(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162483
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】部分超高圧によるダイカスト製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
B22D17/22 E
B22D17/22 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067389
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】510095651
【氏名又は名称】株式会社ダイレクト21
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】岩本 典裕
(72)【発明者】
【氏名】長澤 理
(72)【発明者】
【氏名】谷口 圭司
(57)【要約】
【課題】超高圧による意図した部分の密度を向上させるダイカスト製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】ダイカスト金型に複数の分岐ランナーを通じて溶湯を射出する1次加圧手段と、前記分岐ランナーから一部を選択し、あるいは新規に分岐ランナーを設け、更に単一ランナーによる場合には新規に分岐ランナーを形成し、この選択されまたは新規の分岐ランナーに取り付けられ前記1次加圧手段より高い圧力で加圧可能とする2次加圧手段と、前記1次加圧手段による溶湯製品充填完了後に前記2次加圧手段を作動させるスタート時間を設定する制御部と、前記2次加圧手段の加圧経路面に形成したオリフィスと、からなることを特徴とする部分超高圧によるダイカスト装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締された金型に1次加圧手段により複数の分岐ランナーを経由して溶湯の射出を行い、
密度向上を行いたい部分に連通する分岐ランナーを選択し、この分岐ランナーの途中に湯だまりが確保可能な部分となる加圧経路を設け、
製品方向へ向かう前記加圧経路にオリフィスを設けるとともに分岐ランナー内を溶湯の流れと同じ方向へ移動する2次加圧手段用の加圧ピンを設け、
前記1次加圧手段による射出完了後に当該2次加圧手段用加圧ピンにより加圧を行う、ことを特徴とする部分超高圧による意図した部分の密度を向上させるダイカスト製造方法。
【請求項2】
型締された金型に1次加圧手段により複数の分岐ランナーと、密度向上を行いたい部分につながる新たに設定された分岐ランナーとを経由して溶湯の射出を行い、
この新たな分岐ランナーの途中に湯だまりが確保可能な部分に加圧経路を設け、
製品方向へ向かう前記加圧経路にオリフィスを設けるとともに分岐ランナー内を溶湯の流れと同じ方向へ移動する2次加圧手段用の加圧ピンを設け、
前記1次加圧手段による射出完了後に当該2次加圧手段用加圧ピンによりランナー加圧を行うことを特徴とする部分超高圧による意図した部分の密度を向上させるダイカスト製造方法。
【請求項3】
単一ランナー構造の金型で密度向上を行いたい部分につながる分岐ランナーを新たに付加し、型締された金型に1次加圧手段によりランナーを経由して溶湯の射出を行い、
前記付加された分岐ランナーの途中に湯だまりが確保可能な部分に加圧経路を設け、
前記加圧経路にオリフィスを設けるとともに分岐ランナー内を溶湯の流れと同じ方向へ移動する2次加圧手段用の加圧ピンを設け、
前記1次加圧手段による射出完了後に当該2次加圧手段用加圧ピンにより加圧を行う、ことを特徴とする部分超高圧による意図した部分の密度を向上させるダイカスト製造方法。
【請求項4】
型締された金型に1次加圧手段により複数の分岐ランナーを経由して溶湯の射出を行い、
密度向上を行いたい部分に連通する分流子基部ランナーを選択し、この分岐ランナーの途中に湯だまりが確保可能な部分となる加圧経路を設け、
製品方向へ向かう前記加圧経路にオリフィスを設けるとともに分岐ランナー内を溶湯の流れと同じ方向へ移動する2次加圧手段用の加圧ピンを設け、
前記1次加圧手段による射出完了後に当該2次加圧手段用加圧ピンにより加圧を行う、ことを特徴とする部分超高圧による意図した部分の密度を向上させるダイカスト製造方法。
【請求項5】
前記2次加圧手段は、湯だまりを加圧ピンが塞ぐことと、前記オリフィスと加圧ピンの微小隙間によるメタルシールにより、1次加圧手段装置部分への2次加圧手段による圧力が伝わることを回避し、2次加圧手段での高圧による製品部分への加圧を可能とする請求項1~4のいずれか1に記載の部分超高圧による意図した部分の密度を向上させるダイカスト製造方法。
【請求項6】
前記1次加圧手段による射出完了後の2次加圧手段のスタート時間は、制御機構を設けて時間設定を可能とすることを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載の部分超高圧による意図した部分の密度を向上させるダイカスト製造方法。
【請求項7】
前記分岐ランナーに取り付けられる前記2次加圧手段の加圧ピンおよびその駆動用加圧シリンダーは金型の固定型側または移動型側のどちらかに設定することを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載の部分超高圧による意図した部分の密度を向上させるダイカスト製造方法。
【請求項8】
ダイカスト金型に複数の分岐ランナーを通じて溶湯を射出する1次加圧手段と、
前記分岐ランナーから一部を選択し、この選択された分岐ランナーに取り付けられ前記1次加圧手段より高い圧力で加圧可能とする2次加圧手段と、
前記1次加圧手段による溶湯製品充填完了後に前記2次加圧手段を作動させるスタート時間を設定する制御部と、
前記2次加圧手段の加圧経路面に形成したオリフィスと、
からなることを特徴とする部分超高圧によるダイカスト装置。
【請求項9】
ダイカスト金型に複数の分岐ランナーと、密度向上を図りたい部分につながる新たに設置された分岐ランナーとを経由して溶湯を射出する1次加圧手段と、
この新規分岐ランナーに取り付けられ前記1次加圧手段より高い圧力で加圧可能とする2次加圧手段と、
前記1次加圧手段による溶湯製品充填完了後に前記2次加圧手段を作動させるスタート時間を設定する制御機構と、
前記2次加圧手段の加圧経路面に形成したオリフィスと、
からなることを特徴とする部分超高圧によるダイカスト装置。
【請求項10】
ダイカスト金型に単一の分岐ランナーと、密度向上を図りたい部分につながる新たに設置された分岐ランナーとを経由して溶湯を射出する1次加圧手段と、
この新規分岐ランナーに取り付けられ前記1次加圧手段より高い圧力で加圧可能とする2次加圧手段と、
前記1次加圧手段による溶湯製品充填完了後に前記2次加圧手段を作動させるスタート時間を設定する制御機構と、
前記2次加圧手段の加圧経路面に形成したオリフィスと、
からなることを特徴とする部分超高圧によるダイカスト装置。
【請求項11】
ダイカスト金型に複数の分岐ランナーを通じて溶湯を射出する1次加圧手段と、
密度向上を行いたい部分に連通する分岐ランナー手前の分流子基部ランナーを選択し、 この選択された分流子基部ランナーに取り付けられ前記1次加圧手段より高い圧力で加圧可能とする2次加圧手段と、
前記1次加圧手段による溶湯製品充填完了後に前記2次加圧手段を作動させるスタート時間を設定する制御部と、
前記2次加圧手段の加圧経路面に形成したオリフィスと、
からなることを特徴とする部分超高圧によるダイカスト装置。
【請求項12】
前記2次加圧手段は固定金型と移動金型のパーティングラインすなわち接触面上を移動する加圧ピンを設けたことを特徴とする請求項8~11に記載の部分超高圧によるダイカスト装置。
【請求項13】
前記2次加圧手段は型締め方向と同じ方向に加圧可能となるよう設けたことを特徴とする請求項8~11に記載の部分超高圧によるダイカスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部分超高圧によるダイカスト製造方法及び装置に係り、特に金型の溶湯入口である分岐されたランナーに湯だまりを設け、超高圧加圧シリンダーを装着し、それに繋がる加圧ピンで押すことで製品部分の密度を向上させるダイカスト製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト製品の鋳造方法は、金型で作ったキャビティにアルミ等の溶湯をプランジャーで押し込み、キャビティに倣った形状に凝固させた製品を取り出して行う。製品として成形するときに巣が出来ないように、プランジャーを加圧動作することに合わせ、ランナーを更に加圧する方法が提案されている。
【0003】
ランナーは、プランジャーの押し出し方向に沿う分流子ランナーとこれに直交する立上りランナーとからなるが、ランナーの局部的な加圧を行うために、キャビティに直結する立上りランナーに出入りする加圧ピンを設け、プランジャーの加圧が完了した後にランナーの加圧ピンを作動させて更なる加圧を行うようにしている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1のようなものでは、キャビティに押し込まれた溶湯は固まりかけているため、ランナー加圧により押し込まれた溶湯が逆流してしまい、プランジャー側に押し戻されてしまって思ったようなキャビティ押し込み効果が得られなかった。このような観点から、特許文献2に掲げる技術が提案されており、立上りランナー部を形成する部材の内径と、加圧ピンの外径との間の隙間を、一様に0.5~3.0mmとして、逆流防止機能を発揮させるようにし、押し込み効果が得られるようにしたものである。一般に、環状隙間の流量Qは環状隙間Δの3乗に比例し、その長さLに反比例する。したがって隙間Δを小さくすることは重要である。しかし、立上りランナー部を形成する部材の内径と加圧ピンの外径との間の隙間Δを0.5~3.0mmとしているが、実際上、そのような円筒状隙間を形成することが困難となっており、隙間が大きくなってしまい、隙間長さLもある程度必要となっている。このため、加圧ピンを加圧挿入しても隙間Δを通じて溶湯が逆流し、プランジャーが押し戻されてしまい、予定するような逆流防止効果は得られないものであった。
【0005】
特に、従来法でキャビティによる製品形状に応じて複数の分岐ランナーからプランジャー射出を行う場合があり、この場合には特定の分岐ランナーから射出された製品部分に密度の低下が発生してしまう問題があった。また、分岐ランナーが巣の発生個所に接続されていない場合や、単一のランナーを介して製造する場合には一層困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-117411
【特許文献2】特開2011-224650
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に着目し、複数の分岐ランナーを介してプランジャーによる溶湯射出後にランナーの加圧を行うに際して、選択された分岐ランナー部を部分的に高圧で溶湯に圧力を加え続けて凝固させることで緻密なダイカスト製品を生産できる部分超高圧による意図した部分の密度を向上させるダイカスト製造方法及び装置を提供しようとするものである。また、付加的に新たな分岐ランナーを形成し、ここから2次加圧をすることで緻密なダイカスト製品を製造できるようにしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成したものである。すなわち、本発明に係る部分超高圧によるダイカスト方法は、型締された金型に1次加圧手段により複数の分岐ランナーを経由して溶湯の射出を行い、密度向上を行いたい部分に連通する分岐ランナーを選択し、この分岐ランナーの途中に湯だまりが確保可能な部分となる加圧経路を設け、製品方向へ向かう前記加圧経路にオリフィスを設けるとともに分岐ランナー内を溶湯の流れと同じ方向へ移動する2次加圧手段用の加圧ピンを設け、前記1次加圧手段による射出完了後に当該2次加圧手段用加圧ピンにより加圧を行う、ことを特徴とする。
【0009】
また、型締された金型に1次加圧手段により複数の分岐ランナーと、密度向上を行いたい部分につながる新たに設定された分岐ランナーとを経由して溶湯の射出を行い、この新たな分岐ランナーの途中に湯だまりが確保可能な部分に加圧経路を設け、製品方向へ向かう前記加圧経路にオリフィスを設けるとともに分岐ランナー内を溶湯の流れと同じ方向へ移動する2次加圧手段用の加圧ピンを設け、前記1次加圧手段による射出完了後に当該2次加圧手段用加圧ピンによりランナー加圧を行うようにすることもできる。
【0010】
更に、単一ランナー構造の金型で密度向上を行いたい部分につながる分岐ランナーを新たに付加し、型締された金型に1次加圧手段によりランナーを経由して溶湯の射出を行い、前記付加された分岐ランナーの途中に湯だまりが確保可能な部分に加圧経路を設け、前記加圧経路にオリフィスを設けるとともに分岐ランナー内を溶湯の流れと同じ方向へ移動する2次加圧手段用の加圧ピンを設け、前記1次加圧手段による射出完了後に当該2次加圧手段用加圧ピンにより加圧を行うようにしてもよい。
【0011】
また、型締された金型に1次加圧手段により複数の分岐ランナーを経由して溶湯の射出を行い、密度向上を行いたい部分に連通する分流子基部ランナーを選択し、この分岐ランナーの途中に湯だまりが確保可能な部分となる加圧経路を設け、製品方向へ向かう前記加圧経路にオリフィスを設けるとともに分岐ランナー内を溶湯の流れと同じ方向へ移動する2次加圧手段用の加圧ピンを設け、前記1次加圧手段による射出完了後に当該2次加圧手段用加圧ピンにより加圧を行う、ことを特徴とする部分超高圧による意図した部分の密度を向上させるダイカスト製造方法とすることが可能である。
【0012】
これらの場合において、前記2次加圧手段は、湯だまりを加圧ピンが塞ぐことと、前記オリフィスと加圧ピンの微小隙間によるメタルシールにより、1次加圧手段装置部分への2次加圧手段による圧力が伝わることを回避し、2次加圧手段での高圧による製品部分への加圧を可能とすることができる。
【0013】
また、前記1次加圧手段による射出完了後の2次加圧手段のスタート時間は、制御機構を設けて時間設定を可能とすればよい。
更に、前記分岐ランナーに取り付けられる前記2次加圧手段の加圧ピンおよびその駆動用加圧シリンダーは金型の固定型側または移動型側のどちらかに設定してもよい。
【0014】
本発明に係る超高圧によるダイカスト装置は、ダイカスト金型に複数の分岐ランナーを通じて溶湯を射出する1次加圧手段と、前記分岐ランナーから一部を選択し、この選択された分岐ランナーに取り付けられ前記1次加圧手段より高い圧力で加圧可能とする2次加圧手段と、前記1次加圧手段による溶湯製品充填完了後に前記2次加圧手段を作動させるスタート時間を設定する制御部と、前記2次加圧手段の加圧経路面に形成したオリフィスと、からなることを特徴とする。
【0015】
また、ダイカスト金型に複数の分岐ランナーと、密度向上を図りたい部分につながる新たに設置された分岐ランナーとを経由して溶湯を射出する1次加圧手段と、この新規分岐ランナーに取り付けられ前記1次加圧手段より高い圧力で加圧可能とする2次加圧手段と、前記1次加圧手段による溶湯製品充填完了後に前記2次加圧手段を作動させるスタート時間を設定する制御機構と、前記2次加圧手段の加圧経路面に形成したオリフィスと、から構成してもよい。
【0016】
更に、ダイカスト金型に単一のランナーと、密度向上を図りたい部分につながる新たに設置された分岐ランナーとを経由して溶湯を射出する1次加圧手段と、この新規分岐ランナーに取り付けられ前記1次加圧手段より高い圧力で加圧可能とする2次加圧手段と、前記1次加圧手段による溶湯製品充填完了後に前記2次加圧手段を作動させるスタート時間を設定する制御機構と、前記2次加圧手段の加圧経路面に形成したオリフィスと、からなるようにしてもよい。
【0017】
また、ダイカスト金型に複数の分岐ランナーを通じて溶湯を射出する1次加圧手段と、密度向上を行いたい部分に連通する分岐ランナー手前の分流子基部ランナーを選択し、この選択された分流子基部ランナーに取り付けられ前記1次加圧手段より高い圧力で加圧可能とする2次加圧手段と、前記1次加圧手段による溶湯製品充填完了後に前記2次加圧手段を作動させるスタート時間を設定する制御部と、前記2次加圧手段の加圧経路面に形成したオリフィスと、からなることを特徴とする部分超高圧によるダイカスト装置とすることができる。
【0018】
これらの場合において、前記2次加圧手段は固定型側に設け、あるいは、型締面に沿って加圧可能に設けてもよい。
【発明の効果】
【0019】
上記構成によれば、1次加圧手段としてプランジャーによる分岐ランナーを経て射出後に2次加圧手段としての加圧ピンによる溶湯加圧を行うようにしているため、2次加圧手段を設けたランナー以外の他のランナーはキャビティ入口のゲート部分が凝固して逆流を遮蔽する。同時に2次加圧手段の加圧通路では、当該一部の加圧通路に設けたオリフィスがその絞り効果によりメタルシールをなす。したがって、2次加圧手段では、適格な部分超高圧による加圧が可能となる。これにより部分的に超高圧による製品部分の加圧が可能となり、部分的に生じていた巣が解消されるのである。金型には分岐ランナーの内、密度を高くしたい箇所への分岐ランナーを選択したり、あるいは密度が高くしたい箇所へのランナーが設けられていない場所があればそこに分岐ランナーを新たに設置したり、更に、単一のランナーを持つ金型であれば新たに分岐ランナーを設けるようにしてもよい。かかる場合には確実に部分的に高圧の射出を2次加圧することができ、もって巣の発生のないダイカスト製品の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例に係る超高圧によるダイカスト製造装置によるダイカスト製品のランナーを含む射出された概略正面図である。
【
図3】分岐ランナー部分に取り付けられる2次加圧手段の断面図である。
【
図4】他の実施例に係る超高圧によるダイカスト製造装置によるダイカスト製品のランナーを含む射出された概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施例に係る部分超高圧によるダイカスト製造方法と製造装置を、図面を参照しつつ、詳細に説明する。なお、以下の説明は一つの実施例に過ぎず、本発明の趣旨を変えない限り、本発明には種々の変形例を含み得るものである。
【0022】
図1~2に本実施例に係る部分超高圧によるダイカスト製造装置により製造されたダイカスト製品、製品までの分岐ランナー、及びその特定の分岐ランナーに装着された超高圧加圧シリンダーの取付位置を表す概略正面図と概略側面図を示す。これらの図に示すように、ダイカスト製品10はプランジャー側から押し出されたビスケット12を前端とし、ビスケット12からキャビティに至る通路となるランナーが屈曲して上方に立上り(分流子基部ランナー14)、更に分岐して複数(図示の例では4つに分岐)のランナーが形成されており(分岐ランナー16a、16b、16c、16d)、ダイカスト製品10の4か所にゲート18a、18b、18c、18dを介して開口している。
【0023】
図1に示す左側の分岐ランナー16aから射出された溶湯が製品内で凝固するときに巣が発生しやすいとの問題をかかえていたため、この分岐ランナー16aを意図した製品部分に繋がるランナーとして選択し、ダイカスト製品10に必要な量の溶湯を1次加圧手段20(
図2参照)で射出した後に、当該選択された分岐ランナー16aに設けた2次加圧手段22(
図3参照)により、1次加圧の約4倍の超高圧で2次加圧を行うようにしている。
【0024】
図2~3を参照して1次加圧手段20及び2次加圧手段22を説明する。ダイカスト製造装置は、移動盤に取り付けた可動金型24と、固定盤に取り付けた固定金型26とを備え、両金型24、26を型締することにより形成されるキャビティ28内に溶湯を射出し、キャビティ28に倣った形状のダイカスト製品10ができあがる。製品10は金型24、26を離反させ、可動金型24の背面部に設けた押し出しピンを作動させてキャビティ28から取り出すことができる。
【0025】
このようなダイカスト製造装置のキャビティ28に溶湯を供給するため、1次加圧手段20の射出部として給湯手段がキャビティ28の下位に位置して配置されている。これは
図2に示されるように、1次加圧手段20は、固定盤を水平に貫通して取り付けられ固定金型26に達する射出スリーブ30と、当該射出スリーブ30内に配設されたプランジャー32と、このプランジャー32の後方にあってプランジャー32を押し引き出来る加圧装置(図示せず)と、から構成される。
【0026】
射出スリーブ30の前端上方にはキャビティ28に至る通路となるランナーが形成され、これは分岐前の分流子基部ランナー14と、4つの分岐ランナー16a、16b、16c、16dから構成され、これに続くゲート18a、18b、18c、18dによってキャビティ28に溶湯が射出されてダイカスト製品10が形成される。いま、このダイカスト製品10では、
図1の左端における分岐ランナー16aから射出した製品部分に巣が多く発生するという問題があったとする。
【0027】
そこで、この分岐ランナー16aを選択し、この選択された分岐ランナー16a部分で2次加圧を行うことにしている。この実施例では2次加圧手段22は、
図3に示すように、金型の型締面に配置されており、2次加圧手段22を構成している加圧ピン34の作動方向をプランジャー28の押し出し方向と直交する上向き方向となるように設定している。
【0028】
図3において、この選択分岐ランナー16aは、射出スリーブ30からほぼ垂直に延長された分流子基部ランナー14から分岐され斜め上方に向きを変えた第1分流子ランナー36と、これに続いて垂直に続く立上りランナー38とからなる屈曲形状としている。立上りランナー38は、最終的にキャビティ28の下部に直結するように上方向に向きを変えて接続され、プランジャー32によって押し出された溶湯が、分流子基部ランナー14を経由し、立上りランナー部38によって上方に向きを変え、ゲート18aからキャビティ28に射出噴射するように構成されている。この選択分岐ランナー16aにおける立上りランナー38における加圧ピン34のストローク量が2次加圧に必要な湯だまりとなる。
【0029】
このような分岐ランナー16aにおける第1分流子ランナー36には、キャビティ28内の溶湯を二次的に加圧せしめる2次加圧手段22が設けられている。2次加圧手段22は型締め面に沿って設けており、下部のアクチュエータ40と、これによって立上りランナー38(加圧経路)に沿って出入り動作するように取り付けられた加圧ピン34とから構成されている。加圧ピン34の直径dは立上りランナー38の内径Dより小さくして、加圧ピン34の立上りランナー38における上下摺動を可能としている。したがって、加圧ピン34の立上りランナー38への圧入量(押しのける湯だまり量)がキャビティ28による製品の密度を向上させることになる。
【0030】
ところで、本実施例では、特に、選択された分岐ランナー16aにおける第1分流子ランナー36と立上りランナー38の交差部(
図3のA-B区間)より第1分流子ランナー36側(
図3のB部分)に、その内径を絞るオリフィス44を形成している。これは立上りランナー38の内径部分に断面矩形の環状突起46を形成したもので、その環状突起46の高さをできるだけ加圧ピン34の外径dに合わせて、ここでメタルシールができるようにしている。具体的には、キャビティ28の大きさにもよるが、加圧ピン34と立上りランナー38における環状突起46との隙間は経験的に溶湯の凝固によるメタルシール効果が得られる1mm程度が望ましい。この最適な値は環状突起46の軸方向長さ・金型形状・射出圧力・速度によって異なるが、平均的に0.5mm~1.0mm程度となる場合が多い。また、環状突起46の軸方向長さLは高いメタルシール効果を得るには、平均的に10mm程度が多いが、金型形状・射出圧力・速度などによって異なる。これらによってメタルシールが確実に行われるようにしている。
【0031】
このように構成された2次加圧手段22は、1次加圧手段20のプランジャー32による射出が完了した後に、加圧ピン34が環状突起46に差し掛かると、オリフィス44部分に上位の溶湯が差し込んでメタルシールを形成し、その部分で遮蔽機能を発揮する。このため、このオリフィス44部分でのメタルシールによって、キャビティ28内への溶湯充填量が増し、加圧ピン34による押し込み動作により、ストロークが長くなって作業を完了するのである。
【0032】
この時、前記1次加圧手段20による射出完了後(約70MPa)の2次加圧手段22のスタート時間は、制御機構48を設けて時間設定を可能としているが、この場合、実施例では前記1次加圧手段による射出完了後、0.1秒前後遅れて2次加圧手段22をスタートさせるようにしている。実施例では0.1秒前後であるが、この遅れ時間の最適な値は金型形状、第一加圧圧力、加圧速度など諸条件によってmSecオーダで異なってくるためある程度の試行によって決定が必要であるが、本装置の時間設定はmSecオーダにより設定が可能としている。この時間設定は2次加圧手段22の設けられていない非選択分岐ランナー16b、16c、16dの射出口でのメタルシールが発揮される。溶湯が金型に接触して凝固し、接触していないところは半凝固になりかかっている状態である。したがって、この非選択分岐ランナー16b、16c、16dでのメタルシールを図りつつ、オリフィス44でメタルシールを図ることにより、2次加圧手段22による部分加圧を超高圧(約250MPa)で行うことができる。すなわち、1次加圧手段20の約4倍の部分加圧を可能としているのである。
【0033】
なお、オリフィス44を形成する環状突起46は、実施例のように角形断面としてもよいが、V字型、円弧型の断面形状とすることができる。この場合、V字型、円弧型の切っ先部分が鋭利となっているとメタルシールが取れないので、先端を削った形状とすることが望ましい。
【0034】
また、オリフィス44を形成している環状突起46には、冷却手段を配置することができる。これは水平方式・水冷方式でも、あるいは油冷方式でも可能で、1次加圧手段20による射出が完了し、2次加圧手段22による加圧が環状突起46にかかった時に冷却するとよい。こうすることによってメタルシールが形成しやすくなる。
【0035】
上記実施例ではオリフィス44を形成する環状突起46を別部品として形成し、ランナー16aを形成する際にはめ込み構造で取り付けるようにしてもよい。これは金型の分割線でランナー16aが縦に割れる構造であるため、半円構造とした立上りランナー38への装着が簡単にできるからである。
【0036】
また、上記実施例はホットチャンバーのランナーを押すことにも、またプラスチックを成形する際にも応用できる。
【0037】
このように本実施例によれば、キャビティ28への射出を1次加圧手段20により行い、ランナー16aに溶湯が充満した状態から少し遅れて2次加圧手段22を作動させる。そうすると、加圧ピン34が第1分流子ランナー部36と立上りランナー38の交差部(
図3A→B)に達する間は、通常の押し出し作用をなすが、第1分流子ランナー36が切れてオリフィス44に達した途端に環状突起46が部分に達し、隙間δでメタルシールにより溶湯金属が固化し、ここで圧力が遮断する。このとき非分岐選択bランナー16b~16dの射出口では凝固状態となっており、口が塞がれる。したがって、加圧ピン42の上位に位置するまだ固まらないキャビティ28側のランナー溶湯は遮断された圧力を背景にキャビティ28側に押し込まれる。
【0038】
これによって、加圧ピン34を、従来のストロークより多く前進させることができ、2次加圧手段22により、部分的に強度が高く、より緻密な製品を製造することができる。この時の効果は同じ容積のキャビティ28に溶湯を充填した場合、1.7%の重量増となり、この業界では驚異的な値となっている。
【0039】
上記実施例では2次加圧手段22をプランジャストローク直角方向(型締め面)に沿って配置する例を示したが、2次加圧手段22を固定金型26側に沿って加圧可能に設けてもよい。この第2実施例を
図4、5に示す。この例は製品部33が平板形状となっているため型締ラインは板面に直角となる。そして、1次加圧手段20であるプランジャー32は図中手前側から奥側に移動するように構成され、4つの分岐ランナー16a、16b、16c、16dからの経路を経て、ダイカスト製品10に押し出されるものとなる。1次加圧手段20による押し出し完了後に行われる2次加圧手段22は、選択された分岐ランナー16aにプランジャー32の作動方向と平行に形成されたランナー部を形成し、この平行ランナー50に取り付けられ、プランジャー32と平行に加圧するものとなっている。このケースの場合は、平行ランナー50にオリフィス44を設け、これを加圧ピン34が摺動することになる。この2次加圧手段22による加圧スタート時間も1次加圧手段20による射出完了後に少し遅れ、制御機構48に設定された遅れ時間後に作動するように構成する。これによって、2次加圧手段22による部分超高圧(250MPa)が可能となるのである。
【0040】
なお、
図4~5に示した例では、2次加圧手段22は固定型内にアクチュエータ40とともに加圧ピン34を取り付けているが、これで収まらない場合には、固定盤側にアクチュエータ40を延長して配置するようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施例では当初から製品に分岐ランナー16a~16dがある場合を想定しているが、製品に分岐ランナー部とは別に新たな巣が比較的多く発見される場合には、当該箇所に向けて新規分岐ランナーを設け、この新規ランナー部分を2次加圧手段22により、プランジャー圧(約70MPa)より高い部分加圧(約250MPa)を発揮するようにしてもよい。また、単一のランナーで製品を形成する金型の場合には、新規にランナー部を形成し、ここに2次加圧手段22を形成することによっても部分的に巣の形成を防止でき、製品ごとに細やかに対応することが可能である。
【0042】
更に、前記密度を上げたい箇所に通じている分岐ランナーが複数あった場合、これらをまとめる分流子基部ランナーとし、この分流子基部ランナーに2次加圧手段を設け、これによって複数の分岐ランナーを2次加圧することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ダイカスト製造を1次加圧手段のプランジャー加圧に引き続き、選択された、若しくは新規のランナーを選択して強度が必要な部分の加圧を2次加圧手段により実施でき、製品密度を向上できる方法と装置である。
【符号の説明】
【0044】
10……ダイカスト製品、12……ビスケット、14……分流子基部ランナー、16a、16b、16c、16d……分岐ランナー、18a、18b、18c、18d……ゲート、20……1次加圧手段、22……2次加圧手段、24……可動金型、26……固定金型、28……キャビティ、30……射出スリーブ、32……プランジャー、34……加圧ピン、36……第1分流子ランナー、38……立上りランナー、40……アクチュエータ、44……オリフィス、46……環状突起、48……制御機構、50……平行ランナー。