(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016253
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】感染防止装置
(51)【国際特許分類】
A61G 13/10 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A61G13/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207230
(22)【出願日】2020-12-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2020119573
(32)【優先日】2020-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520257175
【氏名又は名称】一般社団法人難病治療研究協会
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 秀紀
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341MM17
4C341MN20
4C341MS06
4C341MS30
(57)【要約】
【課題】施術者および患者の間の感染を効果的に防止しつつ、良好な施術を可能とする感染防止装置を提供する。
【解決手段】施術に使用される感染防止装置60であって、床面に配置可能な支持台71と、支持台71から延在する支柱72と、支柱72に対して回転可能なカバー支持部73と、カバー支持部73を支柱72に対して回転可能に保持する回転保持部74と、カバー支持部73に固定される透明なカバー80と、を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施術に使用される感染防止装置であって、
床面に配置可能な支持台と、
支持台から延在する支柱と、
前記支柱に対して回転可能なカバー支持部と、
前記カバー支持部を前記支柱に対して回転可能に保持する回転保持部と、
前記カバー支持部に固定される透明なカバーと、を有することを特徴とする感染防止装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記カバー支持部が固定される側から反対側まで延在する方向と直交する断面において、円弧状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の感染防止装置。
【請求項3】
前記カバーは、前記湾曲部の円弧の両端部から連続する平板状の平板部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の感染防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指圧、マッサージ、鍼灸治療等の施術を行う際の感染防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指圧、マッサージ、鍼灸等の施術を行う際には、施術者は患者に近づく必要がある。特に、頭部、首または肩などを施術する際には、施術者の顔と患者の顔が近づく。このため、施術者または患者の一方がウイルスに感染している場合には、飛沫感染や空気感染等により、感染していない方に感染する可能性が高まる。
【0003】
例えば特許文献1には、患者の身体の一部を覆うように、透明なアクリル板を円弧状に形成し、握り手が設けられた医療用感染防護器具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の器具は、手と処置用具を入れることができるが、手を自在に動かすことは困難である。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、施術者および患者の間の感染を効果的に防止しつつ、良好な施術を可能とする感染防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る感染防止装置は、施術に使用される感染防止装置であって、床面に配置可能な支持台と、支持台から延在する支柱と、前記支柱に対して回転可能なカバー支持部と、前記カバー支持部を前記支柱に対して回転可能に保持する回転保持部と、前記カバー支持部に固定される透明なカバーと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した感染防止装置は、回転保持部を利用してカバーを回転させて、カバーの湾曲部により患者の頭部を適切な位置で覆うことができる。このため、カバーによって術者の顔と患者の顔を隔離しつつ、カバーとベッドの間から腕を通す空間を適切な状態とすることができる。このため、本感染防止装置は、施術者および患者の間の感染を効果的に防止しつつ、良好な施術を可能とする。
【0009】
前記カバーは、前記カバー支持部が固定される側から反対側まで延在する方向と直交する断面において、円弧状に形成されてもよい。
【0010】
前記カバーは、前記湾曲部の円弧の両端部から連続する平板状の平板部を有してもよい。これにより、施術者は、ベッドと平板部の間に、施術者が施術を行うために腕を通す空間を確保しつつ、湾曲部および平板部を患者に対して適切な距離で配置できる。このため、本感染防止装置は、施術者および患者の間の感染を効果的に防止しつつ、良好な施術を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る感染防止装置を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る感染防止装置を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る感染防止装置の水平面における部分断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る感染防止装置の使用状態を示す側面図である。
【
図5】第1実施形態に係る感染防止装置の使用状態を示す正面図である。
【
図6】第1実施形態に係る感染防止装置の使用状態を示す部分断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る感染防止装置の使用状態を上方から見た拡大図である。
【
図8】第2実施形態に係る感染防止装置を示す側面図である。
【
図9】第2実施形態に係る感染防止装置の部分拡大斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係る感染防止装置の使用状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のA-A線に沿う断面図である。
【
図11】第2実施形態に係る感染防止装置の変形例の使用状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のB-B線に沿う断面図である。
【
図12】第2実施形態に係る感染防止装置の他の変形例の使用状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のC-C線に沿う断面図である。
【
図13】第1実施形態に係る感染防止装置を示す斜視図であり、(A)は変形例、(B)は他の変形例を示す。
【
図14】第1実施形態に係る感染防止装置の更に他の変形例を示す図であり、(A)は側面図、(B)は(A)の矢印Dから見た天板の正面図である。
【
図15】第1実施形態に係る感染防止装置の更に他の変形例を示す側面図である。
【
図16】第2実施形態に係る感染防止装置の変形例を示す図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法は、説明の都合上、誇張されて実際の寸法とは異なる場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<第1の実施形態>
【0013】
第1の実施形態に係る感染防止装置10は、指圧、マッサージ、鍼灸等の施術を行う施術者と、施術を受ける患者の間のウイルス等の飛沫感染や空気感染を防止するものである。感染防止装置10は、患者が横になったベッドと、椅子に座った施術者の間に配置される。患者のベッドにおける姿勢は、仰向けであることが好ましいが、これに限定されない。施術者は、椅子に座っていなくてもよい。
【0014】
感染防止装置10は、
図1~3に示すように、床面等に配置される支持体20と、支持体20の支持部23から垂れ下がるカバー30とを備えている。
【0015】
支持体20は、床面に接触するように配置される2つの支持台21と、各々の支持台21から略垂直に上方へ延在する柱状の2つの支柱22と、2つの支柱22を接続する支持部23および補助梁24とを有している。なお、上方とは、重力方向の上方向である。
【0016】
2つの支持台21の形態は、床面に安定して配置可能であれば、特に限定されない。例えば、支持台21は1つのみであってもよい。2つの支柱22は、各々の支持台21から略垂直に上方へ延在する同形状の部材である。なお、支柱22が支持台21から延在する方向は、必ずしも垂直上方に限定されず、垂直上方に対して傾いていてもよい。
【0017】
支持部23は、カバー30を支持する部位である。支持部23は、2つの支柱22の間で水平に延在している。補助梁24は、支持部23よりも床面に近い側で、2つの支柱22に連結されている。支持部23は、支持体20の強度を確保するための部材である。したがって、支持体20の強度を十分に確保できれば、補助梁24は設けられなくてもよい。
【0018】
カバー30は、施術者が患者を見て施術できるように透明であり、かつ施術者と患者の間での飛沫を防止するための柔軟なフィルム状の部材である。カバー30は、1つの中央カバー31と、2つの側方カバー32とを備えている。透明とは、反対側を目視できるのであれば、半透明も含むものとする。
【0019】
中央カバー31は、略長方形であり、短辺の1つである側端が、支持部23の延在方向の略中央部に固定されている。中央カバー31は、重力によって下方へ垂れ下がっている。中央カバー31の下端には、中央カバー31が捲れ上がることを抑制して垂れ下がった状態を維持するための錘31Aが設けられる。下方とは、重力方向の下方向である。下端とは、重力方向の下側の端部である。なお、錘31Aは、設けられなくてもよい。
【0020】
各々の側方カバー32は、略長方形であり、短辺の1つである側端が、支持部23の支柱22に近い側に固定されている。すなわち、2つの側方カバー32は、中央カバー31に対して、当該中央カバー31の厚さ方向と垂直な方向であって中央カバー31が垂れ下がる方向Xと垂直な方向の両側に配置される。側方カバー32は、重力によって下方へ垂れ下がっている。側方カバー32の下端には、側方カバー32が捲れ上がることを抑制して垂れ下がった状態を維持するための錘32Aが設けられる。なお、錘32Aは、設けられなくてもよい。
【0021】
側方カバー32は、長辺の1つが位置する側辺が、支柱22に固定されている。このため、側方カバー32の位置は、感染防止に適切な位置に保持される。なお、側方カバー32は、支柱22に固定されていなくてもよい。側方カバー32の支柱22に固定される側の側辺と反対側の側辺、すなわち中央カバー31に近接する側の側辺は、中央カバー31の側辺と重なる重なり部33を有している。重なり部33は、中央カバー31の側辺に対して、中央カバー31の厚さ方向へ接触可能に重なっている。なお、重なり部33は、中央カバー31の表面と接触せずに、厚さ方向に多少離れていてもよい。重なり部33は、中央カバー31に対して、患者が位置する面側に配置される。このため、側方カバー32は、中央カバー31と干渉せずに、患者側へ撓むことができる。このため、施術者が感染防止装置10を使用する際に、中央カバー31の位置を適切に維持しつつ、側方カバー32を撓ませて腕を通しやすい。なお、変形例として、側方カバー32は、中央カバー31と重ならなくてもよい。また、重なり部33は、中央カバー31に対して、施術者が位置する面側に配置されてもよい。
【0022】
中央カバー31と側方カバー32は、支持部23に対して、施術者側ではなく患者側に配置される。このため、中央カバー31および側方カバー32は、施術者が使用する際に患者側へ撓みやすいため、施術者が腕を通しやすい。なお、中央カバー31および側方カバー32は、支持部23に対して施術者側に配置されてもよく、または施術者側と患者側の間に配置されてもよい。
【0023】
中央カバー31の幅W1(中央カバー31の厚さ方向と垂直な方向であって中央カバー31が垂れ下がる方向X(例えば下方向)と垂直な方向(例えば水平方向)の長さ)は、特に限定されないが、患者の頭よりも大きい長さであることが好ましく、かつ施術者が中央カバー31を挟む両側に両腕を通せるように長すぎないことが好ましい。中央カバー31の幅W1が患者の頭部の幅HWよりも長いことで、中央カバー31は、患者の頭部を包むように変形できるため、感染防止に好ましい。患者の頭部の幅HWは、一般的に160mm程度である。中央カバー31の幅W1は、特に限定されないが、好ましくは300~500mmであり、より好ましくは350~400mmである。
【0024】
2つの側方カバー32の幅W2は、特に限定されないが、例えば200mmである。
【0025】
2つの側方カバー32の水平方向の離間距離W3は、患者の頭よりも大きい長さであることが好ましく、例えば160mm以上であり、一例として200mmである。
【0026】
2つの側方カバー32の中央カバー31と重ならない部位の水平方向の幅W4は、特に限定されないが、例えば100mmである。
【0027】
各々の重なり部33の幅P(側方カバー32の厚さ方向と垂直な方向であって側方カバー32が垂れ下がる方向X(例えば下方向)と垂直な方向(例えば水平方向の長さ)は、特に限定されないが、好ましくは80~100mmである。一例として、幅Pは、100mmである。
【0028】
中央カバー31および2つの側方カバー32を含むカバー30の全体の幅Wは、特に限定されないが、例えば600mmである。
【0029】
中央カバー31および側方カバー32の上端の床面からの鉛直方向の高さH1は、特に限定されないが、感染を確実に抑えられるように、椅子50に座った施術者の頭よりも高いことが好ましく、好ましくは1200~1300mmである。
【0030】
中央カバー31および側方カバー32の下端の床面からの鉛直方向の高さH2(
図1を参照)は、特に限定されないが、患者が横たわるベッド40の高さ未満であることが好ましい。患者が横たわるベッド40の高さは、通常、400~650mm程度である。したがって、中央カバー31および側方カバー32の高さH2は、特に限定されないが、好ましくは0mmを超えて300mm以下である。
【0031】
なお、本実施形態では、中央カバー31および側方カバー32は、垂れ下がり方向に沿って長辺を有する長方形となっているが、垂れ下がり方向に沿って短辺を有する長方形であってもよく、または正方形であってもよい。また、中央カバー31および側方カバー32の形状は、四角形でなくてもよい。
【0032】
中央カバー31および側方カバー32の構成材料は、透明であって、かつ撓むことができれば特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂材料が挙げられる。
【0033】
次に、第1実施形態に係る感染防止装置10の使用方法を説明する。
【0034】
感染防止装置10を使用する際には、
図4および5に示すように、患者はベッド40に横たわり、施術者は椅子50に座っている。この状態で、施術者の顔と患者の顔は、中央カバー31および側方カバー32によって隔絶されているため、互いの感染を予防できる。
【0035】
施術者は、患者の頭部、首または肩等の施術をする際に、
図4~7に示すように、両腕を中央カバー31および側方カバー32の間の隙間から患者側へ通すとともに、施術をする部位を目視するために、顔を患者の頭部に近づける。このとき、側方カバー32および中央カバー31の近接する部位が、患者側へ撓むように変形する。側方カバー32は、重なり部33において中央カバー31に対して患者側に重なっているため、中央カバー31にほとんど干渉せずに、中央カバー31よりも患者側へ大きく撓むことができる。このため、側方カバー32および中央カバー31の間に、広い通路が確保される。このため、術者は、手首の近傍から先のみを側方カバー32および中央カバー31の間から患者側へ通し、患者の患部に触れることができる。したがって、施術者は、側方カバー32および中央カバー31に妨げられることなく、施術を行うことができる。また、側方カバー32は、側辺が支柱22に固定されているとともに錘32Aが設けられているため、撓み過ぎない。このため、側方カバー32は、感染防止の役割を果たすとともに、施術者が腕を引きぬいた際に元の状態に戻りやすい。
【0036】
中央カバー31は、大きく撓む側方カバー32から干渉を受けにくいため、必要以上に撓み過ぎない。そして、中央カバー31は、
図6および7に示すように、適切な形状で、患者の頭部を包むように曲がる。このため、中央カバー31は、施術者の顔と患者の顔を隔絶した状態を良好に維持し、互いの感染を防止できる。
【0037】
以上のように、第1実施形態に係る感染防止装置10は、施術に使用される感染防止装置10であって、支持部23と、支持部23に支持されて支持部23から垂れ下がる透明な中央カバー31と、支持部23に支持されて支持部23から垂れ下がり、中央カバー31に対して、当該中央カバー31の厚さ方向と垂直な方向であって当該中央カバー31が垂れ下がる方向Xと垂直な方向の両側に配置される2つの側方カバー32と、を有する。
【0038】
上記のように構成した感染防止装置10を用いることで、術者は、中央カバー31および側方カバー32によって術者の顔と患者の顔を隔離しつつ、中央カバー31と側方カバー32の間から腕を通して、腕の動作を妨げられずに、患者の施術を行うことができる。このため、本感染防止装置10は、施術者および患者の間の感染を効果的に防止しつつ、良好な施術を可能とする。
【0039】
また、2つの側方カバー32は、中央カバー31に重なる重なり部33を有し、2つの側方カバー32に設けられる重なり部33は、中央カバー31に対して同じ面側に配置される。これにより、感染防止装置10は、重なり部33が設けられることで、側方カバー32と中央カバー31の隙間からのウイルスの移動を抑制し、隔離して感染を防止する機能を高めることができる。さらに、術者が中央カバー31に対して重なり部33が重なる側の反対側から腕を中央カバー31と側方カバー32の間に通すことで、中央カバー31で患者の頭部を包むように中央カバー31を変形させつつ、側方カバー32を撓ませて腕を通すことができる。このため、感染防止装置10は、中央カバー31によって施術者および患者の間の感染を効果的に防止しつつ、側方カバー32を撓ませて施術者の腕の動作を妨げずに、良好な施術を可能とする。
【0040】
また、感染防止装置10は、側方カバー32の中央カバー31に隣接する側の反対側が固定された支柱22(側方支持部)を有する。これにより、側方カバー32の位置を、感染防止に適切な位置に保持することができる。なお、側方カバー32が固定される側方支持部は、支柱22以外の場所に形成されてもよい。
【0041】
<第2実施形態>
第2の実施形態に係る感染防止装置60は、
図8および9に示すように、床面等に配置される支持体70と、支持体70に連結されたカバー80とを備えている。
【0042】
支持体70は、床面に接触するように配置される1つの支持台71と、支持台71から略垂直に上方へ延在する柱状の1つの支柱72と、カバー80が固定されるカバー支持部73と、カバー支持部73を支柱72に対して回転可能に保持する回転保持部74とを有している。
【0043】
支持台71の形態は、床面に安定して配置可能であれば、特に限定されない。支柱72は、支持台71から略垂直に上方へ延在する同形状の部材である。なお、支柱72が支持台71から延在する方向は、必ずしも垂直上方に限定されず、垂直上方に対して傾いていてもよい。
【0044】
カバー支持部73は、一端がカバー80に固定され、反対側の端部が回転保持部74に固定されている。回転保持部74は、カバー支持部73を支柱72に対して回転させる機能を有するとともに、任意の角度でカバー支持部73を支柱72に対して固定できる構造を有している。回転保持部74は、例えば、支柱72およびカバー支持部73が枢着する回転軸を有するとともに、所定の力以上の力を作用させなければ回転しない摩擦力で接触して保持される。または、回転保持部74は、支柱72およびカバー支持部73が枢着する回転軸を有するとともに、任意の回転角度でボルトを捩じ込んで締結して固定できるような構造を備えてもよい。なお、回転保持部74は、公知の構造を任意に適用できる。
【0045】
カバー80は、施術者が患者を見て施術できるように透明であり、施術者と患者の間での飛沫を防止するための部材である。カバー80は、形状を維持できる程度に硬質である。カバー80は、円弧状に湾曲した湾曲部81と、湾曲部81を挟む2つの平板部82とを備えている。
【0046】
湾曲部81は、カバー支持部73が固定される側から反対側まで延在する方向Yと直交する断面において、略半円を描くように円弧状に形成されている。2つの平板部82は、湾曲部81の円弧の両端側に連続する平板状の部位である。なお平板部82は、曲率半径が無限大の完全な平板であってもよいが、湾曲部81よりも大きな曲率半径を有する多少湾曲した平板であってもよい。2つの平板部82は、同一平面に位置するように平行に形成される。なお、2つの平板部82は、同一平面上に位置しなくてもよく、平行ではなく角度を有するように傾いて形成されてもよい。湾曲部81および平板部82は、一体的に形成されることが好ましいが、別部材であってもよい。
【0047】
カバー80の構成材料は、透明であって、かつある程度硬質であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(特に硬質ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂材料やガラスが挙げられる。
【0048】
次に、第2実施形態に係る感染防止装置60の使用方法を説明する。
【0049】
感染防止装置60を使用する際には、患者はベッド40に横たわり、施術者は椅子50に座っている。この状態で、
図10に示すように、回転保持部74を操作して、カバー80の湾曲部81によって、患者の頭部を任意の角度で覆うことができる。このとき、2つの平板部82を、ベッド40の上面から所定の隙間Sを有して配置してもよい。隙間は、特に限定されないが、施術者が腕を通して施術できる大きさであることが好ましく、例えば150~400mmである。施術者は、カバー80とベッド40の間に手を入れることで、カバー80を介して施術をする部位を目視しつつ、施術を行うことができる。カバー80は、施術者の顔と患者の顔を隔絶した状態を良好に維持し、互いの感染を防止できる。なお、平板部82は、ベッド40の上面に接触してもよい。この場合、施術者の顔と患者の顔をより確実に隔絶した状態とすることができる。
【0050】
なお、
図11に示す変形例のように、カバー80に平板部82が設けられなくてもよい。この場合、湾曲部81をベッド40の上面に接触させてもよいが、接触させずに、隙間Sを有して離してもよい。
【0051】
また、
図12に示す他の変形例のように、カバー80に湾曲部81が設けられずに平板部82で形成されてもよい。この場合、カバー80は、ベッド40の上面に接触せずに、隙間を有して離れている。
【0052】
以上のように、第2実施形態に係る感染防止装置60は、施術に使用される感染防止装置60であって、床面に配置可能な支持台71と、支持台71から延在する支柱72と、支柱72に対して回転可能なカバー支持部73と、カバー支持部73を支柱72に対して回転可能に保持する回転保持部74と、カバー支持部73に固定される透明なカバー80と、を有し、カバー80は、カバー支持部73が固定される側から反対側まで延在する方向Yと直交する断面において、円弧状に形成される。
【0053】
上記のように構成した感染防止装置60は、回転保持部74を利用してカバー80を回転させて、カバー80の湾曲部81により患者の頭部を適切な位置で覆うことができる。このため、カバー80によって術者の顔と患者の顔を隔離しつつ、カバー80とベッド40の間から腕を通す空間を適切な状態とすることができる。このため、本感染防止装置60は、施術者および患者の間の感染を効果的に防止しつつ、良好な施術を可能とする。
【0054】
また、カバー80は、湾曲部81の円弧の両端部から連続する平板状の平板部82を有する。これにより、施術者は、ベッド40と平板部82の間に、施術者が施術を行うために腕を通す空間を確保しつつ、湾曲部81および平板部82を患者に対して適切な距離で配置できる。このため、本感染防止装置60は、施術者および患者の間の感染を効果的に防止しつつ、良好な施術を可能とする。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、
図13(A)に示す第1実施形態の変形例のように、中央カバー31の上端以外の縁部(例えば、下端の支柱22に近い側の端部)は、支柱22(側方支持部)に対して、柔軟な紐状の連結部材34により連結されてもよい。連結部材34は、例えば天然ゴムや合成ゴムからなる伸縮可能な部材である。または、連結部材34は、ほとんど伸縮しないが、ある程度の緩み(撓み)がある状態で支柱22と中央カバー31を連結してもよい。連結部材34が設けられることで、中央カバー31は、多少の移動が許容されるために施術を妨げず、かつ捲れることを防止できる。このため、施術者および患者の間の感染を効果的に防止しつつ、良好な施術を可能とする。
【0056】
また、
図13(B)に示す第1実施形態の他の変形例のように、支柱22に、第2実施形態と同様に回転可能であって任意の角度で固定可能な回転保持部74が設けられてもよい。
【0057】
また、
図14に示す第1実施形態の更に他の変形例のように、支持体20は、支持部23または支柱22に固定された天板25を有してもよい。天板25は、カバー30の少なくとも一部よりも上方(カバー30が垂れ下がる方向X(下方向)の反対方向)に位置し、患者の頭部の上方を覆うように、支持部23または支柱22から患者側へ張り出している。天板25は、床面と略平行となるように患者側へ延在するが、床面と平行でなくてもよい。天板25は、床面に対する角度を調節可能であってもよい。天板25は、透明であっても、透明でなくてもよい。天板25が透明であれば、施術者は、天板25を介して患部を目視して施術を行うことができる。天板25は、
図14(B)に示すように、張出方向と直交する方向の縁部26が、下方へ向かって曲がって形成されてもよい。このような縁部26は、天板25の張出方向の端部にも設けられてよい。なお、天板25の縁部26は、曲がっていなくてもよい。
【0058】
天板25は、患者が会話や咳をした場合などに、患者の飛沫が天井方向から部屋の全体に拡散することを抑制できる。すなわち、天板25は、飛沫が広がる範囲を制限できる。天板25に縁部26が設けられることで、飛沫の拡散を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0059】
また、
図15に示す第1実施形態の更に他の変形例のように、支持台21は、床面と接して回転可能な車輪27を有してもよい。これにより、感染防止装置10の移動が容易となる。なお、車輪27は、上述した他の実施形態にも適用できる。
【0060】
また、
図16に示すように、第2実施形態に係る感染防止装置60のカバー80に、第1実施形態と同様の中央カバー31および側方カバー32が設けられてもよい。カバー80は、天板としても機能できるとともに、中央カバー31および側方カバー32を固定する支持部としても機能できる。カバー80が透明であれば、中央カバー31および側方カバー32は、透明でなくてもよいが、透明であることが好ましい。また、中央カバー31および側方カバー32が透明であれば、カバー80は、透明でなくてもよいが、透明であることが好ましい。また、
図11~12に示す第2実施形態の変形例に、第1実施形態と同様の中央カバー31および側方カバー32が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10、60 感染防止装置
20、70 支持体
21、71 支持台
22、72 支柱
23 支持部
24 補助梁
30、80 カバー
31 中央カバー
32 側方カバー
33 重なり部
40 ベッド
50 椅子
73 カバー支持部
74 回転保持部
81 湾曲部
82 平板部
【手続補正書】
【提出日】2021-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る感染防止装置は、施術に使用される感染防止装置であって、床面に配置可能な支持台と、支持台から延在する支柱と、前記支柱に対して回転可能なカバー支持部と、前記カバー支持部を前記支柱に対して回転可能に保持する回転保持部と、前記カバー支持部に固定される透明なカバーと、前記カバーに支持されて当該カバーから垂れ下がる中央カバーと、前記カバーに支持されて当該カバーから垂れ下がり、前記中央カバーに対して、当該中央カバーの厚さ方向と垂直な方向であって当該中央カバーが垂れ下がる方向と垂直な方向の両側に配置される2つの側方カバーと、を有することを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
前記カバーは、前記カバー支持部が固定される側から反対側まで延在する方向と直交する断面において、円弧状に形成される湾曲部を有してもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施術に使用される感染防止装置であって、
床面に配置可能な支持台と、
支持台から延在する支柱と、
前記支柱に対して回転可能なカバー支持部と、
前記カバー支持部を前記支柱に対して回転可能に保持する回転保持部と、
前記カバー支持部に固定される透明なカバーと、
前記カバーに支持されて当該カバーから垂れ下がる中央カバーと、
前記カバーに支持されて当該カバーから垂れ下がり、前記中央カバーに対して、当該中央カバーの厚さ方向と垂直な方向であって当該中央カバーが垂れ下がる方向と垂直な方向の両側に配置される2つの側方カバーと、を有することを特徴とする感染防止装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記カバー支持部が固定される側から反対側まで延在する方向と直交する断面において、円弧状に形成される湾曲部を有することを特徴とする請求項1に記載の感染防止装置。
【請求項3】
前記カバーは、前記湾曲部の円弧の両端部から連続する平板状の平板部を有することを特徴とする請求項2に記載の感染防止装置。