅方向(W方向)及び上下方向(V方向)を含む面方向に、被覆部材5Dに取り付けられた部分(回転軸65)を中心にして回転可能に構成されている。
【0097】
上記第6実施形態によれば、棒状部材6Dを回転させてその大部分を、被覆部材5Dの裏面に移動させることで、飛沫拡散防止具4Dをコンパクトにすることができる。これにより、飛沫拡散防止具4Dの持ち運びに対する使用者の負担を軽減することができる。
【0098】
図17は、第7実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す正面図であり、図18(A)又は(B)は、上記第7実施形態に係る飛沫拡散防止具の一例を示す背面図である。図中4Eは、上記第7実施形態に係る飛沫拡散防止具を示している。飛沫拡散防止具4Eは、使用者の開いた口を覆うことが可能な大きさの被覆部材5Eと、その一端が被覆部材5Eに取り付けられ、当該被覆部材5Eの幅方向(図中W方向)と交差する上下方向(図中V方向)に延びる棒状部材6Eと、を含んで構成されている。
【0099】
また、被覆部材5Eは、部材本体53と、当該部材本体53に着脱可能な、上記装飾が施されている装飾部55と、を含んで構成されている。装飾部55の素材としては、樹脂や紙、革、生地などが挙げられる。
【0100】
部材本体53の表面には、面ファスナー54が設けられ、装飾部55の裏面には、面ファスナー54に対応する面ファスナー56が設けられ、これら面ファスナー54,56によって、装飾部55は部材本体53に対して着脱可能になっている。
【0101】
上記第7実施形態によれば、装飾部55を交換することが可能となるので、使用者はデザインの異なる飛沫拡散防止具を数多く所持しなくても、装飾部55を交換するだけで、デザインの異なるものを使用することができる。これにより、使用率の向上を図ることができる。
【0102】
図19(A)~(C)は、装飾部の別の一例を示す正面図である。装飾部55A~55Cの裏面にはそれぞれ、部材本体53に設けられる面ファスナー54(図17)に対応する面ファスナー56(図示せず)が設けられている。なお、部材本体53と装飾部55との着脱を可能にする構成は面ファスナーに限定されず、その他の構成でもよく、一方に連結凸部を設け、他方に連結凹部を設けても良いし、磁石を利用しても良い。
【0103】
また、本発明は、上記実施形態の構成に限らず、種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0104】
1,1A~1C 飛沫拡散防止具
2,2A~2H シート
3 紐部材
21 穿孔
22 目印
23 折り曲げ線
24 引掛部
C1,C2 下隅部
4,4A~4E 飛沫拡散防止具
5,5A~5E 被覆部材
6,6A~6E 棒状部材
53 部材本体
55 装飾部
65 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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