(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162384
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】コイル型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20221017BHJP
H01F 1/22 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067203
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 優
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】角田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】和田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】榎本 奈美
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】石間 雄也
【テーマコード(参考)】
5E041
5E070
【Fターム(参考)】
5E041AA02
5E041AA07
5E041BD01
5E041CA03
5E041NN06
5E070AA01
5E070AB03
5E070BA12
5E070BB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インダクタンス(L)および直流重畳特性(Idc)が十分に高いコイル型電子部品を提供する。
【解決手段】積層コイル1は、磁性素体4と、コイル導体5と、を有する。コイル導体5の軸心N方向に隣り合うコイル導体の層間に位置する層間第1磁性素体40aは、第1軟磁性金属粒子を含む。軸心Nに沿って外側に位置する第2磁性素体42は、第2軟磁性金属粒子を含む。第1軟磁性金属粒子は、第2軟磁性金属粒子に比べて飽和磁化(Ms)が高い。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性素体と、コイル導体と、を有する素子を含む電子部品であって、
前記コイル導体の軸心方向に隣り合う前記コイル導体の層間に位置する前記磁性素体は第1軟磁性金属粒子を含み、
前記軸心に沿って外側に位置する前記磁性素体は第2軟磁性金属粒子を含み、
前記第1軟磁性金属粒子は前記第2軟磁性金属粒子に比べて飽和磁化が高いコイル型電子部品。
【請求項2】
前記第1軟磁性金属粒子は、Fe-Si系合金である請求項1に記載のコイル型電子部品。
【請求項3】
前記第2軟磁性金属粒子は、Fe-Ni系合金である請求項1または2に記載のコイル型電子部品。
【請求項4】
前記コイル導体の前記軸心を含む前記素子の軸中央内径領域の少なくとも一部に存在する内径第2磁性素体は、前記第2軟磁性金属粒子を含む請求項1~3のいずれかに記載のコイル型電子部品。
【請求項5】
前記コイル導体の前記軸心に垂直な断面において、前記軸中央内径領域の面積に占める前記内径第2磁性素体の面積の割合は30%以上である請求項4に記載のコイル型電子部品。
【請求項6】
前記第1軟磁性金属粒子の平均粒径は1~6μmである請求項1~5のいずれかに記載のコイル型電子部品。
【請求項7】
前記第2軟磁性金属粒子の平均粒径は1~15μmである請求項1~6のいずれかに記載のコイル型電子部品。
【請求項8】
前記コイル導体の径方向外側に位置する前記素子の軸中央外径領域の少なくとも一部に存在する外径第2磁性素体は、前記第2軟磁性金属粒子を含む請求項1~7のいずれかに記載のコイル型電子部品。
【請求項9】
前記コイル導体の前記軸心に垂直な断面において、前記軸中央外径領域の面積に占める前記外径第2磁性素体の面積の割合は15%以上である請求項8に記載のコイル型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軟磁性合金粉末に関する発明が記載されており、Fe、Ni、CoおよびSiのそれぞれの含有量を特定の範囲内に制御したFe-Ni系粒子を含有することを特徴としている。
【0003】
しかし、Fe-Ni系粒子を磁性体として用いた積層コイルは、インダクタンスは高いが、直流重畳特性が低いという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、インダクタンス(L)および直流重畳特性(Idc)が十分に高いコイル型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコイル型電子部品は、
磁性素体と、コイル導体と、を有する素子を含む電子部品であって、
前記コイル導体の軸心方向に隣り合う前記コイル導体の層間に位置する前記磁性素体は第1軟磁性金属粒子を含み、
前記軸心に沿って外側に位置する前記磁性素体は第2軟磁性金属粒子を含み、
前記第1軟磁性金属粒子は前記第2軟磁性金属粒子に比べて飽和磁化が高い。
【0007】
本発明に係るコイル型電子部品は、上記の構成であることにより、インダクタンスおよび直流重畳特性が十分に高い。
【0008】
前記第1軟磁性金属粒子は、Fe-Si系合金であることが好ましい。これにより、第1軟磁性金属粒子の飽和磁化をより高くすることができる。その結果、第1軟磁性金属粒子の飽和磁化を第2軟磁性金属粒子の飽和磁化に比べて高くし易いことから、インダクタンスおよび直流重畳特性を十分に高くすることができる。
【0009】
前記第2軟磁性金属粒子は、Fe-Ni系合金であることが好ましい。これにより、第1軟磁性金属粒子の飽和磁化を第2軟磁性金属粒子の飽和磁化に比べて高くし易いことから、インダクタンスおよび直流重畳特性を十分に高くすることができる。
【0010】
前記コイル導体の前記軸心を含む前記素子の軸中央内径領域の少なくとも一部に存在する内径第2磁性素体は、前記第2軟磁性金属粒子を含むことが好ましい。
【0011】
前記コイル導体の前記軸心に垂直な断面において、前記軸中央内径領域の面積に占める前記内径第2磁性素体の面積の割合は30%以上であることが好ましい。これにより、インダクタンスおよび直流重畳特性をバランスより高くすることができる。
【0012】
前記第1軟磁性金属粒子の平均粒径は1~6μmであることが好ましい。第1軟磁性金属粒子の平均粒径が1~6μmの場合は、第1軟磁性金属粒子の平均粒径が1μm未満の場合に比べてインダクタンスを高くすることができる。また、第1軟磁性金属粒子の平均粒径が1~6μmの場合は、第1軟磁性金属粒子の平均粒径が6μmを超える場合に比べてインダクタンスを高くすることができると共に、めっき伸びを抑制でき、なおかつ、ショート数を少なくすることができる。
【0013】
前記第2軟磁性金属粒子の平均粒径は1~15μmであることが好ましい。第2軟磁性金属粒子の平均粒径が1~15μmである場合は、第2軟磁性金属粒子の平均粒径が1μm未満の場合に比べてインダクタンスを高くすることができる。また、第2軟磁性金属粒子の平均粒径が1~15μmの場合は、第2軟磁性金属粒子の平均粒径が15μmを超える場合に比べて直流重畳特性を高くすることができると共に、めっき伸びを抑制でき、なおかつ、ショート数を少なくすることができる。
【0014】
前記コイル導体の径方向外側に位置する前記素子の軸中央外径領域の少なくとも一部に存在する外径第2磁性素体は、前記第2軟磁性金属粒子を含むことが好ましい。これにより、インダクタンスをより高くすることができる。
【0015】
前記コイル導体の前記軸心に垂直な断面において、前記軸中央外径領域の面積に占める前記外径第2磁性素体の面積の割合は15%以上であってもよい。これにより、直流重畳特性をより高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る積層コイルの斜視図である。
【
図1B】
図1Bは本発明の他の実施形態に係る積層コイルの概略断面図である。
【
図1C】
図1Cは本発明の他の実施形態に係る積層コイルの概略断面図である。
【
図1D】
図1Dは本発明の他の実施形態に係る積層コイルの概略断面図である。
【
図1E】
図1Eは本発明の他の実施形態に係る積層コイルの概略断面図である。
【
図3】
図3は本発明の他の実施形態に係る積層コイルの概略断面図である。
【
図4】
図4は本発明の他の実施形態に係る積層コイルの斜視図である。
【
図5A】
図5Aは本発明の比較例に係る積層コイルの概略断面図である。
【
図5B】
図5Bは本発明の比較例に係る積層コイルの概略断面図である。
【
図5C】
図5Cは本発明の比較例に係る積層コイルの概略断面図である。
【
図6】
図6は、X軸を内径第2磁性素体割合(%)とし、Y軸を(ΔL/L)+(ΔIdc/Idc)(%)としたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1実施形態
以下では、本実施形態に係るコイル型電子部品の一実施形態として、
図1に示す積層コイル1について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る積層コイル1は、素子2と端子電極3とを有する。素子2は、磁性素体4の内部にコイル導体5が3次元的かつ螺旋状に埋設された構成を有している。素子2の両端には、端子電極3が形成されており、この端子電極3は、引出電極5a1,5a2を介してコイル導体5と接続されている。なお、
図1および後述する
図1A~
図1E、
図1A1、
図3、
図4、
図4A、
図5A~
図5Cにおいて、X軸、Y軸およびZ軸は互いに垂直である。
【0019】
また、本実施形態において、「内側」は、積層コイル1の中心(コイル導体5の軸心N)により近い側を意味し、「外側」は、積層コイル1の中心から離れた側を意味する。
【0020】
端子電極3の材質は、電気伝導体であれば、特に制限はない。たとえば、Ag、Cu、Au、Al、Ag合金、Cu合金等が用いられる。特にAgを用いることが安価で低抵抗のため好ましい。端子電極3はガラスフリットを含有していてもよい。また、端子電極3は、素子2の上に形成され、上記の金属、または上記の金属およびガラスフリットからなる金属層と、当該金属層の上に形成され、導電性樹脂からなる樹脂層と、の2層構造を有していてもよい。導電性樹脂が含有する金属の種類には特に制限はない。たとえば、Agが挙げられる。また、端子電極3は表面にめっきを施してもよい。たとえば、Cuめっき、Niめっき、Snめっき、Cu-Ni-Snめっき、および/またはNi-Snめっきを適宜施してもよい。
【0021】
コイル導体5および引出電極5a1,5a2の材質は、電気伝導体であれば、任意の材質とすることができる。たとえば、Ag、Cu、Au、Al、Ag合金、Cu合金等が用いられる。特にAgを用いることが安価で低抵抗のため好ましい。コイル導体5はガラスフリットを含有してもよい。
【0022】
コイル導体5の軸心Nの周りの巻き数は特に限定されず、たとえば1.5~15.5である。また、コイル導体5の厚み(Te)も特に限定されず、たとえば5~60μmである。
【0023】
図1Aは、
図1のIA-IA線に沿う概略断面図であり、Y-Z軸に平行な断面図である。すなわち、
図1Aは引出電極5a1,5a2と、端子電極3とが見える断面図である。
【0024】
図1Aに示すように、素子2はコイル導体5の巻回軸心N(Z軸に平行)に沿って、下から軸端領域2a1と、軸中央領域2bと、軸端領域2a2とに分けることができる。
【0025】
言い換えると、素子2は、コイル導体5が埋設されている軸中央領域2bと、当該軸中央領域2bの軸心方向(Z軸方向)の上下に位置し、コイル導体5が埋設されていない軸端領域2a1,2a2と、に分けることができる。なお、コイル導体5の軸心方向は、コイル導体5の積層方向に平行である。
【0026】
具体的には、軸心方向(Z軸方向)に垂直であり、引出電極5a1,5a2の外側に沿う仮想線を境に、軸心Nに沿って外側を軸端領域2a1,2a2とし、内側を軸中央領域2bとする。本実施形態では、軸中央領域2bは引出電極5a1,5a2を含む範囲とする。
【0027】
また、素子2は軸心方向に垂直な径方向(Y軸方向)に、コイル導体5の内径領域4bと、コイル導体5が巻回されているコイル領域4aと、コイル導体5の径方向の外側に位置する外径領域4cとに分けることができる。
【0028】
本実施形態では、上記の通り、素子2は、Z軸方向に軸端領域2a1,2a2と、軸中央領域2bと、に領域が分かれており、径方向に内径領域4bと、コイル領域4aと、外径領域4cと、に領域が分かれている。
【0029】
さらに、本実施形態では、軸中央領域2bに位置し、なおかつ内径領域4bに位置する領域を軸中央内径領域24bbとする。また、軸中央領域2bに位置し、なおかつコイル領域4aに位置する領域を軸中央コイル領域24baとする。また、軸中央領域2bに位置し、なおかつ外径領域4cに位置する領域を軸中央外径領域24bcとする。
【0030】
本実施形態では、軸中央コイル領域24baに位置する軸心方向に隣り合うコイル導体5同士の中間部に位置する素子2の領域を層間領域24ba1とする。層間領域24ba1のZ軸方向の厚み(Ti)は特に限定されず、たとえば5~100μmである。
【0031】
本実施形態に係る磁性素体4は、第1軟磁性金属粒子を含む第1磁性素体40と第2軟磁性金属粒子を含む第2磁性素体42とが、所定の配置で構成されている。
【0032】
本実施形態では、第1磁性素体40は、軸中央コイル領域24baに位置する層間第1磁性素体40aと、軸中央内径領域24bbに位置する内径第1磁性素体40bと、軸中央外径領域24bcに位置する外径第1磁性素体40cとから成り立っている。
【0033】
また、第2磁性素体42は、軸端領域2a1,2a2に位置する軸端第2磁性素体42a1,42a2と、軸中央内径領域24bbに位置する内径第2磁性素体42bと、軸中央外径領域24bcに位置する外径第2磁性素体42cとから成り立っている。
【0034】
具体的には、
図1Aに示すように、コイル導体5の層間領域24ba1は第1軟磁性金属粒子を含む層間第1磁性素体40aで構成されている。
【0035】
内径第1磁性素体40bは、層間第1磁性素体40aから連続して形成されている。なお、内径第1磁性素体40bの形状は特に限定されないが、たとえば軸中央領域2bに沿って実質的に長方形であることが好ましい。なお、本実施形態において、「実質的に長方形」とは、長方形の輪郭に、多少、凹凸がある部分や傾いている部分があってもよいという趣旨である。
【0036】
さらに、
図1Aに示すように、外径第1磁性素体40cは、層間第1磁性素体40aから連続して形成されている。なお、外径第1磁性素体40cの形状は特に限定されないが、たとえば軸中央領域2bに沿って実質的に長方形であることが好ましい。
【0037】
本実施形態では、コイル導体5に沿って外側に位置する軸端領域2a1,2a2は、軸端第2磁性素体42a1,42a2で構成されている。
【0038】
第2磁性素体42は、軸端領域2a1,2a2以外を構成していてもよい。たとえば、
図1Aに示すように、軸端第2磁性素体42a1,42a2から連続して、コイル導体5の軸中央内径領域24bbの一部を構成する内径第2磁性素体42bが具備されていてもよい。言い換えると、内径第2磁性素体42bは、軸中央内径領域24bbにおいて、内径第1磁性素体40bの内側を構成していてもよい。なお、内径第2磁性素体42bは、軸中央領域2bに沿って実質的に長方形であることが好ましい。
【0039】
なお、上記では、
図1Aに示すY-Z断面図に沿って説明したが、コイル導体5の軸心Nを含む断面では、いずれの断面でも同様の構造となっており、たとえばZ-X断面図でも同様の構造となっている。
【0040】
図1A1は、
図1のIAI-IAI線に沿う断面図である。すなわち、
図1A1は、軸中央領域2bにおけるコイル導体5の軸心Nに垂直な断面図である。軸中央領域2bにおけるコイル導体5の軸心Nに垂直な断面では、軸中央コイル領域24baと軸中央内径領域24bbとの境界は、内径境界線Rとして破線で示されている。また、軸中央コイル領域24baと軸中央外径領域24bcとの境界は、外径境界線Sとして一点鎖線で示されている。コイル導体5は螺旋を描くように積層されているため、
図1A1に示すように、軸心方向に垂直な断面では、軸中央コイル領域24baの一部にコイル導体5が配置されておらず、層間第2磁性素体42aが配置されている箇所がある。すなわち、層間第2磁性素体42aが配置されている箇所は、層間領域24ba1である。
【0041】
本実施形態では、軸中央領域2bにおけるコイル導体5の軸心Nに垂直な断面において、軸中央内径領域24bbの面積に対する内径第2磁性素体42bの面積の割合(以下では「内径第2磁性素体割合」とする)は30%以上であることが好ましく、30~75%であることがより好ましい。本実施形態では、軸中央領域2bにおけるコイル導体5の軸心Nに垂直な断面において、軸中央内径領域24bbは内径境界線Rの内側の領域である。
【0042】
また、軸中央領域2bにおけるコイル導体5の軸心Nに垂直な断面において、軸中央外径領域24bcの面積に対する外径第2磁性素体42cの面積の割合(以下では「外径第2磁性素体割合」とする)は15%以上であることが好ましく、15~50%であることがより好ましい。本実施形態では、軸中央領域2bにおけるコイル導体5の軸心Nに垂直な断面において、軸中央外径領域24bcは外径境界線Sの外側の領域である。
【0043】
本実施形態では、第1軟磁性金属粒子は第2軟磁性金属粒子に比べて飽和磁化(Ms)が高い。第1軟磁性金属粒子の飽和磁化を「第1Ms」として、第2軟磁性金属粒子の飽和磁化を「第2Ms」としたとき、(第1Ms/第2Ms)は1.07~1.80であることが好ましく、1.16~1.50であることがより好ましい。なお、以下では、「第1軟磁性金属粒子」と「第2軟磁性金属粒子」とをまとめて「軟磁性金属粒子」と呼ぶことがある。
【0044】
本実施形態に係る第1軟磁性金属粒子の材質は、特に限定されず、たとえばFe-Si系合金、Fe-Si-Cr系合金、純Fe、Fe-Ni系合金、Fe-Si-Al系合金であり、好ましくはFe-Si系合金である。これにより、第1軟磁性金属粒子の飽和磁化をより高くすることができる。
【0045】
第1軟磁性金属粒子中のFeおよびSiの合計含有量を100質量%としたとき、第1軟磁性金属粒子中のFeの含有量は92.0~97.0質量%であることが好ましく、92.5~96.5質量%であることがより好ましい。
【0046】
第1軟磁性金属粒子中のFeおよびSiの合計含有量を100質量%としたとき、第1軟磁性金属粒子中のCrの含有量は5質量%以下であることが好ましく、2質量%未満であることがより好ましい。これにより、インダクタンスおよび直流重畳特性のバランスがより良好になると共に、めっき伸び抑制の評価がより高くなり、なおかつショート数がより少なくなる。
【0047】
第1軟磁性金属粒子中のFeおよびSiの合計含有量を100質量%としたとき、第1軟磁性金属粒子中のPの含有量は10~700ppmであることが好ましく、40~650ppmであることがより好ましい。これにより、インダクタンスおよび直流重畳特性のバランスがより良好になると共に、めっき伸び抑制の評価がより高く、なおかつショート数がより少なくなる。
【0048】
第1軟磁性金属粒子中のFeおよびSiの合計含有量を100質量%としたとき、第1軟磁性金属粒子中のFe,Si,CrおよびP以外の元素の含有量は3質量%未満であることが好ましい。第1軟磁性金属粒子中のFe、Si、CrおよびP以外の元素とは、Ni,O,CoまたはAlなどである。
【0049】
本実施形態に係る第2軟磁性金属粒子の材質は、特に限定されず、たとえばFe-Ni系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Si-Al系合金であり、好ましくはFe-Ni系合金である。これにより、第1軟磁性金属粒子の飽和磁化を第2軟磁性金属粒子の飽和磁化に比べて高くし易いことから、インダクタンスおよび直流重畳特性を十分に高くすることができる。
【0050】
第2軟磁性金属粒子中のFe,Ni,Si,Co,CrおよびPの合計含有量を100質量%としたとき、第2軟磁性金属粒子中のFeの含有量は33.0~68.0質量%であることが好ましく、37.0~55.0質量%であることがより好ましい。
【0051】
第2軟磁性金属粒子中のFe,Ni,Si,Co,CrおよびPの合計含有量を100質量%としたとき、第2軟磁性金属粒子中のNiの含有量は14.0~56.0質量%であることが好ましく、15.0~55.0質量%であることがより好ましい。これにより、インダクタンスおよび直流重畳特性のバランスがより良好になると共に、めっき伸び抑制の評価がより高く、なおかつショート数がより少なくなる。
【0052】
第2軟磁性金属粒子中のFe,Ni,Si,Co,CrおよびPの合計含有量を100質量%としたとき、第2軟磁性金属粒子中のSiの含有量は2.0~6.0質量%であることが好ましい。これにより、インダクタンスおよび直流重畳特性のバランスがより良好になると共に、めっき伸び抑制の評価がより高く、なおかつショート数がより少なくなる。
【0053】
第2軟磁性金属粒子中のFe,Ni,Si,Co,CrおよびPの合計含有量を100質量%としたとき、第2軟磁性金属粒子中のCoの含有量は2.0~40.0質量%であることが好ましい。これにより、インダクタンスおよび直流重畳特性のバランスがより良好になると共に、めっき伸び抑制の評価がより高く、なおかつショート数がより少なくなる。
【0054】
第2軟磁性金属粒子中のFe,Ni,Si,Co,CrおよびPの合計含有量を100質量%としたとき、第2軟磁性金属粒子中のCrの含有量は1.8質量%以下であることが好ましい。これにより、インダクタンスおよび直流重畳特性のバランスがより良好になる。
【0055】
第2軟磁性金属粒子中のFe,Ni,Si,Co,CrおよびPの合計含有量を100質量%としたとき、第2軟磁性金属粒子中のPの含有量は10~6000ppmであることが好ましく、100~5000ppmであることがより好ましい。これにより、インダクタンスおよび直流重畳特性のバランスがより良好になると共に、めっき伸び抑制の評価がより高く、ショート数がより少なくなる。
【0056】
第2軟磁性金属粒子中のFe,Ni,Si,Co,CrおよびPの合計含有量を100質量%としたとき、第2軟磁性金属粒子中のFe,Ni,Si,Co,CrおよびP以外の元素の含有量は3質量%未満であることが好ましい。なお、第2軟磁性金属粒子中のFe,Ni,Si,Co,CrおよびP以外の元素とは、たとえばAlまたはOなどである。
【0057】
本実施形態に係る第1軟磁性金属粒子の平均粒径は1~6μmであることが好ましい。第1軟磁性金属粒子の平均粒径が1~6μmの場合は、第1軟磁性金属粒子の平均粒径が1μm未満の場合に比べてインダクタンスを高くすることができる。また、第1軟磁性金属粒子の平均粒径が1~6μmの場合は、第1軟磁性金属粒子の平均粒径が6μmを超える場合に比べてインダクタンスを高くすることができると共に、めっき伸びを抑制でき、なおかつ、ショート数を少なくすることができる。
【0058】
本実施形態に係る第2軟磁性金属粒子の平均粒径は1~15μmであることが好ましい。第2軟磁性金属粒子の平均粒径が1~15μmである場合は、第2軟磁性金属粒子の平均粒径が1μm未満の場合に比べてインダクタンスを高くすることができる。また、第2軟磁性金属粒子の平均粒径が1~15μmの場合は、第2軟磁性金属粒子の平均粒径が15μmを超える場合に比べて直流重畳特性を高くすることができと共に、めっき伸びを抑制でき、なおかつ、ショート数を少なくすることができる。
【0059】
第1軟磁性金属粒子の平均粒径は、第2軟磁性金属粒子の平均粒径以下であることが好ましい。第1軟磁性金属粒子の平均粒径を「第1平均粒径」として、第2軟磁性金属粒子の平均粒径を「第2平均粒径」としたとき、(第1平均粒径/第2平均粒径)は0.2~1.0であることが好ましく、0.2~0.5であることがより好ましい。
【0060】
軟磁性金属粒子の平均粒径の測定方法は特に限定されないが、本実施形態では、樹脂埋めした積層コイル1(電子部品)の断面をSEMやSTEM等で画像解析することにより、軟磁性金属粒子の面積を算出し、その面積に相当する円の直径(円相当径)として算出した値(面積径)を軟磁性金属粒子の粒径とし、複数の軟磁性金属粒子の粒径の平均値を平均粒径とする。
【0061】
なお、軟磁性金属粒子の形状は特に制限されない。
【0062】
本実施形態に係る磁性素体4は、焼成により複数の軟磁性金属粒子が互いに接続した構成を有している。具体的には、焼成により互いに接触している軟磁性金属粒子に含まれる元素と他の元素(たとえばO)とが反応し、当該反応に起因する結合を介して複数の軟磁性金属粒子同士が接続している。本実施形態に係る磁性素体4においては、熱処理により、軟磁性金属粒子の原料粉末である軟磁性金属粉末由来の軟磁性金属粒子が互いに接続されるが、各軟磁性金属粒子はほとんど粒成長しない。
【0063】
また、第1磁性素体40における第1軟磁性金属粒子の含有量は90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。第1磁性素体40における第1軟磁性金属粒子の含有量が上記以上であれば、第1磁性素体40は、全てが第1軟磁性金属粒子で構成されていなくてもよい。たとえば、第1磁性素体40は、第2軟磁性金属粒子の飽和磁化と同等以下の金属粒子を多少含んでいてもよい。
【0064】
また、第2磁性素体42における第2軟磁性金属粒子の含有量は90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。第2磁性素体42における第2軟磁性金属粒子の含有量が上記以上であれば、第2磁性素体42は、全てが第2軟磁性金属粒子で構成されていなくてもよく、たとえば、第1軟磁性金属粒子の飽和磁化と同等以上の金属粒子を多少含んでいてもよい。
【0065】
軟磁性金属粒子は被覆膜で被われていてもよい。具体的には、被覆膜は酸化被膜であってもよく、酸化被膜はSiを含む酸化物からなる層を含んでもよい。軟磁性金属粒子が被覆膜で被われていることにより、軟磁性金属粒子同士の絶縁性が高くなることでQ値が向上する。また、酸化被膜がSiを含む化合物からなる層を含むことで、Feの酸化物が形成されることを防止することもできる。
【0066】
本実施形態に係る素子2の第1磁性素体40および第2磁性素体42の領域を判断する方法は特に限定されず、たとえばEDSによる元素マッピングを得ることにより成分分析をして判断してもよい。
【0067】
また、第1磁性素体40と、第2磁性素体42とは、成分が異なることから素子2の断面をSEMやSTEM等で画像解析することによりそのコントラストで第1磁性素体40および第2磁性素体42の領域を判断することができる。さらに、第1軟磁性金属粒子の平均粒径と第2軟磁性金属粒子の平均粒径とが異なっていれば、素子2の断面をSEMやSTEM等で画像解析することによりそのコントラストで第1磁性素体40および第2磁性素体42の領域を判断し易い。
【0068】
本実施形態では、第1軟磁性金属粒子の原料を「第1軟磁性金属粉末」と呼び、第2軟磁性金属粒子の原料を「第2軟磁性金属粉末」と呼び、軟磁性金属粒子の原料を「軟磁性金属粉末」と呼ぶことがある。すなわち、第1軟磁性金属粒子の原料と第2軟磁性金属粒子の原料をまとめて「軟磁性金属粉末」と呼ぶことがある。
【0069】
以下では、本実施形態に係る第1軟磁性金属粉末および第2軟磁性金属粉末の製造方法の一例について説明する。
【0070】
本実施形態では、第1軟磁性金属粉末の原料としては、構成元素の単体または合金を用いることができ、たとえば、Fe単体、Si単体、Cr単体などを用いることができる。
【0071】
また、第2軟磁性金属粉末の原料としては、構成元素の合金または単体を用いることができ、たとえば、Fe-Ni合金、Fe単体、Ni単体、Si単体、Co単体、Cr単体などを用いることができる。
【0072】
本実施形態では、軟磁性金属粉末は、公知の軟磁性金属粉末の製造方法と同様の方法を用いて得ることができる。具体的には、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、回転ディスク法等を用いて軟磁性金属粉末を製造することができる。これらの中では、所望の磁気特性を有する軟磁性金属粉末が得られやすいという観点から、水アトマイズ法を用いることが好ましい。
【0073】
水アトマイズ法では、形状がインゴット、チャンクまたはショットである原料を準備し、これらの原料を、所望の組成となるように混合して、水アトマイズ装置内に配置されたルツボに収容する。
【0074】
続いて、不活性雰囲気下において、ルツボ外部に設けたワークコイルを用いて、ルツボを高周波誘導により1600℃以上まで加熱し、ルツボ中のインゴット、チャンクまたはショットを溶融、混合して溶湯を得る。
【0075】
溶融した原料(溶湯)をルツボ底部に設けられたノズルを通じて線状の連続的な流体として供給し、供給された溶湯に高圧(50MPa程度)の水を吹き付けて、溶湯を液滴化すると同時に急冷し、脱水、乾燥、分級することにより、所望の平均粒径となる軟磁性金属粉末を得る。
【0076】
本実施形態では、たとえば、各原料を溶融し、この溶融物にPを添加したものを水アトマイズ法により微粉化することにより、本実施形態に係る軟磁性金属粉末を製造することができる。また、原料中、たとえば、Feの原料中にPが不純物として含まれている場合、不純物としてのPの含有量と、添加するPの量との合計を調整して目的とする量のPを含む軟磁性金属粉末を製造してもよい。あるいは、Pの含有量が異なる複数のFeの原料を用いて、Pの含有量が調整された溶融物を水アトマイズ法により微粉化してもよい。
【0077】
本実施形態では、第1軟磁性金属粒子の原料粉末である第1軟磁性金属粉末と、第2軟磁性金属粒子の原料粉末である第2軟磁性金属粉末とを、それぞれ上記の方法により準備する。
【0078】
次に、
図1、
図1Aおよび
図1A1に示す積層コイル1の製造方法について説明する。まず、得られた第1軟磁性金属粉末を溶媒やバインダ等の添加剤とともにスラリー化し、第1ペーストを準備する。同様にして、得られた第2軟磁性金属粉末を溶媒やバインダ等の添加剤とともにスラリー化し、第2ペーストを準備する。
【0079】
そして、第2ペーストを用いて、焼成後に軸端領域2a1を構成する軸端第2磁性素体42a1となる軸端第2グリーンシートを形成する。
【0080】
次いで、軸端第2グリーンシート上に、
図2aに示す印刷体100aの形態となるように導体50a1、第1ペーストによる第1グリーンシート400aおよび第2ペーストによる第2グリーンシート420aを印刷する。
【0081】
なお、導体50a1および後述する導体50a2は、焼成後にコイル導体5の引出電極5a1,5a2となる銀(Ag)等の導体である。また、第1グリーンシート400aおよび後述する第1グリーンシート400b~400hは焼成後に第1磁性素体40となる。さらに、第2グリーンシート420aおよび後述する第2グリーンシート420b~420hは焼成後に第2磁性素体42となる。したがって、
図2aに示す工程の段階で、焼成後に所望の内径第2磁性素体割合となるように第2グリーンシート420aを形成する。
【0082】
次いで、
図2aに示す印刷体100aの上に、
図2bに示す印刷体100bの形態となるように導体50b、第1ペーストによる第1グリーンシート400bおよび第2ペーストによる第2グリーンシート420bを印刷する。すなわち、
図2bに示す印刷体において、導体50bは導体50a1と接続できるように印刷し、第2グリーンシート420bは
図2aに示す第2グリーンシート420aに重なるように印刷する。
【0083】
なお、導体50bおよび後述する導体50c~50gは、焼成後にコイル導体5となる銀(Ag)等の導体である。
【0084】
次いで、
図2bに示す印刷体100bの上に、
図2cに示す印刷体100cの形態となるように導体50c、第1ペーストによる第1グリーンシート400cおよび第2ペーストによる第2グリーンシート420cを印刷する。すなわち、導体50cはその一部(導体50c1)が導体50bの一部(50b1)と接続できるように印刷し、第2グリーンシート420cは
図2bに示す第2グリーンシート420bに重なるように印刷する。
【0085】
次いで、
図2cに示す印刷体100cの上に、
図2dに示す印刷体100dの形態となるように導体50d、第1ペーストによる第1グリーンシート400dおよび第2ペーストによる第2グリーンシート420dを印刷する。すなわち、導体50dはその一部(導体50d1)が導体50cの一部(50c2)と接続できるように印刷し、第2グリーンシート420dは
図2cに示す第2グリーンシート420cに重なるように印刷する。
【0086】
次いで、
図2dに示す印刷体100dの上に、
図2eに示す印刷体100eの形態となるように導体50e、第1ペーストによる第1グリーンシート400eおよび第2ペーストによる第2グリーンシート420eを印刷する。すなわち、導体50eが導体50dと接続できるように印刷し、第2グリーンシート420eは
図2dに示す第2グリーンシート420dに重なるように印刷する。
【0087】
次いで、
図2eに示す印刷体100eの上に、
図2fに示す印刷体100fの形態となるように導体50f、第1ペーストによる第1グリーンシート400fおよび第2ペーストによる第2グリーンシート420fを印刷する。すなわち、導体50fはその一部(導体50f1)が導体50eの一部(50e1)と接続できるように印刷し、第2グリーンシート420fは
図2eに示す第2グリーンシート420eに重なるように印刷する。
【0088】
以後、
図2d~
図2fに示す印刷を繰り返した後、
図2fに示す印刷体100fの上に、
図2gに示す印刷体100gの形態となるように導体50g、第1ペーストによる第1グリーンシート400gおよび第2ペーストによる第2グリーンシート420gを印刷する。すなわち、導体50gはその一部(導体50g1)が導体50fの一部(50f2)と接続できるように印刷し、第2グリーンシート420gは
図2fに示す第2グリーンシート420fに重なるように印刷する。
【0089】
次に、
図2gに示す印刷体100gの上に、
図2hに示す印刷体100hの形態となるように導体50a2、第1ペーストによる第1グリーンシート400hおよび第2ペーストによる第2グリーンシート420hを印刷する。すなわち、導体50a2は導体50gと接続できるように印刷し、第2グリーンシート420hは
図2gに示す第2グリーンシート420gに重なるように印刷する。
【0090】
なお、
図2a~
図2hにおいて、同一平面上に導体、第1グリーンシートおよび第2グリーンシートを印刷する際の印刷する順番は特に限定されない。
【0091】
さらに、
図2hに示す印刷体100hの上に第2ペーストを用いて、焼成後に軸端領域2a2を構成する軸端第2磁性素体42a2となる軸端第2グリーンシートを形成する。
【0092】
このようにして得られた積層体では、まず、
図2aに示す印刷体100aの導体50a1と、
図2bに示す印刷体100bの導体50bとは、広く接しており、導通している。
【0093】
また、
図2bに示す印刷体100bの導体50bの50b1と、
図2cに示す印刷体100cの導体50cの50c1とは、共に仮想線Jおよび仮想線Kに挟まれた範囲であり、接していることから導通している。
【0094】
さらに、
図2cに示す印刷体100cの導体50cの50c2と、
図2dに示す印刷体100dの導体50dの50d1とは、共に仮想線Lおよび仮想線Mに挟まれた範囲であり、接していることから導通している。
【0095】
さらに、
図2dに示す印刷体100dの導体50dと、
図2eに示す印刷体100eの導体50eとは、広く接しており、導通している。
【0096】
さらに、
図2eに示す印刷体100eの導体50eの50e1と、
図2fに示す印刷体100fの導体50fの50f1とは、共に仮想線Jおよび仮想線Kに挟まれた範囲であることから導通している。
【0097】
さらに、
図2fに示す印刷体100fの導体50fの50f2と、
図2gに示す印刷体100gの導体50gの50g1とは、共に仮想線Lおよび仮想線Mに挟まれた範囲であり、接していることから導通している。
【0098】
さらに、
図2gに示す印刷体100gの導体50gと、
図2hに示す印刷体100hの導体50a2とは、広く接しており、導通している。
【0099】
ここで、
図2dに示す印刷体100dがあることで、
図2cに示す印刷体100cの50c1と
図2eに示す印刷体100eの50e1との接触を防ぐことができる。これにより、ショートを防ぐことができ、コイル導体5が3次元的かつ螺旋状に形成されたグリーンの積層体が得られる。
【0100】
なお、
図2aの引出電極5a1および
図2hの引出電極5a2は、引出電極5a1,5a2以外のコイル導体5と同じ厚み(Te)で描いているが、引出電極5a1,5a2の厚みは、引出電極5a1,5a2以外のコイル導体5の厚み(Te)よりも薄くてもよい。引出電極5a1,5a2の厚みを、引出電極5a1,5a2以外のコイル導体5の厚みよりも薄くすることにより、単位体積当たりのコイルの巻き数を多くすることができ、インダクタンスを高めることができる。
【0101】
たとえば、
図2aに示す印刷を1~2回重ねた後に、
図2bに示す印刷を3~8回重ね、
図2c~
図2fの印刷をそれぞれ10回程度重ね、さらに、
図2gの印刷を3~8回重ねた後に、
図2hの印刷を1~2回重ねてもよい。このようにすることで、引出電極5a1,5a2の厚みを、引出電極5a1,5a2以外のコイル導体5の厚みよりも薄くできる。
【0102】
上記では印刷法による積層体の製造方法を示したが、シート法によっても上記の構成の積層体を得ることができる。
【0103】
得られた積層体に対し、熱処理(脱バインダ工程および焼成工程)を行うことにより、バインダを除去し、軟磁性金属粉末に含まれる軟磁性金属粒子が互いに接続されて固定された(一体化した)焼成体(素子)を得る。脱バインダ工程における保持温度(脱バインダ温度)は、バインダが分解してガスとして除去できる温度であれば、特に制限されない。たとえば、300℃以上450℃以下であってもよい。また、脱バインダ工程における保持時間(脱バインダ時間)も特に制限されない。たとえば、0.5時間以上2.0時間以下であってもよい。
【0104】
焼成工程における保持温度(焼成温度)は、軟磁性金属粉末を構成する軟磁性金属粒子が互いに接続される温度であれば、特に制限されない。550℃以上850℃以下であってもよい。また、焼成工程における保持時間(焼成時間)も特に制限されない。0.5時間以上3.0時間以下であってもよい。
【0105】
なお、本実施形態では、脱バインダおよび焼成における雰囲気を調整することが好ましい。
【0106】
焼成後にアニール処理(熱処理)を行ってもよい。アニール処理を行う場合の条件には特に制限はない。たとえば500~800℃で0.5~2.0時間行ってもよい。また、アニール後の雰囲気にも特に制限はない。
【0107】
続いて、素子に端子電極3を形成する。端子電極3を形成する方法には特に制限はなく、通常は端子電極3となる金属(Ag等)を溶媒やバインダ等の添加剤とともにスラリー化して作製する。
【0108】
本実施形態に係る積層コイル1は上記の方法により得られる。
【0109】
本実施形態に係る積層コイル1では、コイル導体5の層間領域24ba1に位置する層間磁性素体40aは第1軟磁性金属粒子を含み、コイル導体5の軸心Nに沿って外側に位置する軸端磁性素体42a1,42a2は第2軟磁性金属粒子を含み、第1軟磁性金属粒子は第2軟磁性金属粒子に比べて飽和磁化が高い。本実施形態に係る積層コイル1(コイル型電子部品)は、このような構成であることにより、インダクタンスおよび直流重畳特性が十分に高い。
【0110】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明するが、特に記載のない点については第1実施形態と同様である。
【0111】
図3に示すように、本実施形態に係る積層コイル1は、コイル導体5が3次元的かつ二重螺旋状に埋設された構成を有している。なお、二重螺旋状ではあるが、コイル導体5は一方の引出電極5a1から他方の引出電極5a2までの一つなぎの構造である。
【0112】
具体的には、
図3に示す断面において、1層目の引出電極5a1、2層目外側コイル導体501,502、2層目内側コイル導体503,504、3層目内側コイル導体505,506・・・・7層目内側コイル導体521,522、7層目外側コイル導体523,524、8層目外側コイル導体525,526、8層目内側コイル導体527,528、9層目の引出電極5a2の順で一つなぎとなる螺旋構造である。
【0113】
コイル導体5を二重螺旋状にすることでコイルが密になることから、インダクタンスを大きくすることができる。
【0114】
なお、
図3では1層あたりのコイル導体5の巻き数が2である二重螺旋状であるが、1層あたりのコイル導体5の巻き数を3以上にしてもよい。
【0115】
本実施形態に係る積層コイル1の製造方法は特に限定されない。たとえば、コイル導体5が3次元的かつ二重螺旋状になるように上記の
図2a~
図2hにおいて、導体、第1グリーンシートおよび第2グリーンシートの配置を変化させてグリーンの積層体を得ることにより、本実施形態に係る積層コイル1を得ることができる。
【0116】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明するが、特に記載のない点については第1実施形態と同様である。
【0117】
図4に示すように、本実施形態に係る積層コイル1は、コイル導体5の軸心方向がY軸方向に平行である。
図4Aは
図4のIVA-IVA線に沿う概略断面図である。本実施形態では、
図4Aに示すように、Y軸方向に沿って、軸端領域2aと、軸中央領域2bとに分かれている。また、Z軸方向に沿って、コイル領域4aと、内径領域4bと、外径領域4cとに分かれている。
【0118】
第3実施形態では、最も外側のコイル導体5の外側に沿う仮想線を境に、外側が軸端領域2a1,2a2であり、内側が軸中央領域2bである。すなわち、第3実施形態では、軸中央領域2bは引出電極5a1,5a2を含まない範囲である。
【0119】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について説明するが、特に記載のない点については第1実施形態と同様である。
【0120】
本実施形態に係る磁性素体は、軟磁性金属粒子および樹脂からなっている。
【0121】
第1~第3実施形態に記載の方法により得られた素子は、磁性素体のうち軟磁性金属粒子以外の部分には隙間スペースが存在する。本実施形態では、たとえば素子に対して樹脂を含浸させることで、隙間スペースに樹脂を充填する。
【0122】
樹脂が隙間スペースに充填されることで、積層コイルの強度(特に抗折強度)が高くなる。また、軟磁性金属粒子同士の間の絶縁性がさらに高くなることでインダクタンスおよびQ値が向上し易くなる。さらに、信頼性および耐熱性が向上する。さらに、積層コイルがショートしにくくなる。
【0123】
樹脂を含浸させる方法には特に制限はない。たとえば、真空含浸による方法が挙げられる。真空含浸は、上記の積層コイルの素子を樹脂中に浸漬させ、気圧制御を行うことにより行われる。樹脂は気圧を低下させることにより磁性素体の内部に侵入する。すなわち、磁性素体には隙間スペースが存在するため、隙間スペースを介して毛細管現象の原理により樹脂が磁性素体の内部、特に樹脂が最も侵入しづらい層間領域にまで侵入できる。磁性素体に樹脂を含侵させた後、加熱により樹脂を硬化させる。加熱条件は樹脂の種類により異なる。
【0124】
樹脂の種類は特に制限されない。たとえば、フェノール樹脂またはエポキシ樹脂を用いる場合には、磁性素体の内部(特に層間領域)の隙間スペースまで樹脂が十分に侵入し、硬化後にも十分に隙間スペースに充填されやすい。さらに加熱しても容易に分解されないため耐熱性も高い。特にフェノール樹脂またはエポキシ樹脂を用いる場合には、シリコーン樹脂を用いる場合に比べて、磁性素体の内部(特に層間領域)の隙間スペースまで樹脂が十分に侵入し易い。なお、樹脂はフェノール樹脂であることが安価で取り扱いが容易であるため好ましい。
【0125】
最終的に得られる積層コイルの磁性素体における樹脂の含有量は0.5質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。なお、樹脂の含有量はたとえば含侵時の樹脂溶液濃度、浸漬時間、浸漬回数等を変化させることにより制御することができる。
【0126】
本実施形態では、樹脂の充填後に端子電極に電解めっきを施すことができる。樹脂が隙間スペースに充填されているため、磁性素体をめっき液に投入してもめっき液が磁性素体の内部に侵入しにくい。そのためにめっき後においても積層コイルでショートが発生せず、インダクタンスが高く保たれる。
【0127】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変してもよい。
【0128】
たとえば
図1Bに示すように、第1磁性素体40は
図1Aに示している内径第1磁性素体40bを具備していなくてもよい。言い換えると、内径第2磁性素体42bは、軸中央内径領域24bbの全体を構成していてもよい。
【0129】
たとえば
図1Cに示すように、外径第1磁性素体40cの外側に軸中央領域2bに沿って外径第2磁性素体42cが具備されていてもよい。
【0130】
たとえば
図1Dに示すように、第1磁性素体40は、
図1Aに示している内径第1磁性素体40bおよび外径第1磁性素体40cを具備していなくてもよい。言い換えると、軸中央内径領域24bbの全体が、内径第2磁性素体42bで構成され、軸中央外径領域24bcの全体が外径第2磁性素体42cで構成されていてもよい。
【0131】
たとえば
図1Eに示すように、軸中央内径領域24bbの全体が、内径第1磁性素体40bで構成され、軸中央外径領域24bcの全体が外径第1磁性素体40cで構成されていてもよい。言い換えると、第2磁性素体42は、
図1Aに示している内径第2磁性素体42bおよび外径第2磁性素体42cを具備していなくてもよい。
【0132】
図1B~
図1Eに示すように第1磁性素体40および第2磁性素体42の配置を変える方法は特に限定されないが、たとえば所望の第1磁性素体40および第2磁性素体42の配置になるように、上記の
図2a~
図2hに示す印刷体100a~100hにおいて、第1グリーンシートおよび第2グリーンシートの配置を変化させる方法が挙げられる。
【0133】
また、上記では、コイル導体5の軸心方向に垂直な断面により、内径第2磁性素体割合および外径第2磁性素体割合を算出したが、コイル導体5の軸心方向に平行な断面を複数得て、それらから内径第2磁性素体割合および外径第2磁性素体割合を算出してもよい。
【0134】
なお、本実施形態では、コイル型電子部品の一例として積層コイルを例示したが、コイル型電子部品としては、トランス、チョークコイル、コイル等が知られている。また、本実施形態に係るコイル型電子部品は、インダクタやインピーダンスなどの用途で携帯機器等の各種電子機器の電源回路などに好適に用いられる。
【実施例0135】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0136】
(表1~表3の各試料)
表1または表2に記載の組成の各軟磁性金属粉末になるように、各原料を準備した。なお、表1の[質量%]および[ppm]とは、FeおよびSiの合計含有量を100質量%としたときの各成分含有量である。また、表2の[質量%]および[ppm]とは、Fe,Ni,Si,Co,CrおよびPの合計含有量を100質量%としたときの各成分含有量である。
【0137】
得られた各軟磁性金属粉末を、ICP分析法により組成分析した結果、得られた各軟磁性金属粉末が表1または表2に記載の組成となっていることを確認した。このため、後述の実施例および比較例でも、仕込みの原料の組成と、得られた各軟磁性金属粉末の組成とは同じであると推定した。
【0138】
得られた各軟磁性金属粉末の飽和磁化は、振動試料磁力計(東英工業株式会社製 VSM-3S-15)を用いて、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で測定した。結果を表1および表2に示す。
【0139】
得られた第1軟磁性金属粉末を用いて第1ペーストを作製し、第2軟磁性金属粉末を用いて第2ペーストを作製した。
【0140】
図1Eに記載のように、第2磁性素体42が軸端領域2a1,2a2を構成し、第1磁性素体40が層間領域24ba1、軸中央内径領域24bbおよび軸中央外径領域24bcを構成するように、
図2a~
図2hに示す印刷体100a~100hにおいて、第1グリーンシートおよび第2グリーンシートの配置を変化させて厚さ0.8mmのグリーンの積層体を得た。なお、導体はAg導体とし、巻き数を7.5Tsとした。次に得られたグリーンの積層体を1.6mm×0.8mm形状に切断して、グリーンの積層コイルを得た。
【0141】
次に、得られたグリーンの積層コイル対して、不活性雰囲気(N2ガス雰囲気)下、400℃で脱バインダ処理を行った。その後、還元性雰囲気(N2ガスとH2ガスとの混合ガス雰囲気(水素濃度1.0%))下750℃-1hの条件で焼成して焼成体を得た。
【0142】
得られた焼成体の両側端面に、端子電極用ペーストを塗布、乾燥し、酸素分圧1%の雰囲気下、700℃で1時間、焼付処理を行い、端子電極3を形成して積層コイル焼付品を得た。
【0143】
得られた各積層コイル焼付品に対して樹脂含浸を行った。具体的には、積層コイル焼付品にフェノール樹脂の原料混合物を真空含浸し、その後加熱して樹脂を150℃-2hで硬化させることで積層コイル焼付品に樹脂を充填した。なお、樹脂を硬化させる際に原料混合物に含まれる溶剤等が蒸発した。その後、電解めっきを施し、端子電極上にNiめっき層およびSnめっき層を形成し、積層コイル1を得た。
【0144】
得られた積層コイルの内部寸法は、コイル導体5の厚み(Te):40μm、層間領域24ba1の厚み(T1):15μmであった。
【0145】
得られた積層コイルについて、成分分析、ならびに平均粒径、飽和磁化、インダクタンスおよび直流重畳特性の測定を下記の通り行った。
【0146】
<成分分析>
実施例1の積層コイルについて、軸端領域2a1,2a2、軸中央内径領域24bb、層間領域24ba1および軸中央外径領域24bcの元素マッピング写真を得て、成分分析を行った。その結果、第1軟磁性金属粉末を用いた箇所は第1軟磁性金属粉末と同じ組成の第1軟磁性金属粒子が形成されており、第2軟磁性金属粉末を用いた箇所は第2軟磁性金属粉末と同じ組成の第2軟磁性金属粒子が形成されていることが確認できた。このため、後述の実施例および比較例でも、第1軟磁性金属粉末を用いた箇所は第1軟磁性金属粉末と同じ組成の第1軟磁性金属粒子が形成されており、第2軟磁性金属粉末を用いた箇所は第2軟磁性金属粉末と同じ組成の第2軟磁性金属粒子が形成されていると推定した。
【0147】
<平均粒径>
実施例1の積層コイルの断面をSEMで画像解析することにより第1軟磁性金属粒子および第2軟磁性金属粒子の円相当径を求め、円相当径を粒径とした。第1軟磁性金属粒子および第2軟磁性金属粒子のそれぞれについて400個の粒径を求め、第1軟磁性金属粒子の平均粒径および第2軟磁性金属粒子の平均粒径を求めた。第1軟磁性金属粒子の平均粒径を表1に示し、第2軟磁性金属粒子の平均粒径を表2に示す。
【0148】
<飽和磁化(Ms)>
実施例1の積層コイルの第1磁性素体および第2磁性素体の部分をレーザー加工による微細加工で切り出して第1軟磁性金属粒子および第2軟磁性金属粒子について、振動試料磁力計(東英工業株式会社製 VSM-3S-15)を用いて、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で飽和磁化を測定した。その結果、第1軟磁性金属粒子の飽和磁化は第1軟磁性金属粉末と同じ飽和磁化であり、第2軟磁性金属粒子の飽和磁化は第2軟磁性金属粉末と同じ飽和磁化となっていることが確認できた。このため、後述の実施例および比較例でも、第1軟磁性金属粒子の飽和磁化は第1軟磁性金属粉末と同じ飽和磁化であり、第2軟磁性金属粒子の飽和磁化は第2軟磁性金属粉末と同じ飽和磁化であると推定した。
【0149】
<インダクタンス(L)の測定>
得られた積層コイルについて、LCRメータ(HEWLETT PACKARD社製:4285A)を用いて、f=2MHz、I=0.1Aでインダクタンス(L)を測定した。それぞれ30個の積層コイルのLの平均値を求めた。結果を表3に示す。また、表3に記載の「ΔL/LおよびΔIdc/Idcの比較対象」のLの平均値に対する変化率としてΔL/Lを求めた。たとえば、実施例1は「ΔL/LおよびΔIdc/Idcの比較対象」が「比較例1」であるから、ΔL/Lは下記式(1)により求めた。
実施例1のΔL/L=100×{(実施例1のL-比較例1のL)/比較例1のL}・・・(1)
【0150】
<直流重畳特性Idc>
得られた積層コイルについて、直流電流を印加したときのインダクタンスを測定した。印加する直流電流を0~3Aまで変化させながらインダクタンスを測定し、横軸に直流電流をとって、縦軸にインダクタンスをとってグラフ化した。直流電流0Aのときのインダクタンスから30%低下するときの電流値をIdcとして求めた。それぞれ30個の積層コイルのIdcの平均値を求めた。結果を表3に示す。また、比較対象のIdcの平均値に対する変化率としてΔIdc/Idcを求めた。たとえば、実施例1は「ΔL/LおよびΔIdc/Idcの比較対象」が「比較例1」であるから、ΔIdc/Idcは下記式(2)により求めた。
実施例1のΔIdc/Idc=100×{(実施例1のIdc-比較例1のIdc)/比較例1のIdc}・・・(2)
【0151】
<判定>
ΔL/Lが-30%以上であり、ΔIdc/Idcが50%以上である場合について合格と判断し、表3に「OK」と記載した。また、ΔL/LまたはΔIdc/Idcが上記の範囲外であった場合には、表3に「NG」と記載した。
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
表1~表3より、層間領域が第1磁性素体で構成されており、軸端領域が第2磁性素体で構成されており、第1軟磁性金属粒子の飽和磁化が第2軟磁性金属粒子の飽和磁化よりも高い場合(実施例1、実施例1a、実施例2、実施例3、実施例3a、実施例3b、実施例3c、実施例3d)は、判定がOKとなり、インダクタンスおよび直流重畳特性が十分に高いことが確認できた。
【0156】
なお、比較例1、比較例2、比較例3、比較例3bおよび比較例3dは、第1軟磁性金属粒子と第2軟磁性金属粒子とが同じ組成であり、
図5Aに記載の構造となっていた。
【0157】
また、比較例1aは、第1軟磁性金属粒子の方が第2軟磁性金属粒子よりも飽和磁化が低いことから、
図5Bに記載の構造となっていた。
【0158】
(表4~表6の各試料)
表4~表6の各試料では、各軟磁性金属粉末の組成が表4または表5に記載の組成となるように変化させて、内径第2磁性素体割合および外径第2磁性素体割合を表6に記載の通り変化させた以外は表1~表3の各試料と同様にして積層コイルを得て、軟磁性金属粒子の平均粒径を測定し、LおよびIdcを測定し、(ΔL/L)および(ΔIdc/Idc)を求めた。第1軟磁性金属粒子の平均粒径を表4に示し、第2軟磁性金属粒子の平均粒径を表5に示す。L、Idc、(ΔL/L)および(ΔIdc/Idc)の結果を表6に示す。
【0159】
また、表4~表6の各試料では、「インダクタンスL」および「直流重畳特性Idc」のバランスの尺度として、「(ΔL/L)+(ΔIdc/Idc)」を求めた。結果を表6に示す。
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
図6は、実施例5aおよび実施例4~7について、X軸を内径部第2磁性素体割合(%)とし、Y軸を(ΔL/L)+(ΔIdc/Idc)(%)としたグラフである。
【0164】
表6および
図6より、内径第2磁性素体割合が30%以上の場合は、(ΔL/L)+(ΔIdc/Idc)が高く、インダクタンスおよび直流重畳特性のバランスがより良好であることが確認できた。
【0165】
表6より、外径第2磁性素体割合が15%以上の場合は、インダクタンスおよび直流重畳特性のバランスがより良好であることが確認できた。
【0166】
また、比較例4は、第1軟磁性金属粒子の方が第2軟磁性金属粒子よりも飽和磁化が低いことから、
図5Cに記載の構造となっていた。
【0167】
(表7~表9の各試料)
表7~表9の各試料では、各軟磁性金属粉末の組成が表7または表8に記載の組成となるように変化させた。また、
図3に示すようにコイル導体5が3次元的かつ二重螺旋状になるように
図2a~
図2hにおいて、導体、第1グリーンシートおよび第2グリーンシートの配置を変化させてグリーンの積層体を得た。さらに、内径第2磁性素体割合および外径第2磁性素体割合を表9に記載の通り変化させた。上記以外は表1~表3の各試料と同様にして積層コイルを得て、軟磁性金属粒子の平均粒径を測定し、LおよびIdcを測定し、「ΔL/L」および「ΔIdc/Idc」を求めた。第1軟磁性金属粒子の平均粒径を表7に示し、第2軟磁性金属粒子の平均粒径を表8に示す。L、Idc、(ΔL/L)および(ΔIdc/Idc)の結果を表9に示す。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
表9より、コイル導体5が3次元的かつ二重螺旋状である場合でも、層間領域が第1磁性素体で構成されており、軸端領域が第2磁性素体で構成されており、第1軟磁性金属粒子の飽和磁化が第2軟磁性金属粒子に比べて高い場合(実施例11~実施例15)は、判定がOKとなり、インダクタンスおよび直流重畳特性が十分に高いことが確認できた。
【0172】
(表10~表21の各試料)
表10~表21の各試料では、各軟磁性金属粉末の組成および平均粒径が、表10、表11、表13、表14、表16、表17、表19、表20に記載の組成および平均粒径となるように変化させた以外は、実施例4と同様にして積層コイルを得た。すなわち、表10~表21の各試料は
図1Aに記載の構造となるように作製した。
【0173】
得られた積層コイルについて、上記と同様にして、軟磁性金属粒子の平均粒径を測定し、LおよびIdcを測定し、(ΔL/L)および(ΔIdc/Idc)を求めた。第1軟磁性金属粒子の平均粒径を表10、表13、表16および表19に示し、第2軟磁性金属粒子の平均粒径を表11、表14、表17および表20に示す。L、Idc、(ΔL/L)および(ΔIdc/Idc)の結果を表12、表15、表18および表21に示す。
【0174】
また、表10~表21の各試料では、下記の方法により「めっき伸び抑制」および「ショート率」を測定した。
【0175】
<めっき伸び抑制>
めっき伸び抑制の評価は、積層コイルの外観を観察することにより行った。めっき伸びが全く見られない場合をA、めっき伸びが見られるが50μm以下の場合をB、めっき伸びが50μmを上回り400μm未満の場合をC、めっき伸びが400μm以上の場合をDとした。結果を表12、表15、表18および表21に示す。
【0176】
<ショート数>
30個の積層コイルを作製し、LCRメータを用いてショートしている積層コイルの数を測定した。0/30である場合を良好とした。結果を表12、表15、表18および表21に示す。
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
表10~表12より、第1軟磁性金属粒子の平均粒径が1~6μmである場合(実施例4、実施例16~実施例18)は、インダクタンスおよび直流重畳特性のバランスがより良く、めっき伸び抑制の評価がより高く、ショート数がより少ないことが確認できた。
【0190】
表10~表12より、第2軟磁性金属粒子の平均粒径が1~15μmである場合(実施例4、実施例20~実施例23)は、インダクタンスおよび直流重畳特性のバランスがより良好であり、ショート数がより少ないことが確認できた。
【0191】
表13~表15より、第1軟磁性金属粒子のPの含有量が10~40ppmである場合(実施例26~実施例28)は、めっき伸び抑制の評価がより高く、ショート数がより少ないことが確認できた。
【0192】
表13~表15より、第2軟磁性金属粒子のPの含有量が100~6000ppmである場合(実施例30~実施例33)は、めっき伸び抑制の評価がより高く、ショート数がより少ないことが確認できた。
【0193】
表16~表18より、第2軟磁性金属粒子のNiの含有量が14.0質量%より多く、56.0質量%未満の場合(実施例35~38)は、インダクタンスが大きくなおかつインダクタンスと直流重畳特性のバランスがより良好であることが確認できた。
【0194】
表19~表21より、第1軟磁性金属粒子のSiの含有量が3.5~7.5質量%の場合(実施例41~43)は、インダクタンスと直流重畳特性のバランスがより良好であり、なおかつめっき伸び抑制の評価がより高いと共に、ショート数が少ないことが確認できた。
【0195】
表19~表21より、第2軟磁性金属粒子のSiの含有量が2.0~6.0質量%の場合(実施例46,47)は、インダクタンスと直流重畳特性のバランスがより良好であり、なおかつめっき伸び抑制の評価がより高いと共に、ショート数が少ないことが確認できた。