(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162321
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】複合加工機用旋削加工工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/02 20060101AFI20221017BHJP
B23B 27/16 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B23B27/02 C
B23B27/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067099
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】余湖 健志
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 智博
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046AA08
(57)【要約】
【課題】旋削加工工具を大型化することなく、複数のチップを取り付けることが可能な複合加工機用旋削加工工具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる複合加工機用旋削加工工具の構成は、複数のチップ102・104と、スラスト方向に切削する向きにチップ102・104が取り付けられる工具ホルダ110とを含む旋削加工工具100であって、工具ホルダ110は、工具主軸にチャックされるテーパ部120と、テーパ部120の先端側に配置されるフランジ部130と、フランジ部130の先端側に配置された中段シャンク140と、中段シャンク140の先端側に配置され中段シャンク140より幅が狭い先端シャンク150とを有し、中段シャンク140と先端シャンク150それぞれにチップ102・104が取り付けられることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチップと、スラスト方向に切削する向きに該チップが取り付けられる工具ホルダとを含む複合加工機用旋削加工工具であって、
前記工具ホルダは、
工具主軸にチャックされるテーパ部と、
前記テーパ部の先端側に配置されるフランジ部と、
前記フランジ部の先端側に配置された中段シャンクと、
前記中段シャンクの先端側に配置され該中段シャンクより幅が狭い先端シャンクとを有し、
前記中段シャンクと前記先端シャンクそれぞれにチップが取り付けられることを特徴とする複合加工機用旋削加工工具。
【請求項2】
前記先端シャンクまたは中段シャンクには2つ以上のチップが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の複合加工機用旋削加工工具。
【請求項3】
前記複数のチップのうち1つ以上のチップは、他のチップとは刃物角が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の複合加工機用旋削加工工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチップと、スラスト方向に切削する向きにチップが取り付けられる工具ホルダとを含む複合加工機用旋削加工工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークを切削することによる切削加工が知られている。例えば特許文献1には、旋削加工機に用いられるチップ用バイトが開示されている。特許文献1のチップ用バイトでは、1つのバイトに対して複数のチップを相互に間隔を設けて取り付け可能となっている。特許文献1によれば、ワークの複数の箇所を一度で加工することができるため、加工作業におけるバイトの取替作業や、取替後の寸法調整にかかる時間を削減することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のチップ用バイトを用いることによってバイトに複数のチップを取り付けることができる。しかしながら、バイトに取り付けたチップとワークとの角度や位置が固定であるため、バイト自体が大型化し、ひいては刃物台の大型化を招いてしまう。また工具の自動交換の対応ができないため、特許文献1の技術は、複合加工機のような主軸を付属する加工機には適用することができない。
【0005】
そこで発明者らは、複合加工機(旋削加工機)においても複数のチップを取り付けるべく検討を行った。しかし、この場合、複数のチップ同士の干渉や、隣接するチップとワークとの干渉を防ぐためには、チップを取り付けるシャンクの径を広くせざるを得なかった。すると、シャンクひいては旋削加工機が大型化してしまう。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、旋削加工工具を大型化することなく、複数のチップを取り付けることが可能な複合加工機用旋削加工工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明にかかる複合加工機用旋削加工工具の代表的な構成は、複数のチップと、スラスト方向に切削する向きにチップが取り付けられる工具ホルダとを含む旋削加工工具であって、工具ホルダは、工具主軸にチャックされるテーパ部と、テーパ部の先端側に配置されるフランジ部と、フランジ部の先端側に配置された中段シャンクと、中段シャンクの先端側に配置され中段シャンクより幅が狭い先端シャンクとを有し、中段シャンクと先端シャンクそれぞれにチップが取り付けられることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、1つの旋削加工工具に対してスラスト方向に切削する向きに2つ以上のチップが取り付けられる。このとき、シャンクが2段になってるため、1つのシャンクに複数のチップを取り付ける場合よりもシャンクの径が狭くてもチップ間の干渉を防ぐことができる。したがって、工具ホルダひいては旋削加工工具を大型化することなく、複数のチップを取り付けることが可能となる。
【0009】
上記先端シャンクまたは中段シャンクには2つ以上のチップが取り付けられているとよい。これにより、例えば同じ刃物角のチップを先端シャンクまたは中段シャンクに複数取り付ければ、チップ交換の頻度を減らすことができる。
【0010】
上記複数のチップのうち1つ以上のチップは、他のチップとは刃物角が異なるとよい。かかる構成によれば、工具交換せずに異なる加工工程を連続的に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、旋削加工工具を大型化することなく、複数のチップを取り付けることが可能な複合加工機用旋削加工工具を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態にかかる旋削加工工具の全体斜視図である。
【
図2】本実施形態にかかる旋削加工工具の三面図である。
【
図3】本実施形態にかかる旋削加工工具を用いたワークの加工について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態にかかる複合加工機用旋削加工工具(以下、旋削加工工具100と称する)の全体斜視図である。
図2は、本実施形態にかかる旋削加工工具100の三面図である。
図1および
図2に示す旋削加工工具100は、複数のチップ102・104と、スラスト方向に切削する向きにチップ102・104が取り付けられる工具ホルダ110とを含んで構成される。
【0015】
工具ホルダ110は、テーパ部120、フランジ部130、中段シャンク140および先端シャンク150を有する。テーパ部120は、工具主軸(不図示)にチャックされる部位である。テーパ部120の先端側にはフランジ部130が配置されていて、かかるフランジ部130の吐出口132からチップ102・104に向かってクーラントが噴出される。フランジ部130の先端側には中段シャンク140が配置されていて、中段シャンク140の先端側には中段シャンク140より幅が狭い先端シャンク150が配置されている。
【0016】
すなわち本実施形態の旋削加工工具100ではシャンクは2段になっている。そして、中段シャンク140および先端シャンク150の取付面142・152(取付面は、各シャンクの先端側の端面である)にはそれぞれチップ取付部144・154が形成されていて、そこにチップ102・104が取り付けられる。このとき、シャンクが2段になってるため、1つのシャンクに複数のチップを取り付ける場合よりも狭い面積で複数のチップ同士の干渉を好適に防ぐことができる。したがって、工具ホルダ110ひいては旋削加工工具100を大型化することなく、複数のチップ102・104を取り付けることが可能となる。
【0017】
また本実施形態の旋削加工工具100では、中段シャンク140には同一の刃物角のチップ102が2つ取り付けられている。これにより、一方のチップ102が消耗した際には、他方のチップ102を用いて切削加工を継続することができる。したがって、チップ102の交換頻度を減らすことができ、交換作業に要する時間を削減することが可能となる。
【0018】
さらに本実施形態の旋削加工工具100では、先端シャンク150には異なる刃物角のチップ102・104が取り付けられている。これにより、チップ102を用いて切削する工程およびチップ104を用いて切削する工程を工具交換を行うことなく連続して行うことが可能となる。かかる構成によってもチップ102・104の交換頻度を減らすことができ、交換作業に要する時間を削減することができる。
【0019】
図3は、本実施形態にかかる旋削加工工具100を用いたワーク106の加工について説明する図である。
図3(a)に示すようにワーク106を切削加工する際には、回転しているワーク106に対して旋削加工工具100のチップ102・104を当てる。このとき、旋削加工工具100には白矢印で示しているようにスラスト方向に荷重がかかる。
【0020】
そして、工具主軸を回転させることで、
図3(b)に示すように加工に使用するチップ102・104を切り替えることができる。これにより、異なる加工工程を連続して行うことができる。また工具主軸を回転させることで、工具の右勝手・左勝手を切り替えたり、切込み角を変化させながら加工したりすることもできる。また工具が摩耗した場合には、同じ刃物角のチップに切り替えることにより、チップ交換の頻度を減らすことができる。
【0021】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、複数のチップと、スラスト方向に切削する向きにチップが取り付けられる工具ホルダとを含む複合加工機用旋削加工工具として利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
100…旋削加工工具、102…チップ、104…チップ、106…ワーク、110…工具ホルダ、120…テーパ部、130…フランジ部、132…吐出口、140…中段シャンク、142…取付面、144…チップ取付部、150…先端シャンク、152…取付面、154…チップ取付部