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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162334
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】庫内安全監視装置と方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20221017BHJP
   E04H 6/42 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
E04H6/18 601G
E04H6/18 601F
E04H6/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067120
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢貴
(57)【要約】
【課題】出入口扉の全閉後の装置作動中において、乗降室内の車両以外の異物(人、動物及び物品)を確実に検出することができる庫内安全監視装置と方法を提供する。
【解決手段】庫内安全監視方法は、S1~S5の各ステップ(工程)を有する。ステップS1で、装置作動前の乗降室2の内側全域の物体の3次元座標データDに基づき、作動前装置空間V0を記憶する。ステップS2で、機械式駐車装置100の作動に連動して、作動前装置空間V0に基づき、作動中装置空間V1をリアルタイムに計算する。また、ステップS2において、作動中装置空間V1を除く乗降室内を作動時空き空間V2として設定する。ステップS3において、装置作動中に3次元座標データDに基づき、作動時空き空間V2の検出物の有無を監視する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降室の内側全域の物体の3次元座標データをリアルタイムに検出する室内全域センサと、
前記乗降室を有する機械式駐車装置と連動して前記乗降室内を監視する空間監視装置と、を備え、
前記空間監視装置は、
装置作動前の前記3次元座標データに基づき、作動前装置空間を記憶し、
前記機械式駐車装置の作動に連動して、前記作動前装置空間に基づき、作動中装置空間をリアルタイムに計算し、かつ前記作動中装置空間を除く前記乗降室内を作動時空き空間として設定し、
装置作動中に前記3次元座標データに基づき、前記作動時空き空間の検出物の有無を監視する、庫内安全監視装置。
【請求項2】
前記作動前装置空間は、前記乗降室の内側に位置する前記機械式駐車装置の装置静止部と装置可動部の占有空間を含む、請求項1に記載の庫内安全監視装置。
【請求項3】
前記室内全域センサは、前記乗降室の内側の全域にレーザ光を水平走査及び垂直走査してその反射位置の3次元座標を検出する複数の3次元レーザーレーダーである、請求項1に記載の庫内安全監視装置。
【請求項4】
複数の前記3次元レーザーレーダーは、前記乗降室の内壁及び床面との間に異物が侵入できないように設置され、かつ車両が駐車する定位置を間に挟んで位置する、請求項3に記載の庫内安全監視装置。
【請求項5】
(A)装置作動前の乗降室の内側全域の物体の3次元座標データに基づき、作動前装置空間を記憶するステップと、
(B)前記乗降室を有する機械式駐車装置の作動に連動して、前記作動前装置空間に基づき、作動中装置空間をリアルタイムに計算し、かつ前記作動中装置空間を除く前記乗降室内を作動時空き空間として設定するステップと、
(C)装置作動中に前記3次元座標データに基づき、前記作動時空き空間の検出物の有無を監視するステップと、を有する庫内安全監視方法。
【請求項6】
前記作動中装置空間は、前記作動前装置空間のうち前記機械式駐車装置の作動に同期する同期空間を移動方向に移動することで算出する、請求項5に記載の庫内安全監視方法。
【請求項7】
前記作動前装置空間は、車両の入庫時において、前記車両の占有空間を含む、請求項5に記載の庫内安全監視方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置の乗降室内の安全監視手段に係り、特に装置作動中の安全監視手段に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置(例えば、エレベータ方式)には、車両(例えば乗用車)が入出庫(入庫又は出庫)する乗降室と、乗降室へ車両が出入するための出入口扉が設けられている。
機械式駐車装置が作動する際は、安全性を確保するために、車両以外の異物(人、動物及び物品)が乗降室内に残っていないことを確認する必要がある。
【0003】
上述した乗降室内の安全確認は、乗降室に車両が入庫して利用者が退出した直後(入庫時)と、乗降室から車両が出庫した直後(出庫時)に必要となる。
出庫時には、車両が出庫した後、乗降室内には何も残らないため、乗降室内で検出される物体を異物とみなすことができる。
一方、入庫時には、乗降室内に車両が残るため、乗降室内で検出される物体を車両と区別して検出する必要がある。
この目的のため、例えば特許文献1が提案されている。
【0004】
特許文献1の「エリア検知装置」は、乗降室内のリアルタイムデータを検知する測域センサーと、制御装置とを備える。制御装置は、乗入室に車両や他の物体が存在していない空室時における「空室時データ」を記憶する。
また、入庫時に車両が定位置に停車すると、車両の位置、大きさ、形状を検知して車両輪郭データを取得し、車両輪郭データの範囲を除いた乗降エリアの残る範囲を「居残り検出範囲」として設定し、居残り検出範囲の状態を入庫初期データとして記憶する。
さらに装置の起動操作が行われた時に、リアルタイムデータと入庫初期データとを比較して相違の有無を判定し、相違が無いと判定された場合に起動許可信号を発信し、相違が有ると判定された場合には警告を発令する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-80735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の手段により、乗降室内に車両が残る入庫時において、乗降室内で検出される物体を車両と区別して検出することができる。
しかし、特許文献1の手段には、以下の問題点があった。
【0007】
車両の入庫後及び出庫後に、出入口扉が全閉した状態で機械式駐車装置は作動を開始し、乗降室と格納室の間で車両を搬送する。
装置の作動中において、上述した「エリア検知装置」は装置そのものの動きや存在を異物として検知してしまうため、使用できない。
そのため、出入口扉の全閉後の装置作動中において、万が一、乗降室内に車両以外の異物(人、動物及び物品)が残っていると、装置の可動範囲と接触し、人や動物の怪我、物品や装置の損傷、等が発生するおそれがあった。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、出入口扉の全閉後の装置作動中において、乗降室内の車両以外の異物(人、動物及び物品)を確実に検出することができる庫内安全監視装置と方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、乗降室の内側全域の物体の3次元座標データをリアルタイムに検出する室内全域センサと、
前記乗降室を有する機械式駐車装置と連動して前記乗降室内を監視する空間監視装置と、を備え、
前記空間監視装置は、
装置作動前の前記3次元座標データに基づき、作動前装置空間を記憶し、
前記機械式駐車装置の作動に連動して、前記作動前装置空間に基づき、作動中装置空間をリアルタイムに計算し、かつ前記作動中装置空間を除く前記乗降室内を作動時空き空間として設定し、
装置作動中に前記3次元座標データに基づき、前記作動時空き空間の検出物の有無を監視する、庫内安全監視装置が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、(A)装置作動前の乗降室の内側全域の物体の3次元座標データに基づき、作動前装置空間を記憶するステップと、
(B)前記乗降室を有する機械式駐車装置の作動に連動して、前記作動前装置空間に基づき、作動中装置空間をリアルタイムに計算し、かつ前記作動中装置空間を除く前記乗降室内を作動時空き空間として設定するステップと、
(C)装置作動中に前記3次元座標データに基づき、前記作動時空き空間の検出物の有無を監視するステップと、を有する庫内安全監視方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置作動前の乗降室の内側全域の物体の3次元座標データに基づき、「作動前装置空間」を記憶する。また、機械式駐車装置の作動に連動して、作動前装置空間に基づき、「作動中装置空間」をリアルタイムに計算する。
これにより、装置作動中において、装置の作動に同期して変化する装置の占有空間(作動中装置空間)をリアルタイムに計算することができる。
【0012】
また、作動中装置空間を除く乗降室内を「作動時空き空間」として設定するので、出入口扉の全閉後に無人(異物のない状態)であれば何も存在しない空間を「作動時空き空間」として設定できる。
【0013】
従って、装置作動中の3次元座標データに基づき、作動時空き空間の検出物の有無を監視することで、正常な場合に何も存在しない作動時空き空間の検出物を異物として検出することができる。
従って、出入口扉の全閉後の装置作動中において、乗降室内の車両以外の異物(人、動物及び物品)を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による庫内安全監視装置を備えた機械式駐車装置の平面図である。
図2図1のA-A矢視図である。
図3】本発明による庫内安全監視方法の全体フロー図である。
図4】機械式駐車装置の作動が、旋回装置によるパレットの水平旋回である場合を示す乗降室の平面図である。
図5】機械式駐車装置の作動が、パレットの幅方向の水平移動である場合を示す乗降室の平面図である。
図6】機械式駐車装置の作動が、パレットの昇降である場合を示す乗降室の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明による庫内安全監視装置50を備えた機械式駐車装置100の平面図であり、図2図1のA-A矢視図である。
この例において、機械式駐車装置100は、車両1(例えば乗用車)が入出庫(入庫又は出庫)する乗降室2を有するエレベータ式駐車装置(エレベータパーキング)である。
なお、機械式駐車装置100は、エレベータ式駐車装置に限定されず、その他の機械式駐車装置、例えば、垂直循環方式であってもよい。
【0017】
また、この例は、乗降室2における車両1の入庫方向Yと格納棚5における車両1の格納方向Xとが異なるエレベータ式駐車装置である。格納方向Xと入庫方向Yは、この例で、90度異なっているが、90度以外の任意の角度、例えば0度(同一方向)でも180度(反対方向)でもよい。
【0018】
図2において、機械式駐車装置100(エレベータ式駐車装置)は、ケージ7と旋回装置8を備える。
ケージ7は、格納方向X(X方向)のパレット3を載せて昇降路4を昇降する。
旋回装置8は、乗降室2の下降に設けられ、乗降室2に位置するケージ上のパレット3を入出庫高さより上に持ち上げて水平旋回させる。車両1の入出庫高さは、乗降室2(入出庫フロア)の床面高さである。
以下、パレット3の旋回中心Oを原点として入庫方向をy軸、格納方向をx軸とする。また、x軸とy軸に直交し床面高さを原点とする上向き方向をz軸とする。
【0019】
図1において、乗降室2は、この例で機械式駐車装置100の入出庫フロアである。入出庫フロアは、この例では内壁2aで四方が囲まれた矩形平面であり、車両1が入出庫する出入口2bを有する。また、出入口2bを開閉する出入口扉6が設けられている。
図2において、乗降室2は、床面(z=0)から、天井(上段の格納棚5の下方)までの範囲である。乗降室2の天井高さは、車両1及び人が自由に移動できる高さ(例えば、z=1800mm以上)に設定されている。
【0020】
機械式駐車装置100は、上述した出入口扉6、ケージ7、及び旋回装置8を制御する本体制御装置10を有する。
また、図1において、本発明による庫内安全監視装置50は、室内全域センサ20と空間監視装置30を備える。
【0021】
室内全域センサ20は、乗降室2の内側全域の物体の3次元座標データDをリアルタイムに検出する。3次元座標データDは、座標データ(x,y,z)の集合体である。
ここで、「物体」とは、乗降室2の内壁2a、出入口2b、床面2c、及び天井を除く乗降室2の内側に位置するすべての立体物を意味する。すなわち、物体は、乗降室2の内側に位置する機械式駐車装置100の一部(装置静止部SP、装置可動部MP)、車両1、パレット3、及び、異物F(人、動物及び車両1以外の物品)を意味する。
座標データ(x,y,z)の検出ピッチの最大値は、検出する異物Fの最小寸法より小さく設定されている。例えば、異物Fとして乗降室内を自分で移動する可能性がある1歳児(最小幅100mm)を対象とし、検出ピッチの最大値を10mm以下に設定するのがよい。
【0022】
空間監視装置30は、機械式駐車装置100の本体制御装置10と連動して乗降室内を監視する。
空間監視装置30は、例えばコンピュータ(PC)であり、以下の機能を有する。
(1)装置作動前の室内全域センサ20による3次元座標データDに基づき、作動前装置空間V0を記憶する。
(2)機械式駐車装置100の作動に連動して、作動前装置空間V0に基づき、作動中装置空間V1をリアルタイムに計算し、かつ作動中装置空間V1を除く乗降室内を作動時空き空間V2として設定する。
(3)装置作動中に3次元座標データDに基づき、作動時空き空間V2の検出物の有無を監視する。
【0023】
空間監視装置30は、上述した(1)~(3)を機械式駐車装置100の作動中にリアルタイムで順次実施する。
リアルタイムとは制御系の検出サイクル毎にの意味である。検出サイクルは、例えば100ms以下であり、移動する人又は動物を確実に検出できる短い時間であることが好ましい。
【0024】
上述した作動前装置空間V0、作動中装置空間V1、及び作動時空き空間V2のz座標範囲は床面(z=0)から天井(例えばz=1800mm)である。
【0025】
図1において、室内全域センサ20は、複数(この例で2台)の3次元レーザーレーダー22である。
3次元レーザーレーダー22は、乗降室2の内側全域にレーザ光23を水平走査及び垂直走査して照射し、その反射位置の3次元座標を検出する。
【0026】
図1において、レーザ光23の水平走査範囲(水平走査角度β)は、正面(β=0)から少なくとも-45度~+45度、好ましくは-75度~+75度であるのがよい。
また3次元レーザーレーダー22の検出距離は、少なくとも装置可動部MP(図2ではパレット3)の最遠位置以上、好ましくは乗降室内の最遠位置以上であるのがよい。
【0027】
また図1において、複数(2台)の3次元レーザーレーダー22は、それぞれ車両1が駐車する定位置Pを間に挟んで位置する。
すなわち、2以上の3次元レーザーレーダー22は、全体で乗降室内全域を検出できる位置に配置されている。
車両1が駐車する定位置Pは、乗降室2の中央に設定され、この例では定位置Pに車両1を載せるパレット3が位置する。
またこの例で、2台の3次元レーザーレーダー22はパレット3の中心に向けて互いに対向して図でA,Bの位置に配置されている。なお、図でC,Dの位置に配置しても、3以上の位置に配置してもよい。
【0028】
また3次元レーザーレーダー22によるレーザ光23の垂直走査範囲(垂直走査角度α)は、水平(α=0)に対し好ましくは-5度~+35度であるのがよい。
【0029】
複数の3次元レーザーレーダー22は、乗降室2の内壁2a及び床面2cとの間に異物Fが侵入できないように設置されている。
この構成により、3次元レーザーレーダー22の照射範囲に位置する人(例えば1歳児)と動物(犬、猫)を確実に検出することができる。
【0030】
また図1において、2台の3次元レーザーレーダー22は、乗降室2の内壁2aとの間に異物Fが侵入できない位置に設置されている。
この構成により、3次元レーザーレーダー22の背面に人(例えば1歳児)や動物(犬、猫)が侵入するのを防ぐことができる。
なお、3次元レーザーレーダー22の背面に、人や動物が侵入できないように侵入防止措置(例えば、仕切り壁等)を設置してもよい。
【0031】
図3は、本発明による庫内安全監視方法の全体フロー図である。
この図において、庫内安全監視方法は、上述した庫内安全監視装置50を用い、S1~S3の各ステップ(工程)を有する。
【0032】
ステップS1では、装置作動前の乗降室2の内側全域の物体の3次元座標データDに基づき、作動前装置空間V0を記憶する。
「装置作動前」とは、車両の入庫後及び出庫後に、出入口扉6が全閉し、機械式駐車装置100が作動を開始する直前を意味する。この時点で、乗降室内の無人(異物Fがないこと)が通常は確認されている。
なお、ステップS1は、機械式駐車装置100の作動開始直前に限定されず、作動中の静止時、例えば、パレット3の旋回、横行、昇降の動作の中間静止時に実施してもよい。また、その他の作動中の静止時であってもよい。
【0033】
作動前装置空間V0には、乗降室2の内側に位置する機械式駐車装置100の一部(装置静止部SP、装置可動部MP)の占有空間が含まれる。
装置静止部SPとは、例えば、乗降室内の柱等の静止物である。また、装置可動部MPとは、例えば、旋回時や横行時のパレット3、昇降時のパレット3とケージ7である。
また、作動前装置空間V0は、車両の入庫時において車両1の占有空間を含む。なお、車両の出庫時において作動前装置空間V0が、車両1の占有空間を含んでもよい。
【0034】
ステップS2では、機械式駐車装置100の作動に連動して、作動前装置空間V0に基づき、作動中装置空間V1をリアルタイムに計算し、かつ作動中装置空間V1を除く乗降室内を作動時空き空間V2として設定する。
【0035】
ステップS2は、S21~S22の各ステップ(工程)を有する。
ステップS21では、機械式駐車装置100の作動に連動して、作動前装置空間V0に基づき、作動中装置空間V1をリアルタイムに計算する。
作動中装置空間V1は、作動前装置空間V0のうち機械式駐車装置100の作動に同期する同期空間ΔVを移動方向に移動することで算出する。同期空間ΔVは、装置可動部MP(例えばパレット3)の占有空間である。
【0036】
ステップS22では、作動中装置空間V1を除く乗降室内を作動時空き空間V2として設定する。
ステップS2は、装置作動前から作動完了まで、装置作動中、継続して実施する。
【0037】
ステップS3では、装置作動中に3次元座標データDに基づき、作動時空き空間V2の検出物の有無を監視する。
【0038】
ステップS3は、S31~S34の各ステップ(工程)を有する。
ステップS31では、装置作動中に3次元座標データDを検出する。
機械式駐車装置100の作動とは、例えば、旋回装置8によるパレット3の水平旋回である。「作動に連動」とは、例えば、パレット3の水平旋回角θに連動することを意味する。
作動中装置空間V1は、例えば、装置静止部SPと、パレット3の水平旋回角θが変化する際の各角度における装置可動部MP及び車両1の占有空間を意味する。
ステップS32では、作動時空き空間V2の検出物の有無を判断する。
【0039】
ステップS32で検出物が有る場合(YES)は、装置の作動を停止し(S33)、異物Fを検出した旨を出力する。
ステップS32で検出物がない場合(NO)は、ステップS34で作動完了か否かを判断し、作動完了でない場合(NO)は、ステップS2に戻り、ステップS2~S3を繰り返す。
ステップS34で作動完了の場合(YES)は、庫内安全監視方法を終了する。
【0040】
(実施例1)
図4は、機械式駐車装置100の作動が、旋回装置8によるパレット3の水平旋回である場合を示す乗降室2の平面図である。
この図において、水平旋回時の中心がパレット3の中心であり、x-y座標の原点Oに位置するものとする。
また、パレット3の四隅のx-y座標をC1(x1,y1)、C2(x2,y2)、C3(x3,y3)、C4(x4,y4)とする。
【0041】
また、パレット3の水平旋回角θ(以下、「旋回角θ」)を、入庫方向(y軸)となす角度とする。
パレット3の旋回角θは、好ましくは、本体制御装置10から空間監視装置30へリアルタイムに継続して出力される。旋回角θは、回動作中に時々刻々と変化する。
また、旋回角θの角速度ω(=dθ/dt)から旋回時の経過時間tに基づき旋回角θを積分して求めてもよい。
【0042】
図2において、旋回装置8は、入出庫高さ(z=0)よりも下方に位置する。また、パレット3の水平旋回時に、パレット3の下面は入出庫高さより上(例えばz=10~20mm)に位置するが、旋回装置8の上端はパレット3の外縁より内側に位置する。
従って、パレット3の水平旋回時にパレット3と床面2cの隙間には、異物は入れないようになっている。
【0043】
パレット3の水平旋回時における作動前装置空間V0は、装置静止部SP(例えば、柱等)と図4に破線で示すパレット3とその上方空間のみである。パレット3とその上方空間は、入出庫時(旋回角θ=0)におけるパレット3の四隅C1,C2,C3,C4のx,y座標とその内側の一定高さ(例えばz=1800mm)までのz座標として記憶することができる。
なお、作動前装置空間V0を装置静止部SP、パレット3、及びパレット上の車両1が占める3次元空間として記憶してもよい。
【0044】
また、パレット3の水平旋回時における作動中装置空間V1は、装置静止部SP(例えば、柱等)と旋回角θの時点のパレット3とその上方空間のみである。旋回角θのパレット3とその上方空間は、旋回角θにおけるパレット3の四隅C1,C2,C3,C4のx,y座標とその内側の一定高さ(例えばz=1800mm)までのz座標として記憶することができる。
作動中装置空間V1は、作動前装置空間V0のうち機械式駐車装置100の作動に同期する同期空間ΔVを移動方向に移動することで算出する。
同期空間ΔVは、例えばパレット3、及びパレット上の車両1が作動前装置空間V0と作動中装置空間V1の両方に含まれる空間である。
【0045】
従って、作動時空き空間V2は、乗降室内の作動中装置空間V1(装置静止部SP含む)を除く全空間であり、上述したステップS3において、パレット3の水平旋回時に異物F(例えば1歳児や動物)を検出することができる。これにより旋回するパレット3と異物Fとの干渉を未然に防ぐことができる。
【0046】
(実施例2)
図5は、機械式駐車装置100の作動が、パレット3の幅方向の水平移動(以下「横行」)である場合を示す乗降室2の平面図である。この場合、例えば乗降室2の図で右側の別室に車両格納室が設けられている。
パレット3の横行移動量x(パレット3の中心のx座標)は、好ましくは、本体制御装置10から空間監視装置30へリアルタイムに継続して出力される。パレット3の中心座標は、横行中に時々刻々と変化する。
また、横行移動速度から水平移動時の経過時間tに基づき横行移動量xを積分して求めてもよい。
なお、作動前装置空間V0を装置静止部SP、パレット3、及びパレット上の車両1が占める3次元空間として記憶してもよい。
【0047】
パレット3の横行時における作動前装置空間V0は、装置静止部SPと図5に破線で示すパレット3の上方空間のみである。パレット3の上方空間は、入出庫時(x=0)におけるパレット3の四隅C1,C2,C3,C4のx,y座標とその内側の一定高さ(例えば1800mm)までのz座標として記憶することができる。
【0048】
また、パレット3の水平移動時における作動中装置空間V1は、装置静止部SPと横行移動量xにおけるパレット3の上方空間のみである。横行移動量xにおけるパレット3の上方空間は、横行移動量xにおけるパレット3の四隅C1,C2,C3,C4のx,y座標とその内側の一定高さ(例えば1800mm)までのz座標として記憶することができる。
従って、作動時空き空間V2は、乗降室内の作動中装置空間V1(装置静止部SPを含む)を除く全空間であり、上述したステップS3において、パレット3の水平移動時に異物F(例えば1歳児や動物)を検出することができる。これにより、水平移動するパレット3と異物Fとの干渉を未然に防ぐことができる。
【0049】
(実施例3)
図6は、機械式駐車装置100の作動が、パレット3の昇降である場合を示す乗降室2の側面図である。
パレット3の中心のz座標は、好ましくは、本体制御装置10から空間監視装置30へリアルタイムに継続して出力される。このz座標は、パレット3の昇降中に時々刻々と変化する。
また、昇降速度から昇降時の経過時間tに基づきパレット3の中心のz座標を積分して求めてもよい。
【0050】
パレット3の昇降時における作動前装置空間V0は、装置静止部SPと図6に破線で示すパレット3又はケージ7の上方空間のみである。この場合、パレット3又はケージ7の平面占有範囲が広い方を用いるのがよい。
以下、ケージ7の平面占有範囲がパレット3より広いものとする。
この場合、作動前装置空間V0を入出庫時におけるケージ7の四隅C1,C2,C3,C4のx,y座標とその内側の一定高さ(例えば2000mm)までのz座標として記憶することができる。
【0051】
また、ケージ7の昇降時における作動中装置空間V1は、装置静止部SPとパレット3の中心がz座標のときのケージ7の上方空間のみである。ケージ7の上方空間は、パレット3の中心がz座標のときのケージ7の四隅のx,y座標とその内側の一定高さ(例えば1800mm)までのz座標として記憶することができる。
従って、作動時空き空間V2は、装置静止部SPと乗降室内の作動中装置空間V1(装置静止部SPを含む)を除く全空間であり、上述したステップS5において、パレット3の昇降時に異物F(例えば1歳児や動物)を検出することができる。これにより昇降するパレット3又はケージ7と異物Fとの干渉を未然に防ぐことができる。
【0052】
上述した本発明の実施形態によれば、装置作動前の乗降室2の内側全域の物体の3次元座標データDに基づき、「作動前装置空間V0」を記憶する。また、機械式駐車装置100の作動に連動して、作動前装置空間V0に基づき、「作動中装置空間V1」をリアルタイムに計算する。
これにより、装置作動中において、装置の作動に同期して変化する装置の占有空間(作動中装置空間V1)をリアルタイムに計算することができる。
【0053】
また、作動中装置空間V1を除く乗降室内を「作動時空き空間V2」として設定するので、出入口扉6の全閉後に無人(異物Fのない状態)であれば何も存在しない空間を「作動時空き空間V2」として設定できる。
【0054】
従って、装置作動中の3次元座標データDに基づき、作動時空き空間V2の検出物の有無を監視することで、正常な場合に何も存在しない作動時空き空間V2の検出物を異物Fとして検出することができる。
従って、出入口扉6の全閉後の装置作動中において、乗降室内の車両以外の異物F(人、動物及び物品)を確実に検出することができる。
【0055】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
D 3次元座標データ、F 異物、P 定位置、MP 装置可動部、
SP 装置静止部、V0 作動前装置空間、V1 作動中装置空間、
V2 作動時空き空間、ΔV 同期空間、θ 水平旋回角、α 垂直走査角度、
β 水平走査角度、ω 角速度、1 車両、2 乗降室、2a 内壁、
2b 出入口、2c 床面、3 パレット、4 昇降路、5 格納棚、
6 出入口扉、7 ケージ、8 旋回装置、10 本体制御装置、
20 室内全域センサ、22 3次元レーザーレーダー、23 レーザ光、
30 空間監視装置、50 庫内安全監視装置、100 機械式駐車装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6