IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイソー株式会社の特許一覧

特開2022-162559アクリル共重合体、およびその架橋物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162559
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】アクリル共重合体、およびその架橋物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/10 20060101AFI20221018BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C08F220/10
C08L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019171322
(22)【出願日】2019-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】岡田 涼
(72)【発明者】
【氏名】北川 紀樹
(72)【発明者】
【氏名】矢野 倫之
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG051
4J002BG061
4J002BG071
4J002BG101
4J002BG131
4J002BH001
4J002CD022
4J002CD052
4J002CD062
4J002CD122
4J002DA036
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE106
4J002DE156
4J002EN026
4J002EN036
4J002EN076
4J002EN086
4J002EQ026
4J002ER006
4J002ET006
4J002EV166
4J002EV316
4J002EW136
4J002EZ006
4J002FD010
4J002FD022
4J002FD070
4J002FD146
4J002GM00
4J002GN00
4J100AA02R
4J100AA03R
4J100AB02R
4J100AB03R
4J100AB10R
4J100AC03R
4J100AC04S
4J100AC23R
4J100AC24R
4J100AC37R
4J100AG04R
4J100AJ01R
4J100AJ02R
4J100AJ03R
4J100AJ09R
4J100AJ10R
4J100AL03Q
4J100AL04P
4J100AL05P
4J100AL08P
4J100AL36R
4J100AL41Q
4J100AL44Q
4J100AL46Q
4J100AL49Q
4J100BA05P
4J100BA06P
4J100BC37S
4J100BC43Q
4J100CA05
4J100CA31
4J100DA25
4J100DA39
4J100GC35
4J100HA53
4J100HB09
4J100HB36
4J100HC39
4J100HC42
4J100HC46
4J100HC47
4J100HC51
4J100HC54
4J100HC70
4J100HC72
4J100HC75
4J100JA28
(57)【要約】
【課題】本発明は、耐油性と耐寒性のバランスに優れ、特に耐酸性に優れたゴム材料を与えるためのアクリル共重合体の架橋物、そのためのアクリル共重合体、アクリル共重合体を含有する組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】メタクリル酸エステルに由来する構成単位を18~28質量%(ただし、メタクリル酸メチルに由来する構成単位が10質量%未満である)含有し、カルボキシル基を有する架橋性モノマーに由来する構成単位を0.5~5質量%を含有するアクリル共重合体、前記共重合体と架橋剤とを含有してなるアクリル共重合体含有組成物、およびその架橋物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)で示されるメタクリル酸エステルに由来する構成単位を18~28質量%(ただし、メタクリル酸メチルに由来する構成単位が10質量%未満である)含有し、カルボキシル基を有する架橋性モノマーに由来する構成単位を0.5~5質量%を含有するアクリル共重合体。
【化1】
(一般式(I)中、Rはメチル基、R2はアルキル基、アルコキシル基のいずれかである。)
【請求項2】
下記の条件(i)~(ii)を満たす請求項1記載のアクリル共重合体。
(i)前記(I)に示されるメタクリル酸エステルに由来する構成単位を含有する共重合体のFedors法による溶解パラメータ(SP値)が9.8以上である。
(ii)前記(I)に示されるメタクリル酸エステルに由来する構成単位を含有する共重合体のFoxの式により求められるガラス転移温度(Tg)が-25℃以下である。
【請求項3】
炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位、および/または炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位20~81.9質量%を含有する請求項1又は2に記載のアクリル共重合体。
【請求項4】
カルボキシル基を有する架橋性モノマーがエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルである請求項1~3いずれかに記載のアクリル共重合体。
【請求項5】
エチレン単量体に由来する構成単位を含む請求項1~4いずれかに記載のアクリル共重合体。
【請求項6】
請求項1~5いずれかに記載のアクリル共重合体と架橋剤を含有するアクリル共重合体含有組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のアクリル共重合体含有組成物を用いて作製された架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル共重合体、およびその架橋物に関し、さらに詳しくは耐寒性、耐油性、耐酸性に優れたゴム材料を提供できるアクリル共重合体、及びアクリル共重合体より作製されるゴム材料である。以下では、上記架橋物により構成される材料を「ゴム材料」または「架橋ゴム材料」ということがある。
【背景技術】
【0002】
一般に、アクリル重合体は、アクリル酸エステルを主原料とする重合体であり、耐久性に関する諸物性に優れた材料として知られ、エンジンガスケット、オイルホース、エアホース、Oリングなどの工業用ゴム材料や自動車用ゴム材料として広汎に用いられている。
【0003】
近年、内燃機関の高出力化や排気ガス対策などにより内燃機関周囲の熱的環境条件が過酷化したことでこれまで以上にエンジンオイルの熱、空気、水分、添加剤等との接触による劣化が進行すること等から、劣化エンジンオイルに耐えうるゴム部品のさらなる性能の向上が求められている。
【0004】
このような状況に対して耐油性、耐寒性のバランスを保ったまま耐加水分解性を向上させた例として特許文献1ではアクリル酸アルキルエステルと、特定割合のメタクリル酸メチルと、特定割合の架橋席モノマーとを共重合させたアクリルゴムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-27155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された特定割合のメタクリル酸メチルと、特定割合の架橋席モノマーとを共重合させたアクリルゴムでは耐酸性が十分ではなかった。そこで、本発明は、耐油性と耐寒性のバランスに優れ、特に耐酸性に優れたゴム材料を与えるためのアクリル共重合体の架橋物、そのためのアクリル共重合体、アクリル共重合体を含有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は種々検討の結果、下記の一般式(I)で示されるメタクリル酸エステルに由来する構成単位を18~28質量%(ただし、メタクリル酸メチルに由来する構成単位が10質量%未満である)含有し、カルボキシル基を有する架橋性モノマーに由来する構成単位を0.5~5質量%を含有するアクリル共重合体、前記共重合体と架橋剤とを含有してなるアクリル共重合体含有組成物、およびその架橋物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【化1】
(一般式(I)中、Rはメチル基、R2はアルキル基、アルコキシル基のいずれかである。)
【0008】
本発明の態様は次のとおりである。
項1 下記の一般式(I)で示されるメタクリル酸エステルに由来する構成単位を18~28質量%(ただし、メタクリル酸メチルに由来する構成単位が10質量%未満である)含有し、カルボキシル基を有する架橋性モノマーに由来する構成単位を0.5~5質量%を含有するアクリル共重合体。
【化2】
(一般式(I)中、Rはメチル基、R2はアルキル基、アルコキシル基のいずれかである。)
項2 下記の条件(i)~(ii)を満たす項1記載のアクリル共重合体。
(i)前記(I)に示されるメタクリル酸エステルに由来する構成単位を含有する共重合体のFedors法による溶解パラメータ(SP値)が9.8以上である。
(ii)前記(I)に示されるメタクリル酸エステルに由来する構成単位を含有する共重合体のFoxの式により求められるガラス転移温度(Tg)が-25℃以下である。
項3 炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位、および/または炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位20~81.9質量%を含有する項1又は2に記載のアクリル共重合体。
項4 カルボキシル基を有する架橋性モノマーがエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルである項1~3いずれかに記載のアクリル共重合体。
項5 エチレン単量体に由来する構成単位を含む請求項1~4いずれかに記載のアクリル共重合体。
項6 項1~5いずれかに記載のアクリル共重合体と架橋剤を含有するアクリル共重合体含有組成物。
項7 項6に記載のアクリル共重合体含有組成物を用いて作製された架橋物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアクリル共重合体を含有する組成物を用いて作製されるゴム材料は、耐油性、耐寒性のバランスに優れ、特に耐酸性に優れることからエンジンガスケット、オイルホース、エアホース、Oリングなどの工業用ゴム材料や自動車用ゴム材料等として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
はじめに本発明におけるアクリル共重合体について説明する。
本発明のアクリル共重合体は、下記の一般式(I)で示されるメタクリル酸エステルに由来する構成単位を18~28質量%(ただし、メタクリル酸メチルに由来する構成単位が10質量%未満である)含有し、カルボキシル基を有する架橋性モノマーに由来する構成単位を0.5~5質量%を含有するアクリル共重合体。
【化3】
(一般式(I)中、Rはメチル基、R2はアルキル基、アルコキシル基のいずれかである。)
【0011】
本発明の一般式(I)で示されるメタクリル酸エステルにおいては、Rは炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~8のアルコキシ基であることが更に好ましく、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルコキシ基であることが更に好ましい。
【0012】
本発明の一般式(I)で示されるメタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-デシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸n-ラウリルおよびメタクリル酸n-オクタデシル等のメタクリル酸エステルに由来する構成単位を例示することでき、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシルから選択されるメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位であることが好ましく、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸エトキシエチルに由来する構成単位であることが好ましい。これらは、単独、または2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位であってもよい。
【0013】
本発明のアクリル共重合体における、一般式(I)で示されるメタクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量は、アクリル共重合体の全構成単位中の18質量%以上であり、19質量%以上であることが好ましく、上限は28質量%以下であり、25質量%以下であることがより好ましい。また、本発明において、一般式(I)で示されるメタクリル酸エステルにおいて、メタクリル酸メチルが使用される場合は、耐酸性の観点からアクリル共重合体の全構成単位中の10質量%未満であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。
【0014】
カルボキシ基を有する架橋性モノマーに由来する構成単位としては、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルを有する構成単位であることが好ましい。
カルボキシ基を有する架橋性モノマーに由来する構成単位としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2-ペンテン酸、桂皮酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸に由来する構成単位、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸に由来する構成単位、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノヘキシル、フマル酸モノオクチル等のフマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノペンチル、マレイン酸モノデシル等のマレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノブチル等のイタコン酸モノアルキルエステルなどのエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルに由来する構成単位を例示することができる。
【0015】
本発明のアクリル共重合体におけるカルボキシ基を有する架橋性モノマーに由来する構成単位の含有量は、全構成単位中の0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。カルボキシ基有する架橋性モノマーに由来する構成単位が上記の範囲であることにより、強度や圧縮永久歪性等の物性、及び加工性の点で好ましい。
【0016】
本発明のアクリル共重合体においては、炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位、および/または炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位を含有することが好ましく、炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位であることが好ましい。これらは、単独または2種以上のアクリル酸エステルに由来する構成単位であってよい。
炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-ヘプチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸エステルに由来する構成単位を例示することができ、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルに由来する構成単位であることが好ましい。
炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位の具体例としては、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-プロポキシエチル、アクリル酸2-ブトキシエチル、アクリル酸2-メトキシプロピル、アクリル酸2-エトキシプロピル、アクリル酸3-メトキシプロピル、アクリル酸3-エトキシプロピル、アクリル酸4-メトキシブチル、アクリル酸4-エトキシブチル等のアクリル酸エステルに由来する構成単位を例示することができ、アクリル酸メトキシエチルに由来する構成単位であることが好ましい。
【0017】
本発明の(メタ)アクリル共重合体における、炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位、および/または炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル共重合体の全構成単位中の20~81.9質量%であり、49.9~81.9質量%であることが好ましく、59.5~80.5質量%であることがより好ましい。構成単位が上記の範囲であることにより、耐寒性や耐油性のバランスの観点で好ましい。
【0018】
本発明のアクリル共重合体においては、エチレン単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0019】
本発明の(メタ)アクリル共重合体において、エチレン単量体に由来する構成単位を含有する際には、エチレン単量体に由来する構成単位の含有量は(メタ)アクリル共重合体の全構成単位中の1~70質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが特に好ましい。
【0020】
さらに本発明のアクリル共重合体は、上記の構成単位以外に、これらと共重合可能なその他の単量体に由来する構成単位を含有してもよい。その他の構成単位としては、エチレン性不飽和ニトリルに由来する構成単位、(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構成単位、芳香族ビニル系モノマーに由来する構成単位、共役ジエン系モノマーに由来する構成単位、非共役ジエン類に由来する構成単位、その他のオレフィンに由来する構成単位等が挙げられる。
【0021】
エチレン性不飽和ニトリルに由来する構成単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-メトキシアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等の化合物に由来する構成単位が挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構成単位としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド、N-ブトキシエチルアクリルアミド、N-ブトキシエチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-プロピオキシメチルアクリルアミド、N-プロピオキシメチルメタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、エタクリルアミド、クロトンアミド、ケイ皮酸アミド、マレインジアミド、イタコンジアミド、メチルマレインアミド、メチルイタコンアミド、マレインイミド、イタコンイミド等の化合物に由来する構成単位が挙げられる。
【0023】
芳香族ビニル系モノマーに由来する構成単位としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、p-エチルスチレン、α-フルオロスチレン、p-トリフルオロメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-アミノスチレン、p-ジメチルアミノスチレン、p-アセトキシスチレン、スチレンスルホン酸あるいはその塩、α-ビニルナフタレン、1-ビニルナフタレン-4-スルホン酸あるいはその塩、2-ビニルフルオレン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ビニルベンジルクロライド等の化合物に由来する構成単位が挙げられる。
【0024】
共役ジエン系モノマーに由来する構成単位としては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,2-ジクロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-ネオペンチル-1,3-ブタジエン、2-ブロモ-1,3-ブタジエン、2-シアノ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、クロロプレン、ピぺリレン等の化合物に由来する構成単位が挙げられる。
【0025】
また、非共役ジエン類に由来する構成単位としては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン等の非共役ジエン類の化合物に由来する構成単位が挙げられる。
【0026】
その他のオレフィン系モノマーに由来する構成単位としては、アクリル酸ジシクロペンタジエニル、メタクリル酸ジシクロペンタジエニルメタクリレート、アクリル酸ジシクロペンタジエニルエチル、メタクリル酸ジシクロペンタジエニルエチル等のエステル類、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、1,2-ジクロロエチレン、酢酸ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、1,2-ジフルオロエチレン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、1,2-ジブロモエチレン、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等の化合物に由来する構成単位が挙げられる。
【0027】
本発明の共重合体は、Fedors法による溶解パラメータ(SP値)は9.8以上であることが好ましく、得られるゴムの耐油性等の観点から9.8~10.2であることがより好ましい。
【0028】
ここで、本明細書における「溶解度パラメータ値(SP値)」とは、Fedorsの方法〔Robert F.Fedors,Polymer Engineering and Science,14,147―154(1974)〕により、下記の式に基づいて求められた値δである。
Fedorsの式: δ =(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
〔単位:(cal/cm1/2
〔ここで、Δei:原子及び原子団の蒸発エネルギー(cal/mol)、Δvi:モル体積(cm/mol)である。〕
【0029】
本発明の共重合体は、得られるゴムの耐寒性等の観点から、Foxの式により求められるガラス転移温度(Tg)が-25℃以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、-45℃以上である。
【0030】
ガラス転移温度(計算Tg)は、Foxの式〔2〕から算出することができる。
1/計算Tg=W1/Tg(1)+W2/Tg(2)+・・・+Wn/Tn 〔2〕
ここで、W1、W2、・・・Wnは共重合体を構成する成分(1)、成分(2)、・・・成分(n)のポリマーに対する各重量分率を意味し、Tg(1)、Tg(2)、・・・Tg(n)は、成分(1)、成分(2)、・・・成分(n)のホモポリマーのガラス転移温度(単位は絶対温度)を表す。
なお、ホモポリマーのガラス転移温度は、各種文献、カタログなどから公知であり、例えば、J. Brandup, E. H. Immergut,E. A. Grulke: Polymer Handbook:JOHNWILEY & SONS, INCに記載されている。各種文献に数値が無いモノマーについては、一般的な熱分析、示差熱分析により測定した値を採用することができる。
【0031】
本発明のアクリル共重合体において、その構成単位の含有量については、得られた重合体の核磁気共鳴スペクトルにより決定することができる。
【0032】
<アクリル共重合体の製造方法>
本発明で用いるアクリル共重合体は、それぞれ各種モノマーを重合することにより得ることができる。使用するモノマーはいずれも市販品であってよく、特に制約はない。
【0033】
重合反応の形態としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、および溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性などの点から、従来公知のアクリル共重合体の製造法として一般的に用いられている常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。
【0034】
乳化重合による重合の場合には、通常の方法を用いればよく、重合開始剤、乳化剤、連鎖移動剤、重合停止剤等は一般的に使用される従来公知のものが使用できる。
【0035】
本発明で用いられる乳化剤は特に限定されず、乳化重合法おいて一般的に用いられるノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤等を使用することができる。ノニオン乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等があげられ、アニオン性乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、脂肪酸塩等があげられ、塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属、アンモニア、アミン類などが挙げられる。これらを1種または2種以上用いてもよい。アニオン性乳化剤の代表例としてはドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミンが挙げられる。
【0036】
本発明で用いられる乳化剤の使用量は乳化重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みのモノマー量に対して、0.01~10質量%の範囲であり、好ましくは0.03~7質量%、更に好ましくは0.05~5質量%である。モノマー成分として、反応性界面活性剤を用いる場合は、乳化剤の添加は必ずしも必要でない。
【0037】
本発明で用いられる重合開始剤は特に限定されず、乳化重合法おいて一般的に用いられる重合開始剤を使用することができる。その具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩に代表される無機系重合開始剤、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1-ジ-(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)吉草酸n-ブチル、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物系の重合開始剤、ハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、4-4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2-2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン、2-2’-アゾビス(プロパン-2-カルボアミジン)2-2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロパンアミド、2-2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}、2-2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)および2-2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロパンアミド}などのアゾ系開始剤等が挙げられる。これら重合開始剤は1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明で用いられる重合開始剤の使用量は乳化重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みのモノマー量に対して、0.01~5質量%の範囲であり、好ましくは0.01~4質量%、更に好ましくは0.02~3質量%である。
【0039】
また、重合開始剤としての有機過酸化物および無機過酸化物は、還元剤と組み合わせることにより、レドックス系重合開始剤として使用することができる。組み合わせて用いる還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物、メタンスルホン酸ナトリウム等のメタン化合物、ジメチルアニリン等のアミン化合物、アスコルビン酸およびその塩、亜硫酸およびチオ硫酸のアルカリ金属塩などの還元性を有する無機塩などが挙げられる。これらの還元剤は単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、仕込みモノマー100質量部に対して好ましくは0.0003~10.0質量部である。
【0040】
連鎖移動剤は、必要に応じて用いることができる。連鎖移動剤の具体例としては、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-4-メチル-2-ペンテン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いてもよい。これらの連鎖移動剤の量は特に限定されないが、通常、仕込モノマー量100質量部に対して0~5質量部にて使用される。
【0041】
重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムおよびヒドロキノンなどのキノン化合物などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、全単量体100質量部に対して、0~2質量部である。
【0042】
さらに上記の方法によって得られた重合体は、必要に応じてpH調整剤として塩基を用いることでpHを調整することができる。塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、無機アンモニウム化合物、有機アミン化合物等が挙げられる。pHの範囲はpH1~11、好ましくはpH1.5~10.5、更に好ましくはpH2~10の範囲である。
【0043】
これ以外にも必要に応じて、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0044】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合時間および重合温度は特に限定されない。使用する重合開始剤の種類等から適宜選択できるが、一般的に、重合温度は10~100℃であり、重合時間は0.5~100時間である。
【0045】
上記の方法で得られた重合体を回収する方法については特に制限はなく、一般に行われている方法を採用することができる。その方法の一例として、重合液を、凝固剤を含む水溶液に連続的または回分的に供給する方法が挙げられ、この操作によって凝固スラリーが得られる。凝固剤としては、特に制限はなく、無機金属塩であることが好ましく、その具体例としては硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。その際凝固剤を含む水溶液の温度は、モノマーの種類と使用量、撹拌等による剪断力などの凝固条件の影響を受けるため、これを一律に規定することはできないが、一般的には50℃以上、好ましくは60℃~100℃の範囲である
【0046】
上記の方法で得られた凝固スラリーは、凝固剤を除去するために水洗洗浄を行なうことが好ましい。水洗洗浄を全く行わなかったり、あるいは洗浄が不十分である場合凝固剤に由来するイオン残留物が成形工程で析出されてしまう恐れがある。
【0047】
水洗洗浄後の凝固スラリーから水分を除去し乾燥することでアクリル共重合体を得ることができる。乾燥の方法としては特に限定されないが一般的にはフラッシュドライヤーや流動乾燥機などを用いて乾燥される。また、乾燥工程の前に遠心分離機等による脱水工程を経ても良い。
【0048】
このようにして製造される、本発明で用いるアクリル共重合体の分子量範囲は、加工性の観点から、JIS K 6300に定めるムーニースコーチ試験での100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)表示で、10~100であることが好ましく、15~90であることがより好ましく、20~80であることが更に好ましい。
【0049】
<アクリル共重合体含有組成物>
本発明のアクリル共重合体含有組成物は、上記のアクリル共重合体及び架橋剤を少なくとも含有する。
【0050】
架橋剤としては、多価アミン化合物、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、アジリジン化合物、硫黄化合物、塩基性金属酸化物および有機金属ハロゲン化物などのゴムの架橋に通常用いられる従来公知の架橋剤を用いることができる。これらのなかでも、多価アミン化合物が好ましく用いられる。
【0051】
多価アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン等の脂肪族多価アミン化合物や、4,4’-メチレンジアニリン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,3,5-ベンゼントリアミン、1,3,5-ベンゼントリアミノメチル、イソフタル酸ジヒドラジド等の芳香族多価アミン化合物が挙げられる。
【0052】
多価エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールF 型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物などのグリシジルエーテル型エポキシ化合物;脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物などのその他の多価エポキシ化合物が挙げられる。
【0053】
多価イソシアナート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、p-フェニレンジイソシアナート、m-フェニレンジイソシアナート、1,5-ナフチレンジイソシアナート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアナート、1,6,11- ウンデカントリイソシアナート、ビシクロヘプタントリイソシアナート等が挙げられる。
【0054】
アジリジン化合物としては、トリス- 2,4,6-(1-アジリジニル)-1,3,5-トリアジン、トリス〔1-(2-メチル)アジリジニル〕ホスフィノキシド、ヘキサ〔1-(2-メチル) アジリジニル〕トリホスファトリアジン等が挙げられる。
【0055】
硫黄化合物としては、硫黄、4,4’-ジチオモルホリンやテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
【0056】
塩基性金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0057】
有機金属ハロゲン化物としては、ジシクロペンタジエニル金属ジハロゲン化物が例示され、金属としては、チタン、ジルコニウム等が挙げられる。
【0058】
これらの架橋剤は単独で用いてもよいし、2種類以上の組み合わせで用いてもよい。架橋剤の量は、本発明のアクリル共重合体100質量部に対してそれぞれ0.05~20質量部、好ましくは0.1~10質量部である。
【0059】
また、本発明のアクリル共重合体含有組成物は、当該技術分野で通常使用される他の添加剤、例えば滑剤、老化防止剤、光安定化剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、顔料、着色剤、架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、帯電防止剤、発泡剤等を任意に配合できる。
【0060】
補強剤としては、カーボンブラック等を例示することができ、その含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、120質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましい。
【0061】
老化防止剤としては、例えばアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類、ジチオカルバメート金属塩等があげられ、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体等のアミン類が好ましい。
【0062】
老化防止剤の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましく、0.3~3質量部であることが特に好ましい。
【0063】
架橋促進剤としては、グアニジン化合物、アミン化合物、チオウレア化合物、チアゾール化合物、スルフェンアミド化合物、チウラム化合物、四級アンモニウム塩等が挙げられ、グアニジン化合物、アミン化合物が好ましい。
【0064】
架橋促進剤の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して、0.1~15質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。
【0065】
更に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当該技術分野で通常行われているゴム、樹脂等とのブレンドを行うことも可能である。本発明に用いられるゴムを例示すれば、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-イソプレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられ、また樹脂を例示すれば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PUR(ポリウレタン)樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂、EVA(エチレン/酢酸ビニル)樹脂、AS(スチレン/アクリロニトリル)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂等が挙げられる。
【0066】
上記ゴム、樹脂の合計配合量は、本発明のアクリル共重合体100質量部に対して、50質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0067】
本発明のアクリル共重合体含有組成物の配合方法としては、従来ポリマー加工の分野において利用されている任意の手段、例えばオープンロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を利用することができる。
【0068】
その配合手順としては、ポリマー加工の分野において行われている通常の手順で行うことができる。例えば、最初にポリマーのみを混練りし、次いで架橋剤、架橋促進剤以外の配合剤を投入したA練りコンパウンドを作製し、その後、架橋剤、架橋促進剤を投入するB練りを行う手順で行うことができる。
【0069】
本発明の組成物は、通常100~250℃に加熱することで架橋物とすることができる。架橋時間は温度によって異なるが、0.5~300分の間で行われるのが普通である。架橋成型は架橋と成型を一体的に行う場合や、先に成型したアクリル共重合体含有組成物に改めて加熱することで架橋物とする場合のほか、先に加熱して架橋物を成型のために加工を施す場合のいずれでもよい。架橋成型の具体的な方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線、あるいはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
【0070】
このようにして得られる本発明の架橋物は、耐寒性、耐油性、耐酸性に優れるものである。
【0071】
そのため、本発明の架橋物は、上記特性を活かして、O-リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、メカニカルシール、ウェルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧機器用シール、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケットとして好適に用いられる。
【0072】
また、本発明における架橋物は、ゴム材料として用いることができ、自動車用途に用いられる押し出し成型製品および型架橋製品として、燃料ホース、フィラーネックホース、ベントホース、ベーパーホース、オイルホース等の燃料タンクまわりの燃料油系ホース、ターボエアーホース、エミッションコントロールホース等のエアー系ホース、ラジエーターホース、ヒーターホース、ブレーキホース、エアコンホース等の各種ホース類に好適に使用させる。
【実施例0073】
本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例および比較例では、アクリル共重合体の製造及び得られたアクリル共重合体と架橋剤を含有するアクリル共重合体含有組成物、およびアクリル共重合体含有組成物を架橋してなる架橋物の物性を評価した。
【0074】
[実施例1]
(アクリル共重合体Aの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200質量部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル1.7質量部、モノマーとしてアクリル酸エチル41.5質量部、アクリル酸n-ブチル37.5質量部、メタクリル酸n-ブチル19.6質量部、およびフマル酸モノエチル1.4質量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、アスコルビン酸ナトリウム0.1質量部および過硫酸カリウム0.1質量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、ヒドロキノン0.0075質量部を添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を硫酸ナトリウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリル共重合体Aを得た。
【0075】
[実施例2]
(アクリル共重合体Bの製造)
実施例1より、仕込むモノマーとその量を、アクリル酸エチル36.7質量部、アクリル酸n-ブチル12.7質量部、アクリル酸2-メトキシエチル29.7質量部、メタクリル酸イソデシル19.5質量部およびフマル酸モノエチル1.4質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、アクリル共重合体Bを得た。
【0076】
[実施例3]
(アクリル共重合体Cの製造)
実施例1より、仕込むモノマーとその量を、アクリル酸エチル49.7質量部、アクリル酸n-ブチル24.7質量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル4.5質量部、メタクリル酸2-エトキシエチル19.7質量部およびフマル酸モノエチル1.4質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、アクリル共重合体Cを得た。
【0077】
[実施例4]
(アクリル共重合体Dの製造)
実施例1より、仕込むモノマーとその量を、アクリル酸エチル17.7質量部、アクリル酸n-ブチル53.7質量部、メタクリル酸ブチル11.7質量部、アクリル酸2-メトキシエチル7.7質量部、メタクリル酸メチル7.8質量部およびフマル酸モノエチル1.4質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、アクリル共重合体Dを得た。
【0078】
[比較例1]
(アクリル共重合体Eの製造)
実施例1より、仕込むモノマーとその量を、アクリル酸エチル49.5質量部、アクリル酸n-ブチル44.5質量部、メタクリル酸メチル4.6質量部およびフマル酸モノエチル1.4質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、アクリル共重合体Eを得た。
【0079】
[比較例2]
(アクリル共重合体Fの製造)
実施例1より、仕込むモノマーとその量を、アクリル酸n-ブチル39.5質量部、アクリル酸2-メトキシエチル29.5質量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル29.6質量部およびフマル酸モノエチル1.4質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、アクリル共重合体Fを得た。
【0080】
[比較例3]
(アクリル共重合体Gの製造)
実施例1より、仕込むモノマーとその量を、アクリル酸エチル39.4質量部、アクリル酸n-ブチル30.9質量部、メタクリル酸ブチル28.3質量部およびフマル酸モノエチル1.4質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、アクリル共重合体Gを得た。
【0081】
<溶解パラメータ>
アクリル共重合体A~GについてはFedors法による溶解パラメータ(SP値)を算出した。その結果を表1、表2に示す。
【0082】
<ガラス転移温度>
アクリル共重合体A~Gについては、Foxの式により求められるガラス転移温度(Tg)を算出した。その結果を表1、表2に示す。
【0083】
<ムーニー粘度(ML1+4、100℃)>
アクリル共重合体A~Gについては、JIS K6300の未架橋ゴム物理試験方法のムーニー粘度試験に従って、東洋精機社製 Mooney Viscometer AM-3を用いて、測定温度100℃においてムーニー粘度(ML1+4)を測定した。その結果を表1、表2に示す。
【0084】
(アクリル共重合体含有組成物の製造)
アクリル共重合体A~Gをそれぞれ100質量部、カーボンブラック(ASTM D1765による分類;N550)60質量部、ステアリン酸(カーボンブラックの分散剤、軟化剤)2質量部および4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(老化防止剤)2質量部を120℃にてニーダーで混練し、その後ヘキサメチレンジアミンカーバメイト(脂肪族ジアミン架橋剤)0.6質量部、ジ-o-トリルグアニジン(架橋促進剤)2質量部を加えて、室温にて混練用ロールで混練して、それぞれアクリル共重合体含有組成物を調製した。
【0085】
(未架橋シートの作製)
上記で得られた各アクリル共重合体含有組成物をニーダーおよびオープンロールで混練し、厚さ2~2.5mmの未架橋シートを作製した。
【0086】
(ムーニースコーチ試験)
得られた未架橋シートを用い、JIS K 6300に定めるムーニースコーチ試験を、東洋精機社製 Mooney Viscometer AM-3を用いて125℃において測定した。その結果を表1、表2に示す。
【0087】
(架橋物の作製)
上記で得られた未架橋ゴムシートを180℃で10分プレス処理し、さらにこれをエアオーブンで180℃で3時間加熱し、架橋物を得た。
【0088】
(耐寒性試験)
JIS K 6261に従い、上島製作所社製TM-2533を用いて、ゲーマンねじり試験により評価し、室温時(25℃)のモジュラスの10倍になる温度(T10)を測定した。T10の温度が低いほど耐寒性に優れる。その結果を表1、表2に示す。
【0089】
(常態物性の試験)
得られた架橋物を用い、ミネベア社製TG-2kNを用いて、引張試験および硬さ試験の評価を行った。引張試験はJIS K 6251、硬さ試験はJIS K6253に記載の方法に準じて行った。その結果を表1、表2に示す。
【0090】
(耐酸性試験:塩化亜鉛水溶液浸漬試験)
上記記載の架橋物を1cm各に切り取り1wt%塩化亜鉛水溶液100mlに入れ、オートクレーブ中150℃ で50時間保管した後、試験片を取り出し風乾した後に常態物性の評価と同様に硬さの変化の測定を行った。その結果を表1、表2に示す。
【0091】
(耐酸性試験:混酸水溶液浸漬試験)
上記記載の架橋物を1cm各に切り取り、100mlの酸性水溶液(500ml の水に硫酸を1ml、塩酸を500μl、60%硝酸水溶液を1.5ml、酢酸を500μl添加し、pH1 の酸性水溶液を調製)に入れ、オートクレーブ中150℃ で50時間保管した後、試験片を取り出し風乾した後に常態物性の評価と同様に硬さの変化の測定を行った。その結果を表1、表2に示す。
【0092】
(耐油性試験)
耐油性試験は、JISK6258 に準じて行った。
試験片については、上述した常態物性の評価と同様にして、シート状のアクリルゴム架橋物を得て、得られたシート状のアクリルゴム架橋物から打ち抜いて作製した。具体的には、体積変化試験用に、縦30mm、横20mm 、厚さ2.0±0.2mmの試験片を作製した。
【0093】
この体積変化試験用試験片を内容積250ccのガラス製のチューブに入れ、そこに、試験用液体を200cc 入れて、試験片が全て液中に浸漬されるように設置した。ガラス製のチューブを加熱槽に入れ、150℃で72時間、加熱を行った。
【0094】
なお、試験用液体としてはJISK6258記載の試験用潤滑油No.3油( 商品名: IRM903 、日本サン石油社製) を用いた。
【0095】
加熱後、体積変化試験用試験片を取出し、試験用液体を拭き取った後、体積を測定し、初期体積との体積変化率ΔV(%)を計算した。体積変化率が小さい方が、耐油性に優れる。その結果を表1、表2に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
表1、表2で示すように、本発明の共重合体を架橋してなる架橋物である実施例1~4は、耐油性・耐寒性・耐酸性のバランスに優れた結果となった。一方で、本発明に属しない共重合体を架橋してなる架橋物である比較例1~3においては、比較例1では、架橋物の耐酸性の硬度変化率が大きくなった。また、比較例2では、架橋物の塩化亜鉛水溶液における耐酸性・耐油性が悪化する結果となっている。また、比較例3では、架橋物の耐油性・耐寒性が悪化する結果となっている。以上の結果から、本発明のアクリル共重合体は耐油性、耐寒性のバランスを保ったまま耐酸性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のアクリル共重合体は、優れた耐寒性、耐油性、耐酸性を活かしたゴム製品や樹脂製品の材料として或いは接着剤原料や塗料原料として幅広く用いることが可能である。特に、本発明のアクリル共重合体を用いて作製された架橋物は、エンジンガスケット、オイルホース、エアホース、Oリングなどの工業用ゴム材料や自動車用ゴム材料等の用途としてきわめて有効である。