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特開2022-162499陶磁器表面に銀の均一薄層を形成する方法
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  • 特開-陶磁器表面に銀の均一薄層を形成する方法 図1
  • 特開-陶磁器表面に銀の均一薄層を形成する方法 図2
  • 特開-陶磁器表面に銀の均一薄層を形成する方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162499
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】陶磁器表面に銀の均一薄層を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/86 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
C04B41/86 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021090631
(22)【出願日】2021-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】513077553
【氏名又は名称】株式会社IMARUYO
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 範夫
(57)【要約】
【課題】従来より銀塗料を陶磁器の所望する箇所に過不足なく均一に塗布することは難しくマスキングも要したが、これを不要にして必要なスポットのみに高品質かつ低コストなIH用薄層を形成する製造方式を確立する。
【解決手段】銀微粒子とフリット類微粒子とこれらをペースト状にする結合剤とを主成分とするペースト状インキを用いて200未満メッシュのシルクスクリーンでベタ印刷された陶磁器用転写紙を作成し、これを所望する陶磁器表面に貼着し焼成する。
或いは同じく200以上メッシュのシルクスクリーンで複数回重ねベタ印刷された陶磁器用転写紙を作成し、これを所望する陶磁器表面に貼着し焼成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陶磁器の表面に銀塗布をするにあたり、銀微粒子とフリット類微粒子とこれらをペースト状にする結合剤とを主成分とするペースト状インキを用いて200未満メッシュのシルクスクリーンでベタ印刷された陶磁器用転写紙を作成し、これを所望する陶磁器表面に貼着し焼成することを特徴とする陶磁器表面に銀の均一薄層を形成する方法。
【請求項2】
陶磁器の表面に銀塗布をするにあたり、銀微粒子とフリット類微粒子とこれらをペースト状にする結合剤とを主成分とするペースト状インキを用いて200以上メッシュのシルクスクリーンで複数回重ねベタ印刷された陶磁器用転写紙を作成し、これを所望する陶磁器表面に貼着し焼成することを特徴とする陶磁器表面に銀の均一薄層を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非導電体の陶磁器を誘導加熱(IH)させるための銀層を極薄かつ均一かつ低コストに形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱(IH)はよく知られた加熱原理であって、近時はこれを応用した電磁調理器も広く市販されている。これは支持体となる天板の内部に配置されたコイルに流れる交流電流により、その上に載置される鉄鍋のような金属製(導電体)の調理器具に誘導電流を生じさせ、それに伴う電気抵抗から生じるジュール熱等の発熱により調理を可能とするものである。
【0003】
ところがそこで用いられる調理器具は鉄製の鍋やフライパンのような適度の電気抵抗を有する電気良導体からなるものに限られ、非導電体の陶磁器では不可能である。そこでその陶磁器の表面に甚だ電気抵抗は少なくても薄膜又は微細線にすることにより電気抵抗を高めてジュール熱を生じさせる金属を積層させる手段が考えられ、事実、銀(銅は物性や品質安定性に問題がある)を陶磁器鍋の底面に塗布したIH用鍋を製作する試みもなされている。
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように調理器具として好ましい陶磁器の底部に銀を塗布してIH用鍋としたものは既に実用に耐えられるレベルとなっているが、その具体的な製作手段は現在のところ銀メッキか銀粉末含有塗料を塗布して焼成するしかなく、前者は実際には難点が多すぎるため、後者によって行われているのが現状である。
【0005】
ところが実際には、銀塗料を陶磁器の所望する箇所に過不足なく均一に塗布することはかなり難しく、銀も高価だけにこれを無駄なく最適な効果を上げられるように、均質かつ低コストな製造方式を確立する課題があった。本発明はこの課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
陶磁器の所望する表面に銀塗布(積層)をするにあたり、銀微粒子とフリット類微粒子とこれらをペースト状にする結合剤とを主成分とするペースト状インキを用いて200未満メッシュのシルクスクリーンでベタ印刷された陶磁器用転写紙を作成し、これを所望する陶磁器表面に貼着し焼成するものとする。
【0007】
いわゆるシルクスクリーン印刷方式で用いられるインキは上記のような非流動性のペースト状のものてあるが、これを用いて200メッシュ未満、好ましくは120メッシュのシルクスクリーンで通常の陶磁器絵付け用転写紙にベタ塗り印刷すると、いかなる直接塗布方法でも遠く及ばないような過不足のない均一塗布が予め設計した通りの形状と寸法に実現することが判明した。
【0008】
但し200メッシュ以上の目の細かいシルクスクリーンを用いた場合は、ベタ印刷のインキの量が少なすぎて塗厚が薄すぎるため、そこに流れる誘導電流が弱すぎて所望する発熱が得られないから、必要な塗厚に達するまで複数回、重ね塗り(印刷)をする必要がある。
【0009】
このようにして最適のインキ塗膜が施された転写紙を通常の方法で陶磁器の所定箇所に貼付して焼成すると、転写紙の有機物成分は焼失し無機成分の銀とフリット(ガラス質)類のみが陶磁器の所定箇所に定着する。
【0010】
なお、ここでインキ成分として用いられるフリット類は、陶磁器に定着した銀の定着を堅牢なものにする働きをするが、銀の必要な導電性を妨げるほど過剰混入すべきでないのは当然であり、ある程度はスクリーンを120メッシュ以下の荒目にして厚塗りすることにより調整できるから、フリット類の混合比率については常識的に任意とし、特に規定しない。また同じくインキ成分として用いられる結合剤(バインダー)も、常識的にシルクスクリーン印刷に適したペースト状にするためのものであるから、その材質や混入量については特に規定しない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、陶磁器表面に直接塗布する場合に避けることができない塗り厚むらを事実上皆無にすることができ、また所望するエリアのみをマスキングを要することなく銀塗布することができるから、高価な銀材料の無駄や手間を著しく低減して大幅なコスト低下となるばかりか、製品の品質および均一性の向上によるクオリティーアップと少ない設備投資で量産できる低コスト化を同時になしとげることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず150mm角の窯業用転写紙(吸水性台紙の上に水溶性糊料が積層されたもの)1に銀微粉末2重量部とフリット微粉末1重量部及び適量の油性結合剤から成るペースト状インキ2と120メッシュのシルクスクリーンを用いて、図1のような形状にベタ塗り印刷し、その上より保護支持膜となる樹脂系のカバーコート用インキ(図示せず)を全面的にベタ塗り印刷する。
【0013】
これを予め製作した陶磁器製トレイ状の小型調理鍋3の底面に貼着し、約800℃で焼付けて有機物を飛ばし無機物のみを定着させ、銀とフリットから成るIH反応層4を形成する(図2)。
【0014】
別の実施の例として、同様の窯業用転写紙1とペースト状インキ2を使用し、200メッシュのシルクスクリーンを用いて、同じ図形の同じ箇所に2回重ねてベタ塗り印刷し、以下同様にカバーコート層を設けて作成した転写紙を同様に小型調理鍋3の底面に貼着・焼成してIH反応層4を形成する。
【0015】
なお、窯業用転写紙1にベタ塗りパターン印刷をするにあたり、図1とは異なるパターン形状であってもそれなりに効果が認められたので、これを図3に示す。ここにおいて穴空きCD状の淡色部は120メッシュの1回ペタ塗り印刷部分であり、その外縁部と内縁部にある太線リングとドット群の濃色部は別の版で同じ箇所に重ね印刷したものであり、その分だけ銀フリット層は厚く積層される。
【産業上の利用可能性】
【0016】
陶磁器に対する電磁誘導加熱方式は熱効率が甚だ良く、特に銀の薄層を設けたIH調理鍋類は全金属製のものより甚だメリットが多くて今後、需要が大幅に拡大する見通しがあり、とりわけ本発明による銀の均一薄層形成法は少ない先行投資と大幅な銀資源の節減と省力化によるコスト低下があるとともに、高品質なものの量産に適しているから、産業上の利用可能性は十分にあるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に用いられる銀転写紙一例の平面図
図2】本発明により銀薄層が設けられた陶磁器鍋一例の底面図
図3】本発明に用いられる銀転写紙別例の平面図
【符号の説明】
【0018】
1……窯業用転写紙 2……ペースト状インキ
3……陶磁器製小型調理鍋 4……IH反応層
図1
図2
図3