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特開2022-162480パレット及びパレットを使用した食料品の管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162480
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】パレット及びパレットを使用した食料品の管理方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20221017BHJP
   B65D 19/38 20060101ALI20221017BHJP
   A23B 7/015 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
A23L5/00 G
B65D19/38 Z
A23B7/015
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067364
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】521155896
【氏名又は名称】株式会社タベテク
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】田苗 眞代
(72)【発明者】
【氏名】柳生 義人
【テーマコード(参考)】
3E063
4B035
4B169
【Fターム(参考)】
3E063AA03
3E063BA01
3E063BA05
3E063BB01
3E063BB04
3E063CA05
3E063DA05
3E063EE03
3E063FF20
3E063GG10
4B035LC05
4B035LP59
4B035LT16
4B035LT20
4B169AA02
(57)【要約】
【課題】 食料品の鮮度維持効果が高く、多様なサイズの保管・運搬設備にも柔軟に対応することが可能なパレット及びパレットを使用した食料品の管理方法を提供すること。
【解決手段】
食料品を載置するパレット1において、該パレットの一部にプラズマ発生装置2を備えたことを特徴とする。
また、該パレット1の該プラズマ発生装置2を用いて、該パレットが収容されている空間内のオゾン濃度を調整することを特徴とする食料品の管理方法である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食料品を載置するパレットにおいて、
該パレットの一部にプラズマ発生装置を備えたことを特徴とするパレット。
【請求項2】
請求項1に記載のパレットにおいて、該プラズマ発生装置は、電力を供給する電源ユニット、供給された電力の一部を使用して高電圧を発生する高電圧発生手段、該高電圧発生手段から供給される高電圧を用いてプラズマを発生するプラズマ発生手段を有することを特徴とするパレット。
【請求項3】
請求項2に記載のパレットにおいて、該電源ユニットは、蓄電池又は外部電源への接続手段のいずれかを備えることを特徴とするパレット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のパレットにおいて、該プラズマ発生装置は、該プラズマ発生手段で発生されたプラズマに接触した気体を送風する送風手段を有することを特徴とするパレット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のパレットにおいて、該パレットの一部にオゾン検出手段を備えたこと特徴とするパレット。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のパレットにおいて、該プラズマ発生装置は、該プラズマ発生装置の駆動を制御する制御手段と、該制御手段と外部制御手段との間で通信を行う通信手段を有することを特徴とするパレット。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載のパレットの該プラズマ発生装置を用いて、該パレットが収容されている空間内のオゾン濃度を調整することを特徴とする食料品の管理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の食料品の管理方法において、該空間内に配置されたオゾンセンサと、該オゾン検出手段が検知するオゾン濃度に基づき、該パレットの該プラズマ発生装置を駆動制御することを特徴とする食料品の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット及びパレットを使用した食料品の管理方法に関し、特に、食料品を載置するパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
食料品、特に、みかん等の柑橘類、葡萄、メロンなどの果物やトマト、ナスなどの野菜のような青果物は、時間の経過と共に食料品が劣化し、食用に提供できない場合は破棄されることとなる。例えば、我が国でのみかんについては、生産された量のおよそ40%が廃棄されているというデータもある。
【0003】
このような食料品の廃棄問題に対して、例えば、青果物の鮮度を維持するために、エタノールや酢酸、次亜塩素酸ソーダ等の殺菌剤、オルトフェニルフェノールやチアベンダゾール等の防カビ剤などの薬剤を使用する方法も採られているが、安全性の問題が生じやすい。
【0004】
薬剤を使わずに鮮度保持ができれば、そのほうがリスクもなく、消費者に対しても安全性の高い青果物を提供することができることから、長年、様々な方法が試されてきた。
薬剤を使わない鮮度保持技術としては、以下のようなものが挙げられる。
【0005】
例えば、特許文献1には、赤色光及び遠赤色光の双方を同時又は交互に照射することで青果物の鮮度を保持する方法が開示されている。
ここでは、赤色光は、波長が約670nmの波長域の光、遠赤色光は、波長が約735~780nmの範囲の波長域の光を同時に、又は赤色光と遠赤色光とを交互に照射することで、収穫後の果菜、例えば貯蔵時や店頭陳列時に常温下に置かれた果菜が、軟化したり鮮度が低下したりするのを抑え、鮮度が保持されるとされている。
【0006】
特許文献2には、光の照射によって野菜や果物等の鮮度を保持する鮮度保持方法が開示されていて、ここでは、遠赤色光と白色光とを照射し、遠赤色光の照射照度は、白色光の照射照度の0.02倍以上0.2倍以下で鮮度が保持されるとされている。
【0007】
特許文献3には、収納棚内部の温度および湿度を均一化すると共に冷風に防菌・防黴性を付与して、長期間の高品質・高鮮度が保持する果実類鮮度保持装置が開示されている。これは、収納庫内に設けられた収納棚に果実類を収納し、冷却機および送風機よりなる冷風循環装置からの冷風を循環して収納庫内を冷却することで、果実類の鮮度を保持するとされている。
【0008】
一方、近年はオゾンを利用して鮮度を保持する方法が採用されている。
例えば、特許文献4には、紫外線照射によりオゾンを発生させて、青果物の追熟、老化の原因とされるエチレンを効率良く除去する技術が開示されている。
これは、貯蔵庫へ鮮度保持雰囲気を供給する装置で、前記貯蔵庫内の雰囲気を導入して紫外線照射処理を施して前記鮮度保持雰囲気を生成する紫外線照射部と、前記紫外線照射部に対して加湿処理を施す加湿処理部とを備える。この装置によれば、加湿処理された雰囲気に紫外線照射処理を施すことで、庫内雰囲気と比較してエチレン濃度が低下した鮮度保持雰囲気を貯蔵庫へと供給でき、紫外線照射部に対して加湿処理を施すので、紫外線照射処理の対象となる雰囲気の湿度、ひいてはエチレン除去率は速やかに増大する。
そして、紫外線照射処理に採用される紫外線の波長を、オゾンが発生する波長とすると、エチレンを効率良く除去することができ、より青果物の鮮度を保持することができるものとなる。
【0009】
また、殺菌や病害虫防除のため、オゾンガスを利用し、青果物を所定の濃度のガスに曝露させる方法も、特許文献5に開示されている。
【0010】
特許文献1又は2のような、光照射を行う場合は、光が届かない影の部分には鮮度保持効果が十分に及ばない。また、特許文献3のような冷却装置を利用する場合は、食料品を保管する空間に応じて設備も大がかりとなり、設備費や消費電力等のランニングコストも大きくなる。
【0011】
特許文献4又は5のようにオゾンを利用する方法は、殺菌効果は高いが、食料品を保管する空間によっては、オゾン発生器などの設備を複数配置することが必要であったり、機器自体の大型化が必要となる。また、食料品の運搬や一時保管に際しては、トラックやコンテナ、さらには一時保管庫に、オゾン発生器を別途組み込む必要があり、設備費も甚大なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2016-26484号公報
【特許文献2】特開2019-140970号公報
【特許文献3】特開2001-248957号公報
【特許文献4】特開2002-345400号公報
【特許文献5】特開2019-208864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述した問題を解決するため、食料品の鮮度維持効果が高く、多様なサイズの保管・運搬設備にも柔軟に対応することが可能なパレット及びパレットを使用した食料品の管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するため、本発明のパレット及びパレットを使用した食料品の管理方法は、以下のような特徴を有する。
(1) 食料品を載置するパレットにおいて、該パレットの一部にプラズマ発生装置を備えたことを特徴とする。
【0015】
(2) 上記(1)に記載のパレットにおいて、該プラズマ発生装置は、電力を供給する電源ユニット、供給された電力の一部を使用して高電圧を発生する高電圧発生手段、該高電圧発生手段から供給される高電圧を用いてプラズマを発生するプラズマ発生手段を有することを特徴とする。
【0016】
(3) 上記(2)に記載のパレットにおいて、該電源ユニットは、蓄電池又は外部電源への接続手段のいずれかを備えることを特徴とする。
【0017】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のパレットにおいて、該プラズマ発生装置は、該プラズマ発生手段で発生されたプラズマに接触した気体を送風する送風手段を有することを特徴とする。
【0018】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のパレットにおいて、該パレットの一部にオゾン検出手段を備えたこと特徴とする。
【0019】
(6) 上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のパレットにおいて、該プラズマ発生装置は、該プラズマ発生装置の駆動を制御する制御手段と、該制御手段と外部制御手段との間で通信を行う通信手段を有することを特徴とする。
【0020】
(7) 上記(1)乃至(6)に記載のパレットの該プラズマ発生装置を用いて、該パレットが収容されている空間内のオゾン濃度を調整することを特徴とする食料品の管理方法である。
【0021】
(8) 上記(7)に記載の食料品の管理方法において、該空間内に配置されたオゾンセンサと、該オゾン検出手段が検知するオゾン濃度に基づき、該パレットの該プラズマ発生装置を駆動制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、食料品を載置するパレットにおいて、該パレットの一部にプラズマ発生装置を備えているため、食料品を保管・運搬する設備毎にプラズマ発生装置を設置する必要がなく、食料品の近傍でプラズマを発生することで、効率的に食料品の表面を殺菌処理等を施すことができる。しかも、食料品の保管量や運搬量が多くなるに従い、使用するパレットも増加するため、効率的にプラズマの発生量を増加させることも可能となる。
【0023】
また、本発明のように、パレットの該プラズマ発生装置を用いて、該パレットが収容されている空間内のオゾン濃度を調整することで、空間のサイズや食料品の種類や量などに応じた、最適な殺菌処理等が可能な食料品の管理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るパレットの一例を示す斜視図である。
図2図1のパレットを説明する(a)上面図、(b)上面図の線A-Aにおける断面図、(c)上面図の線B-Bにおける断面図である。
図3図1のパレットを説明する底面図である。
図4図3の一部の拡大図である。
図5】本発明のパレットに使用可能なプラズマ発生手段の一例を示す図である。
図6】本発明のパレットに使用可能なプラズマ発生装置の一例を示す図である。
図7】本発明に係るパレットを使用した保管状態を説明する図である。
図8】本発明のパレットに使用可能なプラズマ発生装置の他の実施例を示す図である。
図9】本発明のパレットを使用した食料品の管理方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るパレット及びパレットを使用した食料品の管理方法について、詳細に説明する。
なお、以下の発明の実施形態については、形状、数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、この発明の目的や作用効果を逸脱しない範囲において、種々の変更を行うことができることは、言うまでもない。
【0026】
本発明は、図1乃至4に示すように、食料品を載置するパレットにおいて、該パレットの一部にプラズマ発生装置を備えたことを特徴とする。
図1は、パレットの一例を示す外観の斜視図である。図2図1のパレットの(a)上面図、(b)上面図の線A-Aにおける断面図、(c)上面図の線B-Bにおける断面図である。図3は、図1のパレットを説明する底面図であり、図4図3の一部の拡大図である。
【0027】
パレット(pallet)は、荷物を載せたままフォークリフトなどで移動できるようにした運搬用の荷台を意味している。このパレットの上に、青果物等の食料品を入れた容器を載置することが可能である。本発明のパレットでは、プラズマ発生装置を組み込んでいるため、プラズマで形成される気体が食料品の表面に届くように構成することが望ましい。このため、食料品を収納する容器は、通気性が高く、穴の開いた矩形状の籠などが好ましい。また、青果物等の食料品を段ボールに収容する場合には、食料品だけでなく段ボールの殺菌処理も併せて行うことが可能となる。
【0028】
パレット1の一例としては、図1乃至4に示すように、上面デッキプレート11と、下面デッキプレート12と、前記上面デッキプレート11と前記下面デッキプレート12とを連結するための桁部材(13,14)で構成される。素材は、樹脂製、金属製、木製等あるが、後述するプラズマ発生装置を組み込むことを考慮すると、樹脂製や金属製など耐久性の高い素材が好ましい。
【0029】
通常、パレット1は、荷物の運搬にあたりフォークリフトで移動可能なように、フォークの刃を差し込むための差込口3とフォークの刃を収容する隙間16が形成されている。図1乃至3では、差込口3や隙間16を形成するために、パレット1は、上面デッキプレート11と下面デッキプレート12を連結する桁部材(13,14)により、上面デッキプレート11と下面デッキプレート12の間に適度な空間15(図2(a)(c))を形成している。パレット1では、上面デッキプレート11と下面デッキプレート12の四方の隅部に隅桁部13を、そして、前記四方の隅桁部13の隣り合う隅桁部13と隅桁部13との間に、中間桁部14を設け、隅桁部13と中間桁部14の間に隙間16(図2(a)(c))を形成し、フォーク差込口3としている。なお、下面デッキプレート12は必要に応じて省略することも可能である。
【0030】
プラズマ発生装置2は、図1又は2に示すように、中間桁部14内に配置されている。プラズマ発生装置2の配置位置は、これに限らず、図2(a)の中央部分の桁部材や4つの角の隅桁部13内であっても良く、パレット1の使用や保管に障害とならない位置であれば、任意の箇所に設置できる。また、後述するようにプラズマ発生装置が複数の部品から構成されるため、各部品を異なる桁部材に配置することも可能である。ただし、この場合は、フォークの刃が挿入される空間(隙間)を横切って配線を行う必要もあるため、フォークの刃の出し入れによって配線が切断されないよう、例えば、上面デッキプレート11や下面デッキプレート12の表面(フォークの刃に対向する部分)に配線が露出しないよう構成することが好ましい。
【0031】
プラズマ発生装置2を組み込む桁部材は、パレット1の重量を軽減しつつ、強度を保持するため、図3に示すように複数の空隙を設けて形成されている。プラズマ発生装置2を収容できるように、より広い空隙部分を形成することも可能であるが、図4図3のα部分の拡大図)に示すように、プラズマ発生装置を構成する部品を、桁部材(14等)の空隙部に、収まるように配置することも可能である。
【0032】
本発明のように、パレット1にプラズマ発生装置を組み込むことで、青果物等の食料品の箱詰め時や保管時、輸送時に、プラズマ発生装置を別途用意する必要が無い。
また、図1乃至3の実施例では、4箇所の中間桁部14に計4個のプラズマ発生装置2を設置しているが、設置位置と同様に設置数も任意に調整できるものである。
例えば、みかん等の青果物の保存にあたっては、実施例に示すように4箇所の中間桁部14内に4個のプラズマ発生装置2を設置すると、上面デッキプレート11の載置面11aに載置された青果物に殺菌等の処理雰囲気をより適切に生成することができる。なお、後述するように、プラズマに接触する空気を拡散するための送風手段を設ける場合には、プラズマ発生装置の設置位置はより自由度が高くなる。
【0033】
本発明では、青果物等の食料品の鮮度を維持するために、プラズマを使用している。プラズマは電離気体であり、空気や水分と接触することで、オゾンや酸素ラジカル、ヒドロキシルラジカル(OHラジカル)などが生成される。これらのガスが食料品に接触することで、カビや雑菌の繁殖や腐敗の進行を抑制し、食料品の鮮度維持に寄与する。しかも、プラズマで生成されるガスの雰囲気中に、食料品を長時間又は繰り返し曝露することで、食料品が持つ鮮度維持能力をより高めることも期待される。また、上述したように青果物等の食料品を収容する段ボールの殺菌処理も併せて実現すること可能となる。
【0034】
図1乃至3の実施例では、4本の中間桁部14にそれぞれプラズマ発生装置2を設置しているが、1つのプラズマ発生装置2におけるオゾン発生量は、例えば、約1,250mg/hが可能であり、パレット1全体として、単位時間あたりのオゾン発生量は5,000mg/hとなる。
実証実験では、この条件におけるみかんのかびの発生、腐敗は、3分の1に低減できた。また、腐敗率(全体数に占める腐敗した品物の数の割合)は時間が経過しても大きな変化がなく、みかんが菌に対し強くなる傾向が見られた。これは、みかんの表面がオゾン等のプラズマで活性化されたガスが接触することにより、殺菌作用と合わせて、みかんの表面が刺激を受けたことが原因と推定される。
【0035】
本発明で使用するプラズマ発生装置2の基本的構造としては、図5及び図6に示すように、プラズマ発生手段20と高電圧発生手段26及び電源ユニット(蓄電池)27とからなる。また、後述するように、これらの構成部品に、送風手段、通信手段、オゾン検出手段などを組み込むことも可能である。
【0036】
プラズマ発生手段20の一例を図5に示す。基板21と、前記基板21の下面に配設される誘導電極22と、前記基板21の上面に配設される放電電極23とからなる。放電電極23は、基板21を挟んで、誘導電極22と重なるように配設され、誘導電極22と重なり合う部分に沿面放電を行う沿面放電部24が形成される。沿面放電を行うには、放電電極23と誘導電極22との間に交流の高電圧を印加し、沿面放電部24を中心に、電離気体を発生させる。なお、下面の誘導電極22は、酸化を保護する保護膜25で被覆されることが好ましい。保護膜25の一部には誘導電極22が露出されており、高電圧発生手段26からの電気配線が該誘導電極に接続されている(図示せず)。
【0037】
基板21は、例えば、アルミナ等の無機物質誘電体を焼結して板状に形成されたセラミックスで構成すると絶縁性、放電性に優れ好適である。そして、基板21は、パレット1の上面デッキプレート11と下面デッキプレート12を連結する中間桁部14又は隅桁部13の桁部材の一部、あるいは前記中間桁部14又は隅桁部13の周辺の空間に入れ込んで設置できる大きさに形成することが好ましい。当然、一つのプラズマ発生装置2に複数のプラズマ発生手段20を利用することも可能である。
【0038】
放電電極23は、導電性あるいは反導電性セラミックス、例えば酸化チタン系セラミックス、酸化亜鉛系セラミックスであれば、放電電極23が一定の強度を保持し、また酸化や摩耗に強く好適である。
【0039】
本発明にかかるパレット1の特徴の一つとしては、上面デッキプレート11と下面デッキプレート12の間の空間15に、図6に示すようなプラズマ発生装置2が設置される。すなわち、前記プラズマ発生装置2を構成する各部材は、前記空間内に設置できる大きさや形状で構成される。図6のような、プラズマ発生装置2は、その設置に大きな占有スペースを必要としないため、パレット1内の任意の場所に取付可能となっている。
プラズマ発生装置2としては、プラズマ発生手段20と、高電圧発生手段26と、電源ユニット27とで構成され、それぞれ配線で接続できるようになっているため、設置位置に自由度があり、既存の設計によって製造されるパレットに設置することも可能である。また、あらかじめプラズマ発生装置2を設置するためのケーシング(図示せず)を用意し、前記ケーシングを上面デッキプレート11と下面デッキプレート12の間の空間に設置する構成とすることもできる。さらに、プラズマ発生装置2やそれを構成する部品の一部を耐火性を有するケーシング内に収容することも可能である。しかも、ケーシングに収容したままパレットから着脱するよう構成することも可能である。
また、電源ユニットの一部を蓄電池で構成し、該蓄電池をパレット1の外から容易にアクセスできる場所に配置し、蓄電池の交換が可能なように構成することもできる。
【0040】
プラズマ発生装置2の駆動については、パレット1に載置する青果物等の食料品の量にあわせて、複数配置されたプラズマ発生装置2の一部を選択的に動作させて、最適な処理雰囲気を形成する。プラズマ発生装置2の駆動のON/OFFの切り替えは、個々のプラズマ発生装置にスイッチを設け、それを手動で操作することも可能であるが、パレット1の桁部材(13,14)に、ON/OFFの切り替え用のスイッチやコントロールパネルを設けて、オゾン濃度等の処理雰囲気を調整することも可能である。処理雰囲気をより最適に管理する方法については、後述する。
【0041】
図7は、本発明のパレット1を使用した食料品の保管状態を示す図である。
保管設備6内で、パレット1を用いて青果物等の食料品が保管されている。パレット1の数は、保管設備内に保管する食料品の量に応じて数が変化する。このため、大きな保管設備でより多くの食料品を保管する場合には、パレット1の数に応じてプラズマ発生装置が保管設備6内に設けられることになる。
一方、大きな保管設備内に少量の食料品を保管する場合であっても、プラズマ発生装置はパレットと一緒に、食料品の近傍に配置されているため、食料品の周囲はプラズマにより発生した気体で包囲されることとなる。
【0042】
図7の保管設備6は、倉庫等の保管庫に限らず、トラックやコンテナ等の輸送用収納スペースであっても良い。特に、輸送中においては、電源ユニットに蓄電池を使用することで、プラズマ発生装置を適宜駆動することも可能となる。
【0043】
図8は、本発明のパレットに使用されるプラズマ発生装置2の他の実施例である。プラズマ発生手段220、高電圧発生手段260は、図6のものと基本的に同じであっても良い。電源ユニット270は、蓄電池だけでなく、外部電源EPに接続される接続手段を備えることができる。蓄電池と外部電源EPとは、蓄電池の電力残量に応じて自動的に切り替えても良いし、手動で切り替えても良い。また、外部電源との接続は、通常のコンセントに限らず誘導電力を用いた非接触型でも良い。
【0044】
符号200はCPUやメモリを備えた制御手段であり、高電圧発生手段260の駆動(ON/OFF)を制御し、プラズマの発生をコントロールしている。また、1つの高電圧発生手段260から複数のプラズマ発生手段220に高電圧を供給できるように設定し、制御手段200で、高電圧発生手段を制御するだけでなく、駆動するプラズマ発生手段を選択的に切換えるよう構成することも可能である。
また、制御手段200は、上述した電源ユニット270の蓄電池と外部電源との切替の制御を行うことも可能である。
【0045】
符号221は送風手段であり、プラズマ発生手段の表面に風を送り、プラズマ発生手段220が発生させたプラズマに接触した気体を、より広範囲に拡散する際に使用される。この送風手段の駆動も制御手段200でコントロールされる。
【0046】
符号300はオゾン検出手段である。これは、プラズマに接触した気体がどの程度空間に充満しているかを判断するためのものであり、処理雰囲気の状態を計測できる手段であれば、特に、オゾン検出手段に拘らない。一般的にオゾン検出手段が入手し易いこともあり、処理雰囲気を構成する気体の一部であるオゾンを、ここでは検出している。
【0047】
オゾン検出手段300は、プラズマ発生手段220の近傍に設置すると、当該プラズマ発生手段が発生した局所的なオゾン濃度しか検出できないため、食料品を取り囲むより広い範囲の処理雰囲気の精確な状態(オゾン濃度)を検出することが困難となる。このため、オゾン検出手段300は、プラズマ発生手段220から離れた位置に配置される。また、プラズマ発生装置2とは切り離し、オゾン検出手段を独立して、パレット内又は保管設備内に配置することも可能である。この場合には、オゾン検出手段用に、電源ユニットや制御手段、検出結果を送信するための通信手段を設けることが必要である。
【0048】
符号400は通信手段であり、パソコン、スマートフォン、タブレット端末など、パレットの外部にある外部制御手段と通信を行うための部品であり、無線(公衆回線、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などのローカル無線ネットワーク、赤外線通信)又は有線などが利用可能である。通信手段400を用いて、制御手段200は外部制御手段(図9の符号CU)と情報の交換を行う。具体的には、外部からの制御信号を受け取り、プラズマ発生のために高電圧発生手段260を駆動(ON/OFF)したり、電源ユニットを切換える動作などを行う。また、電源ユニットの蓄電池の電力残量や、オゾン検出手段の検出結果、さらにはプラズマ発生手段の駆動状態を、外部制御手段に送信する。
【0049】
制御手段200は、オゾン検出手段300の検出結果や、通信手段400を介して得られた処理雰囲気の状態(例えば、他の場所のオゾン濃度)に基づき、自ら判断して、高電圧発生手段260や送風手段221の駆動を制御することも可能である。
また、制御手段200に、不図示の操作手段を接続し、例えば、制御手段が有する複数の制御モード(省エネ運転モード、プラズマ発生手段を制御するオゾン濃度の設定、オゾン検出手段の選択等)を切換えたり、不図示の表示手段(液晶表示装置、LEDセグメント表示手段、音声手段等)を接続し、プラズマ発生装置の動作状態を表示させるように構成しても良い。
【0050】
図9は保管設備60内に、パレット1を配置した状態を示しており、保管設備60内の処理雰囲気を最適に設定する管理方法を説明する図である。各パレット1には、プラズマ発生装置2A~2Dが設けられている。また、オゾン検出手段300Aと、300Bは、プラズマ発生装置2A、2Bに接続して配置され、オゾン検出手段300Eは、プラズマ発生装置2C,2Dとは独立して配置されている。さらに、オゾン検出手段300Fはパレット1の外部で、例えば、保管設備60の壁面等に設置されている。本発明において「空間内に配置されたオゾンセンサ」とは、オゾン検出手段300Fのみを意味するのではなく、パレットに組み込まれたオゾン検出手段(300A,300B,300E)も含む概念である。
【0051】
上述したようにプラズマ発生装置2A~2Dに組み込まれている制御手段を用いて、各プラズマ発生装置を自律的に制御することも可能であるが、ここでは外部制御手段CUを用いて、複数のプラズマ発生装置を連動させて処理雰囲気を制御する管理方法を説明する。なお、プラズマ発生装置内にある制御手段の一部が、この外部制御手段の機能を担うように構成することも可能である。
【0052】
オゾン検出手段(300A~300F)の検出結果を外部制御手段CUに集め、例えば、オゾンガス濃度を0.1ppm~500ppmに制御する。この数値範囲で最適値を設定し、オゾン検出手段の数値がその値になるように、プラズマ発生装置を選択的に駆動させる。
【0053】
保管設備60内の全体を最適な処理雰囲気にする際には、主にオゾン検出手段300Fの検出値を観察しながら、各プラズマ発生装置2A~2Dを選択的に駆動する。また、その際に、オゾン検出手段(300A,300B,300E)の検出値が500ppmを大きく超える場合には、青果物等の食料品に与えるダメージも危惧されるため、このような検出値を検出したパレット1においては、プラズマ発生装置の駆動を停止する。
【0054】
保管設備60内でパレット1が置かれた局所的な空間の処理雰囲気を制御する場合には、オゾン検出手段(300A,300B,300E)を使用する。特に、プラズマ発生装置の近傍に配置されたオゾン検出手段は、プラズマ発生装置の動作の影響を受けやすい。このため、オゾン検出手段300Eの検出値に基づき、他のパレットのプラズマ発生装置(2A,2B)を駆動制御するように構成することも可能である。各パレットのプラズマ発生装置を選択的に駆動させる際にも、同様に、他のパレットのオゾン検出手段の結果を参考にするように構成しても良い。
【0055】
上記説明では、プラズマによる殺菌等について説明したが、保管設備には、必要に応じて、特許文献1又は2のような照明を用いる方法や、特許文献3のように温度制御する方法などを組み合わせて用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明によれば、食料品の鮮度維持効果が高く、多様なサイズの保管・運搬設備にも柔軟に対応することが可能なパレット及びパレットを使用した食料品の管理方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 パレット
11 上面デッキプレート
11a 青果物等の載置面
11b 載置面に対する反対面
12 下面デッキプレート
13 隅桁部
14 中間桁部
15 空間(上面デッキプレートと下面デッキプレートの間)
16 隙間(隅桁部と中間桁部の間)
2 プラズマ発生装置
20 プラズマ発生手段
26 高電圧発生手段
27 電源ユニット
3 フォーク差込口
5 載置物
6 保管設備
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9