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  • 特開-異種電源対応型シンクロ電機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162429
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】異種電源対応型シンクロ電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 24/00 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
H02K24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067276
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】上野 孝行
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電源電圧の種類に関わらず使用可能であり、1つのロータで複数種類の電源に対応することにより製造工程において部品共通化することのできるシンクロ電機を提供すること。
【解決手段】異種電源対応型シンクロ電機10は、励磁側である一次巻線(ロータ巻線)1がロータ鉄心2に施されてなるロータ3と、出力側である二次巻線(ステータ巻線)4がステータ鉄心5に施されてなるステータ6と、一次巻線1との接続ならびに励磁電源供給に用いられる摺動環7と、摺動環7上に設けられた接触子8と、接触子8に励磁電源を供給するブラシ9とを備えてなり、接触子8とそれに対応するブラシ9が三組以上設けられている構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁側である一次巻線がロータ鉄心に施されてなるロータと、
出力側である二次巻線がステータ鉄心に施されてなるステータと、
該一次巻線との接続ならびに励磁電源供給に用いられる摺動環と、
該摺動環上に設けられた接触子と、および、
該接触子に励磁電源を供給するブラシとを備えてなるシンクロ電機であって、
該接触子とそれに対応する該ブラシが三組以上設けられており、
これにより相異なる二以上の電圧の励磁電源と接続可能であることを特徴とする、異種電源対応型シンクロ電機。
【請求項2】
前記各接触子に接続するリード線は、用いられる励磁電源の電圧に関わらず出力電圧が一定となる前記一次巻線の箇所に結線されていることを特徴とする、請求項1に記載の異種電源対応型シンクロ電機。






















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異種電源対応型シンクロ電機に係り、特に、複数種の電源に対応可能な異種電源対応型のトルク用シンクロ電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シンクロ電機は、トランスと同じ原理で、鉄心に巻き付ける一次巻線と二次巻線の巻線比率に応じて二次巻線の出力電圧を降圧変換することができる。あるいは、励磁電圧を変更することができる。鉄心の形状により三つの二次巻線を巻き付け、120°位相の違う3つの電圧を出力することができる。この3つの出力電圧を読み取ることで、シンクロ軸の電気的角度を検出することができる。
【0003】
シンクロ電機については従来、特許出願等もなされている。たとえば後掲特許文献1には、シンクロ発信機の回転子の捲き直しも変圧器の設置も必要としないシンクロ電機の接続方法として、精計測用と粗計測用の2つのシンクロ発信機をそれぞれ励磁する単相交流電源を受けるための電源端子の接続を、電源電圧が100Vの場合には2組の電源端子を並列接続し、200Vである場合には直列接続することで、それぞれのシンクロ発信機の1次側回転子に印加される電圧を常に100Vであるようにする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03-155360号公報「シンクロ電機の接続方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシンクロ電機は、励磁電源は1種であるとの設定で電線を巻線し、製造されている。そのため、異なる種類の電源以外には対応できず、設備からの励磁電源が異なる場合は使用できないことがあった。たとえば設備からの励磁電源が100Vの場合と200Vの場合に、同一のシンクロ電機を用いることはできず、それぞれの電源電圧専用のシンクロ電機が必要だった。
【0006】
電源電圧に関わらず使用可能なシンクロ電機があれば便利であり、また、製造工程においては部品共通化に有効となる。つまり、従来は1種の電源仕様で1種のロータ製作が必要であるが、1つのロータで2種の電源に対応でき、2種類の電源に対し1種の部品構成で製造可能となる。かかる構成のシンクロ電機が求められている。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点を踏まえ、電源電圧の種類に関わらず使用可能であり、1つのロータで複数種類の電源に対応することにより製造工程において部品共通化することのできるシンクロ電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した結果、シンクロ軸ロータ軸鉄心の励磁電源巻線に接続箇所を3箇所設け、2種の電源励磁を可能にするとともに、それぞれの励磁電源であっても出力電圧に変更がないよう励磁電源巻線の巻線巻数を設定することによって解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕 励磁側である一次巻線がロータ鉄心に施されてなるロータと、出力側である二次巻線がステータ鉄心に施されてなるステータと、該一次巻線との接続ならびに励磁電源供給に用いられる摺動環と、該摺動環上に設けられた接触子と、および、該接触子に励磁電源を供給するブラシとを備えてなるシンクロ電機であって、該接触子とそれに対応する該ブラシが三組以上設けられており、これにより相異なる二以上の電圧の励磁電源と接続可能であることを特徴とする、異種電源対応型シンクロ電機。
〔2〕 前記各接触子に接続するリード線は、用いられる励磁電源の電圧に関わらず出力電圧が一定となる前記一次巻線の箇所に結線されていることを特徴とする、〔1〕に記載の異種電源対応型シンクロ電機。
【発明の効果】
【0010】
本発明の異種電源対応型シンクロ電機は上述のように構成されるため、これによれば、複数種類の電源に対応して励磁し用いることができる。したがって、設置設備の電源が異なる場合、あるいは変更になった場合でも、対応可能となる。さらに、複数の設備に共用できるため、シンクロ電機の補用所有数を少なくすることができる。また、1つのロータで複数種類の電源に対応可能なことにより、製造工程において部品共通化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の異種電源対応型シンクロ電機実施例の半断面図である。
図2図1に示す実施例に係る端子盤の側断面図である。
図3図2に示す端子盤の上面図(図中(a))および下面図(図中(b))である。
図4図1に示す実施例に係る摺動管およびロータ軸の要部断面図である。
図5図4に示す摺動管がロータ軸に挿入された状態を示す断面図である。
図6図5に示す状態に巻線が施されたロータ完成体を示す半断面図である。
図7】本発明の異種電源対応型シンクロ電機に係る回路構成を示す結線図である。
図8図1に示す実施例における巻線結線例を示す結線図である。
図9図8に係る励磁―出力回路例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の異種電源対応型シンクロ電機実施例の半断面図である。図示するように本異種電源対応型シンクロ電機10は、励磁側である一次巻線(ロータ巻線)1がロータ鉄心2に施されてなるロータ3と、出力側である二次巻線(ステータ巻線)4がステータ鉄心5に施されてなるステータ6と、一次巻線1との接続ならびに励磁電源供給に用いられる摺動環7と、摺動環7上に設けられた接触子8と、および、接触子8に励磁電源を供給するブラシ9とを備えてなり、接触子8とそれに対応するブラシ9が三組以上設けられていることを、主たる構成とする。
【0013】
すなわち、従来通常のシンクロ電機では、ロータ軸の電源励磁巻線を接続する摺動環の接触子と端子盤のブラシは二組であり、したがって励磁電源としては単一の電源のみが接続可能であったところ、本発明異種電源対応型シンクロ電機10では、摺動環7上に設けられた接触子8とこれに対応するブラシ9が三組以上設けられているため、相異なる二以上の電圧の励磁電源と接続することができる。つまり、電源励磁巻線である一次巻線1の、相異なる巻数の箇所二箇所以上を接続可能な構成とすることによって、異なる二以上の励磁電源を接続することができる。
【0014】
なお、本発明異種電源対応型シンクロ電機10は相異なる二以上の電圧の励磁電源と接続できるシンクロ電機であり、三以上の電圧の励磁電源と接続可能でもある。しかしながら実際上は、図1を初めとする各図に例示する二電源対応型であれば本発明所期の効果を実質的に十分に得ることができる。したがって、以降の説明では、二電源対応型を前提に述べる。
【0015】
図2は、図1に示す実施例に係る端子盤の側断面図である。図示するように本異種電源対応型シンクロ電機10の端子盤Bには、二の電圧の励磁電源と接続可能なよう、ブラシ9が三つ備えられている。各ブラシ9の先端には、ロータ摺動管に接触するための接触子9cが設けられている。三つのブラシ9、9、9は後出図4等に示す摺動管7上の接触子8、8、8と対応する。
【0016】
図3図2に示す端子盤の上面図(図中(a))および下面図(図中(b))である。ここでは、各ブラシ9の先端が中間のばねで引っ張られて閉じている状態を示している。シンクロ電機10が完成した製品状態では、ブラシ9、9はロータ摺動環を挟み込む状態となる。
【0017】
図3の(a)中に示した符号P1、P2はそれぞれ、二の励磁側接続端子Rt-Rtに励磁電源を接続する電源励磁接続パターンを示す。電源励磁接続パターンP1では、「R2」と付された励磁側接続端子Rtと「R1-1」と付された励磁側接続端子Rtに、励磁電源1、たとえば100Vが接続される。つまり電源励磁接続パターンP1は、R1-1~~R2間に100V電源を励磁する接続パターンである。
【0018】
一方、電源励磁接続パターンP2では、「R2」と付された励磁側接続端子Rtと「R1-2」と付された励磁側接続端子Rtに、励磁電源2、たとえば115Vが接続される。つまり電源励磁接続パターンP2は、R1-2~~R2間に115V電源を励磁する接続パターンである。
【0019】
電源励磁接続パターンについて、パターンP1(R1-1~~R2)とパターンP2(R1-2~~R2)間における切替えは、たとえば100V使用時には電源接続をR1-1~~R2端子間に接続しているものを、115V使用時にはR1-R1に接続している端子をR1-2に繋ぎ変えて電源接続をR1-2~~R2端子間とすることにより行う。
【0020】
図4は、図1に示す実施例に係る摺動管およびロータ軸の要部断面図である。また、図5図4に示す摺動管がロータ軸に挿入された状態を示す断面図、図6図5に示す状態に巻線が施されたロータ完成体を示す半断面図である。すなわち、摺動管7をロータ軸0に挿入し(図4~5)、ロータ鉄心2に一時巻線1を施してロータ3を形成するが、この時、摺動管7からのリード線Lは一時巻線1の巻き終わり箇所に接続する(図5、6)。
【0021】
図7は、本発明の異種電源対応型シンクロ電機に係る回路構成を示す結線図である。従来、通常の摺動環の接触子は二箇所のみであるが、図示するように本異種電源対応型シンクロ電機10では接触子8は三箇所設けられ、それぞれ励磁側接続端子Rt1、Rt2、Rt3をなす。たとえば端子Rt2を共通の端子として、端子Rt1~~Rt2間に電源を励磁するパターン、端子Rt3~~Rt2間に異なる電源を励磁するパターン、二種の電源励磁パターンを取ることができる。
【0022】
図8は、図1に示す実施例における巻線結線例を示す結線図である。また、図9図8に係る励磁―出力回路例を示す回路図である。本例では、励磁側接続端子R2を共通の端子とし、これに励磁電源AC100V用として励磁側接続端子R1-1を用いる電源励磁接続パターンP11と、共通の端子R2に励磁電源AC115V用として励磁側接続端子R1-2を用いる電源励磁接続パターンP12、2つのパターンを適宜切り替えて用いることができる構成である。
【0023】
接続端子R1-2を非接続として接続端子R1-1~~R2間をAC100V電源に接続する電源励磁接続パターンP11における巻線巻数をn1回とする。一方、接続端子R1-1を非接続として接続端子R1-2~~R2間をAC115V電源に接続する電源励磁接続パターンP12における巻線巻数をn1+n2回とする。一時巻線中の、各励磁電源に必要となる巻線巻数の差に該当する箇所に接続端子R1-1を接続する構成とすることにより、2つの電源励磁接続パターンP11、P12を形成することができる。
【0024】
図9に示す通り、励磁側の電源励磁接続パターンがP11かP12かに関わらず、出力電圧は一定(図ではAC90V)となる構成とすることができる。すなわち本異種電源対応型シンクロ電機は、各接触子に接続するリード線は、用いられる励磁電源の電圧に関わらず出力電圧が一定となる一次巻線の箇所に結線される構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の異種電源対応型シンクロ電機によれば、複数種類の電源に対応して励磁し用いることができ、また、部品共通化することができる。したがって、シンクロ電機製造、使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0026】
0…ロータ軸
1…一次巻線(ロータ巻線)
2…ロータ鉄心
3…ロータ
4…二次巻線(ステータ巻線)
5…ステータ鉄心
6…ステータ
7…摺動環
8…接触子
9…ブラシ
9c…ブラシの接触子
10…異種電源対応型シンクロ電機
A…前蓋
B…端子盤
C…ケース
L…リード線
P1、P2、P11、P12…電源励磁接続パターン
Rt、Rt1、Rt2、Rt3…励磁側接続端子
RtL…励磁側接続端子のリード線
St、St1、St2、St3…出力側接続端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9