(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162391
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】フラッシュランプユニット、光源装置、及びフラッシュランプ用リフレクタ
(51)【国際特許分類】
H01J 61/33 20060101AFI20221017BHJP
H01J 61/54 20060101ALI20221017BHJP
H01J 61/35 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
H01J61/33 F
H01J61/54 H
H01J61/35 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067214
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 征彦
【テーマコード(参考)】
5C043
【Fターム(参考)】
5C043CC14
5C043DD13
5C043DD24
5C043DD31
5C043DD35
(57)【要約】
【課題】ワークへの光照射効率を高めたフラッシュランプユニット、光源装置、及びフラッシュランプ用リフレクタを提供する。
【解決手段】フラッシュランプとリフレクタを備えるフラッシュランプユニットであって、フラッシュランプは、長尺な発光管と、発光管の第一端側に、発光管の長手方向軸と同軸となるように設けられた第一電極導入部と、発光管の第一端とは反対側の第二端側に、発光管の長手方向軸に対して交差するように設けられた第二電極導入部と、第一電極導入部内に設けられた第一電極と、第二電極導入部内に設けられた第二電極と、発光管の外周面に沿って配置されたトリガ部材と、発光管の第二端側の先端部に設けられた光出射面と、を備え、リフレクタは、発光管の外周面を取り囲むように設けられた反射部と、発光管の第一端側に設けられた第一開口部と、発光管の第二端側に設けられた第二開口部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッシュランプとリフレクタを備えるフラッシュランプユニットであって、
前記フラッシュランプは、
発光ガスが封入された長尺な発光管と、
前記発光管の第一端側に、前記発光管の長手方向軸と同軸となるように設けられた第一電極導入部と、
前記発光管の前記第一端とは反対側の第二端側に、前記発光管の長手方向軸に対して交差するように設けられた第二電極導入部と、
前記第一電極導入部内に設けられた第一電極と、
前記第二電極導入部内に設けられた第二電極と、
前記発光管の外周面に沿って配置されたトリガ部材と、
前記発光管の前記第二端側の先端部に設けられた光出射面と、を備え、
前記リフレクタは、
前記発光管の外周面を取り囲むように設けられた反射部と、
前記発光管の第一端側に設けられた第一開口部と、
前記発光管の第二端側に設けられた第二開口部と、を備える、
ことを特徴とするフラッシュランプユニット。
【請求項2】
前記第二開口部の開口面積は、前記第一開口部の開口面積よりも大きい、請求項1に記載のフラッシュランプユニット。
【請求項3】
前記第二電極導入部は、前記反射部に形成された第三開口部から前記リフレクタの外側に突出している、請求項1に記載のフラッシュランプユニット。
【請求項4】
前記第二電極導入部の前記第三開口部からの突出長さが10mm以上である、請求項3に記載のフラッシュランプユニット。
【請求項5】
前記フラッシュランプは、前記第二電極を支持する電極リード棒と、前記電極リード棒を前記第二電極導入部に封着する段継ぎガラスと、を備え、
前記段継ぎガラスの外表面は熱輻射膜で被覆され、当該熱輻射膜の外表面は反射膜で被覆されており、
前記熱輻射膜は、200~1500nmと2500~5000nmの波長範囲の光の輻射率が0.5以上であり、
前記反射膜は、200~1500nmの波長範囲の光を反射し、かつ2500~5000nmの波長範囲の光を透過する、請求項1に記載のフラッシュランプユニット。
【請求項6】
前記フラッシュランプは、前記第二電極を支持する電極リード棒と、前記電極リード棒を前記第二電極導入部に封着する段継ぎガラスと、を備え、
前記段継ぎガラスの周囲に、前記段継ぎガラスを閃光から保護する筒状の保護部材が配置されている、請求項1に記載のフラッシュランプユニット。
【請求項7】
前記リフレクタは、複数の部材を組み付けて構成されている、請求項1に記載のフラッシュランプユニット。
【請求項8】
前記リフレクタは、一対の半割部材を組み付けて構成されている、請求項7に記載のフラッシュランプユニット。
【請求項9】
前記リフレクタの材料は、アルミニウム又は銀である、請求項1に記載のフラッシュランプユニット。
【請求項10】
前記リフレクタの材料は、光輝アルミニウムである、請求項1に記載のフラッシュランプユニット。
【請求項11】
前記リフレクタの厚みは、0.3mm以上2mm以下である、請求項1に記載のフラッシュランプユニット。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載のフラッシュランプユニットを複数備えた、光源装置。
【請求項13】
フラッシュランプに用いられるリフレクタであって、
前記フラッシュランプは、
発光ガスが封入された長尺な発光管と、
前記発光管の第一端側に、前記発光管の長手方向軸と同軸となるように設けられた第一電極導入部と、
前記発光管の前記第一端とは反対側の第二端側に、前記発光管の長手方向軸に対して交差するように設けられた第二電極導入部と、
前記発光管の前記第二端側の先端部に設けられた光出射面と、を備え、
前記リフレクタは、
前記発光管の外周面を取り囲むように設けられる反射部と、
前記発光管の第一端側に設けられる第一開口部と、
前記発光管の第二端側に設けられる第二開口部と、
前記第二電極導入部が貫通可能な第三開口部と、を備える、フラッシュランプ用リフレクタ。
【請求項14】
請求項13に記載のフラッシュランプ用リフレクタであって、
前記第三開口部に取り付けられ、前記第二電極導入部の外表面を取り囲む筒状の保護部材を備える、フラッシュランプ用リフレクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュランプユニット、光源装置、及びフラッシュランプ用リフレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板のフラッシュアニール工程においては、コンデンサの充電エネルギーが2000J以上の比較的高い入力下で10msec以下の短時間でフラッシュランプ(以下、単にランプとも称する)を閃光させ、ワーク加熱を行う場合が多い。
【0003】
ランプを閃光させるためには、第一に、予めランプに接続されたコンデンサに所定の値の電圧を印加して、閃光時の放電に使用する電荷を蓄える。第二に、ランプ外面にトリガ電圧と称される高周波電圧を印加し、発光管内で電極間を絶縁破壊させて、コンデンサの電荷を瞬間的に放電させる。この瞬時的な放電により、ランプが閃光する。なお、トリガ電圧をランプに作用させる手段として、ランプ外面に金属製のワイヤーを巻き付けたり、トリガ管と呼ばれる部品を使用したりする方法がある。
【0004】
ランプから出る光は、多くの場合、ランプの中心軸周りに対称な配光分布となる。
図11に示すように、光が照射されるシリコンウエハーなど(以下、ワークという)における照射効率を高める観点からは、ランプ90を挟んでワークWと反対側に位置する領域に反射鏡100を設け、光をワークW側に反射させる場合が多い(下記特許文献1を参照)。
【0005】
特許文献1に記載されたランプは、
図11のように形状が中心軸対称であり、発光管の両端に電極が配置された構成である。他方、下記特許文献2には、軸対称形状ではなく、
図12に示すように一方の電極94が他方の電極93に対し直角の角度配置となるランプ91が開示されている。この構成によれば、ランプ91の端部に設けられた光出射面95から効率よく光を取り出すことができる。加えて、特許文献2では、このランプ91を光出射面95がワークに対向するように複数配置し、同時に閃光させることで、ワークに大光量を照射できることが言及されている。
【0006】
また、特許文献2では、発光管92の内周面に反射膜96を設け、光出射面95側へ効率よく光を反射させることが言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-203606号公報
【特許文献2】特開2020-155346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2のように発光管92の内周面に反射膜96を設けた場合であっても、ワークへの光照射効率が十分ではなかった。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑み、ワークへの光照射効率を高めたフラッシュランプユニット、光源装置、及びフラッシュランプ用リフレクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフラッシュランプユニットは、フラッシュランプとリフレクタを備えるフラッシュランプユニットであって、
前記フラッシュランプは、
発光ガスが封入された長尺な発光管と、
前記発光管の第一端側に、前記発光管の長手方向軸と同軸となるように設けられた第一電極導入部と、
前記発光管の前記第一端とは反対側の第二端側に、前記発光管の長手方向軸に対して交差するように設けられた第二電極導入部と、
前記第一電極導入部内に設けられた第一電極と、
前記第二電極導入部内に設けられた第二電極と、
前記発光管の外周面に沿って配置されたトリガ部材と、
前記発光管の前記第二端側の先端部に設けられた光出射面と、を備え、
前記リフレクタは、
前記発光管の外周面を取り囲むように設けられた反射部と、
前記発光管の第一端側に設けられた第一開口部と、
前記発光管の第二端側に設けられた第二開口部と、を備えるものである。
【0011】
本発明によれば、フラッシュランプの発光管の外周面を取り囲むようにリフレクタの反射部が設けられるため、光出射面から出射される光のワークへの照射効率を高めることができる。
【0012】
本発明に係るフラッシュランプユニットにおいて、前記第二開口部の開口面積は、前記第一開口部の開口面積よりも大きい、という構成でもよい。
【0013】
この構成によれば、光出射面から出射される光のワークへの照射効率をさらに高めることができる。
【0014】
本発明に係るフラッシュランプユニットにおいて、前記第二電極導入部は、前記反射部に形成された第三開口部から前記リフレクタの外側に突出している、という構成でもよい。また、本発明に係るフラッシュランプにおいて、前記第二電極導入部の前記第三開口部からの突出長さが10mm以上であることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第二電極導入部の先端に設けられる段継ぎガラス(詳しくは後述する)がリフレクタの外側に配置されるため、段継ぎガラスに照射される光の量を低減することができ、段継ぎガラスの過熱を防止できる。
【0016】
本発明に係るフラッシュランプユニットにおいて、前記フラッシュランプは、前記第二電極を支持する電極リード棒と、前記電極リード棒を前記第二電極導入部に封着する段継ぎガラスと、を備え、
前記段継ぎガラスの外表面は熱輻射膜で被覆され、当該熱輻射膜の外表面は反射膜で被覆されており、
前記熱輻射膜は、200~1500nmと2500~5000nmの波長範囲の光の輻射率が0.5以上であり、
前記反射膜は、200~1500nmの波長範囲の光を反射し、かつ2500~5000nmの波長範囲の光を透過する、という構成でもよい。
【0017】
この構成によれば、段継ぎガラスが光による過熱によって破損することを防止できる。
【0018】
また、本発明に係るフラッシュランプユニットにおいて、前記フラッシュランプは、前記第二電極を支持する電極リード棒と、前記電極リード棒を前記第二電極導入部に封着する段継ぎガラスと、を備え、
前記段継ぎガラスの周囲に、前記段継ぎガラスを閃光から保護する筒状の保護部材が配置されている、という構成でもよい。
【0019】
この構成によれば、段継ぎガラスが光による過熱によって破損することを防止できる。
【0020】
本発明に係るフラッシュランプユニットにおいて、前記リフレクタは、複数の部材を組み付けて構成されている、という構成でもよい。また、本発明に係るフラッシュランプユニットにおいて、前記リフレクタは、一対の半割部材を組み付けて構成されている、という構成でもよい。
【0021】
これらの構成によれば、フラッシュランプが複雑な形状を有している場合であっても、リフレクタをフラッシュランプの周囲に容易に着脱することができる。
【0022】
本発明に係るフラッシュランプユニットにおいて、前記リフレクタの材料は、アルミニウム又は銀である、という構成でもよい。
【0023】
この構成によれば、紫外~可視域の光を効率よく利用することができる。
【0024】
また、本発明に係るフラッシュランプユニットにおいて、前記リフレクタの材料は、光輝アルミニウムである、という構成でもよい。
【0025】
この構成によれば、光の利用効率を高めることができる。
【0026】
本発明に係るフラッシュランプユニットにおいて、前記リフレクタの厚みは、0.3mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、リフレクタの変形を防ぎ、かつリフレクタの加工も容易となる。
【0028】
また、本発明に係る光源装置は、上記何れかのフラッシュランプユニットを複数備えたものである。
本発明によれば、フラッシュランプの発光管の外周面を取り囲むようにリフレクタの反射部が設けられるため、光出射面から出射される光のワークへの照射効率を高めることができる。
【0029】
また、本発明に係るフラッシュランプ用リフレクタは、フラッシュランプに用いられるリフレクタであって、
前記フラッシュランプは、
発光ガスが封入された長尺な発光管と、
前記発光管の第一端側に、前記発光管の長手方向軸と同軸となるように設けられた第一電極導入部と、
前記発光管の前記第一端とは反対側の第二端側に、前記発光管の長手方向軸に対して交差するように設けられた第二電極導入部と、
前記発光管の前記第二端側の先端部に設けられた光出射面と、を備え、
前記リフレクタは、
前記発光管の外周面を取り囲むように設けられる反射部と、
前記発光管の第一端側に設けられる第一開口部と、
前記発光管の第二端側に設けられる第二開口部と、
前記第二電極導入部が貫通可能な第三開口部と、を備えるものである。
【0030】
本発明によれば、フラッシュランプの発光管の外周面を取り囲むようにリフレクタの反射部が設けられるため、光出射面から出射される光のワークへの照射効率を高めることができる。
【0031】
本発明に係るフラッシュランプ用リフレクタは、前記第三開口部に取り付けられ、前記第二電極導入部の外表面を取り囲む筒状の保護部材を備える、という構成でもよい。
【0032】
この構成によれば、第二電極導入部の先端に設けられる段継ぎガラスが光による過熱によって破損することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第一実施形態に係るフラッシュランプユニットの斜視図
【
図4】第一実施形態に係るフラッシュランプユニットの長手方向に沿った断面図
【
図5】フラッシュランプの周囲にリフレクタを保持した状態を示す断面図
【
図6】第二実施形態に係るフラッシュランプユニットの長手方向に沿った断面図
【
図7】第三実施形態に係るフラッシュランプユニットの長手方向に沿った断面図
【
図8】第四実施形態に係るフラッシュランプユニットの長手方向に沿った断面図
【
図9】他の実施形態に係るフラッシュランプユニットの長手方向に沿った断面図
【
図10】比較例1に係るフラッシュランプの長手方向に沿った断面図
【
図11】従来のフラッシュランプユニットの一例を示す正面図及び側面図
【
図12】従来のフラッシュランプの一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係るフラッシュランプユニット及び光源装置の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比は必ずしも実際の寸法比と一致しておらず、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0035】
[第一実施形態]
本発明に係るフラッシュランプユニットの第一実施形態について説明する。
【0036】
図1は、フラッシュランプユニットの一例を示す斜視図である。フラッシュランプユニットは、フラッシュランプ1とリフレクタ5(
図1では二点鎖線で示されている)とを備える。
【0037】
図1に示すように、フラッシュランプ1は、発光ガスが封入された長尺な発光管2を備える。発光管2を形成する材料は、例えば石英ガラスである。発光管2が延伸する方向、すなわち発光管2の管軸方向を長手方向と称する。発光管2は円筒状に形成されており、発光管2の中心軸を長手方向軸2cとする。発光管2の寸法は、例えば、外径が25mm、内径が20mmであるが、本発明において発光管2の寸法は限定されない。
【0038】
以下の説明においては、
図1に示すように、発光管2の長手方向をX方向、後述する第二電極導入部22が延伸する方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。
【0039】
図2は、フラッシュランプ1をZ方向から見た正面図である。発光管2の第一端側(+X側)には第一電極導入部21が設けられ、第一電極導入部21の内部には第一電極23が設けられている。第一電極導入部21は、円筒状に形成されている。第一電極導入部21は、発光管2の長手方向軸2cと同軸となるように配置されている。第一電極導入部21は、発光管2に連通されている。第一電極導入部21の内径は発光管2の内径よりも小さい。第一電極23の中心軸は、発光管2の長手方向軸2cと一致している。第一電極23の寸法は、例えば外径10mmである。第一電極23の材料は、例えばランタナ(酸化ランタン)入りタングステンである。
【0040】
発光管2の第一端と反対側の第二端側(-X側)には第二電極導入部22が設けられ、第二電極導入部22の内部には第二電極24が設けられている。第二電極導入部22は、円筒状に形成されている。第二電極導入部22は、発光管2の長手方向軸2cに対して交差するように配置されている。本実施形態では、第二電極導入部22は、発光管2の長手方向軸2cに対して直交する方向(Y方向)に延びている。しかし、第二電極導入部22と発光管2は90°以外の角度で交差するように配置されてもよい。第二電極導入部22は、発光管2に連通されている。第二電極24の中心軸24cは、発光管2の長手方向軸2cに対して直交する。第二電極24の寸法は、例えば外径10mmである。第二電極24の材料は、例えばランタナ入りタングステンである。
【0041】
本実施形態では、第一電極23が陰極であり、第二電極24が陽極である。第一電極23と第二電極24の間の距離、具体的には第一電極23の先端から第二電極24の中心軸24cまでのX方向の距離は、例えば400mmである。
【0042】
発光管2の第二端側の先端部には、光出射面25が設けられている。発光管2内に封入された発光ガスによって生じる光は光出射面25を介して出射される。複数のフラッシュランプ1をそれぞれの光出射面25が同じ向きとなるように配置し、一つの光源装置を構成してもよい。
【0043】
発光管2に封入される発光ガスは、例えば、キセノンガスである。発光管2に封入されるキセノンガスの圧力は、例えば室温下で60kPaである。発光管2に封入された発光ガスがキセノンガスである場合、放電により波長200~1100nmの光が生成される。
【0044】
フラッシュランプ1は、発光管2の外周面に沿って、発光管2の長手方向に延びるように配置されたトリガ部材3を備える。
【0045】
トリガ部材3は、封止されたトリガ管31と、トリガ管31の内部に封入された導電性部材32と、を備える。トリガ管31は、少なくとも一端部に封止部31aが形成された管状の誘電体部材である。本実施形態では、トリガ管31の材料は、石英ガラスである。また、トリガ管31の形状は、両端部が封止された円筒状の直管である。トリガ管31の寸法は、例えば、外径4mm、内径2mm、全長430mmであるが、本発明においてトリガ管31の寸法は限定されない。
【0046】
導電性部材32の材料は、例えばタングステンである。また、導電性部材32の形状は、外径1mm、全長400mmの丸棒である。導電性部材32の一端には、封止用のモリブデン箔33が電気的に接続される。モリブデン箔33は、トリガ管31の封止部31aに埋設されている。モリブデン箔33の片端にはピン34が溶接されている。ピン34の材料は、例えばモリブデンである。ピン34の形状は、外径1mmの丸棒である。リード線を介してこのピン34とトリガ回路(後述する)を電気的に接続し、トリガ管31の外部から内部の導電性部材32へ給電を行う。また、トリガ管31の内部には、放電始動性改善および導電性部材32の酸化防止の観点で微量の不活性ガスが封入される。
【0047】
発光管2とトリガ部材3は、専用の固定治具(図示していない)を用いて固定される。固定治具の材質は、例えばセラミックスである。トリガ部材3は発光管2の外表面に接し、発光管2とトリガ部材3の中心軸が略平行となるように配置される。また、ランプから出射される光によるリード線の変色を防ぎ、かつ照射物にリード線の影を作らないようにするため、トリガ部材3は、ピン34が光出射面25の反対側である第一端側に配置されるように構成されている。
【0048】
図3は、フラッシュランプ1の点灯回路を示す説明図である。発光管2の両端の電極にランプ点灯回路41が接続されている。トリガ部材3は、トリガ回路42に接続されている。フラッシュランプ1には、瞬間的に放電させるためのエネルギー源として、時間幅の短いパルス電流が入力される。パルス電流の時間幅とエネルギー量は、コンデンサCの容量、コイルLのインダクタンス、充電器Vの電圧の値により調整することができる。
【0049】
まず、充電器Vの電圧がコンデンサCに印加され、コンデンサCにエネルギーが蓄えられる。次いで、トリガ回路42からトリガ部材3に電圧が印加されることで、発光管2の電極間で絶縁破壊が起こり、コンデンサCに蓄えられたエネルギーが瞬時に発光管2に投入され、放電が開始する(フラッシュ点灯する)。
【0050】
図4は、フラッシュランプ1及びリフレクタ5のX方向に沿った断面図である。リフレクタ5は、発光管2の外周面を取り囲むように設けられた反射部50と、発光管2の第一端側(+X側)に設けられた第一開口部51と、発光管2の第二端側(-X側)に設けられた第二開口部52と、を備える。また、リフレクタ5は、第二電極24を支持する電極リード棒241が貫通可能な第三開口部53を備えてもよい。
【0051】
リフレクタ5は、略円錐台形状の反射部50を備える。反射部50は、発光管2の長手方向軸2cとリフレクタ5の中心軸が同軸となるように配置されている。第一開口部51は、反射部50の+X側端であり、第二開口部52は、反射部50の-X側端である。第一開口部51は、X方向において第一電極23の先端と略同じ位置に配置されている。第二開口部52は、X方向において光出射面25よりも-X側に配置されている。
【0052】
第二開口部52の開口面積は、第一開口部51の開口面積よりも大きいことが好ましい。これにより発光効率が良好となる。
【0053】
なお、本実施形態において反射部50のYZ平面での断面形状は、円形であるが、これに限定されない。望まれるワーク面の光強度分布やランプ点灯時の配置方法等に合わせて、反射部50のYZ平面での断面形状は、例えば楕円形又は多角形でもよい。また、異なる断面形状の反射部を同一光学系で組み合わせてもよい。
【0054】
リフレクタ5の材料は、プロセスで求められる光特性(例えば、波長)により適宜選択される。例えば、プロセスで必要とされる光の波長領域が紫外~可視域であれば、リフレクタ5の材料は、アルミニウム又は銀であり、好ましくは光輝アルミニウムである。リフレクタ5を光輝アルミニウムで構成することで、光の利用効率がより高くなる。また、プロセスで必要とされる光の波長領域が赤外域であればリフレクタ5の材料として金を用いることもできる。なお、リフレクタ5は、アルミニウム又は銀などの板で構成されてもよく、アルミニウム又は銀などをガラス基材上に蒸着して構成されてもよい。また、リフレクタ5は、誘電体多層膜をガラス基材上に形成して構成されていてもよい。
【0055】
リフレクタ5の厚みは、0.3mm以上2mm以下であるのが好ましい。本実施形態のリフレクタ5の厚みは1mmである。リフレクタ5の厚みは、薄すぎると弱くなり変形するおそれがあり、厚すぎると加工しにくくなる。また、リフレクタ5の厚みが厚すぎると、複数のフラッシュランプユニットを配置して一つの光源装置を構成する際、フラッシュランプユニットを密に配置することが難しくなる。
【0056】
図5は、フラッシュランプ1の周囲にリフレクタ5を保持した状態を示す断面図である。フラッシュランプ1は、フラッシュランプ1の第一電極導入部21に取り付けられた口金61を、点灯治具6に設けられたホルダー62で保持することによって固定されている。リフレクタ5は、点灯治具6に設けられたマウント63に載置され、支持板64によって支持されることによって固定されている。
【0057】
リフレクタ5は、複数の部材を組み付けて構成されているのが好ましい。
図5のようにフラッシュランプ1が比較的複雑な形状を有している場合、一体型のリフレクタを用いると、ランプ取付時に必要なストロークがかなり大きくなり、ランプ交換などのメンテナンス性が悪化するためである。本実施形態のリフレクタ5は、
図5に示す断面(第二電極24の中心軸24cを含む平面で切断された断面)で分割された一対の半割部材を組み付けて構成されている。ただし、リフレクタ5は、これに限定されず、三つ以上の部材を組み付けて構成されてもよい。
【0058】
[第二実施形態]
本発明に係るフラッシュランプユニットの第二実施形態について、第一実施形態と異なる箇所を主として説明する。なお、第一実施形態と共通の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0059】
図6は、第二実施形態に係るフラッシュランプ1及びリフレクタ5のX方向に沿った断面図である。第二実施形態においては、第二電極導入部22は、反射部50に形成された第三開口部53からリフレクタ5の外側に突出している。より具体的には、第二電極導入部22は、その先端に設けられた段継ぎガラス22aがリフレクタ5の外側に位置するように構成される。
【0060】
段継ぎガラス22aは、石英ガラスよりも低温下で軟化し、線膨張係数が石英ガラスと金属の中間であるガラスで形成されており、タングステンなどの高融点金属を材料とする電極リード棒241と石英ガラスを材料とする第二電極導入部22とを接合、封止するものである。段継ぎガラス22aにランプ閃光による強い光が照射されると、同部は光を吸収するなどで過熱され、熱歪みが蓄積される。この熱歪みに起因して同部にクラックが生じて、ランプ内に封入されたガスが漏出する場合がある。また、最悪の場合、段継ぎガラス22aに形成されたクラックを起点として、ランプが破裂するおそれがある。
【0061】
段継ぎガラス22aをリフレクタ5の外側に配置することで、段継ぎガラス22aに照射される光の量を低減することができるため、段継ぎガラス22aの過熱を防止することができる。
【0062】
第二電極導入部22の第三開口部53からの突出長さ22pは10mm以上であるのが好ましい。ここで、突出長さ22pは、リフレクタ5の内面5aと電極リード棒241が交わる点241aから石英ガラスと段継ぎガラス22aの境界22bまでのY方向の距離とする。突出長さ22pを10mm以上とすることで、数千回点灯した場合にも石英ガラスと段継ぎガラス22aの境界22bでのクラックを防ぐことができる。
【0063】
また、突出長さ22pは120mm以下であるのが好ましい。突出長さ22pを長くすると、電極リード棒241が長くなり、力学的なモーメントは大きくなる。また、フラッシュランプ1は、発光時、発光管2の周囲に生じる衝撃波によって振動する。大きな負荷がかかった状態で、振動による作用を繰り返し受けると、第二電極導入部22の破損に至るおそれがある。突出長さ22pを120mm以下とすることで、第二電極導入部22の破損を防止することができる。
【0064】
[第三実施形態]
本発明に係るフラッシュランプユニットの第三実施形態について、第一実施形態と異なる箇所を主として説明する。なお、第一実施形態と共通の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0065】
図7は、第三実施形態に係るフラッシュランプ1及びリフレクタ5のX方向に沿った断面図である。第三実施形態においては、段継ぎガラス22aの外表面を被膜で被覆している。なお、当該被膜は、第二電極導入部22の外表面も被覆している。被膜は、熱輻射膜71と反射膜72からなり、段継ぎガラス22aの外表面が熱輻射膜71で被覆され、熱輻射膜71の外表面が反射膜72で被覆されている。
【0066】
熱輻射膜71は、200~1500nmと2500~5000nmの波長範囲の光の輻射率が0.5以上であり、好ましくは0.9以上である。熱輻射膜71は、黒色の膜であって、具体的には耐熱性の黒色塗料を塗布乾燥したものである。
【0067】
反射膜72は、200~1500nmの波長範囲の光を反射し、かつ2500~5000nmの波長範囲の光を透過する。反射膜72は、光反射性の金属粒子を含有した膜であって、具体的にはシリコーン樹脂に光反射性の金属粒子である銀の粒子を混合し塗布乾燥したものである。この反射膜72は、フラッシュランプ1から放射される200~1500nmの波長範囲の光を反射するので、段継ぎガラス22a付近の電極リード棒241にフラッシュランプ1から放射される光が当たることがない。
【0068】
また、段継ぎガラス22aの外表面に反射膜72のみを設けた場合、第二電極導入部22の内部を光が伝達されてきたときに、段継ぎガラス22a付近の電極リード棒241が光によって過熱されてしまうことがある。段継ぎガラス22aの外表面と反射膜72との間に熱輻射膜71を設け、この熱輻射膜71で光を吸収することにより、電極リード棒241に照射される光の量を低減させることができ、電極リード棒241の温度上昇を抑制できる。
【0069】
[第四実施形態]
本発明に係るフラッシュランプユニットの第四実施形態について、第一実施形態と異なる箇所を主として説明する。なお、第一実施形態と共通の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0070】
図8は、第四実施形態に係るフラッシュランプ1及びリフレクタ5のX方向に沿った断面図である。第四実施形態においては、段継ぎガラス22aの周囲に、段継ぎガラス22aを閃光から保護する筒状の保護部材8が配置されている。なお、保護部材8は、段継ぎガラス22aに加えて第二電極導入部22の外表面も取り囲んでいる。保護部材8は、
図8に示す断面(第二電極24の中心軸24cを含む平面で切断された断面)で分割された一対の半割部材を組み付けて構成されている。
【0071】
この例では、保護部材8は、反射部50に形成された第三開口部53に取り付けられているが、これに限定されない。例えば、保護部材8は、段継ぎガラス22a及び第二電極導入部22の外表面に直接取り付けられてもよい。保護部材8の材料は、例えば光輝アルミニウム合金である。また、保護部材8の材料は、例えば窒化アルミニウムである。
【0072】
また、この例では、保護部材8は、リフレクタ5と別部材として第三開口部53に取り付けられているが、これに限定されない。保護部材8は、リフレクタ5と一体に形成されてもよい。
【0073】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0074】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0075】
上記の実施形態に係るリフレクタ5は、略円錐台形状の反射部50を備えるが、これに限定されない。反射部50は、発光管2の外周面を取り囲む形態であればよく、例えば円筒状でもよい。また、上記の実施形態に係るリフレクタ5は、第二開口部52の開口面積が第一開口部51の開口面積よりも大きくなるように配置されているが、これに限定されず、リフレクタ5は、第一開口部51の開口面積が第二開口部52の開口面積よりも大きくなるように配置されてもよい。すなわち、
図4等に示すリフレクタ5をX方向に反転して配置してもよい。
【0076】
図9は、他の実施形態に係るフラッシュランプユニットの断面図である。この例では、リフレクタ5は、第一反射部50aと第二反射部50bを備える。第二反射部50bを設けることで、フラッシュランプ1からの光を集光することができ、光出射面25からワークまでの距離が大きい場合にも光照射効率が高まる。
【0077】
上記第一実施形態に係るフラッシュランプ1において、トリガ部材3は、少なくとも一端部に封止部31aが形成されたトリガ管31と、トリガ管31の内部に封入された導電性部材32と、導電性部材32に電気的に接続され、封止部31aに埋設されたモリブデン箔33と、を備える、という構成であるが、これに限定されない。トリガ部材3は、棒状の導電体のみで構成されてもよい。
【0078】
[実施例]
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0079】
本発明に係るフラッシュランプユニットの光照射効率について評価を行った。
図1~4に示すフラッシュランプユニットを実施例1とした。リフレクタ5は、円錐台形状の反射部50を有しており、反射部50の長さが300mm、第一開口部51の開口径が50mm、第二開口部52の開口径が100mmである。
【0080】
発光管2の寸法は、外径25mm、内径20mm、長さ450mmとした。電極23,24は、寸法が外径9mmで、材質がランタナ入りタングステンである。電極23と電極24の間の距離は400mmである。発光管2の内部には、室温下で60kPaの圧力となる量のキセノンガスを封入した。
【0081】
トリガ管31の寸法は、外径4mm、内径2mm、全長430mmとした。導電性部材32の寸法は、外径1mm、全長400mmで、材質はタングステンである。
【0082】
実施例1のリフレクタ5の代わりに、
図10に示すように発光管2の内周面に反射膜29を設けたフラッシュランプを有するフラッシュランプユニットを比較例1とした。反射膜29は、材料としてシリカを使用し、これを溶媒に溶かして発光管2の内周面に塗布、乾燥させた。その後、電極23,24を封止してランプを製作した。反射膜29は、
図10に示すように放電が発生する領域に設けた。反射膜29の膜厚は、0.03~0.3mmである。
【0083】
リフレクタ5や反射膜29等の反射機構を設けないフラッシュランプを有するフラッシュランプユニットを比較例2とした。
【0084】
各フラッシュランプユニットは、発光管2の長手方向軸2cが垂直となるように固定し(
図5参照)、電気容量600μFのコンデンサとインダクタンス30μHのコイルを接続した点灯回路を用いて2000Jの入力下でフラッシュランプを点灯した。
【0085】
光照射効率の評価は、ランプ出力をカロリーメーターで測定することで行った。カロリーメーターは、OPHIR社製のL30A-SH-V1を用いた。点灯時に光出射面25から200mmの位置で出力を計測した後、これらを比較例2における出力を基準として相対化した結果を表1に示す。
【0086】
【0087】
表1の結果から、フラッシュランプ1の外部にリフレクタ5を配置した実施例1が、発光管2の内周面に反射膜を設けた比較例1よりも光照射効率が非常に高いことが分かる。
【0088】
次いで、リフレクタ5の形状と光照射効率との関係について検討を行った。
【0089】
上記の実施例1のリフレクタ5の形状を表2のように変えたものを実施例2~10とした。実施例1、実施例3、実施例5、実施例7、及び実施例9のリフレクタ5は、円錐台形状または円筒状の反射部50を有する。また、実施例2、実施例4、実施例6、実施例8、実施例10のリフレクタ5は、六角錐台形状または六角筒状の反射部50を有する。実施例1~10の反射部50の長さは、何れも300mmである。その他、実施例2~10の発光管2やトリガ部材3の寸法等は、実施例1と同じとした。
【0090】
実施例1~10のフラッシュランプユニットについて、上記と同様の方法により光照射効率の評価を行った。評価結果を表2に示す。なお、表2においても、出力の相対値は表1内の比較例2における出力を基準とした値で記載されている。
【0091】
【0092】
表2の結果から、フラッシュランプ1の外部にリフレクタ5を設けることで、発光管2の内周面に反射膜を設けた比較例1よりも光照射効率を向上できることが分かった。また、実施例1の光照射効率が最も高かった。
【符号の説明】
【0093】
1 :フラッシュランプ
2 :発光管
2c :長手方向軸
3 :トリガ部材
5 :リフレクタ
8 :保護部材
21 :第一電極導入部
22 :第二電極導入部
22a :段継ぎガラス
23 :第一電極
24 :第二電極
24c :第二電極の中心軸
25 :光出射面
29 :反射膜
31 :トリガ管
31a :封止部
32 :導電性部材
33 :モリブデン箔
34 :ピン
41 :ランプ点灯回路
42 :トリガ回路
50 :反射部
50a :第一反射部
50b :第二反射部
51 :第一開口部
52 :第二開口部
53 :第三開口部
71 :熱輻射膜
72 :反射膜
241 :電極リード棒