IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • -列車制御システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162428
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】列車制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20221017BHJP
【FI】
B60L3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067274
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】内田 敏博
(72)【発明者】
【氏名】國利 知寛
(72)【発明者】
【氏名】法橋 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 裕亮
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CC04
5H125CD02
5H125EE52
5H125EE55
(57)【要約】
【課題】無線通信を用いた列車制御システムにおいて、コストの上昇を招くことなく速度検出装置の故障を検出できる列車制御システムを提供する。
【解決手段】列車制御システムは、速度検出装置12,14の出力を車上装置11,13に入力して列車10の速度と位置を算出し、位置情報と速度情報に基づいて列車を制御する。そして、複数の速度検出装置の出力に基づく列車の速度と位置を車上装置11,13から地上装置15に無線送信し、地上装置で速度検出装置の故障判定を行い、故障と判定したときに地上装置から車上装置に通知する、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度検出装置の出力を車上装置に入力して列車の速度と位置を算出し、位置情報と速度情報に基づいて列車を制御する列車制御システムであって、
複数の速度検出装置の出力を車上装置から地上装置に無線送信し、前記地上装置で前記速度検出装置の故障判定を行い、故障と判定したときに前記地上装置から前記車上装置に通知する、ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項2】
前記複数の速度検出装置はそれぞれ、前記列車の異なる車両に設置された速度発電機である、ことを特徴とする請求項1に記載の列車制御システム。
【請求項3】
前記車上装置は、前運転台と後運転台にそれぞれ設置され、前記列車の異なる車両に設置された速度発電機の出力が、前運転台の車上装置及び後運転台の車上装置にそれぞれ供給される、ことを特徴とする請求項2に記載の列車制御システム。
【請求項4】
前記地上装置は、前記複数台の車上装置から送信された速度情報と位置情報による列車の速度と位置の変化量を比較し、変化量の差から故障判定を行う、ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1つの項に記載の列車制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を用いた列車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車上装置側で列車の車両速度に基づいて走行距離を演算し、自列車の先端位置を算出するとともに、先端位置及び自列車の長さに走行距離の誤差分を加算した値に基づいて自列車の後端位置を算出し、算出された自列車の先端位置及び後端位置を示す情報を地上側装置へ送信する列車制御システムが記載されている。
【0003】
この特許文献1では、車軸の回転数から列車速度を検出する速度検出装置(速度発電機)を使用し、速度発電機からの信号に基づいて車軸回転数と車輪径との積から走行距離を算出して自列車の位置を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-25389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、速度発電機が故障して速度信号が出力されないときに、運転士が乗務していれば列車が走行中に速度計が動かないことで故障を把握できる。速度発電機は、通常、運転台が設置された車両に1台しか設備されていない。
【0006】
このため、既存の列車に上述した列車制御システムを導入する場合には、速度発電機が停止しているのか故障しているのかを判断することができず、危険側故障となる。そこで、速度発電機を2台以上設置し、これらの速度発電機で検出した速度の差により、車上装置が速度発電機の異常を認識できるようにしている。
しかしながら、速度発電機を増設するためには、台車の改造が必要になり、多額の費用と時間を要する、という課題がある。
【0007】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、無線通信を用いた列車制御システムにおいて、コストの上昇を招くことなく速度検出装置の故障を検出できる列車制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る列車制御システムは、速度検出装置の出力を車上装置に入力して列車の速度と位置を算出し、位置情報と速度情報に基づいて列車を制御する列車制御システムであって、複数の速度検出装置の出力を車上装置から地上装置に無線送信し、前記地上装置で前記速度検出装置の故障判定を行い、故障と判定したときに前記地上装置から前記車上装置に通知する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の列車制御システムによれば、複数の速度検出装置の出力を車上装置から地上装置に無線送信し、地上装置で速度検出装置の故障判定を行うようにしたので、コストの上昇を招くことなく速度検出装置の故障を検出できる。例えば、前運転台と後運転台にそれぞれ設置された車上装置用の2台の速度発電機を用いることで、速度発電機を増設する必要がなく、改造にかかる費用と時間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る列車制御システムの概略構成図である。
図2図1における前運転台に設けられた車上装置の構成例を示すブロック図である。
図3図1及び図2に示した列車制御システムにおける速度発電機の故障検出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る列車制御システムの概略構成を示している。列車10の前運転台10aには、車上装置11が設置され、この車上装置11には、速度検出装置としての速度発電機12の出力が供給される。車上装置11は、速度発電機12の出力に基づいて列車10の速度と位置を算出し、速度情報と位置情報を無線通信により地上装置15に送信する。
【0012】
また、列車10の後運転台10bには、車上装置13が設置され、この車上装置13には、速度検出装置としての速度発電機14の出力が供給される。車上装置13は、速度発電機14の出力に基づいて列車10の速度と位置を算出し、速度情報と位置情報を無線通信により地上装置15に送信する。
【0013】
地上装置15では、受信した速度情報または位置情報から速度発電機12,14の故障判定を行い、故障と判定したときに地上装置15から車上装置11,13に通知する。故障判定は、車上装置11,13から送信された速度情報または位置情報による列車10の速度の変化量、または列車10の位置の変化量を比較し、変化量の差から実行する。
【0014】
例えば、速度差の差が正常範囲内か否かを判定し、正常範囲外であれば故障と判断する。列車10の車輪の空転などによる誤差を考慮すると、時速3~5km以内の速度差がある場合には故障と判断する。そして、速度発電機12または14の故障と判断した場合は、地上装置15から車上装置11,13へその旨を通知する。その後、必要があれば、車上装置11,13により列車10を停止させるなどして危険を回避する。
【0015】
図2は、図1における前運転台10aの車上装置11の構成例を示している。車上装置11は、マイクロコンピュータ等からなる制御装置21と、列車10の速度や位置、各種の通知や警告、警報などを表示する表示器22と、無線装置23とを備えている。速度発電機12の出力が制御装置21に入力されて、列車10の速度と位置が算出される。算出された速度情報と位置情報は、表示器22に表示されるとともに、無線装置23からアンテナ24を介して地上装置15に無線送信される。また、必要に応じて、制御装置21でブレーキ装置25を制御して列車10を停止させる。
なお、後運転台の車上装置13も同様に構成されている。
【0016】
図3は、図1及び図2に示した列車制御システムにおける速度発電機12または14の故障検出方法を示している。まず、前後運転台10a,10bの車上装置11,13における各制御装置21で、速度発電機12,14からの信号に基づいて列車10の速度または位置を算出する(ステップS1)。次に、前後運転台10a,10bの各車上装置11,13から、地上装置15へ速度情報と位置情報を送信する(ステップS2)。
【0017】
続いて、地上装置15で前後運転台10a,10bの速度情報または位置情報を比較し、その差が正常範囲内か否か判定する(ステップS3)。そして、正常範囲内であると判定されると、ステップS1に戻り、ステップS1からステップS3の動作を繰り返す。
一方、正常範囲内でないと判定されると、地上装置15から車上装置11,13へ警報を出力、または列車停止指令を出力する(ステップS4)。車上装置11,13側では、例えば表示器22に表示された警報に基づいて運転士が列車を停止させる、または列車停止指令の受信により車上装置11がブレーキ装置25を制御して列車10を停止させる(ステップS5)。
【0018】
なお、列車停止指令が出された後に、地上装置15から車上装置11,13に極低速走行指令を与え、誤って動かされた場合でも速度が上がらないようにしても良い。速度発電機12または14の修理が完了していないのに、完了したものとして動かし始めると、次に故障と判断されるまでにある程度走行してしまう。しかし、極低速走行指令を与えることで、その間の走行速度に制限がかかるように予め担保できる。
【0019】
また、地上装置15で正常範囲内か否かを判定するときに、速度情報または位置情報を用いる場合について説明したが、両方を用いても良いのは勿論である。
【0020】
上述したように、本発明によれば、前運転台10aと後運転台10bに設置された車上装置11,13に、それぞれ速度発電機12,14の出力を供給して列車10の速度と位置を算出し、車上装置11,13から地上装置15に速度情報と位置情報を無線送信して地上装置15側で速度発電機12,14の故障判定を行うようにしたので、速度発電機を増設する必要がなく、システム更新を行う場合に、改造にかかる費用と時間を抑制できる。
【0021】
通常、列車として走行する車両は、下り/上り列車として前後方向のどちらにでも走行できるように運転台が2か所設置され、それぞれに必要な車上装置が搭載されている。よって、速度発電機を含めた装置を新たに増設する必要がないので、コストの上昇を招くことなく速度発電機の故障検出が実現可能である。しかも、台車の改造のための費用も時間も不要であるので、この点からもコストを抑制することができる。
【0022】
なお、前後運転台10a,10b間をケーブルで接続して前後運転台10a,10bのある車両T1,Tnの速度発電機12,14の信号を共用して2台と見做すことも考えられるが、その場合も中間車両T2~T(n-1)へのケーブル追加工事が必要となる。また、車両間で速度信号を授受するための変換装置が必要になる場合があるなど、やはり多額の費用と時間が必要となるため、本発明の方が有効である。
【0023】
以上の実施形態で説明された回路構成や動作手順等については、本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものに過ぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0024】
例えば、列車10の車輪の空転、滑走が発生したことを車上装置11,13が検出した場合は、その旨を地上装置15に通知し、速度や位置の変化量の平均値を取ったり、一時的に故障判断の正常範囲を変化させたりして、外乱による影響を抑制すると良い。
【0025】
また、図1では速度発電機12,14が車上装置11,13と同じ車両T1,Tnに設けられている場合を例に取って説明したが、隣接する車両T2,T(n-1)など異なる車両に設置されていても良い。
【符号の説明】
【0026】
10…列車、10a…前運転台、10b…後運転台、11…車上装置、12…速度発電機(速度検出装置)、13…車上装置、14…速度発電機(速度検出装置)、15…地上装置、21…制御装置、22…表示器、23…無線装置、24…アンテナ、25…ブレーキ装置
図1
図2
図3