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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162528
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】食品調理用シート
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/00 20060101AFI20221017BHJP
   A47J 36/02 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
A47J37/00 C
A47J36/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039265
(22)【出願日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2021067217
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 久晃
(72)【発明者】
【氏名】板田 光善
【テーマコード(参考)】
4B040
4B055
【Fターム(参考)】
4B040AA05
4B040JA02
4B040JA20
4B055AA01
4B055BA22
4B055CB03
4B055CB16
4B055FA01
4B055FB02
4B055FB32
4B055FC08
4B055FC09
(57)【要約】
【課題】剥離性に優れた食品調理用シートを提供することを目的とする。
【解決手段】
少なくとも片面に食品載置面を備えたアルミホイルと、前記アルミホイルの食品載置面に積層され、剥離性を有する樹脂層と、を含む食品調理用シートであって、
前記樹脂層が、
平面視において、第1の凹部を海とし、第1の凸部を島とする海島構造を有し、前記海が連続して形成され、前記島を複数有する下地領域と、
第2の凸部及び第2の凹部の少なくとも一方で形成され、意匠的デザインを構成する絵柄領域と、を有し、
前記第1の凸部の高さを基準とした前記絵柄領域の高さが、-30μm以上+30μm以下である、食品調理用シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に食品載置面を備えたアルミホイルと、
前記アルミホイルの食品載置面に積層され、剥離性を有する樹脂層と、
を含む食品調理用シートであって、
前記樹脂層が、
平面視において、第1の凹部を海とし、第1の凸部を島とする海島構造を有し、前記海が連続して形成され、前記島を複数有する下地領域と、
第2の凸部及び第2の凹部の少なくとも一方で形成され、意匠的デザインを構成する絵柄領域と、を有し、
前記第1の凸部の高さを基準とした前記絵柄領域の高さが、-30μm以上+30μm以下である、食品調理用シート。
【請求項2】
前記下地領域は、前記第1の凹部と前記第1の凸部とで構成された第1の格子パターンを有する、請求項1に記載の食品調理用シート。
【請求項3】
前記絵柄領域は、前記第2の凹部と前記第2の凸部とで構成された第2の格子パターンを有する、請求項1又は請求項2に記載の食品調理用シート。
【請求項4】
前記下地領域は、前記第1の凹部と前記第1の凸部とで構成された第1の格子パターンを有し、
前記絵柄領域は、前記第2の凹部と前記第2の凸部とで構成された第2の格子パターンを有し、
前記第1の格子パターンのメッシュサイズと、前記第2の格子パターンのメッシュサイズとの差が、50メッシュ以上である、請求項1に記載の食品調理用シート。
【請求項5】
前記第2の格子パターンのメッシュサイズが、前記第1の格子パターンのメッシュサイズよりも小さい、請求項4に記載の食品調理用シート。
【請求項6】
前記第1の格子パターンのメッシュサイズが100~200メッシュであり、且つ、
前記第2の格子パターンのメッシュサイズが50~150メッシュである、
請求項4又は請求項5に記載の食品調理用シート。
【請求項7】
前記下地領域の十点平均粗さ(Rz)が、3μm~40μmである請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の食品調理用シート。
【請求項8】
前記樹脂層が、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の食品調理用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品調理用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミホイルやクッキングシートなどの食品調理用シートは、フライパン等の調理器具の防汚目的のために、調理器具の上に敷いて使用される。具体的には、肉や魚等の食材を焼く場合にアルミホイルをフライパンに敷き、その上に食材を載置して使用される。このように食品調理用シートを用いて調理を行うと、調理器具を汚すことがなく、調理後の後片付けが容易である。一方、食品調理用シートには、シート表面に食材が付着しないように、食材との剥離性能(以下、単に「剥離性」と称することがある)が求められている。例えば、特許文献1にはシリコーン樹脂層面を有する食品調理用シートが開示されている。
【0003】
また、樹脂層を有する食品調理用シートの一例としては、樹脂層に凹部を海とし、凸部を島とする海島構造を有し、前記海が連続して形成されており、剥離性と火のとおりの均一性とをバランスよく向上させることが可能な食品調理用シートが提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-170431号公報
【特許文献2】特開2020-25859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、食品調理用シートの食品載置面には、下地領域に格子状等の柄(以下、単に「下地柄」と称することがある)が施されたり、下地柄との凹凸の高低差等による反射率等のコントラストによって、文字、絵柄、各種図形や線など消費者等が視覚的に認識可能な意匠的デザイン(以下、単に「絵柄」という場合がある)が施されることがある。しかし、食品載置面の凹凸形状を利用して食品載置面に意匠的デザインが施された食品調理用シートを用いて調理を行うと、加熱した食材をシート上から取り除く際に、意匠的デザインを構成する絵柄と下地柄との境界付近において食材がシートに付着することがある。このため、より食材の剥離性に優れた食品調理用シートの開発が求められている。
【0006】
以上の課題を解決すべく、本発明は、剥離性に優れた食品調理用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、下地領域における凸部と絵柄領域との高低差を少なくすることにより、上述の課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
<1> 少なくとも片面に食品載置面を備えたアルミホイルと、
前記アルミホイルの食品載置面に積層され、剥離性を有する樹脂層と、
を含む食品調理用シートであって、
前記樹脂層が、
平面視において、第1の凹部を海とし、第1の凸部を島とする海島構造を有し、前記海が連続して形成され、前記島を複数有する下地領域と、
第2の凸部及び第2の凹部の少なくとも一方で形成され、意匠的デザインを構成する絵柄領域と、を有し、
前記第1の凸部の高さを基準とした前記絵柄領域の高さが、-30μm以上+30μm以下である、食品調理用シート。
<2> 前記下地領域は、前記第1の凹部と前記第1の凸部とで構成された第1の格子パターンを有する、前記<1>に記載の食品調理用シート。
<3> 前記絵柄領域は、前記第2の凹部と前記第2の凸部とで構成された第2の格子パターンを有する、前記<1>又は前記<2>に記載の食品調理用シート。
<4> 前記下地領域は、前記第1の凹部と前記第1の凸部とで構成された第1の格子パターンを有し、
前記絵柄領域は、前記第2の凹部と前記第2の凸部とで構成された第2の格子パターンを有し、
前記第1の格子パターンのメッシュサイズと、前記第2の格子パターンのメッシュサイズとの差が、50メッシュ以上である、前記<1>に記載の食品調理用シート。
<5> 前記第2の格子パターンのメッシュサイズが、前記第1の格子パターンのメッシュサイズよりも小さい、前記<4>に記載の食品調理用シート。
<6> 前記第1の格子パターンのメッシュサイズが100~200メッシュであり、且つ、前記第2の格子パターンのメッシュサイズが50~150メッシュである、
前記<4>又は前記<5>に記載の食品調理用シート。
<7> 前記下地領域の十点平均粗さ(Rz)が、3μm~40μmである前記<1>~前記<6>のいずれか一つに記載の食品調理用シート。
<8> 前記樹脂層が、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選択される1種以上を含む、前記<1>~前記<7>のいずれか一つに記載の食品調理用シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、剥離性に優れた食品調理用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の食品調理用シートにおける食品載置面を示す概略図である。
図2図1におけるAA断面を示す概略図である。
図3】絵柄領域が第2の格子パターンを有する態様について説明するための概略図である。
図4】絵柄領域が第2の凹部で構成される態様について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。本実施形態の各数値範囲における上限値及び下限値は任意に組み合わせて任意の数値範囲を構成することができる。
【0012】
〔食品調理用シート〕
本実施形態の食品調理用シートは、少なくとも片面に食品載置面を備えたアルミホイルと、アルミホイルの食品載置面に積層され、剥離性を有する樹脂層と、を含み、前記樹脂層が、平面視において、第1の凹部を海とし、第1の凸部を島とする海島構造を有し、前記海が連続して形成され、前記島を複数有する下地領域と、第2の凸部及び第2の凹部の少なくとも一方で形成され、意匠的デザインを構成する絵柄領域と、を有し、前記第1の凸部の高さを基準とした前記絵柄領域の高さが、-30μm以上+30μm以下である。
【0013】
従来、食品調理用シートに絵柄や下地柄を形成する場合、例えば、シートの絵柄や下地柄に対応する凹凸がロール面に設けられたロール(以下、「エンボスロール」と称することがある。)を用い、これをシート表面に押圧して凹凸状の絵柄や下地柄を形成している。例えば、シート表面に凸状の下地柄や、絵柄を形成する場合には、エンボスロール表面の下地柄や絵柄に対応する領域は凹部となる。しかし、通常、ロール表面の絵柄に対応する領域は、下地柄に対応する領域の形成方法とは異なる方法で形成される。例えば、ロール上の絵柄に対応する領域は、通常エッチング処理によって形成されるが、下地柄に対応する領域は絵柄に対応する領域を形成した後に他のロール(マザーロール等)を用いて圧刻等によって形成される。このため、例えば、食品調理用シートの絵柄を凸部を用いて形成する場合、当該ロール上の絵柄に対応する領域(凹部)はロール上のシートの下地柄の凸部に対応する領域(凹部)よりも深くする必要がある。このようなエンボスロールを用いてシート表面に凹凸を形成すると、絵柄を構成する凸部が下地柄の凸部よりも高くなり、絵柄と下地柄とに高低差を有するシートが形成される。しかし、上述のように、このような従来の手法により得られた食品調理用シートを用いると、食材を加熱して取り除いた際に、例えば、下地柄と絵柄との境界付近において食材の付着が発生することがある。
【0014】
これに対し、近年では、エッチング処理や他のロールを用いた圧刻に代えてレーザ彫刻を用いることでエンボスロール上の絵柄と下地柄とに対応する領域を同時に加工可能な新しい技術の開発が進んでいる。当該技術を用いれば、食品調理用シートの絵柄を凸部を用いて形成する場合であっても、当該ロール上の絵柄に対応する領域(凹部)とロール上のシートの下地柄の凸部に対応する領域(凹部)との深さをそれぞれ調整することができる。このため、当該技術を使用したエンボスロールを用いてシート表面に凹凸を形成すると、絵柄を構成する凸部や下地柄の凸部の高さを各々自由に調整することができる。また、当該レーザー彫刻によれば、シートの絵柄部分に凸部や凹部を形成することができる。
【0015】
製法については限定されるものではないが、このような新しい技術を用いて第1の凸部の高さを基準とした絵柄領域の高さを-30μm以上+30μm以下とした本実施形態の食品調理用シートによれば、シートと食材との剥離性を向上させることができる。本実施形態の食品調理用シートにおいて優れた剥離性が奏される理由は明らかではない。一方、上述のように従来の絵柄付き食品用調理シートにおいては、絵柄領域と下地領域とにおいて凸部の高さに一定以上の高低差があり、当該高低差が剥離性低下の一因であると推測される。具体的には、樹脂層の凸部に高低差があると、例えば、調理時にシート上の食材が水平方向に移動した際や、調理後の食材をシートから取り除く際に食材が高い凸部に引っかかり、シート表面への食材の付着の原因の一つとなる。また、肉や魚などの食材は、調理の際に熱を加えると、水分の蒸発や油分の流出等によって凝集することがある。このような食材を加熱調理する際、当該食材が凸部に高低差のある領域に載置されていると(即ち、食材が高低差のある凸部群に接触していると)、食材が凝集する際に高い凸部が食材表面に巻き込まれることがある。このような凸部の巻き込みは、食材をシートから取り除く際の剥離性に影響を与えることが推測される。これに対し、本実施形態の食品調理用シートは、樹脂層の絵柄領域と下地領域との凸部の高低差が小さいため、食材が一部の凸部に引っかかったり食材の凝集に凸部が巻き込まれたりするのを抑制でき、シートと食材との剥離性が向上するものと推測される。
【0016】
(食品調理用シートの構成)
まず、図1~4を用いて、本実施形態における食品調理用シートの構成について説明する。図1は、本実施形態の食品調理用シートにおける食品載置面を示す概略図である。図2は、図1におけるAA断面を示す概略図である。図3は、絵柄領域が第2の格子パターンを有する態様について説明するための概略図である。図4は、絵柄領域が第2の凹部で構成される態様について説明するための概略図である。なお、以下の図に示される各構成要素はいずれも例示であり、これら図面によってそのサイズや形状が限定されるものではない。
【0017】
図1に示すように本実施形態の食品調理用シート100は、樹脂層10上に下地領域12と、絵柄領域14とが形成されている。同図に示すように、食品調理用シート100は、絵柄領域内14に囲われた下地領域12も有している。下地領域12には、後に詳述する、第1の凹部を海とし第1の凸部を島とする海島構造が形成されている。さらに、図1においては、樹脂層10(食品載置面)の絵柄領域14を除く全体に下地領域12の海島構造が形成されている。また、下地領域12には、第1の凹部と第1の凸部とで構成された第1の格子パターンが形成されている。
【0018】
図1に示すように、絵柄領域14は、視覚的に把握可能な意匠的デザインを構成する領域である。また、図1において絵柄領域14は、樹脂層10表面に沿った任意の方向に直線状又は曲線状に連続(延在)した第2の凸部によって構成されている。
【0019】
図1における食品調理用シート100のAA断面を観察すると、図2に示すように下地領域12には、第1の凹部12Rと第1の凸部12Cとが設けられている。同様に、絵柄領域14には、第2の凸部14Cが設けられている。図2においては、絵柄領域14が第2の凸部14Cのみで構成されている(即ち、第2の凹部を有さない)態様が示されている。また、同図に示すように、食品調理用シート100においては、第2の凸部14Cの高さが絵柄領域14の高さとなる。このため、第1の凸部12Cの高さt1を基準とした第2の凸部14Cの高さt2(即ち、第1の凸部12Cと第2の凸部14Cとの高低差(t2-t1))が、-30μm以上+30μm以下となる。このように、食品調理用シート100は、第1の凸部12Cと第2の凸部14Cとの高低差が極力小さくなるように構成されているため、食材とシートとの剥離性に優れる。このため、例えば、従来の調理用シートで見られた下地領域12と絵柄領域14との境界付近における下地領域12(特に、ある程度の長さを有する食材を特定の方向から取り除いた(剥離した)場合において、最後まで食材が接していた領域周辺に位置する下地領域12)への食材の付着も効果的に抑制することができる。
【0020】
また、図3に示すように、図1の食品調理用シート100は、第1の凹部12Rと第1の凸部12Cとが規則的に配列されて構成された第1の格子パターン12Pを有することができる。さらに、図3に示すように、絵柄領域14には第2の凹部14Rを設けることができ、第2の凸部14C上に第2の凹部14Rが規則的に配列された第2の格子パターン14Pが形成されていてもよい。
【0021】
なお、図1図3においては絵柄領域14が第2の凸部14Cのみ、並びに、第2の凸部14C及び第2の凹部14Rの組み合わせで構成される態様を例に示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明における「絵柄領域」は、第2の凸部及び第2の凹部の少なくとも一方で形成されていればよく、例えば、1)第2の凸部のみ、2)第2の凹部のみ、又は、3)第2の凸部と第2の凹部との組み合わせのいずれにおいても、絵柄領域を作製することができる。例えば、絵柄領域14が第2の凹部14Rのみで形成されている場合、食品調理用シートは図4に示すような断面視を有することとなる。また、図4に示すように、絵柄領域14が第2の凹部14Rのみで構成される場合、「絵柄領域の高さ」は第2の凹部の最下点が基準となる。すなわち、「第1の凸部の高さを基準とした絵柄領域の高さ」は、シート厚み方向と平行な方向における第1の凸部の高さ(t1)から第2の凹部の最下点(t2)までの距離に相当する。
【0022】
以下、本実施形態の食品調理用シートの構成要素について説明する。
【0023】
(アルミホイル)
本実施形態の食品調理用シートは、少なくとも片面に食品載置面を備えたアルミホイルを備える。アルミホイルとしては、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金の箔が挙げられる。これらの箔としては、JIS H4160で規定されたものが挙げられ、例えば、1N30、1100、8079、8021等が挙げられる。なお、本実施形態において食品載置面は少なくともアルミホイルの片面に設けられていればよいが、所望の用途に応じて、アルミホイルの両面に食品載置面が設けられていてもよい。
【0024】
(樹脂層)
本実施形態において、アルミホイルの少なくとも片面には、食品載置面上に剥離性を有する樹脂層が積層される。樹脂層は、例えば、アルミホイルの両面の内、食材を載せる側の面(食品載置面)に積層される。
【0025】
樹脂層における樹脂は、剥離性及び耐熱性を有する樹脂であれば特に限定されない。樹脂は、剥離性の観点から、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、シリコーン樹脂であることがより好ましい。シリコーン樹脂としては、例えば、主要な重合体連鎖が珪素原子と酸素原子との交互配列からなる重合体を主成分とする合成樹脂であって、コーティング可能なシリコーン樹脂が挙げられる。このようなシリコーン樹脂としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキルハイドロシロキサン等が挙げられる。これらのシリコーン樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、シリコーン樹脂は、(a)メチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとを塩化第一白金酸、塩化第ニ白金酸、及び白金コンプレックス塩、塩化白金酸とシロキサンとの錯体等で例示される白金触媒の存在下で付加反応させたもの、(b)両末端シラノール官能性長鎖ジメチルシロキサンと、メチルハイドロジェンポリシロキサン或いはメチルメトキシポリシロキサンとを、有機錫系触媒の存在下で縮合反応させたもの等であってもよい。
【0026】
本実施形態の食品調理用シートでは、後述するように、アルミホイルの片面に樹脂層が積層された後にエンボスなどの凹凸形成加工(以下、単に「エンボス加工」と称することがある。)が施されるため、エンボス加工の凹凸により樹脂層が薄く延ばされる場合がある。このため、樹脂層の単位面積当たりの質量は、剥離性の観点から、0.02g/m2以上であることが好ましく、0.04g/m2以上であることがより好ましい。一方、良好な熱伝導性を発揮するという観点から、1.5g/m2以下であることが好ましく、1.0g/m2以下であることがより好ましい。
【0027】
樹脂層のアルミホイルへの積層方法としては、例えば、公知の方法が用いられ、樹脂を含有する溶液をアルミホイルに塗布したり、樹脂フィルムをアルミホイルにラミネートしたりする方法が挙げられる。
【0028】
(海島構造)
本実施形態における樹脂層は、平面視において、第1の凹部を海とし、第1の凸部を島とする海島構造を有する。前記海島構造においては、海(第1の凹部)が連続して形成されており、さらに、樹脂層は、島(第1の凸部)を複数有する下地領域と、第2の凸部及び第2の凹部の少なくとも一方で形成され、意匠的デザインを構成する絵柄領域と、を有する。また、上述のように、本実施形態において、第1の凸部の高さを基準とした絵柄領域の高さは、-30μm以上+30μm以下である。
【0029】
(下地領域)
本実施形態において「下地領域」とは、樹脂層表面に設けられた、第1の凹部(海)と第1の凸部(島)とで構成される海島構造が設けられた領域であり、第1の凹部及び第1の凸部により下地となるパターンが形成された領域である。上述のように、樹脂層に設けられた海島構造においては、海が連続して形成されており、さらに、海島構造は島を複数有する。ここでいう「海が連続して形成」されるとは、例えば、平面視において、樹脂層の表面全体における海の数が1つであることをいう。下地領域は、第1の凹部と第1の凸部とで構成された第1の格子パターンを有していてもよく、また、第1の凹部及び凸部が規則的に配列させて第1の格子パターンを形成してもよい。さらに、下地領域は、食品載置面の絵柄領域を除く食品載置面の全体に形成されていてもよい。
【0030】
上述のように、第1の凸部(島)は、下地領域の表面に規則的に形成されていてもよく、不定形の梨地状のように非規則的に形成されていてもよい。第1の凸部の平面視における形状は、例えば、三角形、四角形等の多角形状、円、楕円等の円形状、並びに、不定形の梨地状パターンを形成するランダム形状であってもよく、同種又は異種の形状の第1の凸部が規則的又は非規則的に配列されることにより、上述の第1の格子パターンが形成されていてもよい。なお、第1の凸部(島)の数は、1つであってもよく、複数であってもよいが、剥離性や火のとおりの均一性を一層バランスよく向上させる観点から、複数であることが好ましい。
【0031】
下地領域は、食材とシートとの接触面積を十分に確保して剥離性の低下を防ぎ、視認性を更に高め、且つシートの破れを防止する観点から、十点平均粗さ(Rz:JIS B0601-1994)が3μm~40μmであることが好ましく、10μm~30μmであることが更に好ましく、15μm~25μmが特に好ましい。十点平均粗さ(Rz)は公知の表面粗さ測定機で測定することができ、例えば、後述する実施例に記載の方法により求められる。
【0032】
(絵柄領域)
本実施形態において「絵柄領域」とは、樹脂層表面に設けられた意匠的デザインを構成する領域であり、具体的には、第2の凸部及び第2の凹部の少なくともいずれか一方によって形成され、且つ、消費者が食品載置面を観察した際に特定の意匠的デザインであることを把握可能なパターンで構成された領域を意味する。上述のように、絵柄領域は、1)第2の凸部のみ、2)第2の凹部のみ、又は、3)第2の凸部と第2の凹部との組み合わせのいずれで形成されていてもよい。絵柄領域の特定の意匠的デザインとしては、特に限定されるものではないが、文字、絵柄、各種図形や線などが挙げられ、消費者が樹脂層表面を観察した際に視覚的に認識可能なパターンであればよい。絵柄領域によって構成される文字、絵柄、各種図形や線などは、例えば、下地領域の凹凸と絵柄領域の凹凸との高低差などによる反射率等のコントラストによって、消費者等が視覚的に認識可能となる。絵柄領域において、特定の意匠的デザインは、直線状又は曲線状に連結した第2の凸部及び/又は第2の凹部で形成されるパターンによって構成されている。例えば、絵柄領域が主として第2の凸部によって形成されている場合、第2の凸部は、樹脂層表面と平行な任意の方向に直線状又は曲線状に連続(延在)した凸部となる。換言すると、絵柄領域は、所望のデザインに応じて、任意の方向に直線状又は曲線状に連続して形成された第2の凸部によって構成されるパターンとなる。主として第2の凸部によって絵柄領域が形成されている場合、特に限定されるものではないが、第2の凸部は、樹脂層表面と平行な方向に、好ましくは300μm以上、更に好ましくは400μm以上、連続した凸部であることが好ましい。
【0033】
絵柄領域は、第2の凸部と第2の凹部との両方を有していてもよい。例えば、絵柄領域が主として第2の凸部によって形成されている場合、「第2の凹部」は第2の凸部によって形成されるパターンを区分けする凹部となり、意匠的デザインを構成するパターンに形成される凹部となる。このため、上述のように絵柄領域が主として第2の凸部によって形成されている場合、第2の凸部は一定以上の長さにおいて連続して形成された凸部となりうるが、第2の凹部の介在によって非連続とされる部分があってもよい。絵柄領域は、第2の凹部と第2の凸部とで構成された第2の格子パターン(即ち、第2の凸部が第2の凹部によって区分けされて形成されたパターン)を有していてもよく、また、第2の凸部上に第2の凹部が規則的に配列されて第2の格子パターンを形成していてもよい。第2の凹部によって形成される第2の格子パターンは、平面視において、例えば、三角形、四角形等の多角形状、円、楕円等の円形状、又は、不定形の梨地状パターンを形成するランダム形状など、同種又は異種の形状が規則的又は非規則的に配列されることにより構成されるパターンであってもよい。さらに、絵柄領域が主として第2の凹部によって形成されている場合も同様に、第2の凹部に対し第2の凸部が規則的又は非規則的に配列されて第2の格子パターンを形成していてもよい。
【0034】
(絵柄領域の高さ)
本実施形態において、絵柄領域が、第2の凸部のみ、又は、第2の凸部と第2の凹部との組み合わせで形成される場合、「第1の凸部の高さを基準とした絵柄領域の高さ」は、“第1の凸部及び第2の凸部の高さとの差”となる。
また、絵柄領域が、第2の凹部のみで形成される場合、「第1の凸部の高さを基準とした絵柄領域の高さ」は、“シート厚み方向と平行な方向における第1の凸部から第2の凹部の最下点までの距離”となる。
上述のように、第1の凸部の高さを基準とした絵柄領域の高さは、-30μm以上+30μm以下である。本実施形態において、下地領域の第1の凸部の高さ(t1)と絵柄領域の高さ(t2)との差(t1-t2)を-30μm以上+30μm以下に設定(即ち、t2[μm]=(t1[μm]-30μm)~(t1[μm]+30μm))することで、本実施形態の食品調理用シートの剥離性を向上させることができる。下地領域の第1の凸部の高さ(t1)と絵柄領域の高さ(t2)との差(t1-t2)は、上述の範囲であれば特に問題はないが、更に、剥離性を高める観点から、-18μm以上+18μm以下であることが好ましく、-10μm以上+10μm以下であることが更に好ましい。また、絵柄領域が、第2の凸部のみ、又は、第2の凸部と第2の凹部との組み合わせで形成される場合には、第1の凸部及び第2の凸部の高さとの差は、約0μmであることが特に好ましい。
【0035】
下地領域の第1の凸部の高さ(t1)と絵柄領域の高さ(t2)との差(t1-t2)は、例えば、公知のレーザー顕微鏡を用い、下地領域と絵柄領域との境界において、下地領域の第1の凸部と絵柄領域の第2の凸部や凹部との段差(単位:μm)を測定することで算出することができる。
【0036】
(凹凸構造の作製方法)
第1の凸部及び第2の凸部の断面形状は特に限定されるものではなく、矩形、三角形、半円形など所望の形状を採用することができる。また、各凹凸の深さは、特に限定されるものではないが、例えば、第1の凸部の高さ(即ち、第1の凹部の深さ)を、例えば、3~40μm程度とすることができる。凹凸の深さが40μm以下であれば、樹脂層がエンボス加工の凹凸部分で薄く延ばされた際に、亀裂等が入りにくい。
【0037】
樹脂層に下地領域の海島構造(第1の凸部及び第1の凹部)や絵柄領域を構成するパターン(第2の凸部及び第2の凹部)を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、樹脂層表面にエンボス加工を施す方法が挙げられる。この際、例えば、上述の下地領域及び絵柄領域の各々に対応する領域がレーザー加工によりロール表面に形成されたエンボスロールを用いて、食品調理用シートの樹脂層に本実施形態における下地領域及び絵柄領域を形成することができる。なお、第2の格子パターンを有する(即ち第2の凹部を有する)絵柄領域を形成する場合には、第1の格子パターンに加えて絵柄領域の第2の凹部に対応する彫刻が施されたエンボスロールを用い、第2の格子パターンを有さない絵柄領域を形成する場合には、絵柄領域には第2の凹部に対応する彫刻を有さず、その周辺の下地領域のみに第1の格子パターンに対する彫刻が施されたエンボスロールを用いることができる。
【0038】
(格子パターン)
上述のように、本実施形態における下地領域は、第1の凹部と第1の凸部とで構成された第1の格子パターンを有することができる。同様に、絵柄領域は、更に第2の凹部を設け、第2の凹部と第2の凸部とで構成された第2の格子パターンを有していてもよい。各格子パターンについて、その平面視における形状は特に限定はないが、規則的に配列される区画を、例えば、特定のメッシュサイズによって規定することができる。
【0039】
本実施形態において、第1及び第2の格子パターンの「メッシュサイズ」とは、各領域における、1インチ(25.4mm)四方内における目数(凸部の数)の平方根を意味する。すなわち、第1の格子パターンにおいて、1インチ(25.4mm)四方の領域内に40000個の凸部(島)を有する場合には、200メッシュと表記される。メッシュサイズについては、レーザー顕微鏡やマイクロスコープなど公知の形状測定装置で測定することができる。例えば、第1及び第2の格子パターンが周期的な格子パターンの場合には、後述する実施例に記載の方法のように、各格子パターン1区画について、X方向とY方向との各々について、凸部を中央にした際の一端の凹部中央部から、もう一端の凹部中央部までの長さ(単位:mm)について、異なる箇所5点で測定した平均値(L)を算出し、1インチ(25.4mm)を、平均値(L)で除した値(25.4/L)をX方向及びY方向で各々算出し、これらを掛け合わせた数の平方根をメッシュサイズとみなすことができる。
例えば、X方向において、凸部を中央にした際の一端の凹部中央部から、もう一端の凹部中央部までの長さの平均値(L)が0.166mmの場合、X方向の目数は、25.4mm/0.166mm=約153となる。
同様にY方向の目数を算出し、仮に、約153(Y)となった場合には、153(X)×153(Y)=23409(XY)の平方根、即ち、√(153(X)×153(Y))=153(√XY)が本実施形態における“メッシュサイズ”となる。
特に限定はないが、“格子パターン1区画について、凸部を中央にした際の一端の凹部中央部から、もう一端の凹部中央部までの長さ(単位:mm)”は、例えば、図1のXY方向のいずれかの方向に沿った長さを採用することができる。
【0040】
下地領域における第1の格子パターンのメッシュサイズ(例えば、下地領域1インチ四方当たりの第1の凸部の数の平方根)は、剥離性及び視認性を更に高める観点から、100~200メッシュが好ましく、100~150メッシュが更に好ましく、120~150メッシュが特に好ましい。
絵柄領域に第2の凹部と第2の凸部とで構成された第2の格子パターンが形成されている場合、第2の格子パターンのメッシュサイズ(即ち、絵柄領域1インチ四方当たりの第2の凸部の数の平方根)は、剥離性及び視認性を更に高める観点から、50~150メッシュが好ましく、50~100メッシュが更に好ましく、50~70メッシュが特に好ましい。
第1の格子パターンのメッシュサイズ〔M1〕と、第2の格子パターンのメッシュサイズ〔M2〕との差〔|M1-M2|〕は、視認性を更に高める観点から、50メッシュ以上であることが好ましく、80メッシュ以上が更に好ましく、100メッシュ以上が特に好ましい。
同様に、視認性を更に高める観点から、第2の格子パターンのメッシュサイズが、第1の格子パターンのメッシュサイズよりも小さいことが好ましい。
さらに、第1の格子パターンのメッシュサイズと第2の格子パターンのメッシュサイズとの組み合わせとしては、視認性を更に高める観点から、第1の格子パターンのメッシュサイズが100~200メッシュ(好ましくは100~150メッシュ)であり、且つ、第2の格子パターンのメッシュサイズが50~150メッシュであることが好ましく(さらに好ましくは50~100メッシュ)、当該組み合わせにおいて、第1の格子パターンのメッシュサイズ〔M1〕と第2の格子パターンのメッシュサイズ〔M2〕との差〔|M1-M2|〕が50メッシュ以上であること更に好ましく、第2の格子パターンのメッシュサイズが、第1の格子パターンのメッシュサイズよりも小さいことが特に好ましい。
【0041】
樹脂層は、樹脂層の表面(食品載置面)全体又は一部に海島構造が形成されていればよいが、樹脂層の絵柄領域を除く表面全体に海島構造を形成すると、剥離性と火のとおりの均一性を一層バランスよく向上できるため好ましい。
【0042】
食品調理用シートは、アルミホイルの他方の面(例えば、食品載置側の面と反対側の面)に剥離性を有する剥離層を形成してもよい。剥離層は、例えば、樹脂層における樹脂として例示した樹脂から形成されてもよい。
【実施例0043】
以下、実施例及び比較例を示して本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
【0044】
[実施例及び比較例]
厚さ12μm、1100(合金番号)のアルミホイルの片面の光沢面(裏側は梨地面)に、シリコーン樹脂(市販のシリコーン剥離剤(軽剥離用途))を0.2g/m2コーティングすることにより樹脂層を形成した。その後に、樹脂層の表面に、表1~4に示す形状及び特性となるようにエンボス加工を行うことにより下地領域の海島構造(即ち第1の凸部及び凹部)と絵柄領域(即ち、第2の凸部及び凹部)とを形成した。各食品調理用シートの海島構造は、第1の凹部で囲まれた各第1の凸部が平面視で略同面積の四角形で構成され、且つ、第1の凸部と第1の凹部とが規則的に配列した格子状の下地柄(第1の格子パターン)が形成されていた。また一部の実施例においては、第2の凸部で構成されたパターンに第2第の凹部を形成し絵柄領域に格子状のパターンを形成した。当該パターンにおいては、第2の凹部で囲まれた各第2の凸部が平面視で略同面積の四角形であり、第2の凸部と第2の凹部とが規則的に配列した格子状のパターン(第2の格子パターン)が形成されていた。
【0045】
各実施例及び比較例の食品調理用シートの樹脂層(食品載置面)において以下の評価をおこなった。結果を表に示す。
【0046】
(第1の凸部の高さを基準とした絵柄領域の高さ)
得られた食品調理用シートを、表面が平滑且つ硬質なガラス板の上に、皺やうねりが無い様にしっかりと固定した後に、オリンパス社製レーザー顕微鏡(製品名:LEXT OLS4000)の測定台の上に、ぐらつきが無い様に固定し、下地領域と絵柄領域との境界における任意の直線区間(下地領域:約0.8mm、絵柄領域:約0.8mm)内において、下地領域の第1の凸部と絵柄領域の段差(単位:μm, 小数点以下第1位を四捨五入)を測定した。ここで、絵柄領域が第2の凸部のみ、又は、第2の凸部と第2の凹部との組み合わせで形成されている場合は、下地領域の第1の凸部と絵柄領域の第2の凸部の段差を測定し“第1の凸部の高さを基準とした絵柄領域の高さ”とした。また、絵柄領域が、第2の凹部のみで形成される場合は、下地領域の第1の凸部から第2の凹部の最下点までの距離を測定し“第1の凸部の高さを基準とした絵柄領域の高さ”とした。測定は異なる箇所5点で行い、各々その平均値(小数点以下第1位を四捨五入)を用いた。
〔測定条件〕
対物レンズ:20倍(倍率:432倍)
【0047】
(メッシュサイズ)
第1の格子パターン及び第2の格子パターンのメッシュサイズを以下に従って測定した。得られた食品調理用シートに対し、オリンパス社製レーザー顕微鏡(製品名:LEXT OLS4000)を用い、格子パターン1区画について、凸部を中央にした時の一端の凹部中央部から、もう一端の凹部中央部までの長さ(単位:mm, 小数点以下第3桁)を測定した。測定は異なる箇所5点でおこない、その平均値(L)(小数点以下第3桁)を算出し、当該平均値(L)で1インチ(25.4mm)を除した値(25.4/L)(小数点以下第1位を四捨五入)をX方向及びY方向で各々の目数とし、これらを掛け合わせて平方根をとった数(一の位を四捨五入)をメッシュサイズとした。なお、格子パターンを有していない場合は、メッシュサイズは“0”とした。
〔測定条件〕
対物レンズ:20倍(倍率:432倍)
【0048】
(下地領域の十点平均粗さ(Rz))
得られた食品調理用シートを、表面が平滑且つ硬質なガラス板の上に、皺やうねりが無い様にしっかりと固定した後、板のぐらつきが無い場所において、ミツトヨ社製小型表面粗さ測定機(製品名:サーフテストSJ-210)を用い、下記測定条件に従って、下地領域の十点平均粗さRzを測定(単位:μm, 小数点以下第1位を四捨五入))した。また、測定は異なる箇所5点で行いその平均値(小数点以下第1位を四捨五入)を下記表に記載した。
〔測定条件〕
適用規格:JIS B0601-1994
測定速度:0.5mm/s
測定力:0.75mN
触針材質:ダイヤモンド
触針先端半径:2μm
評価長さ:4.0mm
λc:0.8mm
λs:2.5mm
【0049】
(テープ剥離力)
得られた食品調理用シートの食品載置面に対し、粘着テープ(スリーエムジャパン社製/スコッチ/エコノパック/超透明テープS/BP-24N/24mm幅)を貼り付け、粘着テープを張り付けた部分に荷重2kgのローラーを1往復させ、粘着テープを食品調理用シートの樹脂層表面に圧着させた。その後、食品調理用シートと粘着テープとの剥離角度を45°に維持したまま、下記測定条件に従い速やかに長手方向に粘着テープを剥離した時の最大力(単位:N, 小数点以下第3位を四捨五入)を測定した。また、測定は異なる箇所5点で行いその平均値(小数点以下第3位を四捨五入)を下記表に記載した。
〔測定条件〕
剥離速度:36m/分
剥離長さ:15cm
剥離角度:45°
【0050】
(食材の剥離性:調理試験方法)
JIS K 6894「金属素地上のフッ素樹脂塗膜の試験方法」の付属書B「ホットケーキ離型試験法」を参考に、以下の方法にて試験を行った。
試験液は、市販の鶏卵の卵白のみを取り出し均質になるようかき混ぜた後、80%(w/w)となるよう水道水を加え、泡立てないよう注意しながら再び均質になるようかき混ぜて調製した。また、加熱装置には、パナソニック製IHクッキングヒーター(製品名:CH-MRS6L)を用いた。
各実施例及び比較例の食品調理用シートを、食品載置面を上側にしてフライパン(φ24cm)に乗せ、シートの食品載置面上にφ50mmセルクルリング(高さ40mm)を載置した。ついで、セルクルリング内に試験液を10ml流し入れ、蓋をして火力を“5(中火)”に調整して加熱を開始した。3分後加熱を終了し、速やかに、セルクルリングを載せた食品調理用シートを平らな場所に移動させた。ついで、セルクルリングを約20m/分の速度で、食品調理用シートに対して水平に引っ張り、加熱した卵白の食品調理用シートへの付着の有無を下記判断基準にて判定した。結果を下記表に示す。
〔剥離性判断基準〕
A:セルクルリングを引っ張った際の抵抗感が殆どなかった。
また、食品調理用シートに加熱した卵白の付着もなかった。
B:セルクルリングを引っ張った際に若干の抵抗感を感じたが、食品調理用シートに加熱した卵白の付着はなかった。
C:食品調理用シートに加熱した卵白が付着していた。
【0051】
(絵柄の視認性)
以下、3つの判断基準を用い、絵柄の視認性について総合的に判断した。
【0052】
判断基準1)下地領域の十点平均粗さRz
A:10μm以上
B:3μm以上10μm未満
C:3μm未満
【0053】
判断基準2)下地領域の第1の格子パターンのメッシュサイズ
A:150メッシュ以上
B:100メッシュ以上150メッシュ未満
C:100メッシュ未満
【0054】
判断基準3)第1の格子パターンのメッシュサイズ(M1)と第2の格子パターンのメッシュサイズ(M2)との差(M1-M2)
但し、絵柄領域において第2の格子パターンを有していない場合は、第2の格子パターンのメッシュサイズ(M2)は“0”とした。
A:100メッシュ以上
B:50メッシュ以上100メッシュ未満
C:50メッシュ未満
【0055】
総合判断)
A(視認性は非常に良好):前記1)~3)の判断基準が全てA
B(視認性は良好):前記1)~3)の判断基準において、Bが有り、Cは無し
C(視認性が悪い):前記1)~3)の判断基準において、Cが有り
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【符号の説明】
【0060】
100:食品調理用シート、10:樹脂層、12:下地領域、12C:第1の凸部、12R:第1の凹部、12P:第1の格子パターン、14:絵柄領域、14C:第2の凸部、14R:第2の凹部、14P:第2の格子パターン
図1
図2
図3
図4