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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162455
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】電気化学リアクタ
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20221017BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20221017BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221017BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
F01N3/08 C ZAB
F01N3/24 N
B01D53/94 200
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01J35/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067323
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 瑛介
(72)【発明者】
【氏名】三浦 遥平
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091AB14
3G091BA07
3G091BA13
3G091GB01Z
3G091GB04Z
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB02
4D148BA30Y
4D148CC38
4D148CD10
4G169AA01
4G169AA11
4G169BA17
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EE10
(57)【要約】
【課題】未還元ガス及び未酸化ガスの外部への流出を抑制する。
【解決手段】電気化学リアクタは、内燃機関(110)の排気流路の筐体(120)の内部に設けられ、電圧の印加に応じた電気化学反応により内燃機関から排出される排気を浄化する。電気化学リアクタ(100)は、排気に含まれる未還元物質を還元可能な多孔質部材であるカソード極層(80)と、排気に含まれる未酸化物質を酸化可能な多孔質部材であるアノード極層(50)と、アノード極層及びカソード極層に挟持される固体電解質層(70)とにより構成されるセル(10)の複数が積層されて構成される。積層方向の最外部に位置するアノード極層及びカソード極層の少なくとも一方は、多孔質部材内で排気が下流側へ流出するのが阻害されるように、多孔質部材の一部(51)が密に構成される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気流路の筐体の内部に設けられ、電圧の印加に応じた電気化学反応により前記内燃機関から排出される排気を浄化する電気化学リアクタであって、
前記電気化学リアクタは、前記排気に含まれる未還元物質を還元可能な多孔質部材であるカソード極層と、前記排気に含まれる未酸化物質を酸化可能な多孔質部材であるアノード極層と、前記アノード極層及び前記カソード極層に挟持される固体電解質層とにより構成されるセルの複数が積層されて構成され、
積層方向の最外部に位置する前記アノード極層及び前記カソード極層の少なくとも一方は、前記多孔質部材内で前記排気が下流側へ流出するのが阻害されるように、前記多孔質部材の一部が密に構成される、電気化学リアクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学リアクタであって、
前記カソード極層と、前記アノード極層と、前記アノード極層及び前記カソード極層に挟持される固体電解質層とにより構成されるセルの複数は、前記排気が通過可能な積層部材を介して積層されている、電気化学リアクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気化学リアクタであって、
前記多孔質部材の一部が密に構成された前記アノード極層及び前記カソード極層の少なくとも一方と、前記筐体とが離間して配置されることで壁面流路が構成され、
前記電気化学リアクタは、さらに、
前記壁面流路において前記排気の下流への流出を封止するために、前記密に構成された前記アノード極層及び前記カソード極層の少なくとも一方と、前記筐体との間に設けられるガス封止部と、
前記電気化学リアクタを前記排気流路に固定する固定部と、を備える、電気化学リアクタ。
【請求項4】
請求項3に記載の電気化学リアクタであって、
前記ガス封止部及び前記固定部は、対をなし、前記排気の流れ方向において前記セルの中心に対して対称に上流側と下流側とに配置される、電気化学リアクタ。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電気化学リアクタであって、
前記ガス封止部は、前記固定部よりも前記排気の流れにおいて上流側に設けられる、電気化学リアクタ。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の電気化学リアクタであって、
前記固定部は、前記壁面流路の一部を閉塞するように設けられる、電気化学リアクタ。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の電気化学リアクタであって、
前記壁面流路に設けられる前記ガス封止部及び前記固定部の少なくとも一方は、導電性材料からなる、電気化学リアクタ。
【請求項8】
請求項3から6のいずれか1項に記載の電気化学リアクタであって、
前記ガス封止部及び前記固定部の一方は、導電性材料により構成され、
前記ガス封止部及び前記固定部の他方は、非導電性材料により構成される、電気化学リアクタ。
【請求項9】
請求項7または8に記載の電気化学リアクタであって、
前記導電性材料である前記ガス封止部及び前記固定部の少なくとも一方は、溶接により固定される、電気化学リアクタ。
【請求項10】
請求項7に記載の電気化学リアクタであって、
前記積層されたセルの積層方向の一方の最外部に位置する前記アノード極層及び前記カソード極層の一方と、導電性の前記筐体の一部とは、前記導電性材料である前記ガス封止部及び前記固定部の少なくとも一方を介して接続され、
前記積層されたセルの他方の最外部に位置する前記アノード極層及び前記カソード極層の他方と、前記筐体の前記一部と絶縁された導電性の他部とは、前記導電性材料である前記ガス封止部及び前記固定部の少なくとも一方により接続され、
前記筐体の前記一部及び前記他部が電圧供給端子と接続されることで、前記電気化学リアクタに前記電圧が印加される、電気化学リアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学リアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエンジンの排気には窒素酸化物(NOx)が含まれるため、三元触媒等で還元して車外に排出する必要がある。しかしながら、酸素が過剰な状況では三元触媒の還元力が低下するため、他の還元手段を検討する必要がある。
【0003】
特許文献1には、電気化学反応による還元手段として、カソード極の面とアノード極の面とを備えるMEA(Membrane and Electrode Assembly:膜電極接合体)を金属多孔体を介して積層して構成した電気化学リアクタを用いる技術が開示されている。MEAにおいては、カソード極で窒素酸化物が還元されることにより酸素イオンが離脱して窒素ガスが生成される。そして、離脱した酸素イオンはMEA内部の電解質層を伝導してアノード極へと移動し、アノード極で酸化されて酸素ガスとして放出される。
【0004】
MEAの積層体である電気化学リアクタにおいては、積層方向の最外部に位置するアノード極では還元反応が行われないため、最外部のアノード極と筐体との間を窒素酸化物が流れてしまうと、未還元の窒素酸化物が下流に流出するおそれがある。そこで、特許文献1に開示の技術によれば、最外部のアノード極を排気流路とは異なる流路として隔てることにより、未還元の窒素酸化物の外部への放出を抑制することができる。
【0005】
同様に、一酸化炭素等の未酸化物質はアノード極で酸化されるが、積層方向の最外部に位置するカソード極では酸化反応が行われないため、最外部のカソード極と筐体との間を未酸化物質が流れてしまうと、未酸化物質が下流に流出するおそれがある。そこで、最外部のカソード極を排気流路とは異なる流路として隔てることにより、未酸化ガスの外部への放出を抑制することができる。
【0006】
しかしながら、上述の方法においては、流路の構造が複雑になるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-270720号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、流路の構造を複雑にすることなく、未還元物質及び未酸化物質の外部への流出を抑制する電気化学リアクタを提供することを目的とする。
【0009】
本発明の一態様によれば、電気化学リアクタは、内燃機関の排気流路の筐体の内部に設けられ、電圧の印加に応じた電気化学反応により内燃機関から排出される排気を浄化する。電気化学リアクタは、排気に含まれる未還元物質を還元可能な多孔質部材であるカソード極層と、排気に含まれる未酸化物質を酸化可能な多孔質部材であるアノード極層と、アノード極層及びカソード極層に挟持される固体電解質層とにより構成されるセルの複数が積層されて構成される。積層方向の最外部に位置するアノード極層及びカソード極層の少なくとも一方は、多孔質部材内で排気が下流側へ流出するのが阻害されるように、多孔質部材の一部が密に構成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態による電気化学リアクタを備える排気系統のブロック図である。
図2図2は、電気化学リアクタの分解斜視図である。
図3図3は、セルユニットの分解斜視図である。
図4図4は、メタルサポートセルアセンブリの分解斜視図である。
図5図5は、電気化学リアクタの一部断面図である。
図6図6は、図5のkI線に沿った断面図である。
図7図7は、排気流方向、及び、電気化学リアクタの積層方向を含む平面における排気流路の断面図である。
図8図8は、電気化学リアクタのカソード極層の端部を図7のXIIIからの見た上面図である。
図9図9は、図7のIXにおける断面である。
図10図10は、第1変形例における排気流路の断面図である。
図11図11は、第2変形例における電気化学リアクタのカソード極層の端部の上面図である。
図12図12は、第3変形例における電気化学リアクタの積層方向を含む平面における排気流路の断面図である。
図13図13は、固定部材の上面図である。
図14図14は、第4変形例における電気化学リアクタの積層方向を含む平面における排気流路の断面図である。
図15図15は、第2実施形態における排気流方向、及び、電気化学リアクタの積層方向を含む平面における排気流路の断面図である。
図16図16は、図15のXVIにおける断面である。
図17図17は、他の変形例における電気化学リアクタの積層方向を含む平面における排気流路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の電気化学リアクタを備える排気系統のブロック図である。
【0013】
電気化学リアクタ100を備える排気系統200においては、内燃機関110から排出される排気が流れる排気流路120に、流れ方向に沿って三元触媒130、電気化学リアクタ100、及び、マフラ140が設けられている。三元触媒130、及び、電気化学リアクタ100は、排気流路120内に設けられ、マフラ140は排気流路120と一体となって構成されている。
【0014】
内燃機関110は、例えば、炭化水素系の燃料により動作する。内燃機関110は、車両に搭載される場合には車輪を直接駆動してもよいし、車両を駆動させるモータへの電力の発電源であってもよい。内燃機関110から排出される排気には、未燃燃料(HC)、炭素酸化物(CO)、及び、窒素酸化物(NOx)等が含まれる。
【0015】
三元触媒130は、例えば白金材料により構成されており、内燃機関110からの排気に含まれる未燃燃料や炭素酸化物の還元を行う。三元触媒130を経た排気に含まれる窒素酸化物は、電気化学リアクタ100により還元される。そして、三元触媒130及び電気化学リアクタ100を経た排気は、マフラ140から外部へと排出される。
【0016】
ここで、電気化学リアクタ100は、複数のMEA(Membrane and Electrode Assembly:膜電極接合体)が積層することにより構成されている。後述のように、MEAは、還元反応が行われるカソード極と、酸化反応が行われるアノード極とが電解質層を介して積層されている。電気化学リアクタ100に対して直流電圧を印加することにより、アノード極、電解質層、及びカソード極においては以下の反応が進行する。
【0017】
カソード極(還元反応):2NO+4e→N+2O2-
電解質層 :O2-の伝導
アノード極(酸化反応):2O2-→O+4e
【0018】
本実施形態の例においては、複数のMEAが積層部材を介して積層されることで、電気化学リアクタ100が構成されている。なお、積層部材として、本実施形態では金属製の板状のセパレータを用いる例について説明するが、第3変形例に示される板バネや、第4変形例に示される多孔質金属が用いられてもよい。
【0019】
図2図4は、本発明の実施形態による電気化学リアクタ100の構成を説明する図である。図2図3に示すように、電気化学リアクタ100は複数のセルユニット1から構成され、セルユニット1はメタルサポートセルアセンブリ10と積層部材20とから構成される。また、図4に示すように、メタルサポートセルアセンブリ10は、メタルサポートセル11とセルフレーム12とから構成される。
【0020】
図2は、電気化学リアクタ100の分解斜視図である。電気化学リアクタ100は、板状に形成された複数のセルユニット1を積層して構成される。
【0021】
図3は、セルユニット1の分解斜視図である。セルユニット1は、メタルサポートセルアセンブリ(電気化学反応ユニット)10と、積層部材20とを積層して構成される。メタルサポートセルアセンブリ10及び積層部材20は、板状に形成される。また、積層部材20の中央部には、ガス流路形成部21が設けられている。図3に示すように、ガス流路形成部21は、凹凸形状が積層部材20の短手方向に延在するように略直線形状に形成されている。また、ガス流路形成部21には積層方向に貫通する微細孔が複数設けられている。
【0022】
メタルサポートセルアセンブリ10上に積層部材20が積層されると、メタルサポートセルアセンブリ10の上面と、その上部に隣接する積層部材20の下面との間に、ガス流路形成部21によって区画されたガス流路40(図5図6を参照)が形成される。また、積層部材20のガス流路形成部21上には、別のセルユニット1のメタルサポートセルアセンブリ10が積層される。これにより、積層部材20の上面と、その上部に隣接する他のメタルサポートセルアセンブリ10(不図示)の下面との間に、ガス流路形成部21によって区画された他のガス流路40(図5図6を参照)が形成される。なお、上述のように、ガス流路形成部21には微細孔が複数設けられているため、積層部材20の下面側のガス流路40と、積層部材20の上面側のガス流路40との間において排気が連通する。
【0023】
図4は、メタルサポートセルアセンブリ10の分解斜視図である。メタルサポートセルアセンブリ10は、メタルサポートセル11と、メタルサポートセル11の外周を囲繞して保持するセルフレーム12とを有する。
【0024】
メタルサポートセル11は、金属支持体80上に、アノード極層50と、カソード極層60と、アノード極層50とカソード極層60とに挟持される固体電解質層70とを積層してなり、固体電解質層70は固体酸化物により形成される。即ち、メタルサポートセルアセンブリ10は、固体電解質層70を有する電気化学ユニットである。なお、アノード極層50、カソード極層60、固体電解質層70、金属支持体80の詳細は後述する。
【0025】
セルフレーム12は、例えば板状の金属で構成され、中央にメタルサポートセル11が配置される開口部12Aを有する。メタルサポートセル11の固体電解質層70は、セルフレーム12の開口部12Aの内周面に焼結結合等により面接合されている。これにより、メタルサポートセル11はセルフレーム12に保持される。
【0026】
以上の通り、電気化学リアクタ100は、メタルサポートセルアセンブリ10と積層部材20とを積層したセルユニット1を積層することにより構成される。本実施形態において、電気化学リアクタ100は、直流電圧が印加されることで、排気に含まれる窒素酸化物を還元する。
【0027】
次に、電気化学リアクタ100におけるガスの流れを説明する。
【0028】
電気化学リアクタ100においては、カソード極層60において排気中の窒素酸化物(NOx)が還元され、アノード極層50から酸素ガスが排出される。なお、後述のように、排気中に未酸化物質が含まれる場合には、未酸化物質がアノード極層50において酸化される。
【0029】
図2に示されるセルユニット1が積層されると、各セルユニット1の間にガス流路形成部21に沿って、排気流路が構成される。ガス流路形成部21の形成方向において一方から流入する排気は、各セルユニット1において、積層部材20のガス流路形成部21によって区画形成された2つのガス流路40(第1流路41、第2流路42)に供給される。これらの2つのガス流路40(第1流路41、第2流路42)は、微細孔を備える積層部材20を介して隔てられているため、相互に連通する。
【0030】
図5図6は、本実施形態による電気化学リアクタ100の一部断面図であり、ガス流路40とガス流路40の上下に積層された隣接する2つのメタルサポートセルアセンブリ10の断面図である。図5はガス流路40の正面方向に向かって見た断面図、図6図5のVI線に沿った断面図である。すなわち、図5においては、排気は紙面方向に流れ、図6においては、排気は左右方向に流れる。
【0031】
前述の通り、電気化学リアクタ100のセルユニット1は、メタルサポートセルアセンブリ10と積層部材20とを含む。また、図5図6に示すように、メタルサポートセルアセンブリ10は、固体電解質層70と、固体電解質層70の一方の面に配置されるカソード極層60と、固体電解質層70の他方の面に配置されるアノード極層50と、カソード極層60を支持するように設けられる金属支持体80と、を備えている。
【0032】
固体電解質層70は、酸素イオン伝導性を備えた酸化物により形成された薄膜体であり、アノード極層50とカソード極層60とに挟持されている。当該酸化物としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジウム安定化ジルコニア(SSZ)、サマリウムドープトセリア(SDC)、ガドリウムドープトセリア(GDC)、ランタンストロンチウムマグネシウムガレート(LSGM)等を用いることができる。
【0033】
アノード極層50は、例えば、ランタンストロンチウムコバルト複合酸化物(LSC)、ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物(LSCF)等により形成された板状部材であり、固体電解質層70の上面に接するように設けられている。アノード極層50では、排気に含まれる未酸化物質が酸化される。
【0034】
カソード極層60は、例えばニッケル(Ni)等の金属及びイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等の酸化物により形成された板状部材である。アノード極層50は、固体電解質層70の下面に接するように設けられ、金属支持体80上に載置されている。カソード極層60では、排気に含まれる未還元物質(窒素酸化物)が還元される。
【0035】
金属支持体80は、ガスの伝導を阻害しないように構成された多孔質性の板状部材であって、アノード極層50を支持するように設けられ、メタルサポートセルアセンブリ10の強度を補強するための構造部材として機能する。このように、メタルサポートセルアセンブリ10は、支持体としての金属支持体80上にカソード極層60、固体電解質層70及びアノード極層50を積層した、いわゆるメタルサポート式である。
【0036】
積層部材20は、隣り合う2つのメタルサポートセルアセンブリ10の間に配置され、それらのメタルサポートセルアセンブリ10の間にガス流路40(第1流路41、第2流路42)を形成する。積層部材20には、微細孔が設けられているので、2つのガス流路40(第1流路41、第2流路42)を流れる排気は、上流から下流に流れる間に混合される。
【0037】
積層部材20を形成する材料は、導電性且つ熱伝導性材料であれば特に限定されないが、例えば鉄(Fe)やクロム(Cr)を含有する合金、金属等が用いられ、好ましくは、フェライト系の耐熱ステンレスが用いられる。フェライト系ステンレスとしては、例えばSUS430、SUS434、ZMG(登録商標)、Crofer(登録商標)等が挙げられる。積層部材20は、オーステナイト系ステンレスであってもよい。積層部材20は、上記の導電性且つ熱伝導性の材料をプレス成形することにより形成される板状部材である。
【0038】
図5に示すように、積層部材20は、積層部材20上に積層されたメタルサポートセルアセンブリ10のカソード極層60を支持する金属支持体80(アノード極層側)に当接する第1当接部22と、積層部材20の下方に位置するメタルサポートセルアセンブリ10のアノード極層50に当接する第2当接部23とを備える。第1当接部22と第2当接部23とは連結部24により連結されている。
【0039】
積層部材20は、予め定められた一方向(セパレータ幅方向)に交互(順番)に配列された第1当接部22と第2当接部23をそれぞれ連結部24で接続することにより凹凸状部材として構成されている。このような凹凸状構造を有することにより、積層部材20は、一方側の面に複数の第1流路41を備え、他方側の面に複数の第2流路42を備える。なお、図5では、連結部24が直線状に形成され、第1流路41は流路の正面方向断面積が台形状になるように形成されているが、必ずしもこれに限られない。例えば、連結部24を曲線状に形成し、第1流路41を流路断面積が湾曲状になるように構成してもよい。
【0040】
積層部材20の第1当接部22及び第2当接部23は、平坦面として形成され、第1当接部22はメタルサポートセルアセンブリ10の金属支持体80に当接し、第2当接部23はメタルサポートセルアセンブリ10のアノード極層50に当接する。また、積層部材20の連結部24は、第1当接部22の端部と第2当接部23の端部とをつなぐ壁部として形成される。このようにして、連結部24、第2当接部23及び金属支持体80により形成される空間である第1流路41、及び、連結部24、第1当接部22及びアノード極層50により形成される空間である第2流路42が構成される。
【0041】
次に、電気化学リアクタ100に直流電圧が印加されて排気浄化を行う場合(窒素酸化物の還元時)における、第1流路41及び第2流路42を流れるガスについて説明する。
【0042】
ここで、図5に示されるように、メタルサポートセルアセンブリ10においては、下側から排気に含まれる窒素酸化物(NOx)が金属支持体80を介してカソード極層60へと流入すると、カソード極層60において還元反応(2NO+4e→N+2O2-)が進行する。そして、還元により生成された窒素ガス(N)は、再度、メタルサポートセルアセンブリ10の下側の流路へと排出される。
【0043】
カソード極層60において窒素酸化物から離脱した酸素イオン(O2-:不図示)は固体電解質層70を伝導してアノード極層50まで到達する。そして、アノード極層50において酸素イオンが酸化される(2O2-→O+4e)ことで、酸素ガス(O)が生成されて、メタルサポートセルアセンブリ10の上方の流路へと排出される。このようにして、電気化学リアクタ100においては、カソード極層60において窒素酸化物が還元されて窒素ガスが発生するとともに、アノード極層50において酸素ガスが発生する。
【0044】
なお、積層部材20には微細孔20Aが設けられているので、第1流路41と第2流路42とは連通している。そのため、第2流路42を流れる排気に含まれる窒素酸化物は、微細孔20Aを介して第1流路41へと流れ込んだ後に、金属支持体80を経てカソード極層60に到達して還元される。このようにして、電気化学リアクタ100により、2つのメタルサポートセルアセンブリ10の間を流れる排気に含まれる窒素酸化物が還元されて、窒素ガス及び酸素ガスが生成される。
【0045】
図7~9は、本実施形態における電気化学リアクタ100の排気流路120内部での配置を示す図である。図7は、排気流方向、及び、電気化学リアクタ100の積層方向を含む平面における排気流路120の断面図である。図8は、電気化学リアクタ100のアノード極層50の端部を図7のXIII(積層方向)から見た上面図である。図9は、図7のIXにおける排気流方向に対して垂直方向な断面図である。
【0046】
図9に示されるように、排気流路120は断面が矩形であり、かつ、図7に示されるように、排気流路120は、流れ方向において流入口及び排出口に対して中央部で断面が大きく、断面が大きい箇所に電気化学リアクタ100が設けられている。
【0047】
再び図9を参照すれば、排気流路120は、側面に絶縁部121を備えている。絶縁部121は、排気流路120を帯状に取り囲むように設けられており、排気流路120を構成する導電性の上部筐体122と下部筐体123とを絶縁する。
【0048】
そして、図7に示されるように、上部筐体122及び下部筐体123は、電源300から直流電圧が印可可能に接続されている。なお、電気化学リアクタ100の最上層であるアノード極層50と、上部筐体122との間のガス流路を上部流路124と称し、電気化学リアクタ100の最下層である金属支持体80と、下部筐体123との間のガス流路を下部流路125と称するものとする。
【0049】
そして、上部流路124において、電気化学リアクタ100の最上層であるアノード極層50は、上部流路124に設けられるガス封止部材111、及び、固定部材112を介して、上部筐体122に固定されている。ガス封止部材111、及び、固定部材112は、導電性材料で構成された部材であって、アノード極層50及び上部筐体122と溶接により固定されている。下部流路125において、電気化学リアクタ100の最下層であるカソード極層60を支持する金属支持体80は、下部流路125に設けられる2つの固定部材112により下部筐体123に固定されている。
【0050】
電気化学リアクタ100は、電源300からの電力供給を受けると、アノード極層50において酸化反応が進行するとともに、カソード極層60において還元反応が進行する。なお、ガス封止部材111、及び、固定部材112が溶接により固定されることで、電気的な接続が強固となり集電抵抗が低減されるため、電気化学リアクタ100への電源供給効率の低下が抑制される。
【0051】
ここで、ガス封止部材111は、上部流路124を幅方向(図8の上下方向)に横切り、上部流路124を閉塞するように構成されている。また、最上層のアノード極層50は多孔質部材の内部が均一に構成されておらず、ガス封止部材111と接続される領域51が密に構成されており、アノード極層50内を浸透するガスが遮断される。このように構成されることで、上部流路124において、ガス封止部材111の上流側から下流側へとガスが流れることが防止される。
【0052】
固定部材112は、ガス封止部材111と同様に、上部流路124を幅方向に横切るように設けられている。しかしながら、アノード極層50において固定部材112と接続される領域は、領域51のように密に構成されておらず、内部をガスが浸透可能である。そのため、上部流路124において、固定部材112の上流側から下流側へとガスが流れることができる。また、図8に示されるように、ガス封止部材111と固定部材112とは、流れ方向において、電気化学リアクタ100の中心線Mに対して、上流及び下流側に対称に設けられている。このように構成されることで、電気化学リアクタ100の気流方向に対して垂直面における揺れを抑制できる。
【0053】
図7を参照すれば、メタルサポートセルアセンブリ10において、下方から金属支持体80を介してカソード極層60へと流入する窒素酸化物(NOx)は、還元されて窒素ガス(N)として放出され、同時に、上方においてアノード極層50からは酸素ガス(O)が放出される。すなわち、2つのメタルサポートセルアセンブリ10に挟まれるガス流路40においては、上方に接するメタルサポートセルアセンブリ10から窒素ガスがカソード極層60から金属支持体80を介して放出され、下方に接するメタルサポートセルアセンブリ10から酸素ガスがアノード極層50から放出される。なお、上部流路124におけるガス封止部材111と固定部材112との間においては、アノード極層50から酸素ガスが放出されるが、放出された酸素ガスは固定部材112の下流側へと流出される。
【0054】
ここで、上部流路124は、カソード極層60に面しているが、還元反応を行うアノード極層50とは接していない。そのため、上端流路に窒素酸化物(NOx)が流れてしまうと、還元されずに下流側へと流れてしまうおそれがある。そこで、ガス封止部材111を設けるとともに、多孔質部材であるアノード極層50の領域51を密に構成することによって、上部流路124を遮断することにより、未還元の窒素酸化物が下流へと流れてしまうのを抑制することができる。なお、上部流路124においてカソード極層60から放出される酸素ガスは、カソード極層60の内部を通り、固定部材112よりも下流側へと流出する。
【0055】
なお、下部流路125においては、金属支持体80を介して還元反応を行うアノード極層50と接している。そのため、下部流路125においては、窒素酸化物(NOx)はアノード極層50により還元される。下部流路125においては、ガス封止部材111は設けられておらず、2つの固定部材112が設けられているため、還元後の窒素ガスは固定部材112を経て下流側へと流出する。
【0056】
なお、上述の説明においては、アノード極層50においては酸素イオンが酸化されたが、これに限らない。三元触媒130において未燃燃料(HC)、炭素酸化物(CO)が酸化されなかった場合には、アノード極層50においてこれらの未酸化物質が酸化される。すなわち、電気化学リアクタ100が動作することにより、カソード極層60においては、排気のうちの未還元物質(窒素酸化物)が還元され、アノード極層50においては、未酸化物質(未燃燃料、炭素酸化物)が酸化される。
【0057】
ここで、下部流路125は金属支持体80を介してカソード極層60と接しており、酸化を行うアノード極層50とは面していない。そのため、下部流路125において、未酸化物質の下流への流出を抑制するためには、金属支持体80及びカソード極層60の一部の領域を密に構成するとともに、密に構成された領域にガス封止部材111を設ける必要がある。このように構成されることで、下部流路125において、ガス封止部材111の上流から下流へと未酸化物質が流出することが防止される。
【0058】
また、本実施形態においては、上部流路124において、ガス封止部材111、及び、固定部材112の双方が導電性材料で構成されたが、これに限らない。ガス封止部材111、及び、固定部材112の少なくとも一方が導電性材料で構成されることで、上部筐体122とアノード極層50とが電気的に接続されればよい。ガス封止部材111、及び、固定部材112のうちの他方を非導電性部材で構成することにより、電流が流れる部材を削減できるので、短絡のおそれを低減することができる。同様に、下部流路125に設けられる2つの固定部材112については、少なくとも一方が導電性材料で構成されればよい。
【0059】
第1実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0060】
第1実施形態の電気化学リアクタ100は、排気流路120内に設けられ、電源300からの電圧の印加に応じた電気化学反応により排気を浄化する。電気化学リアクタ100は、排気に含まれる窒素酸化物(未還元物質)を還元可能なカソード極層60と、排気に含まれる未燃燃料及び炭素酸化物(未酸化物質)を酸化可能なアノード極層50と、アノード極層50及び前記カソード極層60に挟持される固体電解質層70とにより構成されるセル(メタルサポートセルアセンブリ10)の複数が、積層されて構成されている。そして、積層されたメタルサポートセルアセンブリ10の最外側に位置するアノード極層50は、排気の下流側への流出を防止するように、一部の領域51が密に構成される。
【0061】
ここで、電気化学リアクタ100の最外側のアノード極層50と接する上部流路124は、還元反応を行うカソード極層60と接していないため、未還元の窒素ガスが下流へ流出するおそれがある。また、アノード極層50は多孔質部材であるため内部をガスが浸透する。そこで、ガス封止部材111が設けられるとともに、アノード極層50の一部の領域51が密に構成されことで、上部流路124において排気が下流へと流れるのが抑制されるとともに、アノード極層50内を浸透するガスが遮断される。その結果、未還元の窒素酸化物がガス封止部材111よりも下流へ流出するおそれを低減することができる。
【0062】
また、排気に未酸化物質が含まれている場合には、電気化学リアクタ100の下部の最外側のカソード極層60(金属支持体80を含む)と接する下部流路125においては、酸化反応を行うアノード極層50と接していないため、未酸化の炭素化合物等が下流へ流出するおそれがある。そこで、カソード極層60(金属支持体80を含む)の一部の領域を密に構成するとともに、当該密に構成される部分に下部流路125を閉塞するガス封止部材111を設ける。このようにすることで、下部流路125において排気が下流へと流れるのが抑制されるとともに、カソード極層60内を浸透するガスが遮断される。その結果、未酸化物質が下流へ流出するおそれを低減することができる。
【0063】
第1実施形態の電気化学リアクタ100によれば、電気化学リアクタ100は、カソード極層60と、アノード極層50と、アノード極層50及び前記カソード極層60に挟持される固体電解質層70とにより構成されるセル(メタルサポートセルアセンブリ10)の複数が、排気が内部を通過可能な積層部材20を介して積層されて構成されている。このように構成されることで、2つのセルの間においては積層部材20によって内部を排気が通る流路が構成されることになるため、積層部材の一方と接触するアノード極層50においては、未燃燃料及び炭素酸化物(未酸化物質)が酸化され、積層部材の他方の面と接触するカソード極層60においては、排気に含まれる窒素酸化物(未還元物質)が還元されやすくなる。
【0064】
第1実施形態の電気化学リアクタ100によれば、上部流路124(壁面流路)には、ガス封止部材111が設けられ、さらに、固定部材112が設けられている。ここで、ガス封止部材111のみが設けられている場合には、排気の流れに起因してガス封止部材111が振動して電気化学リアクタ100と排気流路120との固定状態が緩くなるおそれがある。しかしながら、ガス封止部材111及び固定部材112の2点で電気化学リアクタ100が固定されることにより、電気化学リアクタ100をより確実に固定することができる。
【0065】
第1実施形態の電気化学リアクタ100によれば、ガス封止部材111及び固定部材112は、排気流方向の上流側と下流側とにおいて対をなして、電気化学リアクタ100の流路方向における中心線Mに対して対称に配置される。このように配置されることにより、ガス封止部材111及び固定部材112においては、中心線Mに対して上流側と下流側とに加わる力が均等となり、流れ方向を中心にした回転方向のトルクの発生を抑制することができるので、電気化学リアクタ100をより確実に固定することができる。
【0066】
第1実施形態の電気化学リアクタ100によれば、ガス封止部材111は、固定部材112よりも上流側に設けられている。ガス封止部材111よりも上流側でアノード極層50から排出される酸素ガスは、ガス封止部材111よりも下流へ流出せずに上流側に向かって流れ、メタルサポートセルアセンブリ10を回り込み、ガス流路40へと流れこむ。また、ガス封止部材111よりも下流側でアノード極層50から排出される酸素ガスは、アノード極層50の内部を通り固定部材112の下流側へと流れることが可能となる。ガス封止部材111を固定部材112よりも上流側に設けることにより、ガス封止部材111の上流側における酸素ガスの回り込み経路を短くすることができるとともに、ガス封止部材111よりも下流側の酸素ガスの流路が長くなるので、排気流の安定化を図ることができる。
【0067】
第1実施形態の電気化学リアクタ100によれば、ガス封止部材111及び固定部材112の少なくとも一方は、導電性材料により構成される。このようにすることで、ガス封止部材111及び固定部材112を電源300からの電力供給端子(バスバー)として利用することができるため、部品点数の低減を図ることができる。
【0068】
第1実施形態の電気化学リアクタ100によれば、ガス封止部材111及び固定部材112のうち、一方は導電性材料により構成され、他方は非導電性材料により構成される。このように一部の部材を非導電性部材とすることにより、短絡のおそれを低減することができる。
【0069】
第1実施形態の電気化学リアクタ100によれば、導電性材料であるガス封止部材111及び固定部材112の少なくとも一方は、アノード極層50及び上部筐体122と溶接により固定される。ガス封止部材111、及び、固定部材112が溶接により固定されることで、電気的な接続が強固となり、集電抵抗を低減することができる。その結果、電気化学リアクタ100の動作効率を向上させることができる。
【0070】
(第1変形例)
第1実施形態においては、電気化学リアクタ100の最外側のアノード極層50側において、上部流路124を閉塞するガス封止部材111を設けることにより、上部流路124を通る排気が未還元状態で下流へと流れることを抑制する例について説明した。第1変形例においては、電気化学リアクタ100の最外側のアノード極層50側が、上部筐体122の内面と接触する例について説明する。
【0071】
図10は、第1変形例の構成を示す図であって、排気流方向、及び、電気化学リアクタ100の積層方向を含む平面に沿った排気流路120の断面図であり、図7に相当する図である。
【0072】
この図によれば、電気化学リアクタ100は、積層方向の上部の最外面であるアノード極層50が上部筐体122の内面と接触して接着部材(不図示)により固定されている。アノード極層50は、多孔質部材であり内部にガスが浸透可能であるため、上流側の端面から浸透した排気が還元されずに内部を通り下流側から放出されてしまうおそれがある。そこで、アノード極層50の一部の領域51を密に構成することで、アノード極層50内のガスの浸透を遮断することができるので、未還元の窒素酸化物が下流へと放出されることが抑制される。
【0073】
このように第1変形例によれば、電気化学リアクタ100の積層方向の最外面であるアノード極層50を上部筐体122の内面と接触させ、さらに、アノード極層50の一部の領域51を密に構成する。このように構成することにより、ガス封止部材111を設けることなく、未還元の窒素酸化物が下流へと流れるのを抑制することができる。
【0074】
(第2変形例)
第1実施形態においては、固定部材112は、上部流路124の全体を覆うように設けられている例について説明した。第2変形例においては、固定部材112が上部流路124の一部を覆うように設けられる、上部流路124の流れを許容する開口が形成されている例について説明する。
【0075】
図11は、第2変形例の電気化学リアクタ100のアノード極層50の端部を積層方向から見た上面図であって、図8に相当する図である。
【0076】
この図によれば、固定部材112が、電気化学リアクタ100の端部であるカソード極層60と上部筐体122との間に設けられる上部流路124の一部を覆うように設けられることにより、上部流路124の流れを許容する開口が幅方向の側方に形成されている。詳細には、固定部材112は、積層方向に対して垂直方向(幅方向、図11の上下側)において、排気流路120の幅よりも短く構成され、上部筐体122の側面から離間するように配置されている。
【0077】
第2変形例の電気化学リアクタ100においては、固定部材112は、上部流路124における流れを許容する開口が設けられるように、上部流路124の一部を覆うように設けられる。これにより、固定部材112よりも上流側においてアノード極層50から放出される酸素ガスは、固定部材112よりも下流へと流れやすくなる。その結果、酸素ガスがガス封止部材111と固定部材112との間で滞留して排気流路120の一部の圧力が高くなることを抑制できるため、電気化学反応を安定的に進行することができる。
【0078】
(第3変形例)
第1実施形態においては、電気化学リアクタ100を構成する複数のメタルサポートセルアセンブリ10は屈曲した積層部材20を介して積層される例について説明したがこれに限らない。第4変形例においては、板バネ25を介して複数のメタルサポートセルアセンブリ10が積層される例について説明する。
【0079】
図12は、ガス流路40の正面方向に向かって見た断面図であって、図5に相当する。図13は、板バネ25を積層方向上部からみた上面図である。すなわち、この図においては、排気は紙面方向に沿って流れる。
【0080】
図12に示されるように、板バネ25は、上方に接するメタルサポートセルアセンブリ10を固定する当接部251、及び、上下に隣接するメタルサポートセルアセンブリ10を隔てる傾斜部252が、板部253の上に設けられることで構成されている。図13に示されるように、一枚の板部253の複数個所に板バネ25が設けられている。
【0081】
第3変形例の電気化学リアクタ100によれば、隣り合うメタルサポートセルアセンブリ10の間の板バネ25が設けられており、板バネ25が設けられる領域に排気が流れる。板バネ25を介して対向する2つのメタルサポートセルアセンブリ10のうち、一方(図上方)のメタルサポートセルアセンブリ10においては、当接部251と接する領域以外において、金属支持体80に支持されるカソード極層60で窒素酸化物(NOx)が還元される。他方(図下方)のメタルサポートセルアセンブリ10においては板部253において切り欠きにより設けられる開口部において、アノード極層50から酸素ガスが放出される。このように、板バネ25を用いることで、第1実施形態に示されたようなセパレータよりも簡易な構成で積層部材20を構成することができる。
【0082】
(第4変形例)
電気化学リアクタ100を構成する複数のメタルサポートセルアセンブリ10を、第1実施形態においては屈曲した積層部材20を介して積層し、第3変形例においては板バネ25を介して積層したがこれらに限らない。第4変形例においては、多孔質金属を介してメタルサポートセルアセンブリ10が積層される例について説明する。
【0083】
図14は、ガス流路40の正面方向に向かって見た断面図であって、図5に相当する。すなわち、この図においては、排気は紙面方向に沿って流れる。
【0084】
図示されるように、メタルサポートセルアセンブリ10は、2つの金属支持体80の間において、カソード極層60、固体電解質層70、及び、アノード極層50が積層されることにより構成されている。そして、メタルサポートセルアセンブリ10は、さらに積層方向において2つのガスが浸透可能な多孔金属層26によって挟まれており、これにより電気化学セル10Aが構成される。そして、このような電気化学セル10Aが複数(図では2つ)積層されることで、電気化学リアクタ100が構成される。なお、最終的に構成される電気化学リアクタ100においては、積層方向の最外側には、多孔金属層26や金属支持体80ではなく。アノード極層50又はカソード極層60が配置される。そして、最外側のアノード極層50においては、一部の領域51(不図示)が密に構成されることで、未還元の窒素酸化物が下流へ流出することが抑制される。
【0085】
第4変形例の電気化学リアクタ100によれば、一方のメタルサポートセルアセンブリ10の一方の金属支持体80と、対向する他方のメタルサポートセルアセンブリ10の金属支持体80との間には、ガスが浸透可能な多孔金属層26が2層設けられる。多孔金属層26の内部には排気が流れ、排気に含まれる未還元の窒素酸化物は一方のメタルサポートセルアセンブリ10のカソード極層60において還元される。同時に、未酸化の未燃燃料及び炭素酸化物は他方のメタルサポートセルアセンブリ10のアノード極層50において酸化される。このように構成しても、酸化及び還元反応を行うことができる。
【0086】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、排気流路120において対向するように排気の流入口及び流出口が設けられる例について説明した。第2実施形態においては、排気流路120の一方の面に排気の流入口及び流出口を設ける例について説明する。
【0087】
図15は、排気流方向、及び、電気化学リアクタ100の積層方向を含む平面における排気流路120の断面図であり、図7に相当する。図16は、図15のXVIにおける断面であって、排気流方向に対して垂直方向の断面図である。なお、本実施形態において、電気化学リアクタ100は、第4変形例で示されたメタルサポートセルアセンブリ10が多孔金属層26を介して積層されて構成される。なお、電気化学リアクタ100の積層方向の上部の最外側はアノード極層50であり、下部の最外側はカソード極層60が配置される。
【0088】
本実施形態においては、電気化学リアクタ100は矩形の排気流路120内に収容される。排気流路120は、側面を帯状に取り囲む絶縁部121を介して対向する上部筐体122と、下部筐体123とにより構成される。下部筐体123の下面の両端には、排気の流入口126と流出口127とが設けられている。また、第1実施形態と同様に、電気化学リアクタ100の図上部の最外部は、上部筐体122の内面と、ガス封止部材111、及び、固定部材112により接続され、電気化学リアクタ100の図下部の最外部は、下部筐体123の内面と2つの固定部材112により接続されている。そして、ガス封止部材111は、アノード極層50において密に構成された領域51と接続される。
【0089】
図16に示されるように、流路方向から見た場合には、積層方向に対して垂直な方向において、電気化学リアクタ100と排気流路120との間に、側方におけるガスの流出を抑制するために、塑性変形可能なガスケット128が設けられている。
【0090】
第2実施形態の電気化学リアクタ100によれば、排気流路120は流入口126から流入した排気は、電気化学リアクタ100の多孔金属層26を通り、流出口127から流出する。多孔金属層26を流れる排気に含まれる未還元の窒素酸化物は、多孔金属層26の一方と接するメタルサポートセルアセンブリ10のカソード極層60において還元され、未酸化の未燃燃料及び炭素酸化物は多孔金属層26の他方と接するメタルサポートセルアセンブリ10のアノード極層50において酸化される。このように構成しても、カソード極層60と接する上部流路において下流側へと未還元の窒素酸化物が流出することを抑制しながら、窒素酸化物の還元を行うことをできる。
【0091】
なお、第1及び第2実施形態においては、アノード極層50、固体電解質層70、及び、カソード極層60により構成されるメタルサポートセルアセンブリ10の複数が、金属製の板状の積層部材20(セパレータ、第1実施形態)、板バネ25(第3変形例)、及び、多孔金属層26(第4変形例)を介して積層される例について説明したが、これに限らない。
【0092】
例えば、これらの積層部材を介さずに、何らかの固定部材を用いてメタルサポートセルアセンブリ10の複数を離間した状態で積層してもよい。この場合には、離間部に排気が流れることとなる。なお、離間部を介して対向するメタルサポートセルアセンブリ10のうち、一方のメタルサポートセルアセンブリ10のアノード極層50と、隣接する他方のメタルサポートセルアセンブリ10のカソード極層60との間においては、電気的な導電性が確保されるように両者を接続するバスバが設けられている。
【0093】
また、これらの積層部材を介さず、かつ、メタルサポートセルアセンブリ10の複数を離間させずに積層さてもよい。この場合に、メタルサポートセルアセンブリ10同士が隣接しており、一方のメタルサポートセルアセンブリ10のアノード極層50と、他方のメタルサポートセルアセンブリ10のカソード極層60とは隣接する。アノード極層50及びカソード極層60は多孔質部材であるため、アノード極層50及びカソード極層60自身が排気流路となって側面から排気が流入することとなる。
【0094】
また、第1実施形態においては、カソード極層60の下面と接するように金属支持体80が設けられたが、これに限らない。アノード極層50の上面と接するように金属支持体80が設けられてもよい。また、アノード極層50又はカソード極層60と、金属支持体80とが一体的に構成される場合には、このように一体構成された部材をアノード極層及びカソード極層と称してもよい。
【0095】
他にも、図17に示されるように、メタルサポートセルアセンブリ10同士を、導電性接合剤を用いて固体電解質層を介して、隣接して構成させてもよい。図17は、ガス流路40の正面方向に向かって見た断面図であって、図5に相当する。
【0096】
この図によれば、他の構成と同様に、メタルサポートセルアセンブリ10は、カソード極層60、固体電解質層70、及び、アノード極層50が積層されて構成されている。そして、メタルサポートセルアセンブリ10のそれぞれにおいては積層方向の上面及び下面には導電性接合剤27が設けられており、多孔金属層26を介して積層されている。なお、導電性接合剤27は多孔質部材であって内部を排気が通ることができる。その結果、多孔金属層26及び導電性接合剤27が排気流路となるとともに、複数のメタルサポートセルアセンブリ10の積層方向における電気伝導性が確保される。なお、アノード極層50及びカソード極層60が金属支持体80により支持されており、金属支持体80に導電性接合剤27が設けられていてもよい。この場合には、多孔金属層26及び導電性接合剤27に加えて、金属支持体80内に排気が流れる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0098】
1 セルユニット、10 電気化学セル(メタルサポートセルアセンブリ)、20 積層部材、40 ガス流路、50 アノード極層、51 領域、60 カソード極層、70 固体電解質層、80 金属支持体、100 電気化学リアクタ、111 ガス封止部材、112 固定部材、120 排気流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17