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特開2022-162553高転写効率塗布器を利用して溶剤型コーティング組成物を基材に塗布し、その上にコーティング層を形成する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162553
(43)【公開日】2022-10-24
(54)【発明の名称】高転写効率塗布器を利用して溶剤型コーティング組成物を基材に塗布し、その上にコーティング層を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20221017BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221017BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221017BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20221017BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20221017BHJP
   C09D 161/28 20060101ALI20221017BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05D7/24 302T
B05D7/24 302P
B05D7/24 302V
B05D7/24 302S
B05D7/24 303
B05D7/24 303E
B05D3/00 F
C09D7/63
C09D133/00
C09D167/00
C09D161/28
C09K3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022065806
(22)【出願日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】63/173,744
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520190045
【氏名又は名称】アクサルタ コーティング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エス ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン スティーヴンス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムス ニール
(72)【発明者】
【氏名】ペトラ ストッフェル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス バルトラッシュ
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC08
4D075AC09
4D075AC88
4D075AC91
4D075BB91Y
4D075BB91Z
4D075BB92Y
4D075BB92Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB37
4D075DC12
4D075EA05
4D075EA27
4D075EA31
4D075EB22
4D075EB32
4D075EB35
4D075EB38
4D075EB51
4D075EB53
4D075EB55
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC03
4D075EC07
4D075EC11
4D075EC30
4D075EC35
4D075EC37
4D075EC47
4D075EC51
4J038CG141
4J038CH121
4J038DA161
4J038DD001
4J038DG062
4J038DG262
4J038KA06
4J038NA01
(57)【要約】
【課題】組成物のサグを最小限に抑えながら、高転写効率塗布器によって基材上にコーディング層を形成する方法の提供を目的とする。
【解決手段】方法は、高転写効率塗布器を通してコーティング組成物を基材に塗布して基材上にコーティング層を形成する工程であって、揮発物の損失は約0.5質量未満である、工程を含み、コーティング組成物は、
A.アクリル、ポリエステル、又はこれらの組み合わせを含む樹脂と、
B.メラミン架橋剤と、
C.任意選択の顔料と、
D.有機溶剤と、
E.少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤であって、アミンとイソシアネートとの反応生成物であり、約50℃~約150℃の融点を有し、コーティング組成物の総質量を基準にして約0.1~約4質量%の量で存在する、ポリ尿素結晶サグ制御剤と、
を含み、
コーティング組成物は、約45度で測定したときに、目に見えるサグを伴わずに少なくとも30ミクロンの濡れ膜厚を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高転写効率塗布器を使用して一液型溶剤型コーティング組成物を基材に塗布して、前記基材上に配置されたコーティング層を形成する方法であって、前記方法は、
前記コーティング組成物を前記高転写効率塗布器に提供する工程と、
前記高転写効率塗布器を通して前記コーティング組成物を前記基材に塗布して、前記基材上に前記コーティング層を形成する工程であって、前記高転写効率塗布器を通した塗布の後の揮発物の損失が、前記コーティング組成物の総質量を基準にして約0.5質量%未満である、工程と、
を含み、
前記コーティング組成物は、
A.アクリル、ポリエステル、又はこれらの組み合わせを含む樹脂と、
B.メラミン架橋剤と、
C.任意選択の顔料と、
D.有機溶剤と、
E.少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤であって、アミンとイソシアネートとの反応生成物であり、約50℃~約150℃の融点を有し、前記コーティング組成物の総質量を基準にして約0.1~約4質量%の量で存在する、ポリ尿素結晶サグ制御剤と、
を含み、
前記コーティング組成物は、約45度で測定したときに、目に見えるサグを伴わずに少なくとも約30ミクロンの濡れ膜厚を有する、
方法。
【請求項2】
前記イソシアネートは有機ジイソシアネートであり、前記アミンはベンジルアミンであり、前記融点は約120℃~約150℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、前記コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.1~約1.75質量%の量で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記イソシアネートは、有機トリイソシアネート及び/又は有機ポリイソシアネートであり、前記融点は約50℃~約100℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、前記コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.1~約2.5質量%の量で存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記イソシアネートは、有機ジイソシアネート、トリイソシアネート、及び/又はポリイソシアネートであり、前記アミンは光学活性であり、前記融点は約50℃~約120℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、前記コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.1~約2質量%の量で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物は、クレイ又はシリカを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング組成物を前記基材上で硬化する工程を更に含み、前記高転写効率塗布器は複数のノズルを含み、前記塗布する工程は、前記コーティング組成物を、前記ノズルを通して前記基材上に複数のラインで塗布することとして更に定義され、前記コーティング組成物は、前記硬化する工程の後、個別のノズルラインからの不完全なフロー及びレベリングによる目に見える欠陥がない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング組成物を前記基材上で硬化する工程を更に含み、前記高転写効率塗布器は複数のノズルを含み、前記塗布する工程は、前記コーティング組成物を、ノズルを通して、前記基材に沿う方向(X)で前記基材上に複数のラインで塗布することとして更に定義され、各ラインは隣接するラインと部分的にオーバーラップしてオーバーラップ領域と非オーバーラップ領域とを形成し、前記オーバーラップ領域は、前記硬化する工程の後で前記方向(X)に垂直に測定された5mmの距離にわたって硬化工程後に測定された前記非オーバーラップ領域の厚さと比較した前記オーバーラップ領域の厚さの変動が約1ミクロン未満であるような、視覚的平滑を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記高転写効率塗布器は、ある直径を有するノズルを含み、前記高転写効率塗布器を通して前記コーティング組成物を前記基材に塗布する前記工程は、ノズル目詰まりを最小限にし、前記コーティング組成物は、前記ノズル直径の約10%よりも大きい平均粒径を有する成分を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
E.前記樹脂は、5500のMwを有するOH官能性(97mgKOH/g)アクリル樹脂であり、
F.前記メラミン架橋剤は、
メチル化、イソブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂と、
メチル化、イミノ型(トリエーテル)メラミンホルムアルデヒド樹脂と、
を含み、
G.前記任意選択の顔料は、カーボンブラックの20%顔料ペーストであり、
H.前記有機溶剤は、ナフタレン除去芳香族炭化水素溶剤であり、
E.前記少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、前記アミンと前記イソシアネートとの反応生成物であり、前記イソシアネートは、有機ジイソシアネート、トリイソシアネート、及び/又はポリイソシアネートであり、前記アミンは光学活性であり、前記制御剤は約50℃~約120℃の融点を有し、
前記コーティング組成物は、変性ヒドロキシ含有量が4.5%であるヒドロキシル化アクリルポリオールを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
E.前記樹脂は、34,500のMwを有するOH官能性(54mgKOH/g)分岐アクリル樹脂であり、
F.前記メラミン架橋剤は、
メチル化、イソブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂と、
メチル化、イミノ型(トリエーテル)メラミンホルムアルデヒド樹脂と、
を含み;
G.前記任意選択の顔料は、カーボンブラックの20%顔料ペーストであり、
H.前記有機溶剤は、ナフタレン除去芳香族炭化水素溶剤であり、
E.前記少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、前記アミンと前記イソシアネートとの反応生成物であり、前記イソシアネートは有機ジイソシアネートであり、前記アミンはベンジルアミンであり、前記制御剤は約120℃~約150℃の融点を有し;
前記コーティング組成物は、変性ヒドロキシ含有量が4.5%であるヒドロキシル化アクリルポリオールを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
高転写効率塗布器を使用して二液型溶剤型コーティング組成物を基材に塗布して、前記基材上に配置されたコーティング層を形成する方法であって、前記方法は、
前記コーティング組成物を前記高転写効率塗布器に提供する工程と、
前記高転写効率塗布器を通して前記コーティング組成物を前記基材に塗布して、前記基材上に前記コーティング層を形成する工程であって、前記高転写効率塗布器を通した塗布の後の揮発物の損失が、前記コーティング組成物の総質量を基準にして約0.5質量%未満である、工程と、
を含み、
前記コーティング組成物は、
A.ヒドロキシル官能性樹脂と、
B.イソシアネート架橋剤と、
C.任意選択の顔料と、
D.有機溶剤と、
E.少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤であって、アミンとイソシアネートとの反応生成物であり、約50℃~約150℃の融点を有し、前記コーティング組成物の総質量を基準にして約0.1~約4質量%の量で存在する、ポリ尿素結晶サグ制御剤と、
を含み、
前記コーティング組成物は、約45度で測定したときに、目に見えるサグを伴わずに少なくとも約30ミクロンの濡れ膜厚を有する、
方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤を形成するために使用される前記イソシアネートは有機ジイソシアネートであり、前記アミンはベンジルアミンであり、前記融点は約120℃~約150℃であり、
前記少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、前記コーティング組成物の総質量を基準にして約0.1~約1.75質量%の量で存在する、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記有機ジイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアネートである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤を形成するために使用される前記イソシアネートは有機トリイソシアネート及び/又は有機ポリイソシアネートであり、前記融点は約50℃~約100℃であり、
前記少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、前記コーティング組成物の総質量を基準にして約0.1~約2.5質量%の量で存在する、
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤を形成するために使用される前記イソシアネートは、有機ジイソシアネート、トリイソシアネート及び/又はポリイソシアネートであり、前記アミンは光学活性であり、前記融点は約50℃~約120℃であり、
前記少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、前記コーティング組成物の総質量を基準にして約0.1~約2質量%の量で存在する、
請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物は、クレイ又はシリカを含まない、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、高転写効率塗布器を利用して溶剤型コーティング組成物を基材に塗布し、当該基材上にコーティング層を形成する方法に関する。より具体的には、本開示は、組成物のサグ(垂れ)を最小限に抑えながら、なおも高転写効率塗布器を介して当該組成物を塗布し、卓越した物理的及び審美的特性を有するように硬化させることを可能にする、特定のポリ尿素結晶サグ制御剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、電子信号に応答して、基材(典型的には紙又は布地)上にインクの液滴が堆積される非衝撃式印刷プロセスである。この塗布プロセスは、個々の要件に合わせて調整できる基材のデジタル印刷を可能にするという利点を有する。液滴は、連続印刷及びドロップオンデマンド印刷などの様々なインクジェット塗布方法によって基材上に噴射することができる。ドロップオンデマンド印刷では、インクの液滴を吐出するエネルギーは、熱抵抗器、圧電結晶、音響又は電磁弁から得ることができる。これらの方法は、高転写効率塗布器を使用する。
自動車産業では、車体は、典型的には、電着塗装、プライマー塗装、色を提供する着色ベースコート、並びに追加の保護及び艶出し仕上げを提供するクリアトップコートを含む、一連の仕上げで覆われる。現在の大部分の自動車車体は、単一噴霧動作で塗布されるベースコートで単一色に塗られる。コーティングは、広い液滴サイズ分布を有する塗料液滴の広い噴射を生成する空気圧噴霧又は回転機器を用いて塗布される。これは、自動化プロセスによって比較的短時間で均一な高品質コーティングを生成するという利点を有する。
しかしながら、このプロセスは、多くの欠点を有する。車体を複数の色で塗装しようとする場合、例えば、ストライプなどのパターンに第2の色が用いられる場合、又はルーフなどの車体のセクション全体が異なる色で塗装される場合、これには、第1のコーティングをマスクし、その後車体を二度目の塗料噴霧プロセスに通して、第2の色を加えることが必要となる。この第2の塗装作業の後、マスキングを除去しなければならない。これは、時間と労力の両方を要し、作業のコストが大幅に増える。
現在の噴霧技術の第2の欠点は、塗料の液滴が、広い液滴サイズを有する広い液滴噴射で噴霧されることである。その結果として、液滴の多くが車両上に付着せず、その原因は、液滴が縁部近くに噴霧されて基材をオーバースプレーすること、又はより小さな液滴の運動量が小さ過ぎて車体に到達できないこと、のいずれかにある。この過剰なオーバースプレーは、噴霧作業から除去し安全に廃棄する必要があり、大量の廃棄物及び追加コストにもつながる。
【0003】
高転写効率塗布器を使用してコーティングを塗布することで、車両に2色を塗布するため、及び基材上の特定点(例えば車体の特定の場所)に向けることができる均一サイズの液滴を発生させ、それによってオーバースプレーされる液滴を最小限に抑えるか又は完全に排除することによってオーバースプレーを最小とするための、解決策がもたらされる。加えて、デジタル印刷を用いて、予め噴霧された異なる色のベースコートの上にデジタル印刷された第2の色として、又は下塗りもしくはクリアコートした車両基材上に直接に印刷された第2の色として、のいずれかで、車体上にパターン又はツートンを印刷することができる。
しかしながら、従来のインクジェットインクは、典型的には、インクが基材に急速に吸収され、それにより、印刷直後の基材の乾燥及び取り扱いを容易にする、紙及び織物などの多孔質基材に印刷するように調合されている。加えて、印刷されたテキスト及び画像、又は模様つきの織物など、印刷された物品は、これらの塗布に対して十分な耐久性を有するが、自動車コーティングの耐久性要件は、摩耗及びチッピングに対する耐性などの物理的耐久性、並びに耐候性及び耐光性に対する長期耐久性の両方の観点において、はるかに高い。更に、当該技術分野で公知のインクジェットインクは、粘度が低く、一般的には剪断速度に依存しない、すなわちニュートン性であり、典型的には20cps未満となるように調合される。これは、液滴を吐出するため、更には目詰まりにつながる可能性のあるプリントヘッドのチャネル中のインクの増粘を回避するために、プリントヘッドの各ノズルにおいて利用可能なエネルギー量が制限されることに起因する。
対照的に、自動車コーティングは、典型的には著しい非ニュートン剪断挙動を示し、低剪断では極めて高い粘度を有することで顔料沈降の回避に有用となるとともに、塗布直後のコーティングの急速で均等な硬化を確保するが、高剪断速度においては比較的低粘度であり、噴霧と、液滴への噴霧の霧化とを容易にする。
【0004】
更に、現在の技術が一部の水平面塗布への使用に好適であっても、垂直面塗布など、現在技術では許容できないレベルでサグ(垂れ)が生じる他の用途が残っている。高転写効率塗布器は、ずり流動化挙動を示さない非常に低い粘度を必要とし、噴霧塗布されたコーティングにサグ抵抗性を付与するための標準的アプローチを用いることができない。
より具体的には、ゼロオーバースプレー塗布器(連続流)又は高解像度ドロップオンデマンド(すなわち「インクジェット」プリントヘッド)は、典型的には、高剪断粘度が非常に低いことを要求する。噴霧霧化とは対照的に、塗料が塗布器から吐出された後、基材に衝突する前に溶剤の蒸発が起こらないことから、増粘は起こらない。結果として、コーティングは、非水平面上で垂れる。十分なサグ抵抗を達成するには、サグを防止できると同時に、降伏応力がゼロオーバースプレー塗布器に特有のコーティング欠陥を生じるフロー及びレベリングを防止するような、高いレベルで、レオロジー調整剤を組み込まなければならない。こうした欠陥として、ノズルライン及びストライプオーバーラップの可視性がある。前者は、隣接するノズルから放出された流れ又は液滴のフロー及びレベリングが不完全であるために、プリントヘッドの移動方向に目に見える平行線が生じる。後者は、先に塗布された第1のストライプに隣接する第2の塗料のストライプ(ノズルアレイの幅を有する)の塗布の結果である。指数(隣接するストライプ間の距離)の変更は、この融合性を改善できるが、サグを防止するために必要な高レベルのレオロジー調整剤を用いると、オーバーラップ領域は、指数の最適化では排除できない目に見える峰又は谷を示す。加えて、これらの小さいノズル塗布器では粒径が限定されるため、一部のレオロジー制御剤はフィルター及びノズル目詰まりにより使用できない。従って、改善の機会が残されている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、高転写効率塗布器を使用して一液型溶剤型コーティング組成物を基材に塗布して、基材上に配置されたコーティング層を形成する方法を提供し、当該方法は、
コーティング組成物を高転写効率塗布器に提供する工程と、
高転写効率塗布器を通してコーティング組成物を基材に塗布して、基材上にコーティング層を形成する工程であって、高転写効率塗布器を通した塗布の後の揮発物の損失が、コーティング組成物の総質量を基準にして約0.5質量%未満である、工程と、
を含み、
コーティング組成物は、
A.アクリル、ポリエステル、又はこれらの組み合わせを含む樹脂と、
B.メラミン架橋剤と、
C.任意選択の顔料と、
D.有機溶剤と、
E.少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤であって、アミンとイソシアネートとの反応生成物であり、約50℃~約150℃の融点を有し、コーティング組成物の総質量を基準にして約0.1~約4質量%の量で存在する、ポリ尿素結晶サグ制御剤と、
を含み、
コーティング組成物は、約45度で測定したときに、目に見えるサグを伴わずに少なくとも約30ミクロンの濡れ膜厚を有する。
【0006】
本開示は、高転写効率塗布器を使用して二液型溶剤型コーティング組成物を基材に塗布して、基材上に配置されたコーティング層を形成する方法も提供し、当該方法は、
コーティング組成物を高転写効率塗布器に提供する工程と、
高転写効率塗布器を通してコーティング組成物を基材に塗布して、基材上にコーティング層を形成する工程であって、高転写効率塗布器を通した塗布の後の揮発物の損失が、コーティング組成物の総質量を基準にして約0.5質量%未満である、工程と、
を含み、
コーティング組成物は、
A.ヒドロキシル官能性樹脂と、
B.イソシアネート架橋剤と、
C.任意選択の顔料と、
D.有機溶剤と、
E.少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤であって、アミンとイソシアネートとの反応生成物であり、約50℃~約150℃の融点を有し、コーティング組成物の総質量を基準にして約0.1~約4質量%の量で存在する、ポリ尿素結晶サグ制御剤と、
を含み、
コーティング組成物は、約45度で測定したときに、目に見えるサグを伴わずに少なくとも約30ミクロンの濡れ膜厚を有する。
以下に、本開示を下記の図面と合せて説明する。図面中、同様の数字は同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】コーティング組成物を基材に塗布する高転写効率塗布器の上面図である。
図1B図1Aの側面図である。
図2A】塗料(コーティング組成物)が上に配置された基材の側面図であり、高転写効率塗布器のエッジノズルの位置を示している。
図2B】サグ測定中の傾けられた図2Aの基材の側面図であり、水平面に対する基材の角度が表示されている。
図3A】コーティング組成物を基材に塗布する複数のノズルを含む高転写効率塗布器の側面図であり、1つのノズルラインは、ノズルプレート上のノズル間の間隔と一致する間隔を有する、周期的に繰り返すパターンを有するものとして定義できる。
図3B】基材に塗布されたコーティングのストライプを示す図3Aの側面図であり、図中、各ストライプは、約50のノズルの単一パスである。
図3C】各ノズルが基材に衝突した場所に欠陥が存在する図3Aの単一パスの拡大図である。
図4A】本開示の種々のコーティング組成物の位相ステップデフレクトメトリ(phase stepped deflectometry)測定を示す。
図4B】実施例10のサグを示す写真である。
図4C】実施例11のサグを示す写真である。
図5】レオロジー制御剤が組み込まれておらず、非常に低いサグ抵抗を生じた比較組成物のサグを示す写真である。
図6】目に見えるノズルライン欠陥を示す、比較組成物が上に配置された基材の写真である。
図7】ストライプオーバーラップ欠陥を示す、比較組成物が上に配置された基材の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な記載は、単に例示の性質のものであり、本開示を限定することを意図するものではない。更に、上記の背景技術又は以下の詳細な記載に示されたいかなる理論によっても束縛されることを意図しない。
【0009】
本開示の実施形態は、概して、一液及び二液型溶剤型コーティング組成物及びその形成方法に関する。簡略のため、上記組成物の形成に関連する従来技術は、本明細書で詳述しない場合がある。更に、本明細書に記載の様々なタスク及びプロセス工程は、追加工程又は本明細書に詳述されていない機能を有する、より包括的な手順又はプロセスに組み込まれてもよい。特に、上記組成物の製造における様々な工程は周知であり、従って、簡略のため、多くの従来工程は、本明細書で簡単に述べるのみであるか、又は周知のプロセス詳細を提供することなく全体が省略される。
【0010】
本開示は、高転写効率塗布器を使用して一液型溶剤型コーティング組成物を基材に塗布して、基材上に配置されたコーティング層を形成する方法を提供し、当該方法は、
コーティング組成物を高転写効率塗布器に提供する工程と、
高転写効率塗布器を通してコーティング組成物を基材に塗布して、基材上にコーティング層を形成する工程であって、高転写効率塗布器を通した塗布の後の揮発物の損失が、コーティング組成物の総質量を基準にして約0.5質量%未満である、工程と、
を含み、
コーティング組成物は、
A.アクリル、ポリエステル、又はこれらの組み合わせを含む樹脂と、
B.メラミン架橋剤と、
C.任意選択の顔料と、
D.有機溶剤と、
E.少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤であって、アミンとイソシアネートとの反応生成物であり、約50℃~約150℃の融点を有し、コーティング組成物の総質量を基準にして約0.1~約4質量%の量で存在する、ポリ尿素結晶サグ制御剤と、
を含み、
コーティング組成物は、約45度で測定したときに、目に見えるサグを伴わずに少なくとも約30ミクロンの濡れ膜厚を有する。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0011】
本開示は、高転写効率塗布器を使用して二液型溶剤型コーティング組成物を基材に塗布して、基材上に配置されたコーティング層を形成する方法も提供し、当該方法は、
コーティング組成物を高転写効率塗布器に提供する工程と、
高転写効率塗布器を通してコーティング組成物を基材に塗布して、基材上にコーティング層を形成する工程であって、高転写効率塗布器を通した塗布の後の揮発物の損失が、コーティング組成物の総質量を基準にして約0.5質量%未満である、工程と、
を含み、
コーティング組成物は、
A.ヒドロキシル官能性樹脂と、
B.イソシアネート架橋剤と、
C.任意選択の顔料と、
D.有機溶剤と、
E.少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤であって、アミンとイソシアネートとの反応生成物であり、約50℃~約150℃の融点を有し、コーティング組成物の総質量を基準にして約0.1~約4質量%の量で存在する、ポリ尿素結晶サグ制御剤と、
を含み、
コーティング組成物は、約45度で測定したときに、目に見えるサグを伴わずに少なくとも約30ミクロンの濡れ膜厚を有する。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0012】
本開示全体を通して、用語「から本質的になっている」又は「から本質的になる」は、当業者が測定したときに、いかなる代替のモノマー、ポリマー、添加剤、反応物質、充填剤、溶剤なども含まない実施形態を説明し得る。用語「~を含まない」は、問題の要素を、組成物の総質量を基準にして、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、又は0.1質量%未満含むとして説明できる。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0013】
本開示は、コーティング組成物を基材に塗布する工程を含む。塗布する工程は、特に限定されない。種々の実施形態において、塗布する工程は、噴射、例えば、高転写効率塗布器を通した噴射として更に定義される。あるいは、塗布する工程は、印刷として更に定義されてもよい。この工程を以下に更に詳細に記載する。
【0014】
更に、コーティング組成物は、特に限定されず、本明細書に記載の成分を含む当該技術分野で公知の任意のものであってもよい。例えば、この組成物は、硬化に硬化剤や触媒又はアクティベータを必要としない一液型又は「1K」組成物として説明できる。例えば、この組成物は、空気への曝露によって硬化し得る。あるいは、この組成物は、二液型又は「2K」組成物として説明できる。
【0015】
コーティング組成物は、当該技術分野で公知の任意の種類の基材をコーティングするために使用できる。実施形態において、基材は、車両、自動車、又は自動車車両である。「車両」又は「自動車」又は「自動車車両」は、乗用車、バン、ミニバン、バス、SUV(スポーツ用多目的車)などの自動車;トラック;セミトラック;トラクタ;オートバイ;トレーラー;ATV(全地形対応車);ピックアップトラック;ブルドーザー、クレーン車及び土工機械などの大型車両機;航空機;ボート;船舶;及び他の輸送形式を含む。コーティング組成物は、建物、フェンス、セラミックタイル、定常構造、橋、パイプ、セルロース系材料(例えば、木材、紙、繊維など)などの工業用途において基材をコーティングするためにも使用できる。コーティング組成物は、ヘルメット、野球バット、自転車、及び玩具などの消費者製品用途において基材をコーティングするためにも使用できる。用語「基材」は、本明細書で使用するとき、基材としてもみなされる物品上に配置されたコーティング層も指し得ることを理解されたい。
種々の基材は、異なる材料の2つ以上の別個の部分を含み得る。例えば、車両は、金属を含有する車体部分とプラスチックを含有するトリム部分とを含むことができる。プラスチックのベーク温度(80℃)は金属(140℃)と比べて制限されることから、金属を含有する車体部分とプラスチックを含有するトリム部分とは、従来は別の施設でコーティングされており、それによりコーティング部品の不適合の可能性が高まる場合がある。プラスチック基材に好適なコーティング組成物は、金属基材に好適なコーティングの塗布及びベークの後で、高転写効率塗布器によってプラスチック基材に塗布することができ、その際、基材をマスキングする必要がなく、従来の噴霧霧化などの低転写効率塗布方法によってコーティング組成物の一部分を無駄にする必要もない。プラスチック基材に好適なコーティング組成物は、第1の高転写効率塗布器を用いて塗布されてもよく、金属基材に好適なコーティング組成物は、第2の高転写効率塗布器を用いて塗布されてもよい。第1の高転写効率塗布器と第2の高転写効率塗布器とは、高転写効率塗布器アセンブリを形成してもよい。
【0016】
本発明の方法は、コーティング組成物を高転写効率塗布器に提供する工程を含む。上記提供する工程は、特に限定されず、当該技術分野で公知の任意の工程であってもよい。例えば、提供する工程は、組成物の1つ以上の成分の全部又は一部を提供すること、これらの成分を組み合わせて組成物を形成すること、次いで、完成した組成物を提供すること、として説明できる。あるいは、提供する工程は、組成物の1つ以上の成分又は組成物全体を、ポンプ移送、流動、移動、又は他の方法で高転写効率塗布器に送達すること、として説明できる。提供する工程は、連続プロセス又はバッチプロセスとして説明できる。同様に、提供する工程は、連続式サブ工程及び/又はバッチ式サブ工程を含んでもよい。種々の実施形態において、提供する工程は、加圧下で組成物を塗布器にポンプ移送することとして説明される。提供する工程は、当業者に理解されるものであってもよい。
【0017】
本発明の方法は、高転写効率塗布器を通してコーティング組成物を基材に塗布して、基材上にコーティング層を形成する工程も含む。典型的には、塗布する工程は、塗布器を通した、塗布器を用いた、又は塗布器による、噴射又は印刷として更に定義される。塗布する工程の間、高転写効率塗布器を通した塗布の後の揮発物の損失は、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.5質量%未満である。種々の実施形態において、この量は、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.4、0.3、0.2、又は0.1質量%未満である。典型的には、「揮発物」という用語は、蒸発し、その結果、コーティング組成物の質量損失を生じる物質として定義される。塗布後の揮発物の損失は、塗布前オーブン後の固形分(%)の増加によって決定され、各事例における固形分(%)は、ASTM D2369-10による重量測定法で決定される。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
特定の実施形態では、塗布する工程は、基材に衝突するコーティング組成物の液滴を生成する。種々の実施形態において、高転写効率塗布器から放出されたコーティング組成物の液滴の少なくとも約99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9%、又はそれ以上が、基材と接触する。理論に束縛されるものではないが、基材に接触せずに環境に入る液滴の数に対する基材と接触する液滴の数の増加は、コーティング組成物の塗布の効率を改善し、廃棄物発生を低減し、メンテナンスを削減すると考えられる。
【0018】
種々の実施形態において、高転写効率塗布器から放出されたコーティング組成物の液滴の少なくとも約99.5、99.6、99.7、99.8、99.9%、又はそれ以上が、基材との接触後に単一液滴のままである。理論に束縛されるものではないが、基材への衝突の結果生じるコーティング組成物の飛沫は、高転写効率塗布器を使用してコーティング組成物を塗布することによって最少化又は排除できると考えられる。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
種々の実施形態において、高転写効率塗布器から放出されたコーティング組成物の液滴の少なくとも約99.5、99.6、99.7、99.8、99.9%、又はそれ以上が、高転写効率塗布器からの放出後に単一液滴又は流れのままである。理論に束縛されるものではないが、サテライト液滴の形成は、高転写効率塗布器を使用してコーティング組成物を塗布することによって低減又は排除できると考えられる。サテライト液滴形成は、衝撃速度及びノズル直径を考慮することによって低減され得る。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0019】
種々の実施形態において、液体塗料は、高転写効率塗布器の1つ以上のノズルから、微細流を生成する工学的な/制御された様式で噴射され、当該微細流は液滴に分裂する場合もしない場合もある。この流れは、液滴が特定の場所に到達して、場合によっては対象の上に連続皮膜又はパターンを形成するように、基材を標的とする。結果として、多くの実施形態において、オーバースプレー(その標的を外れた液滴)が実質的に存在せず、ほぼ100%の転写効率が得られる(全ての塗料が、基材上の標的とする場所へ行く)。当業者に理解されるように、高転写効率塗布器の始動及び停止については、いくらかのゆとり(allowance)を設ける。この種のデバイスは、ドロップオンデマンド、ストリームオンデマンド、オーバースプレーフリー、又は超高転写効率の塗布器として説明できる。これらのデバイスは、噴霧霧化デバイス及び技術(部分的に制御された、液滴サイズのランダムな分布、軌道及び速度を生じるために、空気エネルギー、水力エネルギー、又は遠心力エネルギーなどのエネルギーが導入される、及びいくつかの追加のメカニズム、例えば、静電気及び/又はシェーピングエアが、塗料液滴クラウドを基材に誘導する)とは異なる。従来の塗料噴霧に関しては、常にいくらかのオーバースプレー及び転写効率の損失が存在する。
【0020】
高転写効率塗布器自体は、当該技術分野で公知の任意のものであってもよい。例えば、種々の実施形態において、塗布器は、米国特許出願公開第2015/0375258号(A1)明細書、米国特許出願公開第2004/0217202号(A1)明細書、米国特許出願公開第2009/0304936号(A1)明細書、米国特許第7,824,015号(B2)明細書、米国特許第8,091,987号(B2)明細書、国際公開第2018/206309号(A1)のうちの1つ以上に記載のとおりであり、これらの各々の全体を、種々な非限定的実施形態における使用のために本明細書に明示的に援用する。塗布器は、あるいは、プリントヘッドとして説明できる。
一実施形態では、高転写効率塗布器は、ノズルオリフィスを定め、約0.00002m~約0.0004mのノズル直径を有し得るノズルを含む。別の実施形態では、塗布器は、コーティング組成物を含有するように構成されたリザーバと流体連通状態にあってもよい。例えば、高転写効率塗布器は、リザーバからコーティング組成物を受け取るように構成されてもよく、かつノズルオリフィスを通って基材にコーティング組成物を放出してコーティング層を形成するように構成されてもよい。ノズル直径、粘度、密度、表面張力、及び緩和時間の範囲は、本明細書で開示されるか又は当該技術分野で公知の範囲のいずれかによって定めることができることを理解されたい。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0021】
高転写効率塗布器は、約0.2m/s~約20m/sの衝撃速度でノズルオリフィスを通してコーティング組成物を放出するように構成されてもよい。あるいは、高転写効率塗布器は、約0.4m/s~約10m/sの衝撃速度でノズルオリフィスを通してコーティング組成物を放出するように構成されてもよい。ノズルオリフィスは、約0.00004m~約0.00025mのノズル直径を有し得る。コーティング組成物は、少なくとも10ミクロンの粒径を有する液滴として高転写効率塗布器から放出し得る。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
1、2、3個、又はそれ以上の塗布器を互いに連動させて使用してもよいことが考えられる。塗布器の各々は、独立して、本明細書に記載のとおり又は任意の当該技術分野で公知のものであってもよい。
【0022】
種々の実施形態において、高転写効率塗布器は、複数のノズルを含み、当該ノズルの各々がノズルオリフィスを定める。複数のノズルは、第1の軸に沿って互いに対して線形構成で配列されてもよい。例えば、種々の実施形態において、複数のノズルは、ノズルAと、ノズルAに隣接したノズルBとを含む。ノズルAとノズルBとは、あるノズル距離で互いに離間し得る。基材からの高転写効率塗布器の距離は、ノズル距離と実質的に同じであることができる。
一実施形態では、複数のノズルは、矩形アレイを形成するように互いに対して離間され、複数のノズルは、コーティング組成物の放出を矩形アレイの隣接するノズル間で交互に実施して、コーティング組成物のサグを低減するように構成可能である。
【0023】
種々の実施形態において、高転写効率塗布器は、y軸に沿って整列した50のノズルを含む。ただし、塗布器は任意の数のノズルを含むことができることを理解されたい。コーティング組成物を基材に塗布するために、各ノズルを、他のノズルから独立して作動させてもよい。噴射の間、ノズルの独立した作動により、基材上のコーティング組成物の液滴の各々の配置を制御できる。
2個以上の塗布器を組み合わせてプリントヘッドアセンブリを形成してもよい。特定の実施形態では、上記の塗布器は、塗布器の各々のy軸が他のy軸と平行になるように整列される。更に、塗布器の各々のノズルは、y軸に垂直なx軸に沿って互いに整列してもよく、その結果、「アレイ」が形成される。1つのノズルは、x軸及びy軸に対して、当該1つのノズルに直接隣接する他のノズルから等しく離間してもよい。ノズルのこの構成は、プリントヘッドアセンブリがx軸に沿って移動したときに、塗布器の各々によって同じコーティング組成物を基材に塗布するのに好適となり得る。理論に束縛されるものではないが、x軸及びy軸の両方に対してノズルが等しく離間することで、基材上に同一コーティング組成物の均一塗布を生じ得ると考えられる。同一コーティング組成物の均一塗布は、単色塗布、ツートンカラー塗布などに好適となり得る。
あるいは、第1のy軸に沿った1組のノズルは、別の組のノズルまでの間隔が、1つの高転写効率塗布器のy軸に沿うノズルの各々の間隔と比較して、狭い間隔であってもよい。ノズルのこの構成は、高転写効率塗布器の各々によって異なるコーティング組成物を基材に塗布するのに好適となり得る。同じ高転写効率塗布器アセンブリ内で異なるコーティング組成物を利用することは、ロゴ、デザイン、標識、縞模様、迷彩外観などに好適となり得る。
高転写効率塗布器のノズルは、線状、基材に対して凹形、基材に対して凸形、円形などの当該技術分野で公知の任意の構成を有することができる。ミラー、トリムパネル、輪郭、スポイラーなどを含む車両のような、不規則構成を有する基材に対する高転写効率塗布器の協働を容易にするために、ノズルの構成の調節が必要となる場合がある。
【0024】
高転写効率塗布器は、個々の液滴を配合して所望の色を形成するように構成することができる。高転写効率塗布器は、シアンコーティング組成物、マゼンタコーティング組成物、イエローコーティング組成物、及びブラックコーティング組成物を塗布するためのノズルを含んでもよい。コーティング組成物の特性は、配合を促進するように変更されてもよい。更に、空気移動又は音波発生器などの撹拌源を使用して、コーティング組成物の配合を促進することができる。撹拌源は、高転写効率塗布器に連結していても、塗布器から分離していてもよい。
高転写効率塗布器で使用するためのコーティング組成物の好適な特性の特定は、高転写効率塗布器の特性に依存し得る。高転写効率塗布器の特性としては、限定するものではないが、高転写効率塗布器のノズル直径、高転写効率塗布器によるコーティング組成物の衝撃速度、高転写効率塗布器の速度、基材からの高転写効率塗布器の距離、高転写効率塗布器によるコーティング組成物の液滴サイズ、高転写効率塗布器の発射率、及び重力に対する高転写効率塗布器の配向が挙げられる。
【0025】
一実施形態では、例えば、図1A及び1Bに示すように、高転写効率塗布器は、組成物14の流れを基材16上に噴射する。図1Aでは、基材16上に配置された組成物14のストライプ20の間にスペース18が示されている。このスペース18は、最少化又は排除されることが好ましい。しかし、ストライプ20のオーバーラップは、意図せずに、組成物のオーバーラップ及び望ましくない蓄積、並びに基材のある種の「丘」(hill)又は隆起部分の形成を招き得ることを、当業者は理解する。これも、最少化されることが好ましい。
図3A~3Cには、単一のノズルラインが示されており、これは高転写効率塗布器のノズル間の間隔と一致する間隔を有する周期的繰り返しパターンを有するものとして定義できる。この欠陥は、直線であることも、曲がりくねっている(squiggly)こともあり得る。この欠陥は、その中に複数の中断箇所を有し得る。欠陥は、平滑に見えても、隆起していてもよい。図3Bでは、各ストライプは、約50のノズルの単一パスである。図3Cは、高転写効率塗布器の単一パスに関して、図3Aの拡大図として示す。欠陥は、組成物の各ノズル噴射が基材16に衝突した場所に存在する。
図4Aでは、Optimap(商標)PSDで、位相ステップデフレクトメトリを使用して、約79×57mmの領域の表面プロファイルを決定している。ここでは、ストライプオーバーラップの領域を含む2つのコーティング表面プロファイルが示されている。コーティング高さの差異に対応するカラースケールを左に示す。緑色は、平均コーティング表面高さを表し、赤色は、平均よりも大きい高さ(最大で3ミクロン)を有する「丘」を表し、青色は、表面平均よりも低い谷(最低で3ミクロン)を表す。ストライプオーバーラップ領域は、塗布方向に平行な欠陥として観察され、丘と谷が顕著になるにつれて、一層目に見えるようになる。
図4B及び4Cは、それぞれ、実施例10及び11のサグを示す写真である。図5は、レオロジー制御剤が組み込まれておらず、非常に低いサグ抵抗を生じた比較組成物のサグを示す写真である。図6は、目に見えるノズルライン欠陥を示す、比較組成物が上に配置された基材の写真である。図7は、ストライプオーバーラップ欠陥を示す、比較組成物が上に配置された基材の写真である。
【0026】
コーティング組成物:
ここで組成物自体に言及すると、組成物は溶剤型であり、一液型組成物であっても二液型組成物であってもよい。各々を以下に説明する。
【0027】
一液型組成物:
種々の実施形態において、組成物は、アクリル、ポリエステル、又はこれらの組み合わせを含む樹脂;メラミン架橋剤;任意選択の顔料;有機溶剤;及び少なくとも1種のポリ尿素結晶サグ制御剤であるか、これらを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる。例えば、用語「から本質的になる」は、本明細書に記載されていない又は任意選択として記載されている樹脂又はポリマー、本明細書に記載されていない又は任意選択として記載されている架橋剤、本明細書に記載されていない又は任意選択として記載されている顔料、本明細書に記載されていない又は任意選択として記載されている有機溶剤、並びに本明細書に記載されていない又は任意選択として記載されているサグ制御剤及び/又はレオロジー制御剤を含まない実施形態を説明し得る。用語「~を含まない」又は「~がない」は、当該組成物が、当該化合物を、組成物の総質量を基準にして、約10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、又は0.1質量%(例えば、質量%(有効成分))未満含むことを説明し得る。あるいは、用語「~を含まない」又は「~がない」は、当該組成物が当該化合物をまったく含まないことを説明し得る。
【0028】
二液型組成物:
種々の実施形態において、組成物は、ヒドロキシル官能性樹脂;イソシアネート架橋剤;任意選択の顔料;有機溶剤;及び少なくとも1種のポリ尿素結晶サグ制御剤であるか、これらを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる。例えば、用語「から本質的になる」は、本明細書に記載されていない又は任意選択として記載されている樹脂又はポリマー、本明細書に記載されていない又は任意選択として記載されている架橋剤、本明細書に記載されていない又は任意選択として記載されている顔料、本明細書に記載されていない又は任意選択として記載されている有機溶剤、並びに本明細書に記載されていない又は任意選択として記載されているサグ制御剤及び/又はレオロジー制御剤を含まない実施形態を説明し得る。用語「~を含まない」又は「~がない」は、当該組成物が、当該化合物を、組成物の総質量を基準にして、約10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、又は0.1質量%(例えば、質量%(有効成分))未満含むことを説明し得る。あるいは、用語「~を含まない」又は「~がない」は、当該組成物が当該化合物をまったく含まないことを説明し得る。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0029】
アクリル、ポリエステル、又はこれらの組み合わせを含む樹脂
一液型組成物に関して、樹脂は、アクリル、ポリエステル、又はこれらの組み合わせであること、これらを含むこと、これらから本質的になること、又はこれらからなることができる。例えば、用語「から本質的になる」は、アクリル、ポリエステル、又は当該技術分野で公知の任意の他のポリマーを含まない実施形態を説明でき、ここで「~を含まない」は上記のとおりである。例えば、組成物、及び/又は樹脂自体は、アクリルを含み、ポリエステル及び/又は任意の他のポリマーを含まなくてもよい。あるいは、組成物、及び/又は樹脂自体は、ポリエステルを含み、アクリル及び/又は任意の他のポリマーを含まなくてもよい。組成物及び/又は樹脂自体は、アクリル及びポリエステルの両方を含み、任意の他のポリマーを含まなくてもよい。
【0030】
種々の実施形態において、アクリルは、(メタ)アクリルアミド、N置換(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエトキシレート(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシド、α-エポキシド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、無水マレイン酸、イタコン酸、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、N-ビニルカプロラクタム、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ官能性カプロラクトンエステル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、これらの組み合わせなどが挙げられるがこれらに限定されないモノマーの1つ以上の反応生成物であること、当該生成物を含むこと、当該生成物から本質的になること、又は当該生成物からなることができる。
他の実施形態において、アクリルは、(メタ)アクリル化ウレタン(すなわち、ウレタン(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル化エポキシ(すなわち、エポキシ(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル化ポリエステル(すなわち、ポリエステル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル化(メタ)アクリル、(メタ)アクリル化シリコーン、(メタ)アクリル化アミン、(メタ)アクリル化アミド;(メタ)アクリル化ポリスルホン;(メタ)アクリル化ポリエステル、(メタ)アクリル化ポリエーテル(すなわち、ポリエーテル(メタ)アクリレート)、ビニル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル化オイルのうちの1つ以上であること、これらを含むこと、これらから本質的になること、又はこれらからなることができる。
【0031】
種々の実施形態において、ポリエステルは、当該技術分野で公知の任意のポリエステルであること、当該ポリエステルを含むこと、当該ポリエステルから本質的になること、又は当該ポリエステルからなることができる。例えば、ポリエステルは線状又は分岐状であってもよい。有用なポリエステルとしては、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、ポリオール、ジオール、芳香族又は脂肪族環状無水物、及び環状アルコールのエステル化生成物が挙げられる。好適な脂環式ポリカルボン酸の非限定例は、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸、エンドエチレンヘキサヒドロフタル酸、カンファー酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、及びシクロブタンテトラカルボン酸である。脂環式ポリカルボン酸は、シス形だけでなく、トランス形、及び両方の形の混合物としても使用できる。好適なポリカルボン酸の更なる非限定例としては、芳香族及び脂肪族ポリカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ハロゲノフタル酸(例えば、テトラクロロ-又はテトラブロモフタル酸)、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、トリメリット酸、及びピロメリット酸が挙げられる。ポリカルボン酸と脂環式ポリカルボン酸との組み合わせなどの、ポリ酸の組み合わせは好適となり得る。ポリオールの組み合わせも好適となり得る。
好適なポリエステルの非限定例としては、分岐コポリエステルポリマーが挙げられる。参照により本明細書に援用する米国特許第6,861,495号明細書に記載されている分岐コポリエステルポリマー及びその製造方法は、好適となり得る。AxBy(x,y=1~3(独立して))型などの多官能基を有するモノマー、例えば1つのカルボキシル基と2つのヒドロキシル基、2つのカルボキシル基と1つのヒドロキシル基、1つのカルボキシル基と3つのヒドロキシル基、又は3つのカルボキシル基と1つのヒドロキシル基を有するものなどを使用して、分岐構造を作ることができる。そのようなモノマーの非限定例としては、2,3ジヒドロキシプロピオン酸、2,3ジヒドロキシ2-メチルプロピオン酸、2,2ジヒドロキシプロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸などが挙げられる。
ポリエステルは、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のラクトン、及びこれらの組み合わせの群から選択される鎖延長剤を含有するモノマー混合物と、1種以上の分岐モノマーとから従来法により重合できる。好適なヒドロキシカルボン酸の一部として、グリコール酸、乳酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ吉草酸、及びヒドロキシピバル酸が挙げられる。好適なラクトンの一部として、カプロラクトン、バレロラクトン、及び対応するヒドロキシカルボン酸(例えば、3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ吉草酸、及びヒドロキシピバル酸など)のラクトンが挙げられる。特定の実施形態において、カプロラクトンを使用することができる。実施形態において、分岐コポリエステルポリマーは、鎖延長剤と多分岐モノマーとを含むモノマー混合物を一工程で重合することによって、又は多分岐モノマーを最初に重合し、続いて鎖延長剤を重合することによって、生成することができる。分岐コポリエステルポリマーは、上記の延長モノマーを有するアクリルコアから形成できることを理解されたい。
【0032】
種々の実施形態において、アクリル、ポリエステル、又はこれらの組み合わせを含む樹脂は、組成物の総質量%を基準にした質量%で、約10~約40、約15%~約35%、又は約20%~約30%の量で使用される。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0033】
ヒドロキシル官能性樹脂:
ヒドロキシル官能性樹脂は、特に限定されず、当該技術分野で公知の任意のものであってもよい。種々の実施形態において、この樹脂は、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、ポリオール、ジオール、芳香族又は脂肪族環状無水物及び環状アルコールであること、これらを含むこと、これらから本質的になること、又はこれらからなることができる。好適な脂環式ポリカルボン酸の非限定例は、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸、エンドエチレンヘキサヒドロフタル酸、カンファー酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、及びシクロブタンテトラカルボン酸である。脂環式ポリカルボン酸は、シス形だけでなく、トランス形、及び両方の形の混合物としても使用できる。好適なポリカルボン酸の更なる非限定例としては、芳香族及び脂肪族ポリカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ハロゲノフタル酸(例えば、テトラクロロ-又はテトラブロモフタル酸)、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、トリメリット酸、及びピロメリット酸が挙げられる。ポリカルボン酸と脂環式ポリカルボン酸との組み合わせなどの、ポリ酸の組み合わせは好適となり得る。ポリオールの組み合わせも好適となり得る。
好適な多価アルコールの非限定例としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチルペンタンジオール、エチルブチルプロパンジオール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールが挙げられる。所望であれば、一価アルコール、例えば、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、エトキシル化又はプロポキシル化フェノールなども多価アルコールと共に含んでもよい。あるいは、経験及び構造式によって定義される低モル質量ポリオール、例えば多価アルコールを使用できる。他の実施形態において、数平均モル質量が、例えば、最大で8000、あるいは最大で5000、あるいは最大で2000であるオリゴマー又はポリマーポリオール、及び/又は、例えば、対応するヒドロキシル官能性ポリエーテル、ポリエステル又はポリカーボネートが使用される。
種々の実施形態において、ヒドロキシル官能性樹脂は、組成物の総質量%を基準にした質量%で、約10%~約50%、約10~約40%、約12%~約30%、又は約15%~約25%の量で使用される。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0034】
本開示の組成物は、架橋剤を含み得る。用語「架橋剤」は、化合物の各分子、オリゴマー、ポリマー、ポリマーの主鎖、ポリマーの主鎖からの側鎖、ポリマーの主鎖上の末端位置、又はこれらの組み合わせに位置する官能基である「架橋性官能基」を有する成分を指し、これらの官能基は架橋可能な官能基と架橋して(硬化工程中に)架橋構造の形態のコーティングを生成できる。当業者は、架橋性官能基と架橋可能な官能基との特定の組み合わせは、架橋してフィルム形成架橋構造を生成することができないことから、除外されることを認識するであろう。
【0035】
イソシアネート架橋剤:
イソシアネート架橋剤は、特に限定されず、当該技術分野で公知の任意のものであってもよい。種々の実施形態において、このイソシアネート架橋剤は、1種以上のイソシアネート、例えば、限定するものではないが、芳香族、脂肪族又は脂環式ジ-、トリ-又はテトラ-イソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート及びイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートなどの、イソシアヌレート構造単位を有するポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネートと、エチレングリコールなどのジオールとの2つの分子の付加物;ヘキサメチレンジイソシアネートのウレチジオン;イソホロンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートのウレチジオン;トリメチロールプロパンとm-テトラメチルキシレンジイソシアネートとの付加物であること、これらを含むこと、これらから本質的になること、又はこれらからなることができる。
種々の実施形態において、イソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、又はトルイジンジイソシアネート(TDI)に基づくオリゴマー、例えば、イソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、及び上記イソシアネートの多価アルコールとの付加物、並びにこれらの混合物を使用できる。これらは、ポリオール、例えば、OH基含有ポリエステル、ポリエーテル、アクリレート及びポリウレタン、並びにこれらの混合物などと反応でき、このポリオールは、溶剤系、無溶剤、又は水希釈可能であってもよい。種々の実施形態において、当業者による選択に従い、単官能性イソシアネートが本明細書での使用を企図される。他の実施形態において、当業者による選択に従い、ブロック化イソシアネートが本明細書での使用を企図される。
種々の実施形態において、イソシアネート架橋剤は、組成物の総質量%を基準にして約3~約6、又は約3、4、5、若しくは6質量%の量で使用される。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0036】
任意選択の架橋剤:
種々の実施形態において、イソシアネート架橋剤は使用されず、メラミン架橋剤が使用される。あるいは、イソシアネート架橋剤とメラミン架橋剤の両方を使用できる。種々の実施形態において、この任意選択の架橋剤は、当該技術分野で公知の任意のメラミン架橋剤であること、当該架橋剤を含むこと、当該架橋剤から本質的になること、又は当該架橋剤からなることができる。
【0037】
メラミン樹脂は、メタノール又はブタノールなどの1種以上のアルコールで部分的に又は完全にエーテル化されていてもよい。非限定例は、ヘキサメトキシメチルメラミンである。好適なメラミン樹脂の非限定例としては、モノマーメラミン、ポリマーメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、又はこれらの組み合わせが挙げられる。モノマーメラミンとしては、メタノール、n-ブタノール、又はイソブタノールなどのC1~C5一価アルコールでエーテル化されたメチロール基を、平均で、トリアジン核1つ当たり3個以上含有し、平均縮合度が最大で約2であり、特定の実施形態では約1.1~約1.8の範囲内であり、かつ単核種の比率が約50質量%以上である、低分子量メラミンが挙げられる。対照的に、ポリマーメラミンは、平均縮合度が約1.9より大きい。いくつかのこのような好適なモノマーメラミンとしては、メチル化、ブチル化、イソブチル化メラミン及びこれらの混合物などのアルキル化メラミンが挙げられる。これらの好適なモノマーメラミンの多くは、商業的に供給される。例えば、Cytec Industries Inc.(West Patterson,N.J.)はCymel(登録商標)301(重合度1.5、95%メチル及び5%メチロール)、Cymel(登録商標)350(重合度1.6、84%メチル及び16%メチロール)、303、325、327、370及びXW3106を供給しており、これらは全てモノマーメラミンである。好適なポリマーメラミンとしては、Solutia Inc.(St.Louis,Mo)から供給されている、Resimene(登録商標)BMP5503(分子量690、多分散度1.98、56%ブチル、44%アミノ)として知られる高アミノ(部分アルキル化、-N、-H)メラミン、又はCytec Industries Inc.(West Patterson,N.J.)から提供されているCymel(登録商標)1158が挙げられる。Cytec Industries Inc.は、Cymel(登録商標)1130、固形分80%(重合度2.5)、Cymel(登録商標)1133(48%メチル、4%メチロール及び48%ブチル)も供給しており、これらは両方ともポリマーメラミンである。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0038】
コーティング組成物は、同じ又は異なる架橋性官能基を有する2種以上の架橋剤を含んでもよい。典型的な架橋性官能基としては、ヒドロキシル、チオール、イソシアネート、チオイソシアネート、アセトアセトキシ、カルボキシル、一級アミン、二級アミン、エポキシ、無水物、ケチミン、アルジミン、オルトエステル、オルトカーボネート、環状アミド、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
種々の実施形態において、任意選択の架橋剤、例えばメラミン架橋剤は、組成物の総質量%を基準にして、約0~約30、約5~約30、約12~約25、又は約15~約20質量%の量で使用される。他の実施形態において、この量は、組成物の総質量%を基準にして、約5~約25、約10~約20、約10~約15質量%である。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0039】
例示的実施形態において、コーティング組成物は、Cytec Industries Inc.(West Patterson,N.J.)から市販されているCymel(登録商標)303の商品名を有するメラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含む。
【0040】
任意選択の顔料:
コーティング組成物での使用が当該技術分野で公知の任意の顔料を、コーティング組成物に使用できる。好適な顔料の非限定例としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属フレークを含むエフェクト顔料、クロム酸鉛などのクロム酸塩、硫化物、硫酸塩、カーボネート、カーボンブラック、シリカ、タルク、チャイナクレイ、フタロシアニンブルー及びグリーン、有機レッド、有機マルーン、真珠光沢顔料、他の有機顔料及び染料、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。必要に応じて、メタホウ酸バリウム、リン酸亜鉛、三リン酸アルミニウム、及びこれらの組み合わせなどのクロメートフリー顔料も使用できる。
好適なエフェクト顔料の更なる非限定例としては、光輝アルミニウムフレーク、超微細アルミニウムフレーク、中粒径アルミニウムフレーク、及び光輝中粗アルミニウムフレーク;パール顔料としても知られる二酸化チタン顔料で被覆された雲母片;及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な着色顔料の非限定例としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック、モノアゾレッドトナー、赤色酸化鉄、キナクリドンマルーン、透明レッドオキサイド、ジオキサジンカルバゾールバイオレット、アイアンブルー、インダントロンブルー、チタン酸クロム、チタンイエロー、モノアゾパーマネントオレンジ、フェライトイエロー、モノアゾベンズイミダゾロンイエロー、透明イエローオキサイド、イソインドリンイエロー、テトラクロロイソインドリンイエロー、アンタントロンオレンジ、クロム酸鉛イエロー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンバイオレット、事前に暗色化したクロムイエロー、チオインジゴレッド、透明レッドオキサイドチップ、モリブデートオレンジ、モリブデートオレンレッド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
上にも示したように、コーティング組成物は、体質顔料を更に含んでもよい。体質顔料は、一般的に、コーティング組成物中のより高コストの顔料を置き換えるために使用されるが、本明細書で企図される体質顔料は、コーティング組成物の剪断粘度を、体質顔料を含まないコーティング組成物と比べて増加させる場合がある。コーティング組成物の剪断粘度の増加は、高転写効率塗布器を利用した基板への塗布に対するコーティング組成物の適性を改善し得る。体質顔料は、約0.01~約44ミクロンの粒径を有し得る。体質顔料は、結節状、小板、針状、及び繊維状などであるがこれらに限定されない様々な構成を有し得る。好適な体質顔料の非限定例としては、白亜、重晶石、非晶質シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻シリカ、チャイナクレイ、炭酸カルシウム、フィロケイ酸塩(雲母)、珪灰石、ケイ酸マグネシウム(タルク)、硫酸バリウム、カオリン、及びケイ酸アルミニウムが挙げられる。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
コーティング組成物は、体質顔料を、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.1~約50、あるいは約1~約20、あるいは約1~約10質量%の量で含み得る。特定の実施形態では、コーティング組成物は、ケイ酸マグネシウム(タルク)、硫酸バリウム、又はこれらの組み合わせを含む。種々の実施形態において、硫酸バリウムを体質顔料として含むことで、タルクを体質顔料として含む場合と比較して、より大きい剪断粘度を有するコーティング組成物が得られる。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0042】
種々の実施形態において、任意選択の顔料は、ピグメントイエロー213、PY151、PY93、PY83、ピグメントレッド122、PR168、PR254、PR179、ピグメントレッド166、ピグメントレッド48:2、ピグメントバイオレット19、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36、ピグメントブラック7又はピグメントホワイト6、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0043】
有機溶剤:
組成物は、有機溶剤も含み得る。好適な有機溶剤の非限定例としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン及びジイソブチルケトンなどのケトン;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。実施形態において、溶剤の蒸発速度は、印刷へのコーティング組成物の適性に影響を与え得る。特定の共溶剤を、蒸発速度が高い又は低いコーティング組成物に組み込み、それによってコーティング組成物の蒸発速度を上昇又は低下させてもよい。
種々の実施形態において、有機溶剤含有量は、コーティング組成物の液体キャリアの総質量を基準として、約50質量%超、あるいは60質量%超、あるいは70質量%超、あるいは80質量%超、あるいは90質量%超である。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0044】
少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤:
組成物は、少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤も含む。当該制御剤は、アミンとイソシアネートとの反応生成物である。アミン及びイソシアネートは、両方とも特に限定されず、当該技術分野で公知又は上記の任意のものであってもよい。例えば、アミンは、一級又は二級アミンであってもよい。アミンは、典型的には、ヒドロキシル基及び/又はエーテル基を含む。種々の実施形態において、アミンは、モノ-、ジ-、トリ-、又はポリ-アミンである。種々の実施形態において、ジ-、トリ-、及び/又はポリ-アミンの使用は、単官能性イソシアネートの使用を必要とする。
少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、約50℃~約150℃の融点を有する。種々の実施形態において、この融点は、約55~約145、約60~約140、約65~約135、約70~約130、約75~約125、約80~約120、約85~約115、約90~約110、約95~約105、約100~約105、約50~約100、約55~約95、約60~約90、約65~約85、約70~約80、約70~約75、約50~約120、約55~約115、約60~約110、約65~約105、約70~約100、約75~約95、約80~約90、約80~約85、約120~約150、約125~約145、約130~約140、又は約130~約135℃である。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
種々の実施形態において、少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.1~約4質量%の量で存在する。他の実施形態において、少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.2~約3.9、約0.3~約3.8、約0.4~約3.7、約0.5~約3.6、約0.6~約3.5、約0.7~約3.4、約0.8~約3.3、約0.9~約3.2、約1~約3.1、約1.1~約3、約1.2~約2.9、約1.3~約2.8、約1.4~約2.7、約1.5~約2.6、約1.6~約2.5、約1.7~約2.4、約1.8~約2.3、約1.9~約2.2、又は約2~約2.1質量%の量で存在する。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0045】
一実施形態では、少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、不透明として説明でき、種々の非限定的実施形態において参照によりその開示の全体を本明細書に明示的に援用する米国特許第4311622号明細書に記載されているとおりであってもよい。一実施形態では、少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、異方性コロイドポリ尿素結晶であり、例えば、有機ジイソシアネートとベンジルアミンとの反応生成物である。
別の実施形態において、少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、透明として説明でき、種々の非限定的実施形態において参照によりその開示の全体を本明細書に明示的に援用する米国特許第4677028号明細書及び/又は米国特許第7656151号明細書に記載されているとおりであってもよい。一実施形態では、少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、異方性コロイドポリ尿素結晶であり、アミンと有機トリ-又はポリ-イソシアネートとの反応生成物である。
別の実施形態では、少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、強力として説明でき、種々の非限定的実施形態において参照によりその開示の全体を本明細書に明示的に援用する米国特許第7851530号明細書に記載されているとおりであってもよい。一実施形態では、少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、1つ以上の光学活性有機アミンと、1つ以上のジ-又はポリ-イソシアネート(例えば、3~20個の炭素を含有するジイソシアネートから誘導されるもの)との反応生成物である。
【0046】
一実施形態では、イソシアネートは有機ジイソシアネートであり、アミンはベンジルアミンであり、融点は約120℃~約150℃である。別の実施形態において、少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.1~約1.75質量%の量で存在する。例えば、この量は、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.2~約1.7、約0.3~約1.6、約0.4~約1.5、約0.5~約1.4、約0.6~約1.3、約0.7~約1.2、約0.8~約1.1、又は約0.9~約1質量%であってもよい。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
他の実施形態において、有機ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートである。別の実施形態において、イソシアネートは、有機トリイソシアネート及び/又は有機ポリイソシアネートであり、融点は約50℃~約100℃である。他の実施形態において、少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.1~約2.5質量%の量で存在する。例えば、この量は、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.2~約2.4、約0.3~約2.3、約0.4~約2.2、約0.5~約2.1、約0.6~約2、約0.7~約1.9、約0.8~約1.8、約0.9~約1.7、約1~約1.6、約1.1~約1.5、約1.2~約1.4、又は約1.3~約1.4質量%であってもよい。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
他の実施形態において、イソシアネートは有機ジイソシアネート、トリイソシアネート、及び/又はポリイソシアネートであり、アミンは光学活性であり、融点は約50℃~約120℃である。光学活性という用語は、キラルアミン、例えば、キラルアミンのR又はS鏡像異性体を説明し、キラルアミンのR鏡像異性体とS鏡像異性体との混合物ではないことは当業者に公知である。一実施形態では、少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.1~約2質量%の量で存在する。この量は、例えば、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.2~約1.9、約0.3~約1.8、約0.4~約1.7、約0.5~約1.6、約0.6~約1.5、約0.7~約1.4、約0.8~約1.3、約0.9~約1.2、又は約1~約1.1質量%であってもよい。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0047】
一実施形態では、反応物質は以下のとおりである:
【化1】
別の実施形態では、反応物質は以下のとおりである:
【化2】
別の実施形態では、反応物質は以下のとおりである:
【化3】
【0048】
追加の任意選択成分:
コーティング組成物は、バインダ、染料、レオロジー調整剤、キャリア、触媒、従来の添加剤、又はこれらの組み合わせなど、種々の成分を含む。従来の添加剤としては、限定するものではないが、分散剤、酸化防止剤、UV安定剤及び吸収剤、界面活性剤、湿潤剤、レベリング剤、消泡剤、へこみ防止剤、又はこれらの組み合わせが挙げられる。実施形態において、コーティング組成物は、当該コーティング組成物が特定の成分を含む、及び/又は特定の成分を特定の量/比で含むという前提で、高転写効率塗布器を使用した基材への塗布に好適である。
【0049】
種々の実施形態において、コーティング組成物は、染料を更に含んでもよい。好適な染料の非限定例としては、トリフェニルメタン染料、アントラキノン染料、キサンテン及び関連染料、アゾ染料、反応染料、フタロシアニン化合物、キナクリドン化合物、及び蛍光増白剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。コーティング組成物は、染料を、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.01~約5、あるいは約0.05~約1、あるいは約0.05~約0.5質量%の量で含み得る。特定の実施形態では、コーティング組成物は、10%の黒色染料溶液、例えばSol.Orasol Negro RLを含む。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0050】
用語「バインダ」は、コーティング組成物の皮膜形成要素を指す。典型的には、バインダは、硬度、保護、接着力などの所望の特性を有するコーティングを形成するのに不可欠なポリマー、オリゴマー、又はこれらの組み合わせを含むことができる。キャリア、顔料、触媒、レオロジー調整剤、酸化防止剤、UV安定剤及び吸収剤、レベリング剤、消泡剤、へこみ防止剤、又は他の従来の添加剤などの追加成分は、これらの追加成分のいずれかがコーティング組成物の皮膜形成要素でない限り、用語「バインダ」に含まれない場合がある。これらの追加成分のうちの1つ以上を、コーティング組成物に含めることができる。特定の実施形態では、バインダはポリマーを含む。コーティング組成物は、バインダを、コーティング組成物の総質量を基準にして、約5~約70質量%、あるいは約10~約50質量%、あるいは約15~約25量%の量で含み得る。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0051】
上にも示したように、コーティング組成物は、触媒を更に含んでもよい。コーティング組成物は、硬化時間を短縮し、周囲温度におけるコーティングの硬化を可能にするために、触媒を更に含んでもよい。周囲温度は、典型的には、約18℃~約35℃の範囲の温度を指す。好適な触媒の非限定例としては、有機金属塩、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジブロミド、ナフテン酸亜鉛;トリフェニルホウ素、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネートキレート、ジブチルスズジオキシド、ジブチルスズジオクトエート、スズオクトエート、チタン酸アルミニウム、アルミニウムキレート、ジルコニウムキレート、炭化水素ホスホニウムハライド、例えば、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、及びその他のかかるホスホニウム塩並びに他の触媒、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適な酸触媒の非限定例としては、カルボン酸、スルホン酸、リン酸又はこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、酸触媒は、例えば、酢酸、ギ酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、リン酸、又はこれらの組み合わせを含み得る。コーティング組成物は、触媒を、コーティング組成物の総質量を基準にして、約0.01~約5、あるいは約0.05~約1、あるいは約0.05~約0.5質量%の量で含み得る。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0052】
上にも示したように、コーティング組成物は、従来の添加剤を更に含んでもよい。コーティング組成物は、紫外線安定剤を更に含んでもよい。このような紫外線安定剤の非限定例としては、紫外線吸収剤、遮断剤、消光剤、及びヒンダードアミン光安定剤が挙げられる。酸化防止剤も、コーティング組成物に添加できる。典型的な紫外線安定剤としては、ベンゾフェノン、トリアゾール、トリアジン、ベンゾエート、ヒンダードアミン及びこれらの混合物が挙げられる。全てCiba Specialty Chemicals(Tarrytown,New York)から商品名Tinuvin(登録商標)で市販されているTinuvin(登録商標)328及びTinuvin(登録商標)123などのヒンダードアミン光安定剤の配合物を使用できる。
好適な紫外線吸収剤の非限定例としては、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミル-フェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルプロピオネート)-2H-ベンゾトリアゾールと重量平均分子量が300であるポリエチレンエーテルグリコールとの反応生成物、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-イソ-オクチルプロピオネート)-2H-ベンゾトリアゾール;ヒドロキシフェニル s-トリアジン、例えば、2-[4((2,-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシ/トリデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4(2-ヒドロキシ-3-(2-エチルヘキシル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)1,3,5-トリアジン、2-(4-オクチルオキシ-2-ヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン;ヒドロキシベンゾフェノンUV吸収剤、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、及び2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0053】
好適なヒンダードアミン光安定剤の非限定例としては、N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-2-ドデシルスクシンイミド、N(1アセチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-2-ドデシルスクシンイミド、N-(2ヒドロキシエチル)-2,6,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール-コハク酸コポリマー、1,3,5トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N’”-[1,2-エタンジイルビス[[[4,6-ビス[ブチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル]イミノ]-3,1-プロパンジイル]]ビス[N,N’”-ジブチル-N’,N’”-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)]、ポリ-[[6-[1,1,3,3-テトラメチルブチル)-アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)-イミノ]-1,6-ヘキサン-ジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-イミノ])、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)[3,5ビス(1,1-ジメチルエチル-4-ヒドロキシ-フェニル)メチル]ブチルプロパンジオエート、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ(4,5)デカン-2,4-ジオン、及びドデシル/テトラデシル-3-(2,2,4,4-テトラメチル-2l-オキソ-7-オキサ-3,20-ジアザールジスピロ(5.1.11.2)ヘニコサン-20-イル)プロピオネートが挙げられる。
【0054】
好適な酸化防止剤の非限定例としては、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチルヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、オクタデシル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、及びベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7~C9分岐アルキルエステルが挙げられる。特定の実施形態では、酸化防止剤としては、ヒドロペルオキシド分解剤、例えば、Sanko(登録商標)HCA(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスフェナントレン-10-オキシド)、トリフェニルホスフェート及びその他の有機リン化合物、例えば、Ciba Specialty ChemicalsからのIrgafos(登録商標)TNPP、Ciba Specialty ChemicalsからのIrgafos(登録商標)168、GE Specialty ChemicalsからのUltranox(登録商標)626、Asahi DenkaからのMark PEP-6、Asahi DenkaからのMark HP-10、Ciba Specialty ChemicalsからのIrgafos(登録商標)P-EPQ、AlbemarleからのEthanox 398、GE Specialty ChemicalsからのWeston 618、Ciba Specialty ChemicalsからのIrgafos(登録商標)12、Ciba Specialty ChemicalsからのIrgafos(登録商標)38、GE Specialty ChemicalsからのUltranox(登録商標)641、及びDover ChemicalsからのDoverphos(登録商標)S-9228が挙げられる。
【0055】
コーティング組成物は、当該技術分野でコーティング組成物への使用が公知の他の添加剤を更に含んでもよい。そのような添加剤の非限定例は、湿潤剤、レベリング剤及びフロー制御剤、例えば、それぞれ商品名Resiflow(登録商標)S(ポリブチルアクリレート)、BYK(登録商標)320及び325(高分子量ポリアクリレート)、BYK(登録商標)347(ポリエーテル変性シロキサン)、(メタ)アクリルホモポリマーをベースとするレベリング剤;レオロジー制御剤;増粘剤、例えば部分架橋ポリカルボン酸又はポリウレタン;及び消泡剤を含み得る。他の添加剤は、当業者によく知られている従来量で用いることができる。実施形態において、コーティング組成物の湿潤剤、レベリング剤、フロー制御剤、及び界面活性剤は、コーティング組成物の表面張力に影響を与える可能性があり、従って、印刷に対するコーティング組成物の適性に影響を与える場合がある。特定の湿潤剤、レベリング剤、フロー制御剤、及び界面活性剤は、コーティング組成物の表面張力を増加又は減少させるためにコーティング組成物内に組み込まれてもよい。
【0056】
コーティング組成物は、約5~約90、あるいは5~約80、あるいは約15~約70質量%の固形分を有してもよい。固形分は、ASTM D2369-10に従って決定できる。特定の実施形態では、コーティング組成物に、従来の噴霧装置を使用した霧化を行わないことから、より高い固形分がコーティング組成物に望ましい場合がある。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0057】
コーティング組成物は、染料を実質的に含まなくてもよい。ここで使用される用語「実質的に」は、本明細書で使用されるとき、コーティング組成物がごく少量の染料を含んでもよく、当該コーティング組成物の色及び/又は特性が、上記ごく少量の染料の添加によって影響されず、なおも染料を実質的に含まないとみなされることを意味する。実施形態において、染料を実質的に含まないコーティング組成物は、5質量%以下、あるいは1質量%以下、あるいは0.1質量%以下を含む。
種々の実施形態において、組成物は、クレイ及びシリカを含まない。用語「~を含まない」は、組成物の総質量を基準にして、組成物が10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、又は0.1質量%未満のクレイ及びシリカを含むことを説明し得る。あるいは、組成物は、クレイ又はシリカをまったく含まなくてもよい。クレイは、特に限定されず、第四級アミンで表面官能化されたクレイ粒子であってもよい。同様に、シリカは特に限定されず、有機親和性フィロケイ酸塩、非晶質シリカ、例えばCAS:92797-60-9、AEROSIL R-805 VV90、及びこれらの組み合わせであってもよい。
【0058】
種々の実施形態において、本方法は、基材上でコーティング組成物を硬化する工程を更に含み、その際、高転写効率塗布器は複数のノズルを含み、塗布する工程は、コーティング組成物を、ノズルを通して基材上に複数のラインで塗布することとして更に定義され、コーティング組成物は、硬化の工程の後、個別のノズルラインからの不完全なフロー及びレベリングによる目に見える欠陥がない。
他の実施形態において、本方法は、コーティング組成物を基材上で硬化する工程を更に含み、その際、高転写効率塗布器は複数のノズルを含み、塗布する工程は、コーティング組成物を、ノズルを通して、基材に沿う方向(X)で基材上に複数のラインで塗布することとして更に定義され、各ラインは隣接するラインと部分的にオーバーラップしてオーバーラップ領域と非オーバーラップ領域とを形成し、オーバーラップ領域は、方向(X)に垂直に測定された5mmの距離にわたって硬化工程後に測定された非オーバーラップ領域の厚さと比較したオーバーラップ領域の厚さの変動が約1ミクロン未満であるような、視覚的平滑を有する。
種々の実施形態において、高転写効率塗布器は、ある直径を有するノズルを含み、高転写効率塗布器を通してコーティング組成物を基材に塗布する工程は、ノズル目詰まりを最小限にし、コーティング組成物は、ノズル直径の約10%よりも大きい平均粒径を有する成分を含まない。ノズル及びノズル直径は、本開示に記載又は当該技術分野で公知の任意のものであってもよい。
【0059】
一実施形態では、
A.樹脂は、5500のMw及び97mgKOH/gのヒドロキシ含有量を有するOH官能性アクリル樹脂であり;
B.メラミン架橋剤は、
メチル化、イソブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂と、
メチル化、イミノ型(トリエーテル)メラミンホルムアルデヒド樹脂と、
を含み;
C.任意選択の顔料は、20%カーボンブラック分散体であり;
D.有機溶剤は、ナフタレン除去芳香族炭化水素溶剤(aromatic hydrocarbon naphthalene depleted solvent)であり;
E.少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、アミンとイソシアネートとの反応生成物であり、ここでイソシアネートは、有機ジイソシアネート、トリイソシアネート、及び/又はポリイソシアネートであり、アミンは光学活性であり、制御剤は約50℃~約120℃の融点を有し;
コーティング組成物は、変性ヒドロキシ含有量が4.5%であるヒドロキシル化アクリルポリオールを更に含む。
【0060】
別の実施形態では、
A.樹脂は、34,500のMw及び54mgKOH/gのヒドロキシ含有量を有するOH官能性分岐アクリル樹脂であり;
B.メラミン架橋剤は、
メチル化、イソブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂と、
メチル化、イミノ型(トリエーテル)メラミンホルムアルデヒド樹脂と、
を含み;
C.任意選択の顔料は、20%カーボンブラック分散体であり;
D.有機溶剤は、ナフタレン除去芳香族炭化水素溶剤であり;
E.少なくとも1つのポリ尿素結晶サグ制御剤は、アミンとイソシアネートとの反応生成物であり、ここでイソシアネートは有機ジイソシアネートであり、アミンはベンジルアミンであり、制御剤は約120℃~約150℃の融点を有し;
コーティング組成物は、変性ヒドロキシ含有量が4.5%であるヒドロキシル化アクリルポリオールを更に含む。
【0061】
サグの評価:
種々の実施形態において、コーティング組成物は、約45度で測定したときに、目に見えるサグを伴わずに、少なくとも約30ミクロンの濡れ膜厚を有する。例えば、この濡れ膜厚は、約45度で測定したときに、目に見えるサグを伴わずに、約30ミクロン~約150ミクロン、又は約40~約120ミクロンであってもよい。他の実施形態において、濡れ膜厚は、約35~約145、約40~約140、約45~約135、約40~約130、約45~約125、約50~約120、約55~約115、約60~約110、約65~約105、約70~約100、約75~約95、約80~約90、又は約85~約90ミクロンであってもよい。種々の非限定的実施形態において、全ての値及び値の範囲は、上記値及びその間を含む全体及び一部の両方が、本明細書における使用について明白に意図される。
【0062】
サグの評価には、以下の手順が一般的に用いられる:
基材パネルを、コーティング塗布の前に、水平に向ける;
高転写効率塗布器を使用して、組成物がオーバーラップして目標濡れ膜厚(典型的には30ミクロン以上)及び約150mmのコーティング基材幅を有する連続コーティング表面をもたらすように、コーティング組成物の3本の連続するストライプを上記水平基材に塗布する。
組成物の塗布後、例えば、図2Bに示すように、約150mmのコーティング基材幅が水平から約20~約45度の角度になるように、パネルを傾ける。
パネル角度を同じに維持した状態で、室温で約10分経過後、パネルを約140℃で約30分間ベークする。
サグが存在する場合、例えば、図4A図4B及び図5に示すように、コーティングの下端の液だれを証拠として、目視評価する。
【0063】
存在する場合、ノズルラインの可視性は、例えば図3に示すように、塗布方向だけでなく互いに平行で、塗布器の隣接するノズルと同じ間隔(約1mm)を有する微細なラインとして観察される。
存在する場合、ストライプオーバーラップの可視性は、コーティングが連続的な塗布パスで塗布された領域で目視評価される。図3図4に示すように、塗布方向に平行な5mmの距離でわずか1ミクロンという厚さの変動が、ストライプオーバーラップの可視性を生じることがわかる。
【0064】
本発明のコーティング組成物の使用は、ノズル目詰まりを低減又は排除し得る。例えば、高転写効率の「ストリームオンデマンド」又は「ドロップオンデマンド」塗布器は、概して、各々が約20ミクロン~200ミクロンのノズル直径を有する微細直径ノズルのアレイを含む。信頼できる流体噴射のためには、コーティング組成物の任意の成分の粒径は、ノズル直径の約10%以下でなければならないことが、通常は予想される。コーティング組成物のいくつかの成分は、上記の基準に適合する平均サイズを有し得るが、過大粒子が少量含まれる場合、時間の経過とともに、ノズル目詰まりが起こることとなる。その結果は、誤った方向の液滴又は流れを生じ得る部分的に目詰まりしたノズル、又は流体放出を妨げる完全に目詰まりしたノズルのいずれかである。どちらの場合も、これはコーティング欠陥を生じることとなる。目詰まりは、次の2つの方法で評価できる:(1)塗布器の前に設置されたフィルターの目詰まり、及び(2)コーティング塗布中のライン欠落に続く、ノズル内のデブリの顕微鏡検証。
【0065】
光沢、写像性、及びオレンジピールなどの周知のコーティング外観特性は種々の機器で定量化できるが、これは、ノズルライン及びストライプオーバーラップ可視性には当てはまらない。高転写効率塗布器で塗布されたコーティングは、高光沢、高い写像性を有し、オレンジピールはないが、なおも目に見えるノズルライン及びストライプオーバーラップの欠陥を有し得る。図3Cに概略的に示すように、アイテム20は、単一ノズルから塗布方向に平行に堆積された塗料のラインを表す。ラインは塗布の直後に目に見える場合があるが、十分なフロー及びレベリングが起こらなければ、コーティング硬化後に、なおも目に見え、それにより、不均一で一般的に望ましくないコーティング外観となる場合がある。典型的には、ノズルライン可視性は、縞状の外観を与え、その目に見えるライン間の距離は、塗布器上のノズルと同じ間隔を有する。ストライプオーバーラップ欠陥も、塗布方向に平行であるが、この欠陥は、塗布器ノズルの間隔と関連しない。上記欠陥は、互いに隣り合って継続的に塗布された隣接するストライプの塗布が重なる場所にのみ存在し、塗布方向に垂直に5~10mmのスケールの長さにわたって目に見える。上記欠陥は、典型的には、低粘度でレオロジー制御剤を含まない印刷された対照コーティングとの比較により評価されるが、表面プロファイル測定を使用した図4Aは、高領域と低領域と高さの差が1~2ミクロンよりも大きいときに欠陥が目に見えることを実証している。
【実施例0066】
一連のサグ制御剤及びコーティング組成物を製造し、以下のように評価した。形成後、組成物の各々を、種々の物理的特性を測定するために評価する。これについても以下に記載する。
【0067】
種々のサグ制御剤の合成:
実施例1:TSCA-1
室温において、80.7部の樹脂溶液(ポリヒドロキシアクリル樹脂、Mw約7000、aromatic100溶剤中)と、0.9部の3-メトキシプロピルアミンと、12部の酢酸ブチルとを反応器に導入した。激しく撹拌しながら、4.5部の酢酸ブチルに溶解した1.9部の脂肪族ポリイソシアネート(Desmodur N 3600)を加えた。撹拌を、15分間と、速度を下げて更に10分間、続けた。この反応系は、一般的に以下のように表される:
【化4】
ここで、TSCA-1とTSCA-2の違いは、イソシアネートの脂肪鎖長の分布(下記の成分分子量に反映されている)に対するトリイソシアネートにある。列挙した融点は、製品資料からのものであり、本実施例について実際に融点を測定していない。
【0068】
実施例2:TSCA-2
室温において、80.7部の樹脂溶液(ポリヒドロキシアクリル樹脂、Mw約7000、aromatic100溶剤中)と、0.8部の3-メトキシプロピルアミンと、12部の酢酸ブチルとを反応器に導入した。激しく撹拌しながら、4.5部の酢酸ブチルに溶解した2部の脂肪族ポリイソシアネート(Desmodur N 3390)を加えた。撹拌を、15分間と、速度を下げて更に10分間、続けた。
【表1】

【表2】
【0069】
種々のコーティング組成物の合成:
実施例3
コーティング組成物は、すぐ下に記載の材料を使用して調製される。形成後、粘度、ノズル目詰まり、サグ、ノズルライン可視性、及びオーバーラップ可視性を測定するために、コーティング組成物を評価する。
【表3】


【0070】
上記及び下記のこれらの実施例全体を通して、各「+」は、当業者に理解及び評価されるように、主観的に優れた性能を示す正の指標である。各「-」は、当業者に理解及び評価されるように、主観的に劣る性能を示す負の指標である。1つ以上の「+」又は「-」の記号が使用されている場合、これは、当業者に理解及び評価されるように、それぞれ、より優れた性能、又はより劣る性能を意味する。
粘度は、ASTM 2196を使用して評価した。
更に、ノズル目詰まり、サグ、ノズルライン可視性、及びオーバーラップ可視性を、上記の方法を使用して評価する。
【0071】
実施例4
追加のコーティング組成物は、すぐ下に記載の材料を使用して調製される。形成後、粘度、ノズル目詰まり、サグ、ノズルライン可視性、及びオーバーラップ可視性を測定するために、コーティング組成物を評価する。
【表4】


【0072】
粘度は、ASTM D2196を使用して評価した。
更に、ノズル目詰まり、サグ、ノズルライン可視性、及びオーバーラップ可視性を、上記の方法を使用して評価する。
【0073】
実施例5~11
追加のコーティング組成物は、すぐ下に記載の材料を使用して調製される。形成後、ノズル目詰まり、サグ、ノズルライン可視性、及びオーバーラップ可視性を測定するために、コーティング組成物を評価する。
【表5】



*「NA」は、重度のノズル目詰まりによりコーティングの塗布が妨げられたために測定不可能であったことを意味する。
【0074】
更に、ノズル目詰まり、サグ、ノズルライン可視性、及びオーバーラップ可視性を、上記の方法を使用して評価する。
上記に関して、材料は下記のとおりである:
【表6】
【0075】
実施例5、6及び8は、望ましいバランスのサグ、フロー及びレベリングをもたらすために噴霧霧化に一般的に使用される種類のレオロジー制御剤は、重度のノズル目詰まりにより、本明細書で論じる種類の高転写塗布器に使用できないことを実証する。例えば、コーティング配合物中の粒子又はその塊は、高転写効率塗布器の小さいノズルを通過できないような十分に大きいサイズの可能性がある。実施例3、7、10及び11は、ノズル目詰まりが非常に優れる(全く観察されない)又は許容可能なごく少量のみのいずれかである、異なる種類のサグ制御剤を含有する。これらの実施例は、対照の実施例9(レオロジー制御剤なし)に対するサグの十分な改善を示すと同時に、ノズルライン及びストライプオーバーラップ可視性に関して異なるレベルの利益ももたらす。自動車車体へのコーティング塗布に関する特定の要件は、異なるレベルのサグ抵抗性を要求することから、これらの実施例は、全体的な外観性能(サグに対するフロー及びレベリングのバランス)に適合するためのSCAの種類及びレベルの選択の調節に関する可能性を示す。実施例4は、重度の目詰まりを示した別のSCAを含有した。
【0076】
少なくとも1つの例示的実施形態が、上述の詳細な説明に示されているが、莫大な数の変形形態が存在することを理解されたい。1つの例示的実施形態又は複数の例示的実施形態は、例に過ぎず、範囲、適用性、又は構成を制限することを意図するものではないことも理解されたい。むしろ、上述の詳細な説明は、例示的実施形態を実装するための好都合なロードマップを当業者に提供することになる。添付の請求項に記載された範囲から逸脱することなく、例示的実施形態に記載された要素の機能及び配列において、種々の変更を加えてもよいことは理解されている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
【外国語明細書】