(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162354
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】X線画像処理装置、X線診断装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
A61B6/00 360B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067147
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 勇介
(72)【発明者】
【氏名】岩井 春樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 基裕
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA08
4C093AA26
4C093CA34
4C093EC16
4C093FA13
4C093FA14
4C093FF03
(57)【要約】
【課題】ユーザの負担を抑えて被ばく低減を図ること。
【解決手段】実施形態に係るX線画像処理装置は、透視関連情報取得手段と、画質評価手段と、処理実行手段とを備える。透視関連情報取得手段は、評価対象の透視画像に関連する透視関連情報を取得する。画質評価手段は、透視関連情報に基づいて、評価対象の透視画像の画質を評価する。処理実行手段は、画質評価手段によって評価された画質に基づく処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の透視画像に関連する透視関連情報を取得する透視関連情報取得手段と、
前記透視関連情報に基づいて、前記評価対象の透視画像の画質を評価する画質評価手段と、
前記画質評価手段によって評価された前記画質に基づく処理を実行する処理実行手段と、を備える、
X線画像処理装置。
【請求項2】
前記画質評価手段は、前記透視画像の画質が予め定められた基準を満たすか否かを評価し、
前記処理実行手段は、前記画質が前記基準を満たすか否かを表す情報を表示する処理を実行する、
請求項1に記載のX線画像処理装置。
【請求項3】
前記処理実行手段は、前記画質評価手段によって評価された前記画質に基づいて、ユーザの操作を受け付ける操作ボタンを、透視保存用とするか撮影用とするかを選択する、
請求項1または2に記載のX線画像処理装置。
【請求項4】
前記処理実行手段は、前記画質評価手段によって評価された前記画質に基づいて、前記評価対象の透視画像について保存の可否を判別する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のX線画像処理装置。
【請求項5】
前記処理実行手段は、前記保存の可否の判別結果を表す情報を表示部に表示する、
請求項4に記載のX線画像処理装置。
【請求項6】
前記処理実行手段は、前記保存の可否の判別結果に基づいて、透視画像に対して画質を向上させる画像処理を実行する、
請求項4または5に記載のX線画像処理装置。
【請求項7】
前記処理実行手段は、前記保存の可否の判別結果に基づいて、透視画像の収集条件を変更する操作を受け付ける、
請求項4または5に記載のX線画像処理装置。
【請求項8】
前記画質評価手段は、前記透視関連情報に基づいて、前記評価対象の透視画像の予め定められた評価指標を算出し、当該算出した評価指標によって、前記評価対象の透視画像の画質を評価する、
請求項1乃至7の何れか1項に記載のX線画像処理装置。
【請求項9】
前記画質評価手段は、ノイズを低減する画像処理の種別に応じて、前記評価対象の透視画像の画質を評価する、
請求項1乃至8の何れか1項に記載のX線画像処理装置。
【請求項10】
X線を照射するX線管と、
前記X線管により照射された前記X線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器によって検出された前記X線に基づくX線画像を処理するX線画像処理装置と、を備え、
前記X線画像処理装置は、
評価対象の透視画像に関連する透視関連情報を取得する透視関連情報取得手段と、
前記透視関連情報に基づいて、前記評価対象の透視画像の画質を評価する画質評価手段と、
前記画質評価手段によって評価された前記画質に基づく処理を実行する処理実行手段と、を備える、
X線診断装置。
【請求項11】
ユーザの操作を受け付ける操作ボタンをさらに備え、
前記処理実行手段は、前記画質評価手段によって評価された前記画質に基づいて、前記操作ボタンを透視保存用とするか撮影用とするかを選択する、
請求項10に記載のX線診断装置。
【請求項12】
コンピュータを、
評価対象の透視画像に関連する透視関連情報を取得する透視関連情報取得手段、
前記透視関連情報に基づいて、前記評価対象の透視画像の画質を評価する画質評価手段、および、
前記画質評価手段によって評価された前記画質に基づく処理を実行する処理実行手段、として機能させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線画像処理装置、X線診断装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線透視検査において、診療放射線技師等のユーザは、ディスプレイに連続的に表示される被検体の透視画像(動画像)を観察しながら被検体の撮影タイミングを伺い、当該撮影タイミングで曝射スイッチを押下することで被検体のX線撮影を行う。X線透視は、X線撮影よりも低線量のX線が被検体に照射され、透視画像は、X線撮影により得られる撮影画像(静止画)と比べて低画質である。
【0003】
近年、AI(Artificial Intelligence:人工知能)等による画質改善技術が向上し、低画質なX線画像を基に高画質なX線画像が得られるようになった。透視画像に対して画質改善を行って、診断基準を満たす画質(診断画像として扱える画質)を有するX線画像が得られれば、当該X線画像を診断画像として保存すればよく、撮影画像の収集は不要となるので、被検体の被爆低減を図ることができる。
【0004】
しかし、透視画像(元のX線画像)の画質が悪い場合、当該透視画像に画質改善を実施しても、診断基準を満たす画質を有するX線画像が得られない。そのため、ユーザは、ディスプレイに表示される被検体の透視画像を観察しながら、X線画像(診断画像)を保存するタイミングで、透視画像を保存するのか(画質改善により撮影画像と同等の画質を有するX線画像が得られるのか)、X線撮影を行うのかを瞬時に判断しなければならず、ユーザの負担が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、ユーザの負担を抑えて、被検体の被ばく低減を図ることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るX線画像処理装置は、透視関連情報取得手段と、画質評価手段と、処理実行手段とを備える。透視関連情報取得手段は、評価対象の透視画像に関連する透視関連情報を取得する。画質評価手段は、透視関連情報に基づいて、評価対象の透視画像の画質を評価する。処理実行手段は、画質評価手段によって評価された画質に基づく処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3A】
図3Aは、第1の実施形態に係る各機能による処理を説明するための図である。
【
図3B】
図3Bは、第1の実施形態に係る各機能による処理を説明するための図である。
【
図4A】
図4Aは、第1の実施形態に係る評価結果の表示の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、第1の実施形態に係る評価結果の表示の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図6A】
図6Aは、第2の実施形態に係る各機能による処理を説明するための図である。
【
図6B】
図6Bは、第2の実施形態に係る各機能による処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、X線画像処理装置、X線診断装置及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。なお、本願に係るX線画像処理装置、X線診断装置及びプログラムは、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、X線診断装置1は、撮影部10と、X線画像処理部20とを備える。
【0011】
撮影部10は、被検体Pに対しX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出するものである。X線画像処理部20は、撮影部10にX線を照射させ、撮影部10で検出されたX線に基づき、画像処理を施すものである。
【0012】
撮影部10は、X線高電圧装置11と、X線管12と、X線絞り器13と、天板14と、X線検出器15と、Cアーム16と、駆動回路17と、システム制御回路18とを有する。
【0013】
X線高電圧装置11は、システム制御回路18の制御に応じて高電圧を発生する。X線管12は、X線高電圧装置11により印加された高電圧に基づいて、X線を照射する。X線絞り器13は、例えば、上下、左右にそれぞれ一対ずつ(計4枚)設けられた絞り羽根を備える。絞り羽根は、X線を遮蔽する鉛等の材料によって平板状に形成されている。X線絞り器13は、システム制御回路18の制御に応じて絞り羽根を開閉し、X線管12から照射されたX線の照射範囲(照射野)を形成する。
【0014】
天板14は、被検体Pを載せるベッドであり、寝台の上に配置される。X線検出器15は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器15は、X線管12から照射されて被検体Pを透過したX線を検出し、検出したX線量に対応した検出信号(X線の検出信号)を処理回路21へ出力する。
【0015】
Cアーム16は、X線管12及びX線絞り器13と、X線検出器15とを、被検体Pを挟んで対向するように保持する。駆動回路17は、システム制御回路18の制御に応じてCアーム16を駆動し、被検体Pに対して回転・移動させる。
【0016】
システム制御回路18は、例えば、プロセッサにより実現される。システム制御回路18は、X線画像処理部20から制御信号を受け取り、当該制御信号に基づき、X線高電圧装置11、X線絞り器13、X線検出器15、駆動回路17を制御することで、撮影部10全体の動作を制御する。
【0017】
X線画像処理部20は、処理回路21と、入力インターフェース22と、ディスプレイ23と、記憶回路24とを有する。
【0018】
入力インターフェース22は、診療放射線技師等のユーザからの各種の入力操作を受け付ける入力装置から構成される。入力インターフェース22は、ユーザから入力操作を受け付け、受け付けた入力操作に対応する電気信号を処理回路21に出力する。例えば、入力インターフェース22は、マウスやキーボード、トラックボールが含まれる。また、入力インターフェース22は、ユーザからの操作を受け付ける操作ボタンとして、透視画像の保存を指示する透視保存ボタン221と、撮影を実行するための撮影ボタン222とを備える。透視保存ボタン221、撮影ボタン222は、例えば、ユーザの手または足による操作を受け付ける、ハンドスイッチ(曝射スイッチ等)やフットスイッチ等から構成される。さらに、入力インターフェース22は、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等から構成されてもよい。
【0019】
ディスプレイ23は、各種の情報を表示する表示装置から構成される。例えば、ディスプレイ23は、X線透視検査に基づき収集された被検体PのX線画像(透視画像や撮影画像)等が表示される。また、ディスプレイ23は、GUI(Graphical User Interface)、X線画像に関する撮影条件等の各種情報を表示する。
【0020】
記憶回路24は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等から構成される。記憶回路24は、処理回路21で使用される、または、処理回路21によって生成された各種情報を記憶する。例えば、記憶回路24は、X線透視検査に基づき収集された被検体PのX線画像(透視画像や撮影画像)、GUI、X線画像に関する撮影条件等の各種情報を記憶する。また、記憶回路24は、処理回路21を、透視関連情報取得機能211、画質評価機能212、処理実行機能213として機能させるプログラムを記憶する。
【0021】
処理回路21は、例えば、プロセッサから構成される。処理回路21は、X線画像処理部20の各構成、及び、撮影部10のシステム制御回路18を制御することにより、X線診断装置1全体を制御する。具体的には、処理回路21は、システム制御回路18に制御信号を供給し、撮影部10に対しX線照射を実施させる。また、処理回路21は、撮影部10により検出されたX線に対応した検出信号を撮影部10から受け取り、X線画像を生成する。
【0022】
また、処理回路21は、記憶回路24に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、透視関連情報取得機能211、画質評価機能212、処理実行機能213として機能する。透視関連情報取得機能211は、透視関連情報取得手段の一例である。画質評価機能212は、画質評価手段の一例である。処理実行機能213は、処理実行手段の一例である。
【0023】
以上、本実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例について説明した。従来、X線透視検査において、診療放射線技師等のユーザは、ディスプレイに連続的に表示される被検体の透視画像(動画像)を観察しながら被検体の撮影タイミング(診断画像を収集、保存するタイミング)を伺い、当該撮影タイミングで曝射スイッチを押下することで被検体のX線撮影を行う。例えば、胃のX線透視検査においては、バリウム(造影剤)を服用した被検体に対し低線量のX線を照射し、透視画像(動画像)を連続的に収集する。ユーザは、ディスプレイに表示された被検体の透視画像から造影剤の流れや溜まり具合を観察しながら、診断画像として保存すべきX線画像(静止画)を撮影するタイミングを伺い、当該撮影タイミングでX線画像の撮影操作を行う。X線透視は、X線撮影よりも低線量のX線が被検体に照射され、透視画像は、X線撮影により得られる撮影画像(静止画)と比べて低画質である。
【0024】
近年、AI(Artificial Intelligence:人工知能)等による画質改善技術が向上し、低画質なX線画像を基に高画質なX線画像が得られるようになった。透視画像に対して、例えば、ノイズ低減、超解像、高解像等の画質改善を行うことで、診断基準を満たす画質(診断画像として扱える画質、例えば、撮影画像と同等の画質)を有するX線画像が得られれば、当該X線画像を診断画像として保存すればよく、撮影画像の収集は不要となるので、被検体の被爆低減を図ることができる。
【0025】
しかし、透視画像(元のX線画像)の画質が悪い場合、当該透視画像に画質改善を実施しても、診断基準を満たす画質を有するX線画像が得られない。そのため、ユーザは、ディスプレイに表示される被検体の透視画像を観察しながら、X線画像(診断画像)を保存するタイミングで、透視画像を保存するのか(画質改善により撮影画像と同等の画質を有するX線画像が得られるのか)、X線撮影を行うのかを瞬時に判断しなければならず、ユーザの負担が大きい。また、収集された透視画像の全てのフレーム(毎フレーム)に対して画質改善を適用すると、処理負荷と時間がかかってしまう。
【0026】
そこで、X線診断装置1は、収集された透視画像の全てのフレーム(毎フレーム)に対して画質改善を行わずに、診療放射線技師等のユーザの負担を抑えて、被検体Pの被ばく低減を図る。X線診断装置1の処理回路21は、(1)評価対象の透視画像に関連する透視関連情報を取得する処理、(2)取得した透視関連情報に基づいて、評価対象の透視画像の画質を評価する処理、(3)画質の評価結果に基づく処理を行う。
【0027】
図2は、X線診断装置1の処理回路21が実施する処理の手順を示すフローチャートである。例えば、入力インターフェース22を介してユーザが透視画像の収集を開始する操作(例えば、フットスイッチを踏み込む操作)を行うと、処理回路21は、記憶回路24に記憶されたプログラムを読み出して実行する(スタート)。これにより、処理回路21は、透視関連情報取得機能211、画質評価機能212、処理実行機能213として機能する。
【0028】
透視関連情報取得機能211は、収集する透視画像のフレーム番号Nを「N=0」に設定後(ステップS101)、フレーム番号Nを「N=N+1」に設定する(ステップS102)。透視関連情報取得機能211は、Nフレーム目の透視関連情報を取得する(ステップS103)。つまり、プログラムの実行開始後、透視関連情報取得機能211は、最初に1フレーム目の透視関連情報を取得する。
【0029】
透視関連情報は、例えば、Nフレーム目(ここでは1フレーム目)の透視画像である。透視関連情報取得機能211は、撮影部10のX線検出器15で検出されたX線の検出信号を受け取り、当該検出信号を基にNフレーム目の透視画像を生成し、これを透視関連情報として取得する。
【0030】
透視関連情報は、評価対象の透視画像に関連する情報である。評価対象の透視画像は、例えば、Nフレーム目(ここでは1フレーム目)の透視画像に対して画質改善された透視画像である。画質改善には、例えば、ノイズ低減、超解像、高解像等の処理があり、適宜、任意に選択できる。ノイズ低減は、透視画像に含まれる各種ノイズ成分を低減する処理である。超解像は、複数枚の透視画像を基に高解像度の透視画像を生成する処理である。高解像は、1枚の透視画像に含まれる特徴を解析することで高解像の透視画像を生成する処理である。
【0031】
画質評価機能212は、Nフレーム目(ここでは1フレーム目)の透視画像(透視関連情報)に基づいて、当該透視画像に対して画質改善された透視画像(評価対象の透視画像)の画質を評価する。つまり、画質評価機能212は、Nフレーム目の透視画像を基に、画質改善の処理が実行された場合の透視画像の画質を評価する。画質評価機能212は、透視関連情報取得機能211が取得した透視関連情報について、予め定められた評価指標を算出する(ステップS104)。評価指標としては、透視画像のSNR(Signal-to-Noise Ratio)やCNR(Contrast to Noise Ratio)、輝度値等がある。例えば、画質評価機能212は、透視関連情報として取得したNフレーム目(ここでは1フレーム目)の透視画像のSNRを算出する。
【0032】
画質評価機能212は、算出した評価指標を基に、評価対象の透視画像の画質を評価する(ステップS105)。例えば、画質評価機能212は、算出したSNRを基に、透視画像に対して画質改善の処理が実行された場合の透視画像(評価対象の透視画像)の画質を評価する。
【0033】
具体的には、画質評価機能212は、算出したSNRが予め設定された閾値を超えた場合には評価結果として「1」を出力し、閾値以下の場合には評価結果として「0」を出力する。評価結果「1」は、画質改善後の透視画像(評価対象の透視画像)の画質が診断基準を満たすことを示す(診断画像として扱える)。評価結果「0」は、画質改善後の透視画像の画質が診断基準を満たさないことを示す(診断画像として扱うことができない)。
【0034】
閾値は、透視画像に対して画質改善の処理を実行した場合に、診断基準を満たす画質(診断画像として扱える画質)を有する透視画像となるか否かを評価する基準値である。閾値は、例えば、画質改善の処理を実行したことにより、診断基準を満たす画質を有するものとなったX線画像について、当該画質改善前のX線画像のSNRを基に設定される。このように、画質評価機能212は、Nフレーム目(ここでは1フレーム目)の透視画像(透視関連情報)に基づいて、Nフレーム目(ここでは1フレーム目)の透視画像に対して画質改善された透視画像(評価対象の透視画像)の画質を評価する。
【0035】
処理実行機能213は、画質評価機能212によって出力された評価結果に基づく情報を、透視関連情報取得機能211が生成したNフレーム目(ここでは1フレーム目)の透視画像とともにディスプレイ23に表示する(ステップS106)。具体的には、
図3A及び
図4Aに示すように、画質評価機能212が評価結果「1」を出力した場合には、処理実行機能213は、透視画像について保存が可能であることを識別する情報(透視保存OK)を透視画像とともに表示する。一方、
図3B及び
図4Bに示すように、画質評価機能212が評価結果「0」を出力した場合には、処理実行機能213は、透視画像について保存が不可であることを識別する情報(透視保存NG)を透視画像とともに表示する。なお、
図3A及び
図3Bは、第1の実施形態に係る各機能による処理を説明するための図である。また、
図4A及び
図4Bは、第1の実施形態に係る評価結果の表示の一例を示す図である。
【0036】
ユーザは、当該識別情報を基に、ディスプレイ23に表示された透視画像の保存の可否を確認できる。なお、透視画像の保存の可否を識別する情報は、テキスト以外に、光や音、振動等で表現してもよい。例えば、処理実行機能213は、透視画像の保存が可能な場合に緑色で発光、透視画像の保存が不可の場合に赤色で発光してもよい。なお、透視画像の保存の可否を識別する情報は、透視画像の保存が可能な場合、不可の場合の何れか一方の場合にのみ、ディスプレイ23に表示してもよい。例えば、透視画像の保存が可能な場合に透視画像の枠線部分を緑色で発光させ、透視画像の保存が不可の場合に透視画像の枠線部分を発光させないようにしてもよい。
【0037】
その後、処理実行機能213は、透視画像の収集が終了したか否かを判別する(ステップS107)。例えば、処理実行機能213は、入力インターフェース22を介して透視画像の収集を終了する操作(例えば、フットスイッチの踏み込みを解除する操作)を受け付けたか否かによって、透視画像の収集が終了したか否かを判別する。処理実行機能213は、透視画像の収集を終了する操作を受け付けていなければ(ステップS107;No)、次のフレーム(ここでは2フレーム目)の透視画像に対して上記と同様の処理を行う(ステップS102~S107)。また、処理実行機能213は、透視画像の収集を終了する操作を受け付けるまで、フレーム毎に、上記一連の処理を繰り返し行う(ステップS102~S107)。一方、処理実行機能213は、透視画像の収集を終了する操作を受け付けた場合(ステップS107;Yes)、処理を終了する(エンド)。
【0038】
以上、第1の実施形態に係るX線診断装置1によれば、透視関連情報取得機能211は、評価対象の透視画像に関連する透視関連情報を取得する。画質評価機能212は、透視関連情報に基づいて、評価対象の透視画像の画質を評価する。処理実行機能213は、画質評価機能212によって評価された画質に基づく処理を実行する。X線診断装置1は、収集された透視画像の全てのフレーム(毎フレーム)に対して画質改善を行わず、診療放射線技師等のユーザの負担を抑えて、被検体Pの被ばく低減を図ることができる。
【0039】
また、X線診断装置1は、透視画像の保存の可否を識別する情報(透視保存OKまたは透視保存NG)を当該透視画像とともにディスプレイ23に表示するので、ユーザは、ディスプレイ23に表示された透視画像の保存の可否を識別する情報を確認して、透視画像の保存の可否、撮影画像収集の要否を迅速かつ容易に判断でき、透視保存ボタン221、撮影ボタン222を適切に操作できる。
【0040】
なお、第1の実施形態では、透視関連情報の取得、評価対象の透視画像の画質評価、及び、評価された画質に基づく処理の実行を、連続的に収集される透視画像のフレーム毎に行う例を説明したが、これらの処理は複数のフレーム毎に行ってもよい。例えば、透視画像がフレームレート15fpsでディスプレイ23に表示される場合、透視関連情報の取得、評価対象の透視画像の画質評価、及び、評価された画質に基づく処理の実行を、15フレーム毎に行ってもよい。この場合、ディスプレイ23に表示された透視画像の保存の可否を識別する情報は、1秒間隔で更新、または、予め定められた時間表示後(例えば、0.5秒後)に消去してもよい。
【0041】
また、第1の実施形態では、処理実行機能213は、画質評価機能212によって出力された評価結果に基づく情報を、透視関連情報取得機能211が生成したNフレーム目の透視画像とともにディスプレイ23に表示する例を説明したが、透視画像と評価結果に基づく情報とは異なるタイミングでディスプレイ23に表示されてもよい。例えば、処理実行機能213は、透視画像に対する評価指標の表示レートが当該透視画像の表示レートより低くてもよく、この場合は、透視画像がディスプレイ23に表示された後、当該透視画像に対する評価結果に基づく情報がディスプレイ23に表示される。
【0042】
また、透視画像の保存が可能であることを示す情報(透視保存OK)がディスプレイ23に表示されている状態で透視保存ボタン221が押下された場合、処理実行機能213は、ディスプレイ23に表示された透視画像(対応する透視画像)に対して画質改善(例えば、ノイズ低減、超解像、高解像等の処理)を行い、画質改善後の透視画像を記憶回路24に記憶してもよい。これにより、診断基準を満たす画質(診断画像として扱える画質)を有するX線画像が得られ、撮影画像の収集は不要となるので、被検体の被爆低減を図ることができる。なお、画質改善は、機械学習された学習済みモデルやルールベース等のAIを利用して行ってもよいし、AIを利用しない演算処理により行ってもよい。
【0043】
また、透視画像の保存が可能であることを示す情報(透視保存OK)がディスプレイ23に表示されている状態で透視保存ボタン221が押下された場合、処理実行機能213は、ディスプレイ23に表示された透視画像(対応する透視画像)に対して、透視検査終了後に画質改善を行うことを識別する情報を付帯させて記憶回路24に記憶してもよい。この場合、処理回路21は、当該透視画像を記憶回路24から読み出した場合や、予め定められた日時が到来した場合等、任意のタイミングで、透視画像(対応する透視画像)に対して画質改善(例えば、ノイズ低減、超解像、高解像等の処理)を行い、画質改善後の透視画像を記憶回路24に記憶してもよい。これにより、診断基準を満たす画質(診断画像として扱える画質)を有するX線画像が得られ、撮影画像の収集は不要となるので、被検体の被爆低減を図ることができる。
【0044】
なお、透視画像の保存が不可であることを示す情報(透視保存NG)がディスプレイ23に表示されている状態で撮影ボタン222が押下された場合、処理実行機能213は、被検体PのX線撮影を行い、X線撮影により得られる撮影画像(X線画像)を記憶回路24に記憶する。
【0045】
また、第1の実施形態では、Nフレーム目の透視画像を透視関連情報として取得する例を説明したが、透視画像収集のために設定された各種条件を透視関連情報として取得してもよい。また、取得した各種条件に基づいて、画質改善後の透視画像(評価対象の透視画像)の画質を評価し、画質の評価結果に基づき、透視画像について保存の可否を識別する情報(透視保存OKまたは透視保存NG)をディスプレイ23に表示してもよい。
【0046】
各種条件には、X線条件、幾何学条件、制御条件等がある。X線条件は、被検体Pに照射されるX線に関する条件であり、管電圧、管電流、焦点サイズ、線質フィルタ、線量、パルス幅等がある。幾何学条件は、X線管12と、被検体Pと、X線検出器15との間の位置関係を示す条件であり、例えば、X線管12とX線検出器15との間の距離(Source Image Distance:SID)等がある。制御条件は、X線管12や寝台を制御する情報である。
【0047】
例えば、画質評価機能212は、取得された条件と、当該条件に対して予め設定された閾値とを比較し、閾値を超えた場合には評価結果として「1」を出力し、閾値以下の場合には評価結果として「0」を出力する。なお、閾値は、例えば、画質改善の処理を実行したことにより、診断基準を満たす画質を有するものとなったX線画像について、当該画質改善前のX線画像を収集した際の条件を基に設定される。
【0048】
また、評価指標は、透視画像自体からではなく上記各種条件から求めてもよい。例えば、画質評価機能212は、透視関連情報として取得されたX線条件を基に、透視画像のSNR(評価指標)を算出してもよい。かかる場合には、画質評価機能212は、例えば、予め対応付けられた、透視画像のX線条件とその透視画像に対し推定されるSNRとの対応関係を用いてSNRを算出する。ここで、上記対応関係は、機械学習によって構築される場合でもよい。そして、第1の実施形態と同様、画質評価機能212は、算出したSNRが予め設定された閾値を超えた場合には評価結果として「1」を出力し、閾値以下の場合には評価結果として「0」を出力する。なお、X線条件以外の上記設定条件を透視関連情報とした場合や、SNR以外の上記評価指標が定められる場合についても同様に実施できる。
【0049】
また、透視画像の収集の際に得られた各種情報を透視関連情報として取得してもよい。また、取得した各種情報に基づいて、画質改善後の透視画像(評価対象の透視画像)の画質を評価し、画質の評価結果に基づき、透視画像について保存の可否を識別する情報(透視保存OKまたは透視保存NG)をディスプレイ23に表示してもよい。
【0050】
各種情報には、X線検出器15で検出されたX線の検出信号、被検体Pへの照射線量、X線検出器15への入射線量(推定値または実測値)、線量指標(EI(Exposure Index)値またはDI(Deviation Index)値)、被検体Pの状態(透視画像間の被検体Pの移動量)等がある。
【0051】
例えば、画質評価機能212は、取得された情報と、当該情報に対して予め設定された閾値とを比較し、閾値を超えた場合には評価結果として「1」を出力し、閾値以下の場合には評価結果として「0」を出力する。なお、閾値は、例えば、画質改善の処理を実行したことにより、診断基準を満たす画質を有するものとなったX線画像について、当該画質改善前のX線画像を収集した際の情報を基に設定される。
【0052】
また、評価指標は、透視画像自体からではなく上記各種情報から求めてもよい。例えば、画質評価機能212は、透視関連情報として取得された被検体Pへの照射線量を基に、透視画像のSNR(評価指標)を算出してもよい。かかる場合には、画質評価機能212は、例えば、予め対応付けられた、照射線量ごとのSNRの情報を用いてSNRを算出する。そして、第1の実施形態と同様、画質評価機能212は、算出したSNRが予め設定された閾値を超えた場合には評価結果として「1」を出力し、閾値以下の場合には評価結果として「0」を出力する。なお、被検体Pへの照射線量以外の上記収集情報を透視関連情報とした場合や、SNR以外の上記評価指標が定められる場合についても同様に実施できる。
【0053】
なお、評価指標は透視関連情報自体でもよい。例えば、透視関連情報として取得されたX線条件を評価指標とし、画質評価機能212は、当該X線条件と、これに対応する閾値との比較に基づき、評価結果「1」または「0」を出力してもよい。また、透視画像間で被検体Pの移動量が大きい場合は、透視画像間で被検体Pの動きによるボケが生じる恐れがある。そのため、被検体Pの状態(透視画像間の被検体Pの移動量)を評価指標とし、画質評価機能212は、被検体Pの状態と、これに対応する閾値との比較に基づき、評価結果「1」または「0」を出力してもよい。
【0054】
評価指標に対応する閾値は、画質改善後の透視画像(評価対象の透視画像)についてユーザによって判断された透視画像の保存の可否に基づき設定されてもよい。例えば、照射線量を評価指標とした場合、異なる照射線量を複数回に分けて被検体に照射することで取得された各透視画像について画質改善を行い、画質改善後の各透視画像(評価対象の透視画像)について、ユーザが保存の可否を判断する。照射線量(評価指標)に対応する閾値は、ユーザによる判断結果が保存可能から保存不可に変化する2つの透視画像について、それぞれに対応する照射線量の中間値等を設定してもよい。
【0055】
また、第1の実施形態では、評価指標と予め設定された閾値との比較結果を基に、評価結果「1」または「0」を出力する例を説明したが、機械学習された学習済みモデルやルールベース等のAIを利用して評価指標に対する評価を行い、当該評価結果を出力してもよい。例えば、画質評価機能212は、上記した学習済みモデルに対して、透視関連情報または評価指標を入力し、学習済みモデルの出力結果として得られる評価結果「1」または「0」を取得してもよい。
【0056】
また、透視関連情報取得機能211は、複数種の透視関連情報を組み合わせて取得してもよく、画質評価機能212は、複数種の透視関連情報に基づいて、評価対象の透視画像の画質を総合的に評価してもよい。つまり、Nフレーム目の透視画像、透視画像収集のために設定された各種条件、透視画像収集の際に得られた各種情報から選択的に組み合わせた複数種の透視関連情報を取得し、複数種の透視関連情報のそれぞれに対応する評価結果を基に、評価対象の透視画像の画質を総合的に評価してもよい。
【0057】
また、画質評価機能212が評価結果「0」を出力した場合、つまり、透視画像の保存が不可の場合、処理実行機能213は、各種条件の変更を促すメッセージをディスプレイ23に表示してもよい。例えば、処理実行機能213は、画質評価機能212が所定回数連続して評価結果「0」を出力した場合、X線条件、幾何学条件、制御条件の何れかを変更することを推奨するメッセージをディスプレイ23に表示する。
【0058】
また、処理実行機能213は、画質評価機能212による画質の評価結果に基づいて、自動輝度調整(Automatic Brightness Control:ABC)を実施してもよい。ABCは、透視画像における画素値の統計値(例えば関心領域内の画素の平均値)を、次のフレームの透視のX線条件にフィードバックし、当該統計値を目標となる値に近づける制御である。具体的には、処理実行機能213は、透視画像の画素値の目標値を、保存可能と判別される透視画像の輝度値と定め、透視画像に対する判別結果を用いてABCを実行する。例えば、処理実行機能213は、評価対象の透視画像を保存不可能と判別した場合に、保存可能と判別する輝度値を目標と定めて線量を上げるように透視のX線条件を変更する。一方、処理実行機能213は、評価対象の透視画像を保存可能と判別した場合、既存のABCを実行する。
【0059】
また、画質評価機能212は、ノイズを低減する画質改善処理の種別に応じて、評価対象の透視画像の画質を評価してもよい。具体的には、処理実行機能213は、画質改善を実施する際に透視画像に適用する画像処理の種別毎の特性に合わせて、評価基準を定めてもよい。例えば、保存対象の透視画像に対し、ノイズの低減を得意とする画像処理を実行する場合には、画質評価機能212は、画質の評価指標に対応した閾値を通常よりも低くなるように変更する。これにより、処理実行機能213は、画質が多少悪い透視画像に対しても保存可能と判別し、ノイズ低減を得意とする画像処理を実行することで診断画像として用いることができる透視画像を生成することができる。X線診断装置1は、透視画像から画質改善させた透視画像を生成できるので、被ばくを低減することができる。なお、処理実行機能213が特性に合わせて画質の評価基準を定める画像処理は1つに限定されない。例えば、処理実行機能213が複数種類の画像処理を用いてノイズ低減を行う場合も複数からなる画像処理全体の特性に合わせて画質の評価基準を定めてもよい。
【0060】
また、処理実行機能213は、画質評価機能212によって評価された結果に基づき、透視保存ボタン221と撮影ボタン222とのいずれか一方を有効とし、他方を無効としてもよい。例えば、画質評価機能212による評価結果が「1」だった場合には、画質改善後の透視画像(評価対象の透視画像)の画質が診断基準を満たすことを示すので、処理実行機能213は、透視保存ボタン221を有効、撮影ボタン222を無効とする。また、画質評価機能212による評価結果が「0」だった場合には、画質改善後の透視画像(評価対象の透視画像)の画質が診断基準を満たさないことを示すので、処理実行機能213は、透視保存ボタン221を無効、撮影ボタン222を有効とする。これにより、透視保存ボタン221、撮影ボタン222をユーザが誤って操作した場合でも、被検体Pに対する不要被ばくを防止することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、透視保存用のボタン(透視保存ボタン221)、撮影用のボタン(撮影ボタン222)の2つの操作ボタンを独立させた場合の例を説明したが、第2の実施形態では、透視保存、撮影を1つの操作ボタンで共用する場合の例を説明する。
【0062】
図5は、第2の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すように、入力インターフェース22は、1つの操作ボタン223を有する。処理実行機能213は、画質評価機能212による画質の評価結果に基づいて、操作ボタン223を、透視保存用、撮影用の何れの機能にするかを選択的に切り替える。
【0063】
具体的には、
図6Aに示すように、画質評価機能212が評価結果「1」を出力した場合には、処理実行機能213は、透視保存用として機能するよう操作ボタン223を制御する。また、
図6Bに示すように、画質評価機能212が評価結果「0」を出力した場合には、処理実行機能213は、撮影用として機能するよう操作ボタン223を制御する。なお、
図6A及び
図6Bは、第2の実施形態に係る各機能による処理を説明するための図である。
【0064】
以上、第2の実施形態に係るX線診断装置1によれば、処理実行機能213は、画質評価機能212によって評価された画質に基づいて、ユーザの操作を受け付ける操作ボタン223を、透視保存用、撮影用の何れとして機能させるかを制御する。これにより、ユーザは、ディスプレイ23に連続的に表示される被検体Pの透視画像(動画像)を観察しながらX線画像(診断画像)を保存するタイミングを伺い、当該タイミングで操作ボタン223を押下するだけで、透視画像の保存または撮影を適切に行うことができ、ユーザの負担を抑えて被ばく低減を図ることができる。
【0065】
なお、第1および第2の実施形態では、透視画像に対して画質改善を実施することを前提とし、画質改善後の透視画像を評価対象の透視画像としたが、ディスプレイ23に表示される透視画像自体(Nフレーム目の透視画像)を評価対象の透視画像としてもよい。また、透視画像自体をそのまま診断画像として扱える等、透視画像自体の画質が診断基準を満たすものであれば、当該透視画像に対して画質改善を行わなくてもよい。例えば、透視関連情報取得機能211は、透視画像収集のために設定された各種条件(X線条件、幾何学条件、制御条件等)や、透視画像収集の際に得られた各種情報(被検体Pへの照射線量、X線検出器15への入射線量(推定値または実測値)、線量指標(EI値またはDI値)、被検体Pの状態(透視画像間の被検体Pの移動量)等)を透視関連情報として取得する。画質評価機能212は、透視関連情報に基づいて、透視画像自体(評価対象の透視画像)の画質を評価し、処理実行機能213は、画質評価機能212によって評価された画質に基づく処理を実行する(例えば、透視保存OKまたはNGの表示、操作ボタン223の機能の切り替えを行う)。
【0066】
ここで、処理実行機能213は、透視画像の評価の結果、透視画像自体をそのまま診断画像として扱える場合と、画質改善を行うことで診断画像として扱える場合とで、区別して表示することができる。例えば、処理実行機能213は、透視画像自体をそのまま診断画像として扱える場合にその旨を示す情報を表示する。
【0067】
また、第1および第2の実施形態では、透視画像の保存もしくは撮影画像の収集を実施する際にはユーザが操作ボタンを操作する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、ボタン操作によらず、評価対象として収集された透視画像に対し画質評価を行ったのちに、画質の評価結果に基づいて透視画像の保存を行ってもよい。例えば、画質評価機能212は、順次収集される透視画像に対し、画質を評価する。処理実行機能213は、画質の評価結果により保存可能と判別された透視画像を抽出し、画質改善を実施する。そして、処理実行機能213は、生成した診断画像を記憶回路24に保存する。これにより、ユーザはフットスイッチの踏み込み等の透視指示を行っている際に、操作ボタンを操作しなくとも透視画像の保存を実行することができる。よって、ユーザによる操作数を増やすことなく、透視画像を保存できるので、ユーザの負担を抑えて被ばくを低減することができる。
【0068】
ここで、診断画像を生成するタイミングは保存可否の判別直後に限られず、処理実行機能213は、保存可能とし抽出した透視画像を記憶回路24に保存し、検査終了後などの任意のタイミングに当該画像処理を実施してもよい。また、処理実行機能213は、抽出した透視画像において、診断画像としての画質を備える透視画像を含む場合には、当該透視画像に対する画質改善を省略してもよい。
【0069】
また、第1および第2の実施形態では、保存可能と判別した透視画像に対しノイズ低減等の画像処理のパラメータを変更しない場合を説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、処理実行機能213は、透視画像に対して画質改善を実施する際に、画質の評価結果に応じて、当該画像処理のパラメータを変更してもよい。具体的には、透視画像についてSNRを算出して画質評価を行う場合、処理実行機能213は、算出したSNRと閾値との差分に応じて、画質改善のパラメータを変更する。例えば、透視画像の画質が、閾値により基準として定めた画質よりも多分に良く、SNRと閾値との差分が大きい場合には処理実行機能213は、画質改善をかける程度を小さくすることが可能となる。この場合には、処理実行機能213は、当該画質改善のパラメータを変更し、診断画像を生成する為に必要となる程度の画像処理を実行してもよい。
【0070】
また、第1および第2の実施形態では、ユーザの操作に応じて保存した透視画像に対して画質改善を実施し診断画像を生成する。しかし、実施形態はこれに限定されるものではなく、処理実行機能213は、複数枚の透視画像が保存可能である場合には、全ての保存可能な透視画像に画質改善を実施はせず、ユーザが複数枚の保存可能な透視画像から指定した透視画像に対してのみ画質改善を実施してもよい。これにより、ユーザが診断画像を作成するに最適と判断した透視画像に基づく診断画像を生成できる。
【0071】
処理実行機能213は、被検体Pに対して相対的にX線管12が回転・移動することで複数枚の撮影画像を収集するシーケンス撮影(例えば、長尺撮影やトモシンセシス撮影等)において、透視画像を保存するように制御することもできる。すなわち、処理実行機能213は、シーケンス撮影前に収集された透視画像の画質の評価結果が保存可能である場合に、シーケンス撮影を実行するための撮影ボタン222の押下に応じてシーケンス撮影と同様の画像収集を透視条件で行い、複数の透視画像を保存する。そして、処理実行機能213は、収集した複数の透視画像に対して画質改善を実行することで、複数の診断画像を生成し、長尺画像やトモシンセシス画像を生成する。なお、トモシンセシス画像を生成するための画質改善は、再構成前の複数の透視画像を対象として実行される場合でもよく、或いは、複数の透視画像から再構成された3次元画像を対象として実行される場合でもよい。これにより、X線診断装置1は、通常の撮影以外のシーケンス撮影においても、ユーザの負担を抑えて撮影を回避し、被ばく低減を図ることができる。
【0072】
なお、長尺撮影やトモシンセシス撮影など、実施する撮影の種別により診断画像の画質に求められる評価指標値が異なるため、画質評価機能212は、撮影の種別に応じて、事前の透視画像の画質を評価するための閾値を変更してもよい。
【0073】
また、処理実行機能213は、撮影ボタン222の押下を受け付けてから撮影を実施するまでに要するディレイ時間に応じて、透視画像を収集するまでの時間を変更することができる。具体的には、処理実行機能213は、透視画像が保存可能であると判別し、操作者による撮影ボタン222の押下を受け付けた場合には、通常の撮影タイミングと同タイミングで透視画像が収集されるように、保存対象の透視画像の収集にディレイ時間を設ける。これにより、撮影画像と同一のタイミングで収集された透視画像を保存することができ、透視画像を保存する場合でもユーザが所望するタイミングからのズレを抑止することができる。
【0074】
なお、処理実行機能213は、撮影ボタン222の押下を受け付けてから透視画像の保存を実施する間において、透視画像の収集を継続してもよいし、透視画像の収集を中断してもよい。ここで、透視画像の収集を継続する場合、処理実行機能213は、上記したディレイ時間を設けずに、撮影画像と同一(或いは、近似)のタイミングで収集された透視画像を保存の対象とすることもできる。これにより、透視画像の収集にディレイ時間を設けることなく、ユーザが所望する収集タイミングからのズレを抑止することができる。さらに、処理実行機能213は、当該透視画像の収集を行う場合には、収集した透視画像をディスプレイ23に表示してもよい。これにより、X線診断装置1は、検査中に順次収集した透視画像をリアルタイムに観察することを可能とする。
【0075】
また、第1および第2の実施形態では、透視画像の画質の評価に表示画像が用いられる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、透視画像の画質の評価に、検出信号が用いられる場合でもよい。
【0076】
また、上述した実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0077】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることによって提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各処理機能を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0078】
また、上述した実施形態において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0079】
また、上述した実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0080】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、ユーザの負担を抑えて被ばく低減を図ることができる。
【0081】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
1 X線診断装置
12 X線管
15 X線検出器
20 X線画像処理部
21 処理回路
22 入力インターフェース
23 ディスプレイ
211 透視関連情報取得機能
212 画質評価機能
213 処理実行機能