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特開2022-162368診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162368
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20221017BHJP
   G06F 40/279 20200101ALI20221017BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
G16H50/20
G06F40/279
A61B5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067178
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】399085912
【氏名又は名称】株式会社ジェイマックシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 司
(72)【発明者】
【氏名】箱石 卓
(72)【発明者】
【氏名】中西 隆伯
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 崚研
【テーマコード(参考)】
4C117
5B091
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XB08
4C117XE45
4C117XG46
4C117XJ48
4C117XK34
5B091AA15
5B091AB08
5B091CA01
5B091CC01
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】 読影医および診断医等の医療関連書類を扱う医療従事者の負担を軽減し、重要な所見等の情報の見落としを防止することが可能な、診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラムを提供する。
【解決手段】 診断支援装置は、医療関連書類において、所定の否定形文脈および所定の文字列を記憶する記憶手段を参照して、前記所定の文字列から行末又は句読点までの文字列を単位文章として特定する特定手段、特定手段によって特定された単位文章のうち、所定の否定形文脈を含む単位文章を除外したうえで、所定の文字列を抽出する抽出手段、および、医療関連書類内の抽出された所定の文字列の表示形態を変更したアテンションレポートを作成するアテンションレポート作成手段を備える。
【選択図】 図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療関連書類において、所定の否定形文脈および所定の文字列を記憶する記憶手段を参照して、前記所定の文字列から行末又は句読点までの文字列を単位文章として特定する特定手段、
前記特定手段によって特定された単位文章のうち、前記所定の否定形文脈を含む単位文章を除外したうえで、前記所定の文字列を抽出する抽出手段、および、
前記医療関連書類内の前記抽出された所定の文字列の表示形態を変更したアテンションレポートを作成するアテンションレポート作成手段を備える、診断支援装置。
【請求項2】
前記所定の文字列には、各々に表示書式が対応づけられており、
前記アテンションレポート作成手段は、前記抽出された所定の文字列を前記対応づけられた表示書式に変更する、請求項1記載の診断支援装置。
【請求項3】
前記所定の文字列には、一部に注意喚起指標が対応づけられており、
前記医療関連書類に、前記注意喚起指標が対応づけられた所定の文字列が含まれている場合にアラートを表示するアラート表示手段を有している、請求項1または2記載の診断支援装置。
【請求項4】
前記医療関連書類に、前記注意喚起指標に対応する注意喚起コメントが記載されている場合には、前記アラートを表示しない、請求項3記載の診断支援装置。
【請求項5】
前記所定の否定形文脈および前記所定の文字列は、診療科毎に定められている、請求項1から4のいずれか一項に記載の診断支援装置。
【請求項6】
所定の否定形文脈および所定の文字列を記憶する記憶ステップ、
医療関連書類において、前記所定の文字列から行末又は句読点までの文字列を単位文章として特定する特定ステップ、
前記特定ステップによって特定された単位文章のうち、前記所定の否定形文脈を含む単位文章を除外したうえで、前記所定の文字列を抽出する抽出ステップ、および、
前記医療関連書類内の前記抽出された所定の文字列の表示形態を変更したアテンションレポートを作成するアテンションレポート作成ステップを備える、診断支援方法。
【請求項7】
前記所定の文字列には、一部に注意喚起指標が対応づけられており、
前記医療関連書類に、前記注意喚起指標が対応づけられた所定の文字列が含まれている場合にアラートを表示するアラート表示ステップを有している、請求項6記載の診断支援方法。
【請求項8】
前記所定の否定形文脈および前記所定の文字列は、診療科毎に定められている、請求項6または7記載の診断支援方法。
【請求項9】
所定の否定形文脈および所定の文字列を記憶する記憶ステップ、
医療関連書類において、前記所定の文字列から行末又は句読点までの文字列を単位文章として特定する特定ステップ、
前記特定ステップによって特定された単位文章のうち、前記所定の否定形文脈を含む単位文章を除外したうえで、前記所定の文字列を抽出する抽出ステップ、および、
前記医療関連書類内の前記抽出された所定の文字列の表示形態を変更したアテンションレポートを作成するアテンションレポート作成ステップを実行させるための、診断支援プログラム。
【請求項10】
前記所定の文字列には、一部に注意喚起指標が対応づけられており、
前記医療関連書類に、前記注意喚起指標が対応づけられた所定の文字列が含まれている場合にアラートを表示するアラート表示ステップを有している、請求項9記載の診断支援プログラム。
【請求項11】
前記所定の否定形文脈および前記所定の文字列は、診療科毎に定められている、請求項9または10記載の診断支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラムに関し、特に、医療関連書類の情報の見落としを防止し、要因の発見を支援する、診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設において、読影医は、患者を撮影するモダリティから出力された複数の医用画像を解析して、読影レポート(画像診断レポート)を作成する。読影レポートには、病変を表す医用画像が添付されるとともに、添付された医用画像から診断された病名や治療方法などが記載される。読影レポートを依頼医に報告をする際には、軽微な疾患か重篤な疾患かを適切に伝えることが非常に重要である。しかし、昨今、読影レポートの情報を見落として重篤な疾患の診断が適切に行われず、治療に重大な支障をきたしたというケースも報告されており、このような見落としを防止するためのシステム構築が求められている。そこで、医療情報の一覧性を保持しつつ、個々の医療情報の位置づけ又は特徴など(例えば、過去に行われた医療情報に対する作業箇所など)を俯瞰して把握可能とする表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、臨床医が読影レポートを確認する際に、読影医により指摘された事項の見落としを防ぐことを目的とし、読影レポートの所定の文字列に対応する位置にチェックボックスを設けて、臨床医のチェック状況を判定する読影レポート管理装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-173902号公報
【特許文献2】特開2019-204189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記技術においては、読影レポートが見やすくなるという効果は期待されるものの、多くの診断を行う読影医や診断医(依頼医)の負担軽減の点では十分なものではなかった。特に読影医は、依頼科毎に異なる注意すべき所見に対応する必要があり負担が大きい。また、読影医の知識レベルや感覚により、注意喚起すべきポイントにばらつきが生じることがあり得る。また、情報の見落としを防止するという点では、チェックボックスが多くある場合、惰性でチェックを入れてしまうといったことも起こり得る。そこで、本発明は、読影医および診断医等の医療関連書類を扱う医療従事者の負担を軽減し、重要な所見等の情報の見落としを防止することが可能な、診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る診断支援装置(10:実施形態で相当する参照符号。以下同じ)は、医療関連書類において、所定の否定形文脈および所定の文字列を記憶する記憶手段(40)を参照して、前記所定の文字列から行末又は句読点までの文字列を単位文章として特定する特定手段(S43,S45)、
前記特定手段によって特定された単位文章のうち、前記所定の否定形文脈を含む単位文章を除外したうえで、前記所定の文字列を抽出する抽出手段(S49,S51)、および、
前記医療関連書類内の前記抽出された所定の文字列の表示形態を変更したアテンションレポートを作成するアテンションレポート作成手段(S53)を備える。
【0006】
好ましくは、前記所定の文字列には、各々に表示書式が対応づけられており、前記アテンションレポート作成手段は、前記抽出された所定の文字列を前記対応づけられた表示書式に変更する(S53)。
【0007】
或る局面では、前記所定の文字列には、一部に注意喚起指標が対応づけられており、前記医療関連書類に、前記注意喚起指標が対応づけられた所定の文字列が含まれている場合にアラートを表示するアラート表示手段(S31~S35)を有している。
【0008】
好ましくは、前記医療関連書類に、前記注意喚起指標に対応する注意喚起コメントが記載されている場合には、前記アラートを表示しない(S33,S35)。
【0009】
好ましくは、前記所定の否定形文脈および前記所定の文字列は、診療科毎に定められている。
【0010】
この発明に係る診断支援方法は、所定の否定形文脈および所定の文字列を記憶する記憶ステップ(40)、
医療関連書類において、前記所定の文字列から行末又は句読点までの文字列を単位文章として特定する特定ステップ(S43,S45)、
前記特定ステップによって特定された単位文章のうち、前記所定の否定形文脈を含む単位文章を除外したうえで、前記所定の文字列を抽出する抽出ステップ(S49,S51)、および、
前記医療関連書類内の前記抽出された所定の文字列の表示形態を変更したアテンションレポートを作成するアテンションレポート作成ステップ(S53)を備える。
【0011】
好ましくは、前記所定の文字列には、一部に注意喚起指標が対応づけられており、
前記医療関連書類に、前記注意喚起指標が対応づけられた所定の文字列が含まれている場合にアラートを表示するアラート表示ステップ(S31~S35)を有している。
【0012】
好ましくは、前記所定の否定形文脈および前記所定の文字列は、診療科毎に定められている。
【0013】
この発明に係る診断支援プログラムは、所定の否定形文脈および所定の文字列を記憶する記憶ステップ(40)、
医療関連書類において、前記所定の文字列から行末又は句読点までの文字列を単位文章として特定する特定ステップ(S43,S45)、
前記特定ステップによって特定された単位文章のうち、前記所定の否定形文脈を含む単位文章を除外したうえで、前記所定の文字列を抽出する抽出ステップ(S49,S51)、および、
前記医療関連書類内の前記抽出された所定の文字列の表示形態を変更したアテンションレポートを作成するアテンションレポート作成ステップ(S53)を実行させるための、診断支援プログラムである。
【0014】
好ましくは、前記所定の文字列には、一部に注意喚起指標が対応づけられており、
前記医療関連書類に、前記注意喚起指標が対応づけられた所定の文字列が含まれている場合にアラートを表示するアラート表示ステップ(S31~S35)を有している。
【0015】
好ましくは、前記所定の否定形文脈および前記所定の文字列は、診療科毎に定められている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、読影医および診断医等の医療関連書類を扱う医療従事者の負担を軽減し、依頼科毎に異なる重要な所見等の情報の見落としを防止することが可能な、診断支援装置、診断支援方法および診断支援プログラムを提供することができる。特に、否定形の文章についての文字列の強調等は行われないので、肯定形の文章に記載の所定の文字列のみを際立たせることができ、効果的に見落としを防ぐことができる。その結果、読影医および診断医の負担軽減を図ることができ、診断支援性能の向上が図られる。
【0017】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施形態の例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この実施形態に適用される医療診断支援システムの構成を示すブロック図である。
図2図2(A)は、所定の文字列として参照されるテーブルの構成の一例を示す図解図である。図2(B)は、否定形文脈データベースのテーブルの構成の一例を示す図解図である。図2(C)は、重要所見データベースのテーブルの構成の一例を示す図解図である。
図3】モダリティによって作成されたDICOMファイルの構造の一例を示す図解図である。
図4】画像診断支援装置のメインモニタに表示される診断支援画面のトップ画面の一例を示す図解図である。
図5】画像診断支援装置のメインモニタに表示される診断支援画面の読影レポート画面の一例を示す図解図である。
図6】画像診断支援装置のサブモニタに表示される診断支援画面の一例を示す図解図である。
図7】画像診断支援装置のメインモニタに表示される診断支援画面の読影レポート画面の他の一例を示す図解図である。
図8】画像診断支援装置のメインモニタに表示される診断支援画面の読影レポート画面のその他の一例を示す図解図である。
図9】画像診断支援装置のメインモニタに表示される診断支援画面の読影レポート画面に注意喚起コメントが追加表示された一例を示す図解図である。
図10】画像診断支援装置のメインモニタに表示される診断支援画面の読影レポート画面に入力漏れポップアップ(注意喚起アラート)が表示された一例を示す図解図である。
図11】画像診断支援装置のメインモニタに表示される診断支援画面のトップ画面の他の一例を示す図解図である。
図12】レポート参照画面の一例を示す図解図である。
図13】アテンションレポート表示画面の一例を示す図解図である。
図14】画像診断支援装置に設けられたCPUの動作の一部を示すフロー図である。
図15】画像診断支援装置に設けられたCPUの動作の他の一部を示すフロー図である。
図16】画像診断支援装置に設けられたCPUの動作のその他の一部を示すフロー図である。
図17】画像診断支援装置に設けられたCPUの動作のさらにその他の一部を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、この実施形態の医療診断支援システムは、院内LAN50を介して互いに接続された画像診断支援装置10,モダリティ20,PACS30およびレポート用データベース40によって構成される。
【0020】
画像診断支援装置10において、バスBS1には、通信I/F12cm,CPU12pr,キーボード/マウス12km,DRAM12mm,HDD12hd,メインモニタ(第1モニタ)12m1およびサブモニタ(第2モニタ)12m2が接続される。
【0021】
サブモニタ12m2は、メインモニタ12m1に付随する。読影医(診断者)は、メインモニタ12m1およびサブモニタ12m2と向き合い、キーボード/マウス12kmを操作して画像診断を行う。
【0022】
レポート用データベース40は、たとえば、依頼科毎に参照されるテーブル、否定形文脈データベース、重要所見データベースによって構成される。図2(A)に、所定の文字列として参照されるテーブルの構成の一例を示す。このテーブルは、依頼科毎の重要所見が所定の文字列として登録されている重要所見テーブルである。この例では、依頼科毎にテーブルが構成されているが、全科の重要所見テーブル内に、フラグを設けて依頼科毎に分類されるようにしてもよい。レポート用データベース40は、本実施形態の態様に限定されるものではなく、HDD12hdに構築されていてもよい。
【0023】
図2(A)によれば、依頼科が呼吸器科である場合には、“出血”,“梗塞”,“悪性”,“転移”,“瘤”,“解離”,“肺癌”,“肺がん”,“癌”,“がん”,“肺塞栓”,“心肥大”,“心筋梗塞”,“心不全”などの文字列が重要所見テーブルに記憶(登録)される。また、依頼科が消化器科である場合には、“出血”,“梗塞”,“悪性”,“転移”,“瘤”,“解離”,“肝細胞癌”,“肝細胞がん”,“rapture”,“膵癌”,“膵がん”,“膵管拡張”,“胆管癌”,“胆管がん”,“胆管拡張”,“腎癌”,“腎がん”,“尿管拡張”,“膀胱癌”,“膀胱がん”,“胃癌”,“胃がん”,“大腸癌”,“大腸がん”,“虫垂炎”などの文字列が重要所見テーブルに記憶(登録)される。
【0024】
図2(B)に、否定形文脈データベースのテーブルの構成の一例を示す。図2(B)によれば、否定形文脈として、“認められません。”,“認めません。”,“ありません。”,“できません。”,“出来ません。”,“みられません。”,“見られません。”などが記憶(登録)される。
【0025】
図2(C)に、重要所見データベースのテーブル構成の一例を示す。このテーブルは、図2(A)のテーブルに登録されている所定の文字列に対し、各々に表示書式を対応づけるものである。図2(C)によれば、“転移”の文字列に対しては、色(アテンションレポートに表示される文字色)をred(赤色)、大きさ(文字のフォントサイズ)を4、注意喚起指標の対応があることを示す「○」が記憶(登録)されている。“不整形”の文字列に対しては、色(アテンションレポートに表示される文字色)をblack(黒色)、大きさ(文字のフォントサイズ)を3、注意喚起指標の対応なしで記憶(登録)されている。本実施形態において、図2(A)のテーブルに登録されているが図2(C)の重要所見データベースに登録のない文字列や、その他の文字列については、色(アテンションレポートに表示される文字色)をblack(黒色)、大きさ(文字のフォントサイズ)を1とする。
【0026】
後述のアテンションレポート作成時においては、医療関連書類において、前記所定の文字列(重要所見)から行末又は句読点までの文字列を単位文章として特定したうえで、単位文章のうち、所定の否定形文脈を含む単位文章を除外したうえで、前記所定の文字列(重要所見)を抽出する。そのうえで、抽出された文字列のみを、図2(C)における対応にしたがって、文字色や文字の大きさを変更する。このようにすることで、「転移は見られません。」といった、重要所見の単語が用いられてはいるものの、その所見が否定されているような部分については、文字列の強調表示がなされないため、注意すべき重要所見の見落としを防止することができる。
【0027】
モダリティ20は、たとえば、患者の体軸断面を表す複数の医用画像を収めたDICOMファイルを出力するMRI装置である。モダリティ20を操作する検査技師は、主治医からの依頼コメントを踏まえてモダリティ20を操作する。これによって、所望の位置の撮影画像が医用画像として作成され、作成された医用画像がDICOMファイルに収められる。こうして作成されたDICOMファイルは、図3に示すデータ構造を有し、院内LAN50を介してPACS30に保存される。
【0028】
図3を参照して、DICOMファイルには、複数の医用画像に加えて付属情報が収められる。ここで、付属情報は、検査属性を各々が示す複数の項目(検査日付,患者名,患者の検査時年齢,アクセッション番号など)によって構成される。
【0029】
画像診断支援装置10に設けられたCPU12prは、レポート用データベース40を参照して読影医による画像診断を支援するべく、図14図17に示す診断支援処理を実行する。なお、このフロー図に相当するプログラムは、診断支援プログラムとしてHDD12hdに記憶される。
【0030】
図14を参照して、ステップS1では、トップ画面をDRAM12mmに展開する。展開されたトップ画面は、メインモニタ12m1によって読み出され、図4に示す要領で表示される。図4によれば、トップ画面は、複数の検査をそれぞれ表す複数の見出しが列挙された見出し欄IDXを有する。また、図4に示すトップ画面においては、いずれも見出しに対応する読影レポートも“保留”とされる。
【0031】
ステップS3では、キーボード/マウス12kmによって見出し選択操作(=見出し欄IDXに列挙された複数の見出しのいずれか1つを選択する操作)が行われたか否かを判別する。また、ステップS5では、キーボード/マウス12kmによって他の操作が行われたか否かを判別する。ステップS3の判別結果およびステップS5の判別結果のいずれもがNOであればステップS3に戻り、ステップS3の判別結果がYESであればステップS7に進み、ステップS5の判別結果がYESであれば他の処理に進む。
【0032】
ステップS7では、見出し選択操作によって選択された見出しに対応する読影レポート画面をDRAM12mmに展開する。DRAM12mm上のトップ画面は、読影レポート画面によって更新される。
【0033】
更新された読影レポート画面はメインモニタ12m1によって読み出され、図5に示す要領で表示される。図5によれば、読影レポート画面には、依頼コメント欄(依頼文欄)REQ,所見欄RMKおよび診断欄DGNが設けられる。このうち、依頼コメント欄REQにある“胸痛”の文字列は、主治医によって記載されたものである。また、この実施形態では、所見欄RMKおよび診断欄DGNを“見解記入欄”と総称し、所見欄RMKに記載される所見および診断欄DGNに記載される診断コメントを“見解”と総称する。
【0034】
ステップS9では、通信I/F12cmを通してPACS30にアクセスし、選択中の見出しに割り当てられたアクセッション番号に対応するDICOMファイルをPACS30から取得する。ステップS9ではまた、取得されたDICOMファイルに収められた単一または複数の医用画像のいずれか1つをDRAM12mmに展開する。展開された医用画像はサブモニタ12m2によって読み出され、図6に示す要領で表示される。
【0035】
ステップS11では、キーボード/マウス12kmによって所見入力操作(所見欄RMKを指定して所望の文字列を入力する操作)が行われたか否かを判別する。判別結果がNOであれば、そのままステップS15に進む。
【0036】
一方、判別結果がYESであればステップS13に進み、所見入力操作によって取得した文字列を図7に示す要領で所見欄RMKに表示する。図7によれば、所見欄RMKには、“左肺内側に不整形の陰影を認め、治療後の所見。放射性肺炎の可能性を考えます。再発腫瘤は明らかなものは認められません。胸水貯留は認めません。肝臓に低CT値の腫瘍を認め、転移を疑う。”の文字列が表示される。文字列の表示が完了すると、ステップS15に進む。
【0037】
図15を参照して、ステップS15では、キーボード/マウス12kmによって診断コメント入力操作(診断欄DGNを指定して所望の文字列を入力する操作)が行われたか否かを判別する。判別結果がNOであれば、そのままステップS19に進む。
【0038】
一方、判別結果がYESであればステップS17に進み、診断コメント入力操作によって取得した文字列を図8に示す要領で診断欄DGNに表示する。図8によれば、診断欄DGNには、“胸部に治療後の所見疑い 肝転移疑い”の文字列が表示される。文字列の表示が完了すると、ステップS19に進む。
【0039】
ステップS19では、診断欄DGN右上に表示された「注意喚起コメント」ボタン(図8に太丸で示している)がキーボード/マウス12kmによってクリックされたか否かを判別する。判別結果がNOであれば、そのままステップS27に進む。
【0040】
ステップS19の判別結果がYESであれば、ステップS21に進む。ステップS21では、注意喚起コメント欄ATNをDRAM12mmに展開する。展開された注意喚起コメント欄ATNはメインモニタ12m1によって読み出され、図9に示す要領で読影レポート画面に多重表示(追加表示)される。表示処理が完了すると、ステップS23に進む。
【0041】
ステップS23では、キーボード/マウス12kmによって注意喚起コメント入力操作(注意喚起コメント欄ATNを指定して所望の文字列を入力する操作)が行われたか否かを判別する。判別結果がNOであれば、そのままステップS27に進む。
【0042】
判別結果がYESであればステップS25に進み、注意喚起コメント入力操作によって取得した文字列を図9に示す要領で注意喚起コメント欄ATNに表示する。図9によれば、注意喚起コメント欄ATNには、“依頼部位以外に所見あり”の文字列が表示される。前記文字列は、キーボード等を用いて任意の文字列を入力することもできるし、テンプレートボタンをクリックすることで表示される定型文を選択して入力することもできる。文字列の表示が完了すると、ステップS27に進む。
【0043】
図16を参照して、ステップS27では、読影レポート画面の右上に表示された「確定」ボタン(図9に太丸で示している)がキーボード/マウス12kmによってクリックされたか否かを判別する。また、ステップS29では、キーボード/マウス12kmによって他の操作が行われたか否かを判別する。ステップS27の判別結果およびステップS29の判別結果のいずれもがNOであればステップS27に戻り、ステップS27の判別結果がYESであればステップS31に進み、ステップS29の判別結果がYESであれば他の処理に進む。
【0044】
ステップS31では、注意喚起指標(図2(C))を参照し、所見欄RMKおよび診断欄DGNの入力データ中の、注意喚起指標登録されている文字列の有無を判別する。判別結果がNOであれば、そのままステップS41に進む。
【0045】
ステップS31の判別結果がYESであれば、ステップS33に進む。ステップS33では、注意喚起コメント欄ATNの入力の有無を判別する。
【0046】
ステップS33の判別結果がYES(入力有)であれば、そのままステップS41に進む。ステップS33の判別結果がNO(入力無)であれば、ステップS35に進む。ステップS35では、注意喚起アラートARTをDRAM12mmに展開する。展開された注意喚起アラートARTはメインモニタ12m1によって読み出され、図10に示す要領で読影レポート画面に多重表示(追加表示)される。図10によれば、注意喚起アラートARTには、“「転移」という所見が含まれています。注意喚起コメントが入力されていませんが、本当によろしいですか?”の文字列が表示される。表示処理が完了すると、ステップS37に進む。
【0047】
ステップS37では、注意喚起アラートARTに表示された「はい」のボタンがキーボード/マウス12kmによってクリックされたかを判別する。ステップS39では、注意喚起アラートARTに表示された「いいえ」のボタンがキーボード/マウス12kmによってクリックされたかを判別する。ステップS37の判別結果およびステップS39の判別結果のいずれもがNOであればステップS37に戻り、ステップS37の判別結果がYESであればステップS41に進み、ステップS39の判別結果がYESであればステップS21に戻る。
【0048】
ステップS41では確定処理を行い、入力内容が確定される。確定処理が行われた後、アテンションレポートが作成される。ステップS41で確定処理が行われると、ステップS43に進む。
【0049】
アテンションレポートは、レポート用データベース40を参照して作成される。図17を参照して、ステップS43では、所見欄RMKに記載された所見および診断欄DGNに記載された診断コメントにおいて、図2(A)の重要所見テーブルに記憶(登録)されている文字列(重要所見)を抽出する。ステップS45では、抽出された文字列から行末又は句読点までの文字列を単位文章として特定する。
【0050】
ステップS47では、変数nの初期値を“0”に設定し、変数nの終値を“検出した単位文章数-1”に設定し、増分値を“1”に設定する。ステップS49では、n番目の単位文章に否定形文脈が含まれるか否かを、図2(B)の否定形文脈データベースを参照して判別し、判別結果がYESであればステップS55に進む一方、判別結果がNOであればステップS51に進む。
【0051】
ステップS51では、n番目の単位文章中に含まれる文字列(重要所見)を抽出し、ステップS53では、ステップS51で抽出された文字列を、図2(C)の重要所見データベースに記載の文字色、フォントサイズ等に表示形態を変更して、ステップS55に進む。
【0052】
ステップS55では変数nをインクリメントし、その後にステップS49に戻る。ステップS49~S55の処理は所見欄RMKに記載された所見および診断欄DGNに記載された診断コメントに対して実行される。
【0053】
アテンションレポート作成の処理は、ステップS45で特定された単位文章のうち、否定形文脈データベースに記憶(登録)された文脈を含む単位文章を除外(ステップS49、YES)したうえで、除外されずに残った単位文章中に含まれる文字列(重要所見)について、文字色、フォントサイズ等の表示形態を変更する。たとえば、文字列(重要所見)が“再発”で、かつ「再発腫瘤は明らかなものは認められません。」との記載が所見欄RMKに存在する場合、“再発”の文字列がステップS43で抽出され、「再発腫瘤は明らかなものは認められません。」の文字列が単位文章としてステップS45で特定される。この単位文章には、否定形文脈“認められません。”が含まれるのでステップS49はYESとなり、“再発”の文字列には表示形態の変更処理は行われない。
【0054】
ステップS49~S55の処理が、所見欄RMKに記載された所見および診断欄DGNに記載された診断コメントの全ての単位文章に対して実行されると、ステップS1に戻る。この結果、メインモニタ12m1の表示が読影レポート画面からトップ画面に復帰する(図11参照)。ただし、図11に太丸で示すように、確定処理を施された読影レポートに対応する見出しには、“保留”に代えて“確定”の文字列が付される。
【0055】
本実施形態においては、図10に示す状態は、図2(C)に示す重要所見データベースにおいて、注意喚起指標の対応があることを示す「○」が登録された文字列“転移”が、所見欄RMKおよび診断欄DGNに記載された見解に含まれているにもかかわらず、図9に示すような注意喚起コメントが記載されていない場合にアラートとして現れる表示画面である。しかし、本発明は、この態様に限定されるものではなく、注意喚起コメントの有無にかかわらず、注意喚起指標が対応づけられた所定の文字列が含まれている場合に、前記アラートを表示させてもよい。
【0056】
アテンションレポートが作成されると、レポートを参照することが可能となる。図12は、レポート参照画面の一例を示す図解図である。また、図13は、アテンションレポート表示画面の一例を示す図解図である。注意喚起コメントが入力されたレポートを開こうとすると、図12のように、レポートの内容が表示される前段階で、注意喚起コメント“依頼部位以外に所見あり”の文字列が表示される。この文字列は、ステップS23のコメント入力操作によって注意喚起コメント欄ATNに入力されたものである(図9参照)。
【0057】
図12の状態で、「閉じる」のボタンがキーボード/マウス12kmによってクリックされると、図13のアテンションレポートが表示される。
【0058】
図13に示す例においては、符号aで示す“不整形”の文字列、符号bで示す“放射性肺炎”の文字列、符号cで示す“転移”の文字列、符号dで示す“再発”の文字列、および、符号eで示す“胸水”の文字列が、重要所見として一旦抽出される。これらの文字列から行末又は句読点までの文字列を単位文章として特定する。このとき、符号dで示す“再発”の文字列からの単位文章には、図2(B)の否定形文脈データベースに登録されている“認められません。”が含まれている。また、符号eで示す“胸水”の文字列からの単位文章には、図2(B)の否定形文脈データベースに登録されている“認めません。”が含まれている。これらの単位文章を除外したうえで、抽出された文字列(重要所見)は、符号aで示す“不整形”の文字列、符号bで示す“放射性肺炎”の文字列、および、符号cで示す“転移”の文字列となる。これらの文字列を、図2(C)の重要所見データベースにしたがい、符号aで示す“不整形”の文字列は、色をblack(黒色)、大きさ(文字のフォントサイズ)を3とし、符号bで示す“放射性肺炎”の文字列は、色をred(赤色)、大きさ(文字のフォントサイズ)を3とし、符号cで示す“転移”の文字列は、色をred(赤色)、大きさ(文字のフォントサイズ)を4としたアテンションレポートが作成、表示される。
【0059】
上述のように、否定形の文章については、文字列の強調がされないので、異常部分を際立たせることができ、見落としを防ぐことができる。
【0060】
本実施形態においては、表示書式として、文字色とフォントサイズを規定した例を説明したが、これらに限定されず、例えば、フォントの種類を変更したり、文字を点滅させる等の効果を付与してもよい。また、アテンションレポートが表示される態様により、設定を変更可能としてもよい。例えば、画面表示の背景色によって、文字色のパターンを変更させることが考えられる。
【0061】
診療科毎に定められたデータベースを設けておくと、依頼科ではない他科の疾患についての所見が見つかったとき(他科の文字列ヒットの場合)には、強調度を上げるなどして見落としを防ぐことができ、好ましい。
【0062】
以上の説明から分かるように、画像診断支援装置10は、単一または複数の医用画像に基づく診断を支援する装置であり、これを構成するCPU12prによって以下の処理が実行される。
【0063】
まず、医用画像の少なくとも1つが、読影医と向き合うサブモニタ12m2に表示される(S9)。また、依頼コメントに対する読影医の見解(所見および/または診断コメント)は、キーボード/マウス12kmを通して取得され、メインモニタ12m1上の読影レポート画面に表示される(S11~S17)。
【0064】
その後、見解(所見および/または診断コメント)に対する注意喚起コメントが、キーボード/マウス12kmを通して取得され、読影レポート画面に多重表示(追加表示)される注意喚起コメント欄ATNに表示される(S19~S25)。
【0065】
注意喚起指標が対応づけられた文字列が見解(所見および/または診断コメント)中にあるにもかかわらず、注意喚起コメントの入力が認められない場合には、注意喚起アラートARTを表示する(S27~S35)。読影医に対して、注意喚起コメントの入力の要否を、読影レポート入力確定処理前に確認する表示がなされることで(S27~S41)、病変が表れた医用画像を見落として診断が行われる懸念が軽減される。
【0066】
依頼コメントに対する読影医の見解(所見および/または診断コメント)は、レポート用データベース40を参照して、表示形態を変更したアテンションレポートを作成して、表示される(S43~S55)。
【0067】
本発明によると、読影レポートの通常のテキスト文を、文脈と注意すべき単語を認識して報告書のフォントの色や種類や大きさを自動的に変換して、注意喚起を促す表現を実現し、レポートの適切な伝達を支援することができる。また、依頼科ごとに重要所見は異なるため、依頼科ごとに重要所見とレポート上に重要所見を表示する色、大きさをデータベース化し、適応させることも好ましい。さらに、それぞれの重要所見の中で注意喚起が必要な所見について判別できる指標を設定し、注意喚起が必要な所見があるにも関わらず読影医が注意喚起コメントが入力されていない場合、注意喚起コメントの付け忘れがないかどうかを読影医に対してポップアップ表示をして確認をすることが可能となる。重要な所見の見落としや画像診断結果の確認不足、あるいは、単純な注意喚起コメントの付け忘れ等によって診断が遅れた場合、診断の遅れは、治療結果に影響を及ぼすおそれがあるところ、本発明では、所見の重要度に応じて、注意喚起の度合いを異なる形で表示することができる。
【0068】
以上においては、医療関連の書類として、読影レポートを例示して説明したが、本発明はこれに限定されず、各種の書類に対して適用することができる。例えば、カルテ、投薬記録、処方箋等にも適用可能である。カルテにおいては、所定の文字列として検査項目や投薬に関する文字列を記憶させておくことができる。また、投薬記録や処方箋においては、薬剤を薬効別に色を変えて表示されるように、データベースを構築することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 …画像診断支援装置
12pr …CPU
12km …キーボード/マウス
12hd …HDD
12m1 …メインモニタ
12m2 …サブモニタ
40 …レポート用データベース
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