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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162351
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   E01H 5/04 20060101AFI20221017BHJP
   E01H 6/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
E01H5/04 Z
E01H5/04 B
E01H6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067141
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078949
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 勝美
(72)【発明者】
【氏名】戸舘 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】佐野 史知
(72)【発明者】
【氏名】保土澤 定廣
【テーマコード(参考)】
2D026
【Fターム(参考)】
2D026CB03
2D026CC01
(57)【要約】
【課題】除雪作業等、対象物の効率的な排出、操作が容易で連続作業を可能とすること。
【解決手段】作業部3は支点軸8にて垂直方向に旋回可能に枢着された作業部本体4からなる。作業部本体4は、下部4bが略直線状に形成されるとともに上部4aが反走行方向に内弯曲された円弧状に形成され、支点軸8と作業部本体4の上端部4cとの間の距離L1が支点軸8と作業部本体4の下端部4eとの間の距離L2より極大である。作業部本体4を上昇させたとき、作業部本体4に溜まった雪Sの重みにより、下端部4eが前傾する。さらに作業部本体4を上昇させると、下方に移動した雪Sの重みにより、さらに前方に旋回するため排出姿勢となる。押出姿勢から排出姿勢への移行は連続的になされる。排出姿勢では下部4bが起立状態となり上部4aが円弧状に内弯曲されているので、立設された状態で作業部本体4より抜け、雪Sが散乱することない。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機に取り付けられ対象物の押出し作業及び排出作業をする作業部を設けた作業機であって、
上記作業部は支点軸にて垂直方向に旋回可能に枢着された作業部本体からなり、
該作業部本体は、下部が略直線状に形成されるとともに上部が反走行方向に内弯曲された円弧状に形成され、
上記支点軸と作業部本体の上端部との間の距離L1が上記支点軸と作業部本体の下端部との間の距離L2より極大であることを特徴とする作業機。
【請求項2】
請求項1記載の作業機において、上記支点軸と上記作業部本体の上端部との間の距離L1が上記支点軸と上記作業部本体の下端部との間の距離L2の3倍であることを特徴とする作業機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の作業機において、上記作業部本体は上部が前方を向くとともに下部が後傾である押出姿勢から上部が下方を向くとともに下部が起立する排出姿勢に連続的に動作することを特徴とする作業機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか記載の作業機において、上記作業部本体が上記走行機の機体側に付勢される弾性体を介して機体に連結されることを特徴とする作業機。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか記載の作業機において、上記作業部本体の下端部の近傍に上記作業部本体の排出姿勢時での旋回動作を規制するストッパが設けられることを特徴とする作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は雪や土砂等の対象物を押出し、排出する作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
除雪機を例に説明する。従来、例えば、走行機体に対して走行機体の横幅方向に延びる軸芯を揺動中心にして上下揺動する支持フレームと、支持フレームの前部に支持されたブレードと、支持フレームから機体の後方に一体揺動可能に延出された操作ハンドルとが備えられ、操作ハンドルによる支持フレームの上下揺動操作によって、ブレード部を上下揺動操作し、下降作業姿勢と上昇排出姿勢をする除雪機が提案されている。
かかる除雪機は、ロックピンによって、ブレード部を作業角度と、排出角度への揺動を許容する状態にさせる。またロックピンを人為操作するための解除操作具が備えられていて、該解除操作具によってロックピンを操作する。
【0003】
このような除雪機では、走行機体を前進させてブレード部により雪を前方側に押し退け除雪するため、ブレード部を上昇させつつ後進させると、ブレード部に雪が残るという問題があった。再度前進して雪を押し退ける場合、このブレード部に残った雪によって、ブレード部が抱え込める雪の量が減少してしまう。
【0004】
また、後進の際、押し退けた雪及びブレード部上に残った雪がそれぞれ崩れ落ちて、除雪作業後の作業面上に散乱することがあり、効率的な除雪作業ができないでいた。
【0005】
さらに、ブレード部を反転旋回させるためには、解除操作具によってロックピンを操作する必要があり、作業者にとっては操作が煩わしいという問題がある。
【0006】
また、ブレード部を前方に反転さると、ブレード部の前端が後方に移動するので、ブレード部で押し退けた場所に雪が排出されることとなり、作業者の意図に反して作業面が綺麗に除雪できず、作業効率が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-231454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は上記背景に鑑み、除雪作業等、対象物の効率的な排出をすることを目的とする。
【0009】
また、操作が容易で連続作業を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題解決のため、本願発明請求項1による作業機は、走行機に取り付けられ対象物の押出し作業及び排出作業をする作業部を設けた作業機であって、上記作業部は支点軸にて垂直方向に旋回可能に枢着された作業部本体からなり、該作業部本体は、下部が略直線状に形成されるとともに上部が反走行方向に内弯曲された円弧状に形成され、上記支点軸と作業部本体の上端部との間の距離L1が上記支点軸と作業部本体の下端部との間の距離L2より極大であることを特徴とする。
また本願発明請求項2による作業機は、請求項1記載の作業機において、上記支点軸と上記作業部本体の上端部との間の距離L1が上記支点軸と上記作業部本体の下端部との間の距離L2の3倍であることを特徴とする。
また本願発明請求項3による作業機は、請求項1又は請求項2記載の作業機において、上記作業部本体は上部が前方を向くとともに下部が後傾である押出姿勢から上部が下方を向くとともに下部が起立する排出姿勢に連続的に動作することを特徴とする。
また本願発明請求項4による作業機は、請求項1乃至請求項3のいずれか記載の作業機において、上記作業部本体が上記走行機の機体側に付勢される弾性体を介して機体に連結されることを特徴とする。
また本願発明請求項5による作業機は、請求項1乃至請求項4のいずれか記載の作業機において、上記作業部本体の下端部の近傍に上記作業部本体の排出姿勢時での旋回動作を規制するストッパが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
作業部本体の上部が円弧状に内弯曲され下部が直線状に形成されたブレードの形状より、除雪作業において、雪が散乱することなくブレードより抜ける。よって雪は排出された状態の形状を崩すことなく排出され、対象物を効率的に排出することができる。
【0012】
また除雪作業において、作業部本体の押出姿勢から排出姿勢への移行が雪の自重を利用して、連続的に行なわれる。よって操作が容易であり、対象物の連続的な排出作業をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願発明による作業機の側面図である。
図2図1の平面図である。
図3図2のIII視部分拡大図である。
図4図1のIV部の拡大図である。
図5】本願発明による作業機の動作のステップを示す図で、(a)は押出姿勢のステップ、(b)は前排出姿勢のステップ、(c)は排出姿勢のステップ、(d)は後排出姿勢のステップを示す。
図6図5(c)の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に実施の形態を示す本願発明による作業機をさらに詳しく説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0015】
図1乃至図5において、作業機1は、走行機体2と、該走行機体2の前方に設けられたブレード部3と、ハンドル9とからなる。即ち、ブレード部3は、板状体からなる支持フレーム11に連結された昇降アーム10に、支点軸8にて垂直方向に旋回可能に枢着される。該昇降アーム10は走行機体2に取り付けられ、他の支持フレーム12と一体に固着・連結される。昇降アーム10及び支持フレーム12はいずれも丸パイプからなり、支持フレーム12は後端部にハンドル9が形成される。上記走行機体2は、走行方向に沿う機体フレーム15の両側に走行部13が設けられ、機体フレーム15上にバッテリ16が設けられる。走行部13は前輪に駆動輪13a、後輪に従動輪13bが配設され、両輪間にクローラベルト13cが掛け渡される。駆動輪13aには駆動モータ14が配設される。また両輪間には上記昇降アーム10の支点軸17が設けられる。
【0016】
上記ブレード部3は、ブレード4と、該ブレード4の走行方向両側に設けられる側板5と、該ブレード4の下端部4eに設けられるスクレーバ6とからなる。上記ブレード4は、上部4aが反走行方向に内弯曲された円弧状に形成されるとともに、下部4bが略直線状に形成される。即ち、上記ブレード4の内弯曲形状は特殊な形状とされ、上端部4cから中央部4dまでが円弧状に形成され、中央部4dから下端部4eまでが略直線状に形成される。上記ブレード4にはリブ7が取り付けられ、ブレード4の下端部4eの外側に位置するリブ7の下端部7aに上記支点軸8が設けられる。この支点軸8により、上記ブレード4が上記昇降アーム10及び上記支持フレーム11に対し垂直方向に旋回可能に枢着される。19は走行機体2側に付勢された弾性体19であり、上記支持フレーム11と上記リブ7との間に掛け渡される。20は上記リブ7の下端部が扁平状に切欠されてなるストッパ受けであり、上記支持フレーム11の下部に設けられるストッパ21が当接される。
【0017】
上記ブレード4の寸法比は特殊に形成され、支点軸8と上端部4cとの間の距離L1(以下「L1長」と略称する)が支点軸8と下端部4eとの間の距離L2(以下「L2長」と略称する)より極大になるよう設けられる。本実施例ではL1=300mm、L2=100mmとなっており、前者長L1が後者長L2より3倍に形成される。この寸法比の極大性は、L1長がL2長より十分に大であるようにする。具体的には、L1:L2長の比を3:2位とすると、ハンドル9を大きく上下させてブレード4を大きく上方に回動させる必要があるため、作業者によるブレードの昇降操作に係る動作が大きくなり、作業者に負担がかかる。一方、L1:L2長の比を4:1位とすると、昇降アーム10を上昇させた場合、ブレード4の上方部の雪Sの重みのうち、支点軸8より後方の支持フレーム11側に過大な荷重がかかる。よって、昇降アーム10を上方に上昇させてもブレード4が押出姿勢から排出姿勢に移行することができず、雪Sがブレード4から排出することができない。
【0018】
次に図5に基づき、本実施の形態による作業機の各工程動作を説明する。
【0019】
まず、作業面G上にブレード部3のスクレーバ6を接地させ、走行機2を前進させる。このとき、スクレーバ6は上部が前方を向くとともに下部が後傾である押出姿勢となっている。機体の前進にしたがい、ブレード4の内弯曲部内とその前方に雪Sが溜まっていく(図5(a))。
【0020】
ブレード部3に一定量の雪Sが溜まったら、図示しない作業者がハンドル9を下方に押して昇降アーム10を上昇させ、ブレード部3を上方に移動させる(図5(b))。
【0021】
ここで、昇降アーム10を上昇させた直後のブレード部3についてみてみる。ブレード4の支点軸8と上端部4cとの間の距離L1は、支点軸8と下端部4eとの間の距離L2に対して十分に大であるため、上端部4cは前方に大きく移動する。このため、ブレード4の上部4aにある雪Sが前方側に移動させられる。
【0022】
またブレード4の下端部4eには、ブレード4に溜まった雪Sの重力により、支点軸8を中心にして下方移動のモーメントが働き、これによりブレード4が旋回する。なお、ブレード4の下端部4eには、スクレーバ6が設けられているため、作業面Gにスクレーバ6が接触すると旋回動作が規制される。
【0023】
さらに昇降アーム10を上昇させると、上端部4cは中央部4dより前方側に移動し、上部4aが下方を向くとともに下部が起立した状態の排出姿勢となる(図5(c))。この排出姿勢により、上部4aにある雪Sは上部4aより離れ下方に落下する(図5(c))。
【0024】
このとき、下部4bは略直線状に形成されているため、排出される雪Sは立設された状態のまま下方側に移動し、ブレード4より離脱する。
【0025】
排出姿勢となったブレード部3をさらに上昇させると、下端部4e及びスクレーバ6が作業面Gから離れるので、排出された雪Sの後方への突出はなく、排出に伴うスクレーバ6等による排出雪の削り落とし乃至散乱を防止する。これにより除雪作業が終了する。
【0026】
次いで走行機体2を後進させる。するとブレード4は、走行機2側に付勢されているため、雪Sの重みから解放され、弾性体19の力により図5(d)に示す作業姿勢に復帰する。さらに除雪作業を続ける場合は、昇降アーム10によりブレード4を図5(a)の元位置まで下降させ、作業する。
【0027】
ここで上記した各工程とブレード4の動作を詳しくみる。
雪S等の押出し作業をするとき、ブレード部3の姿勢(押出姿勢)は、下端部4eに設けたスクレーバ6が作業面Gに接する状態となる(図5(a))。また雪S等の排出作業をするとき、ブレード部3の姿勢(排出姿勢)は、下部4b即ち下端部4eからブレード部3の中央部4dまでが起立した状態となる(図5(c))
【0028】
図5(a)から図5(c)への移行は、ブレード4を上昇させたとき、ブレード4に溜まった雪Sの重みにより、下端部4eが前傾し(図5(b))、さらにブレード4を上昇させると、下方に移動した雪Sの重みにより、さらにブレード4が前方に旋回するため排出姿勢となる。つまり図5(a)から図5(c)への移行は連続的になされる。
【0029】
図5(c)において、支点軸8は下端部4eの近傍に配置されているので、ブレード4が旋回され排出姿勢になると、下部4bが起立状態となり下端部4eが作業面Gに接する。これによりブレード4の旋回が制限されるため、下端部4eより後方に雪Sが排出されない。
【0030】
この点を具体的に述べる。ブレード4をさらに上昇させた場合、上部4aが円弧状に内弯曲され下部4bが直線状に形成されたブレード4の形状より、立設された状態でブレード4より抜け、雪Sが散乱することがない。よって雪Sは起立して排出された状態の形状を崩すことなく、排出されるのである。本実施例では、ブレード4に固設されたリブ7の下端部にストッパ21が当接されるストッパ受け20を設けてあるため、ストッパ21がストッパ受け20に当接されると排出姿勢となったブレード4のさらなる旋回動作が防止される。よってブレード4上部4aの不測の旋回動作による排出雪Sの散乱が防止される。
【0031】
除雪作業中は、下端部4eが作業面Gに接触しているため、ブレード4に雪Sの荷重がかかってもブレード4が旋回動作することがない。
【0032】
本実施の形態によれば、L1長がL2長より十分に大であるため、上記各工程動作の連続化が可能であり、排出された雪Sが散乱せず、立設状態での除雪を可能とする。このように一連の工程を繰り返すことにより、連続作業をすることができるから、作業効率が向上する。
【0033】
本願発明は上記実施の形態に制限されない。例えば、上記実施例は歩行型の作業機に適用する場合であるが、自走型の作業機にも適用可である。
【0034】
また本願発明による作業機は、除雪だけでなく、土砂等排出姿勢が不定形な対象物にも適用可能である。
【0035】
さらに支点軸8と上端部4cとの間の距離L1は支点軸8と下端部4eとの間の距離L2の2倍位であっても上記した効果を奏することができる。昇降アーム10とハンドル9とは、上記実施例では一体の支持フレームから構成し、構成の簡易化、電源の小容量化、低コスト化、故障防止等を可能とした。しかし、両部材が別体であっても昇降アーム10の昇降に対してブレード部3が旋回動作すればよい。具体的に述べると、自動走行あるいは遠隔操作にした場合、人為操作するハンドル9を不要とすることができる。また、昇降アーム10をモータやシリンダ等で昇降駆動させる場合、ハンドル9の上下動が不要になる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本願発明は除雪作業や土砂の排出作業に活用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 作業機
2 走行機
3 ブレード部
4 ブレード
4a 上部
4b 下部
4c 上端部
4d 中央部
4e 下端部
5 側板
6 スクレーバ
6a 前縁部
7 リブ
8 支点軸
9 ハンドル
10 昇降アーム
11 支持フレーム
12 支持フレーム
13 走行部
13a 駆動輪
13b 従動輪
13c クローラベルト
14 モータ
15 機体フレーム
16 バッテリ
17 昇降アーム支点軸
19 弾性体
20 ストッパ受け
21 ストッパ
G 作業面
S 雪
図1
図2
図3
図4
図5
図6