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  • 特開-水質浄化剤及び水質浄化方法 図1
  • 特開-水質浄化剤及び水質浄化方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162431
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】水質浄化剤及び水質浄化方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/00 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
C02F3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067280
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】504435508
【氏名又は名称】楠 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】楠 敏明
【テーマコード(参考)】
4D027
【Fターム(参考)】
4D027CA00
(57)【要約】
【課題】河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等をそのまま使って、容易に、かつ安価に浄化させる、河川水、湖沼水等の水質浄化剤、並びに水質浄化方法を提供すること。
【解決手段】有機物を除去した貝殻又はその破砕物を含有してなる水質浄化剤、並びに該水質浄化剤と、処理対象の水とを接触させる工程を含む、水質浄化方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を除去した貝殻又はその破砕物を含有してなる水質浄化剤。
【請求項2】
有機物を除去した貝殻が、貝殻を焼成することにより得られたものである、請求項1に記載の水質浄化剤。
【請求項3】
貝殻がカキ殻である、請求項1又は2に記載の水質浄化剤。
【請求項4】
破砕物が粉状である、請求項1~3のいずれか1項に記載の水質浄化剤。
【請求項5】
破砕物が塊状に成形された成形体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の水質浄化剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の水質浄化剤と、処理対象の水とを接触させる工程を含む、水質浄化方法。
【請求項7】
処理対象の水が、河川水、湖沼水、池の水又は堀の水である、請求項6に記載の水質浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水量が多い河川水、湖沼水、堀の水又は池の水等の水質の浄化に好適な水質浄化剤、及びそれを用いた水質浄化法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、汚水、廃水等の水量が少ない場合の水質浄化は、汚水、廃水の処理装置を構築し、活性汚泥法及びその変法、ならびに高度処理する場合には、続いて、ろ過装置、凝集沈殿法、活性炭吸着法、オゾン酸化法ならびに接触曝気法等の装置を処理プロセスに接続して設置し、行われている。
【0003】
現状では、水量の多い河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等の浄化については、浄化の設備費に多額の費用がかかることから実施されているケースは少なく、自然の自浄能力に任せているか、あるいは他の水で希釈されるかの方法がほとんどである。ただ、水量が多い場合として、上水道の用に適する河川水や湖沼水はそれぞれの装置の組み合わせにより目標とする水質を確保し、市民へ供給している。また、下水については、下水道管を通じて集め、処理装置を組み合わせて排出規制値を満足する水質まで浄化し、公共水域へ排出している。
【0004】
その場合の方法は、汚濁の進んだ汚水、廃水の場合は微生物を使って浄化する活性汚泥法、それほど汚れてない場合は沈殿法、ろ過法、凝集沈殿法、オゾン酸化法、活性炭吸着法、逆浸透法等により、要求される水質になるように、単独または連続したプロセスに処理施設を設置して行われている。
【0005】
河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等を農業用水、水産用水並びに景観の用に使用するために浄化する方法については、廉価で、維持管理が容易な方法は未だ見当らない。
【0006】
ところで、カキ殻を利用した水質浄化として、焼成したカキ殻を破砕して活性汚泥法の曝気槽に沈めて、活性汚泥の生成を抑制する方法が報告されている(特許文献1)。しかしながら、かかる方法の対象は、河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等に比べ、水量の少ないケースであり、曝気槽のような所定の処理施設を設置する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4390804号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水量の多い河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等を対象とする水質浄化に所定の処理施設を設けることは、設備費の観点から現実的ではない。また、湖沼水等を農業用水、水産用水として意図的にその用途を満足させる水質まで浄化することも容易ではない。自然の自浄能力にまかせるか、よりきれいな河川水を利用して、池、堀、沼へ流し、希釈により、浄化が図られているケースは既に報告されていて、公知となっている。そのためには近くによりきれいな河川水が流れていること、及び希釈できる水量を確保するために多額の費用がかかることが条件となっている。
【0009】
従って、本発明の課題は、河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等をそのまま使って、容易に、かつ安価に浄化させる、河川水、湖沼水等の水質浄化剤及び水質浄化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、下記の〔1〕~〔2〕に関するものである。
〔1〕 有機物を除去した貝殻又はその破砕物を含有してなる水質浄化剤。
〔2〕 前記〔1〕に記載の水質浄化剤と、処理対象の水とを接触させる工程を含む、水質浄化方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等をそのまま使って、容易に、かつ安価に浄化させる、湖沼水等の水質浄化剤及び水質浄化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例2で使用する装置の概略図である。
図2】本発明を実用(自然環境下)で使用する際の装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等の水質浄化は、多額の設置費用がかからない方法、維持管理が容易な方法、また、浄化の結果、汚泥が発生して、その処分に多額の費用がかかることのないような方法が求められる。
【0014】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであり、水中に生息する微生物の活動を活発化させ、その微生物の働きにより、河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等の水を浄化し、目的の用途に資する水質まで浄化させることが期待できる。従って、活性汚泥法のように、大量の微生物を含む活性汚泥を用いる方法とは異なる。また、本発明の方法による水質浄化では、河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等を農業用水、水産用水として満足できる程度にまで浄化できることが期待できる。
【0015】
従って、本発明は、そのための浄化装置を地上に浄化施設を設置するのではなく、浄化を目的とする河川や湖沼の中に浄化装置を沈めて、水質を浄化させる方法を開示する。その利点は装置が小さくてすむこと、維持管理費が安いこと、維持管理が容易なこと、浄化による汚泥等の発生が問題にならないことである。また、自然環境の景観等にも影響を与えない。
【0016】
本発明によって、水質浄化が達成される推定メカニズムは次のとおりである。
貝殻、特に安価で入手が可能なカキ殻を焼却して有機物を除去し、さらに破砕して破砕物(例えば粉状)にする。さらに、好適な態様の一つとして、破砕物にセメント等を混ぜて塊状に成形された成形体にする。このような、有機物を除去した貝殻、その破砕物、及び/又は破砕物の成形体を含有するものを水質浄化剤として、例えば容器に入れて目的とする河川や湖沼に設置する。
設置して1~2週間すると、溶出した成分が水中の微生物、細菌の栄養源となり、細菌の活動が活発化され、同時に水質の浄化に役立つ細菌(好気性細菌)の種類が優占種となり、浄化が促進され、その結果、目的の水質を満足する浄化水が得られるという効果が奏されるものと推測される。
【0017】
本発明の第一の局面は、有機物を除去した貝殻又はその破砕物を含有してなる水質浄化剤である。
本発明の第一の局面においては、有機物を除去したカキ殻等の貝殻の成分(例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄やホウ素等)がゆっくりとかつ連続的に、浄化を目的とする水にゆきわたることを一つの大きな特徴とする。さらに、自然環境下の水中で、水質の浄化が達成できることも本発明の一つの大きな特徴である。
【0018】
本発明は上記の特徴を有していることにより、水量の多い河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等に効果を発揮できる。さらに浄化の結果、微生物の固まりである汚泥の発生の問題がないことも、本発明の一つの特徴である。
【0019】
本発明の一つの態様として、塊状にしたカキ殻成分を水質浄化剤として使用した場合、水質浄化剤の重量により、浄化を目的とする水量が決められるので、水量に応じて水質浄化剤の重量を設定し、効果を発揮させることが可能である。例えば、後述の第二の局面で説明するような使用量にて、処理対象の水量と水質浄化剤を設定すればよい。
【0020】
本発明に使用される貝殻は、海水、淡水または汽水に生息するいずれの貝殻でもよく、例えば、ハマグリ、アサリ、ホッキガイ、カキ、イガイ、アワビ、サザエ、ホタテガイ、トリガイ、アカガイなどの貝殻が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上併用してもよい。中でも、大量かつ容易に入手できる観点から、カキの貝殻が望ましい。
【0021】
本発明に使用される貝殻の破砕物は、特に限定されないが、前記貝殻を粉砕ローラー、ロールプレスなどを用いて破砕処理されることにより調製される。
【0022】
得られた貝殻の破砕物は、貝殻がその原型を実質的にとどめてない状態であればよく、貝殻の成分の溶出性の向上から粉状であることが好ましく、具体的には、その最大直径が1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、125μm以下であることがさらに好ましい。下限値は特に限定されないが、作業性の観点から、100μm以上が好ましい。
【0023】
本明細書において有機物とは、前記貝殻に通常含まれる有機物をいい、たとえばコラーゲン、エラスチン、ケラチン、フィブロインが挙げられる。
【0024】
本明細書において「有機物を除去する」とは、有機物を貝殻から実質的に除去することをいい、「実質的に除去する」とは、貝殻に含まれる有機物濃度が好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下まで除去することをいい、特に好ましくは完全に除去することである。なお、有機物濃度は灼熱減量を指標として測定することができる。有機物を除去することにより、貝殻またはその破砕物に含まれる無機成分の溶出性が向上する。
【0025】
貝殻から有機物を除去する方法としては、例えば、ロータリーキルンを用いて焼成する方法、固定床式焼却炉、流動床式焼却炉などを用いて焼却する方法などが挙げられるが、有機物を除去した貝殻を回収しやすい観点から、ロータリーキルンを用いて焼成する方法が望ましい。ロータリーキルンを用いて焼成することにより、貝殻から有機物を実質的に除去することが容易に達成できる。
貝殻またはその破砕物を焼成する条件は、焼成後の貝殻またはその破砕物における有機物濃度が、前述の有機物濃度になるような条件であることが望ましく、特に好ましくは、貝殻またはその破砕物に含まれる有機物が完全に除去されるような条件である。
焼成された貝殻またはその破砕物を用いることにより、貝殻またはその破砕物に含まれる有機物が除去され、対象とする湖沼、池、堀等に余剰な有機物の堆積が防止され、さらに貝殻またはその破砕物に含まれる無機成分の溶出性が向上するという効果が奏される。
【0026】
本発明に使用される貝殻またはその破砕物は、上記のように調製してもよいが、セルカ(卜部産業社製)などの市販品を用いても良い。セルカはカキ殻を焼成した、炭酸カルシウムを主成分とする粉末であり、有機物が実質的に除去されている。
【0027】
本発明の水質浄化剤における貝殻又はその破砕物の含有量は、所望の効果が得られれば特に限定されないが、好ましくは80~100重量%、より好ましくは90~100重量%、さらに好ましくは95~100重量%である。
【0028】
本発明の水質浄化剤は、取り扱いの簡便さおよび効果のさらなる持続の観点から、塊状に成形された成形体であることが望ましい。塊状とは、該水質浄化剤が塊となっている状態をいい、その形としては、例えば、球状、三角錐状、四角錐状、三角柱状、四角柱状などが挙げられるが、特に限定されない。中でも、貝殻またはその破砕物に含まれる無機成分の溶出速度を向上させる観点から、表面積が大きくとれる球状が好ましい。
【0029】
本発明の水質浄化剤が球状の形態の場合、その大きさは、溶解速度を向上させる観点から、好ましくは5~50mmφ、より好ましくは25~50mmφである。また、本発明の水質浄化剤が球状の形態の場合、その重量は、溶解速度の観点及び取扱い性の観点から、好ましくは5~100g、より好ましくは20~60gである。
【0030】
本発明の水質浄化剤を塊状にする方法としては、例えば、前記貝殻またはその破砕物に水ガラス、セメントなどの無機性結合剤、または酢酸ビニール系樹脂接着剤、エポキシ樹脂系接着剤などの有機性結合剤、並びに水を添加してニーダーなどで練り、所望の形状に整形して乾燥する方法などが挙げられる。添加される無機性結合剤または有機性結合剤および水の量は、塊状に成形できるのであれば特に限定されない。例えば、無機性結合剤については、本発明の水質浄化剤中、好ましくは2~10重量%、より好ましくは4~6重量%であり、水については、本発明の水質浄化剤中、少なければ少ない方が好ましく、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。
【0031】
なお、本発明の水質浄化剤は本発明の効果を損なわない範囲であれば、適宜、各種の目的に応じて添加剤をさらに含有してもよい。
【0032】
本発明の第二の局面は、以上のようにして得られた本発明の水質浄化剤と、処理対象の水とを接触させる工程を含む、水質浄化方法である。第二の局面の発明において、処理対象の水としては、特に限定されないが、河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等が挙げられる。
【0033】
河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等の水質を浄化する方法において水質浄化剤の使用量は、浄化すべき河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等の水量、含有される汚染物等の濃度、又は目的とする水質項目などにより適宜設定されるが、農業用水、水産用水、景観用水に適さない程度の水質の河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等の場合、浄化効果を発現させる観点及び費用対効果の観点から、かかる処理対象の水1,000Lに対して、好ましくは5g~500g、より好ましくは10g~200g、更に好ましくは20g~100gである。本発明の水質浄化剤は、処理対象の水1,000Lに対して、5gという少量でも浄化効果が発現される点で優れている。
【0034】
水質浄化剤と処理対象の水とを接触させる期間としては、効果が発揮され始める立ち上がりの時間を考慮して、好ましくは、3日間以上、より好ましくは1週間以上、更に好ましくは2週間以上である。接触させる期間の上限は特に限定されない。
【0035】
水質浄化剤と、処理対象の水とを接触させるためには、例えば、本発明の水質浄化剤を、河川、湖沼、池又は堀の水中に投入すればよい。河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等の水質を浄化する効果を向上させるために、設置した水質浄化剤の溶解性を良くするために、ポンプ等による圧力水、または空気による上向流の水の流れを作ることが好ましい。このような水の流れにより、接触性や溶解性を良くするとともに、溶出した成分が浄化を対象とする水に行き渡らせることが可能となる。それにより、水中に酸素が供給されるとともに、水質を悪化させる嫌気性細菌(腐敗性細菌)の活動を抑制できるため、水中の微生物、細菌の種類が変化し、浄化を促進させる細菌が優占種となり、水質の浄化が促進される。
【0036】
上記の場合において、連続的に水質浄化剤に絶えず新しい水を接触させることにより、夾雑物が詰まって水質浄化剤の溶出が抑制されるということを防げるという効果も発揮される。
【実施例0037】
本発明を、実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
実施例1 水質浄化剤の調製
セルカ(卜部産業社製)を100kg、水ガラスを4.8kgおよび水2kgを混合して練った。得られた混練物を直径約45mmの球状の型に入れて乾燥させ、直径45mmで重さ約55g/個の球状の成形体である水質浄化剤を調製した。
セルカは炭酸カルシウムを約86重量%含有するカキ殻の焼成粉末である。セルカはその他に窒素(約0.3重量%)、リン酸(約0.3重量%)、カリウム(約0.2重量%)、苦土(約0.7重量%)を含み、さらに、微量成分として、マンガン(約300ppm)、ホウ素(約224ppm)、亜鉛(約90ppm)、鉄(約343ppm)、銅(約16ppm)及びモリブデン(約2ppm)を含有する。
【0039】
実験例1 水質浄化剤からの無機成分の溶出
実施例1で得られた水質浄化剤18.2gを400mLのイオン交換水に浸漬させ、20℃にて14日間静置した。一方、カキ殻そのもの72.8gを400mLのイオン交換水に浸漬させ、20℃にて14日間静置した。浸漬後のイオン交換水中のカルシウム、ホウ素および銅を定量した。その結果を表1に示す。
【0040】
なお、カルシウム、ホウ素、および銅の溶出量は、高周波プラズマ分光分析装置(セイコー電子工業社製:SPS1200VR)を用いて測定した。
【0041】
【表1】
【0042】
※1:表1の数値は、水質浄化剤又はカキ殻そのもの1g当たりの各無機質分の溶出量である。
※2:上記定量法における検出限界は10μg/L以下である。
【0043】
表1の結果より、カルシウムでは約165倍、ホウ素では約3倍、銅についてはより多く、水質浄化剤の方が早く溶出することがわかる。このことから、カキ殻そのものを使用した場合と比較して、本発明の水質浄化剤を使用した場合の方が、カキ殻に含まれる無機成分をより少量で水中に溶出させることが可能となることが分かった。その結果、水中に生息する微生物の活動を少量で効率的に活性化させることが期待できる。しかも、水質浄化剤を成形体とすることで、目的とする水域に水質浄化剤を一定期間、留めることができるため、成形体としての水質浄化剤は、メンテナンスの観点からも好ましい。
【0044】
実施例2 水質浄化方法
図1に示す装置(500Lタンク(1、2))を2個、用意し、水質の浄化を行った。処理対象の水である湖沼水(3、4)(岡山県児島湖水)を500Lずつをタンクに入れ、その中に、実施例1で得られた水質浄化剤(5、6)をそれぞれ、100g、50gずつ入れた。そして送風機(9、10)で0.8L/分の割合で空気をタンクの底から微細気泡になる散気筒(7、8)を通して送り、該気泡によってタンク内を連続して攪拌した。そして、2週間後、4週間後の水質を測定した。水質の項目はCOD、BOD、浮遊物、透視度である。表2にその結果を示す。
【0045】
・COD
JIS K 0102 17に記載する方法で測定した。
・BOD
JIS K 0102 21に記載する方法で測定した。
・浮遊物
JIS K 0102 14に記載する方法で測定した。
・透視度
日本下水道協会著、「下水試験方法」に記載する方法で測定した。
【0046】
【表2】
【0047】
表2の結果より、BOD、浮遊物に関しては、高度に浄化が進み、その結果もあって、透視度も1m以上となっており、浄化が大いに向上したことがわかる。COD値についても数値が低下しており、浄化が進んでいる。COD値に関しては選択した湖水の性状によるところも多いと考えられるが、少なくともBOD、浮遊物に関与する値から、湖水は大きく浄化されたものと考えられる。
【0048】
処理対象の水の攪拌、混合についても、強力な攪拌、混合は必要なく、自然環境下で生じる程度の緩やかに水が動く程度の攪拌で十分である。ただ、水質浄化剤の成分の溶解を促進する観点から、例えば、ポンプ等による圧力水を水質浄化剤に供給することが好ましい。
【0049】
実施例3 実用(自然環境下)で使用する場合の装置の一例
本発明の水質浄化剤は、実際の河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等の水質浄化に利用できる。
その場合、水質浄化剤が着実かつ容易に溶出すること、およびその溶出した成分が対象水に行き渡ることが好ましい。従って、実用(自然環境下)で使用する場合の装置の一例として図2のような装置が考えられる。
【0050】
ビニールパイプ12の中に、本発明の水質浄化剤13を充填し、処理対象の水に沈めたポンプ(水中ポンプ11)の下方より圧力水を送って、水質浄化剤の溶出を促進し、併せて、溶出した成分を対象とする湖沼、河川、堀、池等に行き渡るようにする。また、水質浄化剤13を充填したパイプ12の最上部を水上に出すことにより、処理対象の水に酸素を溶解させ、処理対象の水を好気条件下に保つことができ、嫌気性細菌(腐敗性細菌)の増殖を抑制し、好気性細菌の活動を活発化させる条件を整えることが可能になる。かかる水質浄化方法であれば、多量の微生物を利用して水を浄化させる活性汚泥法等を利用する専用の施設を設けることなく、河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等の水量が多い水系においても、水質の浄化を達成することができる。
【0051】
総合すれば、本発明の水質浄化剤を、実施例2のように容器に詰めて、圧力水等により溶解を促進させ、溶解した成分が浄化を目的とする水中にゆきわたるようにすることで、浄化作用が促進される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の水質浄化剤は、河川水、湖沼水、池の水又は堀の水等の水質浄化に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 タンク(500L)
2 タンク(500L)
3 湖沼水
4 湖沼水
5 水質浄化剤
6 水質浄化剤
7 散気筒
8 散気筒
9 送風機
10 送風機
11 水中ポンプ
12 パイプ
13 水質浄化剤
図1
図2