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特開2022-162524印刷された物理複製困難関数パターン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162524
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】印刷された物理複製困難関数パターン
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20221017BHJP
   H04L 9/10 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B41M3/14
H04L9/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036251
(22)【出願日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】17/227,685
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ユイチエ・チュー
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン・ジャクソン
(72)【発明者】
【氏名】イーサン・シェン
(72)【発明者】
【氏名】ビビー・エスター・アブラハム
【テーマコード(参考)】
2H113
【Fターム(参考)】
2H113AA04
2H113AA06
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB22
2H113BC01
2H113CA39
2H113EA07
2H113EA10
2H113FA10
2H113FA24
2H113FA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】偽造防止に関し、より具体的には、物理複製困難関数パターンを印刷するための方法及び装置の提供。
【解決手段】方法は、クリアコート層を基材に塗布することと、クリアコート層を乾燥させてクリアコート層にランダム微細構造を形成することと、クリアコート層にグラフィックパターンを印刷するために印刷流体を分注することと、クリアコート層に形成されたランダム微細構造を充填する印刷流体を乾燥させることによって物理複製困難関数(PUF)パターンを生成することと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
基材上にクリアコート層を塗布することと、
前記クリアコート層を乾燥させて、前記クリアコート層中にランダム微細構造を形成することと、
印刷流体を分注して、前記クリアコート層上にグラフィックパターンを印刷することと、
前記クリアコート層内に形成された前記ランダム微細構造を充填する前記印刷流体を乾燥させることによって、物理複製困難関数(PUF)パターンを生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記クリアコート層が、水及び固体微粒子のコロイド混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体微粒子が、30重量パーセント~50重量パーセントの範囲のシリカを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塗布することが、
前記印刷流体も分注する印刷装置の印刷ヘッドを使用して、前記クリアコートを分注することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記塗布することが、スピンコーティング手順を介して、毎分100回転(RPM)~5000RPMで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記クリアコート層が所望の厚さに塗布されて、所望の解像度で前記ランダム微細構造を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記所望の厚さは、5ナノメートル(nm)~100nmを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記印刷流体は、水性グラフィックインクを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記グラフィックパターンが、バーコード、クイックレスポンスコード、又は形状のパターンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
複数の命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記複数の命令が、プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
基材上にクリアコート層を塗布することと、
前記クリアコート層を乾燥させて、前記クリアコート層中にランダム微細構造を形成することと、
印刷流体を分注して、前記クリアコート層上にグラフィックパターンを印刷することと、
前記クリアコート層内に形成された前記ランダム微細構造を充填する前記印刷流体を乾燥させることによって、物理複製困難関数(PUF)パターンを生成することと、を含む、動作を実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項11】
前記クリアコート層が、水及び固体微粒子のコロイド混合物を含む、請求項10に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記固体微粒子が、30重量パーセント~50重量パーセントの範囲のシリカを含む、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記塗布することが、
前記印刷流体も分注する印刷装置の印刷ヘッドを使用して、前記クリアコートを分注することを含む、請求項10に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
前記塗布することが、スピンコーティング手順を介して、毎分100回転(RPM)~5000RPMで行われる、請求項10に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記クリアコート層が所望の厚さに塗布されて、所望の解像度で前記ランダム微細構造を形成する、請求項10に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記所望の厚さは、5ナノメートル(nm)~100nmを含む、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記印刷流体は、水性グラフィックインクを含む、請求項10に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記グラフィックパターンが、バーコード、クイックレスポンスコード、又は形状のパターンを含む、請求項10に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
方法であって、
モバイルデバイスのカメラで基材上の印刷物理複製困難関数(PUF)の画像を取込むことであって、前記PUFは、クリアコートに分注された印刷流体を用いて前記基材に形成され、前記クリアコートは、乾燥されて前記印刷流体が充填されるランダム微細構造を形成する、ことと、
前記印刷PUFの前記画像を、サーバに記憶された画像と比較することと、
前記印刷PUFの前記画像が前記サーバに記憶された前記画像と一致するときに、前記基材を認証することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記クリアコートが、30重量パーセント~50重量パーセントの範囲の水及びシリカのコロイド混合物を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、偽造防止に関し、より具体的には、物理複製困難関数パターンを印刷するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物理複製困難関数(Physical unclonable function、PUF)は、偽造防止に使用することができる一意のランダムな物理パターンである。PUFは、複製するのに非常に困難で費用がかかり得、多数の堅牢なタグをもたらす確率プロセスによって製造され得る。PUFパターンは、適切な分析ツールで読み取り可能であるように設計することができる。PUFパターンを記録し、検証のために記憶することができる。PUFは、偽造を防止し、アセンブリ内の部品の置換を防止し、適切な管理を確実にし、コピー不可能なデジタル署名として機能するなどのために使用することができる。
【0003】
PUFを生成するための現在の方法は、製造コストが高く、広く使用するのに採算が合わない場合がある。これらの高価な方法のいくつかの例は、特別な光学署名(例えば、特定の波長又は波長の組み合わせでの吸収又は発光)を含む一意のマーカと統合されたPUF、又はナノ構造体(例えば、ナノ粒子、量子ドット、又は自己集合分子)のランダム分布の作成を含み得る。更に、これらのタイプのPUFの検出は、販売業者及びエンドユーザにとって容易に利用できない特殊な分析機器を必要とし得る。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に例解される態様によれば、物理複製困難関数(PUF)を印刷するための方法、及び非一時的コンピュータ可読媒体が提供される。実施形態の1つの開示された特徴は、クリアコート層を基材に塗布することと、クリアコート層を乾燥させてクリアコート層にランダム微細構造を形成することと、クリアコート層にグラフィックパターンを印刷するために印刷流体を分注することと、クリアコート層に形成されたランダム微細構造を充填する印刷流体を乾燥させることによって物理複製困難関数(PUF)パターンを生成することと、を含む方法である。
【0005】
実施形態の別の開示された特徴は、複数の命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であり、複数の命令は、プロセッサによって実行されると、クリアコート層を基材に塗布する動作、クリアコート層を乾燥させてクリアコート層にランダム微細構造を形成する動作、クリアコート層にグラフィックパターンを印刷するために印刷流体を分注する動作、及びクリアコート層に形成されたランダム微細構造を充填する印刷流体を乾燥させることによって物理複製困難関数(PUF)パターンを生成する動作、をプロセッサに、実行させる命令を含む。
【0006】
別の開示された特徴は、印刷されているPUFを認証するための方法である。この方法は、モバイルデバイスのカメラで基材上の印刷物理複製困難関数(PUF)の画像を取込むことであって、PUFは、クリアコートに分注された印刷流体を用いて基材に形成され、クリアコートは、乾燥されて印刷流体が充填されるランダム微細構造を形成する、ことと、画像をサーバに記憶された画像と比較することと、PUFの画像がサーバに記憶された画像に一致するときに基材を認証することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の教示は、以下の添付図面と併せて以下の発明を実施するための形態を考慮することによって容易に理解することができる。
【0008】
図1】本開示の例示的なPUFのブロック図を示す。
【0009】
図2】本開示のPUFのクローズアップを示す。
【0010】
図3】本開示のPUFを生成する例示的な装置のブロック図を示す。
【0011】
図4】本開示のPUFを認証する例示的なシステムのブロック図を示す。
【0012】
図5】本開示のPUFを印刷するための方法のフローチャートを示す。
【0013】
図6】本開示の印刷されているPUFを認証するための方法のフローチャートを示す。
【0014】
図7】本明細書で説明される機能を実行する際に使用に好適な例示的なコンピュータのハイレベルブロック図を示す。
【0015】
理解を容易にするために、可能な限り、同一の参照番号は、図面に共通している同一の要素を示すために使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、物理複製困難関数(PUF)パターンを印刷するための方法及び装置を広く開示する。上述のように、PUFを生成するための現在の方法は、製造するのに高価で、広く使用するために経済的に実行可能ではないことがある。これらの高価な方法のいくつかの例は、特別な光学署名(例えば、特定の波長又は波長の組み合わせでの吸収又は発光)を含む一意のマーカと統合されたPUF、又はナノ構造体(例えば、ナノ粒子、量子ドット、又は自己集合分子)のランダム分布の作成を含み得る。更に、これらのタイプのPUFの検出は、販売業者及びエンドユーザにとって容易に利用できない特殊な分析機器を必要とし得る。
【0017】
印刷を使用するいくつかの低コストの方法が利用可能である。例えば、印刷後にブロー及び押圧を使用してインクエッジにランダム構造を作成した、インクエッジ偽造防止方法が開発された。しかしながら、インクのみを単独で用いて印刷することは、複製するのがより容易な低解像度をもたらし、PUFのセキュリティを減少させる。
【0018】
本開示の実施形態は、複製することを困難にする高解像度を提供しながら、低コストである印刷可能なPUFを提供する。一実施形態では、一次クリアコートを基材に塗布してもよい。クリアコートを乾燥させて、基材上のコートにランダムなクラックを形成することができる。インクは、乾燥した一次クリアコート上に分注され得る。インクは、コート内に形成されたランダムなクラックを充填して、PUFを生成し得る。
【0019】
本開示のPUFはまた、広く利用可能な機器を使用して認証され得る。例えば、携帯電話又はモバイルデバイス上のカメラを使用して、認証のためにPUFの画像を取込むことができる。したがって、本開示の印刷PUFを認証するために、特別な機器は必要ない。
【0020】
図1は、本開示の印刷プロセスを介して生成される物理複製困難関数(PUF)108を含む例示的な文書100を示す。一実施形態では、PUF108は、文書100に印刷されるように示されているが、PUF108は、包装、部品、デバイス又は筐体の表面などを含む任意の表面に印刷され得る。
【0021】
一実施形態において、文書100は、基材102を含み得る。基材102は、紙、厚紙、プラスチック、又はクリアコート層104及びパターン106を印刷するために使用される印刷流体を受容することができる任意の他のタイプの表面であり得る。一実施形態では、クリアコート層104は、流体及び固体微粒子のコロイド混合物を含み得る。例えば、流体は、溶媒又は水であり得る。固体微粒子は、シリカ又は他の種類のポリマーを含み得る。一実施形態では、クリアコート層104はまた、ナノ粒子コロイド混合物、ゾル-ゲル溶液、ポリマー溶液、ポリマーブレンドなどを使用してもよい。
【0022】
一実施形態では、クリアコート層104は、30重量パーセント~50重量パーセントのシリカを含有する、水及びシリカの市販のコロイド混合物であり得る。一実施形態では、クリアコート層104は、34重量パーセントのシリカを含み得る。一実施形態では、クリアコート層104は、50重量パーセントのシリカを含み得る。
【0023】
一実施形態では、印刷流体は、クリアコート層104の上に分注されて、PUF(複数)108~108のパターン106を形成し得る(以下、個別にPUF108とも呼ばれるか、又は集合的にPUF108とも呼ばれる)。PUF108のパターン106は一連の点として示されているが、任意のパターン106が印刷され得ることに留意されたい。例えば、パターン106は、バーコード、クイックレスポンス(quick response、QR)コード、又は異なる形状のパターン(例えば、正方形、長方形、楕円形、不規則な形状など)であり得る。
【0024】
一実施形態では、基材102に付着することができる任意のタイプのクリアコート層104を使用することができる。一実施形態では、クリアコート層104と適合性のある任意のタイプの印刷流体を使用することができる。言い換えれば、印刷流体は、クリアコート層104に接着して乾燥させて、パターン106を生成することができるべきである。
【0025】
一実施形態では、PUF108は、50マイクロメートル程の小さい幅又は直径110を有するように印刷され得る。したがって、本方法は、市販の化合物を使用することができる比較的小さいPUF108を印刷するために使用され得る。更に、PUF108は、広く利用可能な機器(例えば、携帯電話のカメラ)を使用して分析又は認証され得る。したがって、本開示の方法は、PUF108を印刷するために比較的低いコストを維持しながら、偽造が困難なPUF108を提供する。
【0026】
図2は、例示的なPUF108の拡大図を示す。一実施形態では、クリアコート層104を分注し、乾燥させて、ランダム微細構造110~11011を形成し得る(以下、個別にランダム微細構造110と呼ばれるか、又は集合的に微細構造110と呼ばれる)。ランダム微細構造110は、乾燥によりクリアコート層104に形成されたクラックであり得る。
【0027】
一実施形態では、クラック又はランダム微細構造110の解像度は、クリアコート層104の厚さによって制御され得る。例えば、解像度が高すぎる場合(例えば、より少ない大きなサイズの微細構造110)、ランダム微細構造110は、印刷プロセスのみを介してあまりにも容易にコピーされる恐れがある。解像度が低すぎる場合(例えば、多数のより小さいサイズの微細構造110)、ランダム微細構造110は、小さすぎてモバイルデバイスの標準赤、緑、青色(RGB)カメラ(例えば、携帯電話のカメラ)から取込まれた画像を用いて分析することができない恐れがある。
【0028】
一実施形態では、クリアコート層104の厚さは、プリンタの印刷ヘッドを介して分注されるクリアコート層104の量によって制御され得る。一実施形態では、クリアコート層104の厚さは、スピンコーティングプロセスのスピン速度によって制御され得る。例えば、クリアコート層104は、100回転/分(RPM)~5000RPMで基材102の上でスピンさせ得る。一実施形態では、クリアコート層104は、500RPM~3,000RPMで基材102の上でスピンさせ得る。
【0029】
スピンコーティングプロセスが上述されているが、他のコーティング方法が使用され得ることに留意されたい。例えば、クリアコート層104は、ドローダウンコーティング法、エアロゾル吹付などを使用して塗布され得る。
【0030】
一実施形態では、ランダム微細構造110の解像度は、ランダム微細構造110が数百マイクロメートルの長さ112及び幅114を有するようなものであり得る。一実施形態では、ランダム微細構造100は、20~70マイクロメートルの長さ112及び3~9マイクロメートルの幅114を有し得る。一実施形態では、ランダム微細構造110の所望の解像度を達成するためのクリアコート層104の厚さは、上記のナノ粒子コロイドコーティングについて、約5ナノメートル(nm)~100nmであり得る。厚さは、他の材料の種類によって変化し得る。例えば、クリアコート層104の厚さは、ポリマーコーティングに対して5nm~10マイクロメートルであり得る。
【0031】
一実施形態では、印刷流体は、上記のように、クリアコート層104上に分注され得る。印刷流体は、クリアコート層104内に形成されたランダム微細構造110に充填され得る。ランダム微細構造110内の印刷流体及びクリアコート層104の特定の位置にある印刷流体の組み合わせによって形成された画像は、PUF108を形成し得る。言い換えれば、図2に示す例では、PUF108は、印刷ドット、及び印刷流体が充填されているランダム微細構造110及び110を含み得る。
【0032】
ランダム微細構造110及び110の配置及びサイズは、PUF108のランダム微細構造110及び110の配置及びサイズとは異なり得るので、PUF108は、PUF108とは異なり得る。PUF108及びPUF108はまた、それぞれランダム微細構造110~110及び110~11011の固有の配置、数、及びサイズを有し得る。言い換えれば、パターン106内の各PUF108は、クリアコート層104の表面に沿って異なる位置で生成されるランダム微細構造110により、固有であるか又は異なり得る。
【0033】
図3は、本開示のPUF108を印刷するために使用され得る例示的な装置300を示す。一実施形態では、装置300は、複数の印刷ヘッド304及び306を含むプリンタであり得る。印刷ヘッド304及び306は、異なる流体を分注するために使用され得る。例えば、保管容器308は、印刷ヘッド304を介して分注されるクリアコートを保管し得る。保管容器310は、印刷ヘッド306を介して分注される印刷流体を保管し得る。
【0034】
一実施形態では、プロセッサ302は、印刷ヘッド304及び306に通信可能に結合されて、クリアコート及び印刷流体の分注を制御することができる。一実施形態では、基材102は、印刷ヘッド304及び306の下を通過してもよく、又は印刷ヘッド304及び306は、基材102の上を移動してもよい。
【0035】
一実施形態では、プロセッサ302は、印刷ヘッド304を制御して、クリアコートを分配して、基材102上にクリアコート層104を形成することができる。上記のように、クリアコートを分注して、クリアコート層104の所望の厚さを形成することができる。印刷ヘッド304は、基材102上を複数回通過して、クリアコートを分注することができる。
【0036】
クリアコート層104を有する基材102を、乾燥装置、オーブンに移動させるか、又は空気乾燥させて、クリアコート層104を乾燥させることができる。クリアコート層104を乾燥させることは、クリアコート層104内にランダム微細構造110を生成し得る。
【0037】
クリアコート層104が乾燥された後、基材102は、印刷ヘッド304及び306の下に配置され得る。次いで、プロセッサ302は、印刷ヘッド306を制御して、印刷流体を分注して、パターン106をクリアコート層104上に印刷することができる。印刷流体は、印刷流体が分注される場所の周りでランダム微細構造110を充填し得る。次いで、印刷流体を乾燥させて、PUF108を形成することができる。
【0038】
装置300は、説明を容易にするために簡略化されており、図示しない追加の構成要素を含んでもよいことに留意されたい。例えば、装置300は、印刷ヘッド304及び306を移動させるためのモータ、命令を記憶するためのメモリ、電源、他の電気部品などを含み得る。
【0039】
図3は、単一のプリンタ又は装置300でPUF108を印刷することを示しているが、異なるデバイスを使用してPUF108を印刷することができることに留意されたい。例えば、クリアコート層104は、スピンコーターを介して基材102上にスピンコーティングされ得る。加えて、オーブンを使用して、分注されるクリアコート層104及び印刷流体を乾燥させることができる。
【0040】
以下の実施例1~3は、本開示のPUF108を印刷するためのプロセスパラメータを有する例を提供する。
【0041】
実施例1:
【0042】
脱イオン水に懸濁した34重量パーセントのコロイドシリカ溶液を得て、クリアコート層104を形成した。コロイドシリカ溶液を、500RPMで1分間スピンコーティングすることによって、ボール紙基材に塗布した。クリアコート層104を摂氏60度(℃)のオーブン内で1時間乾燥させた。水性グラフィックインクを使用して、乾燥クリアコート層104上にパターンを印刷した。Dimatix DMP2800プリンタを使用してインクを分注し、以下の条件で600×600ドット/インチ(dpi)パターンを生成した。液滴質量=4.5~4.8ナノグラム(ng)、液滴速度=6~7メートル/秒、周波数=5キロヘルツ、印刷ヘッド温度=周囲温度~40℃、及び電圧=16~20ボルト。インクを120℃以上のオーブン内で10分間乾燥させた。
【0043】
実施例2:
【0044】
脱イオン水に懸濁した34重量パーセントのコロイドシリカ溶液を得て、クリアコート層104を形成した。コロイドシリカ溶液を、3000RPMで1分間スピンコーティングすることにより、ボール紙基材に塗布した。クリアコート層104を摂氏60度(℃)のオーブン内で1時間乾燥させた。水性グラフィックインクを使用して、乾燥クリアコート層104上にパターンを印刷した。Dimatix DMP2800プリンタを使用してインクを分注し、以下の条件で600×600ドット/インチ(dpi)パターンを生成した。液滴質量=4.5~4.8ナノグラム(ng)、液滴速度=6~7メートル/秒、周波数=5キロヘルツ、印刷ヘッド温度=周囲温度~40℃、及び電圧=16~20ボルト。インクを120℃以上のオーブン内で10分間乾燥させた。
【0045】
実施例3:
【0046】
脱イオン水に懸濁した50重量パーセントのコロイドシリカ溶液を得て、クリアコート層104を形成した。コロイドシリカ溶液を、500RPMで1分間スピンコーティングすることによって、ボール紙基材に塗布した。クリアコート層104を摂氏60度(℃)のオーブン内で1時間乾燥させた。水性グラフィックインクを使用して、乾燥クリアコート層104上にパターンを印刷した。Dimatix DMP2800プリンタを使用してインクを分注し、以下の条件で600×600ドット/インチ(dpi)パターンを生成した。液滴質量=4.5~4.8ナノグラム(ng)、液滴速度=6~7メートル/秒、周波数=5キロヘルツ、印刷ヘッド温度=周囲温度~40℃、及び電圧=16~20ボルト。インクを120℃のオーブン内で10分間乾燥させた。
【0047】
上記の実施例は、所望の解像度でPUF108を形成することが見出された。クリアコート層104中のランダム微細構造110を測定して、3~9マイクロメートルの幅及び20~70マイクロメートルの長さを得た。
【0048】
図4は、本開示のPUF108を認証するために使用されるシステム400のブロック図を示す。上記のように、印刷PUF108は、利用可能なデバイスが、PUF108を認証するために使用されることを可能にし得る。言い換えれば、本開示のPUF108を認証するために、高価な特殊機器は必要とされない。
【0049】
一実施形態において、システム400は、カメラ422を含むモバイルデバイス420を含んでもよい。モバイルデバイス420は、携帯電話(cellphone)、携帯電話(mobile telephone)、スマートフォン、タブレット、ノートPCなどであり得る。言い換えれば、画像取込デバイスを有する任意のデバイスを使用して、画像を取込むことができる。
【0050】
エンドユーザは、基材402上に印刷された文書を受け取り、文書を認証することを望む場合がある。エンドユーザは、基材402上に印刷されたPUF408の画像424を取込むことができる。PUF408は、上述のように、PUF108が印刷又は形成され得る方法と同様に印刷又は形成され得る。
【0051】
図4では、PUF408はバーコードとして示されている。上記のように、PUF408は、任意のパターン(例えば、バーコード、QRコード、形状のパターンなど)であり得る。PUF408は、異なる位置及びバーコードの異なるラインに位置する様々なランダム微細構造410を含み得る。PUF408は、乾燥クリアコート層404上に印刷流体又はインクを分注して、ランダム微細構造410を印刷流体で充填することによって形成され得る。
【0052】
一実施形態では、製造中に印刷された後に、PUF408の画像が取込まれ得る。画像は、記憶された画像430としてネットワーク432のデータベース(database、DB)428に保存され得る。ネットワーク432は、インターネットプロトコル(internet protocol、IP)ネットワークであり得る。
【0053】
基材402上に印刷された文書を認証するために、モバイルデバイス420は、ネットワーク432を介して、取込まれた画像424をアプリケーションサーバ(application server、AS)426に送信することができる。AS426は、DB428内の記憶された画像430にアクセスすることができる。AS426は、取込まれた画像424を記憶された画像430と比較し得る。一致が見つかった場合、AS426は、モバイルデバイス420に文書が認証されたという通知を送信することができる。一致が見つからない場合、AS426は、モバイルデバイス420に文書が真正でないという通知を送信することができる。したがって、印刷PUF408は、比較的安価である広く利用可能な機器が、本開示の印刷PUF408を認証するために使用されることを可能にし得る。
【0054】
図5は、本開示のPUFを印刷するための例示的な方法500のフローチャートを示す。一実施形態では、方法500は、装置300によって、又は図7に例示され、以下で論じられる装置700などの装置によって実行されてもよい。
【0055】
一実施形態では、方法500は、ブロック502で開始する。ブロック504において、方法500は、基材上にクリアコート層を塗布する。クリアコート層は、基材と適合性のある固体微粒子の任意のタイプのコロイド懸濁液であり得る。例えば、コロイド懸濁液は、基材に接着することができなければならない。コロイド懸濁液の例として、脱イオン水に懸濁されたシリカ粒子を挙げることができる。
【0056】
一実施形態では、クリアコート層は、スピンコーティングプロセス、ドローダウンコーティング法、エアロゾル吹付などを介して塗布され得る。一実施形態では、クリアコート層は、プリンタを介して塗布され得る。クリアコート層は、以下に記載されるように、クリアコート層に形成される微細構造の所望の解像度を得るために所望の厚さに塗布され得る。
【0057】
ブロック506において、方法500は、クリアコート層を乾燥させて、クリアコート層中にランダム微細構造を形成する。ランダム微細構造は、クリアコート層が乾燥されるときにクリアコート層に形成される微小クラックを含み得る。ランダム微細構造は、異なる形状、配置、及びサイズを有し得る。ランダム微細構造の例示的な所望の解像度は、3~9マイクロメートルの幅及び20~70マイクロメートルの長さを有する微細構造を含み得る。
【0058】
ブロック508で、方法500は、印刷流体を分注して、クリアコート層上にグラフィックパターンを印刷する。印刷流体は、水性グラフィックインクであり得る。クリアコート層と適合性があり、クリアコート層に付着して、PUFの所望のパターンを印刷することができる任意のタイプのインクを使用することができる。印刷流体は、印刷流体がクリアコート層上に分注される場所の周りでランダム微細構造の中に充填され得る。
【0059】
ブロック510において、方法500は、クリアコート層内に形成されたランダム微細構造を充填する印刷流体を乾燥させることによって、物理複製困難関数(PUF)パターンを生成する。例えば、印刷流体は乾燥され得、分注される印刷流体及びランダム微細構造内の印刷流体の結果として得られた画像は、PUFパターンを形成し得る。ブロック512において、方法500は、終了する。
【0060】
図6は、本開示の印刷されているPUFを認証するための例示的な方法600のフローチャートを示す。一実施形態では、方法600は、システム400によって、又は図7に例示され、以下で論じられる装置700などの装置によって実行されてもよい。
【0061】
一実施形態では、方法600は、ブロック602で開始する。ブロック604において、方法600は、モバイルデバイスのカメラで基材上の印刷物理複製困難関数(PUF)の画像を取込み、PUFは、クリアコートに分注された印刷流体を用いて基材に形成され、クリアコートは、乾燥されて印刷流体が充填されるランダム微細構造を形成する。一実施形態では、モバイルデバイスは、携帯電話(cell phone)、携帯電話(mobile phone)、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ノートPCなどであり得る。言い換えれば、カメラを有する任意のタイプのデバイスを使用して、認証のためにPUFの画像を取込むことができる。
【0062】
印刷PUFは、基材上に分注されるクリアコート層に形成されたランダム微細構造を介して形成され得る。印刷流体は、クリアコート上に分注され得、クリアコート層内でランダム微細構造を充填し得る。PUFの解像度は、上記のようにクリアコートに使用される材料及びクリアコート層の厚さを介して制御され得る。
【0063】
ブロック606において、方法600は、画像をサーバに記憶された画像と比較する。例えば、PUFが形成されたときに、印刷PUFの画像を取込むことができる。画像は、ネットワーク内のデータベースに記憶され得る。データベースは、認証サービス又はPUFを印刷した会社によって管理され得る。モバイルデバイスによって取込まれた画像は、データベース内の記憶された画像と比較されて、一致が見つかったかどうかを判定することができる。
【0064】
ブロック608において、方法600は、PUFの画像がサーバに記憶された画像と一致するときに基材を認証する。一致が見られると、基材は認証され得る。例えば、印刷PUFの画像を取込んだモバイルデバイスは、基材が認証されたというメッセージ又は通知を受信することができる。ブロック610において、方法600は、終了する。
【0065】
図7は、本明細書で説明された機能の実行専用であるコンピュータのハイレベルブロック図を描写する。図7に描写されるように、コンピュータ700は、1つ以上のハードウェアプロセッサ要素702(例えば、中央処理装置(central processing unit、CPU)、マイクロプロセッサ、又はマルチコアプロセッサ)、メモリ704、例えば、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)及び/又は読み取り専用メモリ(read only memory、ROM)、PUFを印刷するためのモジュール705、並びに様々な入力/出力デバイス706(例えば、テープドライブ、フロッピドライブ、ハードディスクドライブ又はコンパクトディスクドライブを含むが、これらに限定されない記憶デバイス、受信機、送信機、スピーカ、ディスプレイ、音声合成装置、出力ポート、入力ポート、及びユーザ入力デバイス(キーボード、キーパッド、マウス、マイクロフォンなど))を備える。プロセッサ要素は1つしか示されていないが、コンピュータには複数のプロセッサ要素が採用され得ることに留意されたい。
【0066】
本開示が、例えば、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array、FPGA)を含むプログラマブルロジックアレイ(programmable logic array、PLA)、若しくはハードウェアデバイス上に展開されたステートマシン、コンピュータ、又は任意の他のハードウェア等価物、例えば、上で考察された方法に付属し、上で開示した方法のステップ、機能、及び/又は動作を行うようにハードウェアプロセッサを構成するのに使用され得るコンピュータ可読命令を使用して、ソフトウェアにおいてかつ/又はソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実装され得ることに留意されたい。一実施形態では、PUFを印刷するための、本モジュール又はプロセス705に対する命令及びデータ(例えば、コンピュータ実行可能命令を含むソフトウェアプログラム)は、メモリ704にロードされ、ハードウェアプロセッサ要素702によって実行され、上記に論じたようなステップ、機能又は動作を実装することができる。また、ハードウェアプロセッサが命令を実行して「動作」を行う場合、これは、ハードウェアプロセッサが直接動作を行う、かつ/又は別のハードウェアデバイス若しくは構成要素(例えば、コプロセッサなど)を、動作を行うように促進する、指示する、又はそれと協働することを含み得る。
【0067】
上記の方法に関係するコンピュータ可読命令又はソフトウェア命令を実行するプロセッサは、プログラムされたプロセッサ又は専門プロセッサとして認識され得る。このように、本開示のPUFを印刷するための、本モジュール705(対応するデータ構造を含む)は、有形の又は物理的(広義には非一時的)コンピュータ可読記憶デバイス又は媒体、例えば、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ROMメモリ、RAMメモリ、磁気ドライブ若しくは光学ドライブ、デバイス、又はディスケットなどに記憶され得る。より具体的には、コンピュータ可読記憶デバイスは、プロセッサ、又はコンピュータ若しくはアプリケーションサーバなどのコンピューティングデバイスによってアクセスされるデータ及び/又は命令などの情報を格納する能力を提供する任意の物理的デバイスを備え得る。
【0068】
上記で開示されたものの変形、並びに他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることは、理解されるであろう。様々な現在予期されていない、又は先行例のない代替物、修正、変形、又は改善が、その後に当業者によってなされてもよく、それらも以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7