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特開2022-162488多層配線基板及び多層配線基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162488
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】多層配線基板及び多層配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067404
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 普崇
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA43
5E316BB16
5E316CC04
5E316CC08
5E316CC32
5E316DD02
5E316DD12
5E316DD25
5E316DD32
5E316DD33
5E316EE33
5E316FF07
5E316FF15
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH40
5E316JJ06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属バリの発生を抑えることが可能な多層配線基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】多層配線基板の厚さ方向の途中に位置する第1の導電層13Aよりも、表裏の一方の面である第1面10F側の一部が除去されて、第1面に開口し、かつ、第1の導電層が底面に露出するキャビティ20を有する多層配線基板10であって、キャビティを多層配線基板の第1の側面10Mに開放する側面開口20Kと、キャビティの底面20Mのうち、側面開口側の縁部が切削加工されてなる段差部34と、を備える。第1の導電層よりも、多層配線基板の表裏の他方の面である第2面10S側に配置される導電層のうち、キャビティの底面に対して最も近くに位置する導電層13Bは、段差部の段差面38よりも第1の側面から離れている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層配線基板のうち厚さ方向の途中に位置する第1の導電層よりも多層配線基板の表裏の一方の面である第1面側の一部が除去されて、前記第1面に開口しかつ前記第1の導電層が底面に露出するキャビティを有する多層配線基板であって、
前記キャビティを前記多層配線基板の第1の側面に開放する側面開口と、
前記キャビティの底面のうち前記側面開口側の縁部が切削加工されてなる段差部と、を備え、
前記第1の導電層よりも前記多層配線基板の表裏の他方の面である第2面側に配置される導電層のうち前記キャビティの底面に対して最も近くに位置する導電層は、前記段差部の段差面よりも前記第1の側面から離れている。
【請求項2】
請求項1に記載の多層配線基板であって、
前記第1の導電層よりも前記第2面側に配置される導電層のうち前記キャビティの底面に対して最も近くに位置する導電層は、前記段差部の段差面よりも、前記第1の側面から300μm以上離れている。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多層配線基板であって、
前記第1の導電層よりも前記第2面側に配置される全ての導電層は、前記段差部の段差面よりも前記第1の側面から離れている。
【請求項4】
請求項3に記載の多層配線基板であって、
前記第1の導電層よりも前記第2面側に配置される全ての導電層は、前記段差部の段差面よりも、前記第1の側面から300μm以上離れている。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1の請求項に記載の多層配線基板であって、
前記段差部の下段面は、多層配線基板に含まれる絶縁層の厚さ方向の途中に位置している。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1の請求項に記載の多層配線基板であって、
前記キャビティの底面の外縁部に形成され、前記段差部と共に前記キャビティの底面の前記第1の導電層を囲み、前記段差部の前記下段面に連続する溝底面を有する切削加工溝を備える。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1の請求項に記載の多層配線基板であって、
前記第1の導電層のうち前記キャビティの底面に露出する部分は、部品搭載用のパッドを形成している。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1の請求項に記載の多層配線基板であって、
前記キャビティは、平面視四角形状をなし、前記キャビティの一辺のみに前記側面開口を備える。
【請求項9】
多層配線基板の表裏の一方の面である第1面から前記多層配線基板の厚さ方向の途中の第1の導電層を通過する位置までルータを突入しかつ閉ループの軌跡を描くようにルータを走らせてから、前記閉ループの内側部分における前記第1の導電層より前記第1面側の部分を除去し、前記第1面に開口しかつ前記第1の導電層を底面に露出させかつ前記底面の縁部に切削加工溝を有するキャビティを形成することを含む多層配線基板の製造方法であって、
前記第1の導電層よりも前記表裏の他方の面である第2面側に配置される導電層のうち前記第1の導電層に対して最も近くに位置する第2の導電層を、多層配線基板の第1の側面から第1距離以上離れた配置にすることと、
前記閉ループの一部に多層配線基板の前記第1の側面側の外縁部が含まれかつ、その外縁部では前記第1の側面から前記第1距離未満の距離に収まる範囲が切削されるようにルータを走らせて、前記キャビティに、前記第1の側面に前記キャビティを開放する側面開口と、前記切削開口溝が前記側面開口側に開放されてなる段差部とを形成することと、を含む。
【請求項10】
請求項9に記載の多層配線基板の製造方法であって、
前記第1の導電層よりも前記第2面側に配置される全ての導電層を、前記第1の側面から前記第1距離より離れた配置にすることを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャビティを有する多層配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の多層配線基板として、多層配線基板の一部を除去してキャビティを形成するために切削加工が行われるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-146983号公報(図1図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した多層配線基板に対し、キャビティを多層配線基板の一側面に開口した構造にしたいという要請がある。しかしながら、そのような構造では、キャビティの側面開口における導電層の一部が金属バリとなって多層配線基板に残り、その金属バリが後工程で離脱して不具合が発生することが懸念される。そこで、本開示では、金属バリの発生を抑えることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る多層配線基板は、多層配線基板のうち厚さ方向の途中に位置する第1の導電層よりも多層配線基板の表裏の一方の面である第1面側の一部が除去されて、前記第1面に開口しかつ前記第1の導電層が底面に露出するキャビティを有する多層配線基板であって、前記キャビティを前記多層配線基板の第1の側面に開放する側面開口と、前記キャビティの底面のうち前記側面開口側の縁部が切削加工されてなる段差部と、を備え、前記第1の導電層よりも前記多層配線基板の表裏の他方の面である第2面側に配置される導電層のうち前記キャビティの底面に対して最も近くに位置する導電層は、前記段差部の段差面よりも前記第1の側面から離れている。
【0006】
本開示の一態様に係る多層配線基板の製造方法は、多層配線基板の表裏の一方の面である第1面から前記多層配線基板の厚さ方向の途中の第1の導電層を通過する位置までルータを突入しかつ閉ループの軌跡を描くようにルータを走らせてから、前記閉ループの内側部分における前記第1の導電層より前記第1面側の部分を除去し、前記第1面に開口しかつ前記第1の導電層を底面に露出させかつ前記底面の縁部に切削加工溝を有するキャビティを形成することを含む多層配線基板の製造方法であって、前記第1の導電層よりも前記表裏の他方の面である第2面側に配置される導電層のうち前記第1の導電層に対して最も近くに位置する第2の導電層を、多層配線基板の第1の側面から第1距離以上離れた配置にすることと、前記閉ループの一部に多層配線基板の前記第1の側面側の外縁部が含まれかつ、その外縁部では前記第1の側面から前記第1距離未満の距離に収まる範囲が切削されるようにルータを走らせて、前記キャビティに、前記第1の側面に前記キャビティを開放する側面開口と、前記切削開口溝が前記側面開口側に開放されてなる段差部とを形成することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態の多層配線基板の側断面図
図2】多層配線基板の平面図
図3】多層配線基板の製造工程を示す拡大側断面図
図4】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図5】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図6】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図7】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図8】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図9】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図10】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図11】多層配線基板の製造工程を示す平面図
図12】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図13】多層配線基板の製造工程を示す側断面図
図14】多層配線基板の製造工程を示す拡大側断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示されるように、本開示の一実施形態の多層配線基板10は、絶縁層と導電層が交互に積層される積層構造を有する。具体的には、多層配線基板10の積層構造では、コア基板11の表裏の一方の面である第1面11F上に第1ビルドアップ部12Aが積層され、コア基板11の表裏の他方の面である第2面11S上に第2ビルドアップ部12Bが積層されている。
【0009】
コア基板11は、絶縁層としての絶縁性基材11Kに表裏の両側(第1面11F側と第2面11S)から導電層13A,13Bが積層されてなる。第1面11Fの導電層13Aと、第2面11Sの導電層13Bとは、それぞれ所定パターンに形成され、絶縁性基材11Kを貫通するスルーホール導体14によって接続されている。なお、以下では、第1面11Fの導電層13Aを「第1の導電層13A」、第2面11Sの導電層13Bを「第2の導電層13B」と適宜いうこととする。
【0010】
第1ビルドアップ部12Aと第2ビルドアップ部12Bは、それぞれコア基板11側から層間絶縁層15と導電層16とが交互に積層されている構造を有する。隣り合う導電層16同士は、層間絶縁層15を貫通する複数のビア導体15Dによって接続されている。ビア導体15Dは、コア基板11に近づくにつれて縮径されるテーパー状になっている。層間絶縁層15は、例えば、プリプレグ(ガラスクロス等の繊維からなる心材を樹脂含侵してなるBステージの樹脂シート)又はビルドアップ基板用の絶縁フィルム(心材を有さず、例えば、無機フィラーを含む熱硬化性樹脂からなるフィルム)で構成されている。
【0011】
第1ビルドアップ部12A及び第2ビルドアップ部12Bの導電層16のうち最も外側(最もコア基板11から離れた側)に配置される最外の導電層16上には、ソルダーレジスト層17が形成されている。各ソルダーレジスト層17は、多層配線基板10の最外層を構成する。ソルダーレジスト層17には、開口部17Aが形成され、上記最外の導電層16のうち開口部17Aによってソルダーレジスト層17から露出する部分によりパッド18が形成されている。
【0012】
多層配線基板10の表裏の一方の面である第1面10Fには、キャビティ20が開口している。キャビティ20は、多層配線基板10のうち厚さ方向の途中に位置する導電層(本実施形態では、コア基板11の第1の導電層13A)より第1面10F側の一部が除去されてなる。本実施形態では、キャビティ20は、第1ビルドアップ部12Aを貫通し、キャビティ20の底面20Mに、コア基板11の第1面11Fを露出させている。具体的には、キャビティ20の底面20Mには、コア基板11の第1の導電層13Aが露出し、その露出部分により、部品搭載用のパッド21が形成されている。本実施形態の例では、第1の導電層13Aの上記露出部分は、ベタパターンになっている。なお、パッド21には、キャビティ20に収容される電子部品100が搭載される。
【0013】
キャビティ20には、多層配線基板10の第1の側面10Mに開口する側面開口20Kが形成されている。図2に示されるように、本実施形態では、キャビティ20は、平面視四角形状をなし、キャビティ20の1辺のみに、側面開口20Kが設けられている。キャビティ20は、キャビティ20の残りの3辺側からは、第1ビルドアップ部12Aに囲まれている。
【0014】
図1及び図2に示されるように、キャビティ20の底面20Mのうち側面開口20K側の縁部には、段差部34が形成されている。本実施形態の例では、段差部34は、キャビティ20の底面20Mの上記開放されている1辺の縁部が、段付き状に陥没するように切削加工されてなり、上記1辺に直線状に延びている。詳細には、段差部34の段差面38が、ルータの側面により切削され、段差部34において段差面38により一段下げられた下段面34Mが、ルータの先端面により切削されている。下段面34Mは、多層配線基板10の第1の側面10Mと連絡されている。本実施形態の例では、段差部34の下段面34Mは、コア基板11の絶縁性基材11Kの厚さ方向の途中に位置している。
【0015】
なお、本実施形態の例では、キャビティ20の内壁面40が、切削加工により形成される切削加工面になっている。例えば、この切削加工面は、ルータの側面加工で形成される。キャビティ20の内壁面40は、キャビティ20のうち側面開口20Kが設けられていない3辺に設けられている。
【0016】
なお、本実施形態の例では、キャビティ20の底面20Mの外縁部には、溝30が形成されている。溝30は、ルータの先端部により形成された切削加工溝になっている。溝30(詳細には、溝30の内面)は、キャビティ20の内壁面40に連続して形成されている。溝30の内面は、溝底面30Mと、溝30の溝幅方向で対向する溝外周面30G及び溝内周面30Nと、からなる。溝外周面30Gは、キャビティ20の内壁面40の延長上に配置されていて、内壁面40と連続している。本実施形態の例では、溝30は、キャビティ20のうち側面開口20Kが設けられていない3辺に設けられている。溝30は、段差部34と連絡されて、段差部34と共にキャビティ20の底面20Mの中央部分を包囲している。
【0017】
なお、本実施形態の例では、キャビティ20の底面20Mのうち段差部34と溝30とに囲まれた四角形状の部分全体が、上述の部品搭載用のパッド21になっている。なお、段差部34と溝30とに囲まれた部分の一部のみにパッド21が設けられていてもよい。
【0018】
本実施形態の例では、段差部34の下段面34Mと、溝30の溝底面30Mとは、コア基板11の第1面11Fから同じ深さに配置されて(図1参照)、連続している。段差部34と溝30は、コア基板11の第1の導電層13Aを貫通する深さに形成されている。本実施形態の例では、段差部34の下段面34と溝30の溝底面30Mは、コア基板11の絶縁性基材11Kの厚さ方向の途中に位置している。従って、段差部34の下段面34Mと溝30の溝底面30Mとには、絶縁性基材11Kが露出していて、導電層は露出していない。
【0019】
図1に示されるように、コア基板11の第1の導電層13Aよりも、多層配線基板10の表裏の他方の面(第1面10Fと反対側の面)である第2面10S側には、複数の導電層が設けられている。図3に示されるように、これら複数の導電層のうち、キャビティ20の底面20Mに最も近くに位置する導電層、即ち、コア基板11の第2の導電層13Bは、多層配線基板10の厚さ方向に段差部34が投影された領域から離れて配置されている。具体的には、第2の導電層13Bは、段差部34の段差面38よりも第1の側面10Mから離れていて、第2の導電層13Bと第1の側面10Mとの間の距離L1が、段差部34の段差面38と第1の側面10Mとの間の距離L2よりも長くなっている。例えば、第2の導電層13Bは、段差部34の段差面38よりも、第1の側面10Mから300μm以上離れていることが好ましい(即ち、距離L1と距離L2の差が、300μm以上であることが好ましい)。
【0020】
本実施形態の例では、第1の導電層13Aよりも多層配線基板10の第2面10S側に位置する全ての導電層(即ち、第2の導電層13Bと、導電層16)は、多層配線基板10の厚さ方向に段差部34が投影された領域に対して離れて配置されている。具体的には、これら全ての導電層は、段差部34の段差面38よりも第1の側面10Mから離れている。つまり、これら全ての導電層と第1の側面10Mとの距離のうち最小の距離(本実施形態では、距離L1)が、段差部34の段差面38と第1の側面10Mとの間の距離L2よりも長くなっている。従って、段差部34の段差面38には、絶縁層(本実施形態の例では、絶縁性基材11K)が露出していて、第2の導電層13B等の導電層は露出していない。なお、例えば、第1の導電層13Aよりも第2面10S側に位置する全ての導電層は、段差部34の段差面38よりも、第1の側面10Mから300μm以上離れていることが好ましい。
【0021】
なお、本実施形態の例では、第1の導電層13Aよりも第2面10S側に位置する導電層(第2の導電層13B及び導電層16)は、多層配線基板10の厚さ方向で溝30と重ならないように配置されている。これら導電層は、多層配線基板10の厚さ方向に溝30が投影された領域に対して、間隔Xを開けて配置されている(例えば、間隔Xは、300μm以上であることが好ましい)。従って、溝30の内面のうち溝外周面30G及び溝内周面30N面には、絶縁層(本実施形態の例では、絶縁性基材11K)が露出していて、導電層は露出していない。
【0022】
本実施形態の多層配線基板10は、例えば、以下のようにして製造される。
(1)図4(A)に示されるように、絶縁性基材11Kの表裏の両面に銅箔11Cがラミネートされている銅張積層板11Zが用意される。なお、絶縁性基材11Kは、例えば、エポキシ樹脂又はBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂と、ガラスクロスとを含んでいる。
【0023】
(2)図4(B)に示されるように、銅張積層板11Zの両面にレーザが照射され貫通孔14Hが形成される。
【0024】
(3)無電解めっき処理が行われ、銅箔11C上と貫通孔14Hの内面に無電解めっき膜(図示せず)が形成される。
【0025】
(4)図4(C)に示されるように、表裏の銅箔11C上の無電解めっき膜上に、所定パターンのめっきレジスト50が形成される。なお、めっきレジスト50は、後述するように、絶縁性基材11が切断される面でありかつ多層配線基板10の第1の側面10Mが形成される切断予定面Mから、第2の導電層13Bが第1距離D1以上離れて形成されるように配置される。
【0026】
(5)電解めっき処理が行われ、図4(D)に示されるように、電解めっきが貫通孔14H内に充填されてスルーホール導体14が形成されると共に、銅箔11C上の無電解めっき膜(図示せず)のうちめっきレジスト50から露出している部分に電解めっき膜13Dが積層される。
【0027】
(6)めっきレジスト50が除去されると共に、めっきレジスト50の下方の無電解めっき膜(図示せず)及び銅箔11Cが除去される。すると、図5(A)に示されるように、残された電解めっき膜13D、無電解めっき膜及び銅箔11Cにより、絶縁性基材11Kの表裏の一方の面と他方の面とに、それぞれに第1の導電層13Aと第2の導電層13Bが形成される。このとき、第2の導電層13Bは、切断予定面Mから第1距離D1よりも離れた位置に形成される。また、第1の導電層13Aと第2の導電層13Bとがスルーホール導体14によって接続される。このようにして、コア基板11が形成される。
【0028】
(7)図5(B)に示されるように、コア基板11の第1面11F上の一部に剥離層51が敷設される。剥離層51は、例えば、剥離フィルムで構成され、四角形状になっている。剥離層51は、剥離層51の1辺の外縁部が上記切断予定面Mに沿うように配置される。なお、例えば、コア基板11の第1の導電層13Aは、剥離層51全体の下に配置されるように形成しておく。
【0029】
(8)図5(C)に示されるように、コア基板11の両面に層間絶縁層15としてのプリプレグと銅箔52が積層されてから、加熱プレスされる。すると、コア基板11の両面上に層間絶縁層15が形成される。なお、上記加熱プレスの際、コア基板11の表裏の両面において、導電層13A,13Bのパターンの非形成部分がプリプレグの樹脂により埋められる。なお、層間絶縁層15として、プリプレグの代わりにビルドアップ基板用の絶縁フィルムを用いてもよい。この場合、ビルドアップ基板用の絶縁フィルムの上に、銅箔52を積層することなく、直接、後述の(11)における無電解めっき処理により無電解めっき膜を形成することができる。
【0030】
(9)図6(A)に示すように、コア基板11の両面の層間絶縁層15に、レーザが照射されて、層間絶縁層15を貫通する複数のビアホール15Hが形成される。例えば、これら複数のビアホール15Hは、剥離層51に対してコア基板11の板面方向(厚さ方向と直交する方向)にずれた位置に形成される。
【0031】
(10)無電解めっき処理が行われ、各層間絶縁層15上に積層されている銅箔52上と、ビアホール15Hの内面とに無電解めっき膜(図示せず)が形成される。
【0032】
(11)図6(B)に示すように、各層間絶縁層15に積層されている銅箔52上の無電解めっき膜上に、所定パターンのめっきレジスト53が形成される。めっきレジスト53は、コア基板11の第2面11S側の導電層16が、切断予定面Mから第1距離D1よりも離れて形成されるように配置される。また、例えば、めっきレジスト53は、下記(13)で、導電層16が、剥離層51の真上に形成されないように、層間絶縁層15のうち剥離層51の真上に配置される部分全体を覆うように形成される。
【0033】
(12)電解めっき処理が行われ、電解めっきがビアホール15H内に充填されてビア導体15Dが形成される(図7(A)参照)。次いで、めっきレジスト53が剥離されると共に、めっきレジスト53の下側の無電解めっき膜及び銅箔52が除去される。すると、図7(B)に示すように、層間絶縁層15上に残された電解めっき膜16D、無電解めっき膜及び銅箔52により、導電層16が形成される。このとき、コア基板11の第2面11S側の導電層16は、切断予定面Mから第1距離D1以上(例えば、300μm以上)離れた位置に形成される。
【0034】
(13)上述した(9)~(12)と同様の工程が繰り返され、図8に示すように、コア基板11の導電層13上に層間絶縁層15と導電層16とが交互に所定の層数ずつ積層される。また、積層方向で隣り合う導電層16同士が、層間絶縁層15を貫通するビア導体15Dによって接続される。これにより、コア基板11の第1面11F上に第1ビルドアップ部12Aが形成されると共に、コア基板11の第2面11S上に第2ビルドアップ部12Bが形成される。
【0035】
(14)図9に示されるように、コア基板11から表裏の両側で最も離れている最外の導電層16上にそれぞれソルダーレジスト層17が積層される。
【0036】
(15)図10に示されるように、コア基板11の表裏の両面のソルダーレジスト層17の所定箇所に、例えば、レーザ加工やフォトリソグラフィー処理により、開口部17Aが形成される。そして、最外の導電層16のうち開口部17Aによりソルダーレジスト層17から露出した部分でパッド18が形成される。
【0037】
(16)図11に示されるように、第1ビルドアップ部12A上のソルダーレジスト層17の上から剥離層51を通過して第1の導電層13Aを通過する位置まで(例えば、コア基板11の途中まで)ルータ60が突入する。そして、閉ループの軌跡を描くようにルータ60が走らされる。具体的には、ルータ60は、剥離層51の外縁部に沿って四角形の枠状に走らされ、環状の凹部54が形成される。この環状の凹部54の1辺部は、上記切断予定面Mと重なる。言い換えれば、上記閉ループに、多層配線基板10の第1の側面10M側の外縁部となる部分が含まれるように、ルータ60が走らされる。そして、環状の凹部54の上記1辺部は、切断予定面Mから第1距離D1未満の距離に収まる範囲が切削されることで形成される。また、第2の導電層13Bと第2のビルドアップ部12Bの全ての導電層16とは、コア基板11の厚さ方向から見たときに、環状の凹部54と重ならないように形成され、環状の凹部54から離れて(例えば、300μm以上離れて)配置される。なお、ルータ60は、その回転軸方向が、コア基板11の厚さ方向となるように配置される。
【0038】
(17)層間絶縁層15、導電層16、ソルダーレジスト層17、及び剥離層51のうち、環状の凹部54の内側に配置される部分が除去されて、キャビティ20が形成される(図12及び図13参照)。すると、コア基板11の第1面11Fの導電層13のうち環状の凹部54の内側に配置されていた部分が露出して、その露出部分によりパッド21が形成される。また、凹部54のうち導電層13(パッド21)より深い部分がパッド21を取り囲む環状の切削加工溝30Aとなって残される。このようにして、親基板90が得られる。
【0039】
(18)次に、親基板90をルータ60により切断予定面Mで切断して多層配線基板10を形成する。図12及び図13に示されるように、切断予定面Mは、親基板90のうち、切削加工溝30Aの1辺部において溝幅方向の途中位置に設定される。切断予定面Mで親基板90が切断されると、この切断面から、多層配線基板10の第1の側面10Mが形成されると共に(図1及び図2参照)、キャビティ20を第1の側面10Mに開放する側面開口20Kが形成される。また、ルータ60により切断された切削加工溝30Aの1辺部の残った部分が多層配線基板10の第1の側面10Mに開放されて段差部34が形成されると共に、切削加工溝30Aの残りの3辺部が上述の溝30として残される。このとき、第2の導電層13Bは、段差部34の段差面38よりも第1の側面10Mから離れた状態に形成される。なお、親基板90を切断するルータは、上記(16)においてキャビティ20の内壁面40及び溝30を形成するためのルータ60とは異なるものであってもよい。
【0040】
(19)パッド21に、例えば、Ni/Pd/Auめっきや有機保護膜(OSP)の形成等の表面処理がなされる。以上により、多層配線基板10が完成する。
【0041】
本実施形態の多層配線基板10の構造及びその製造方法に関する説明は以上である。次に多層配線基板10の作用効果について説明する。本実施形態の多層配線基板10では、キャビティ20の底面20Mのうち側面開口20K側の縁部が切削加工されてなる段差部34を有するので、この多層配線基板10を製造する際には、キャビティ20の底面20Mに露出する第1の導電層13Aを通過する位置まで、切削加工を行うルータ60が突入することになる。これにより、キャビティ20の底面20Mの第1の導電層13Aの一部が金属バリとなって多層配線基板10に残ることを防ぐことが可能となる。また、多層配線基板10のうち、第1の金属層13Aよりも第2面10S側で、キャビティ20の底面20Mに対して最も近くに位置する第2の導電層13Bは、キャビティ20の側面開口20Kが開口する第1の側面10Mから段差部34の段差面38よりも離れている。従って、ルータ60の多層配線基板10に対する突入深さのばらつきにより、ルータ60の先端が第2の導電層13Bの深さとなっても、第2の導電層13Bがルータ60で切削されることを防ぐことが可能となり、第2の導電層13Bが金属バリとして多層配線基板10に残ることを防ぐことが可能となる。これらにより、本実施形態の多層配線基板10では、金属バリの発生を抑えることができる。なお、第2の導電層13Bが、段差部34の段差面38よりも第1の側面10Mから300μm以上離れている構成とすれば、金属バリの発生をより抑制可能となる。
【0042】
本実施形態の多層配線基板10では、段差部34の下段面34Mに絶縁層(絶縁性基材11K)が露出し、導電層(第2導電層13B)が露出しない。従って、キャビティ20の底面20Mの部品搭載用のパッド21にめっき処理が行われる場合に、段差部34の下段面34Mにめっきが析出することを抑制可能となる。また、溝30の溝底面30Mにも、導電層(第2の導電層13B)が露出しないので、パッド21にめっき処理が行われる場合に、溝30の溝底面30Mにめっきが析出することを抑制可能となる。
【0043】
[他の実施形態]
(1)キャビティ20が、四角形状の多層配線基板10の角部に設けられてもよい。この場合、平面視四角形状のキャビティ20の2辺が開放され、この2辺に側面開口20Kが形成される。キャビティ20の残りの2辺には、内壁面40が形成される。なお、キャビティ20の3辺が開放されてもよい。
【0044】
(2)上記実施形態では、キャビティ20が、平面視四角形状であるが、これに限定されず、例えば、四角形以外の多角形状であってもよい。この場合でも、キャビティ20を多層配線基板10の第1の側面10Mに開放する側面開口20Kが設けられていればよい。
【0045】
(3)上記実施形態において、多層配線基板10を形成するための親基板90の切断を、ルータの代わりにカッターで行ってもよい。
【0046】
(4)上記実施形態において、キャビティ20の底面20Mに、溝30が設けられていなくてもよい。
【0047】
(5)上記実施形態の多層配線基板の製造方法では、ルータ60が、コア基板11まで突入しているが、ルータ60がコア基板11とは別の層間絶縁層15まで突入して、段差部34の下段面34Mが、その層間絶縁層15に形成されていてもよい。また、キャビティ20の底面20Mにコア基板11が配置されていなくてもよく、キャビティ20の底面20Mが、第1ビルドアップ部12Aに設けられていてもよいし、第2ビルドアップ部12Bに設けられていてもよい。また、コア基板11が設けられていなくてもよい。
【0048】
(6)上記実施形態では、第1の導電層13Aよりも第2面10S側の導電層(導電層13B及び導電層16)の全てが、段差部34の下段面34Mに重ならない位置に配置されていたが、それら導電層のうち少なくとも1つの導電層が、下段面34Mに多層配線基板10の板面方向(厚さ方向と直交する方向)で重なっていてもよい。
【0049】
(7)上記実施形態では、パッド21が、キャビティ20の底面20Mのうち外縁部を除く全体に設けられていたが、キャビティ20の底面20Mのうち外縁部を除く一部にのみ設けられていてもよい。
【0050】
(8)上記実施形態では、キャビティ20の4辺部を、ルータ60で形成しているが、例えば、キャビティ20の4辺部のうち第1の側面10Mに開放される1辺部のみをルータ60で形成し、キャビティ20の残りの3辺部をレーザ加工により形成してもよい。即ち、環状の凹部54のうち第1の側面10Mに開放される1辺部を少なくともルータ60により形成し、環状の凹部54の残りの部分を、レーザ照射により形成してもよい。
【0051】
(9)上記実施形態では、環状の凹部54に囲まれる部分の除去を、剥離により行っているが、例えば、レーザ照射により行ってもよい。
【0052】
(10)上記実施形態では、多層配線基板10が、親基板90が切断されて形成されていたが、親基板90が切断されずに親基板90の縁部にキャビティ20が形成されることで、キャビティ20が第1の側面10Mに開放された多層配線基板10が形成されてもよい。
【0053】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0054】
10 多層配線基板
10F 第1面
10S 第2面
13A 第1の導電層
13B 第2の導電層
20 キャビティ
20M 底面
20K 側面開口
21 パッド
30 溝
34 段差部
34M 下段面
38 段差面
60 ルータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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