IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 文化シヤッター株式会社の特許一覧

特開2022-162526建築用パネル及びこの建築用パネルを具備した建具装置並びに建築用パネルの製造方法
<>
  • 特開-建築用パネル及びこの建築用パネルを具備した建具装置並びに建築用パネルの製造方法 図1
  • 特開-建築用パネル及びこの建築用パネルを具備した建具装置並びに建築用パネルの製造方法 図2
  • 特開-建築用パネル及びこの建築用パネルを具備した建具装置並びに建築用パネルの製造方法 図3
  • 特開-建築用パネル及びこの建築用パネルを具備した建具装置並びに建築用パネルの製造方法 図4
  • 特開-建築用パネル及びこの建築用パネルを具備した建具装置並びに建築用パネルの製造方法 図5
  • 特開-建築用パネル及びこの建築用パネルを具備した建具装置並びに建築用パネルの製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162526
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】建築用パネル及びこの建築用パネルを具備した建具装置並びに建築用パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/82 20060101AFI20221017BHJP
   E06B 5/20 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
E06B3/82
E06B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037888
(22)【出願日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2021066929
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】野口 茂
【テーマコード(参考)】
2E016
2E239
【Fターム(参考)】
2E016HA03
2E016JA11
2E016KA01
2E016LB01
2E016MA11
2E016QA13
2E016QA14
2E239BB02
(57)【要約】
【課題】 遮音性能を向上する。
【解決手段】 パネル厚方向に間隔を置いた表板21及び裏板22と、表板21の内面に接した表側中骨27と、裏板22の内面に接した裏側中骨とを備え、表側中骨27と裏側中骨28は、パネル厚方向に離れて設けられ、パネル厚方向の内側へ突出する補強片27b,28bを有する。表側中骨27及び裏側中骨28が媒質となって振動や音が伝達したり、表側部材と裏側部材の共振によって振動及び音が増大したりするのを防ぐ。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル厚方向に間隔を置いた表板及び裏板と、
前記表板の内面に接した表側中骨と、
前記裏板の内面に接した裏側中骨とを備え、
前記表側中骨と前記裏側中骨は、パネル厚方向に離れて設けられ、パネル厚方向の内側へ突出する補強片を有することを特徴とする建築用パネル。
【請求項2】
前記表板及び前記表側中骨を含む表側部材の固有振動数と、前記裏板及び前記裏側中骨を含む裏側部材の固有振動数とが異なることを特徴とする請求項1記載の建築用パネル。
【請求項3】
前記表側中骨の前記補強片と、前記裏側中骨の前記補強片とは、パネル面方向の位置が異なることを特徴とする請求項1又は2記載の建築用パネル。
【請求項4】
前記表側中骨と前記裏側中骨は、前記補強片の数が異なることを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の建築用パネル。
【請求項5】
前記表側中骨の前記補強片と、前記裏側中骨の前記補強片とは、パネル厚方向内側へ突出する突片部の突端側に、パネル面方向へ曲げられた曲片部を有し、
前記表側中骨の前記曲片部と、前記裏側中骨の前記曲片部とは、その曲げ方向の長さが異なることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の建築用パネル。
【請求項6】
前記表側中骨と前記裏側中骨は、肉厚が異なることを特徴とする請求項1~5何れか1項記載の建築用パネル。
【請求項7】
前記表側中骨と前記裏側中骨は、パネル厚方向において非対称形状であることを特徴とする請求項1~6何れか1項記載の建築用パネル。
【請求項8】
前記表板及び前記表側中骨を含む表側部材の質量と、前記裏板及び前記裏側中骨を含む裏側部材の質量とが異なることを特徴とする請求項1~7何れか1項記載の建築用パネル。
【請求項9】
前記表側中骨が前記表板に接する部分の面積と、前記裏側中骨が前記裏板に接する部分の面積とが異なることを特徴とする請求項1~8何れか1項記載の建築用パネル。
【請求項10】
前記表板の周縁側の内面と、前記裏板の周縁側の内面との間に、これら双方の内面に接する力骨を備え、前記力骨は、前記表板の内面に接する部分の面積と、前記裏板の内面に接する部分の面積とが異なることを特徴とする請求項1~9何れか1項記載の建築用パネル。
【請求項11】
前記表側中骨と前記裏側中骨のうち、少なくともその一方の中骨と、該中骨に対しパネル厚方向に対向する部分との間に、弾性体を設けたことを特徴とする請求項1~10何れか1項記載の建築用パネル。
【請求項12】
請求項1~11何れか1項記載の建築用パネルを具備した建具装置。
【請求項13】
前記表側中骨を前記表板に接合する工程と、前記裏側中骨を前記裏板に接合する工程とのうち、少なくとも一方の工程を含むことを特徴とする請求項1~11何れか1項記載の建築用パネルの製造方法。
【請求項14】
枠状骨材の枠内側に前記表側中骨及び前記裏側中骨を接合して一体状の骨材ユニットを構成し、前記表板と前記骨材ユニットと前記裏板とを、重ね合わせ接合する工程を含むことを特徴とする請求項1~11何れか1項記載の建築用パネルの製造方法。
【請求項15】
前記接合には、溶接による接合を含むことを特徴とする請求項13又は14記載の建築用パネルの製造方法。
【請求項16】
前記接合には、接着材を介在した接着を含むことを特徴とする請求項13~15何れか1項記載の建築用パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具(戸、扉、窓、障子等を含む)や、パーティション、シャッターカーテン等として用いられる建築用パネル、及びこの建築用パネルを具備した建具装置、並びに建築用パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、戸厚方向に間隔を置いた表板と裏板の間に、上下方向へわたる横断面溝形鋼状の力骨を幅方向に間隔を置いて複数設けて、撓み等を生じないように補強された金属製扉がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-188468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術によれば、屋外側又は屋内側に騒音発生源がある場合、力骨が音を振動として伝達するサウンドブリッジとして機能し、前記騒音発生源の音が、表板から裏板へ、あるいは裏板から表板へ伝達されてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
パネル厚方向に間隔を置いた表板及び裏板と、前記表板の内面に接した表側中骨と、前記裏板の内面に接した裏側中骨とを備え、前記表側中骨と前記裏側中骨は、パネル厚方向に離れて設けられ、パネル厚方向の内側へ突出する補強片を有することを特徴とする建築用パネル。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、遮音性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る建築用パネルの一例を具備した建具装置を示す正面図であり、要部を切欠して内部構造を示している。
図2】同建具装置のパネルの分解斜視図である。
図3】本発明に係る建築用のパネルの一例を示す横断面図である。
図4】(a)は同建築用パネルの要部拡大横断面である。(b)と(c)は、それぞれ、本発明に係る建築用パネルの他例を示す要部拡大横断面図である。
図5】本発明に係る建築用パネルについて、音響等価損失を測定した結果を示すグラフ及び表である。
図6】上側の図は従来の建築用パネルを示す横断面図であり、下側のグラフ及び表は、当該建築用パネルについて音響等価損失を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、パネル厚方向に間隔を置いた表板及び裏板と、前記表板の内面に接した表側中骨と、前記裏板の内面に接した裏側中骨とを備え、前記表側中骨と前記裏側中骨は、パネル厚方向に離れて設けられ、パネル厚方向の内側へ突出する補強片を有し、建築用パネルを構成した(図1図4参照)。
【0009】
第二の特徴として、前記表板及び前記表側中骨を含む表側部材の固有振動数と、前記裏板及び前記裏側中骨を含む裏側部材の固有振動数とが異なる。
【0010】
第三の特徴として、前記表側中骨の前記補強片と、前記裏側中骨の前記補強片とは、パネル面方向の位置が異なる(図2図4参照)。
【0011】
第四の特徴として、前記表側中骨と前記裏側中骨は、前記補強片の数が異なる(図2図4参照)。
【0012】
第五の特徴として、前記表側中骨の前記補強片と、前記裏側中骨の前記補強片とは、パネル厚方向内側へ突出する突片部の突端側に、パネル面方向へ曲げられた曲片部を有し、前記表側中骨の前記曲片部と、前記裏側中骨の前記曲片部とは、その曲げ方向の長さが異なる(図2図4参照)。
【0013】
第六の特徴として、前記表側中骨と前記裏側中骨は、肉厚が異なることを特徴とする請求項1~5何れか1項記載の建築用パネル(図3及び図4参照)。
【0014】
第七の特徴として、前記表側中骨と前記裏側中骨は、パネル厚方向において非対称形状である(図2図4参照)。
【0015】
第八の特徴として、前記表板及び前記表側中骨を含む表側部材の質量と、前記裏板及び前記裏側中骨を含む裏側部材の質量とが異なる。
【0016】
第九の特徴として、前記表側中骨が前記表板に接する部分の面積と、前記裏側中骨が前記裏板に接する部分の面積とが異なる(図3及び図4参照)。
【0017】
第十の特徴として、前記表板の周縁側の内面と、前記裏板の周縁側の内面との間に、これら双方の内面に接する力骨を備え、前記力骨は、前記表板の内面に接する部分の面積と、前記裏板の内面に接する部分の面積とが異なる(図3及び図4参照)。
【0018】
第十一の特徴として、前記表側中骨と前記裏側中骨のうち、少なくともその一方の中骨と、該中骨に対しパネル厚方向に対向する部分との間に、弾性体を設けた(図4(c)参照)。
【0019】
第十二の特徴は、上記建築用パネルを具備して、建具装置を構成した(図1及び図2参照)。
【0020】
第十三の特徴は、上記建築用パネルの製造方法であって、前記表側中骨を前記表板に接合する工程と、前記裏側中骨を前記裏板に接合する工程とのうち、少なくとも一方の工程を含む。
【0021】
第十四の特徴は、枠状骨材の枠内側に前記表側中骨及び前記裏側中骨を接合して一体状の骨材ユニットを構成し、前記表板と前記骨材ユニットと前記裏板とを、重ね合わせ接合する工程を含む。
【0022】
第十五の特徴として、前記接合には、溶接による接合を含む。
【0023】
第十六の特徴として、前記接合には、接着材を介在した接着を含む。
【0024】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、パネル厚方向とは、当該建築用パネル(扉体)の厚みの方向を意味する。また、パネル面方向とは、当該建築用パネルの表面又は裏面が延設される方向を意味する。このパネル面方向には、パネル幅方向やパネル上下方向等を含む。
また、本明細書中では、便宜上、屋外側と表側、屋内側を裏側と表現しているが、表裏の関係は逆にすることが可能である。
【0025】
図1及び図2は本発明に係る建築用パネルの一例を具備した建具装置を示す。
この建具装置1は、矩形枠状の枠体10と、この枠体内の開口部を開閉する扉体20(建築用パネル)と、扉体20を戸尻側で開閉回動させるヒンジ30とを備える。
【0026】
枠体10は、上下に間隔を置いた水平状の横枠部材11,12と、左右に間隔を置いた垂直状の縦枠部材13,14とを具備して矩形枠状に構成され、建物等の躯体開口部に固定される。
横枠部材11,12及び縦枠部材13,14は、それぞれ、硬質金属材料から長尺直線状に形成される。これらは、溶接等によって一体化されている。
【0027】
扉体20は、本発明に係る建築用パネルの一例を構成している。
この扉体20は、パネル厚方向(図示例によれば、扉厚方向)に間隔を置いた表板21及び裏板22と、これら表板21及び裏板22の周縁側の両内面間に位置する上下左右の力骨23,24,25,26と、表板21の内面に沿って固定された表側中骨27と、裏板22の内面に沿って固定される裏側中骨28と、表板21と裏板22の間の空間に充填された芯材29とを具備する。
【0028】
表板21と裏板22は、それぞれ、硬質金属材料から正面視略矩形板状に形成される。
図示例の表板21は、その上端部及び左右端部に、裏板22へ向かって折り曲げられた折片部21aを有する(図2参照)。
同様にして、裏板22も、その上端部及び左右端部に、表板21へ向かって折り曲げられた折片部22aを有する。
【0029】
上下の力骨23,24は、それぞれ、硬質金属材料から長尺な溝形鋼状に形成される。これら力骨23,24は、それぞれ、表板21と裏板22の間の上端側と下端側に位置する。そして、これら力骨23,24は、何れも、表板21と裏板22の双方の内面に接して固定される。
【0030】
左右の力骨25,26は、それぞれ、硬質金属材料から長尺状に形成され、何れも、表板21と裏板22の双方の内面に接して固定される。
これら力骨25,26は、表板21の内面に接する部分の面積と、裏板22の内面に接する部分の面積とが異なる。
【0031】
詳細に説明すれば、戸先側の力骨25は、上下方向へわたる長尺板状の戸先側片部25aと、この戸先側片部25aにおけるパネル厚方向の一方側で戸尻方向へ曲げられた曲片部25bと、同戸先側片部25aにおけるパネル厚方向の他方側で戸尻方向へ曲げられた曲片部25cとを有する横断面略凹状に形成される(図2図4参照)。
そして、一方の曲片部25bは、他方の曲片部25cよりもパネル厚方向の寸法が大きい。このため、曲片部25bが表板21内面に接する面積は、曲片部25cが裏板22内面に接する面積よりも大きい。
【0032】
戸尻側の力骨26は、戸先側の力骨25に対し左右対称の横断面形状に形成され、戸尻側片部26aと、一方の曲片部26bと、他方の曲片部26cとを有する。
そして、一方の曲片部26bは、他方の曲片部26cよりもパネル厚方向の寸法が大きく、表板21内面に接する面積が、他方の曲片部26cが裏板22内面に接する面積よりも大きい。
【0033】
表側中骨27と裏側中骨28は、これらの間に空間を置くようにしてパネル厚方向に離隔して、一対に設けられる。表側中骨27と裏側中骨28の間に接触する部分はない。
これら表側中骨27及び裏側中骨28は、図3に示すように、戸先部と戸尻部の間の空間を分割するようにして、パネル幅方向に間隔を置いて複数組(図示例によれば二組)設けられる。
【0034】
各組の表側中骨27と裏側中骨28は、形状、肉厚及び質量等が異なる。
また、各組の表側中骨27と裏側中骨28は、パネル面方向(図示例によれば、扉幅方向)の異なる位置で、パネル厚方向の内側へ突出する補強片を有する(図3参照)。表側中骨27の補強片の数と、裏側中骨28の補強片の数は異なる。
【0035】
詳細に説明すれば、表側中骨27は、表板21の内面に平坦状に接する接片部27aと、この接片部27aの幅方向の一端側からパネル厚方向内側へ延設された補強片27bと、同接片部27aの幅方向の他端側からパネル厚方向へ延設された補強片27cとを有し、接片部27aを表板21内面に接着又は溶接して上下方向へわたる長尺状に連続している。この表側中骨27の厚みt1は、本実施態様によれば、約1.6mmである。
【0036】
一方の補強片27bは、パネル厚さ方向内側へ突出する突片部27b1と、この突片部27b1の突端側でパネル面に沿うパネル幅方向内側へ曲げられた曲片部27b2とを有する。
他方の補強片27cは、突片部27b1よりも突出量が大きい平板状に形成される。
二つの補強片27b,27cは、何れも、他の裏側の部材(裏板22及び裏側中骨28)には接しない。
【0037】
また、裏側中骨28は、裏板22の内面に平坦状に接する接片部28aと、この接片部28aの幅方向の一端側からパネル厚方向へ突出する補強片28bとを有し、接片部28aを裏板22内面に接着又は溶接して上下方向へわたる長尺状に連続している。
接片部28aが裏板22内面に接する面積は、接片部27aが表板21内面に接する面積よりも大きい。
【0038】
この裏側中骨28の厚みt2は、表側中骨27の厚みよりも大きく、本実施態様によれば、約2.3mmである。裏側中骨28の質量は、表側中骨27の質量よりも大きい。
【0039】
補強片28bは、パネル厚さ方向内側へ突出する突片部28b1と、この突片部28b1の突端側でパネル面に沿うパネル幅方向へ曲げられた曲片部28b2とを有する。この補強片28bは、表板21側の部材(表板21及び表側中骨27)に接しないようにして、表側中骨27の二つの補強片27b,27cの間に位置する。このような補強片の配置によれば、補強片同士が干渉するのを防ぐとともに、各補強片のパネル厚方向の突出量を大きく確保することができ、ひいては、表板21,裏板22の撓み抑制効果を向上することができる。
【0040】
表側中骨27の曲片部27b2と、裏側中骨28の曲片部28b2とは、その曲げ方向(パネル幅方向)の長さが異なり、図示例によれば、曲片部27b2の長さが曲片部28b2の長さよりも小さい。
【0041】
芯材29は、グラスウールや発泡樹脂、あるいは段ボール等の紙により構成される。この芯材29は、戸先側の力骨25と表側中骨27の間、両側の表側中骨27,27の間、戸尻側の力骨26と表側中骨27の間等に充填されている。この芯材29は、遮音性や断熱性の向上、振動抑制、強度アップ等の目的で設けられるが、省くことも可能である。
【0042】
上記構成の扉体20は、表板21と裏板22が、パネル厚方向において対称な略同形状且つ同厚であり、表側中骨27と裏側中骨28が、パネル厚方向において非対称形状であって且つ厚みが異なる。
このため、扉体20は、表板21及び表側中骨27等の表側部材の質量と、裏板22及び裏側中骨28等の裏側部材の質量とが異なる。図示例によれば、表側部材(表板21及び表側中骨27)の質量が、裏側部材(裏板22及び裏側中骨28)の質量よりも小さい。
【0043】
そして、扉体20は、前述した質量の違いや、表側中骨の形状の違い、補強片の数の違い、厚みの違い等、表側と裏側の構成の違いにより、前記表側部材の固有振動数と、前記裏側部材の固有振動数とが異なる。
図示例によれば、前記表側部材の固有振動数は、前記裏側部材の固有振動数よりも大きい。
【0044】
ヒンジ30は、一片部31と他片部32とを軸部33を中心に自在に回転するように支持してなり、蝶番等と呼称される場合もある。図示例のヒンジ30は、周知構造の旗蝶番である。
このヒンジ30は、扉体20と縦枠部材14の間に軸部33を配置するようにして、一片部31を扉体20に止着し、他片部32を縦枠部材14に止着している(図2参照)。
このヒンジ30の他例としては、平蝶番やピポットヒンジ、二軸蝶番等とすることも可能である。
【0045】
なお、図中、符号41は扉体20を開閉操作するためのドアノブ、符号42は全閉状態の扉体20を施錠したり開錠したりするためのサムターン、符号43はドアノブ41やサムターン42の操作によりラッチボルトやデッドボルトを出没させる鍵機構である。
【0046】
上記構成の扉体20(建築用パネル)及び建具装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
扉体20では、表側中骨27と裏側中骨28をパネル厚方向に離して設けたため、これら表側中骨27及び裏側中骨28が媒質となって振動や音が伝達するのを防ぐことができる。
しかも、表側中骨27と裏側中骨28の形状、質量、厚み等の違いにより、表板21及び表側中骨27を含む表側部材の固有振動数と、裏板22及び裏側中骨28を含む裏側部材の固有振動数とが異なるため、表側部材と裏側部材の共振によってパネル厚方向へ伝達する振動及び音が増大するようなことを防ぐことができる。
また、表板21と裏板22に対する力骨25,26、表側中骨27及び裏側中骨28の接触面積の設定や、独自の補強片形状等によって、表板21及び裏板22が横断面弓形に撓むのを抑制するとともに、前記撓みを伴う振動や、表板21と裏板22の共振等を効果的に防ぐことができる。
【0047】
<比較実験例>
次に、上記構成の扉体20を具備した建具装置1と、従来の扉体を具備した建具装置について、同条件で音響透過損失を測定した結果を説明する。この実験では、扉体を境にした一方側に音源、他方側にマイクを配置している。
【0048】
図5は、上記構成の扉体20を具備した建具装置1について、1/3オクターブ周波数毎の音響透過損失を示すグラフ及び表である。
図6は、従来の扉体120を具備した建具装置について、1/3オクターブ周波数毎の音響透過損失を示すグラフ及び表であり、上側の図は当該扉体の横断面図である。扉体120は、上記扉体20について、力骨25,26を横断面コ字状の力骨125に置換し、一対の表側中骨27,裏側中骨28を力骨125と同形状の中骨127に置換したものであり、これら力骨及び中骨はいずれも表板と裏板を連結している。なお、表板21と裏板22の間の空間には、上述した芯材29が設けられるが、図示を省略している。
【0049】
この比較実験の結果より、扉体20を具備した建具装置1は、従来の扉体120を具備した建具装置に対し、全ての周波数において、音響透過損失が大きかった。すなわち、扉体20を具備した建具装置1は、従来の扉体120を具備した建具装置よりも、遮音性が高いといえる。
【0050】
<変形例>
上記実施態様の表側中骨27及び裏側中骨28(図4(a))は、その形状を適宜に変更することが可能である。
例えば、図4(b)に示す扉体20’は、上記扉体20について、表側中骨27を表側中骨27’に置換したものである。表側中骨27’は、表板21の内面に平坦状に接する接片部27a’と、この接片部27a’の幅方向の両端からそれぞれパネル厚方向内側へ突出する補強片27b’,27c’とを一体に有する横断面逆ハット状に形成され、板厚が裏側中骨28よりも小さい。
各補強片27b’,27c’は、突端側がパネル幅方向の外側へ曲がった逆L字状に形成される。一方の補強片27b’と他方の補強片27c’は、パネル厚方向の突出量が異なる。
図4(b)に示す扉体20’によれば、上記扉体20と略同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
さらに他例としては、表側中骨27と裏側中骨28のうち、少なくともその一方の中骨と、該中骨に対しパネル厚方向に対向する部分との間に、弾性体を設けてもよい。
例えば、図4(c)に示す扉体20”は、上記扉体20の構造において、表側中骨27の補強片27bと該補強片27bに対向する接片部28aとの間、及び裏側中骨28の補強片28bと該補強片28bに対向する接片部27aとの間に、それぞれ、弾性体51,52を挟んだものである。
弾性体51,52は、合成ゴムや、エラストマー樹脂、弾性を有する発泡樹脂等から構成され、上下方向に連続的または部分的に設けられる。
この扉体20”によれば、表板21と裏板22が厚さ方向へ振動するのを、弾性体51,52により抑制することができる。
【0052】
また、上記実施態様によれば、表側中骨27の補強片27b,27cに対し、裏側中骨28の補強片28bをパネル幅方向へずらして配置することで、各補強片の突出量を大きく確保したが、他例としては、表側中骨の補強片と裏側中骨の補強片とを、パネル幅方向の同位置に配置し、対向する補強片の間に隙間を形成するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施態様によれば、本発明に係る建築用パネルを扉体20として構成したが、この建築用パネルは、引戸、折戸、窓、障子等の建具や、パーティション、シャッターカーテン等に適用することが可能である。
【0054】
<建築用パネルの製造方法>
次に、上記構成の建築用パネル(扉体20)について、その製造方法上の特徴を詳細に説明する。
【0055】
この製造方法の一例では、表側中骨27を表板21の内面に接合する工程と、表側中骨27に対し裏側中骨28を近接し離隔するように配置し、この裏側中骨28を裏板22に接合する工程とを含む。
これらの工程において、前記接合は、溶接とすればよいが、接着材(両面テープや接着剤を含む)を介在した接着とすることも可能である。
一方、上下左右の力骨23,24,25,26は、中央側を開口した矩形枠状に組み合わせられ溶接されることで、一体状の枠状骨材A1として構成される。
そして、表側中骨27を接合した表板21と、枠状骨材A1と、裏側中骨28を接合した裏板22とは、接着材を介在して重ね合わせられ、厚さ方向の両側から加圧されることで、一体化される。
【0056】
また、前記製造方法の他例としては、上下左右の力骨23,24,25,26について中央側を開口した矩形枠状に組み合わせ溶接等により接合して、一体矩形枠状の枠状骨材A1を構成し、さらに、この枠状骨材A1の枠内側に表側中骨27及び裏側中骨28を接合することで一体状の骨材ユニットAを構成する。
そして、これらの工程の後、表板21と、骨材ユニットAと、裏板22とを、接着材を介在して重ね合わせ、これらをパネル厚方向の両側から加圧して接合する。
【0057】
前記製造方法の一例及び他例によれば、表側中骨27と裏側中骨28を離隔した固定状態に保持しながら、表板21と枠状骨材A1の間、枠状骨材A1と裏板22の間を、それぞれ十分に圧接して、これらを一体化することができる。
【0058】
なお、特に好ましい態様として、前記接着に用いる接着材を熱硬化性接着剤とし、前記加圧の際に加熱も行えば、前記接着材の熱硬化により、各部材間をより強固に接着することができる。
【0059】
<変形例>
上記製造方法では、表側中骨27と裏側中骨28をそれぞれ表板21と裏板22に接合する態様や、表側中骨27と裏側中骨28の両方を枠状骨材A1に接合する態様等を説明したが、他例としては、表側中骨27と裏側中骨28のうちの一方を表板21又は裏板22に接合し、他方を枠状骨材A1に接合することも可能である。
【0060】
上記実施態様において、複数の接合箇所は、全て溶接とした態様や、全て接着とした態様、一部を溶接とし他の一部を接着とした態様等、適宜な接合手段を用いることが可能である。
【0061】
また、上記実施態様によれば、複数の部材間を溶接又は接着により接合するようにしたが、他例としては、複数の部材間のうち、その一部又は全部を、ねじ止めや、リベット止め、嵌合等によって接合することも可能である。
【0062】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
1:建具装置
10:枠体
20,20’,20”:扉体(建築用パネル)
21:表板
22:裏板
25,26:力骨
27,27’:表側中骨
27b,27c:補強片
27b1:突片部
27b2:曲片部
28:裏側中骨
28b:補強片
28b1:突片部
28b2:曲片部
51,52:弾性体
A:骨材ユニット
A1:枠状骨材
図1
図2
図3
図4
図5
図6