(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162346
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】自動走行可能な作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20221017BHJP
A01D 34/64 20060101ALI20221017BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20221017BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
A01B69/00 301
A01D34/64 M
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067134
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】萬治 寧大
(72)【発明者】
【氏名】久國 智彦
【テーマコード(参考)】
2B043
2B083
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB11
2B043DA15
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA12
2B043EA18
2B043EA32
2B043EB05
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC15
2B043ED01
2B043ED27
2B043EE01
2B043EE08
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA18
2B083HA21
2B083HA52
5H301AA03
5H301BB12
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD05
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH10
(57)【要約】
【課題】自動走行可能な作業機において、意図しない自動走行が回避されることである。
【解決手段】作業機は、自動走行における走行目標を設定する走行目標設定部52と、自動走行における走行制御情報を設定する走行制御情報設定部53と、走行目標と自機位置とに基づいて走行機体を自動走行させる自動走行制御部54と、走行目標設定部52と走行制御情報設定部53を管理する走行管理部50と、管理端末CTと、を備える。管理端末CTは、データ通信を通じて走行管理部50との間でデータ交換可能な自動走行支援部70と、走行制御情報を表示する表示デバイス80とを備え、自動走行支援部70は、走行制御情報設定部53に設定された走行制御情報をダウンロードして表示デバイス80に表示し、走行管理部50は、自動走行支援部70からの自動走行許可指令に応答して、自動走行の開始を自動走行制御部54に命じる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動走行可能な作業機であって、
走行機体と、
自機位置を算出する自機位置算出ユニットと、
自動走行における走行目標を設定する走行目標設定部と、
自動走行における走行制御情報を設定する走行制御情報設定部と、
前記走行目標と前記自機位置とに基づいて前記走行機体を自動走行させる自動走行制御部と、
前記走行目標設定部と前記走行制御情報設定部を管理する走行管理部と、
管理端末と、を備え、
前記管理端末は、データ通信を通じて前記走行管理部との間でデータ交換可能な自動走行支援部と、前記走行制御情報を表示する表示デバイスとを備え、
前記自動走行支援部は、前記走行制御情報設定部に設定された前記走行制御情報をダウンロードして前記表示デバイスに表示し、
前記走行管理部は、前記自動走行支援部からの自動走行許可指令に応答して、自動走行の開始を前記自動走行制御部に命じる作業機。
【請求項2】
前記走行管理部は、前記走行制御情報設定部に設定された前記走行制御情報を書き換える走行制御情報書き換えデータを前記走行管理部に与える請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記管理端末は、前記走行機体に着脱可能である請求項1または2に記載の作業機。
【請求項4】
前記走行制御情報には、走行パラメータ、作業パラメータ、前記走行目標、走行可能距離のうちの少なくとも1つが含まれている請求項1から3のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項5】
前記データ通信は、無線または有線で行われる請求項1から4のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項6】
前記自動走行支援部は、自動走行中においても、前記走行制御情報書き換えデータを前記走行管理部に与えることができる請求項2に記載の作業機。
【請求項7】
前記走行制御情報設定部で設定されている前記走行制御情報及び前記走行目標設定部で設定されている前記走行目標は、自動走行中において、前記表示デバイスに表示される請求項1から6のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項8】
前記走行目標は、前記管理端末で作成されるか、または前記管理端末によってダウンロードされた走行経路である請求項1から7のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項9】
前記自動走行支援部は、前記走行管理部を通じて、前記走行機体の停車及び増減速、前記走行機体に装備された作業機器の動作調整を前記自動走行制御部に命じることができる請求項1から8のいずれか一項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行可能な作業機を適切な自動走行条件で走行させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業管理者の誤操作による自動走行の開始を防止する機能を有する作業車両が開示されている。この作業車両は、自動走行をするための自動走行プログラムを格納した制御部と、操作端末と通信可能な通信部と衛星からの信号を受信する受信部とを含むユニットが車両に装着されたことを検出する着脱検出部とを備えている。制御部は、着脱検出部がユニットの車両への装着を検出しない場合には、自動走行を禁止する。つまり、自動走行を開始するには、ユニットを車両に装着した後、自律走行開始の指示を行うことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
草刈機や田植機や収穫機などの作業機では、車速などの走行パラメータや作業機器の動作速度などの作業パラメータは作業地によって異なるので、これらのパラメータは作業走行の前に適切に設定される必要がある。しかしながら、特許文献1による作業車では、自動走行の許可条件が、単にユニットを車両に装着して、自律走行開始の指示を行うだけである。このため、意図しない走行制御情報(走行パラメータや作業パラメータを含む)に基づいて、自動走行が開始されてしまう不都合が生じる。
本発明の目的は、自動走行可能な作業機において、意図しない自動走行が回避されることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による自動走行可能な作業機は、走行機体と、自機位置を算出する自機位置算出ユニットと、自動走行における走行目標を設定する走行目標設定部と、自動走行における走行制御情報を設定する走行制御情報設定部と、前記走行目標と前記自機位置とに基づいて前記走行機体を自動走行させる自動走行制御部と、前記走行目標設定部と前記走行制御情報設定部を管理する走行管理部と、管理端末と、を備え、
前記管理端末は、データ通信を通じて前記走行管理部との間でデータ交換可能な自動走行支援部と、前記走行制御情報を表示する表示デバイスとを備え、前記自動走行支援部は、前記走行制御情報設定部に設定された前記走行制御情報をダウンロードして前記表示デバイスに表示し、前記走行管理部は、前記自動走行支援部からの自動走行許可指令に応答して、自動走行の開始を前記自動走行制御部に命じる。
【0006】
この構成では、管理端末が走行管理部とデータ交換できることが、作業機が自動走行を行うための条件となる。作業管理者によって操作される管理端末が、走行管理部にアクセスしてダウンロードされた走行制御情報を表示デバイスに表示し、作業管理者がその走行制御情報を確認した後に、管理端末から走行管理部に自動走行許可指令が与えられることにより、作業機の自動走行が開始される。作業管理者が自動走行させようとする作業機の走行制御情報を前もって確認するため、意図しない自動走行の開始が回避される。
【0007】
本発明では、前記走行管理部は、前記走行制御情報設定部に設定された前記走行制御情報を書き換える走行制御情報書き換えデータを前記走行管理部に与える。この構成では、表示デバイスに表示された走行制御情報が作業管理者の意図する内容でない場合、作業管理者は、管理端末を通じて、走行制御情報を書き換える走行制御情報書き換えデータを走行管理部に与えることができるので、所望の走行制御情報に基づく自動走行が行われる。
【0008】
本発明では、前記管理端末は、前記走行機体に着脱可能である。これにより、作業管理者は、作業機から離れた位置で、作業機を自動走行させるべく管理端末を操作することができる。
【0009】
本発明では、前記走行制御情報には、走行パラメータ、作業パラメータ、前記走行目標、走行可能距離のうちの少なくとも1つが含まれている。走行パラメータは、走行制御の目標値または制限値であり、車速や旋回半径などである。作業パラメータは、作業地に適した作業仕様に基づく作業制御の目標値または制限値であり、作業速度や作業機器の位置決めなどである。走行目標は、自動走行時の目標座標点や目標走行経路などである。このような走行制御情報を自動走行前に確認し、必要なら、書き換えることで、所望の自動走行が確実に行われる。
【0010】
本発明では、作業機に備えられた走行管理部と、作業機から取り外し可能な管理端末との間のデータ通信は、無線または有線で行われる。管理端末が走行機体にクレードルなどを介して装着される場合には、通信状態が安定する有線でのデータ通信が好ましく、管理端末が、作業機から離れている作業管理者が持参している場合には、無線でのデータ通信が好ましい。
【0011】
作業機が適正に作業しているかどうかは、実際の作業機が作業を開始することで判明することが少なくない。作業機を無人で自動走行させる場合には、作業管理者は、作業機から離れた位置で監視している場合が多い。このため、自動走行が開始された後にも、作業機から離れた位置において、作業機の走行挙動や作業挙動が変更可能であると好都合である。このことから、本発明では、前記自動走行支援部は、自動走行中においても、前記走行制御情報書き換えデータを前記走行管理部に与えることができる。
【0012】
作業機の自動走行中に、作業機の走行挙動や作業挙動を変更する場合、現状の作業機に設定されている自動走行のための情報が確認できると好都合である。このことから、本発明では、前記走行制御情報設定部で設定されている前記走行制御情報及び前記走行目標設定部で設定されている前記走行目標は、自動走行中において、前記表示デバイスに表示される。
【0013】
作業機の自動走行では、走行目標点や走行経路などの走行目標が必要となる。作業地を隈なく作業するためには、作業地を網羅する走行経路が作業地の形状と作業内容とに基づいて予め作成される。比較的小さな作業地の場合、そのような走行経路は管理端末で作成することができるが、作業地が大きい場合や走行経路が複雑な場合、その走行経路作成には高い演算処理能力が必要となるので、クラウドサービスセンタなどに設置されたコンピュータが用いられる。このことから、本発明では、前記走行目標は、前記管理端末で作成されるか、または前記管理端末によってダウンロードされた走行経路である。
【0014】
作業機が無人で自動走行している際に、作業機の進行方向に人や動物などの走行障害物が存在している場合、あるいは作業機が暴走した場合には、管理端末をリモコンとして利用し、緊急処理が行われると好都合である。このことから、本発明では、前記自動走行支援部は、前記走行管理部を通じて、前記走行機体の停車及び増減速、前記走行機体に装備された作業機器の動作調整を前記自動走行制御部に命じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】草刈機と管理端末との制御機能を示す機能ブロック図である。
【
図4】管理端末の表示画面の一例を示す画面図である。
【
図5】管理端末の表示画面の一例を示す画面図である。
【
図6】管理端末の表示画面の一例を示す画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の自動走行可能な作業機の実施形態として草刈機を説明する。なお、以下の説明では、
図1と
図2とに示される矢印Fの方向を「機体前方」、矢印Bの方向を「機体後方」、
図1に示される矢印Uの方向を「機体上方」、矢印Dの方向を「機体下方」、
図2に示される矢印Lの方向を「機体左方」、矢印Rの方向を「機体右方」とする。
【0017】
図1と
図2とに示されるように、草刈機は、走行機体1として、走行装置と機体フレーム8と備えている。走行装置は、前輪ユニット2Aと後輪ユニット2Bとを備える。前輪ユニット2Aは、キャスタ輪型に構成されている左右一対の前輪からなる。後輪ユニット2Bは、独立的に駆動可能な左後輪と右後輪とを有する。機体フレーム8は、走行装置によって対地支持されている。走行機体1の前部に、運転座席3を有する運転部4が形成されている。運転部4の下方に、左後輪と右後輪とに対して独立して回転動力を供給する左モータ5aと右モータ5bとからなる走行用モータユニット5が設けられている。走行機体1の後部に、走行用モータユニット5に電力を供給するバッテリパック6が備えられている。前輪ユニット2Aと後輪ユニット2Bとの間に、草刈装置7が設けられている。
図2に示すように、走行用モータユニット5と後輪ユニット2Bとの間の動力伝達を行うために、走行用のトランスミッション20が設けられている。作業機器としての草刈装置7は、走行機体1に対して昇降操作するリンク機構9を介して機体フレーム8に支持されている。リンク機構9は、刈高さを調整する手動操作具としての高さ調整レバー13によって操作される。この刈高さは、図示されていないセンサによって検出され、制御系で用いられる。リンク機構9は電気駆動式で構成することができる。草刈装置7には、刈刃ハウジング10、刈刃ハウジング10の内部に、車体上下方向に沿う方向の支軸(図示せず)を回転中心にして回転可能に設けられた刈刃11が備えられている。刈刃11は、刈刃モータ14からの動力により回転する。
【0018】
門形状である転倒保護フレーム15は、運転座席3の後方から立設されている。転倒保護フレーム15にはブラケット16が設けられ、このブラケット16に、管理端末CTを装着するためのクレードル17が設けられている。管理端末CTは、クレードル17に装着されることで、草刈機の制御系とデータ通信によりデータ交換可能に有線接続する。クレードル17から離された管理端末CTは、草刈機の制御系とデータ通信によりデータ交換可能に無線接続することができる。もちろん、クレードル17に装着した状態でも、管理端末CTは、刈機の制御系とデータ交換可能に無線接続可能である。
【0019】
図1と
図2とに示されるように、運転部4には、手動操作により、車速調整および向き調整を行う手動操作具としての、走行操作具ユニット12が備えられている。走行操作具ユニット12を構成する左操作レバー12aと右操作レバー12bは、運転座席3の両横側方に振り分けられている。運転者は、左操作レバー12aと右操作レバー12bとの間を通り抜け、運転座席3の前方に形成されたフロアープレートを通じて、乗車または降車する。
【0020】
図2に示されるように、左操作レバー12aと右操作レバー12bとは、それぞれ横軸芯周りで揺動変位する。この揺動変位は、車体前後方向の変位であり、縦変位と称する。さらに、左操作レバー12aと右操作レバー12bとは、それぞれ別な横軸芯周りでも揺動変位する。この揺動変位は、車体横断方向の変位であり、横変位と称する。さらに、左操作レバー12aの縦変位による変位経路は第1経路L1と称し、右操作レバー12bの変位経路の縦変位による変位経路は第2経路L2と称する。左操作レバー12aの横変位による変位経路は第3経路L3と称し、右操作レバー12bの横変位による変位経路は第4経路L4と称する。第1経路L1と第3経路L3とは、分岐点JPで接続しており、第2経路L2と第4経路L4とは、分岐点JPで接続している。第1経路L1と第3経路L3とは、分岐点JPで、ほぼ直交しており、第2経路L2と第4経路L4とは、分岐点JPで、ほぼ直交している。左操作レバー12a及び右操作レバー12bの変位は、図示されていないセンサによって検出され、制御系で用いられる。
【0021】
図3は、草刈機の制御系の中核となる制御装置CUと管理端末CTとにおける機能部を示す機能ブロック図である。制御装置CUは、複数の電子制御ユニットから構成されている。制御装置CUは、自機位置算出ユニット51と、走行目標設定部52と、走行制御情報設定部53と、自動走行制御部54と、手動走行制御部55、走行管理部50と、機体側通信部90Aとを備えている。
【0022】
自機位置算出ユニット51は、走行機体1の位置(自機位置)を算出する。この実施形態では、自機位置算出ユニット51は、衛星測位を用いて地図座標(作業地座標または経緯度座標)を算出する。これに代えて、自機位置算出ユニット51は、カメラやレーザスキャンを用いて自車位置を算出してもよい。走行目標設定部52は、自動走行における走行目標を設定する。この実施形態では、走行目標は、作業地を網羅するように作業走行(草刈り走行)するために、予め作成された走行経路である。これに代えて、走行目標として、往復走行における往路目標点及び復路目標点を採用することも可能である。
【0023】
走行制御情報設定部53は、自動走行における走行制御情報を設定する。走行制御情報には、車速などの走行パラメータ、刈刃回転速度や刈高さなどの作業パラメータ、走行経路などの走行目標、バッテリ容量等に基づく走行可能距離などが含まれている。
【0024】
自動走行制御部54は、走行目標と自機位置とに基づいて走行機体1を自動走行させる。具体的には、走行目標設定部52で設定された目標走行経路と、自機位置算出ユニット51によって算出された自機位置及び機体方位とから、走行機体1の目標走行経路に対する位置ずれ及び方位ずれを解消するように操舵制御データを生成する。この実施形態では、自動走行制御部54は、刈刃速度設定器18によって設定された回転速度で刈刃11を回転させるため、回転制御データ(作業制御データの一種)を生成する。
【0025】
操舵制御データは、主にインバータ回路によって構成されている走行機器調節器としての後輪速度調節器61に送られる。後輪速度調節器61は、操舵制御データに基づいて、走行用モータユニット5を構成する左モータ5aと右モータ5bとの回転を、つまり後輪ユニット2Bの左右輪の速度を独立的に制御する。
【0026】
手動走行制御部55は、走行操作具ユニット12の操作に応じて、操舵制御データを生成する。具体的には、左操作レバー12aが第1経路L1において分岐点JPから前方に変位するほど、後輪ユニット2Bの左後輪の前進回転速度が高くなり、左操作レバー12aが第1経路L1において分岐点JPから後方に変位するほど、左後輪の後進回転速度が高くなる。同様に、右操作レバー12bが第2経路L2において分岐点JPから前方に変位するほど、後輪ユニット2Bの右後輪の前進回転速度が高くなり、右操作レバー12bが第2経路L2において分岐点JPから後方に変位するほど、左後輪の後進回転速度が高くなる。左操作レバー12aの分岐点JPの位置、及び右操作レバー12bの分岐点JPの位置が中立位置であり、走行用モータユニット5は中立状態となる。
【0027】
回転制御データは、主にインバータ回路によって構成されている作業機器調節器としての刈刃速度調節器62に送られる。刈刃速度調節器62は、回転制御データに基づいて、刈刃モータ14の回転を制御する。なお、自動走行制御部54は、車速と刈刃速度とを比例させるモード、または互いに独立して動作させるモードあるいはその両方を備える。
【0028】
走行管理部50は、走行目標設定部52と走行制御情報設定部53とを管理し、作業管理者による操作入力または管理端末CTからの指令に基づいて、走行目標設定部52による走行目標の設定、走行制御情報設定部53による走行制御情報の設定などを管理する。
【0029】
管理端末CTは、草刈機の制御装置CUに備えられた機体側通信部90Aとデータ交換可能な端末側通信部90Bと、表示デバイス及び操作入力デバイスとして機能するタッチパネル80とを備えている。管理端末CTは、タブレットコンピュータまたはスマートフォンなどによって構成することができる。
【0030】
管理端末CTは、実質的にソフトウエアで実現される機能である自動走行支援部70を備えている。自動走行支援部70は、機体側通信部90Aと端末側通信部90Bとを通じて、制御装置CUの間でデータ交換する。自動走行支援部70は、走行制御情報設定部53に設定されている走行制御情報をダウンロードしてタッチパネル80に表示させる機能、走行制御情報設定部53に設定されている走行制御情報を書き換える走行制御情報書き換えデータを生成して、走行管理部50に与える機能を有する。さらに、自動走行支援部70は、走行目標設定部52で設定されている走行目標をダウンロードしてタッチパネル80に表示させる機能、走行目標設定部52で設定されている走行目標を書き換える走行目標書き換えデータを生成して、走行管理部50に与える機能も有する。このような、走行制御情報や走行目標のダウンロードやその表示、走行制御情報書き換えデータや行目標書き換えデータの生成及び送出は、自動走行前の初期処理としてだけでなく、自動走行中においても、可能である。
【0031】
また、自動走行支援部70は、走行機体1の自動走行を許可する自動走行許可指令を生成して、走行管理部50に送出する機能、走行機体1の停車及び増減速を指令する走行指令を走行管理部50に送出する機能、走行機体1に装備された作業機器(刈刃モータ14など)の動作調整を行う動作調整指令を走行管理部50に送出する機能も有する。
【0032】
上述した機能を実行するために、自動走行支援部70は、走行制御情報管理部71、走行目標管理部72、走行指令生成部73、表示情報生成部74を備えている。表示情報生成部74は、タッチパネル80を通じて、グラフィックユーザインターフェースを作り出す機能を有し、自動走行支援部70によって取り扱われる情報やデータの入力、修正、選択などを行うための表示画面データを生成し、タッチパネル80に表示する。
【0033】
走行制御情報管理部71は、走行制御情報設定部53によって設定されている走行制御情報を管理する。例えば、
図4に示されるような表示画面を通じて、作業管理者は、車速、刈刃速度、刈高さなど、現状の走行制御情報を確認し、必要に応じてその修正を行う。走行制御情報管理部71は、そのような処理を管理する。
【0034】
走行目標管理部72は、走行目標設定部52によって設定されている走行目標(この例では走行経路)を管理する。例えば、
図5に示されるような表示画面を通じて、作業管理者は、現状設定されている走行経路を確認し、必要に応じてその変更を行う。走行目標管理部72は、そのような処理を管理する。さらに、走行目標管理部72は、入力された作業地の大きさから走行経路を生成して制御装置CUに転送する機能、他のコンピュータによって生成された走行経路をダウンロードして制御装置CUに転送する機能も有する。
【0035】
走行指令生成部73は、管理端末CTに対する作業管理者の操作に基づいて、走行機体1の自動走行の開始を自動走行制御部54に命じる自動走行許可指令を走行管理部50に発令することができる。例えば、
図6に示されるような表示画面において、作業管理者が、自動走行開始ボタン81をクリックすることで、自動走行許可指令が走行管理部50に発令される。なお、自動走行が開始されると、停車ボタン82、減速ボタン83、増速ボタン84がアクティブとなり、作業管理者は、管理端末CTを通じて、芝刈機の動作を制御することができる。
【0036】
この実施形態では、作業管理者によって走行制御情報や走行目標が確認された後に、この自動走行開始ボタン81が表示されるように構成されている。したがって、走行制御情報や走行目標の確認なしで、自動走行が開始されることは回避される。但し、予め、管理端末CTの走行制御情報管理部71に所望の走行制御情報(その識別コード等でもよい)が記憶され、走行目標管理部72に所望の走行目標(その識別コード等でもよい)が記憶され、制御装置CUで設定さている走行制御情報及び走行目標と自動照合され、それが合致すれば、上述した確認作業を省略して、自動走行許可指令が発令されるような構成を採用してもよい。
【0037】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、走行装置を駆動する駆動源として走行用モータユニット5が備えられた例を示したが、これに限らない。たとえば、エンジン方式やハイブリッド方式であってもよく、その場合、エンジン動力を変速して走行装置に伝達する無段変速装置が備えられる。
【0038】
(2)上述した実施形態では、管理端末CTは、転倒保護フレーム15に設けられていたが、これに代えて、フェンダー、ボンネット、運転座席3の周辺であってもよい。また、管理端末CTは走行機体1に固定されたものでもよい。
【0039】
(3)上述した実施形態では、走行操作具ユニット12として、揺動支点周りで揺動する操作レバーが取り上げられたが、ステアリングホイールタイプのものが用いられてもよい。
【0040】
(4)
図3で示された機能ブロック図における各機能部の区分けは、説明を分かりやすくするための一例であり、種々の機能部を統合したり、単一の機能部を複数に分割したりすることは自由である。
【0041】
(5)上述した実施形態では、電動走行車両は草刈機であったが、トラクタ、コンバイン、田植機などの農作業機や、ロードローラなど建機、除雪機や散水機などの道路保全機であってもよい。
【0042】
本発明は、自動走行可能な作業機に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 :走行機体
2A :前輪ユニット
2B :後輪ユニット
5 :走行用モータユニット
7 :草刈装置(作業機器)
9 :リンク機構
12 :走行操作具ユニット
13 :高さ調整レバー
14 :刈刃モータ
50 :走行管理部
51 :自機位置算出ユニット
52 :走行目標設定部
53 :走行制御情報設定部
54 :自動走行制御部
61 :後輪速度調節器
62 :刈刃速度調節器
70 :自動走行支援部
71 :走行制御情報管理部
72 :走行目標管理部
73 :走行指令生成部
74 :表示情報生成部
80 :タッチパネル(表示デバイス)
90A :機体側通信部
90B :端末側通信部
CT :管理端末
CU :制御装置