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特開2022-162343ロール摩耗検出ユニット、籾摺機及び籾摺機のロール摩耗検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162343
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】ロール摩耗検出ユニット、籾摺機及び籾摺機のロール摩耗検出方法
(51)【国際特許分類】
   B02B 7/00 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
B02B7/00 Q
B02B7/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067131
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】頼岡 誠治
【テーマコード(参考)】
4D043
【Fターム(参考)】
4D043AA02
4D043GB13
4D043JA03
4D043JA12
4D043LA12
4D043MA04
4D043MA07
4D043MA08
4D043MA23
4D043MA26
4D043MB05
(57)【要約】
【課題】ロール摩耗の検出の精度を向上させる、ロール摩耗検出ユニット、籾摺機及び籾摺機のロール摩耗検出方法を提供する。
【解決手段】ロール摩耗検出ユニット1は、第1回転軸11を備える。また、ロール摩耗検出ユニット1は、第1回転軸11に並列して設けられ、第1回転軸11の向心方向及び遠心方向にそれぞれ変位可能な第2回転軸12を備える。また、ロール摩耗検出ユニット1は、長手軸を有する胴部14と、胴部14の一端部を形成し、第2回転軸12に接続する第1ジョイント15と、胴部14の他端部を形成し、籾摺機10の内部に固定される第2ジョイント16と、を備えるアーム部13を備える。また、ロール摩耗検出ユニット1は、第1回転軸11及び第2回転軸12の動力伝達に係る駆動機構17を備える。また、ロール摩耗検出ユニット1は、アーム部13又は第2回転軸12の変位情報を計測するセンサユニット33を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾摺機に備えられるロール摩耗検出ユニットであって、
第1回転軸と、
前記第1回転軸に並列して設けられ、前記第1回転軸の向心方向及び遠心方向にそれぞれ変位可能な第2回転軸と、
長手軸を有する胴部と、前記胴部の一端部を形成し、前記第2回転軸に接続する第1ジョイントと、前記胴部の他端部を形成し、前記籾摺機の内部に固定される第2ジョイントと、を備えるアーム部と、
第1回転軸及び第2回転軸の動力伝達に係る駆動機構と、
前記アーム部又は前記第2回転軸の変位情報を計測するセンサユニットと、を備える、
ロール摩耗検出ユニット。
【請求項2】
前記センサユニットが、角度センサと、前記角度センサにより計測された前記変位情報に基づいて籾摺機の制御を行う制御部と、を含む、
請求項1に記載のロール摩耗検出ユニット。
【請求項3】
前記センサユニットが、前記変位情報に基づいて前記アーム部の変位距離を算出する、
請求項1又は2に記載のロール摩耗検出ユニット。
【請求項4】
前記第2回転軸の回転速度が前記第1回転軸の回転速度よりも速い、
請求項1~3のいずれか1項に記載のロール摩耗検出ユニット。
【請求項5】
前記第2回転軸の回転方向が、前記第1回転軸の回転方向とは逆方向である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のロール摩耗検出ユニット。
【請求項6】
前記第1回転軸と、前記第2回転軸と、により形成される間隙を基点にした場合、前記間隙の上部方向から下部方向に向かって前記第1回転軸及び前記第2回転軸が回転する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のロール摩耗検出ユニット。
【請求項7】
前記センサユニットにより算出される前記変位距離の値が所定の値よりも低い値である場合、前記第1回転軸及び前記第2回転軸の動作を停止させる制御をする、
請求項4~6のいずれか1項に記載のロール摩耗検出ユニット。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のロール摩耗検出ユニットと、
前記第1回転軸及び第2回転軸にそれぞれ接続可能な第1ロール及び第2ロールにより形成される一対の籾摺ユニットと、を備える、
籾摺機。
【請求項9】
少なくとも前記第1回転軸に接続可能な第1ロールと、
少なくとも前記第2回転軸に接続可能な第2ロールと、を備え、
前記第1ロール及び前記第2ロールの、遠心方向の互いに重複する法線の距離を一定に保ちつつ変位可能な、
請求項8に記載の籾摺機。
【請求項10】
前記第1ロールと、前記第2ロールと、を交換可能な、
請求項9に記載の籾摺機。
【請求項11】
前記第1回転軸及び前記第2回転軸の回転速度を、それぞれ多段階に変更可能な変速機構を備える、
請求項8~10のいずれか1項に記載の籾摺機。
【請求項12】
前記第1ロール及び/又は前記第2ロールの状態を各種パラメーターとして表示可能な表示機構を備える、
請求項9~11のいずれか1項に記載の籾摺機。
【請求項13】
籾摺りに伴って変位する軸の変位角度を計測する工程と、
前記変位角度に基づいて変位距離の値を算出する工程と、
前記値が閾値に達した場合に籾摺機の駆動を停止する工程と、を含む、
籾摺機のロール摩耗検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロール摩耗検出ユニット、籾摺機及び籾摺機のロール摩耗検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、籾摺機の籾摺りロールの摩耗を検出するため、籾摺時に摩耗検出装置を用いてロールの周面を監視する技術が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-20293号公報
【特許文献2】特開平5-168959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、カメラ等の光学式センサを用いてロールの摩耗を検出するものであるために、粉塵等の影響でロール摩耗検出の精度が悪くなるおそれがあり、また、異常摩耗の検出も困難になり得る。
【0005】
また、特許文献2では、物理的接触があって初めてロール軸間距離が所定距離以下になったことを検出することになり、リミットスイッチのオン/オフにより特定の一時点でしかロール摩耗を検出しないため、異常摩耗の検出も困難になり得る。
【0006】
このように、従来の技術では、多角摩耗等のロールの異常摩耗の検出が困難になる。また、例えば、カメラ等によるロールの摩耗検出によっては、籾摺処理の途中で原料の供給が途絶えた場合等であっても、引き続き籾摺処理が適切になされていると判断され続ける可能性もある。そのような場合には、適切な籾摺処理の状態へ至らせる対処をするとの判断を、長時間にわたってし難い状況にもなり得る。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ロールの摩耗状態を経時的に検出し、ロール摩耗の検出の精度を向上させる、ロール摩耗検出ユニット、籾摺機及び籾摺機のロール摩耗検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本実施の形態に係るロール摩耗検出ユニットは、第1回転軸を有する。また、ロール摩耗検出ユニットは、第1回転軸に並列して設けられ、第1回転軸の向心方向及び遠心方向にそれぞれ変位可能な第2回転軸を有する。また、ロール摩耗検出ユニットは、長手軸を有する胴部と、胴部の一端部を形成し、第2回転軸に接続する第1ジョイントと、胴部の他端部を形成し、籾摺機の内部に固定される第2ジョイントと、を備えるアーム部を有する。また、ロール摩耗検出ユニットは、第1回転軸及び第2回転軸の動力伝達に係る駆動機構を有する。また、ロール摩耗検出ユニットは、アーム部に接続し、アーム部の変位情報を計測するセンサユニットを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るロール摩耗検出ユニットによれば、ロールの摩耗の検出の精度を維持又は向上させる、ロール摩耗検出ユニット、籾摺機及び籾摺機のロール摩耗検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)本実施の形態に係るロール摩耗検出ユニットを備える籾摺機の概略斜視図(モーター等の駆動系が表されている図)、(B)本実施の形態に係る籾摺機の概略左側面図(ロール等の作用部が表されている図)
図2】(A)本実施の形態に係るロール摩耗検出ユニットの概略左側面図(ロール等の作用部が表されている図)、(B)本実施の形態に係るロール摩耗検出ユニットが備えるセンサユニットの概略図
図3】(A)本実施の形態に係るロール摩耗検出ユニットの概略右側面図(モーター等の駆動系が表されている図)、(B)ロールが取り付けられた、本実施の形態に係るロール摩耗検出ユニットの概略左側面図
図4】(A)本実施の形態に係るロール摩耗検出ユニットの概略右側面図(モーター等の駆動系が表されている図)、(B)ロールが取り付けられた、本実施の形態に係るロール摩耗検出ユニットの概略左側面図
図5】本実施の形態に係る籾摺機を用いた籾摺の方法を表す概略のフロー図
図6】本実施の形態に係る籾摺機に設けられた表示箇所の一例を示す概略図
図7】本実施の形態に係る籾摺機に設けられた表示箇所に表示されるパラメーター及びその際のロール摩耗検出ユニットの形態の一例を示す概略図
図8】2つのロールが均一に摩耗するロールを備える籾摺機に設けられた表示箇所に表示されるパラメーター及びその際のロール摩耗検出ユニットの形態の一例を示す概略図
図9】2つのロールの互いの交換が必要な籾摺機に設けられた表示箇所に表示されるパラメーター及びその際のロール摩耗検出ユニットの形態の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態に係るロール摩耗検出ユニット1について、図面を例示しながら説明する。なお、図1に示すように、籾摺機10の高さ方向をY軸方向、籾摺機が備えるロール摩耗検出ユニット1の第1回転軸11及び第2回転軸12の延在(長手)方向をZ軸方向、YZ軸に垂直な方向をX軸方向とするXYZ座標系を設定し、適宜用いて説明する。また、各部材の厚さ、寸法は、説明のために適宜省略する。また、本明細書において、「回転」は、回動を含む。また、「検出」は、検知を含む。
【0012】
図2(A)及び図3(A)に示すように、本開示に係るロール摩耗検出ユニット1は、第1回転軸11と、第1回転軸11に並列して設けられ、第1回転軸11の向心方向及び遠心方向にそれぞれ変位可能な第2回転軸12と、長手軸を有する胴部14と、胴部14の一端部を形成し、第2回転軸12に接続する第1ジョイント15と、胴部14の他端部を形成し、籾摺機10の内部に固定される第2ジョイント16と、を備えるアーム部13と、第1回転軸11及び第2回転軸12の動力伝達に係る駆動機構17と、アーム部13又は第2回転軸12の変位情報を計測するセンサユニット33と、を備える。
【0013】
第1回転軸11は、長手軸を有する棒状の部材であり、籾摺機10の内部に少なくとも一部を収容可能な部材である。籾摺機10に収容された第1回転軸11は、図1(A)及び(B)に示すように、籾摺機10において、水平方向に配置されている。
【0014】
第2回転軸12は、第1回転軸11と同一又は略同一の形状及び寸法を有する部材である。
【0015】
図2(A)(ロール等の作用部が表されている図)、及び図3(A)(モーター等の駆動系が表されている図)に示すように、籾摺機10に収容された第1回転軸11と第2回転軸12とは、2つの回転軸により形成される間隙を基点にした場合に、この間隙の上部方向から下部方向に向かって2つの回転軸が回転する。換言すれば、図3(A)では、第1回転軸11は反時計回りに回転し、第2回転軸12は時計回りに回転することにより、互いに逆方向に回転する。また、第2回転軸12の回転速度は、第1回転軸11の回転速度よりも速くなっている。これらにより、籾摺機10の上部から下部に向かって、効率的に脱ぷ処理を進めることができる。
【0016】
アーム部13は柱状の部材であり、長手軸を有する胴部14と、胴部14の一端部を形成し、第2回転軸12に接続する第1ジョイント15と、胴部14の他端部を形成し、籾摺機10の内部に固定される第2ジョイント16と、を備える。
【0017】
胴部14は長手軸を有する線状の部材であり、一端部に第1ジョイント15と、他端部に第2ジョイント16と、を有する部材である。
【0018】
第1ジョイント15は、胴部14の一方端を形成している部位であり、スイベルジョイント等の、いわゆる揺動可能な継手により形成される。第1ジョイント15の旋回部が第2回転軸12に接続し、アーム部13を変位させるシリンダー50の作用に伴う第2回転軸12の変位に伴い変位可能となる。
【0019】
第2ジョイント16は、胴部14の他方端を形成している部位であり、第1ジョイント16と同様に、揺動可能な継手により形成される。第2ジョイント16が籾摺機10の内部に接続されて固定され、第2回転軸12の変位にかかわらず、固定箇所からは変位しない。すなわち、第2回転軸12の変位によっても、アーム部13の他端部は固定され、一端部は第2回転軸12の変位に伴い変位する。
【0020】
駆動機構17は、第2回転軸12を駆動させる第1駆動機構18と、第1回転軸11を駆動させる第2駆動機構19と、第1回転軸11と第2回転軸12との回転速度を調節するクラッチ機構20と、を含む機構である。
【0021】
第1駆動機構18は、複数のプーリーにより形成される第1プーリーユニット21と、第1プーリーユニット21に装着される第1ベルト22と、により形成される。第2駆動機構19は、複数のプーリーにより形成される第2プーリーユニット23と、第2プーリーユニット23に装着される第2ベルト24と、により形成される。
【0022】
ここで、第1回転軸11に取り付けられる第1プーリー25は、中央に貫通孔を有する大径部25aと、中央に貫通孔を有する小径部25bと、により形成され、大径部25a及び小径部25bの貫通孔の中心軸は互いに同軸である。第1プーリー25の小径部25bに設けられた貫通孔に、第1回転軸11の一端を挿入することにより、第1プーリー25が第1回転軸11に取り付けられる。また、第2回転軸12に取り付けられる第2プーリー26は、第1プーリー25と同一又は略同一のサイズ及び形状を有する部材である。ここで、第2プーリー26の大径部26aの貫通孔に、第2回転軸12の一端を挿入し、第2プーリー26の小径部26bにかけて第2回転軸12の一端を挿入することにより、第2プーリー26が第2回転軸12に取り付けられる。
【0023】
第1プーリーユニット21は、従動プーリーとして機能する第2プーリー26と、2つのアイドルプーリー27と、モーターに接続する第1原動プーリー28と、により形成される。
【0024】
第2プーリーユニット23は、従動プーリーとして機能する第1プーリー25と、2つのアイドルプーリー27と、モーターに接続する第2原動プーリー29と、により形成される。
【0025】
第1プーリーユニット21の第2プーリー26及び第2プーリーユニット23の第1プーリー25は、互いの周面を対向させて配置されている。上述のように、第1プーリー25の小径部25bの貫通孔に第1回転軸11が挿入され、第2プーリー26の大径部26aの貫通孔に第2回転軸12が挿入されていることから、第2プーリー26及び第1プーリー25を対向させて配置した場合、第1プーリー25の大径部25a及び第2プーリー26の小径部26bが対向する。また、第1プーリー25の小径部25b及び第2プーリー26の大径部26aが対向する。
【0026】
第1ベルト22及び第2ベルト24は、それぞれゴム材により形成されるエンドレスベルトであり、それぞれ同一又はほぼ同一の寸法に形成された帯状の部材である。第1ベルト22及び第2ベルト24は、第1プーリーユニット21及び第2プーリーユニット23においてそれぞれ平行掛けされて装着される、いわゆるサーペンタインベルトである。これにより、ベルトの数量を減らせることが可能になり、補機駆動を単純化でき、籾摺機10の内部に配置される補機を含む部材の位置を予め規定することができるので、籾摺機10のコンパクト化を図ることができる。
【0027】
また、第1プーリーユニット21及び第2プーリーユニット23に取り付けられた第1ベルト22及び第2ベルト24は、第2プーリー26及び第1プーリー25を従動プーリーとして機能させるため、第2プーリー26及び第1プーリー25の小径部25b、26bの周面に、それぞれ接触させて取り付けられている。
【0028】
同時に、第1プーリー25及び第2プーリー26の大径部25a、26aの周面は、クラッチ機構20を介して第1ベルト22及び第2ベルト24の外周面とそれぞれ接触可能に配置される。これにより、第1プーリー25及び第2プーリー26は、第2プーリーユニット23及び第1プーリーユニット21のアイドラープーリーとしても、それぞれ機能する。
【0029】
クラッチ機構20は、第1プーリー25の大径部25aの周面に沿って湾曲した形状を有する第1湾曲部30と、第1湾曲部30とは反対方向に湾曲し、第2プーリー26の大径部26aの周面に沿って湾曲した形状を有する第2湾曲部31と、により形成される。これら第1湾曲部30及び第2湾曲部31は、図3(A)では各プーリーの大径部25a、26aの周面に沿って配置される部材である。
【0030】
第1プーリーユニット21を駆動させる場合、図3(A)に示すように、モーター32aの駆動に伴い第1原動プーリー28が回転する。このとき、第2湾曲部31が反時計回りに第2プーリー26の大径部26aの周面に沿って移動することにより、第2プーリー26の大径部26aと第2ベルト24との接触部位に滑り込む。これにより、大径部26aと第2ベルト24との接触が回避される。
【0031】
また、第1プーリー25の大径部25aと第1ベルト22との間に配置されていた第1湾曲部30が、第1ベルト22と大径部25aとの接触位置から、第1プーリー25の大径部25aの周面に沿って反時計回りに移動することにより、第1プーリー25の大径部25aと第1ベルト22とが接触する。これにより、第2プーリー26の小径部26bの回転及び第1プーリー25の大径部25aの回転が作用し、第1プーリーユニット21の駆動により第2回転軸12が第1回転軸11よりも高速で回転する。また、第1プーリーユニット21を駆動させる場合には、第2プーリーユニット23を駆動させるモーター32bは停止させておく。
【0032】
一方、第2プーリーユニット23を駆動させる場合、図4(A)に示すように、モーター32bの駆動に伴い第2原動プーリー29が回転する。このとき、第1湾曲部30が時計回りに第1プーリー25の大径部25aの周面に沿って移動することにより、第1プーリー25の大径部25aと第1ベルト22との接触部位に滑り込む。これにより、大径部25aと第1ベルト22との接触が回避される。
【0033】
また、第2プーリー26の大径部26aと第2ベルト24との間に配置されていた第2湾曲部31が、第2ベルト24と大径部26aとの接触位置から、第2プーリー26の大径部26aの周面に沿って時計回りに移動することにより、第2プーリー26の大径部26aと第2ベルト24とが接触する。これにより、第1プーリー25の小径部25bの回転及び第2プーリー26の大径部26aの回転が作用し、第2プーリーユニット23の駆動により第1回転軸11が第2回転軸12よりも高速で回転をする。また、第2プーリーユニット23を駆動させる場合には、第1プーリーユニット21を駆動させるモーター32aは停止させておく。
【0034】
このように、第1プーリー25の大径部25aと第1ベルト22との接触、第2プーリー26の大径部26aと第2ベルト24との接触、をそれぞれクラッチ機構20によって切替可能とすること、並びに、適宜、一定時間の経過等により第1プーリーユニット21及び第2プーリーユニット23の駆動及び停止を切り替えること、により、第1回転軸11及び第2回転軸12の回転速度を切り替えることが可能になる。このような特徴により、一般的な籾摺機に採用されているような、回転速度の変更ができないという点を解消することができる。
【0035】
図2(A)及び(B)に示すように、センサユニット33は、角度センサ34と、制御部35と、を有し、アーム部13に接続され、アーム部13又は第2回転軸12の変位情報を経時的に検出するユニットである。
【0036】
角度センサ34は、アーム部13又は第2回転軸12の傾きの状態を示す物理量である傾き角度(変位角度)θを変位情報として計測する。
【0037】
制御部35は、変位情報に基づいて、アーム部13又は第2回転軸12の変位距離(第2回転軸12が移動いたときの軌跡の距離の取り得る範囲(長さL))を算出できる。また、制御部35は、算出した変位距離の値が、予め設定されているアーム部13又は第2回転軸12の変位情報の値(閾値)よりもやや低い値を検出すると、駆動回路への駆動信号の出力を停止することにより、第1回転軸11及び第2回転軸12の動作を停止させる。この、「やや低い値」とは、第1回転軸11及び第2回転軸12の動作を停止させ制動した場合に、第2回転軸12に取り付けられているロール(本実施の形態では第2ロール37)厚が5mmを下回らない値をいう。
【0038】
また、センサユニット33は、計測モードと待機モードとの2種類の動作モードで動作する。センサユニット33は、計測モードで動作する場合、電源から第1電力の供給を受けて角度センサ34によりアーム部13又は第2回転軸12の傾き角度を計測する。そして、制御部35は、アーム部13又は第2回転軸12傾き角度に基づいて、変位距離を示す計測情報を生成して送出する。一方、センサユニット33は、待機モードで動作する場合、電源から第1電力よりも低い第2電力の供給を受けて動作し、制御部35により、動作モードを計測モードへ切替可能な状態で待機する。
【0039】
また、センサユニット33は、アーム部13又は第2回転軸12の変位距離に応じて、ロール直径、残ロール厚、ロール摩耗度合い、籾摺時間、モーター負荷、ロール圧力、流量、脱ぷ率、等を適宜算出・収集し、ロールの状態を各種パラメーターとして後述の表示機構に表示させることができる。また、ロールの交換時期、ロールの推定処理量を適宜予測・算出することもできる。そして、ロール交換予定日時及び残時間を表示機構に表示させることもできる。また、ロール交換時期、籾摺処理の終了までの残時間等、各種情報の数値に応じて、適宜表示機構に表示された情報の色を変更させることもできる。
【0040】
このように、センサユニット33は、特定の一時点でのみではなく経時的にアーム部13又は第2回転軸12の変位情報を検出し、それに基づいて各種パラメーターを取得・表示させることができ、ユーザーに適宜・適切なタイミングで、ロールの交換の促しや指示、ロールの周面の形状といった摩耗状態等の通知をすることができる。このとき、2つのロールの摩耗率が同一の籾摺機、摩耗率が異なる籾摺機のいずれの籾摺機であっても、ユーザーに適宜・適切なタイミングで、ロールの交換の促しや指示、ロールの周面の形状といった摩耗状態等の通知をすることができる。(図7~9)。
【0041】
次に、本実施の形態に係るロール摩耗検出ユニット1が組み込まれた籾摺機10について説明する。
【0042】
図1(B)に示すように、籾摺機10は、ロール摩耗検出ユニット1と、ロール摩耗検出ユニット1の第1回転軸11及び第2回転軸12にそれぞれ接続可能な第1ロール36及び第2ロール37により形成される一対の籾摺ユニット40と、により形成される。
【0043】
籾摺機10に組み込まれたロール摩耗検出ユニット1は、籾摺機10の中央から下部近傍に配置される。これにより、籾摺処理時に、籾摺機10の下部に効率的に籾殻、玄米、未処理の籾等を落下させ、収容させることができる。
【0044】
図1(B)、図3(B)及び図4(B)に示すように、第1ロール36は、ロール摩耗検出ユニット1の第1回転軸11及び第2回転軸12にそれぞれ接続可能な籾摺りロールである。第1ロール36は、筒状の芯部38と、芯部38の外周面にわたって設けられるゴム部39とにより形成される。芯部38の内面には接続機構が設けられており、芯部38の開口に第1回転軸11、第2回転軸12の他端を挿入することができる。これにより第1ロール36を、ロール摩耗検出ユニット1の第1回転軸11及び第2回転軸12と着脱可能に取り付けできる。
【0045】
第2ロール37は、第1ロール36と同一の原材料を用いて形成される部材であり、第1ロール36と同一又はほぼ同一の外形形状を有する部材である。そのため、第1ロール36と同様、第2ロール37は、ロール摩耗検出ユニット1の第1回転軸11及び第2回転軸12に、着脱可能に取り付けできる。
【0046】
第1回転軸11及び第2回転軸12にそれぞれ取り付けられた第1ロール36及び第2ロール37は、一対の籾摺ユニット40を形成する。
【0047】
なお、本実施の形態では、第1回転軸11に第1ロール36が取り付けられ、第2回転軸12に第2ロール37が取り付けられる形態を例示する。
【0048】
このように、第1プーリー25及び第2プーリー26の周面を互いに対向させて配置可能であることから、第1プーリーユニット21及び第2プーリーユニット23の反対側に配置される一対の籾摺ユニット40を形成する第1ロール36及び第2ロール37の周面も、互いに対向する。
【0049】
また、籾摺処理が行われる場合、この第1ロール36及び第2ロール37との間の間隙は、籾摺処理の対象物である籾に籾摺処理を施すことが可能な程度に規定される。
【0050】
また、第1ロール36及び第2ロール37の、籾摺処理時の遠心方向の互いに重複する法線の距離(第1ロール36及び第2ロール37との間の間隙)は、一定に保たれつつ、変位可能である。そして、この間隙を、玄米及び/又は籾は通過可能である。
【0051】
次に、籾摺機10を用いた籾摺の方法について、図1(A)、(B)を参照して説明する。
【0052】
まず、籾摺機10の上部開口に設けられた投入口41から籾摺機10の内部に搬送される籾は、シュート部42を流下し、第1ロール36及び第2ロール37により形成される一対の籾摺ユニット40に線状又は帯状の軌跡を形成して搬送される。
【0053】
一対の籾摺ユニット40に搬送された籾は、回転している第1ロール36及び第2ロール37の間に形成される間隙に向かって落下する。
【0054】
このとき、まず、第1プーリーユニット21の駆動及びクラッチ機構20により、第2プーリー26が第1プーリー25よりも高速で回転し、それに伴い、第2回転軸12に取り付けられた第2ロール37も、第1回転軸11に取り付けられた第1ロール36よりも高速で回転している。そのため、回転している第1回転軸11及び第2回転軸12に取り付けられた第1ロール36及び第2ロール37の間に形成される間隙に向かって落下する籾は、異なる回転速度の2つのロールに摩擦され、籾から籾殻を除去され、玄米と籾殻とに分けられる。
【0055】
ここで、第2回転軸12の回転速度は第1回転軸11の回転速度よりも速いため、籾摺処理につれて、第2回転軸12に接続する第2ロール37の周面が、第1ロール36の周面よりも早く摩耗する。
【0056】
そして、第1ロール36に接続する第1回転軸11は揺動可能に籾摺機10に接続される一方で、第2ロール37に接続する第2回転軸12は向心方向及び遠心方向にそれぞれ変位可能であることから、第1ロール36及び第2ロール37の周面の摩耗に伴い、第1ロール36と第2ロール37の、遠心方向の互いに重複する法線の距離を一定に保ちつつ、第2ロール37が遠心方向、かつ、第1ロール36に向かって変位していく。換言すれば、第1ロール36と第2ロール37との間の間隙を籾摺可能な程度に保ちつつ、第2ロール37が遠心方向、すなわち、第1ロール36の向心方向に向かって変位していく。それに伴い、アーム部13、第2回転軸12の変位角度が徐々に大きくなる。
【0057】
そして、図5に示すように、アーム部13、第2回転軸12の変位角度θは、アーム部13に接続したセンサユニット33により経時的に計測される(ステップS10)。
【0058】
次に、センサユニット33は、計測した変位角度θに基づいて、第2回転軸12の変位距離Lを算出する。この時、変位角度θ及び/又は変位距離Lに基づいて、図6に示すように、ロールの直径、残ロール厚、ロール摩耗度合い、籾摺時間、モーター負荷、ロール圧力、流量、脱ぷ率、等を適宜算出・収集する(ステップS11、ステップS12)。
【0059】
変位角度θに基づいて算出される距離Lの上限値(閾値)は予め設定されており、籾摺処理の停止に関する制御をするための基準値を表している。
【0060】
変位角度θに基づいて変換される距離の値が閾値に達した場合、第1プーリーユニット21の駆動を停止させる制御がなされ、第1回転軸11及び第2回転軸12の回転が停止する(ステップS15)。このとき、ステップS15に至る前に、ロールの交換時期、ロールの推定処理量を適宜算出してもよい(ステップS13)。また、ロール交換予定日時及び残時間を表示機構に表示させてもよい(ステップS14)。このとき、ロール交換時期、籾摺処理の終了までの残時間等、各種情報の数値に応じて、適宜表示機構に表示された情報の色を変更できるようにしてもよい。
【0061】
その後、適宜新たなロールを第1回転軸11及び/又は第2回転軸12に取り付け、籾摺処理を再開する。
【0062】
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
【0063】
例えば、本実施の形態では、第2ロール37は第1ロール36と同一の原材料を用いて形成される部材として説明したが、籾摺処理をすすめることができるのであれば、これに限定されるものではない。例えば、より速く回転する回転軸に取り付けられる第1ロール36又は第2ロール37よりも固いゴムを有するものに変更してもよい。これにより、第1回転軸11及び第2回転軸12の回転速度を切り替えることなく、籾摺処理を行うことができる。そして、本実施の形態において、高速回転するロールと低速回転するロールとの回転速度の切り替えをする場合のロールの摩耗比が1:1、切り替えをしない場合のロールの高速回転するロールと低速回転するロールとの摩耗比が2:1となるのに対し、摩耗比を1:1にすることが可能になる。
【0064】
また、第1ロール36と、第2ロール37と、を、適宜、交換可能にしてもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、第1ベルト22及び第2ベルト24を平ベルトとして説明したが、Vベルトであってもよい。
【0066】
また、本実施の形態では、第1回転軸11よりも第2回転軸12の回転速度が速い形態を例示して説明したが、第1回転軸11の回転速度を第2回転軸12の回転速度よりも速い形態を採用してもよい。さらに、図示しない変速機構を採用し、第1回転軸11と第2回転軸12との回転速度を、それぞれ多段階に適宜変更可能にしてもよい。この場合には、予め設定された所定のロール摩耗度等のパラメーターの値にロールの摩耗度等の値が到達したときに、2つのロールの摩耗度を均等にするように、第1回転軸11と第2回転軸12との回転速度を、適宜変更することができる。
【0067】
また、本実施の形態では高速回転するロールと低速回転するロールとの摩耗比を2:1とすることが可能な形態及び摩耗比を1:1にすることが可能な形態を、ユーザーがそれぞれ変更可能に設定可能な操作部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 ロール摩耗検出ユニット、10 籾摺機、11 第1回転軸、12 第2回転軸、13 アーム部、14 胴部、15 第1ジョイント、16 第2ジョイント、17 駆動機構、18 第1駆動機構、19 第2駆動機構、20 クラッチ機構、21 第1プーリーユニット、22 第1ベルト、23 第2プーリーユニット、24 第2ベルト、25 第1プーリー、25a 大径部、25b 小径部、26 第2プーリー、26a 大径部、26b 小径部、27 アイドルプーリー、28 第1原動プーリー、29 第2原動プーリー、30 第1湾曲部、31 第2湾曲部、32a モーター、32b モーター、33 センサユニット、34 角度センサ、35 制御部、36 第1ロール、37 第2ロール、38 芯部、39 ゴム部、40 籾摺ユニット、41 投入口、42 シュート部、50 シリンダー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9