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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162330
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】蓋材
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20221017BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067113
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】日下 みずほ
(72)【発明者】
【氏名】坂口 梨紗
【テーマコード(参考)】
3E013
3E086
【Fターム(参考)】
3E013BA06
3E013BB06
3E013BC04
3E013BD13
3E013BE01
3E013BF05
3E013BF22
3E013BF34
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB85
3E086CA01
(57)【要約】
【課題】電子レンジで加熱したとき、過剰の水蒸気を放出し、破袋を防ぎつつ蒸らしを行うことができる蓋材であって、しかも、輸送時の不用意な開口を防ぐことができる蓋材を提供すること。
【解決手段】基材フィルム11にシーラント層12を積層した積層フィルムで蓋材を構成する。そして、基材フィルム11の内部に達し、かつ、シーラント層12を貫通しない深さの蒸気抜き用脆弱加工線10xを設け、この脆弱加工線10xの引張破断強度を18N/15mm以下とすると共に、先端が丸いネジを蓋材の中央に突き刺して前記脆弱加工線10xが裂けたときの負荷を突刺し破断強度として、これを60N以上とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムにシーラント層を積層した積層フィルムで構成され、前記基材フィルムの内部に達し、かつ、シーラント層を貫通しない深さの蒸気抜き用脆弱加工線が設けられた蓋材であって、
この脆弱加工線の引張破断強度が18N/15mm以下であり、
先端が丸いネジを蓋材の中央に突き刺して前記脆弱加工線が裂けたときの負荷を突刺し破断強度として、これが60N以上であることを特徴とする蓋材。
【請求項2】
前記突刺し破断強度が150N以下であることを特徴とする請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
前記脆弱加工線が基材フィルムを貫通していることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓋材。
【請求項4】
前記基材フィルムが多層構造を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を包装したまま電子レンジで加熱して、加熱に伴って発生した水蒸気を包装体外部に放出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理済み又は半調理済みの食品を常温、低温、あるいは冷凍保存可能に包装容器に収容密封し、開封せずに電子レンジで加熱して、食べられる状態にする包装体が知られている。
【0003】
包装体を開封せずに電子レンジで加熱すると、包装体内の水分が水蒸気になり、体積が増加する。したがって、水蒸気が逃げられる隙間がないと破裂のおそれがある。一方、内容物が半調理状態等の場合には、単に加熱するだけでなく、発生した水蒸気による蒸らし等が必要となる場合がある。この場合、蒸気が逃げる孔が過度に大きいと、蒸らしが十分行われず、風味が落ちる等の問題がある。
【0004】
この用途に対応した包装体はいくつか知られている。いずれも積層フィルムから構成された包装容器を用いるのが一般的であり、内圧が高まると、積層フィルムの一部に裂け目ができて、この裂け目を蒸気抜き孔として水蒸気を逃がすことにより破袋を防止する。
【0005】
電子レンジによる加熱時に蒸らしも可能な包装体としては、例えば、特許文献1~4に記載のものが知られている。特許文献1~4に記載の包装体は、ポリエステルフィルム等の基材フィルムの内側にポリオレフィン系樹脂の内層フィルムを積層した積層フィルムから蓋材を構成して、その蓋材に、基材フィルム側からレーザーを照射することにより、基材フィルムの内部に達し、かつ、内層フィルムを貫通しない深さの蒸気抜き用脆弱加工線を形成している。この包装体においては、電子レンジで加熱すると、基材フィルムが前記脆弱加工線で開くと共に内層フィルムが薄く引き延ばされ、こうして薄く引き延ばされた内層フィルムが部分的に裂けてそこに小さな貫通孔が形成される。そして、この結果、過度に水蒸気が逃げず、破袋を防ぎつつ蒸らしを行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/061651号
【特許文献2】特開2015-13441号公報
【特許文献3】特開2020-26095号公報
【特許文献4】特許第6167702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、前記蒸気抜き用脆弱加工線を設けた蓋材を使用することにより、過剰の水蒸気を放出して、しかも、破袋を防ぎつつ蒸らしを行うことができる。しかし、その一方、この蓋材を適用した包装体を輸送したとき、例えば、落下等の原因で外部から掛かる衝撃や外力によって、前記蒸気抜き用脆弱加工線に裂け目ができることがあった。
【0008】
そこで、本発明は、前記蒸気抜き用脆弱加工線を設けた蓋材の利点を生かしたまま、輸送時の不用意な開口を防ぐことができる蓋材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、基材フィルムにシーラント層を積層した積層フィルムで構成され、前記基材フィルムの内部に達し、かつ、シーラント層を貫通しない深さの蒸気抜き用脆弱加工線が設けられた蓋材であって、
この脆弱加工線の引張破断強度が18N/15mm以下であり、
先端が丸いネジを蓋材の中央に突き刺して前記脆弱加工線が裂けたときの負荷を突刺し破断強度として、これが60N以上であることを特徴とする蓋材である。
【0010】
次に、請求項2に記載の発明は、前記突刺し破断強度が150N以下であることを特徴とする請求項1に記載の蓋材である。
【0011】
次に、請求項3に記載の発明は、前記脆弱加工線が基材フィルムを貫通していることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓋材である。
【0012】
次に、請求項4に記載の発明は、前記基材フィルムが多層構造を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の蓋材である。
【発明の効果】
【0013】
後述する実施例及び比較例から分かるように、脆弱加工線の引張破断強度が18N/15mm以下の場合、この蓋材を適用した包装体を電子レンジ加熱したとき、脆弱加工線に貫通孔が発生して、破袋を防ぎつつ蒸らしを行うことができる。
【0014】
しかし、この場合であっても、前記突刺し破断強度が60Nに満たない場合には、前記包装体を収容した段ボール箱が落下したとき、脆弱加工線で開いてしまうことがある。
【0015】
一方、本発明の蓋材にあっては、脆弱加工線の引張破断強度が18N/15mm以下であり、しかも、突刺し破断強度が60N以上であるため、この蓋材を適用した包装体を電子レンジ加熱したとき破袋を防ぎつつ蒸らしを行うことができ、しかも、輸送の際に落下等の衝撃や外力が掛った場合でもその不用意な開口を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明の蓋材の具体例に係り、図1(a)はその平面図、図1(b)は要部断面図である。
図2図2は本発明の蓋材を適用したカップ容器の具体例の斜視図である。
図3図3は本発明の蓋材の具体例に係り、脆弱加工線に貫通孔が発生したときの説明用平面図である。
図4図4は本発明の蓋材の他の具体例の要部断面図である。
図5図5は突刺し破断強度の測定方法を説明するための説明用斜視図である。
図6図6は落下試験の方法を説明するもので、図6(a)は、紙箱に収容したカップ容器の配列状態を示す説明用平面図、図6(b)は前記紙箱の積み重ね状態を示す説明用斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の具体例を説明する。図1は本発明の蓋材の第1の具体例に係り、図1(a)はその平面図、図1(b)は要部断面図である。また、図2は脆弱加工線に貫通孔が発生したときを説明するための説明用平面図である。
【0018】
図1(a)及び図1(b)から分かるように、この蓋材10は、基材フィルム11にシーラント層12を積層した積層フィルムで構成されている。そして、その基材フィルム11には、脆弱加工線10xが設けられている。
【0019】
シーラント層12は包装体製造の際にヒートシール層としての役割を果たすものである。また、この包装体を電子レンジ加熱した際には、脆弱加工線10xの位置で適度に伸びて多数の微小孔を発生させる役割を果たす。また、脆弱加工線10xをレーザー照射によって形成する場合には、このレーザー光を吸収しないことを必要とする。このような内層フィルム11としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が使用できる。また、シールされた後に被着体から容易に剥離が可能なイージーピールフィルム等を用いて形成しても良い。具体的には、熱接着性のある樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂)と、この樹脂に非相溶もしくは難相溶の樹脂とが混合され海島構造を形成したポリマーアロイからなる樹脂フィルムや、このような樹脂層を含む多層フィルムがイージーピールフィルムとして市販されている。
【0020】
基材フィルム11は単層構造又は多層構造の樹脂フィルムで構成することができる。単層構造の樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムあるいはポリプロピレンフィルム等が例示できる。また、多層構造の樹脂フィルムとしては、これらポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等を複数積層して多層構造としたものを使用することもできる。また、これらに他の樹脂層を積層して多層構造としたものを使用することも可能である。図1に示す基材フィルム11は、外層フィルム11と中間層フィルム11との2層構造を有するものである。
【0021】
基材フィルム11には印刷インキ層を設けることができるが、この場合には、基材フィルム11として多層構造のフィルムを採用して、これら基材フィルム11を構成する各層の間に印刷インキ層を配置することが望ましい。例えば、外層フィルム11に印刷インキ層を印刷し、その印刷面に中間層フィルム11を積層して蓋材10用の積層フィルムとすることができる。また、逆に、中間層フィルム11に印刷インキ層を印刷し、その印刷面に外層フィルム11を積層して蓋材10用の積層フィルムとすることもできる。
【0022】
なお、金属箔や真空蒸着層を一部に含む多層構造のフィルムを基材フィルム11としてもよい。真空蒸着層としては、金属の真空蒸着層のほか、無機酸化物の真空蒸着層が例示できる。例えば、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムの真空蒸着層である。
【0023】
前述のように基材フィルム11には蒸気抜き用脆弱加工線10xが設けられている。この脆弱加工線10xは電子レンジ加熱の際に、その一部に微小な貫通孔を形成して、この微小孔から水蒸気を放出する役割を果たすもので、基材フィルム11の内部に達してシーラント層12を貫通しない深さに設ける必要がある。この脆弱加工線10xは基材フィルム11を貫通する深さに設けてもよいし、貫通しない深さに設けてもよい。この第1の具体例では、図1(b)に示すように、外層フィルム11と中間層フィルム11との2層構造を有する基材フィルム11を貫通するように脆弱加工線10xが設けられている。一方、図4に示す第2の具体例では、脆弱加工線10xは、外層フィルム11と中間層フィルム11との2層構造を有する基材フィルム11を貫通しておらず、外層フィルム11を貫通して中間層フィルム11の中間部に達する深さに設けられている。
【0024】
このような脆弱加工線10xは、例えば基材フィルム11とシーラント層12とを積層した後、レーザー光線を照射して基材フィルム11の全部又は大部分を除去することによって、煩雑な工程を要することなく、安定して脆弱加工線10xを設けることが可能である。また、レーザー光線によって脆弱加工線10xを線状に形成した場合には、レーザー光線の出力の周期的変動により、脆弱加工線10xを形成する際にできる溝に深い部分と浅い部分とが繰り返し形成され、このため、電子レンジ加熱した際に、溝の深い部分、すなわち、脆弱加工線10xの薄い部分が早く裂けて、比較的短い間隔で多数の水蒸気放出孔が開くことになる。レーザー光線としては、例えば、炭酸ガスレーザーが使用できる。
【0025】
なお、このようにレーザー光線を照射して脆弱加工線10xを形成する場合には、基材フィルム11として、このレーザー光線を吸収する材質のフィルムを採用することが望ましい。例えば、ポリエステルフィルムあるいはポリアミドフィルムである。基材フィルム11がレーザー光線を吸収し、一方、シーラント層12がレーザー光線を吸収しない場合、これら基材フィルム11とシーラント層12とを積層して積層フィルムを製造した後、レーザー光線を照射して脆弱加工線10xを形成することができる。レーザー光線は基材フィルム11側から照射してもよいし、シーラント層12側から照射してもよいが、図4に示すように脆弱加工線10xを中間層フィルム11の中間部に達する深さに設ける場合には、基材フィルム11側から照射することが望ましい。
【0026】
次に、こうして脆弱加工線10xを設けた蓋材10は、その脆弱加工線10xの位置における引張破断強度が18N/15mm以下であることが必要である。この位置の引張破断強度が18N/15mmをこえる場合には、後述する実施例や比較例から分かるように、この蓋材10を容器にシールして形成した包装体を電子レンジで加熱したとき、この脆弱加工線10xに微小な貫通孔が生じ難く、このため、包装体が破裂するおそれがある。そうでなくても、包装体内側からそのシール線が剥がれて外側に向かって後退する。
【0027】
また、この蓋材10を容器にシールして包装体を形成した後、先端が丸いネジを蓋材10の中央に突き刺して脆弱加工線10xが裂けたときの負荷を突刺し破断強度とするとき、この突刺し破断強度は60N以上であることが必要である。この突刺し破断強度が60N未満である場合には、後述する実施例や比較例から分かるように、輸送中の落下等の原因で前記脆弱加工線10xに裂け目ができて開口してしまうことがある。なお、突刺し破断強度は150N以下であってよい。
【0028】
脆弱加工線10xにおけるこれら引張破断強度や突刺し破断強度は、蓋材10を構成する基材フィルム11とシーラント層12の材質や脆弱加工線10xの深さによって変化する。このため、これら基材フィルム11とシーラント層12の材質、脆弱加工線10xの深さは実験によって決定すべきである。
【0029】
図2に示すように、内容物が充填されたカップ容器Aの開口部に蓋材10を重ね、熱シールにより蓋材10とカップ容器Aの周縁フランジ部とを接合することにより、内容物が充填された密閉状態のカップ容器Aが完成する。
【0030】
内容物が充填されたカップ容器Aを電子レンジに入れて加熱すると、内容物に含まれる水分が水蒸気となって膨張し、カップ容器Aの内圧が上昇する。カップ容器Aの内圧の上昇により、脆弱加工線10xの位置でシーラント層12に裂け目が生じて、蓋材10を厚さ方向に貫通する貫通孔12aが形成される(図3参照)。そして、この貫通孔12aから過剰の水蒸気がカップ容器A外部に放出されるため、その結果、カップ容器Aの内圧の過度の増大を防いで、カップ容器Aの破裂を防止する。なお、蓋材10に形成される貫通孔12aはシーラント層12に形成された裂け目であり、微小なものであるから、内容物を十分に蒸すことができる。
【実施例0031】
(試験例1)
この例では、基材フィルム11として、外層フィルム11と中間層フィルム11との2層構造を有するものを使用した。外層フィルム11と中間層フィルム11とは、いずれも、厚さ12μmのポリエステルフィルムである。
【0032】
また、シーラント層12として、厚さ30μmのイージーピールフィルム(住化プラス
チック(株)製:EX02)を使用した。
【0033】
そして、これら基材フィルム11とシーラント層12とを積層して積層フィルムを製造し、この積層フィルムに炭酸ガスレーザーを照射して、長さ30mmの直線状脆弱加工線10xを形成した。なお、形成された脆弱加工線10xは、図1(b)に示すように、外層フィルム11と中間層フィルム11とを貫通している。一方、炭酸ガスレーザーを吸収しないシーラント層12は傷ついていない。そして、この積層フィルムを所定の形状に打ち抜いて試験例1の蓋材10を製造した。
【0034】
(試験例2)
この例は、中間層フィルム11として厚さ15μmのポリアミドフィルムを使用した他は試験例1と同様である。
【0035】
すなわち、基材フィルム11は2層構造で、この2層のうち、外層フィルム11は厚さ12μmのポリエステルフィルム、中間層フィルム11は厚さ15μmのポリアミドフィルムである。また、シーラント層12は試験例1のシーラント層12と同じ厚さ30μmのイージーピールフィルム(住化プラスチック(株)製:EX02)である。
【0036】
そして、脆弱加工線10xが長さ30mmの直線状である点、脆弱加工線10xが外層フィルム11と中間層フィルム11とを貫通している点も試験例1と同様である。
【0037】
(試験例3)
この例は、イージーピールフィルムの厚さを50μmとしたもので、その他は試験例2と同様である。イージーピールフィルムとしては住化プラスチック(株)製:EX02を使用した。
【0038】
(試験例4)
この例は、シーラント層12を別銘柄の厚さ40μmのイージーピールフィルムとしたもので、その他は試験例2,3と同様である。イージーピールフィルムとしては、オカモト(株)製:TPF01を使用した。
【0039】
(試験例5)
この例は、シーラント層12を更に別銘柄の厚さ50μmのイージーピールフィルムとしたもので、その他は試験例2~4と同様である。イージーピールフィルムとしては、ジェイフィルム(株)製:LMXを使用した。
【0040】
(評価)
これら試験例1~5の蓋材について、まず、脆弱加工線10xの引張破断強度と突刺し破断強度とを測定した。なお、突刺し破断強度は、次のように測定した。
【0041】
すなわち、まず、内容物を収容したカップ容器Aの開口部にそれぞれの蓋材10を重ね、周縁フランジ部とヒートシールして密封した。そして、図5に示すように、その中央にネジBを突き刺して、脆弱加工線10xが裂けたときの負荷を突刺し破断強度とした。使用したネジBは、M6溝無しトラスネジで、先端が丸まったものである。また、その突き刺し速度は300mm/minである。
【0042】
次に、それぞれの蓋材10で密封したカップ容器Aを電子レンジで加熱して、その適性を評価した。そして、脆弱加工線10xの位置に微小な貫通孔12aが多数形成されて、ここから水蒸気が放出されたものを「〇」と評価した。一方、脆弱加工線10xの位置に貫通孔12aが形成されることがなく、カップ容器Aの周縁フランジ部と蓋材10とのヒ
ートシールで形成されたシール線が破断したり、カップ容器Aの内側から外側に向かってそのシール線が剥がれて後退したものを「×」と評価した。
【0043】
次に、蓋材10で密封したカップ容器Aの落下試験を行った。すなわち、まず、図6(a)に示すように、紙箱C中に、2行3列1段に前記カップ容器Aを収容した。なお、図示のように、各カップ容器Aの間には厚紙の仕切りが設けられている。
【0044】
そして、こうして6個のカップ容器Aを収容した紙箱Cを、図6(b)のように、1行2列2段に積み重ねて紙箱集積体とした。この紙箱集積体に含まれるカップ容器Aは、6個×2列×2段=24個である。
【0045】
そして、コンビニエンスストア店頭の冷凍売り場を想定して、この紙箱集積体を約1mの高さから落下させた。落下する向きを変化させてこの落下試験を複数回繰り返した後、梱包を解いて、収容された前記カップ容器Aが脆弱加工線10xの位置で開いていないかどうか確認した。そして、この紙箱集積体に含まれる24個のカップ容器Aのうち、脆弱加工線10xの位置で開いたカップ容器Aが存在する場合を「×」と評価し、存在しない場合を「〇」と評価した。
【0046】
これら脆弱加工線10xの引張破断強度、突刺し破断強度、電子レンジ加熱適性及び落下試験の結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
この結果から、まず、脆弱加工線の引張破断強度が18N/15mmを越える場合(試験例5)には、電子レンジ加熱適性がなく、蓋材10で密封したカップ容器Aを電子レンジで加熱したとき、脆弱加工線10xの位置に貫通孔12aが形成されることがなく、カップ容器Aの周縁フランジ部と蓋材10とのヒートシールで形成されたシール線が破断したり、カップ容器Aの内側から外側に向かってそのシール線が剥がれて後退する。これに対して、前記引張破断強度が18N/15mm以下である場合(試験例1~4)には、蓋材10で密封したカップ容器Aを電子レンジで加熱すると、脆弱加工線10xの位置に貫通孔12aが形成されて、ここから過剰の水蒸気がカップ容器A外部に放出され、このため、カップ容器Aの破裂を防止できることが分かる。
【0049】
次に、このように前記引張破断強度が18N/15mm以下である場合(試験例1~4)でも、突刺し破断強度が60Nに満たない場合(試験例1,2)には、蓋材10で密封したカップ容器Aを紙箱Cに収容して、この紙箱Cを輸送したとき、不用意に落下させると、カップ容器Aが脆弱加工線10xの位置で開いてしまう。これに対して、突刺し破断強度が60N以上である場合(試験例3,4)には、輸送中に前記紙箱Cが落下する等の事故があった場合でも、その開口を防ぐことができる。そして、このため、引張破断強度が18N/15mm以下であり、しかも、突刺し破断強度が60N以上である場合(試験例3,4)には、蓋材10を適用したカップ容器Aを電子レンジ加熱したとき脆弱加工線10xの位置に貫通孔12aが形成されて、過剰の水蒸気を放出することができ、しかも、輸送の際に落下等の衝撃や外力が掛った場合でもその不用意な開口を防ぐことができることが理解できるのである。
【0050】
なお、以上の試験例では、カップ容器Aを使用したが、カップ容器の代わりにトレー等の容器を使用しても同様の結果が得られることは明らかである。
【符号の説明】
【0051】
10: 蓋材 10x:脆弱加工線
11:基材フィルム 11:外層フィルム 11:中間層フィルム
12:シーラント層 12a:貫通孔
A:カップ容器 B:ネジ C:紙箱
図1
図2
図3
図4
図5
図6