(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162500
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】光触媒粉体、光触媒成形物、環境浄化剤、光触媒粉体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 35/02 20060101AFI20221017BHJP
B01J 21/16 20060101ALI20221017BHJP
B01J 31/06 20060101ALI20221017BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20221017BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20221017BHJP
C02F 1/72 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J21/16 M
B01J31/06 M
A61L9/00 C
A61L9/01 B
C02F1/72 101
C02F1/72 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021090632
(22)【出願日】2021-04-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】521214609
【氏名又は名称】垰田 宏子
(72)【発明者】
【氏名】垰田 博史
【テーマコード(参考)】
4C180
4D050
4G169
【Fターム(参考)】
4C180AA02
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4G169HD03
4G169HE01
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4G169HE07
(57)【要約】
【課題】幅広い分野の環境浄化を効果的かつ経済的に安全に行うことができ、安全に輸送することができる高性能の光触媒粉体と、光触媒成形物と、環境浄化剤と、光触媒粉体の製造方法とを提供すること。
【解決手段】金属イオンを無機層状化合物の層間に有させた光触媒粉体を用いる。上記光触媒粉体を、重合体に含有させた光触媒成形物を用いる。上記光触媒粉体と、過酸化物の粉末との混合物である環境浄化剤を用いる。金属イオンを担持した光触媒を無機層状化合物の層間にインターカレートして乾燥する光触媒粉体の製造方法を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンを無機層状化合物の層間に有させた光触媒粉体。
【請求項2】
前記金属イオンを担持した光触媒粒子を前記無機層状化合物の層間に有させた請求項1記載の光触媒粉体。
【請求項3】
前記金属イオンは、鉄イオンである請求項1又は2記載の光触媒粉体。
【請求項4】
前記光触媒粒子は、酸化チタン粒子である請求項2記載の光触媒粉体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の光触媒粉体を、重合体に含有させた光触媒成形物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の光触媒粉体と、
過酸化物の粉末との混合物である環境浄化剤。
【請求項7】
さらにキレート成分を含む請求項6記載の環境浄化剤。
【請求項8】
金属イオンを担持した光触媒粒子を無機層状化合物の層間にインターカレートして乾燥する光触媒粉体の製造方法。
【請求項9】
鉄塩と光触媒粒子を溶媒に添加して分散する第1分散工程と、
前記分散工程で得られた光触媒スラリーに無機層状化合物を分散する第2分散工程と、を含む光触媒粉体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪臭や空気中の有害物質、汚れの分解除去あるいは廃水処理や浄水処理、抗菌抗ウィルス抗かびなど、幅広い分野に使用できる高性能の環境浄化剤と、光触媒成形物と、その作製に用いられる光触媒粉体及び光触媒粉体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒に光を当てると電子と正孔が同時に発生し、酸素などと反応して活性酸素ができる。この活性酸素はオゾンよりも強い酸化力を持っていて、有害化学物質や悪臭、菌・ウィルスなどを水や二酸化炭素などの無毒な物質に変えることができる。この光触媒反応は光を利用するだけで環境浄化などのさまざまな応用が可能である。従来、樹脂に光触媒を混入したシート、フィルムがあった(特許文献1,2,3)。
【0003】
このように光触媒は数多くの利点を持っているが、光触媒反応を起こすためには光触媒が光を照射されて励起することが必要で、利用できる光は通常、酸化チタンなどの場合、紫外線のみで可視光が利用できないという問題があった。紫外線は太陽光の中に3~4%しか含まれておらず、自動車や電車などの窓ガラスが紫外線カットガラスになっていることが多いため、車内・室内では紫外線はほとんど利用できない。そのため、例えば、直射日光が当たる建物の南面では光触媒反応は早く進むが、建物の北面や室内・車内では光が弱いため、ほとんど光触媒反応が起きず、効果を発揮することが難しいという問題があった。したがって、光触媒反応を促進するためには、光触媒が利用できる光の範囲を拡大する必要があった。
【0004】
また、光触媒は空気中の酸素や水中の酸素を活性酸素に変え、その強力な酸化力を利用して環境浄化を行うため、水処理の場合、水中に溶存酸素が含まれていないと環境浄化を行うことができない。そして、汚染された水ほど溶存酸素が少ないため、浄化が難しかった。
【0005】
さらに、光触媒は有機物を炭酸ガスや水に分解するため、プラスチックや繊維、紙などの基材に塗布したり練り込んだりして使用した場合、基材が分解されて長期的に使用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-307884号公報
【特許文献2】特開2005-097608号公報
【特許文献3】特開2013-136216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記のような従来技術のもつ問題点に鑑み、悪臭の除去や、空気中の有害物質または汚れの分解除去、排水処理や浄化処理、抗菌や防かびなど、幅広い分野の環境浄化を効果的かつ経済的に安全に行うことができ、安全に輸送することができる高性能の光触媒粉体と、光触媒成形物と、環境浄化剤と、光触媒粉体の製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記の目的を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、光触媒に鉄や銅、銀、亜鉛などの金属イオンを担持することによって光触媒の性能が飛躍的に向上することを見出した。これは、金属イオンがアンテナとなって可視光を吸収し、そのエネルギーを光触媒に注入して光触媒反応を起こすためである。
【0009】
これらの金属イオンの中で特に鉄イオンは、安全で安価という長所を持っていて、最も長波長の570nmまでの可視光を吸収することができ、光触媒に担持するりことで紫外線だけでなく、紫、藍、青、緑、黄までの可視光が利用できるようになることを見出した。
【0010】
光触媒に鉄などの金属イオンを担持する方法としては通常、イオン注入やスパッタリング、真空蒸着が用いられているが、多量のエネルギーや高価な真空装置などが必要で、光触媒が高価なものになってしまい、経済性に問題があった。そこで、光触媒粒子への低コストの金属イオン担持方法として、溶解して金属イオンをもたらす金属塩を水に溶かし、それを光触媒粒子に含侵させて乾燥するという簡便な方法を見出した。
【0011】
また、本発明者は溶存酸素がほとんど含まれていない汚染した水の浄化や歯牙漂白を行う場合、水の中に過酸化水素などの過酸化物と光触媒と加えて接触させると、過酸化物が分解して多量の活性酸素が放出されるため、その活性酸素の強力な酸化力を利用することで迅速に処理できることを見出していた(特許第3030380号)。
【0012】
そこで、光触媒に鉄などの金属イオンを担持し、過酸化物と混合することで、環境浄化を効果的かつ経済的に行うことができる高性能の環境浄化剤を作製することができたが、この環境浄化剤は非常に不安定であるという問題が見つかった。過酸化水素に鉄のイオンを接触させると過酸化水素が活性酸素に分解するというフェントン反応が知られている。鉄イオンを担持した光触媒と過酸化物を接触させると、直ちに過酸化物が活性酸素に分解して連鎖反応を起こすため、非常に強力に環境浄化を行うことができるが、一度、反応を開始すると、過酸化物がなくなるまで反応が続き、途中で止めることができない。そのため、この環境浄化剤を安定に安全に輸送あるいは保存することが非常に難しかった。
【0013】
本発明者は上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、鉄などの金属イオンを担持した光触媒粒子を無機層状化合物の層間にインターカレートして乾燥することによって得られた光触媒粉体が、過酸化物と接触しても、直ぐには過酸化物が活性酸素に分解して連鎖反応を起こすことはなく、安定していることを見出した。
【0014】
また、光触媒を使わず、鉄などの金属イオンのみを無機層状化合物の層間にインターカレートして乾燥することによって得られた粉体も、光触媒粉体となることを見出した。さらに、この光触媒粉体が過酸化物と接触しても、直ぐには過酸化物が活性酸素に分解して連鎖反応を起こすことはなく、安定していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、無機層状化合物の層間に光触媒粒子と金属イオンを含有した光触媒粉体である。無機層状化合物の層間に酸化チタン粒子と鉄イオンを含有した光触媒粉体である。無機層状化合物の層間に鉄イオンを含有した粉体である。また、本発明は該光触媒粉体を重合体に含有させた光触媒組成物である。該光触媒組成物を成形した光触媒成形物である。さらに、本発明は無機層状化合物の層間に光触媒粒子と金属イオンを含有した光触媒粉体を過酸化物の粉末と混合した環境浄化剤である。無機層状化合物の層間に酸化チタン粒子と鉄イオンを含有した光触媒粉体を過酸化物の粉末と混合した環境浄化剤である。無機層状化合物の層間に鉄イオンを含有した粉体と過酸化物の粉末と混合した環境浄化剤である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、無機層状化合物の層間に光触媒粒子、特に酸化チタン粒子と金属イオン特に鉄イオンを含有した光触媒粉体である。また、それを過酸化物の粉末と混合した環境浄化剤である。光触媒は、有機物を炭酸ガスや水に分解するため、プラスチックや繊維、紙などの基材に塗布したり練り込んだりして使用した場合、基材が分解されて長期的に使用できない。しかし、本発明の光触媒粉体は、無機層状化合物の層間に光触媒がインターカレートされているため、プラスチックや繊維、紙などの基材に塗布したり練り込んだりして使用した場合、光触媒が直接プラスチックや繊維、紙などの基材に接触しないため、分解されない。そのため、本発明の光触媒粉体を重合体に含有させて作製された光触媒組成物及び光触媒成形物は、長期的に使用でき、悪臭や空気中の有害物質、汚れの分解除去あるいは廃水処理や浄水処理、抗菌抗ウィルス抗かびなどの幅広い分野で使用できる。効果的かつ安全に使用することができる。そして、本発明の光触媒粉体を用いた環境浄化剤は輸送や保管を安全に行うことができる。水に溶かすだけで活性酸素が連続的に発生し、水中や空気中の細菌やウイルスを強力な酸化力によって容易に水や二酸化炭素に分解されるため、確実にしかも効率よく死滅させることができる。通常、薬剤を使用していると薬剤の効かない耐性菌が発生するが、光触媒は耐性菌に対しても有効であるし、光触媒に対する耐性菌は生じず、変異したウィルスに対しても有効である。それだけでなく、抗菌・抗ウィルスや消臭、空気浄化、水質浄化、土壌浄化、鮮度保持など、同時に複数の機能を発揮することが可能で、世界中どこでも使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に用いられる光触媒粒子としては、酸化チタンや酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化鉛、酸化インジウム、炭化けい素、硫化モリブデン、硫化カドミウムなど、いろいろなものが使用される。しかし、最も好ましいのは、酸化チタンである。酸化タングステンや硫化モリブデン、酸化インジウムはタングステンやモリブデン、インジウムがレアメタルで資源的に希少で高価であるのに対し、酸化チタンは、白色顔料として大量生産されて広く使用されており、チタンが地殻中に9番目に多い元素である。このため酸化チタンは資源的に豊富で安価で入手しやすい。そして、硫化カドミウムや酸化鉛が有毒であるのに対し、酸化チタンは食品添加物として認められている。酸化チタンは、歯磨き粉やホワイトチョコレートにも使用されていて、安全無毒な物質である。さらに、酸化亜鉛や酸化鉛、硫化カドミウムなどは水に入れて光を当てると、光溶解という現象が起こって陽イオンに陰イオンに分解されて消滅してしまう。しかし、酸化チタン粒子は、光溶解を起こさず、安定で耐久性に優れている。このため、酸化チタン粒子は、光触媒として最も好ましい。
【0018】
本発明に用いられる酸化チタンは、光触媒として働くもので、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトなどの結晶のものだけでなく、酸素欠陥を有すものや、金属ドープ、あるいは窒素、硫黄などをドープした酸化チタンが挙げられる。また、粒子表面に光触媒として不活性なシリカやアルミナや、アパタイトなどのセラミックスを島状に担持したものでもよい。非晶質の酸化チタンは光触媒として働かないため、好ましくない。酸化チタン粒子は、アナターゼ型とルチル型とを含むものを用いる方が好ましい。光触媒としての活性が高い。アナターゼ型60~90%がよく、75~80%が好ましい。
【0019】
本発明に用いられる光触媒粒子は、光触媒として高活性な表面積の大きな微細なものが望ましい。光触媒粒子の粒径としては1nm~10μmが望ましく、特に10nm~1μmが好ましい。光触媒反応は表面反応であり、表面積が大きい光触媒の方が高活性である。
【0020】
本発明に用いられる鉄塩としては、第一鉄塩だけでなく、第二鉄塩や、第一鉄塩と第二鉄塩の混合物なども挙げられ、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、アンモニウム塩、塩化物や臭化物などのハロゲン化物など、いろいろな塩が使用できる。しかし、硝酸塩や硫酸塩が特に好ましい。また、本発明に用いられる鉄塩は無水塩であっても含水塩であってもよく、鉄イオンを含んだ廃液でもよい。硝酸塩や硫酸鉄などの鉄塩は、安価で環境に無害で取扱が容易という利点を持っている。
【0021】
本発明に用いられる鉄イオンの光触媒粉体に対する担持量は、0.01~20重量%が望ましく、特に、0.1~10重量%が好ましい。これ以下であると、鉄イオンがアンテナとして働きにくくなる。一方、これ以上であると、得られた光触媒粒子の色が濃くなりすぎて、粒子表面下層にある鉄イオンに光が当たりにくくなって、光の利用効率が落ちてしまう。
【0022】
本発明に用いられる無機層状化合物は、モンモリロナイト、加水ハロイサイト、ベントナイト、スメクタイト、サポナイト、スティブンサイト、ヘクトライトなどの粘土鉱物、マンガン酸塩、チタン酸塩、チタノニオブ酸塩、ニオブ酸塩、層状ペロブスカイト型酸化物、層状リン酸塩、層状ケイ酸塩、層状複水酸化物や遷移金属水酸化物などの水酸化物、硫化物、セレン化物などの遷移金属カルコゲナイドなど、いろいろなものが挙げられる。しかし、その中で、モンモリロナイト、加水ハロイサイト、ベントナイト、スメクタイト、サポナイト、スティブンサイト、ヘクトライトなどの粘土鉱物が好ましい。粘土鉱物は親水性であり、大量に入手可能で、毒性もなく安全で不燃性で安価である。
【0023】
さて、これらの鉄塩と光触媒粒子を溶媒に添加して分散することで光触媒スラリーが得られ、次に、無機層状化合物を溶媒に添加して良く分散すると、無機層状化合物の層と層の間が広がって粘性の液体が得られる。この二つの液体を添加して攪拌混合しながら乾燥すると、鉄イオンを担持した光触媒粒子が無機層状化合物の層間にインターカレートした光触媒粉体が得られる。また、光触媒スラリーの代わりに鉄塩の水溶液を使用すると、鉄イオンが無機層状化合物の層間にインターカレートした光触媒粉体が得られる。この際、鉄塩を溶媒に溶解してから光触媒粒子を添加して分散してもよいし、溶媒に光触媒粒子を添加して分散した後、鉄塩を溶解してもよい。溶媒としては水が安価で大量に入手可能であり、毒性もなく安全で不燃性で、最も好ましい。
【0024】
こうして得られた光触媒粉体は、光触媒粒子が無機層状化合物の層間にインターカレートされているため、プラスチックや繊維、紙などの基材に塗布したり練り込んだりして使用した場合、基材と光触媒粒子との接触が抑制されて基材の分解が抑制され、長期的に使用することができる。これによりポリエチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シートなどのあらゆる種類の重合体からなる有機繊維やプラスチック製品などの組成物を得ることが可能で、上記光触媒粉体と重合体(樹脂)とからなる光触媒組成物を成形することによって光触媒成形物が得られる。光触媒組成物中の光触媒粒子の濃度は、該組成物の重量に対して通常0.01~80重量%、好ましくは1~50重量%が好ましい。これ以下であると光触媒効果が発揮しにくく、これ以上であると光触媒組成物や光触媒成形物が脆くなってしまう。
【0025】
無機層状化合物の層間に、光触媒粒子と鉄イオンを含有した光触媒粉体を過酸化物の粉体と混合することで環境浄化剤が得られる。また、無機層状化合物の層間に鉄イオンを含有した粉体を、過酸化物の粉体と混合することで環境浄化剤が得られる。本発明に用いられる過酸化物は、過炭酸カリウムなどの過炭酸塩、過ホウ酸ナトリウムなどの過ホウ酸塩、過酸化尿素、過酸化尿素水素、過酸化水素カルバミド、カルバミドペルオキシドなどが挙げられる。上記過酸化物の配合割合は、0.1~99重量%、より好ましくは10-70重量%である。本発明の環境浄化剤は粉末であり、輸送や保存が簡単で、水に溶かして使用することで光触媒粒子や鉄イオンが過酸化物と接触して連続的に活性酸素が発生し、水処理や脱臭、抗菌、抗ウィルス、防カビ、洗浄、防汚などの環境浄化を効率良く極めて迅速に経済的安全に行うことができる。
【0026】
本発明の環境浄化剤においては、好適には、さらに、安定剤としてキレート成分が含まれる。その例として、オルトリン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸などのリン酸の塩、リン酸、ケイ酸マグネシウムやケイ酸マグネシウムナトリウムなどのケイ酸塩、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、ギ酸、グルコン酸、ケイ酸、コハク酸、シュウ酸、ソルビン酸、塩酸、硫酸、乳酸、葉酸、酪酸等が挙げられる。ケイ酸塩の配合割合は0.01~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%である。リン酸塩の混合割合は、0~90重量%、より好ましくは5~50重量%である。クエン酸などの酸の混合割合は、0~70重量%、より好ましくは10~50重量%である。
【実施例0027】
水にヘクトライトの粉末を添加して良く分散し、塩化第一鉄を溶解して攪拌しながら乾燥してヘクトライトの層間に鉄イオンが20重量%含有された光触媒粉末を作製した。この光触媒粉末1重量%と過ホウ酸ナトリウム65重量%とピロリン酸四ナトリウム20重量%とリンゴ酸14重量%を混合して粉末の環境浄化剤を作製し、遮光フィルムでできた袋に密封した。その結果、過ホウ酸ナトリウムを鉄イオンと接触させると直ちに分解して酸素が発生し、袋がぱんぱんに膨らむが、ヘクトライトに鉄イオンをインターカレートした粉末を使用した場合にはほぼ酸素が発生せず、袋が変化しなかった。
【0028】
この環境浄化剤を水で100倍に希釈して5ccシャーレにとり、100ppmになるようにメチレンブルー粉末を加えた。これに、1000ルックスの蛍光灯の光を照射した。その結果、メチレンブルーは5分で20ppmに30分で0ppmになった。環境浄化剤を使用せずにメチレンブルーの水溶液に光を照明下だけではメチレンブルーの濃度に変化はなかった。
水に硫酸第二鉄を溶解した後、粒径50nmのアナターゼ型酸化チタン粒子を添加して攪拌し、酸化チタンに鉄イオンを5wt%担持した分散液を作製した。これにモンモリロナイトの粉末を添加し良く攪拌しながら乾燥し、鉄イオンを担持した酸化チタンとモンモリロナイトが重量比1対1の光触媒粉体を作製した。モンモリロナイトは1nm程度の厚さのナノシートが積層してできており、水の中に添加すると層間が広がり、鉄イオンを担持した酸化チタン粒子がインターカレートされる。この光触媒粉体を2gシャーレに入れ、それを用いて光触媒製品技術協議会の光触媒性能評価試験法IIa(ガスバッグA法)によりアセトアルデヒドを用いて分解試験を行った。その結果、モンモリロナイトにインターカレートしていない鉄イオンを担持しただけの酸化チタン光触媒粒子1gを使った試験結果と比べ、アセトアルデヒドを2.4倍多く分解した。これはモンモリロナイトの層間にインターカレートされたため、アセトアルデヒドの吸着力が向上したためと考えられる。
また、この光触媒粉体を5重量%酢酸ビニル樹脂に混ぜ光触媒成形体を作製した。カーボンアークランプを用いて促進劣化試験を行った。80時間後の重量減少率を測定した結果、モンモリロナイトにインターカレートしていない鉄イオンを担持しただけの酸化チタンの光触媒粉体を使った試験では33%重量が減少したが、この光触媒粉体を使用した場合は5%しか減少せず、大きな劣化防止効果が得られた。
さらに、この光触媒粉体2重量%と過炭酸カリウム70重量%とポリリン酸ナトリウム13重量%とクエン酸15重量%を混合して粉末の環境浄化剤を作製し、遮光フィルムでできた袋に密封した。その結果、光触媒粉体の代わりに鉄イオンを担持しただけの酸化チタン光触媒粉体を使った場合は過酸化物の分解により酸素が発生して袋がパンパンに膨らんでしまったが、モンモリロナイトにインターカレートした光触媒粉体を使用した場合にはほぼ酸素が発生せず、袋が膨らまなかった。
この環境浄化剤を水で100倍に希釈し、それを用いてJIS R1702ファインセラミックス-光触媒抗菌加工材料の抗菌試験方法及び抗菌効果の方法により黄色ブドウ球菌を用いて抗菌性能試験を行った。その結果、1時間後、リファレンスの120万個の菌数に対して10個以下になり、99.999%以上の減少率が得られた。なお、99%以上が合格である。