(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162545
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】イットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクル
(51)【国際特許分類】
G03F 1/62 20120101AFI20221017BHJP
【FI】
G03F1/62
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064507
(22)【出願日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0047239
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】503257778
【氏名又は名称】コリア エレクトロニクス テクノロジ インスティチュート
【住所又は居所原語表記】25,Saenari-ro,Bundang-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do 13509 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン クン
(72)【発明者】
【氏名】キム,スル ギ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン ミ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,キ フン
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA10
2H195BC33
2H195BC34
(57)【要約】
【課題】本発明は、極紫外線を用いた露光工程に使用されるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルに関する。
【解決手段】本発明による極紫外線露光用ペリクルは、Y-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)で表されるイットリウム基盤素材をコア層として具備するペリクル層を含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)で表されるイットリウム基盤素材をコア層として具備するペリクル層を含む極紫外線露光用ペリクル。
【請求項2】
前記イットリウム基盤素材は、Y-Bx(x≧2)、Y-Six(x≧1)、Y2O3またはYF3を含むことを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項3】
前記イットリウム基盤素材は、YB2、YB4、YB6、YB12、YB25、YB50またはYB66を含むことを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項4】
前記イットリウム基盤素材は、YSi2またはY3Si5を含むことを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項5】
前記ペリクル層は、
前記コア層と、
前記コア層の一面または両面に形成されるキャッピング層と、を含み、
前記キャッピング層の素材は、Y-M-α(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つであり、αは、Si、C、B、N、OおよびRuのうち一つ)で表されることを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項6】
前記キャッピング層の素材は、YCxSiy(x+y≧1)、YCxBy(x+y≧1)、YSixNy(x+y≧1)、YCx(x≧1)、YSix(x≧1)、YNx(x≧1)、SiNx(x≧1)、SiO2、B4CまたはRuCを含むことを特徴とする請求項5に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項7】
前記ペリクル層は、
前記コア層と、
前記コア層の一面または両面に形成される中間層と、
前記中間層の上に形成されるキャッピング層と、を含み、
前記中間層および前記キャッピング層の素材は、Y-M-α(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つであり、αは、Si、C、B、N、OおよびRuのうち一つ)で表されることを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項8】
前記中間層およびキャッピング層の素材は、YCxSiy(x+y≧1)、YCxBy(x+y≧1)、YSixNy(x+y≧1)、YCx(x≧1)、YSix(x≧1)、YNx(x≧1)、SiNx(x≧1)、SiO2、B4CまたはRuCを含むことを特徴とする請求項7に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項9】
中心部に開放部が形成された基板と、
前記開放部を覆うように前記基板の上に形成され、Y-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)で表されるイットリウム基盤素材をコア層として具備するペリクル層と、を含む極紫外線露光用ペリクル。
【請求項10】
前記イットリウム基盤素材は、Y-Bx(x≧2)、Y-Six(x≧1)、Y2O3またはYF3を含むことを特徴とする請求項9に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項11】
前記ペリクル層は、
前記開放部を覆うように前記基板の上に形成される前記コア層と、
前記コア層上に形成されるキャッピング層と、を含み、
前記キャッピング層の素材は、Y-M-α(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つであり、αは、Si、C、B、N、OおよびRuのうち一つ)で表されることを特徴とする請求項9に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項12】
前記キャッピング層の素材は、YCxSiy(x+y≧1)、YCxBy(x+y≧1)、YSixNy(x+y≧1)、YCx(x≧1)、YSix(x≧1)、YNx(x≧1)、SiNx(x≧1)、SiO2、B4CまたはRuCを含むことを特徴とする請求項11に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項13】
前記ペリクル層は、
前記開放部を覆うように前記基板の上に形成される前記コア層と、
前記コア層の一面または両面に形成される中間層と、
前記中間層の上に形成されるキャッピング層と、を含み、
前記中間層および前記キャッピング層の素材は、Y-M-α(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つであり、αは、Si、C、B、N、OおよびRuのうち一つ)で表されることを特徴とする請求項9に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項14】
前記中間層およびキャッピング層の素材は、YCxSiy(x+y≧1)、YCxBy(x+y≧1)、YSixNy(x+y≧1)、YCx(x≧1)、YSix(x≧1)、YNx(x≧1)、SiNx(x≧1)、SiO2、B4CまたはRuCを含むことを特徴とする請求項13に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関し、より詳細には、極紫外線を用いた露光工程に使用されるマスクに設置されるイットリウム(Y)系基盤の極紫外線露光用ペリクルに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業が発達し、半導体素子の集積度が向上するに伴い、電子機器が次第に小型化および軽量化している。半導体素子の集積度の向上のために露光技術の高度化が要求されている。
【0003】
現在、光源の波長を減少させて半導体の微細なパターンを具現する方向に技術が発展している。このうち、次世代技術である極紫外線(Extreme Ultraviolet,EUV)露光技術は、一回のレジスト工程で微細パターンを具現できる技術である。
【0004】
半導体工程に使用される極紫外線露光装置は、光源(light source power)、レジスト(resist)、ペリクル(pellicle)およびマスクを含む。ペリクルは、マスクに設置されて、露光工程中に発生する異物がマスクに付着するのを防止し、露光装置によって選択的に使用されている。
【0005】
極紫外線露光工程では、クリーンシステムが構築されていて、ペリクルが不要であるという期待が初期に存在した。しかしながら、実際露光装置の構築後に駆動過程で装置内部駆動部で発生する異物および光源の発振過程で生成されたスズ粒子と極紫外線感光剤によるマスクの汚染が発生することを確認した。
【0006】
したがって、極紫外線露光工程では、マスクの汚染を防止するために、ペリクルが必須の素材として認識されている。ペリクルを使用する場合、サイズ10,000nm未満の欠陥を無視することができる。
【0007】
このような極紫外線露光用ペリクルは、マスクをカバーするために、サイズが110mm×144mmであることが要求され、光源の損失による生産性悪化を最小化するために、90%以上の極紫外線透過率が要求されている。極紫外線露光装置内部における20Gに達する物理的動きにより破損しないレベルの機械的安定性と、5nmノード(node)を基準として250W以上の熱的荷重に耐えることができる熱的安定性が要求されている。また、極紫外線環境で発生する水素ラジカルに反応しない化学的耐久性も要求されている。
【0008】
現在、ペリクル開発会社は、多結晶シリコン(p-Si)基盤またはSiN基盤の透過素材を開発中にある。これらの素材は、極紫外線用ペリクルの最も重要な条件である90%以上の透過率を満たしていない。これらの素材は、極紫外線露光環境での熱的安定性、機械的安定性、および化学的耐久性に脆弱であるという欠点を有するので、特性補完のための工程開発研究が行われている。例えばSiN基盤素材の問題点を解決するための素材として、Mo、Ru、Zrなどの物質を選別して研究を行っているが、薄い厚さに製造して形態を維持することが難しいのが現状である。
【0009】
また、最近では、250Wレベルの照射強度を超えて350W以上の極紫外線出力環境で90%以上の極紫外線透過率と、熱的、化学的および機械的に安定性を有するペリクルが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第2018-0135490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、350W以上の極紫外線出力環境で90%以上の極紫外線透過率を有するイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を有するイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、Y-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)で表されるイットリウム基盤素材をコア層として具備するペリクル層を含む極紫外線露光用ペリクルを提供する。
【0014】
前記イットリウム基盤素材は、Y-Bx(x≧2)、Y-Six(x≧1)、Y2O3またはYF3を含んでもよい。
【0015】
前記イットリウム基盤素材は、YB2、YB4、YB6、YB12、YB25、YB50またはYB66を含んでもよい。
【0016】
前記イットリウム基盤素材は、YSi2またはY3Si5を含んでもよい。
【0017】
前記ペリクル層は、前記コア層と、前記コア層の一面または両面に形成されるキャッピング層と、を含んでもよい。
前記キャッピング層の素材は、Y-M-α(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つであり、αは、Si、C、B、N、OおよびRuのうち一つ)で表され得る。
【0018】
前記キャッピング層の素材は、YCxSiy(x+y≧1)、YCxBy(x+y≧1)、YSixNy(x+y≧1)、YCx(x≧1)、YSix(x≧1)、YNx(x≧1)、SiNx(x≧1)、SiO2、B4CまたはRuCを含んでもよい。
【0019】
前記ペリクル層は、前記コア層と、前記コア層の一面または両面に形成される中間層と、前記中間層の上に形成されるキャッピング層と、を含んでもよい。
【0020】
前記中間層および前記キャッピング層の素材は、Y-M-α(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つであり、αは、Si、C、B、N、OおよびRuのうち一つ)で表され得る。
【0021】
前記中間層およびキャッピング層の素材は、YCxSiy(x+y≧1)、YCxBy(x+y≧1)、YSixNy(x+y≧1)、YCx(x≧1)、YSix(x≧1)、YNx(x≧1)、SiNx(x≧1)、SiO2、B4CまたはRuCを含んでもよい。
【0022】
また、本発明は、中心部に開放部が形成された基板と、前記開放部を覆うように前記基板の上に形成され、Y-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)で表されるイットリウム基盤素材をコア層として具備するペリクル層と、を含む極紫外線露光用ペリクルを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、化学的耐久性と機械的安定性を有するイットリウム(Y)を基盤とするY-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)素材をペリクル層のコア層として使用することによって、350W以上の極紫外線出力環境で90%以上の極紫外線透過率を有する極紫外線露光用ペリクルを提供できる。すなわちY-M素材は、イットリウムに機械的強度を補強できるB、高い光特性を有するSiなどを結合した金属基盤化合物であって、基板上に蒸着させてコア層を形成することによって、90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有する極紫外線露光用ペリクルを提供できる。
【0024】
また、Y-M素材をコア層として含む本発明による極紫外線露光用ペリクルは、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルを示す断面図である。
【
図3】
図1のコア層の素材に使用されるY-B
x(x≧2)の融点を示すグラフである。
【
図4】本発明の第2実施形態によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルを示す拡大図である。
【
図5】本発明の第3実施形態によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルを示す拡大図である。
【
図6】本発明の第1実験例によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。
【
図7】本発明の第2実験例によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。
【
図8】本発明の第3実験例によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。
【
図9】本発明の第4実験例によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。
【
図10】本発明の第5実験例によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。
【
図11】本発明の第6実験例によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
下記の説明では、本発明の実施形態を理解するのに必要な部分のみが説明され、その他の部分の説明は、本発明の要旨を不明にしない範囲で省略されることに留意しなければならない。
【0027】
以下で説明される本明細書および請求範囲に使用される用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解すべきものではなく、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念として適切に定義できるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味や概念として解すべきである。したがって、本明細書に記載された実施形態と図面に示された構成は、本発明の好適な実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想を全部表すものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例がありえることを理解しなければならない。
【0028】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0029】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルを示す図である。また、
図2は、
図1のA部分の拡大図である。
【0030】
図1および
図2を参照すると、第1実施形態による極紫外線露光用ペリクル100(以下「ペリクル」という)は、中心部に開放部13が形成された基板10と、開放部13を覆うように基板10の上に形成され、Y-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)で表されるイットリウム基盤素材をコア層21として具備するペリクル層20と、を含む。ペリクル層20は、基板10に積層されて形成されるコア層21およびキャッピング層27、29を含んでもよい。キャッピング層27、29は、コア層21の一面または両面に形成されてもよい。
【0031】
ペリクル100は、半導体およびディスプレイ製造工程中、露光工程でマスクを異物から保護する消耗性素材である。すなわちペリクル100は、マスクの上に被覆される薄い薄膜であり、カバーとしての役割をする。ウェハーに転写される光は、マスクで焦点を合わせて露光を進めるので、一定の距離に離れているペリクル100に異物が混入しても、焦点が合わないため、ユーザが作ろうとするパターンのサイズに影響を及ぼさないようにして、不良パターンの形成を減らすことができる。
【0032】
これによって、ペリクル100は、露光工程中にマスクの異物から保護しつつ、不良パターンを最小化して、半導体およびディスプレイ製造工程の収率を高めることができる。また、ペリクル100の使用によってマスクの寿命を延ばすことができる。
【0033】
以下、このような本発明によるペリクル100について具体的に説明する。
【0034】
基板10は、ペリクル層20を支持し、ペリクル100を製造する過程および製造完了後にペリクル100のハンドリングおよび移送を容易に行うことができる。基板10は、シリコンなどのエッチング工程が可能な素材で形成されてもよい。例えば基板10の素材は、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、金属酸化物、金属窒化物、黒鉛、非晶質炭素などがあり、当該素材が積層された構造も可能であり、これに限定されるものではない。ここで、金属は、Cr、Al、Zr、Ti、Ta、Nb、Niなどが可能であり、これらに限定されるものではない。
【0035】
基板10の中心部に形成された開放部13は、MEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)のような微細加工技術を用いて形成できる。すなわち基板10の中心部を微細加工技術で除去して、開放部13を形成する。開放部13にペリクル層20が露出する。
【0036】
また、ペリクル層20は、コア層21およびキャッピング層27、29を含む。
【0037】
ここで、コア層21は、極紫外線の透過率を決定する層である。コア層21は、極紫外線に対する90%以上の透過率を有し、熱を効果的に放出してペリクル層20が過熱するのを防止する。
【0038】
このようなコア層21は、Y-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)で表されるイットリウム基盤素材で形成される。イットリウム基盤素材は、Y-Bx(x≧2)、Y-Six(x≧1)、Y2O3またはYF3を含む。Y-Bx(x≧2)は、YB2、YB4、YB6、YB12、YB25、YB50またはYB66を含んでもよい。Y-Six(x≧1)は、YSi2またはY3Si5を含んでもよい。
【0039】
ここで、Y-B
x(x≧2)は、Metal-B素材のように、
図3に示されたように、高い融点(melting point)を有するので、熱的安定性に優れ、機械的強度が高い特性を有する。Y-B
x(x≧2)は、多様な組成を有していてもよいが、YB
2、YB
4、YB
6、YB
12、YB
25、YB
50またはYB
66は、安定相を有する。例えばYB
4は、約3100℃の融点を有し、Y-B
x(x≧2)のうち最も安定相を形成する。
【0040】
コア層21の素材にイットリウム基盤素材を使用する理由は、次のとおりである。
【0041】
化学的耐久性と機械的安定性を有するイットリウム(Y)を基盤とするY-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)素材をコア層21の素材に使用することによって、350W以上の極紫外線出力環境で90%以上の極紫外線透過率を有するペリクル100を提供できるためである。すなわちY-M素材は、イットリウムに機械的強度を補強できるB、高い光特性を有するSiなどを結合した金属基盤化合物であって、基板10上に蒸着させてコア層21を形成することによって、90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有するペリクル100を提供できる。
【0042】
また、キャッピング層27、29は、コア層21の極紫外線の透過率の低下を最小化しつつ、ペリクル層20に熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供する。すなわちキャッピング層27、29は、コア層21の保護層であって、コア層21から発生した熱を外部に効果的に放出して熱的安定性を提供する。キャッピング層27、29は、コア層21の機械的強度を補完して機械的安定性を提供する。また、キャッピング層27、29は、水素ラジカルと酸化からコア層21を保護して化学的耐久性を提供する。
【0043】
このようなキャッピング層27、29は、コア層21の一面または両面に形成されてもよい。第1実施形態によるキャッピング層27、29は、コア層21の下部面に形成された第1キャッピング層27と、コア層21の上面に形成された第2キャッピング層29と、を含む。
【0044】
第1キャッピング層27は、基板10とコア層21との間に介在され、KOHに抵抗性を有する素材で形成され、コア層21の素材が基板10に拡散するのを防止する機能も担当する。
【0045】
第1および第2キャッピング層27、29の素材は、Y-M-α(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つであり、αは、Si、C、B、N、OおよびRuのうち一つ)で表される素材を含む。例えばY-M-α素材は、YCxSiy(x+y≧1)、YCxBy(x+y≧1)、YSixNy(x+y≧1)、YCx(x≧1)、YSix(x≧1)、YNx(x≧1)、SiNx(x≧1)、SiO2、B4CまたはRuCを含んでもよい。
【0046】
第1および第2キャッピング層27、29の素材にY-M-α素材を使用する理由は、次のとおりである。
【0047】
従来のペリクルにおいて、高い極紫外線透過率を確保するために、キャッピング層は、5nm以下の厚さに形成する必要があった。しかしながら、第1および第2キャッピング層27、29の素材として、コア層21に使用されるY-M素材にα素材を含まれたY-M-α素材を使用することによって、キャッピング層27、29を10nmの厚さに形成しても、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を有するペリクル100を提供できる。
【0048】
このようにY-M素材をコア層21として含む第1実施形態によるペリクル100は、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供できる。
【0049】
このような第1実施形態によるペリクル100は、次のような製造工程で製造できる。まず、開放部13が形成されていない状態の基板10の上に第1キャッピング層27、コア層21および第2キャッピング層29をこの順に積層してペリクル層20を形成する。
【0050】
この際、第1キャッピング層27、コア層21および第2キャッピング層29は、それぞれCVD(chemical vapor deposition)、ALD(atomic layer deposition)、電子ビーム蒸着(e-beam evaporation)またはスパッタリング(sputtering)工程で形成できる。
【0051】
また、ペリクル層20下の基板10の中心部を除去して、ペリクル層20の下部面が露出する開放部13を形成することによって、第1実施形態によるペリクル100を得ることができる。すなわち第1キャッピング層27下の基板10の中心部をウエットエッチングを通じて除去して、開放部13を形成する。開放部13に第1キャッピング層27が露出する。
【0052】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルを示す拡大図である。
【0053】
図4を参照すると、第2実施形態によるペリクルは、中心部に開放部が形成された基板と、開放部を覆うように基板の上に形成され、Y-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)で表されるイットリウム基盤素材をコア層21として具備するペリクル層120と、を含む。ペリクル層120は、基板10に積層されて形成されるコア層21と、中間層25およびキャッピング層27、29を含む。中間層25およびキャッピング層27、29は、それぞれコア層21の一面または両面に形成されてもよい。
【0054】
第2実施形態によるペリクルは、中間層25が追加されたことを除いて、第1実施形態によるペリクル(
図1の100)と同じ構造を有する。
【0055】
コア層21は、Y-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)で表されるイットリウム基盤素材で形成される。イットリウム基盤素材は、Y-Bx(x≧2)、Y-Six(x≧1)、Y2O3またはYF3を含む。Y-Bx(x≧2)は、YB2、YB4、YB6、YB12、YB25、YB50またはYB66を含んでもよい。Y-Six(x≧1)は、YSi2またはY3Si5を含んでもよい。
【0056】
キャッピング層27、29は、コア層21の下面に形成された第1キャッピング層27と、コア層21の上面に形成された第2キャッピング層29と、を含む。
【0057】
第1および第2キャッピング層27、29の素材は、Y-M-α(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つであり、αは、Si、C、B、N、OおよびRuのうち一つ)で表される素材を含む。例えばY-M-α素材は、YCxSiy(x+y≧1)、YCxBy(x+y≧1)、YSixNy(x+y≧1)、YCx(x≧1)、YSix(x≧1)、YNx(x≧1)、SiNx(x≧1)、SiO2、B4CまたはRuCを含んでもよい。
【0058】
中間層25は、コア層21とキャッピング層27、29との間に介在される。中間層25は、熱膨張による熱応力緩和と拡散防止のための保護層としての機能をする。中間層25は、コア層21と界面を形成するキャッピング層27、29間の結合力を高めるバッファー層としての機能を担当することができる。第2実施形態による中間層25は、コア層21と第2キャッピング層29との間に形成された例を開示した。
【0059】
このような中間層25の素材は、Y-M-α(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つであり、αは、Si、C、B、N、OおよびRuのうち一つ)で表される素材を含む。例えばY-M-α素材は、YCxSiy(x+y≧1)、YCxBy(x+y≧1)、YSixNy(x+y≧1)、YCx(x≧1)、YSix(x≧1)、YNx(x≧1)、SiNx(x≧1)、SiO2、B4CまたはRuCを含んでもよい。
【0060】
このようにY-M素材をコア層21として含む第2実施形態によるペリクルは、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供できる。
【0061】
このような第2実施形態によるペリクルは、次のような製造工程で製造できる。まず、開放部13が形成されていない状態の基板10の上に第1キャッピング層27、コア層21、中間層25および第2キャッピング層29をこの順に積層して、ペリクル層120を形成する。
【0062】
この際、第1キャッピング層27、コア層21、中間層25および第2キャッピング層29は、それぞれCVD、ALD、電子ビーム蒸着またはスパッタリング工程で形成できる。
【0063】
また、ペリクル層120下の基板10の中心部を除去して、ペリクル層120の下面が露出する開放部を形成することによって、第2実施形態によるペリクルを得ることができる。すなわち第1キャッピング層27下の基板の中心部をウエットエッチングを通じて除去して、開放部を形成する。開放部に第1キャッピング層27が露出する。
【0064】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルを示す拡大図である。
【0065】
図5を参照すると、第3実施形態によるペリクルは、中心部に開放部が形成された基板と、開放部を覆うように基板の上に形成され、Y-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)で表されるイットリウム基盤素材をコア層21として具備するペリクル層220と、を含む。ペリクル層220は、基板10に積層されて形成されるコア層21、中間層23、25およびキャッピング層27、29を含む。
【0066】
第3実施形態によるペリクルは、中間層23、25が追加されたことを除いて、第1実施形態によるペリクル(
図1の100)と同じ構造を有する。
【0067】
コア層21は、Y-M(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つ)で表されるイットリウム基盤素材で形成される。イットリウム基盤素材は、Y-Bx(x≧2)、Y-Six(x≧1)、Y2O3またはYF3を含む。Y-Bx(x≧2)は、YB2、YB4、YB6、YB12、YB25、YB50またはYB66を含んでもよい。Y-Six(x≧1)は、YSi2またはY3Si5を含んでもよい。
【0068】
キャッピング層27、29は、コア層21の下面に形成された第1キャッピング層27と、コア層21の上面に形成された第2キャッピング層29と、を含む。
【0069】
第1および第2キャッピング層27、29の素材は、Y-M-α(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つであり、αは、Si、C、B、N、OおよびRuのうち一つ)で表される素材を含む。例えばY-M-α素材は、YCxSiy(x+y≧1)、YCxBy(x+y≧1)、YSixNy(x+y≧1)、YCx(x≧1)、YSix(x≧1)、YNx(x≧1)、SiNx(x≧1)、SiO2、B4CまたはRuCを含んでもよい。
【0070】
中間層23、25は、コア層21とキャッピング層27、29との間に介在される。中間層23、25は、熱膨張による熱応力緩和と拡散防止のための保護層としての機能をする。中間層23、25は、コア層21と界面を形成するキャッピング層27、29間の結合力を高めるバッファー層としての機能を担当することができる。第2実施形態による中間層23、25は、コア層21と第1キャッピング層27との間に形成される第1中間層23と、コア層21と第2キャッピング層29との間に形成される第2中間層25と、を含む。
【0071】
このような第1および第2中間層23、25の素材は、Y-M-α(Mは、B、Si、OおよびFのうち一つであり、αは、Si、C、B、N、OおよびRuのうち一つ)で表される素材を含む。例えばY-M-α素材は、YCxSiy(x+y≧1)、YCxBy(x+y≧1)、YSixNy(x+y≧1)、YCx(x≧1)、YSix(x≧1)、YNx(x≧1)、SiNx(x≧1)、SiO2、B4CまたはRuCを含んでもよい。
【0072】
このようにY-M素材をコア層21として含む第3実施形態によるペリクルは、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供できる。
【0073】
このような第2実施形態によるペリクルは、次のような製造工程で製造できる。まず、開放部13が形成されていない状態の基板10の上に第1キャッピング層27、第1中間層23、コア層21、第2中間層25および第2キャッピング層29をこの順に積層して、ペリクル層120を形成する。
【0074】
この際、第1キャッピング層27、第1中間層23、コア層21、第2中間層25および第2キャッピング層29は、それぞれCVD、ALD、電子ビーム蒸着またはスパッタリング工程で形成できる。
【0075】
また、ペリクル層220下の基板10の中心部を除去して、ペリクル層220の下面が露出する開放部を形成することによって、第3実施形態によるペリクルを得ることができる。すなわち第1キャッピング層27下の基板の中心部をウエットエッチングを通じて除去して、開放部を形成する。開放部に第1キャッピング層27が露出する。
【0076】
[実験例]
このような本発明によるペリクルの350W以上の極紫外線出力環境での透過率と反射率を確認するために、
図6~
図11による第1~第6実験例によるペリクルに対するシミュレーションを行った。
【0077】
第1~第6実験例によるペリクルは、第1実施形態によるペリクル層を含む。すなわちペリクル層は、第1キャッピング層、コア層および第2キャッピング層を含む。第1および第2キャッピング層の素材は、SiNxである。コア層の素材は、イットリウム基盤素材である。
【0078】
第1キャッピング層の厚さが5nmの場合、コア層は、0~30nm、キャッピング層は、0~10nmに厚さを変更しつつ、第1~第6実験例によるペリクルの350Wの極紫外線出力環境での透過率と反射率をシミュレーションした。
【0079】
第1~第6実験例によるコア層の素材は、Y、YB2、YB4、YB6、YB12、およびYB66である。
【0080】
第1~第6実験例によるペリクルは、「SiN_C(0nm)_YBx_SiN(5nm)」で表示した。「SiN(5nm)」は、第1キャッピング層を示す。「YBx」は、コア層を示し、xは、0、2、4、6、12および66である。「C(0nm)」は、中間層を示すが、第1および第6実験例では、中間層を適用しなかった。また、「SiN」は、第2キャッピング層を示す。
【0081】
第1実験例
図6は、本発明の第1実験例によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。
【0082】
図6を参照すると、第1実験例によるペリクルは、「SiN_C(0nm)_Y_SiN(5nm)」で表示した。
【0083】
コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0084】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが1~4nm、または7~10nmの場合、透過率は、0.04%以下であることを確認できる。
【0085】
第2実験例
図7は、本発明の第2実験例によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。
【0086】
図7を参照すると、第2実験例によるペリクルは、「SiN_C(0nm)_YB2_SiN(5nm)」で表示した。
【0087】
コア層の厚さが24nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0088】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが2~5nm、または8~10nmである場合、透過率は、0.04%以下であることを確認できる。
【0089】
第3実験例
図8は、本発明の第3実験例によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。
【0090】
図8を参照すると、第3実験例によるペリクルは、「SiN_C(0nm)_YB4_SiN(5nm)」で表示した。
【0091】
コア層の厚さが23nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0092】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが1~5nm、または8~10nmである場合、透過率は、0.04%以下であることを確認できる。
【0093】
第4実験例
図9は、本発明の第4実験例によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。
【0094】
図9を参照すると、第4実験例によるペリクルは、「SiN_C(0nm)_YB6_SiN(5nm)」で表示した。
【0095】
コア層の厚さが24nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0096】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが1~5nm、または8~10nmである場合、透過率は、0.04%以下であることを確認できる。
【0097】
第5実験例
図10は、本発明の第5実験例によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。
【0098】
図10を参照すると、第5実験例によるペリクルは、「SiN_C(0nm)_YB12_SiN(5nm)」で表示した。
【0099】
コア層の厚さが21nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0100】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが1~5nm、または8~10nmである場合、透過率は、0.04%以下であることを確認できる。
【0101】
第6実験例
図11は、本発明の第6実験例によるイットリウム系基盤の極紫外線露光用ペリクルの透過率および反射率を示すグラフである。
【0102】
図11を参照すると、第6実験例によるペリクルは、「SiN_C(0nm)_YB66_SiN(5nm)」で表示した。
【0103】
コア層の厚さが22nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0104】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが1~5nm、または8~10nmである場合、透過率は、0.04%以下であることを確認できる。
【0105】
このように第1~第6実験例によれば、コア層の素材にイットリウム基盤素材を使用することによって、90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有するペリクルを提供できることを確認できる。
【0106】
また、コア層の保護層に使用されるキャッピング層を10nmの厚さに形成しても、90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有するペリクルを提供できることを確認できる。
【0107】
なお、本明細書と図面に開示された実施形態は、理解を助けるために特定例を提示したものに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここに開示された実施形態以外にも、本発明の技術的思想に基づく他の変形例が実施可能であるということは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明なものである。
【符号の説明】
【0108】
10 基板
13 開放部
20、120、220 ペリクル層
21 コア層
23、25 中間層
23 第1中間層
25 第2中間層
27、29 キャッピング層
27 第1キャッピング層
29 第2キャッピング層
100 極紫外線露光用ペリクル