IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特開-ベルト型濃縮機 図1
  • 特開-ベルト型濃縮機 図2
  • 特開-ベルト型濃縮機 図3
  • 特開-ベルト型濃縮機 図4
  • 特開-ベルト型濃縮機 図5
  • 特開-ベルト型濃縮機 図6
  • 特開-ベルト型濃縮機 図7
  • 特開-ベルト型濃縮機 図8
  • 特開-ベルト型濃縮機 図9
  • 特開-ベルト型濃縮機 図10
  • 特開-ベルト型濃縮機 図11
  • 特開-ベルト型濃縮機 図12
  • 特開-ベルト型濃縮機 図13
  • 特開-ベルト型濃縮機 図14
  • 特開-ベルト型濃縮機 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162564
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ベルト型濃縮機
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/04 20060101AFI20221018BHJP
   B01D 24/46 20060101ALI20221018BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B01D33/04 A
B01D33/36
B01D39/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067414
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦康
(72)【発明者】
【氏名】松井 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 章裕
【テーマコード(参考)】
4D019
4D116
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA02
4D019BB09
4D116AA01
4D116BB12
4D116BC62
4D116BC66
4D116BC67
4D116DD01
4D116FF12B
4D116GG02
4D116HH30B
4D116KK01
4D116RR01
4D116RR04
4D116RR14
4D116RR21
4D116RR25
4D116RR27
4D116VV12
(57)【要約】
【課題】濃縮対象体を無端ベルトから剥離させる際の剥離性が改善されるベルト型濃縮機を提供する。
【解決手段】伸縮性を有するメッシュ状の無端ベルト2が、搬送経路4の始端側に設けられた回転自在な始端側ローラーと搬送経路4の終端側に設けられた回転自在な終端側ローラー16との間に巻回され、始端側ローラーと同軸で回転自在な始端側スプロケットと、終端側ローラー16と同軸で回転自在な終端側スプロケット24との間に、無端状のチェン25が回動自在に巻回され、チェン25は複数の取付部材33を介して無端ベルト2の両側端縁に取付けられ、無端ベルト2が終端側ローラー16に巻回されて上から下へ反転するベルト反転経路45の周長Sbは、チェン25が終端側スプロケット24に巻回されて上から下へ反転するチェン反転経路57の周長Scよりも短く設定されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性を有する回動自在な無端ベルトで濃縮対象体を搬送経路に沿って搬送しながら重力濾過するベルト型濃縮機であって、
無端ベルトは、金属線材を組み合わせて成るメッシュ状のベルトであって、進行方向において伸縮性を有しており、搬送経路の始端側に設けられた回転自在な始端側ローラーと搬送経路の終端側に設けられた回転自在な終端側ローラーとの間に巻回され、
始端側ローラーと同軸で回転自在な始端側スプロケットと、終端側ローラーと同軸で回転自在な終端側スプロケットとの間に、無端状のチェンが回動自在に巻回され、
チェンは複数の取付部材を介して無端ベルトの両側端縁に全周にわたって取り付けられ、
無端ベルトが終端側ローラーに巻回されて上から下へ反転するベルト反転経路の周長は、チェンが終端側スプロケットに巻回されて上から下へ反転するチェン反転経路の周長よりも短く設定されており、
終端側ローラーから始端側ローラーへ戻る戻り経路の無端ベルトに洗浄液を噴射する洗浄装置が備えられていることを特徴とするベルト型濃縮機。
【請求項2】
ベルト反転経路において、無端ベルトがチェン反転経路の周長とベルト反転経路の周長との周長差に応じて進行方向に縮み、
戻り経路において、縮んでいた無端ベルトが進行方向に伸びることを特徴とする請求項1に記載のベルト型濃縮機。
【請求項3】
終端側ローラーの外径をAとし、無端ベルトの厚さをTとし、終端側スプロケットに歯合したチェンの中心を通るチェン反転経路の直径をBとすると、
(A+T)<B
という寸法関係に設定されており、
チェン反転経路の周長とベルト反転経路の周長との周長差をSとすると、
S=B×π/2-(A+T)×π/2
という関係式が成り立つことを特徴とする請求項2に記載のベルト型濃縮機。
【請求項4】
透水性を有する回動自在な無端ベルトで濃縮対象体を搬送経路に沿って搬送しながら重力濾過するベルト型濃縮機であって、
無端ベルトは、金属線材を組み合わせて成るメッシュ状のベルトであって、進行方向において伸縮性を有しており、搬送経路の始端側に設けられた回転自在な始端側ローラーと搬送経路の終端側に設けられた回転自在な終端側ローラーとの間に巻回され、
始端側ローラーと同軸で回転自在な始端側スプロケットと、終端側ローラーと同軸で回転自在な終端側スプロケットとの間に、無端状のチェンが回動自在に巻回され、
チェンは複数の取付部材を介して無端ベルトの両側端縁に全周にわたって取り付けられ、
無端ベルトが終端側ローラーに巻回されて上から下へ反転するベルト反転経路の周長は、チェンが終端側スプロケットに巻回されて上から下へ反転するチェン反転経路の周長よりも長く設定されており、
終端側ローラーから始端側ローラーへ戻る戻り経路の無端ベルトに洗浄液を噴射する洗浄装置が始端側ローラーと終端側ローラーとの間に設けられていることを特徴とするベルト型濃縮機。
【請求項5】
ベルト反転経路において、無端ベルトがチェン反転経路の周長とベルト反転経路の周長との周長差に応じて進行方向に伸び、
戻り経路において、伸びていた無端ベルトが進行方向に縮むことを特徴とする請求項1に記載のベルト型濃縮機。
【請求項6】
終端側ローラーの外径をAとし、無端ベルトの厚さをTとし、終端側スプロケットに歯合したチェンの中心を通るチェン反転経路の直径をBとすると、
(A+T)>B
という寸法関係に設定されており、
チェン反転経路の周長とベルト反転経路の周長との周長差をSとすると、
S=(A+T)×π/2-B×π/2
という関係式が成り立つことを特徴とする請求項5に記載のベルト型濃縮機。
【請求項7】
洗浄装置は、戻り経路の無端ベルトの内周側から外周側へ向けて又は外周側から内周側へ向けて洗浄液を噴射することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のベルト型濃縮機。
【請求項8】
無端ベルトは、ベルト幅方向の軸心回りに螺旋状を成す複数本の第1の金属線材をベルト長さ方向に沿って配列し、ベルト幅方向で重なる複数本の第1の金属線材に直線状の第2の金属線材を挿通して構成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のベルト型濃縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば汚泥等の濃縮対象体を搬送しながら重力濾過するベルト型濃縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のベルト型濃縮機としては、例えば図14図15に示すように、透水性を有する回動自在な無端ベルト121で汚泥122を搬送経路123に沿って搬送しながら重力濾過するものがある。
【0003】
無端ベルト121は、線材を組み合わせて成るメッシュ状のベルトであって、搬送経路123の始端側に設けられた回転自在な始端側ローラー124と搬送経路123の終端側に設けられた回転自在な終端側ローラー125との間に巻回されている。
【0004】
無端ベルト121の両側縁にはチェン126が全周にわたって取り付けられている。このチェン126は、始端側ローラー124と同軸で回転自在な始端側スプロケット(図示省略)と、終端側ローラー125と同軸で回転自在な終端側スプロケット128との間に巻回されている。尚、終端側ローラー125は終端側スプロケット128と共にモータ129によって回転駆動される。
【0005】
これによると、モータ129で終端側ローラー125を回転駆動させることにより、始端側ローラー124が従動回転するとともに、始端側スプロケットおよび終端側スプロケット128が回転して、チェン126と一体に無端ベルト121が一方向へ回動する。そして、汚泥122を供給部130から搬送経路123上の無端ベルト121に供給する。
【0006】
このようにして無端ベルト121上に供給された汚泥122は、無端ベルト121によって搬送経路123上を始端側から終端側へ搬送されながら重力濾過されることにより、脱水濃縮された状態で、終端側において無端ベルト121上から排出される。
【0007】
その後、無端ベルト121は、終端側ローラー125に巻回されて上から下へ反転し、戻り経路131に沿って終端側ローラー125から始端側ローラー124へ戻る。
【0008】
尚、上記のようなベルト型濃縮機133は例えば下記特許文献1に記載されている。
【0009】
また、ベルト型濃縮機133には、戻り経路131における無端ベルト121に洗浄液(図示省略)を噴射する洗浄装置(図示省略)が備えられている。
【0010】
これによると、洗浄液を洗浄装置から汚泥排出後の無端ベルト121に噴射することにより、無端ベルト121内に残留していた汚泥122が無端ベルト121から剥離して除去される。
【0011】
尚、上記のような洗浄装置は例えば下記特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005-81207
【特許文献2】特許第3504252号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら上記の従来形式では、洗浄液を汚泥排出後の無端ベルト121に噴射して、無端ベルト121内に残留していた汚泥122を剥離させる際、汚泥122が無端ベルト121から十分に剥離し難い場合があり、汚泥122の剥離性を改善することが求められている。
【0014】
本発明は、濃縮対象体を無端ベルトから剥離させる際の剥離性が改善されるベルト型濃縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本第1発明は、透水性を有する回動自在な無端ベルトで濃縮対象体を搬送経路に沿って搬送しながら重力濾過するベルト型濃縮機であって、
無端ベルトは、金属線材を組み合わせて成るメッシュ状のベルトであって、進行方向において伸縮性を有しており、搬送経路の始端側に設けられた回転自在な始端側ローラーと搬送経路の終端側に設けられた回転自在な終端側ローラーとの間に巻回され、
始端側ローラーと同軸で回転自在な始端側スプロケットと、終端側ローラーと同軸で回転自在な終端側スプロケットとの間に、無端状のチェンが回動自在に巻回され、
チェンは複数の取付部材を介して無端ベルトの両側端縁に全周にわたって取り付けられ、
無端ベルトが終端側ローラーに巻回されて上から下へ反転するベルト反転経路の周長は、チェンが終端側スプロケットに巻回されて上から下へ反転するチェン反転経路の周長よりも短く設定されており、
終端側ローラーから始端側ローラーへ戻る戻り経路の無端ベルトに洗浄液を噴射する洗浄装置が備えられているものである。
【0016】
これによると、ベルト反転経路の周長がチェン反転経路の周長よりも短いため、ベルト反転経路において、無端ベルトがチェン反転経路の周長とベルト反転経路の周長との周長差だけ進行方向に縮み、これにより、無端ベルト内に残留していた濃縮対象体が絞られて脱水される。
【0017】
このようにして無端ベルト内に残留していた濃縮対象体が脱水減容化されるため、戻り経路において濃縮対象体が無端ベルトから剥離し易くなり、濃縮対象体の剥離性を改善することができる。これにより、洗浄装置から戻り経路の無端ベルトに洗浄液を噴射した際、無端ベルト内に残留していた濃縮対象体が無端ベルトから十分に剥離して除去される。
【0018】
本第2発明におけるベルト型濃縮機は、ベルト反転経路において、無端ベルトがチェン反転経路の周長とベルト反転経路の周長との周長差に応じて進行方向に縮み、
戻り経路において、縮んでいた無端ベルトが進行方向に伸びるものである。
【0019】
これによると、戻り経路において、縮んでいた無端ベルトが進行方向に引き伸ばされることで、無端ベルト内に残留していた濃縮対象体が無端ベルトから十分に剥離して除去される。
【0020】
本第3発明におけるベルト型濃縮機は、終端側ローラーの外径をAとし、無端ベルトの厚さをTとし、終端側スプロケットに歯合したチェンの中心を通るチェン反転経路の直径をBとすると、
(A+T)<B
という寸法関係に設定されており、
チェン反転経路の周長とベルト反転経路の周長との周長差をSとすると、
S=B×π/2-(A+T)×π/2
という関係式が成り立つものである。
【0021】
これによると、(A+T)<Bという寸法関係に設定することで、チェン反転経路の周長とベルト反転経路の周長とに差が発生し、この差に応じて、無端ベルトがベルト反転経路において進行方向に圧縮される。
【0022】
本第4発明におけるベルト型濃縮機は、透水性を有する回動自在な無端ベルトで濃縮対象体を搬送経路に沿って搬送しながら重力濾過するベルト型濃縮機であって、
無端ベルトは、金属線材を組み合わせて成るメッシュ状のベルトであって、進行方向において伸縮性を有しており、搬送経路の始端側に設けられた回転自在な始端側ローラーと搬送経路の終端側に設けられた回転自在な終端側ローラーとの間に巻回され、
始端側ローラーと同軸で回転自在な始端側スプロケットと、終端側ローラーと同軸で回転自在な終端側スプロケットとの間に、無端状のチェンが回動自在に巻回され、
チェンは複数の取付部材を介して無端ベルトの両側端縁に全周にわたって取り付けられ、
無端ベルトが終端側ローラーに巻回されて上から下へ反転するベルト反転経路の周長は、チェンが終端側スプロケットに巻回されて上から下へ反転するチェン反転経路の周長よりも長く設定されており、
終端側ローラーから始端側ローラーへ戻る戻り経路の無端ベルトに洗浄液を噴射する洗浄装置が始端側ローラーと終端側ローラーとの間に設けられているものである。
【0023】
これによると、ベルト反転経路の周長がチェン反転経路の周長よりも長いため、ベルト反転経路において、無端ベルトがチェン反転経路の周長とベルト反転経路の周長との周長差だけ進行方向に伸び、これにより、無端ベルト内に残留していた濃縮対象体が無端ベルトから剥離し易くなり、濃縮対象体の剥離性を改善することができる。これにより、洗浄装置から戻り経路の無端ベルトに洗浄液を噴射した際、無端ベルト内に残留していた濃縮対象体が無端ベルトから十分に剥離して除去される。
【0024】
本第5発明におけるベルト型濃縮機は、ベルト反転経路において、無端ベルトがチェン反転経路の周長とベルト反転経路の周長との周長差に応じて進行方向に伸び、
戻り経路において、伸びていた無端ベルトが進行方向に縮むものである。
【0025】
これによると、戻り経路において、伸びていた無端ベルトが進行方向に圧縮されることで、無端ベルトから剥離した濃縮対象体が無端ベルトから押し出されて容易に除去される。
【0026】
本第6発明におけるベルト型濃縮機は、終端側ローラーの外径をAとし、無端ベルトの厚さをTとし、終端側スプロケットに歯合したチェンの中心を通るチェン反転経路の直径をBとすると、
(A+T)>B
という寸法関係に設定されており、
チェン反転経路の周長とベルト反転経路の周長との周長差をSとすると、
S=(A+T)×π/2-B×π/2
という関係式が成り立つものである。
【0027】
これによると、(A+T)>Bという寸法関係に設定することで、チェン反転経路の周長とベルト反転経路の周長とに差が発生し、この差に応じて、無端ベルトがベルト反転経路において進行方向に引き伸ばされる。
【0028】
本第7発明におけるベルト型濃縮機は、洗浄装置は、戻り経路の無端ベルトの内周側から外周側へ向けて又は外周側から内周側へ向けて洗浄液を噴射するものである。
【0029】
本第8発明におけるベルト型濃縮機は、無端ベルトは、ベルト幅方向の軸心回りに螺旋状を成す複数本の第1の金属線材をベルト長さ方向に沿って配列し、ベルト幅方向で重なる複数本の第1の金属線材に直線状の第2の金属線材を挿通して構成されているものである。
【発明の効果】
【0030】
以上のように本発明によると、濃縮対象体が無端ベルトから剥離し易くなり、濃縮対象体の剥離性を改善することができる。これにより、洗浄装置から戻り経路の無端ベルトに洗浄液を噴射した際、無端ベルト内に残留していた濃縮対象体が無端ベルトから十分に剥離して除去される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の実施の形態におけるベルト型濃縮機の概略側面図である。
図2】同、ベルト型濃縮機の平面図である。
図3】同、ベルト型濃縮機の無端ベルトの一部拡大平面図である。
図4図3におけるX-X矢視図である。
図5】同、ベルト型濃縮機の無端ベルトを取り除いた平面図である。
図6図1におけるX-X矢視図である。
図7】同、ベルト型濃縮機の終端側ベルト反転経路および終端側チェン反転経路における無端ベルトとチェンとの取付部分の拡大図である。
図8】同、ベルト型濃縮機の無端ベルトとチェンとの取付部分を無端ベルトの内周側(裏側)から見たときの拡大図である。
図9】同、ベルト型濃縮機の終端側ベルト反転経路および終端側チェン反転経路における無端ベルトとチェンとの位置関係を示す側面図である。
図10】本発明の第2の実施の形態におけるベルト型濃縮機の終端側ベルト反転経路および終端側チェン反転経路における無端ベルトとチェンとの取付部分の拡大図である。
図11】同、ベルト型濃縮機の終端側ベルト反転経路および終端側チェン反転経路における無端ベルトとチェンとの位置関係を示す側面図である。
図12】本発明の第3の実施の形態におけるベルト型濃縮機の終端側ベルト反転経路および終端側チェン反転経路における無端ベルトとチェンとの取付部分の拡大図である。
図13】同、ベルト型濃縮機の終端側ベルト反転経路および終端側チェン反転経路における無端ベルトとチェンとの位置関係を示す側面図である。
図14】従来のベルト型濃縮機の概略側面図である。
図15図14におけるX-X矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0033】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1図2に示すように、1は、透水性を有する回動自在な無端ベルト2で汚泥3(濃縮対象体の一例)を搬送経路4に沿って搬送しながら重力濾過するベルト型濃縮機である。
【0034】
図3図4に示すように、無端ベルト2は、ベルト幅方向Wの軸心回りに螺旋状を成し且つ巻方向の異なった複数本の金属線材8(第1の金属線材の一例)を長さ方向Lに沿って交互に密着させて配列し、ベルト幅方向Wで重なる複数本の金属線材8に直線状の骨線材9(第2の金属線材の一例)を挿通して構成されたメッシュ状のベルトである。この無端ベルト2は、表面と裏面とに連通する多数の微小な開孔部10と、複数の内部空隙11とを有しており、上記開孔部10は互いに隣接する3本の金属線材8間に形成されている。これにより、螺旋状の各金属線材8同士は骨線材9によって互いに連結され、無端ベルト2は、表裏方向に屈曲自在であり、且つ、進行方向M(長さ方向L)において伸縮性を有している。
【0035】
図1図2図5図6に示すように、無端ベルト2は搬送経路4の始端側に設けられた始端側ローラー15と搬送経路4の終端側に設けられた終端側ローラー16との間に巻回されている。始端側ローラー15と終端側ローラー16とはそれぞれ、支軸17,18を介して、ベルト型濃縮機1のフレーム5に回転自在に設けられている。
【0036】
また、始端側ローラー15と同軸で回転自在な始端側スプロケット23と、終端側ローラー16と同軸で回転自在な終端側スプロケット24との間に、無端状のチェン25が回動自在に巻回されている。
【0037】
始端側スプロケット23は、始端側ローラー15の回転軸心方向における両側方に設けられており、共通の回転軸心27を中心に、始端側ローラー15と一体的に回転する。同様に、終端側スプロケット24は、終端側ローラー16の回転軸心方向における両側方に設けられており、共通の回転軸心28を中心に、終端側ローラー16と一体的に回転する。
【0038】
尚、終端側ローラー16は終端側スプロケット24と共にモータ19によって強制的に回転駆動される。
【0039】
図2図6図8に示すように、チェン25は、複数の外プレート30,31とピン32等を有しており、複数の取付部材33を介して無端ベルト2の両側縁に全周にわたり取り付けられている。尚、一方の外プレート30は無端ベルト2の側縁に近い側にあり、他方の外プレート31は無端ベルト2の側縁から遠い側にある。また、無端ベルト2が伸縮性を有しているのに対して、チェン25はほとんど伸縮しない。
【0040】
取付部材33は、チェン25の一方の外プレート30に設けられた取付片34と、無端ベルト2を表裏両側から挟持する一対の挟持板35,36と、両挟持板35,36と無端ベルト2と取付片34とを締結するボルト38およびナット39とを有している。尚、取付部材33は所定ピッチPでチェン25に設けられている。
【0041】
図1に示すように、無端ベルト2の搬送経路4の終端部には、無端ベルト2が終端側ローラー16に巻回されて上から下へ反転する終端側ベルト反転経路45が形成されている。また、搬送経路4の始端部には、無端ベルト2が始端側ローラー15に巻回されて下から上へ反転する始端側ベルト反転経路46が形成されている。さらに、終端側ベルト反転経路45の下端部と始端側ベルト反転経路46の下端部との間には、終端側ローラー16から始端側ローラー15へ戻る戻り経路47が形成されている。
【0042】
図1図2図5図9に示すように、始端側ローラー15と終端側ローラー16との間には、戻り経路47の無端ベルト2の内周側(上方)から外周側(下方)へ向けて洗浄液50を噴射する洗浄装置51が設けられている。
【0043】
図9に示すように、終端側ベルト反転経路45の外側方には、チェン25が終端側スプロケット24に巻回されて上から下へ反転する終端側チェン反転経路57が形成されている。
【0044】
図1図2に示すように、搬送経路4の始端部には、汚泥3を無端ベルト2上に供給する供給部53(例えば供給シュート等)が設けられている。また、搬送経路4の終端部には、脱水濃縮された汚泥3を無端ベルト2上から排出する排出部54(例えば排出シュート等)が設けられている。
【0045】
図1図2図5に示すように、搬送経路4を進行方向Mへ移動する無端ベルト2を下方から支持する複数の支え板55がフレーム5に設けられている。
【0046】
図7図9に示すように、終端側ローラー16の外径をAとし、無端ベルト2の厚さをTとし、終端側スプロケット24に歯合したチェン25の中心(ピン32の中心)を通る終端側チェン反転経路57の直径をBとすると、以下のような寸法関係に設定されている。
(終端側ローラー16の外径A+無端ベルト2の厚さT)<終端側チェン反転経路57の直径B
終端側ベルト反転経路45の周長(円周方向における長さ)をSbとし、終端側チェン反転経路57の周長をScとし、終端側チェン反転経路57の周長Scと終端側ベルト反転経路45の周長Sbとの周長差をSとすると以下のような関係式が成り立つ。
Sb=(A+T)×π/2
Sc=B×π/2
Sb<Sc
S=Sc-Sb=B×π/2-(A+T)×π/2
尚、図7図9では、説明を分かり易くするために、無端ベルト2が回動する経路とチェン25が回動する経路とのずれCを実際よりも大きく示しているが、実際には、ずれCは図示しているよりも小さい。一例として、終端側ローラー16の外径Aは100~500mm、終端側チェン反転経路57の直径Bは112~620mm、無端ベルト2の厚さTは2~20mm、周長差Sは10~100mm程度に設定されている。また、上記の各数値は一例であり、これらの数値に限定されるものではない。
【0047】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0048】
モータ19によって終端側ローラー16を回転駆動することにより、終端側ローラー16と共に終端側スプロケット24が回転するとともに、始端側ローラー15と始端側スプロケット23とが従動回転し、無端ベルト2とチェン25とが一体的に回動する。
【0049】
図1に示すように、汚泥3は、供給部53から、搬送経路4を回動する無端ベルト2上に供給され、搬送経路4に沿って搬送されながら重力濾過され、排出部54から排出される。この際、汚泥3から離脱した離脱水は無端ベルト2の開孔部10(図3参照)を通って下方へ排出されるため、汚泥3が脱水濃縮される。
【0050】
また、図9に示すように、終端側ベルト反転経路45の周長Sbが終端側チェン反転経路57の周長Scよりも短いため、終端側ベルト反転経路45において、無端ベルト2が周長差Sだけ進行方向Mに圧縮される。これにより、無端ベルト2の内部空隙11(図4参照)内に残留していた汚泥3が絞られて脱水される。
【0051】
このようにして無端ベルト2の内部空隙11内に残留していた汚泥3が脱水減容化されるため、戻り経路47において、縮んでいた無端ベルト2が進行方向Mに引き伸ばされることで、汚泥3が無端ベルト2から剥離し易くなり、汚泥3の剥離性を改善することができる。これにより、洗浄装置51から戻り経路47の無端ベルト2に洗浄液50を噴射した際、無端ベルト2の内部空隙11内に残留していた汚泥3が無端ベルト2から十分に剥離して除去される。
【0052】
尚、上記のように終端側ベルト反転経路45において、無端ベルト2が周長差Sだけ圧縮されることができるように、予め無端ベルト2を周長差S以上に伸ばした状態で、取付部材33を介してチェン25が無端ベルト2に取り付けられている。
(第2の実施の形態)
以下に第2の実施の形態を説明する。尚、先述した第1の実施の形態と同じ部材については同一の符号を付記して、詳細な説明を省略する。
【0053】
第2の実施の形態では、図10図11に示すように、取付部材33は、取付片34と、一対の挟持板35,36と、円筒状のスペーサ37と、挟持板35,36と無端ベルト2とスペーサ37と取付片34とを締結するボルト38およびナット39とを有している。スペーサ37は、無端ベルト2の内周側の挟持板36と取付片34との間に設けられている。
【0054】
また、第2の実施の形態では以下のような寸法関係に設定されている。
(終端側ローラー16の外径A+無端ベルト2の厚さT)>終端側チェン反転経路57の直径B
また、以下のような関係式が成り立つ。
Sb=(A+T)×π/2
Sc=B×π/2
Sb>Sc
S=Sb-Sc=(A+T)×π/2-B×π/2
尚、図10図11では、説明を分かり易くするために、無端ベルト2が回動する経路とチェン25が回動する経路とのずれCを実際よりも大きく示しているが、実際には、ずれCは図示しているよりも小さい。一例として、終端側ローラー16の外径Aは100~500mm、終端側チェン反転経路57の直径Bは80~530mm、無端ベルト2の厚さTは2~20mm、周長差Sは10~20mm程度に設定されている。また、上記の各数値は一例であり、これらの数値に限定されるものではない。
【0055】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0056】
終端側ベルト反転経路45の周長Sbが終端側チェン反転経路57の周長Scよりも長いため、終端側ベルト反転経路45において、無端ベルト2が周長差Sだけ進行方向Mに引き伸ばされる。これにより、無端ベルト2の内部空隙11(図4参照)内に残留していた汚泥3が無端ベルト2から剥離し易くなり、汚泥3の剥離性を改善することができる。さらに、洗浄装置51から戻り経路47の無端ベルト2に洗浄液50を噴射した際、戻り経路47において、伸びていた無端ベルト2が進行方向Mに縮むことで、無端ベルト2から剥離した汚泥3が無端ベルト2の内部空隙11内から押し出されて容易に除去される。
【0057】
尚、上記のように終端側ベルト反転経路45において、無端ベルト2が周長差Sだけ引き伸ばされることができるように、予め無端ベルト2を周長差S以上に縮めた状態で、取付部材33を介してチェン25が無端ベルト2に取り付けられている。
(第3の実施の形態)
以下に第3の実施の形態を説明する。尚、先述した第1の実施の形態と同じ部材については同一の符号を付記して、詳細な説明を省略する。
【0058】
第3の実施の形態では、図12図13に示すように、以下のような寸法関係に設定されている。
(終端側ローラー16の外径A+無端ベルト2の厚さT)=終端側チェン反転経路57の直径B
また、以下のような関係式が成り立つ。
Sb=(A+T)×π/2
Sc=B×π/2
Sb=Sc
S=Sb-Sc=(A+T)×π/2-B×π/2=0
以下、上記構成における作用を説明する。
【0059】
終端側ベルト反転経路45の周長Sbと終端側チェン反転経路57の周長Scとが同じ長さに設定されているため、終端側ベルト反転経路45において、無端ベルト2の外周側2aが引き伸ばされるとともに内周側2bが圧縮される。
【0060】
これにより、無端ベルト2の内部空隙11(図4参照)内に残留していた汚泥3が、無端ベルト2の内周側2bから外周側2aに押し出されるとともに、外周側2aにおいて無端ベルト2から剥離し易くなる。
これにより、洗浄装置51から戻り経路47の無端ベルト2の内周側2bに洗浄液50を噴射した際、無端ベルト2の内部空隙11内に残留していた汚泥3が無端ベルト2から十分に剥離して無端ベルト2の外周側2aから容易に除去される。
【0061】
上記各実施の形態では、濃縮対象体の一例として汚泥3を挙げたが、汚泥3に限定されるものではない。
【0062】
上記各実施の形態では、図1図9図11図13に示すように、洗浄装置51は、戻り経路47の無端ベルト2の内周側(上方)から外周側(下方)へ向けて洗浄液50を噴射するが、無端ベルト2の外周側(下方)から内周側(上方)へ向けて洗浄液50を噴射してもよい。
【0063】
上記各実施の形態では、図5に示すように、始端側ローラー15の両端部の外側方に始端側スプロケット23を設け、終端側ローラー16の両端部の外側方に終端側スプロケット24を設けているが、始端側ローラー15の両端部に始端側スプロケット23を設け、終端側ローラー16の両端部に終端側スプロケット24を設けてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 ベルト型濃縮機
2 無端ベルト
3 汚泥(濃縮対象体)
4 搬送経路
8 金属線材(第1の金属線材)
9 骨線材(第2の金属線材)
15 始端側ローラー
16 終端側ローラー
23 始端側スプロケット
24 終端側スプロケット
25 チェン
33 取付部材
45 終端側ベルト反転経路
47 戻り経路
50 洗浄液
51 洗浄装置
57 終端側チェン反転経路
A 終端側ローラーの外径
B 終端側チェン反転経路の直径
M 進行方向
S 周長差
Sb 終端側ベルト反転経路の周長
Sc 終端側チェン反転経路の周長
T 無端ベルトの厚さ
W ベルト幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15