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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016245
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】非接触式ウェーハ厚さ測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
G01B11/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187323
(22)【出願日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2020117532
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236687
【氏名又は名称】不二越機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 千宏
(72)【発明者】
【氏名】青木 清仁
(72)【発明者】
【氏名】一本木 薫
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065CC19
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF51
2F065GG04
2F065JJ18
2F065QQ03
2F065QQ16
(57)【要約】
【課題】両面研磨加工中のウェーハの厚さを精度良く高速多点で測定できる非接触式ウェーハ厚さ測定装置を提供する。
【解決手段】非接触式ウェーハ厚さ測定装置10であって、波長掃引レーザ光源31から発振する波長掃引速度20~50kHzの内、任意の一定速度で繰り返し波長を掃引したレーザ光の一部を取り込み、サンプリングクロック信号を生成するマッハツェンダ干渉計40と、A/D変換器およびFFT処理部43を内蔵し、マッハツェンダ干渉計40で得られるサンプリングクロック信号をサンプリングしてk-クロック信号を生成し、該k-クロック信号を基準に検出器(フォトダイオード)36で検出されたウェーハからの干渉光信号をリサンプリングすると共に、窓関数を掛けてレーザ光の波長掃引速度に同期して高速でFFT処理し、該FFT処理したデータを演算部38に出力するDAQ37とを具備し、演算部38により研磨加工中に移動するウェーハ21の厚さを算出することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリゴンミラーを内蔵し、波長1200~1400nmの内、任意の一定区間を、波長掃引速度20~50kHzの内、任意の一定速度で繰り返し波長を掃引したレーザ光を発振する波長掃引レーザ光源と、
前記レーザ光を、厚さを求めたいウェーハの被測定部分に導いて照射する光学系と、
前記被測定部分から得られる反射光もしくは透過光の干渉光信号を検出する検出器と、
前記検出器により検出される前記干渉光信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器により変換された前記デジタル信号を解析して所要の関係式から前記ウェーハの厚さを換算して出力する演算部を具備する非接触式ウェーハ厚さ測定装置であって、
前記波長掃引レーザ光源から発振する前記レーザ光の一部を取り込み、サンプリングクロック信号を生成するマッハツェンダ干渉計と、
前記A/D変換器およびFFT処理部を内蔵し、前記マッハツェンダ干渉計で得られるサンプリングクロック信号をサンプリングしてk-クロック信号を生成し、該k-クロック信号を基準に前記検出器で検出されたウェーハからの干渉光信号をリサンプリングすると共に窓関数を掛けて、波長掃引レーザ光源の波長掃引速度に同期して高速でFFT処理し、該FFT処理したデータを前記演算部に出力するDAQとを具備し、
前記演算部により研磨加工中に移動する前記ウェーハの厚さを算出することを特徴とする非接触式ウェーハ厚さ測定装置。
【請求項2】
前記DAQは、FFT処理したデータを平均化処理して前記演算部に出力することを特徴とする請求項1記載の非接触式ウェーハ厚さ測定装置。
【請求項3】
前記DAQの前記FFT処理部で、2048ポイントで、前記波長掃引速度に同期して、前記FFT処理を行うことを特徴とする請求項1または2記載の非接触式ウェーハ厚さ測定装置。
【請求項4】
前記波長掃引レーザ光源の波長掃引速度が30kHzである場合、30000測定ポイント/秒でウェーハの厚さを計測することを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の非接触式ウェーハ厚さ測定装置。
【請求項5】
前記波長掃引レーザ光源の波長掃引速度が20kHzである場合、20000測定ポイント/秒でウェーハの厚さを計測することを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の非接触式ウェーハ厚さ測定装置。
【請求項6】
前記DAQ内部で、2回以上の単純平均値を計算し、前記演算部に出力することを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の非接触式ウェーハ厚さ測定装置。
【請求項7】
前記DAQ内部で、2回以上の移動平均値を計算し、前記演算部に出力することを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の非接触式ウェーハ厚さ測定装置。
【請求項8】
前記干渉光信号を検出する検出器の信号増幅率を,加工するウェーハの光透過率に応じて調整することを特徴とする請求項1~7いずれか1項記載の非接触式ウェーハ厚さ測定装置。
【請求項9】
参照用ウェーハを用いた光源監視用回路を有し、
該光源監視用回路は、前記レーザ光を、前記参照用ウェーハに導いて照射する第2の光学系と、
前記参照用ウェーハから得られる反射光もしくは透過光の干渉光信号を検出する第2の検出器と、
前記第2の検出器により検出される前記干渉光信号をデジタル信号に変換する前記DAQを具備することを特徴とする請求項1~8いずれか1項記載の非接触式ウェーハ厚さ測定装置。
【請求項10】
前記光源監視用回路が、前記第2の検出器から出力される電圧の平均値から前記レーザ光の光量を監視することを特徴とする請求項9記載の非接触式ウェーハ厚さ測定装置。
【請求項11】
前記光源監視用回路が、前記第2の検出器で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値で把握しうる掃引波長精度を監視することを特徴とする請求項9記載の非接触式ウェーハ厚さ測定装置。
【請求項12】
前記マッハツェンダ干渉計が光源監視用回路を兼用し、該光源監視用回路が、前記検出器で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値で把握しうる掃引波長精度を監視することを特徴とする請求項1~8いずれか1項記載の非接触式ウェーハ厚さ測定装置。
【請求項13】
請求項1~12いずれか1項記載の非接触式ウェーハ厚さ測定装置を備える両面研磨機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリゴンミラーを内蔵する波長掃引レーザ光源を用いる非接触式ウェーハ厚さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン等の半導体ウェーハの研磨装置では、ウェーハの両面研磨、あるいは片面研磨が行われ、ウェーハを所要の厚さに加工する。
半導体ウェーハは、集積度の高い半導体機構素子用に利用されるが、その集積度がますます高くなること及び生産性を向上させる取り組みをするために、加工プロセス中またはその中間過程において、さらに精度の高い厚さ測定が求められている。
特許文献1(特開平7-306018号公報)には、波長可変レーザを用いる半導体厚非接触測定装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に示される半導体厚非接触測定装置は、次の原理による。すなわち、半導体を透過する光ビームが被測定対象の半導体の目的とする領域に照射されると、一部が表面および底面で反射して干渉した光が反射もしくは透過する。この反射もしくは透過してくる干渉光を光学的手段で検出器に導き、所定の範囲で光ビームの波長を変化させる。その際、この干渉光強度の位相(または周期)が半導体厚に依存して変化するので、干渉光の強度変化から演算して半導体厚の絶対値を換算する。
【0004】
図10は、波長可変レーザ光源を用いる従来のウェーハ厚み測定装置1の概略的な構成を示すブロック図である。
2は波長可変レーザ光源であり、レーザ光をサーキュレータ3、プローブ4を経てウェーハ5に照射する。ウェーハ5の表裏面で反射された干渉光は、プローブ4、サーキュレータ3を経てフォトディテクタ6で検出され、A/D変換器7でデジタル信号に変換され、コンピュータ8に入力されて、ウェーハ5の厚さが計測される。
上記、波長可変レーザは、例えば特許文献2(特開2006-80384号公報)に示される波長掃引型レーザ光源が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-306018号公報
【特許文献2】特開2006-80384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に示される波長掃引型レーザ光源は、掃引波長を得るためにポリゴンミラー等を回転させる機械的動作部を用いて多面ミラーの反射光を利用している。ポリゴンミラー等を回転させる機械的動作部を用いることによる各ミラーの鏡面の平面度や角度バラツキにより、反射光にわずかながらもずれが生じ、掃引される波長がずれてしまう課題がある。また、機械的な動作部が存在することから、僅かながらも機械的な振動が生じ、掃引される波長ずれの要因になる。そのため、同一箇所の厚さを測定するために光の干渉信号を取得し、デジタル信号変換し、それを高速フーリエ変換で信号処理をしても、その中心周波数がずれるため、厚さに誤差が発生してしまう。
また、両面加工中のウェーハ厚みを測定する場合、高速でウェーハが移動しており、厚み形状を測定するには、高速に測定して演算処理できるシステムでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、ポリゴンミラー内蔵式の波長掃引型レーザ光源を用いても、高速でかつ精度よくウェーハの厚さを測定できる非接触式ウェーハ厚さ測定装置を提供することにある。
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、本発明に係る非接触式ウェーハ厚さ測定装置は、ポリゴンミラーを内蔵し、波長可変範囲1200~1400nmの全部又は一部分を同じ波長範囲で繰り返し、波長掃引速度20~50kHzの内の一定速度において、波長を掃引したレーザ光を発振する波長掃引レーザ光源と、前記レーザ光を、厚さを求めたいウェーハの被測定部分に導いて照射する光学系と、前記被測定部分から得られる反射光もしくは透過光の干渉光信号を検出する検出器と、前記検出器により検出される前記干渉光信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、前記A/D変換器により変換された前記デジタル信号を解析して所要の関係式から前記ウェーハの厚さを換算して出力する演算部を具備する非接触式ウェーハ厚さ測定装置であって、前記波長掃引レーザ光源から発振する前記レーザ光の一部を取り込み、サンプリングクロック信号を生成するマッハツェンダ干渉計と、前記A/D変換器およびFFT処理部を内蔵し、前記マッハツェンダ干渉計で得られるサンプリングクロック信号をサンプリングしてk-クロック信号を生成し、該k-クロック信号を基準に前記検出器で検出されたウェーハからの干渉光信号をリサンプリングすると共に窓関数を掛けて、波長掃引レーザ光源の波長掃引速度に同期して高速でFFT処理し、該FFT処理したデータを前記演算部に出力するDAQとを具備し、前記演算部により研磨加工中に移動する前記ウェーハの厚さを算出することを特徴とする。
【0009】
前記DAQは、FFT処理したデータを単純平均化又は移動平均化処理して前記演算部に出力すると好適である。
前記DAQの前記FFT処理部で、2048ポイントで、波長掃引速度20~50kHzの内の一定速度で波長を掃引したレーザ光に同期して、高速で前記FFT処理を行うことができる。
【0010】
前記波長掃引レーザ光源の波長掃引速度が30kHzである場合、30000測定ポイント/秒でウェーハの厚さを計測することができ、前記波長掃引レーザ光源の波長掃引速度が20kHzである場合、20000測定ポイント/秒でウェーハの厚さを計測することができる。
【0011】
前記DAQ内部で、2回以上の単純平均値(好適には光源のポリゴンミラーの面数以上(28又は,42回)の移動平均値)を計算し、前記演算部に出力するとよい。
前記干渉光信号を検出する検出器の信号増幅率を,加工するウェーハの光透過率に応じて調整するようにすると好適である。
【0012】
参照用ウェーハを用いた光源監視用回路を設けると好適である。この光源監視用回路は、前記レーザ光を、前記参照用ウェーハに導いて照射する第2の光学系と、前記参照用ウェーハから得られる反射光もしくは透過光の干渉光信号を検出する第2の検出器と、前記第2の検出器により検出される前記干渉光信号をデジタル信号に変換する前記DAQ等で構成できる。
【0013】
前記光源監視用回路により、前記第2の検出器から出力される電圧の平均値から前記レーザ光の光量を監視するようにすることができる。
あるいは、前記光源監視用回路により、前記第2の検出器で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値で把握しうる掃引波長精度を監視するようにすることができる。
【0014】
前記マッハツェンダ干渉計を光源監視用回路として兼用することができる。この場合、該光源監視用回路により、前記検出器で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値で把握しうる掃引波長精度を監視するようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次のような有利な作用効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、ポリゴンミラー内蔵の光源由来の掃引波長バラツキをk-クロックで補償しているので、ウェーハ厚さの測定の信頼性が高い。また、加工中に移動するウェーハについて、高速で多点における厚さデータを取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】両面研磨装置の概略の断面図である。
図2】下定盤上におけるキャリアの配置状態を示す平面図である。
図3】ウェーハの厚さを測定する厚さ測定部(厚さ測定装置)の概略を示すブロック図である。
図4】光学系を含んだ、厚さ測定プロセスを示す信号処理のフロー図である。
図5】レーザ光源のトリガー信号からA/Dボード内部クロックで同時間でコンピュータに取り込んだウェーハからの直接の干渉波形とMZI干渉計40からコンピュータに取り込んだ干渉波形を示すグラフである。
図6】DAQのブロック図である。
図7】FFT処理データを平均化処理しない場合(図7A)と、平均化処理をした場合(図7B)のパワースペクトルの状況を示すグラフである。
図8】従来方式と本実施の形態におけるウェーハ厚さ測定装置によるウェーハ厚さの計測結果を示すグラフである。
図9】厚さ測定装置の他の実施の形態を示す全体システムのブロック図である。
図10】従来のウェーハ厚み測定装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
まず両面研磨装置の一例について説明する。両面研磨装置は公知のものでよいので、以下簡単に説明する。
図1はシリコンウェーハ等のウェーハを研磨する両面研磨装置10の概略の断面図である。また図2は下定盤上におけるキャリアの配置状態を示す平面図である。
図1に示す装置では、互いに反対方向に回転する下定盤12と上定盤14との間に、インターナルギア15と太陽ギア16とにより駆動されるキャリア20が配設される。
下定盤12の上面および上定盤14の下面にはそれぞれ研磨布17、18が貼付されている。
【0018】
キャリア20には、研磨対象のウェーハ21をその内部に保持する透孔22が設けられている。本実施の形態では、図2に示すように、太陽ギア16とインターナルギア15との間に両者に噛合する5個のキャリア20が周方向に一定の間隔をおいて配置されている。各キャリア20には3個ずつ透孔22が設けられている。したがって、合計15個のウェーハ21が同時に研磨加工可能となっている。
【0019】
キャリア20は、太陽ギア16およびインターナルギア15に噛合する遊星機構の構造となっていて、太陽ギア16の周りを公転し、また自身の中心線を中心として自転するようになっている。
下定盤12は図示しない定盤受け上に回転自在に配置されている。また上定盤14は、図示しない門型支柱に吊り支柱23を介して上下動自在かつ回転自在に支持された円盤24にロッド25を介して支持され、円盤24と共に上下動自在かつ回転自在に支持されている。
【0020】
下定盤12、上定盤14、太陽ギア16、インターナルギア15は、それぞれ図示しない公知の駆動機構によって回転されるようになっている。
上記のように、研磨時、下定盤12と上定盤14とは互いに反対方向に回転され、またキャリア20は太陽ギア16の周りに公転および自転することにより、キャリア20の透孔22内に保持されたウェーハ21が研磨される。
【0021】
なお、研磨時には、上定盤14上に設けられた図示しないスラリー供給部から研磨材入りのスラリーが下定盤12上に供給される。スラリー供給部は、図示しないホースを介して、上定盤14に設けられた貫通孔からスラリーを下定盤12上に供給するようになっている。
【0022】
図3はウェーハ21の厚さを測定する厚さ測定装置30の概略を示すブロック図である。図4は、光学系を含んだ、厚さ測定プロセスを示す信号処理のフロー図である。
以下、図3図4を併せて説明する。
31はポリゴンミラーを内蔵する公知の波長掃引型のレーザ光源である。レーザ光源31からは、波長1260~1350nmを含む一定の範囲で、波長掃引速度20~50kHzの内の一定速度で波長を掃引したレーザ光が発振される。なお、波長の掃引範囲は、シリコンウェーハを測定対象とした場合、1300nmを中心に、1200~1400nmのシリコンを透過しやすい赤外光の範囲が好適である。
レーザ光源31から放出されるレーザ光はサーキュレータ32、光ロータリージョイント33、およびプローブ(レンズ系)34からウェーハ21の被測定部位に照射される。光ロータリージョイント33は、上定盤14の回転中心となる吊り支柱23に配設されている。
【0023】
プローブ34は上定盤14上に固定して設けられ、上定盤14と共に回転する。プローブ34から、上定盤14に設けられた孔(窓)35を通じてレーザ光がウェーハ21上に照射される。孔35の位置は、キャリア20に保持された15個全部のウェーハ21上を万遍なく通過するように、キャリア20の幅方向のほぼ中央部に設けるのが好ましい。なお、プローブ34は下定盤12側に固定して設け(図示せず)、下定盤12に設けた孔(窓)からウェーハ21に向けてレーザ光を照射するように構成してもよい。
【0024】
ウェーハ21の表面および裏面で反射されたレーザ光(干渉光)は、プローブ34、光ロータリージョイント33およびサーキュレータ32を介してフォトダイオード(検出器)36で検出され、フォトダイオード36で電気信号(干渉光信号)に変換され、さらにこの電気信号が増幅器で増幅される。
【0025】
ウェーハ21の表面で反射されたレーザ光と裏面で反射されたレーザ光は干渉し、所要位相を有する干渉光として観測される。
干渉光信号は、A/D変換器およびFFT分析器を内蔵するDAQ(データ収集装置:デジタイザ)37に入力され、デジタル信号に変換される(図4、ステップ1:S1)。
DAQ37には、レーザ光源31で発生する外部トリガー信号が入力される。
DAQ37は、例えばTELEDYNE SP DEVICES社のADQ14OCTを好適に用いることができる。
【0026】
40は公知のMZI(マッハツェンダ)干渉計である。MZI干渉計40は、例えばソーラボ社の「Thorlabs INT-MZI-1300」を好適に用いることができる。
MZI干渉計40は、レーザ光源31から放出されるレーザ光の一部(5%ほど)をMZI光学系41に取り込み、干渉光の位相差を差分式フォトディテクタ42により検出し、サンプリングクロック信号を生成する(ステップ2:S2)。
MZI光学系41と差分フォトディテクタ42とによりMZI干渉計40を構成する。
【0027】
図5は、レーザ光源31のトリガー信号からA/Dボード内部クロックで同時間でコンピュータに取り込んだウェーハからの直接の干渉光波形とMZI干渉計40からDAQ37に取り込んだサンプリングクロック信号(干渉光波形:1掃引分)を示す。
図5に示すように、MZI干渉計40からのサンプリングクロック信号(干渉光信号)は等間隔に並んでいる。この干渉光信号は、光周波数空間(k-空間)でも等間隔に並び、DAQ37内でそのゼロ交差がサンプリングされ、サンプリングクロック信号(k-クロック信号)として使用される(ステップ3:S3)。
【0028】
DAQ37内で、上記k-クロック信号を基準として、ウェーハからの干渉光信号がリサンプリングされる(ステップ4:S4)。
そして、DAQ37内のFFT処理器43(図6)で、k-クロック信号を基準としてウェーハからの上記リサンプリング信号に窓関数を掛けてFFT処理(具体的にはDFT:離散フーリエ変換)がなされ、リサンプリングされた干渉波形のピーク値のデータが取得される(ステップ5:S5)。
【0029】
さらに具体的には、FFT処理器43内部で、k-空間でリサンプリングしたウェーハ干渉波形を1024、2048、4096、もしくは8192ポイントで窓関数(ハニングもしくはハミング)を掛けてFFT(DFT)処理し、干渉波形のピーク値のデータを得、このピーク値のデータが演算部38に出力される。
なお、例えば、8192ポイントでFFT処理した場合に、122kHzの高速でのデータ取得が可能となる。
【0030】
演算部38では、DAQ37からのFFT処理したデータより、中心周波数(ピーク値)を算出し、ウェーハ21の屈折率を含む公知の式により演算してウェーハ21の厚さを計測することができる。
【0031】
図6はDAQ37のブロック図である。
ウェーハ21からの干渉光信号はA/D変換器にてサンプリングされる(ステップ1:S1)。
MZI干渉計40からのサンプリングクロック信号(干渉光信号)はA/D変換器にてサンプリングされ、k-クロック信号として使用される(ステップ3:S3)。
【0032】
そして、k-クロック信号を基準として、ウェーハからの干渉光信号がリサンプリングされる(ステップ4:S4)。
そして、リサンプリング信号に窓関数を掛けてFFT処理(具体的にはDFT:離散フーリエ変換)がなされる(ステップ5:S5)。
FFT(DFT)処理の出力はステップ6(S6)でパワースペクトルに変換され(PSD)、さらにステップ7で平均化処理(Signal averaging)される。平均化処理は移動平均が好ましい。
【0033】
測定状況などの影響で、ウェーハ21の光透過率が低い場合光の干渉強度が弱くなり、取得したパワースペクトルはウェーハの厚みを示す中心周波数のピークが低くなり、ピークがノイズに紛れて弁別し難くなる。そこで、本実施の形態では、パワースペクトルの平均化処理(ステップ7:S7)を行い、ランダムに発生するノイズの影響をキャンセルし、中心周波数のピークを顕在化するようにした。
【0034】
図7は、平均化処理しない場合(図7A)と、平均化処理をした場合(図7B)のパワースペクトルの状況を示すグラフである。図7からわかるように、平均化処理をした場合に、ノイズが低減され、中心周波数のピークが鮮明になったことが理解される。
これにより、中心周波数のピークを精度よく検出でき、ウェーハ21の厚さ計測の精度が向上する。
【0035】
平均化処理されたデータは、インターフェースを介して演算部38に出力される。
演算部38では、前記したように、DAQ37からのFFT処理したデータより、中心周波数(ピーク値)を算出し、ウェーハ21の屈折率を含む公知の式により演算してウェーハ21の厚さを計測することができる(ステップ8:S8)。
【0036】
DAQ37又は演算部38で、FFT値を2回以上の単純平均か、2回以上の移動平均し、そのピーク値を算出する。レーザ光源31の掃引周波数の速度でピーク値(測定値)計算を繰り返す。これにより、測定のバラツキを平均化でき、ウェーハ21の厚さを精度よく計測可能となる。
DAQ37での一連の処理は、演算部38とは別の制御部44によって制御される。制御部44は高速での処理条件等を書き換え可能なFPGAを内蔵している。
【0037】
特に、DAQ37で生成するk-クロック信号は、MZI干渉計40由来のクロック信号であり、極めて精度が高く、このk-クロック信号を基準にウェーハ21からの干渉光信号をリサンプリングして校正するので、ポリゴンミラー方式の波長掃引レーザ光源からの掃引波長に多少のズレがあったとしても、ウェーハ21の厚さを精度よく計測できる。
【0038】
図8に、従来方式(図10)と上記k-クロック補償した本実施の形態におけるウェーハ厚さ測定装置10によるφ200mmとφ300mmのウェーハの定点を10000回測定した際の厚さ測定データを示す。ポリゴンミラー内蔵式の波長掃引レーザ光源は同じ光源を用いた。
図8から明らかなように、本実施の形態におけるウェーハ厚さ測定装置30による計測厚さのバラツキは従来方式よりも優位に小さいことがわかる。
因みに、図8に示す測定の際の、p-p値と標準偏差を表1に示す。
【0039】
【表1】
表1に示すように、φ200mm、φ300mmウェーハの定点を10000回測定したウェーハ厚み測定の標準偏差は、k-クロックを用いない場合にはそれぞれ315.7nm、374.5nmであったが、k-クロック補償を適用するとそれぞれ114.7nm、133.7nmであり、精度良く測定できることがわかる。
【0040】
なお、両面研磨装置10においては、ウェーハ21とプローブ34との相対速度は大きく、一実施の形態においては、概ね1400mm/secで最大200msecで通過する。そして、ウェーハの形状(断面形状)を測定するには、1mm当たり5測定点数以上が必要となる。
したがって、1秒間に必要な測定点数は、7055測定点以上となる。
上記をウェーハが通過する毎に算出する。
【0041】
レーザ光源31の波長掃引30kHz(33.3μs/掃引)の場合、1秒間に約30000回のデータを取得できるが、DAQ37を例えばTELEDYNE SP DEVICES社のADQ14OCTを好適に用いることで上記のFFT処理データを取得でき、DAQ37又は演算部38で、4回毎平均とすると、1秒間に7500点となり、上記7055点以上取得でき、ウェーハ21の高速回転となる両面研磨機におけるウェーハ21の厚さ測定(形状測定)に十分対処できる。このように本実施の形態では、ウェーハ21の研磨中に、DAQ37内で高速、かつ多点のデータが取得できるので、ウェーハ21の研磨を高精度に行える。
【0042】
レーザ光源31の波長掃引20kHz(50μs/掃引)の場合、1秒間に約20000回のデータを取得でき、DAQ37又は演算部38で、2回毎平均とすると、1秒間に10000点となり、ウェーハ21の高速回転となる両面研磨機におけるウェーハ21の厚さ測定(形状測定)に十分対処できる。
なお、演算部38にて窓関数+FFT処理をすることも可能であるが、演算部38は研磨装置全体の制御も絡むため、データの処理速度が遅く、1秒間に45点程度しか取得できないため、満足するデータ点数を取得することができない。
この点本実施の形態では、上記のように、DAQ37内で、FPGAによりプログラミングして、別途制御部44により高速で処理できる。
【0043】
なお、加工対象となるウェーハには様々な種類のものが存在するため、測定するウェーハ21の光透過率も、加工するウェーハ21の種類によって異なる場合がある。これに伴い、ウェーハ21からの干渉光信号の強度は、測定するウェーハ21の種類によって変化する。具体的には,光透過率が低いと、干渉光信号の強度が小さくなる傾向がある。
そこで、干渉光信号を検出する検出器(フォトダイオード)36の増幅率を、測定するウェーハ21の種類や透過率に応じて適正な増幅率に切り替え、または調整する機能を設けると良い。増幅率の調整、切り替えは制御器(演算部)38によって行うのが良い。
これにより、光透過率の異なる様々な種類のウェーハに対し、正確に厚さの測定ができると共に、測定対象が前記干渉光信号の強度が小さいウェーハであっても、ノイズ等の影響を受けずに、正確に厚さを測定することが可能となる。
【0044】
図9は、厚さ測定装置30の他の実施の形態を示す全体システムのブロック図である。
図3における部材と同一の部材は同一の符号をもって示し、その説明は省略する。
本実施の形態では、参照ウェーハによる光源監視用回路46を追加している。
この光源監視用回路46は、レーザ光源31から放出され、分光されたレーザ光がサーキュレータ48およびプローブ50から参照用ウェーハ52に照射されるようになっている。サーキュレータ48およびプローブ50が第2の光学系を構成する。参照用ウェーハ52の表面および裏面で反射されたレーザ光(干渉光)は、プローブ50およびサーキュレータ48を経てフォトダイオード54(第2の検出器)で検出され、さらにDAQ37でデジタル信号に変換され、演算部38に入力されるようになっている。
【0045】
演算部38では、入力されたデジタル信号値から、フォトダイオード54から出力される電圧の平均値(設定時間内における平均値)を算出する。レーザ光源31から放出されるレーザ光の光量の増減に比例してフォトダイオード54から出力される電圧値が変動する。上記電圧値の変動を適宜監視し、上記電圧の平均値があらかじめ定めてある閾値よりも低下した場合に異常と判断され、警報が発せられるようになっている。
【0046】
あるいは、光源監視用回路46は、レーザ光源31の掃引波長精度の監視用としても利用できる。参照用ウェーハ52の厚さ(およびその分布)は一定であるから、測定した厚さにずれが生じた場合、レーザ光源31の掃引波長精度が変動したと判断でき、その変動要因把握の目安となりうる。掃引波長精度は、取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数(例えば1000回)測定した平均値、P-P値、偏差値等で把握しうる。
なお、監視のタイミングはプログラムで設定が可能である。例えば、ウェーハ厚み測定の直前などとすることができる。
【0047】
なお、光源監視用回路としてMZI(マッハツェンダ)干渉計40を兼用することもできる。
この場合、MZI(マッハツェンダ)干渉計40が第2の検出器となる。MZI(マッハツェンダ)干渉計40で取得した干渉波形のFFTピーク値の周波数について、設定回数測定した平均値、P-P値、もしくは偏差値で把握しうる掃引波長精度を監視するのである。掃引波長精度の変化が許容値を超えた場合に警報を発するようにする。
【0048】
上記実施の形態では、ウェーハの両面研磨装置におけるウェーハ厚さ測定装置を例として説明したが、研磨ヘッドの下面側にウェーハを保持して、定盤の研磨パッドとの間でウェーハの下面側を研磨する片面研磨装置(図示せず)におけるウェーハ厚さ測定装置にも本発明を適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
10 両面研磨装置
12 下定盤
14 上定盤
15 インターナルギア
16 太陽ギア
17、18 研磨パッド
20 キャリア
21 ウェーハ
22 透孔
23 吊り支柱
24 円盤
25 ロッド
30 厚さ測定装置
31 レーザ光源
32 サーキュレータ
33 光ロータリージョイント
34 プローブ
35 孔
36 フォトダイオード
37 DAQ
38 演算部
40 MZI干渉計
41 MZI光学系
42 差分式フォトディテクタ
43 FFT処理器
44 制御部
46 光源監視用回路
48 サーキュレータ
50 プローブ
52 参照ウェーハ
54 フォトダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10