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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162401
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】壁紙貼り付け具及び壁紙施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/18 20060101AFI20221017BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
E04F21/18 G
E04F13/07 Z
E04F13/07 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067231
(22)【出願日】2021-04-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】521155324
【氏名又は名称】前田 貢
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 貢
(57)【要約】
【課題】凸状に出っ張った直角構造部分に対し壁紙部材を円滑かつ簡単に貼り付ける。
【解決手段】
壁紙貼り付け具1は板状の外縁部のうち一方側に、建造物の直角凸壁面13に壁紙部材19を押し当てて貼り付けるための壁面用略直角凹部2を備え、前記板状の外縁部のうち他方側に、建造物の壁面の段付き凸部14の直角部位20に壁紙部材19を押し当てて貼り付けるための段付部用略直角凹部3を、前記壁面用略直角凹部2と向かい合うように備え、壁面用略直角凹部2は、互いに略直交する第1辺部4及び第2辺部5を備え、段付部用略直角凹部3は、互いに略直交する第3辺部6及び第4辺部7を備え、第3辺部6及び第4辺部7は、それぞれ、第1辺部4及び第2辺部5のいずれよりも短い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略扁平な板状に構成された壁紙貼り付け具であって、
前記板状の外縁部のうち一方側に、建造物の直角凸壁面に壁紙部材を押し当てて貼り付けるための壁面用略直角凹部を設け、
前記板状の外縁部のうち他方側に、建造物の壁面の段付き凸部の直角部位に壁紙部材を押し当てて貼り付けるための段付部用略直角凹部を、前記壁面用略直角凹部と向かい合うように設け、
前記壁面用略直角凹部は、
互いに略直交する向きにそれぞれ形成された第1辺部及び第2辺部を有し、
前記段付部用略直角凹部は、
互いに略直交する向きにそれぞれ形成された第3辺部及び第4辺部を有し、
前記第3辺部及び前記第4辺部は、それぞれ、前記第1辺部及び前記第2辺部のいずれよりも短く形成されている
ことを特徴とする壁紙貼り付け具。
【請求項2】
請求項1記載の壁紙貼り付け具において、
前記壁面用略直角凹部は、
前記第1辺部と前記第2辺部との間の隅部に、第1切り込み溝を有し、
前記段付部用略直角凹部は、
前記第3辺部と前記第4辺部との間の隅部に、第2切り込み溝を有する
ことを特徴とする壁紙貼り付け具。
【請求項3】
請求項2記載の壁紙貼り付け具において、
前記第1辺部、前記第2辺部、前記第3辺部、前記第4辺部のそれぞれは、
板厚方向の横断面視において、当該板厚方向の一方側端部及び他方側端部の両方に、面取り形状を備える
ことを特徴とする壁紙貼り付け具。
【請求項4】
互いに略直交する向きにそれぞれ形成された第1辺部及び第2辺部を備える壁面用略直角凹部を一方側に有し、かつ、互いに略直交する向きにそれぞれ形成されるとともに前記第1辺部及び前記第2辺部のいずれよりも短く形成された第3辺部及び第4辺部を備える段付部用略直角凹部を他方側に有する、壁紙貼り付け具を用いた壁紙施工方法であって、
建造物の直角凸壁面に対しては、前記壁面用略直角凹部によって壁紙部材を押し当てて貼り付け、
建造物の壁面の段付き凸部の直角部位に対しては、前記段付部用略直角凹部によって壁紙部材を押し当てて貼り付ける
ことを特徴とする壁紙施工方法。
【請求項5】
略扁平でかつ略長方形の板状に構成された壁紙貼り付け具であって、
長方形の4辺のうち対向する2つの長辺を構成し、略直線状にそれぞれ延びる第1外縁部及び第2外縁部と、
前記長方形の4辺のうち対向する2つの短辺を構成し、略直線状にそれぞれ延びる第3外縁部及び第4外縁部と、
互いに直交する前記第1外縁部及び前記第3外縁部の間に位置する第1隅部において、前記第1外縁部の延設方向に対し略直角に突出して設けられ、建造物の天井の溝部に壁紙部材を押し当てて貼り付けるための第1直角突出部と、
互いに直交する前記第2外縁部及び前記第4外縁部の間で、前記長方形において前記第1隅部に対して対角線の反対側に位置する第2隅部において、前記第2外縁部の延設方向に対し略直角に突出して設けられ、建造物の天井の溝部に壁紙部材を押し当てて貼り付けるための第2直角突出部と、
を有することを特徴とする壁紙貼り付け具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙貼り付け具及び壁紙施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁紙張り作業において、コーナー部分における壁紙作業を支援する壁紙張り作業用支援具が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の図1図7及び段落[0007]~[0010]に示すように、この従来技術の壁紙張り作業用支援具は、スポンジからなるブロック状の本体1が、全長方向にそって設けられた溝2と、布3とを備えていることが記載されている。また、特許文献1の段落[0013]には、布3の溝2箇所を壁と天井のコーナーに密接させながら擦ることで壁紙の裏側に残存した空気を抜くことができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-293099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の壁紙張り作業支援具では、壁紙張り作業を行う天井と壁とのコーナー部分は凹状に引っ込んだ構造であり、壁の角の部分が凸状に出っ張った構造において壁紙張り作業を支援する技術については記載されていない。
【0005】
本発明の目的は、凸状に出っ張った直角構造部分に対し壁紙部材を円滑かつ簡単に貼り付ける壁紙貼り付け具及び壁紙施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、略扁平な板状に構成された壁紙貼り付け具であって、前記板状の外縁部のうち一方側に、建造物の直角凸壁面に壁紙部材を押し当てて貼り付けるための壁面用略直角凹部を設け、前記板状の外縁部のうち他方側に、建造物の壁面の段付き凸部の直角部位に壁紙部材を押し当てて貼り付けるための段付部用略直角凹部を、前記壁面用略直角凹部と向かい合うように設け、前記壁面用略直角凹部は、互いに略直交する向きにそれぞれ形成された第1辺部及び第2辺部を有し、前記段付部用略直角凹部は、互いに略直交する向きにそれぞれ形成された第3辺部及び第4辺部を有し、前記第3辺部及び前記第4辺部は、それぞれ、前記第1辺部及び前記第2辺部のいずれよりも短く形成されていることを特徴としている。
【0007】
本発明の壁紙貼り付け具によれば、例えば建造物の直角凸壁面に壁紙部材を貼り付ける時は、最初に直角凸壁面に予め裏面に接着剤が塗布された壁紙部材を仮貼りしておき、その状態で、壁面用略直角凹部の最奥部を直角凸壁面の頂点に合わせるようにしつつ、貼り付け具を壁紙に接触させる。これにより、直角凸壁面のうち一方の壁に第1辺部が当接するとともに、他方の壁に第2辺部が当接する。したがって、そのまま貼り付け具を直角凸壁面全体に押し付けた状態で上下方向に壁紙をなでつけるようにしながら往復させるだけで、壁紙部材を円滑かつ簡単に直角凸壁面に対しキレイな仕上がりで、シワが寄ることなく貼り付けることができる。
【0008】
同様に、例えば建造物の壁面の段付き凸部に壁紙部材を貼り付ける時も、まず段付き凸部に壁紙部材を仮貼りした状態で、段付部用略直角凹部の最奥部を段付き凸部の直角部位の頂点に合わせるようにしつつ、貼り付け具を壁紙に接触させる。これにより、直角部位のうち一方の壁に第3辺部が当接するとともに、他方の壁に第4辺部が当接する。したがって、そのまま貼り付け具を直角凸壁面全体に押し付けた状態で上下方向に壁紙をなでつけるようにしながら往復させるだけで、壁紙部材を円滑かつ簡単に角を成形し直角部位に対しキレイな仕上がりで、シワが寄ることなく貼り付けることができる。
【0009】
以上のように、本願発明の壁紙貼り付け具を用いると、建造物の直角凸壁面に対しても壁面の段付き凸部に対しても壁紙部材を円滑かつ簡単に貼り付けることができる。また、壁面用略直角凹部と段付部用略直角凹部とが1つの壁紙貼り付け具の反対側に備えられているので、壁紙貼り付け具を手に持ったままその持ち方を変えるだけで、直角凸壁面と段付き凸部との両方が混在する施工現場において、共通の壁紙貼り付け具により施工を行うことができ、壁紙貼り付け具を交換する必要がない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の壁紙貼り付け具及び壁紙施工方法によれば、凸状に出っ張った直角構造部分に対し壁紙部材を円滑かつ簡単に貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る建造物の直角凸壁面及び段付き凸部を説明する斜視図である。
図2】本発明に係る壁紙貼り付け具の斜視図である。
図3図1に示した壁紙貼り付け具の正面図である。
図4図3のA-A線における部分断面図である。
図5図4の壁紙貼り付け具の面取り形状の効果を示す概念図である。
図6図2の壁紙貼り付け具による壁紙施工方法を示すフローチャートである。
図7】天井の溝に変形例に係る壁紙貼り付け具で壁紙施工を行っている斜視図及び拡大断面図である。
図8】変形例に係る壁紙貼り付け具の正面図である。
図9】第1直角突出部と第2直角突出部の大きさが異なる変形例に係る壁紙貼り付け具の正面図である。
図10】壁紙貼り付け具1が磁石を備える変形例に係る斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。まず、図1において、本実施形態に係る建造物の直角凸壁面13及び壁面の段付き凸部14を説明する。
【0013】
図1は、新築の建造物等の内装において、壁紙を貼り付ける前の壁面12の一形態を示している。壁面12は4つの平面15、平面16,平面17,平面18を含む。本実施形態において、直角凸壁面13は、平面17と平面18によって形成された、直角に出っ張った凸部(出隅)であって、壁面12において一般的な柱部分などの構造を指している。壁面の段付き凸部14は、平面15と平面17との間の段差である平面16により形成される凸部を指しており、平面15と平面16との間に出っ張った直角部位20が形成されている。このような、小さな段の周りに形成される構造である段付き凸部14は例えば造り付けの家具の周辺などに配置される。
【0014】
段付き凸部14の段付き高さΔhは例えば3cm以下である。直角凸壁面13の段付き高さΔHは例えば5cm以上である。段付き高さΔhが3cmを超え、5cm未満である場合には、段付き凸部14は、直角凸壁面13として取り扱ってもよい。または、段付き凸部14と直角凸壁面13のうち、どちらか適合する方として取り扱ってもよい。
【0015】
直角凸壁面13の段付き高さΔHは、平面17を段差と見たときの平面17の左右方向の幅である。段付き凸部14の段付き高さΔhは、平面16を段差と見たときの平面16の前後方向の幅である。
【0016】
すなわち、直角凸壁面13を構成する平面17,平面18はいずれの辺も5cm以上であり段付き凸部14を構成する平面15,平面16のうち、平面16は3cm以下の辺を含む。
【0017】
図1では、建造物の内装において床面に向かう方向を下、図示されない天井に向かう方向を上とし、左右方向、前後方向は上下方向にそれぞれ直交する方向としている。
【0018】
図2に、本実施形態に係る壁紙貼り付け具1の斜視図を、図3に壁紙貼り付け具1の正面図を示す。壁紙貼り付け具1は、略扁平な板状に構成され、前記板状の外縁部のうち一方側に、図1に示した建造物の直角凸壁面13に壁紙部材19を押し当てて貼り付けるための壁面用略直角凹部(凹部を入隅とも言う)2が設けられ、前記板状の外縁部のうち他方側に、図1に示した建造物の壁面の段付き凸部14の直角部位20に壁紙部材19を押し当てて貼り付けるための段付部用略直角凹部3が、壁面用略直角凹部2と向かい合うように設けられている。
【0019】
壁紙貼り付け具1の壁面用略直角凹部2及び段付部用略直角凹部3は、完全な直角ではなく、直角よりもわずかに大きい角度、例えば92度~93度の間の角度となっており、このような角度の範囲内にあることで直角凸壁面13及び段付き凸部14の直角部位20に所望の角度をつけながらちょうど押し当てることができるようになっている。
【0020】
壁面用略直角凹部2は、互いに略直交する向きにそれぞれ形成された第1辺部4及び第2辺部5を有し、段付部用略直角凹部3は、互いに略直交する向きにそれぞれ形成された第3辺部6及び第4辺部7を有し、第3辺部6及び第4辺部7は、それぞれ、第1辺部4及び第2辺部5のいずれよりも短く形成されている。
【0021】
壁面用略直角凹部2の第1辺部4、第2辺部5は例えばそれぞれ4cm以上~5cm以下の範囲である。段付部用略直角凹部3の第3辺部6、第4辺部7は例えばそれぞれ2cm以上~4cm以下の範囲である。
【0022】
すなわち、図1で示したように、直角凸壁面13と段付き凸部14とでは段付き高さが異なるため、段付き凸部14には壁面用略直角凹部2より小さな段付部用略直角凹部3を用いて施工するようになっている。段付き凸部14に壁面用略直角凹部2を用いて壁紙を貼り付けようとすると段付き高さよりも第1辺部4または第2辺部5のほうが長いため壁紙貼り付け具1を直角部位20に押し当てることができない。
【0023】
第1辺部4及び第2辺部5が5cmを超えると、壁紙貼り付け具1が大きすぎて施工者の手に持ちにくく、また狭い構造の場所では周囲に干渉して施工が行いにくくなる場合がある。
【0024】
壁紙貼り付け具1の材質は、特に限定されるものではないが、一定以上の硬さを持ち壁紙を傷つけにくい素材で構成されることが望ましい。このような素材としては例えば硬質プラスチック、ナイロン66等のポリアミドなどが挙げられる。また、その他にもこれらと同等の硬さを有する材質を用いることができる。
【0025】
壁紙貼り付け具1において、壁面用略直角凹部2は、第1辺部4と第2辺部5との間の隅部8に、第1切り込み溝9を有し、段付部用略直角凹部3は、第3辺部6と第4辺部7との間の隅部8に、第2切り込み溝10を有する。
【0026】
壁紙貼り付け具1には必要に応じて所望の場所に適宜紐などを通すための貫通孔11が設けられていてもよい。
【0027】
壁紙貼り付け具1は、前述の素材をカットしたのち研磨剤等で削って作成してもよく、予め用意した型を用いて成形してもよい。またその他公知の方法により作成してもよい。
【0028】
図3に示す方角は壁紙貼り付け具1を図示されない接地面に平置きしたとき、接地面に向かう方向を下方向、その反対方向を上方向としている。左右方向、前後方向はそれぞれ上下方向に直交する方向である。同様の方角が図4図5にも適用される。
【0029】
壁紙貼り付け具1において、第1辺部4、第2辺部5、第3辺部6、第4辺部7のそれぞれは、板厚方向の横断面視において、当該板厚方向の一方側端部及び他方側端部の両方に面取り形状Rを備える。
【0030】
図4に、図3に示した壁紙貼り付け具1のA-A線における部分断面図を示す。図4において、壁紙貼り付け具1の第1辺部4の板厚方向すなわちこの図の上下方向の一方側端部及び他方側端部の両方に曲線状の面取り形状Rを備えている。第2辺部5、第3辺部6、第4辺部7においても同様の構造となっている。
【0031】
図5に、図4の壁紙貼り付け具1の面取り形状Rの効果を説明する概念図を示す。図5では壁面12から壁紙部材19に向かう方向を前方向、その逆を後方向とし、それに直交する方向を左右方向、上下方向としている。図5は壁紙貼り付け具1を用いて壁面12に壁紙12を貼り付けて施工している状態を左側面から見た概念図である。
【0032】
壁面12に貼り付けた壁紙部材19を壁紙貼り付け具1で押さえ、上下方向に動かして壁紙貼り付けの施工を行うと、壁紙貼り付け具1の壁紙部材19に接触する面が面取り形状Rとなっているため、壁紙貼り付け具1が壁紙部材19にひっかからず、適度な摩擦(摩擦熱)により壁紙部材19を成形し曲げ癖をつけることができるので、壁紙部材19を傷つけることが少なく、スムーズに力をこめて施工を行うことができる。
【0033】
図6に、図2の壁紙貼り付け具1による壁紙施工方法の操作のフローチャートを示す。本実施形態の壁紙施工方法は工程(A)~工程(D)を含むことを特徴としている。
【0034】
工程(A)は、壁紙部材19を貼り付ける前の壁面12に形成された直角凸壁面13の状態を示している。壁面12は例えば石膏ボードなどが剥き出しになった状態である。
【0035】
工程(B)において、直角凸壁面13に壁紙部材19を仮貼りする。壁紙部材19の裏面には接着剤が予め塗布されている。
【0036】
工程(C)において、壁紙19の上から、施工者の手21により、直角凸壁面13に壁紙貼り付け具1の壁面用略直角凹部2を押し当てる。この後、手21により、直角凸壁面13の直角の凸部に沿って壁紙貼り付け具1を上下方向に往復させ、壁紙部材19を直角凸壁面13に貼り付ける。この時、下から上にすくい上げる、あるいは壁紙部材19を逆なでするようなイメージで壁紙貼り付け具1を押し当てて動かす。壁紙部材19の素材が特に傷つきやすいものである場合などには、必要に応じて、壁紙部材19の上を濡らしたスポンジなどで湿らせながらこの工程を行ってもかまわない。
【0037】
工程(D)は、工程(C)によって直角凸壁面13に壁紙部材19が貼り付けられ、施工が完了した状態である。壁面12からはみ出した壁紙部材19などは、適宜カッターなどで壁面12の形状に合わせて取り除かれている。
【0038】
建造物の壁面の段付き凸部14に壁紙貼り付け具1の段付部用略直角凹部3を用いて壁紙部材19を施工する工程も上述の工程と同様であるため説明は省略する。
【0039】
壁紙部材19は、通常の壁紙のほか、あらゆるクロス類を含む。また、壁紙部材19は防水、防汚、表面強化などの特殊加工を施した材質の硬い壁紙や、冬季等の気温低下により硬化した通常の壁紙であってもよく、壁紙貼り付け具1は特にこれらの壁紙の成形に有効である。
【0040】
<実施形態の効果>
例えば建造物の直角凸壁面13に壁紙部材19を貼り付ける時は、最初に直角凸壁面13に壁紙部材19を仮貼りしておき、その状態で、壁紙貼り付け具1の壁面用略直角凹部2の最奥部を直角凸壁面13の頂点に合わせるようにしつつ、壁紙貼り付け具1を壁紙部材19に接触させる。これにより、直角凸壁面3を構成する一方の平面に第1辺部4が当接するとともに、他方の平面に第2辺部5が当接する。したがって、そのまま壁紙貼り付け具1を直角凸壁面13全体に押し付けた状態で上下方向に壁紙部材19をなでつけるようにしながら往復させるだけで、壁紙部材19を円滑かつ簡単に直角凸壁面13に対しシワがよることなく綺麗な仕上がりで貼り付けることができる。
【0041】
同様に、例えば建造物の壁面12の段付き凸部14に壁紙部材19を貼り付ける時も、まず段付き凸部14に壁紙部材19を仮貼りした状態で、段付部用略直角凹部3の最奥部を段付き凸部14の直角部位20の頂点に合わせるようにしつつ、壁紙貼り付け具1を壁紙部材19に接触させる。これにより、直角部位20を形成する一方の平面に第3辺部6が当接するとともに、他方の平面に第4辺部7が当接する。したがって、そのまま壁紙貼り付け具1を直角凸壁面13全体に押し付けた状態で上下方向に壁紙部材19をなでつけるようにしながら往復させるだけで、壁紙部材19を円滑かつ簡単に直角部位20に対しシワがよることなく綺麗な仕上がりで貼り付けることができる。
【0042】
以上のように、本実施形態の壁紙貼り付け具1を用いると、建造物の直角凸壁面13に対しても壁面の段付き凸部14に対しても壁紙部材19を円滑かつ簡単に貼り付けることができる。また、壁面用略直角凹部2と段付部用略直角凹部3とが1つの壁紙貼り付け具1の反対側に備えられているので、壁紙貼り付け具1を手に持ったままその持ち方を変えるだけで、直角凸壁面13と段付き凸部14との両方が混在する施工現場において、共通の壁紙貼り付け具1により施工を行うことができ、壁紙貼り付け具1を交換する必要がない。
【0043】
また、さらに、壁紙貼り付け具1が第1切り込み溝9及び第2切り込み溝10を有することにより、壁紙貼り付け具1により壁紙部材19の貼り付けを施工した際に、壁紙貼り付け具1で角度をつけてすくい上げるように壁紙部材19を施工することで直角凸壁面13や段付き凸部の直角部位20の凸状の角の部分の形状(エッジ)を鋭くはっきりと浮き上がらせることができ、壁紙部材19の内部に残存空気などもなく仕上がりが美しくなる。また壁紙貼り付け具1を円滑に押し当てることができ壁紙部材19に傷などもつきにくい。
【0044】
また、さらに、壁紙貼り付け具1において、第1辺部4、第2辺部5、第3辺部6、第4辺部7のそれぞれが板厚方向の横断面視において、当該板厚方向の一方側端部及び他方側端部の両方に面取り形状Rを備えることにより、壁紙貼り付け具1を壁紙部材19へ押し付けた際のなでつけ・往復をスムーズに行うことができ、壁紙部材19にシワが寄ったり傷ついたりすることも防止できる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の壁紙貼り付け具1を用いた壁紙施工方法によれば、壁面12の直角凸壁面13及び段付き凸部14に、壁紙部材19を簡単に美しく、傷つけずに貼り付けることができる。すなわち、壁紙貼り付け具1の壁面用略直角凹部2及び段付部用略直角凹部3が直角よりわずかだけ大きい角度となっていることにより角度をつけて壁紙部材19に押し当てることができ、第1切り込み溝9及び第2切り込み溝10を有することによって壁紙部材19にすくい上げるように押し当てて施工した時に壁面12の凸部に密着させやすく、凸部の形状を浮き上がらせるように綺麗に出すことができる。また、上記の構造に加えて壁紙貼り付け具1が面取り形状Rを備えるので壁紙部材19を傷つけることがなく、かつ壁紙貼り付け具1そのものの素材には硬質なものを用いることができるので壁紙貼り付け具1の耐久性も高い。このような壁紙貼り付け具1を用いれば壁紙部材19が一般的な素材の場合のみでなく、防汚処理や表面強化された貼り付けにくい素材であったり、気温が低い時に壁紙部材19と裏面の接着剤が固くなって貼り付けにくい時にも、簡単に短時間で美しく壁紙部材19を貼り付けることができる。
【0046】
<変形例>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例について説明する。
【0047】
(1)壁紙貼り付け具1を天井22の溝部23に用いる場合
図7に、天井22の溝部23に変形例に係る壁紙貼り付け具1で施工を行っている状態を示す斜視図及び拡大断面図を示す。図7の方角は、天井22に向かう方向を上方向、図示されない床面に向かう方向を下方向とし、上下方向に直交し、溝部23が伸びる方向を前後方向とした時に、下前方から天井22を見上げた図となっている。
【0048】
溝部23は、天井22が複数の異なる母材で構成されている場合などに、母材の継ぎ目に形成される構造である。溝部23は例えば目透かしと呼ばれ和室の天井などに用いられる。溝部23は小さい凹部となっているため、スポンジや刷毛などの治具も入りにくく天井22に壁紙部材19を貼り付けた時に壁紙19の内部に空気が残存しやすい。
【0049】
図7では、天井22の溝部23に変形例に係る壁紙貼り付け具1を押し当てて図の前後方向に沿って動かし、溝部23に貼り付けられた壁紙部材19の上から、壁紙部材19の内側に残存する空気を抜くように施工している。しかし、このような施工に限らず、壁紙部材19が貼られていない天井22に新しく壁紙部材19を貼り付ける際に、壁紙貼り付け具1を用いて施工することもできる。
【0050】
ここで言う天井22の溝部23の大きさは例えば溝幅1cm以内、溝深さ1cm以内である。
【0051】
図8に、変形例に係る壁紙貼り付け具1の正面図を示す。壁紙貼り付け具1は略扁平でかつ略長方形の板状に構成され、長方形の4辺のうち対向する2つの長辺を構成し、略直線状にそれぞれ延びる第1外縁部24及び第2外縁部25と、前記長方形の4辺のうち対向する2つの短辺を構成し、略直線状にそれぞれ延びる第3外縁部26及び第4外縁部27と、互いに直交する第1外縁部24及び第3外縁部26の間に位置する第1隅部28において、第1外縁部24の延設方向に対し略直角に突出して設けられ、建造物の天井22の溝部23に壁紙部材19を押し当てて貼り付けるための第1直角突出部30と、互いに直交する第2外縁部25及び第4外縁部27の間で、前記長方形において第1隅部28に対して対角線の反対側に位置する第2隅部29において、第2外縁部25の延設方向に対し略直角に突出して設けられ、建造物の天井の溝部23に壁紙部材19を押し当てて貼り付けるための第2直角突出部31とを有する。
【0052】
例えば建造物の天井22の溝部23に壁紙部材19を入り込ませるように貼り付ける時は、最初に溝部23の縁の直角部位20をまたぐように壁紙部材19を仮貼りしておき、その状態で、図7の拡大断面図に示したように、第1直角突出部30又は第2直角突出部31及び第1直角突出部30又は第2直角突出部31の基端部(言い換えれば第1直角突出部30と第1外縁部24との交点又は第2直角突出部31と第2外縁部25との交点)を上記直角部位20の頂点に合わせるようにしつつ、壁紙貼り付け具1に角度をつけてを壁紙部材19に接触させる。これにより、上記溝部23の縁の直角部位20よりも溝部23の奥側(図7の後方)の天井22には第1直角突出部30又は第2直角突出部31の側面が当接するとともに、上記溝部23の縁の直角部位20よりも溝部23外側の天井22には第1外縁部24又は第2外縁部25が当接する。
【0053】
したがって、そのまま壁紙貼り付け具1を直角部位20全体に押し付けた状態で図7の前後方向に壁紙部材19をなでつけるようにしながら往復させるだけで、壁紙部材19の内側に残存する空気を簡単に抜くことができる。また、新規に壁紙部材19を貼り付ける場合には、円滑かつ簡単に天井22の溝部23に対しキレイな仕上がりでシワが寄ることなく貼り付けることができる。また、第1直角突出部30と第2直角突出部31とが1つの壁紙貼り付け具1の反対側に備えられているので、いずれか使いやすいほうを適宜に使うことができる。
【0054】
本変形例においても、実施形態と同様、壁紙貼り付け具1の板厚方向の両端部に曲線状の面取り形状を有している。また、図8に示すように第1直角突出部30と第1外縁部24の間、及び第2直角突出部31と第2外縁部との間には切り込み溝が入っている。このような形状により、壁紙19を傷つけずに、かつ直角部位20の角を綺麗に出しながら貼り付けることができる。
【0055】
この変形例では天井22の溝部23を施工することについて説明しているが、天井22でなく壁面12に設けられた溝部23であっても同様に空気抜きや貼り付けの施工をすることは可能である。
【0056】
(2)第1直角突出部30と第2直角突出部31の大きさが異なる場合
図9に、壁紙貼り付け具1の第1直角突出部30と第2直角突出部31の大きさが異なる場合の正面図を示す。この変形例では、第1直角突出部30の大きさが第2直角突出部31より小さくなっている。この変形例によれば、溝部23の大きさによって1つの壁紙貼り付け具1に設けられた第1直角突出部30と第2直角突出部31とを使い分けることができる。このほか、第1直角突出部30と第2直角突出部31の大きさや形状は用途に応じて適宜変更することができる。
【0057】
(3)壁紙貼り付け具1が磁石32を備える場合
図10に壁紙貼り付け具1が磁石32を備える場合の変形例について示す。図10では、図に示した壁紙貼り付け具1の裏面に強力な磁石32が備えられている。施工者Mは、腰に下げた腰袋33やバッグ等に金属板34を取り付けておき、壁紙貼り付け具1の磁石32を金属板34に吸着させることができる。また腰袋33の内側に金属板34を取り付けることで壁紙貼り付け具1が磁石から外れても腰袋33内に落下するようにしている。これにより、施工中や施工前後の作業や移動の間に壁紙貼り付け具1を腰袋33内に収納したり取り出したりする手間を省略することができる。
【0058】
(4)その他
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0059】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0060】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0061】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 壁紙貼り付け具
2 壁面用略直角凹部
3 段付部用略直角凹部
4 第1辺部
5 第2辺部
6 第3辺部
7 第4辺部
8 隅部
9 第1切り込み溝
10 第2切り込み溝
11 貫通孔
R 面取り形状
12 壁面
13 建造物の直角凸壁面
14 壁面の段付き凸部
15、16、17、18 平面
19 壁紙部材
20 直角部位
21 手
22 天井
23 溝部
24 第1外縁部
25 第2外縁部
26 第3外縁部
27 第4外縁部
28 第1隅部
29 第2隅部
30 第1直角突出部
31 第2直角突出部
M 施工者
32 磁石
33 腰袋
34 金属板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略扁平な板状に構成された壁紙貼り付け具であって、
前記板状の外縁部のうち一方側に、建造物の直角凸壁面に壁紙部材を押し当てて貼り付けるための壁面用略直角凹部を設け、
前記板状の外縁部のうち他方側に、建造物の壁面の段付き凸部の直角部位に壁紙部材を押し当てて貼り付けるための段付部用略直角凹部を、前記壁面用略直角凹部と向かい合うように設け、
前記壁面用略直角凹部は、
互いに略直交する向きにそれぞれ形成された第1辺部及び第2辺部を有し、
前記段付部用略直角凹部は、
互いに略直交する向きにそれぞれ形成された第3辺部及び第4辺部を有し、
前記第3辺部及び前記第4辺部は、それぞれ、前記第1辺部及び前記第2辺部のいずれよりも短く形成されている
ことを特徴とする壁紙貼り付け具。
【請求項2】
請求項1記載の壁紙貼り付け具において、
前記壁面用略直角凹部は、
前記第1辺部と前記第2辺部との間の隅部に、第1切り込み溝を有し、
前記段付部用略直角凹部は、
前記第3辺部と前記第4辺部との間の隅部に、第2切り込み溝を有する
ことを特徴とする壁紙貼り付け具。
【請求項3】
請求項2記載の壁紙貼り付け具において、
前記第1辺部、前記第2辺部、前記第3辺部、前記第4辺部のそれぞれは、
板厚方向の横断面視において、当該板厚方向の一方側端部及び他方側端部の両方に、面取り形状を備える
ことを特徴とする壁紙貼り付け具。
【請求項4】
互いに略直交する向きにそれぞれ形成された第1辺部及び第2辺部を備える壁面用略直角凹部を一方側に有し、かつ、互いに略直交する向きにそれぞれ形成されるとともに前記第1辺部及び前記第2辺部のいずれよりも短く形成された第3辺部及び第4辺部を備える段付部用略直角凹部を他方側に有する、壁紙貼り付け具を用いた壁紙施工方法であって、
建造物の直角凸壁面に対しては、前記壁面用略直角凹部によって壁紙部材を押し当てて貼り付け、
建造物の壁面の段付き凸部の直角部位に対しては、前記段付部用略直角凹部によって壁紙部材を押し当てて貼り付ける
ことを特徴とする壁紙施工方法