(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162339
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】表示装置、及び表示装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20221017BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20221017BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221017BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 624B
G09G3/20 680G
G09G3/20 670L
H05B33/14 A
H01L27/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067126
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】小原 将紀
【テーマコード(参考)】
3K107
5C080
5C380
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC08
3K107CC09
3K107EE03
3K107EE04
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3K107HH05
5C080AA06
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5C380CC39
5C380CD014
5C380CF67
(57)【要約】
【課題】簡素化された構成で、温度に依存するホワイトバランスの崩れを抑制できる表示装置等を提供する。
【解決手段】表示装置1は、複数の画素回路10を有する表示部12と、制御回路16とを備え、複数の画素回路10の各々は、第一サブ画素回路及び第二サブ画素回路を有し、第一サブ画素回路は、第一発光素子と、第一駆動トランジスタと、第一コンデンサと、第一書込みトランジスタとを有し、第二サブ画素回路は、第二発光素子と、第二発光素子に電流を供給する第二駆動トランジスタと、映像信号に対応する電荷を保持する第二コンデンサと、第二コンデンサに接続される第二書込みトランジスタとを有し、第一コンデンサの容量は、第二コンデンサの容量より大きく、制御回路16は、表示部12に係る温度に基づいて、複数の画素回路10の各々の第一駆動トランジスタ及び第二駆動トランジスタの閾値補償期間を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号に基づいて画像を表示する表示装置であって、
マトリクス状に配置される複数の画素回路を有する表示部と、
前記表示部の動作を制御する制御回路とを備え、
前記複数の画素回路の各々は、第一サブ画素回路及び第二サブ画素回路を有し、
前記第一サブ画素回路は、第一発光素子と、前記第一発光素子に電流を供給する第一駆動トランジスタと、前記映像信号に対応する電荷を保持する第一コンデンサと、前記第一コンデンサに接続される第一書込みトランジスタとを有し、
前記第二サブ画素回路は、第二発光素子と、前記第二発光素子に電流を供給する第二駆動トランジスタと、前記映像信号に対応する電荷を保持する第二コンデンサと、前記第二コンデンサに接続される第二書込みトランジスタとを有し、
前記第一コンデンサの容量は、前記第二コンデンサの容量より大きく、
前記制御回路は、前記表示部に係る温度に基づいて、前記複数の画素回路の各々の前記第一駆動トランジスタ及び前記第二駆動トランジスタの閾値補償期間を制御する
表示装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記温度が高くなるにしたがって、前記閾値補償期間を短くする
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第一発光素子は、発光色が青の有機EL素子であり、
前記第二発光素子は、発光色が緑又は赤の有機EL素子である
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第一書込みトランジスタ及び前記第二書込みトランジスタは、Si系半導体薄膜トランジスタである
請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
映像信号に基づいて画像を表示する表示装置の制御方法であって、
前記表示装置は、
マトリクス状に配置される複数の画素回路を有する表示部を備え、
前記複数の画素回路の各々は、第一サブ画素回路及び第二サブ画素回路を有し、
前記第一サブ画素回路は、第一発光素子と、前記第一発光素子に電流を供給する第一駆動トランジスタと、前記映像信号に対応する電荷を保持する第一コンデンサと、前記第一コンデンサに接続される第一書込みトランジスタとを有し、
前記第二サブ画素回路は、第二発光素子と、前記第二発光素子に電流を供給する第二駆動トランジスタと、前記映像信号に対応する電荷を保持する第二コンデンサと、前記第二コンデンサに接続される第二書込みトランジスタとを有し、
前記第二コンデンサの容量は、前記第一コンデンサの容量より小さく、
前記表示装置の制御方法は、
前記表示部に係る温度を検出する検出ステップと、
前記温度に基づいて、前記複数の画素回路の各々の前記第一駆動トランジスタ及び前記第二駆動トランジスタの閾値補償期間を制御する制御ステップとを含む
表示装置の制御方法。
【請求項6】
前記制御ステップは、前記温度が高くなるにしたがって、前記閾値補償期間を短くする
請求項5に記載の表示装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置、及び表示装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL(Electro-Luminescence)素子などの発光素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置(以下、表示装置という)が実用化されている(例えば、特許文献1など参照)。表示装置は、マトリクス状に配置された複数の画素回路を備える。複数の画素回路の各々は、例えば、発光色がそれぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)の有機EL素子を搭載した3つのサブ画素回路から構成される。サブ画素回路は、例えば、初期化トランジスタ、参照トランジスタ、書込みトランジスタ、及びコンデンサを有する。初期化トランジスタ、参照トランジスタ、及び書込みトランジスタは、それぞれ、ゲートドライバからの制御信号に基づいてスイッチングする。表示装置は、ゲートドライバ及びソースドライバからの信号に基づいてサブ画素回路毎に有機EL素子の発光輝度を制御することにより、カラー画像を表示する。
【0003】
各サブ画素回路の有機EL素子のうち、発光色が青の青色有機EL素子に用いられる有機EL材料の発光寿命(つまり、有機EL材料に所定の電流密度が印加され続けた場合における有機EL材料の発光寿命)が、発光色が赤の赤色有機EL素子及び発光色が緑の緑色有機EL素子に用いられる各有機EL材料の発光寿命より短い。つまり、青色有機EL素子の方が、赤色有機EL素子及び緑色有機EL素子より劣化しやすい。このため、従来の表示装置では、青色有機EL素子の画素面積を、赤色有機EL素子及び緑色有機EL素子の画素面積より大きくすることで、青色有機EL素子の電流密度を低減している。これに伴い、青色有機EL素子を有する青色サブ画素回路においては、青色有機EL素子の特性とのバランスを考慮して、コンデンサの容量が、他のサブ画素回路のコンデンサの容量より大きくなるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各サブ画素回路において、書込みトランジスタ及び参照トランジスタにおいて、オフ状態(非導通状態又は高抵抗状態)においてもわずかながら電流(以下、「オフ電流」と称する)が流れる。このオフ電流により、データ書込み後(つまり、コンデンサに、輝度値に対応する電荷が充電された後)、コンデンサから書込みトランジスタ及び参照トランジスタを介して電荷が放電される。ここで、各サブ画素回路の輝度値は、駆動トランジスタのゲート-ソース間電圧に対応し、このゲート-ソース間電圧は、コンデンサに充電されている電荷に依存する。ここで、上述したとおり、青色サブ画素回路のコンデンサの容量は、他のサブ画素回路の容量より大きい。一方、オフ電流によってコンデンサから放電される電荷量は、すべてのサブ画素回路において同程度である。したがって、オフ電流によりコンデンサから放電される電荷量の、当該コンデンサの容量に対する割合は、青色サブ画素回路の方が他のサブ画素回路より小さい。したがって、駆動トランジスタのゲート-ソース間電圧のオフ電流による変化率は、青色サブ画素回路の方が、他のサブ画素回路より小さい。つまり、オフ電流に起因する各サブ画素回路の有機EL素子の輝度への影響は、青色のサブ画素回路の方が、他のサブ画素回路より小さい。このため、表示部のホワイトバランスが崩れる。このようなホワイトバランスの崩れは、例えば、映像信号を補正するなどの方法によって、抑制し得る。
【0006】
しかしながら、オフ電流の大きさは書込みトランジスタの温度に依存するため、表示部の温度が変動する場合に、ホワイトバランスの崩れの程度も変動する。このような温度に依存するホワイトバランスの崩れを、映像信号を動的に補正することで抑制することは不可能ではないが、制御回路の構成が複雑となる。
【0007】
本開示は、上記の問題を解決するためになされたものであり、簡素化された構成で、温度に依存するホワイトバランスの崩れを抑制できる表示装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る表示装置は、映像信号に基づいて画像を表示する表示装置であって、マトリクス状に配置される複数の画素回路を有する表示部と、前記表示部の動作を制御する制御回路とを備え、前記複数の画素回路の各々は、第一サブ画素回路及び第二サブ画素回路を有し、前記第一サブ画素回路は、第一発光素子と、前記第一発光素子に電流を供給する第一駆動トランジスタと、前記映像信号に対応する電荷を保持する第一コンデンサと、前記第一コンデンサに接続される第一書込みトランジスタとを有し、前記第二サブ画素回路は、第二発光素子と、前記第二発光素子に電流を供給する第二駆動トランジスタと、前記映像信号に対応する電荷を保持する第二コンデンサと、前記第二コンデンサに接続される第二書込みトランジスタとを有し、前記第一コンデンサの容量は、前記第二コンデンサの容量より大きく、前記制御回路は、前記表示部に係る温度に基づいて、前記複数の画素回路の各々の前記第一駆動トランジスタ及び前記第二駆動トランジスタの閾値補償期間を制御する。
【0009】
また、本開示の一態様に係る表示装置の制御方法は、映像信号に基づいて画像を表示する表示装置の制御方法であって、前記表示装置は、マトリクス状に配置される複数の画素回路を有する表示部を備え、前記複数の画素回路の各々は、第一サブ画素回路及び第二サブ画素回路を有し、前記第一サブ画素回路は、第一発光素子と、前記第一発光素子に電流を供給する第一駆動トランジスタと、前記映像信号に対応する電荷を保持する第一コンデンサと、前記第一コンデンサに接続される第一書込みトランジスタとを有し、前記第二サブ画素回路は、第二発光素子と、前記第二発光素子に電流を供給する第二駆動トランジスタと、前記映像信号に対応する電荷を保持する第二コンデンサと、前記第二コンデンサに接続される第二書込みトランジスタとを有し、前記第二コンデンサの容量は、前記第一コンデンサの容量より小さく、前記表示装置の制御方法は、前記表示部に係る温度を検出する検出ステップと、前記温度に基づいて、前記複数の画素回路の各々の前記第一駆動トランジスタ及び前記第二駆動トランジスタの閾値補償期間を制御する制御ステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、簡素化された構成で、温度に依存するホワイトバランスの崩れを抑制できる表示装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る画素回路の構成の一例を示す回路図である。
【
図3】
図3は、比較例の表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、比較例の表示装置のサブ画素回路における各制御信号と、駆動トランジスタのソース電位及びゲート電位との関係を示す模式的なタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、比較例の各サブ画素回路における輝度比と時間との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、比較例の各サブ画素回路における1フレーム期間平均の輝度比とオフ電流の大きさとの関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、比較例の各サブ画素回路におけるオフ電流比と、表示部の温度との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、比較例の各サブ画素回路における駆動トランジスタのゲート-ソース間電圧比(Vgs比)と、表示部の温度との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る表示装置における閾値補償期間と表示部の温度との関係の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る表示装置のサブ画素回路における各制御信号と、駆動トランジスタのソース電位及びゲート電位との関係を示す模式的なタイミングチャートである。
【
図11】
図11は、実施の形態及び比較例の各サブ画素回路における駆動トランジスタのゲート-ソース間電圧比(Vgs比)と、表示部の温度との関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施の形態に係る閾値補償期間の長さと、サブ画素回路毎の輝度バラツキとの関係を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施の形態に係る表示装置の制御方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示における一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、並びに、工程の順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示における最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺などは必ずしも一致していない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0014】
(実施の形態)
実施の形態に係る表示装置及びその駆動方法について説明する。
【0015】
[1.表示装置の全体構成]
まず、本実施の形態に係る表示装置の全体構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る表示装置1の全体構成を示すブロック図である。
【0016】
本実施の形態に係る表示装置1は、映像信号に基づいて画像を表示する装置である。
図1に示されるように、表示装置1は、表示部12と、ゲートドライバ13と、データドライバ15と、制御回路16と、電源17と、温度センサ19とを備える。本実施の形態では、表示装置1は、アクティブマトリクス型のカラー表示装置である。
【0017】
表示部12は、マトリクス状に配置される複数の画素回路10を有する画像表示部である。複数の画素回路10の各々は、1以上の第一サブ画素回路及び1以上の第二サブ画素回路を有する。複数の画素回路10の詳細構成については後述する。
【0018】
表示部12は、マトリクスの各行に配置される複数の画素回路10に接続される3本の制御信号線ini(i)、ref(i)、ws(i)(iは1以上N以下の整数。Nはマトリクスの行数を示す1より大きい整数。)を有する。制御信号線ini(i)、ref(i)、ws(i)は、それぞれゲートドライバ13から供給される制御信号を、画素回路10へ伝達する。なお、上記制御信号線の本数及び制御信号は一例であり、この例には限定されない。
【0019】
表示部12は、マトリクスの各列に配置される複数の画素回路10に接続される3本のデータ信号線Ldr(j)、Ldg(j)、Ldb(j)(jは1以上M以下の整数。Mはマトリクスの列数を示す1より大きい整数。)を有する。データ信号線Ldr(j)、Ldg(j)、Ldb(j)は、それぞれデータドライバ15から供給されるR、G、Bの発光輝度に関連するデータ信号を、画素回路10へ、伝達する。各サブ画素回路に入力されるデータ信号は、制御回路16に入力される映像信号に基づいて決定される信号である。
【0020】
制御回路16は、表示部12の動作を制御する回路である。本実施の形態では、制御回路16は、外部から映像信号を受信し、当該映像信号に対応する各フレームの画像を表示部12において表示するための信号を、ゲートドライバ13及びデータドライバ15へ供給する。制御回路16の詳細な動作については、後述する。
【0021】
ゲートドライバ13は、制御回路16からの信号に基づいて、表示部12に制御信号を出力する回路である。本実施の形態では、ゲートドライバ13は、制御信号線ini(i)、ref(i)、及びws(i)の各々に駆動パルスを出力する。ゲートドライバ13は、例えば、クロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタ回路等によって構成される。
【0022】
データドライバ15は、制御回路16からの信号に基づいて、表示部12にデータ信号を出力する回路である。
【0023】
電源17は、表示部12、ゲートドライバ13、データドライバ15、及び制御回路16へ、参照電位、電源電位などを供給する。電源17は、例えば、参照電位線Lrefに印加される参照電位VREF、初期化電位線Liniに印加される初期化電位VINI、正電源線Lvccに印加される正電源電位、及び、負電源線Lcatに印加される負電源電位を、表示部12へ供給する。
【0024】
温度センサ19は、表示部12に係る温度を検出するセンサである。温度センサ19は、表示部12の温度に対応する温度を検出できればよい。温度センサ19は、表示部12の裏面(表示面の裏側の面)などに配置されてもよいし、ゲートドライバ13、データドライバ15などの駆動回路に設けられてもよい。温度センサ19の構成は特に限定されない。温度センサ19は、接触型であってもよいし、非接触型であってもよい。なお、表示装置1は、必ずしも温度センサ19を備えなくてもよい。例えば、表示装置1は、外部から表示部12に係る温度の情報を取得することで、表示部12に係る温度を検出してもよい。
【0025】
[2.画素回路]
続いて画素回路10の回路構成例について
図2を用いて説明する。
図2は、本実施の形態に係る画素回路10の構成の一例を示す回路図である。
図2には、複数の画素回路10のうち、i行j列に配置される画素回路10が示されている。
【0026】
図2に示されるように、本実施の形態では、複数の画素回路10の各々は、R、G、及びBの発光色にそれぞれ対応するサブ画素回路11R、11G、及び11Bを有する。サブ画素回路11Bは、第一サブ画素回路の一例である。サブ画素回路11R及び11Gの各々は、第二サブ画素回路の一例である。以下、本実施の形態に係る画素回路10が有するサブ画素回路11R、11G、及び11Bについて説明する。
【0027】
サブ画素回路11Bは、初期化トランジスタT1B、参照トランジスタT2B、書込みトランジスタT3B、コンデンサCSB、駆動トランジスタTDB、及び発光素子ELBを有している。また、サブ画素回路11Bは、制御信号線ini(i)、ref(i)、ws(i)、初期化電位線Lini、参照電位線Lref、データ信号線Ldb(j)、正電源線Lvcc、及び負電源線Lcatを有している。なお、制御信号線ini(i)、ref(i)、及びws(i)を、それぞれ、第一制御信号線、第二制御信号線、及び第三制御信号線とも称する。
【0028】
駆動トランジスタTDBは、発光素子ELBに電流を供給する第一駆動トランジスタの一例である。駆動トランジスタTDBは、コンデンサCSBに保持された電圧に応じて、発光素子ELBに電流を供給する。言い換えると、コンデンサCSBに保持された電圧に応じた電流が、駆動トランジスタTDBを介して発光素子ELBに供給される。これにより、発光素子ELBは、データ信号線Ldb(j)に入力されるデータ信号によって表される輝度で発光する。
【0029】
書込みトランジスタT3Bは、コンデンサCSBに接続される第一書込みトランジスタの一例である。本実施の形態では、書込みトランジスタT3Bは、駆動トランジスタTDBのゲート電極と、発光素子ELBの輝度に対応するデータ信号が入力されるデータ信号線Ldb(j)との間の導通状態を切り替える。書込みトランジスタT3Bは、制御信号線ws(i)に入力される信号に従ってオン状態(つまり、導通状態)となり、データ信号線Ldb(j)に入力されるデータ信号の電圧がコンデンサCSBに保持される。
【0030】
初期化トランジスタT1Bは、発光素子ELBと、初期化電位VINIが印加される初期化電位線Liniとの間の導通状態を切り替える第一初期化トランジスタの一例である。初期化トランジスタT1Bは、制御信号線ini(i)に印加された制御信号に従ってオン状態となり、駆動トランジスタTDBのソース電極を初期化電位線Liniに印加された初期化電位VINIに設定する。
【0031】
参照トランジスタT2Bは、駆動トランジスタTDBのゲート電極と、参照電位VREFが印加される参照電位線Lrefとの間の導通状態を切り替える第一参照トランジスタの一例である。参照トランジスタT2Bは、制御信号線ref(i)に入力される制御信号に従ってオン状態となり、駆動トランジスタTDBのゲート電極を参照電位線Lrefに印加された参照電位VREFに設定する。
【0032】
コンデンサCSBは、映像信号に対応する電荷を保持する第一コンデンサの一例である。言い換えると、コンデンサCSBは、サブ画素回路11Bに入力されるデータ信号に対応する電荷及び電圧を保持する。
【0033】
発光素子ELBは、サブ画素回路11Bにおいて、光を出射する第一発光素子の一例である。本実施の形態では、発光素子ELBは、発光色が青の青色有機EL素子である。
【0034】
サブ画素回路11Rは、初期化トランジスタT1R、参照トランジスタT2R、書込みトランジスタT3R、コンデンサCSR、駆動トランジスタTDR、及び発光素子ELRを有している。サブ画素回路11Gは、初期化トランジスタT1G、参照トランジスタT2G、書込みトランジスタT3G、コンデンサCSG、駆動トランジスタTDG、及び発光素子ELGを有している。サブ画素回路11R及び11Gの各々は、サブ画素回路11Bと同様に、制御信号線ini(i)、ref(i)、ws(i)、初期化電位線Lini、参照電位線Lref、正電源線Lvcc、及び負電源線Lcatを有している。また、サブ画素回路11R及び11Gは、それぞれ、データ信号線Ldr(j)及びLdg(j)を有している。
【0035】
駆動トランジスタTDR及びTDGは、それぞれ、発光素子ELR及びELGに電流を供給する第二駆動トランジスタの一例である。駆動トランジスタTDR及びTDGは、それぞれ、コンデンサCSR及びCSGに保持された電圧に応じて、発光素子ELR及びELGに電流を供給する。言い換えると、コンデンサCSR及びCSGに保持された電圧に応じ電流が、それぞれ、駆動トランジスタTDR及びTDGを介して発光素子ELR及びELGに供給される。これにより、発光素子ELR及びELGは、それぞれ、データ信号線Ldr(j)及びLdg(j)に入力されるデータ信号によって表される輝度で発光する。
【0036】
書込みトランジスタT3R及びT3Gは、それぞれ、コンデンサCSR及びCSGに接続される第二書込みトランジスタの一例である。本実施の形態では、書込みトランジスタT3R及びT3Gは、それぞれ、駆動トランジスタTDR及びTDGのゲート電極と、発光素子ELR及びELGの輝度に対応するデータ信号が入力されるデータ信号線Ldr(j)及びLdg(j)との間の導通状態を切り替える。書込みトランジスタT3R及びT3Gは、それぞれ、制御信号線ws(i)に入力される信号に従ってオン状態となり、データ信号線Ldr(j)及びLdg(j)に入力されるデータ信号の電圧がコンデンサCSR及びCSGに保持される。
【0037】
初期化トランジスタT1R及びT1Gは、それぞれ、発光素子ELR及びELGと、初期化電位VINIが印加される初期化電位線Liniとの間の導通状態を切り替える第二初期化トランジスタの一例である。初期化トランジスタT1R及びT1Gは、それぞれ、制御信号線ini(i)に印加された制御信号に従ってオン状態となり、駆動トランジスタTDR及びTDGのソース電極を初期化電位線Liniに印加された初期化電位VINIに設定する。
【0038】
参照トランジスタT2R及びT2Gは、それぞれ、駆動トランジスタTDR及びTDGのゲート電極と、参照電位VREFが印加される参照電位線Lrefとの間の導通状態を切り替える第一参照トランジスタの一例である。参照トランジスタT2R及びT2Gは、それぞれ、制御信号線ref(i)に入力される制御信号に従ってオン状態となり、駆動トランジスタTDR及びTDGのゲート電極を参照電位線Lrefに印加された参照電位VREFに設定する。
【0039】
コンデンサCSR及びCSGは、映像信号に対応する電荷を保持する第二コンデンサの一例である。言い換えると、コンデンサCSR及びCSGは、それぞれ、サブ画素回路11R及び11Gに入力されるデータ信号に対応する電荷及び電圧を保持する。
【0040】
発光素子ELR及びELGは、それぞれ、サブ画素回路11R及び11Gにおいて、光を出射する第二発光素子の一例である。本実施の形態では、発光素子ELR及びELGは、それぞれ、発光色が赤の赤色有機EL素子、及び、発光色が緑の緑色有機EL素子である。
【0041】
各サブ画素回路の発光素子のうち、青色有機EL素子である発光素子ELBに用いられる有機EL材料の発光寿命が、赤色有機EL素子である発光素子ELR、及び、緑色有機EL素子である発光素子ELGに用いられる各有機EL材料の発光寿命より短い。このため、本実施の形態では、発光素子ELBの画素面積を、発光素子ELR及びELGの画素面積より大きくすることで、発光素子ELBの電流密度を低減している。これに伴い、発光素子ELBを有するサブ画素回路11Bにおいては、発光素子ELBの特性とのバランスを考慮して、第一コンデンサであるコンデンサCSBの容量が、第二コンデンサであるコンデンサCSR及びCSGの各々の容量より大きくなるように設計されている。
【0042】
上記各トランジスタの構成は特に限定されないが、上記各トランジスタは、例えば、Si系半導体薄膜トランジスタである。また、上記各トランジスタとして、Nチャネル型のMOSFETを用いることができる。なお、Nチャネル型のMOSFET以外のトランジスタを用いて、各サブ画素回路を構成することも可能である。例えば、Pチャネル型のMOSFETを用いて各サブ画素回路を構成することも可能である。
【0043】
画素回路10が以上のような構成を有するため、サブ画素回路11R、11G、及び11Bにおいて、それぞれ同一の制御信号に従って同じタイミングでデータ信号VdatR、VdatG、及びVdatBが保持され、保持されたデータ信号に応じた輝度で発光素子ELR、ELG、及びELBが発光する。
【0044】
[3.制御態様及び効果]
次に、表示装置1の制御態様及びその効果について、比較例と比較しながら
図3~
図12を用いて説明する。
【0045】
図3は、比較例の表示装置1001の全体構成を示すブロック図である。
図3に示されるように、比較例の表示装置1001は、表示部12と、ゲートドライバ13と、データドライバ15と、制御回路1016と、電源17とを備える。つまり、比較例の表示装置1001は、温度センサ19を備えない点、及び、制御回路1016の構成において、本実施の形態に係る表示装置1と相違し、その他の点において一致する。
【0046】
制御回路1016は、表示部12の動作を制御する回路である。制御回路1016は、外部から映像信号を受信し、当該映像信号に対応する各フレームの画像を表示部12において表示するための信号を、ゲートドライバ13及びデータドライバ15へ供給する。
【0047】
以下の比較例の制御回路1016による制御態様について
図2~
図4を用いて説明する。
図4は、比較例の表示装置1001のサブ画素回路11Bにおける各制御信号と、駆動トランジスタTD
Bのソース電位Vs及びゲート電位Vgとの関係を示す模式的なタイミングチャートである。なお、ここでは、サブ画素回路11R、11G、及び11Gのうち、サブ画素回路11Bについて説明するが、他のサブ画素回路のタイミングチャートもサブ画素回路11Bのタイミングチャートと同様である。
【0048】
図4に示されるように、時点t1までは、制御信号はいずれもLレベルであり、発光素子EL
Bは、直前の垂直周期におけるデータ信号に対応する発光状態にある。
【0049】
続いて、時点t1において、制御信号線ref(i)に駆動パルスが入力される。これにより、時点t1から時点t2まで、制御信号線ref(i)に入力される制御信号がHレベルとなる。これに伴い、参照トランジスタT2Bのソース電極とドレイン電極との間がオン状態となるため、駆動トランジスタTDBのゲート電極と、参照電位線Lrefとが接続される。これにより、駆動トランジスタTDBのゲート電極の電位Vg、及び、コンデンサCSBの一方の電極の電位が、参照電位VREFと等しくなる。ここで、参照電位VREFは、例えば、+1V程度である。これにより、発光素子ELBが消灯される。つまり、時点t1に制御信号線ref(i)に入力される駆動パルスは、消灯パルスである。制御信号線ref(i)に消灯パルスが入力されるため、駆動トランジスタTDBのゲート-ソース間電圧Vgs(つまり、ゲート電位Vgとソース電位Vsとの差Vg-Vs)を駆動トランジスタTDBの閾値Vtより小さくすることができる。このため、駆動トランジスタTDBにオン電流が流れることに伴う初期化電位線Liniの電圧降下を抑制できる。
【0050】
続いて、時点t2において、制御信号線ref(i)に入力される制御信号がLレベルとなり、制御信号線ini(i)に駆動パルスが入力される。これにより、時点t2から時点t3まで、制御信号線ini(i)に入力される制御信号がHレベルとなる。これに伴い、初期化トランジスタT1Bのソース電極とドレイン電極との間がオン状態となるため、発光素子ELBのアノード電極と、初期化電位線Liniとが接続される。これにより、発光素子ELBのアノード電極の電位及び駆動トランジスタTDBのソース電極の電位Vsが、初期化電位VINIと等しくなる。ここで、初期化電位VINIは、例えば、-2V程度であり、発光素子ELBのアノード電極の電位及び駆動トランジスタTDBのソース電極の電位Vsは、時点t2から時点t3にかけて、+1V程度以上の電位から、-2V程度の電位まで低下する。これに伴い、駆動トランジスタTDBのゲート電極の電位Vgも低下する。
【0051】
上述のとおり、制御信号線ini(i)に入力される制御信号がLレベル及びHレベルである場合に、初期化トランジスタT1Rは、それぞれオフ状態及びオン状態となる。ここで、初期化トランジスタT1Bのソース電極には、初期化電位VINIが印加される。制御信号がLレベルである場合に、初期化トランジスタT1Rをオフ状態とするために、制御信号のLレベル、つまり、駆動パルスのLレベルは、初期化電位VINIより低い電位に設定される。本比較例では、駆動パルスのLレベル及びHレベルは、それぞれ、例えば、-4V程度、及び、10V程度に設定される。
【0052】
なお、本実施の形態では、時点t2から時点t3までの初期化期間に、駆動トランジスタTDBに比較的大きいオン電流が流れて、初期化電位線Liniの電圧降下が生じ得る。そのため、初期化電位線Liniに印加する電位を、電圧降下分だけ増大させておいてもよい。
【0053】
続いて、時点t3において、制御信号線ini(i)に入力される制御信号がLレベルとなり、制御信号線ref(i)に駆動パルスが入力される。これにより、時点t3から時点t5まで、制御信号線ref(i)に入力される制御信号がHレベルとなる。これに伴い、参照トランジスタT2Bのソース電極とドレイン電極との間がオン状態となる。これにより、駆動トランジスタTDBのゲート電極の電位、及び、コンデンサCSBの一方の電極の電位が、参照電位VREFと等しくなる。ここで、参照電位VREFは、例えば、+1V程度である。これにより、駆動トランジスタTDBの閾値補償を行うことができる。つまり、駆動トランジスタTDBのゲート電位Vgとソース電位Vsとの差Vg-Vsが閾値Vtと等しくなる。時点t3から時点t5までの期間は、閾値補償期間である。本比較例では、閾値補償期間は、2Tである。ここで時間Tは、各サブ画素回路の構成などに基づいて決定される長さの時間である。
【0054】
続いて、時点t5において、制御信号線ref(i)に入力される制御信号がLレベルとなり、制御信号線ws(i)に駆動パルスが入力される。これにより、時点t5から時点t6まで、制御信号線ws(i)に入力される制御信号がHレベルとなる。これに伴い、書込みトランジスタT3Bのソース電極とドレイン電極との間がオン状態となる。これにより、駆動トランジスタTDBのゲート電極の電位、及び、コンデンサCSBの一方の電極の電位が、データ信号線Ldb(j)に印加されるデータ信号の電圧と等しくなる。つまり、時点t5から時点t6までの期間は、データ書込み期間である。このように、コンデンサCSBにデータ信号に対応する電圧が保持されることで、駆動トランジスタTDBがデータ信号に対応する電流を発光素子ELBに供給する。したがって、データ信号に対応する輝度で発光素子ELBが発光する。他のサブ画素回路11R、11Gについてもサブ画素回路11Bと同様の動作を行う。
【0055】
以上のような制御態様により、表示装置1001において、映像信号に対応する画像を表示できる。
【0056】
ここで、比較例の表示装置1001の問題について、
図5~
図8を用いて説明する。
図5は、比較例の各サブ画素回路における輝度比と時間との関係を示すグラフである。
図5の横軸には、データ書込み終了時間(
図4の時点t6)以降の時間が示されている。
図6は、比較例の各サブ画素回路における1フレーム期間平均の輝度比とオフ電流の大きさとの関係を示すグラフである。ここで、輝度比とは、各サブ画素回路に所定のデータ信号を供給した場合に想定される理想的な輝度である理想輝度に対する、各サブ画素回路の実際の輝度の比を意味する。
図7は、比較例の各サブ画素回路におけるオフ電流比と、表示部12の温度との関係を示すグラフである。ここで、オフ電流比(Ioff比)とは、室温(RT)におけるオフ電流量に対するオフ電流量の比である。
図8は、比較例の各サブ画素回路における駆動トランジスタのゲート-ソース間電圧比(Vgs比)と、表示部12の温度との関係を示すグラフである。ここで、駆動トランジスタのゲート-ソース間電圧比(Vgs比)とは、室温におけるゲート-ソース間電圧Vgsに対する、ゲート-ソース間電圧の比である。
図5~
図8においては、サブ画素回路11Bに関するグラフが実線で示されており(各グラフ内の符号B参照)、サブ画素回路11R及び11Gに関するグラフが破線で示されている(各グラフ内の符号R及びG参照)。なお、
図7においては、実線のグラフと破線のグラフとが重なっている。
【0057】
表示装置1001の各サブ画素回路において、書込みトランジスタ及び参照トランジスタがオフ状態である場合にも、
図2のサブ画素回路11Bに示されるように、オフ電流Ioffが流れる。なお、
図2においては、サブ画素回路11Bだけにオフ電流Ioffが示されているが、他のサブ画素回路11R及び11Gにおいても同様にオフ電流Ioffが流れる。これにより、データ書込み後(つまり、コンデンサCS
Bに、輝度値に対応する電荷を充電した後)、コンデンサCS
Bから書込みトランジスタT3
B及び参照トランジスタT2
Bを介して電荷が放電される。ここで、サブ画素回路11Bの輝度値(つまり、発光素子EL
Bの輝度値)は、駆動トランジスタTD
Bのゲート-ソース間電圧Vgsに対応し、ゲート-ソース間電圧Vgsは、コンデンサCS
Bに充電されている電荷に依存する。上述したとおり、サブ画素回路11Bのコンデンサの容量は、他のサブ画素回路の容量より大きい。一方、オフ電流Ioffによって各サブ画素回路のコンデンサCS
R、CS
G及びCS
Bから放電される電荷量は、同程度である。したがって、オフ電流Ioffによりコンデンサから放電される電荷量の、当該コンデンサの容量に対する割合は、サブ画素回路11Bの方が他のサブ画素回路11R及び11Gより小さい。
【0058】
ここで、コンデンサCSR、CSG及びCSBの容量を、それぞれ、CR、CG及びCBで表し、オフ電流Ioffによって各コンデンサから放電される電荷をQcで表す。また、コンデンサCSR、CSG及びCSBに印加される電圧(つまり、駆動トランジスタTDR、TDG及びTDBのゲート-ソース間電圧)のオフ電流による低下量をそれぞれΔVgsR、ΔVgsG、及びΔVgsBで表すと、以下の各式が成り立つ。
【0059】
ΔVgsR=Qc/CR (1)
ΔVgsG=Qc/CG (2)
ΔVgsB=Qc/CB (3)
CB>CR=CG (4)
【0060】
したがって、以下の式が成り立つ。
【0061】
ΔVgsB<ΔVgsR=ΔVgsG (5)
【0062】
各駆動トランジスタのゲート-ソース間電圧は、当該駆動トランジスタから電流が供給される発光素子の輝度値に対応する。したがって、オフ電流Ioffに起因する輝度値の低下量は、発光素子EL
Bの方が、発光素子EL
B及びEL
Bより小さい。したがって、
図5に示されるように、各サブ画素回路ともデータ書込み後、時間が経過するにしたがって、輝度比が低下するが、サブ画素回路11Bの輝度比の低下量の方が、サブ画素回路11R及び11Gの輝度比の低下量より小さい。このため、
図6に示されるように、オフ電流Ioffに起因する1フレーム平均の輝度比の低下量も、サブ画素回路11Bの方がサブ画素回路11R及び11Gより小さい。このように、サブ画素回路11Bとサブ画素回路11R及び11Gとで、オフ電流Ioffに起因する輝度比の低下量が異なるため、表示部12のホワイトバランスが崩れる。このようなホワイトバランスの崩れは、例えば、映像信号を補正するなどの方法によって、抑制し得る。
【0063】
しかしながら、
図7に示されるように、オフ電流Ioffの大きさは各書込みトランジスタ及び各参照トランジスタの温度(つまり、表示部12の温度)に依存する。このため、
図8に示されるように、サブ画素回路11Bにおける駆動トランジスタTD
Bのゲート-ソース間電圧比と、サブ画素回路11R及び11Gにおける駆動トランジスタTD
R及びTD
Gのゲート-ソース間電圧比との関係が、温度に応じて変化する。このため、表示部12の温度が変動する場合に、ホワイトバランスの崩れの程度も変動する。このような温度に依存するホワイトバランスの崩れを、例えば、映像信号を動的に補正することで抑制することは不可能ではないが、制御回路1016の構成が複雑となる。
【0064】
このようなホワイトバランスの崩れを低減するために、本実施の形態に係る表示装置1では、制御回路16が、表示部12に係る温度に基づいて、複数の画素回路10の各々の各駆動トランジスタの閾値補償期間を制御する。より具体的には、制御回路16は、表示部12に係る温度が高くなるにしたがって、閾値補償期間を短くする。ここで、本実施の形態に係る表示装置1における閾値補償期間と表示部12の温度との関係について、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施の形態に係る表示装置1における閾値補償期間と表示部12の温度との関係の一例を示すグラフである。
【0065】
図9に示されるように、本実施の形態では、室温においては、閾値補償期間は、比較例と同様に2.0Tであるが、表示部12の温度が上昇するにしたがって、閾値補償期間が短くなる。なお、本実施の形態に係る制御回路16における制御態様は、表示部12に係る温度に基づいて閾値補償期間を制御する点において、比較例の制御回路1016と異なり、その他の制御態様において一致する。
【0066】
ここで、本実施の形態に係る表示装置1における閾値補償期間の制御による効果について、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10は、本実施の形態に係る表示装置1のサブ画素回路11Bにおける各制御信号と、駆動トランジスタTD
Bのソース電位Vs及びゲート電位Vgとの関係を示す模式的なタイミングチャートである。
図10には、
図9に示される表示部12の温度が室温RTより高い温度RT+αの場合におけるタイミングチャートが示されている。
図11は、本実施の形態及び比較例の各サブ画素回路における駆動トランジスタのゲート-ソース間電圧比(Vgs比)と、表示部12の温度との関係を示すグラフである。
図11には、本実施の形態及び比較例を示すグラフが、それぞれ、実線及び点線で示されている。
【0067】
上述したとおり、本実施の形態に係る制御回路16は、表示部12に係る温度に基づいて、複数の画素回路10の各々の各駆動トランジスタの閾値補償期間を制御する。表示部12の温度が、室温RTより高い温度RT+αである場合には、制御回路16は、閾値補償期間がTとなるように、ゲートドライバ13を制御する。これにより、
図10に示されるように各駆動トランジスタのゲート-ソース間電圧(Vgs=Vg-Vs)が、閾値Vtより大きい状態で、閾値補償期間が終了する。このような制御による効果について、以下でより詳細に説明する。
【0068】
例えば、コンデンサCSBの容量CBが、コンデンサCSRの容量CR及びコンデンサCSGの容量CGの2倍であり、閾値補償期間におけるコンデンサCSR、CSG、及びCSBの放電電流量がIcで表される場合について検討する。なお、ここでは、オフ電流Ioffについては考慮しない。
【0069】
まず、表示部12の温度が室温である場合のコンデンサCSR、CSG、及びCSBの放電容量は、Ic×2Tで表される。したがって、駆動トランジスタTDR及びTDGのゲート-ソース間電圧の、閾値補償期間(2T)における変化量は、Ic×2T/CR(=Ic×2T/CG)で表される。また、駆動トランジスタTDBのゲート-ソース間電圧の、閾値補償期間(2T)における変化量は、Ic×2T/CBで表される。ここで、容量CBは、容量CR及びCGの2倍であることから、Ic×2T/CBは、Ic×T/CRと表される。つまり、駆動トランジスタTDBのゲート-ソース間電圧の、閾値補償期間における変化量をΔVxと表すと、駆動トランジスタTDR及びTDGのゲート-ソース間電圧の、閾値補償期間(2T)における変化量を、2ΔVxと表すことができる。
【0070】
したがって、表示部12の温度が室温である場合の閾値補償期間後の駆動トランジスタTDR及びTDGのゲート-ソース間電圧Vgs_rg、及び、駆動トランジスタTDBのゲート-ソース間電圧Vgs_bは、以下のように表される。
【0071】
Vgs_rg=Vt+VREF-VINI-2ΔVx (6)
Vgs_b=Vt+VREF-VINI-ΔVx (7)
【0072】
一方、表示部12の温度が室温より高い温度RT+αである場合には、閾値補償期間がTであるため、コンデンサCSR、CSG、及びCSBの放電容量は、Ic×Tで表される。したがって、駆動トランジスタTDR及びTDGのゲート-ソース間電圧の、閾値補償期間(T)における変化量は、Ic×T/CR(=Ic×T/CG)で表される。また、駆動トランジスタTDBのゲート-ソース間電圧の、閾値補償期間(T)における変化量は、Ic×T/CBで表される。ここで、容量CBは、容量CR及びCGの2倍であることから、Ic×2T/CBは、Ic×T/(2CR)と表される。つまり、上述した変化量ΔVxを用いると、駆動トランジスタTDBのゲート-ソース間電圧の、閾値補償期間における変化量を、ΔVx/2と表すことができる。また、駆動トランジスタTDR及びTDGのゲート-ソース間電圧の、閾値補償期間(T)における変化量を、ΔVxと表すことができる。
【0073】
したがって、表示部12の温度が室温である場合の、閾値補償期間後の駆動トランジスタTDR及びTDGのゲート-ソース間電圧Vgs_rg、及び、駆動トランジスタTDBのゲート-ソース間電圧Vgs_bは、以下のように表される。
【0074】
Vgs_rg=Vt+VREF-VINI-ΔVx (8)
Vgs_b=Vt+VREF-VINI-ΔVx/2 (9)
【0075】
以上のように、オフ電流Ioffを考慮しない場合、駆動トランジスタTDBのゲート-ソース間電圧Vgs_bは、室温の場合より、室温より高い温度RT+αの場合の方が、ΔVx/2高くなる。一方、駆動トランジスタTDR及びTDGのゲート-ソース間電圧Vgs_rgは、室温の場合より、室温より高い温度RT+αの場合の方が、ΔVx高くなる。つまり、閾値補償期間を変化させることによる、ゲート-ソース間電圧の上昇量、つまり、サブ画素回路の輝度の上昇量は、駆動トランジスタTDBの方が、駆動トランジスタTDR及びTDGより小さい。
【0076】
上述したように、オフ電流Ioffによる輝度の低下量は、温度が高くなるにしたがって大きくなる。したがって、本実施の形態に係る表示装置1では、制御回路16が表示部12に係る温度に基づいて各駆動トランジスタの閾値補償期間を制御することで、オフ電流Ioffによる輝度の低下の少なくとも一部を相殺することができる。より具体的には、制御回路16は、表示部12に係る温度が高くなるにしたがって、閾値補償期間を短くする。これにより、
図11に示されるように、各サブ画素回路のゲート-ソース間電圧Vgs比の温度上昇に伴う低下を抑制できるため、オフ電流Ioffに起因する輝度変動を許容輝度範囲内に収めることが可能となる。つまり、表示装置1における温度に依存するホワイトバランスの崩れを抑制できる。また、制御回路16による上記制御は、温度センサ19によって検出された温度に基づいて、ゲートドライバ13から出力される駆動パルスのタイミングを変動させることにより実現できるため、簡素化された構成で制御回路16を実現できる。
【0077】
なお、従来の表示装置においては、すべてのサブ画素回路において十分に閾値補償が完了するように、閾値補償期間を十分に長く確保している。一方、本実施の形態に係る表示装置1においては、表示部12の温度が高い場合に、閾値補償期間を短縮するため、サブ画素回路毎に閾値補償の程度がばらつくおそれがある。このような閾値補償の程度のばらつきに起因するサブ画素回路毎の輝度バラツキについて、
図12を用いて説明する。
図12は、本実施の形態に係る閾値補償期間の長さと、サブ画素回路毎の輝度バラツキとの関係を示すグラフである。
図12において、横軸が閾値補償期間の長さを示し、縦軸が輝度バラツキの大きさを示す。なお、横軸の閾値補償期間の長さは、左から右に進むにしたがって短くなる。
【0078】
図12に示されるように、閾値補償期間が短くなるにしたがって、閾値補償の程度がばらつくことに起因して、輝度バラツキが大きくなる。そこで、本実施の形態では、このような輝度バラツキが許容範囲内に収まるように、閾値補償期間の最小値(
図12の2T-TL)を求めて、閾値補償期間が当該最小値以上となるように制御を行ってもよい。これにより、輝度バラツキを許容範囲内に収めることができる。
【0079】
[4.制御方法]
次に、本実施の形態に係る表示装置1の制御方法について、
図13を用いて説明する。
図13は、本実施の形態に係る表示装置1の制御方法の流れを示すフローチャートである。
【0080】
図13に示されるように、まず、制御回路16は、表示部12に係る温度を検出する(S10)。本実施の形態では、制御回路16は、温度センサ19からの信号に基づいて、表示部12に係る温度を検出する。
【0081】
続いて、制御回路16は、複数の画素回路10の各々の第一駆動トランジスタ及び第二駆動トランジスタの閾値補償期間を制御する(S20)。具体的には、制御回路16は、表示部12に係る温度が高くなるにしたがって、駆動トランジスタTDR、TDG及びTDBの閾値補償期間を短くする。
【0082】
以上のような制御方法により、上述したように、簡素化された構成で、温度に依存するホワイトバランスの崩れを抑制できる。
【0083】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る表示装置などについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示に係る表示装置などは、上記実施の形態に限定されるものではない。実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、実施の形態に対して本開示の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本実施の形態に係る処理回路などを内蔵した各種機器も本開示に含まれる。
【0084】
例えば、上記実施の形態では、発光素子として有機EL素子を用いたが、発光素子は、有機EL素子に限定されない。例えば、発光素子として、QLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)素子などを用いてもよい。
【0085】
また、本開示に係る表示装置における画素回路の構成は、上記実施の形態で用いた画素回路の構成に限定されない。例えば、画素回路は、一つ又は二つのサブ画素回路だけを有してもよいし、4つ以上のサブ画素回路を有してもよい。また、サブ画素回路の構成は、上記実施の形態で用いた画素回路の構成に限定されない。サブ画素回路として、他の公知のサブ画素回路を用いてもよい。
【0086】
また、画素回路10における各サブ画素回路の配置構成は、上記実施の形態のようなStripe型の配置構成に限定されない。例えば、各サブ画素回路の配置構成は、S-Stripe型、Pentail型などであってもよい。
【0087】
また、上記実施の形態では、ゲートドライバ13は、表示部12の片側のみから信号を入力したが、表示部12の両側から信号を入力してもよい。
【0088】
また、データドライバ15の実装態様として、COG(Chip On Glass)型の実装態様が採用されてもよいし、COF(Chip On Flexible)型の実装態様が採用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示は、ホワイトバランスの崩れを抑制できる表示装置として、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ、テレビジョン受信機などの様々な映像表示装置に広く利用できる。
【符号の説明】
【0090】
1、1001 表示装置
10 画素回路
11R、11G、11B サブ画素回路
12 表示部
13 ゲートドライバ
15 データドライバ
16、1016 制御回路
17 電源
19 温度センサ
CSB、CSG、CSR コンデンサ
ELB、ELG、ELR 発光素子
Lcat 負電源線
Lini 初期化電位線
Lref 参照電位線
Lvcc 正電源線
T1B、T1G、T1R 初期化トランジスタ
T2B、T2G、T2R 参照トランジスタ
T3B、T3G、T3R 書込みトランジスタ
TDB、TDG、TDR 駆動トランジスタ