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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022162573
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0438 20160101AFI20221018BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20221018BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20221018BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20221018BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20221018BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221018BHJP
【FI】
H01M8/0438
H01M8/04746
H01M8/0606
H01M8/04955
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067443
(22)【出願日】2021-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 大河
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB23
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA34
5H127BA37
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB19
5H127BB37
5H127DB66
5H127DB76
5H127DC83
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
5H127EE30
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により、アノード側とカソード側との間の極間差圧が増大したか否かを判定する。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池スタックと、改質部と、原燃料ガスポンプの駆動により原燃料ガス供給路を介して原燃料ガスを改質部に供給する原燃料ガス供給装置と、カソードガスポンプの駆動によりカソードガス供給路を介してカソードガスを燃料電池スタックに供給するカソードガス供給装置と、原燃料ガス供給路を流れる原燃料ガスの流量を検出する流量センサと、制御装置と、を備える。そして、制御装置は、流量センサにより検出される流量が目標流量となるようフィードバック制御によりデューティを設定して原燃料ガスポンプを駆動制御すると共に、設定したデューティに基づいてアノード側とカソード側との間の極間差圧が増大したか否かを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードガスとカソードガスとの反応により発電する燃料電池スタックと、
原燃料ガスを前記アノードガスに改質する改質部と、
原燃料ガス供給路と、前記原燃料ガス供給路に設置された原燃料ガスポンプと、を有し、前記原燃料ガスポンプの駆動により前記原燃料ガス供給路を介して前記原燃料ガスを前記改質部に供給する原燃料ガス供給装置と、
前記原燃料ガス供給路を流れる前記原燃料ガスの流量を検出する流量センサと、
前記流量センサにより検出される流量が目標流量となるようフィードバック制御によりデューティを設定して前記原燃料ガスポンプを駆動制御すると共に、設定した前記デューティに基づいてアノード側とカソード側との間の極間差圧が増大したか否かを判定する制御装置と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記制御装置は、前記デューティの設定履歴から判定用デューティを設定し、前記判定用デューティが所定値を超えた場合に前記極間差圧が増大したと判定する、
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムであって、
前記制御装置は、発電出力に基づいて前記所定値を設定する、
燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記制御装置は、前記デューティの設定履歴から判定用デューティを設定し、前記判定用デューティが所定量以上上昇した場合に前記極間差圧が増大したと判定する、
燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記制御装置は、前記燃料電池スタックが所定発電状態で継続して運転されている状態において前記設定されたデューティに基づいて前記極間差圧が増大したか否かを判定する、
燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記制御装置は、前記極間差圧が増大したと判定した場合に、前記燃料電池システムの運転を停止する、
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関し、詳しくは、燃料電池スタックと改質器とを有する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料電池システムとしては、燃料電池スタックと、燃料電池スタックのアノードに水素ガスを供給する水素ガス供給配管と、水素ガス供給配管に設けられた水素ガス圧調整弁と、水素ガス供給配管におけるアノード入口側に設けられたアノード圧力計と、燃料電池スタックのカソードに空気ガスを供給する空気供給配管と、空気供給配管に設けられた空気ガス圧力調整弁と、空気供給配管におけるカソード入口側に設けられたカソード圧力計と、要求出力に応じて水素ガス圧力と空気ガス圧力との圧力差が所定の圧力差範囲内に保たれるように水素ガス圧力調整弁および空気ガス圧力調整弁とを制御する制御装置と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、燃料電池システムとして、燃料電池と、燃料ガスをアノードガスに改質して燃料電池のアノードに供給する改質器と、アノードから排出されるアノード排出ガスを熱交換器で冷却し気水分離機で水分を分離した後、当該熱交換器で加熱して後燃焼用ガスとして改質器(燃焼室)に供給するアノード排ガスラインと、熱交換器と気水分離機との間に設けられアノード排ガス中の一酸化炭素と水分と二酸化炭素と水素ガスに変換するシフトコンバータと、を備えるものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-278046号公報
【特許文献2】特開平11-126628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1記載の燃料電池システムでは、アノード側とカソード側との間の極間差圧を良好に管理することができるものの、2つの圧力計が必要となり、システム容積が逼迫すると共に、コスト増を招いてしまう。また、特許文献2記載の燃料電池システムでは、アノード排ガスラインの熱交換器において炭素析出を防止することができ、炭素成分の堆積によるガスの圧力損失の増大(極間差圧の増大)を抑制することが期待できるものの、シフトコンバータが必要であり、同様に、システム容積が逼迫すると共に、コスト増を招いてしまう。
【0006】
本発明の燃料電池システムは、簡易な構成により、アノード側とカソード側との間の極間差圧が増大したか否かを判定することができる燃料電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料電池システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の燃料電池システムは、
アノードガスとカソードガスとの反応により発電する燃料電池スタックと、
原燃料ガスを前記アノードガスに改質する改質部と、
原燃料ガス供給路と、前記原燃料ガス供給路に設置された原燃料ガスポンプと、を有し、前記原燃料ガスポンプの駆動により前記原燃料ガス供給路を介して前記原燃料ガスを前記改質部に供給する原燃料ガス供給装置と、
前記原燃料ガス供給路を流れる前記原燃料ガスの流量を検出する流量センサと、
前記流量センサにより検出される流量が目標流量となるようフィードバック制御によりデューティを設定して前記原燃料ガスポンプを駆動制御すると共に、設定した前記デューティに基づいてアノード側とカソード側との間の極間差圧が増大したか否かを判定する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0009】
この本発明の燃料電池システムでは、流量センサにより検出される原燃料ガスの流量が目標流量となるようフィードバック制御によりデューティを設定して原燃料ガスポンプを駆動制御すると共に、設定したデューティに基づいてアノード側とカソード側との間の極間差圧が増大したか否かを判定する。本願の発明者らは、鋭意研究の結果、フィードバック制御により原燃料ガスポンプを駆動制御する場合において、アノード側を流れるガスの圧力損失が上昇すると、原燃料ガスポンプのデューティが上昇し、それによりアノード側とカソード側との間の極間差圧が増大することを見出した。このため、原燃料ガスポンプのフィードバック制御において設定されたデューティを用いることで、簡易な構成により、アノード側とカソード側との間の極間差圧が増大したか否かを判定することができる。ここで、燃料電池スタックは、平板型のセルが複数積層されて構成されてもよい。平板型のセルは、円筒型のセル等に比して、機械的な強度の面で不利であり、本発明を適用する意義がより大きなものとなる。
【0010】
こうした本発明の燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、前記デューティの設定履歴から判定用デューティを設定し、前記判定用デューティが所定値を超えた場合に前記極間差圧が増大したと判定してもよい。ここで、「判定用デューティ」は、所定期間内において設定されたデューティの平均値が用いられてもよいし、デューティの移動平均が用いられてもよい。この場合、前記制御装置は、発電出力に基づいて前記所定値を設定してもよい。こうすれば、発電出力の変動による影響を除去して、極間差圧の増大をより適切に判定することが可能となる。
【0011】
また、本発明の燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、前記デューティの設定履歴から判定用デューティを設定し、前記判定用デューティが所定量以上上昇した場合に前記極間差圧が増大したと判定してもよい。こうすれば、判定用デューティの上昇を監視することで、極間差圧の増大をより適切に判定することが可能となる。
【0012】
さらに、本発明の燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、前記燃料電池スタックが所定発電状態で継続して運転されている状態において前記設定されたデューティに基づいて前記極間差圧が増大したか否かを判定してもよい。燃料電池スタックの発電状態が安定している状態で行なわれたフィードバック制御において設定されたデューティに基づいて判定を行なうことで、極間差圧が増大したか否かをより正確に判定することができる。ここで、「所定発電状態」には定格発電状態が含まれる。
【0013】
また、本発明の燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、前記極間差圧が増大したと判定した場合に、前記燃料電池システムの運転を停止してもよい。極間差圧の増大を判定した際に燃料電池システムの運転を停止することで、燃料電池スタックの故障を未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の燃料電池システムの概略構成図である。
図2】極間差圧監視処理の一例を示すフローチャートである。
図3】ガスポンプデューティと原燃料ガスポンプ圧力の時間変化の様子を示す説明図である。
図4】原燃料ガスポンプの二次側圧力とガスポンプデューティとの関係を示す説明図である。
図5】ガスポンプデューティと極間差圧との関係を示す説明図である。
図6】他の実施形態における極間差圧監視処理を示すフローチャートである。
図7】他の実施形態における燃料電池システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の燃料電池システムの概略構成図である。本実施形態の燃料電池システム10は、図示するように、アノードガス(燃料ガス)中の水素とカソードガス(酸化剤ガス)中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池スタック21を含む発電モジュール20と、発電モジュール20にアノードガスの原料となる原燃料ガス(例えば天然ガスやLPガス)を供給する原燃料ガス供給装置30と、発電モジュール20に原燃料ガスからアノードガスへの改質(水蒸気改質)に必要な改質水を供給する改質水供給装置40と、発電モジュール20(燃料電池スタック21)にカソードガスとしてのエアを供給するエア供給装置50と、発電モジュール20において発生した燃焼排ガスの熱(排熱)を回収する排熱回収装置60と、システム全体を制御する制御装置80と、を備える。
【0017】
発電モジュール20は、燃料電池スタック21や、気化器22、改質器23、燃焼器24を含み、これらは、断熱性を有するモジュールケース29に収容されている。
【0018】
燃料電池スタック21は、図1に示すように、複数の平板型の単セルSが板厚方向に積層されてなる固体酸化物形の燃料電池スタックとして構成されるものであり、各単セルSは、酸化ジルコニウム等の電解質と当該電解質を挟持するアノード電極およびカソード電極とを有する。各単セルSには、アノード電極と連通するアノードガス通路が形成されると共に、カソード電極と連通するカソードガス通路が形成されている。各単セルSのアノードガス通路は、アノードガス配管25を介して改質器23に接続され、各単セルSのカソードガス通路は、カソードガス配管26を介してエア供給装置50に接続されている。
【0019】
発電モジュール20の気化器22および改質器23は、モジュールケース29内の燃料電池スタック21の上方に配設される。燃料電池スタック21と気化器22および改質器23との間には、燃料電池スタック21の作動や、気化器22および改質器23での反応に必要な熱を発生させる燃焼器24が設置されている。燃焼器24には、着火ヒータが設置されている。
【0020】
気化器22は、燃焼器24からの熱により原燃料ガス供給装置30からの原燃料ガスと改質水供給装置40からの改質水とを加熱し、原燃料ガスを予熱すると共に改質水を蒸発させて水蒸気を生成する。気化器22により予熱された原燃料ガスは、水蒸気と混合され、その混合ガスは、当該気化器22から改質器23に流入する。
【0021】
改質器23は、その内部に充填された例えばRu系またはNi系の改質触媒を有し、燃焼器24からの熱の存在下で、改質触媒による気化器22からの混合ガスの反応(水蒸気改質反応)によって水素ガスと一酸化炭素とを生成する。更に、改質器23は、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気との反応(一酸化炭素シフト反応)によって水素ガスと二酸化炭素とを生成する。これにより、改質器23によって、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の原燃料ガス等を含むアノードガスが生成されることになる。改質器23により生成されたアノードガスは、アノードガス配管25を介して各単セルSのアノードガス通路へ流入し、アノード電極に供給される。
【0022】
また、燃料電池スタック21の各単セルSのカソード電極には、カソードガスとしてのエアが供給される。各単セルSのカソード電極では、酸化物イオン(O2-)が生成され、当該酸化物イオンが電解質を透過してアノード電極で水素や一酸化炭素と反応することにより電気エネルギが得られる。各単セルSにおいて電気化学反応(発電)に使用されなかったアノードガス(以下、「アノードオフガス」という)は、各単セルSのアノードガス通路からアノードオフガス配管27を介して燃焼器24へと流出し、各単セルSにおいて電気化学反応(発電)に使用されなかったカソードガス(以下、「カソードオフガス」という)は、各単セルSのカソードガス通路からカソードオフガス配管28を介して燃焼器24へと流出する。
【0023】
各単セルSから燃焼器24に流入したアノードオフガスは、水素や一酸化炭素等の燃料成分を含む可燃性ガスであり、各単セルSから燃焼器24に流入した酸素を含むカソードオフガスと混合される。そして、着火ヒータにより点火させられて燃焼器24で混合ガスが着火すると、当該混合ガスの燃焼により、燃料電池スタック21の作動や、気化器22での原燃料ガスの予熱や水蒸気の生成、改質器23での水蒸気改質反応等に必要な熱が発生することになる。また、燃焼器24では、未燃燃料や水蒸気を含む燃焼排ガスが生成され、当該燃焼排ガスは、燃焼排ガス中の未燃燃料を再燃焼させるための燃焼触媒を介して熱交換器62へ供給される。
【0024】
原燃料ガス供給装置30は、原燃料ガスを供給する原燃料供給源1と気化器22とを接続する原燃料ガス供給管31と、当該原燃料ガス供給管31に設置された開閉弁32(2連弁)、原燃料ガスポンプ33および脱硫器34とを有する。原燃料ガスは、原燃料ガスポンプ33を作動させることで、原燃料供給源1から脱硫器34を介して気化器22へと圧送(供給)される。また、原燃料ガス供給管31には、当該原燃料ガス供給管31を流れる原燃料ガスの単位時間当りの流量を検出する流量センサ35(例えば熱式流量センサ)が設置されている。
【0025】
改質水供給装置40は、改質水を貯留する改質水タンク42と、改質水タンク42と気化器22とを接続する改質水供給管41と、改質水供給管41に設置された改質水ポンプ43とを有する。改質水ポンプ43を作動させることで、改質水タンク42内の改質水は、当該改質水ポンプ43により気化器22へと圧送(供給)される。
【0026】
エア供給装置50は、モジュールケース29内のカソードガス配管26に接続されるエア供給管51と、エア供給管51の入口に設けられたエアフィルタ52と、エア供給管51に設置されたエアポンプ53とを有する。エアポンプ53を作動させることで、カソードガスとしてのエアは、エアフィルタ52を介してエア供給管51に吸引され、モジュールケース29内のカソードガス配管26を経て各燃料電池スタック21(カソード電極)へと圧送(供給)される。
【0027】
排熱回収装置60は、湯水を貯留する貯湯タンク61と、発電モジュール20の燃焼器24で生成された燃焼排ガスと湯水とを熱交換する熱交換器62と、貯湯タンク61と熱交換器62とを接続する循環配管63と、循環配管63に組み込まれた循環ポンプ64と、を有する。循環ポンプ64を作動させることで、貯湯タンク61内に貯留されている湯水は、熱交換器62へと導入され、熱交換器62で燃焼排ガスとの熱交換によって昇温させられた後、貯湯タンク61へと返送される。
【0028】
また、排熱回収装置60の熱交換器62は、凝縮水供給管65を介して改質水タンク42と接続されており、燃焼排ガス中の水蒸気が貯湯タンク61からの湯水との熱交換により凝縮することにより得られた凝縮水は、当該凝縮水供給管65を介して改質水タンク42内へと導入される。更に、熱交換器62の燃焼排ガスの通路は、燃焼排ガス排出管66に接続されている。これにより、熱交換器62で燃焼排ガスから水分が除去された排ガスは、燃焼排ガス排出管66を介して大気中に排出される。
【0029】
燃料電池スタック21の出力端子には、パワーコンディショナ70の入力端子が接続され、当該パワーコンディショナ70の出力端子には、リレーを介して電力系統から負荷への電力ラインに接続される。パワーコンディショナ70は、燃料電池スタック21から出力された直流電圧を所定電圧(例えば、DC250V~300V)に変換するDC/DCコンバータや、変換された直流電圧を電力系統と連系可能な交流電圧(例えば、AC200V)に変換するインバータを有する。燃料電池スタック21の出力端子には、当該燃料電池スタック21から出力される電流(スタック電流I)を検出する電流センサ71が設置され、燃料電池スタック21の出力端子間には、燃料電池スタック21の端子間電圧(スタック電圧V)を検出する電圧センサ72が設置されている。
【0030】
制御装置80は、CPU81を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU81の他に、処理プログラムを記憶するROM82と、データを一時保存するRAM83と、図示しない入出力ポートと、を備える。制御装置80には、流量センサ35や電流センサ71、電圧センサ72等からの各種検出信号が入力ポートを介して入力されている。また、制御装置80からは、開閉弁32のソレノイド、原燃料ガスポンプ33のポンプモータ、改質水ポンプ43のポンプモータ、エアポンプ53のポンプモータ、循環ポンプ64のポンプモータ、燃焼器24の着火ヒータなどへの各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。
【0031】
次に、こうして構成された本実施形態の燃料電池システム10の動作について説明する。
【0032】
本実施形態の燃料電池システム10では、システムが起動した後、要求発電出力に応じた目標電流Itagが燃料電池スタック21から出力されるように原燃料ガス、改質水およびエア(空気)の供給量を制御することにより発電動作を行なう。原燃料ガスの供給量の制御は、目標電流Itagに基づいて燃料利用率Ufが目標利用率Uftagとなるように目標燃料流量Fgtagを設定し、設定した目標燃料流量Fgtagで原燃料ガスが供給されるように原燃料ガスポンプ33を制御することにより行なわれる。具体的には、設定した目標燃料流量Fgtagと流量センサ35により検出される燃料流量Fgとの差分に基づく比例項や積分項等の和によりガスポンプデューティDを設定し、設定したガスポンプデューティDにより、原燃料ガスポンプ33のポンプモータを駆動する駆動回路のスイッチング素子をオンオフすることにより行なわれる。
【0033】
また、改質水の供給量の制御は、改質器23におけるスチームカーボン比SC(原燃料ガス中の炭化水素に含まれる炭素と水蒸気改質のために添加される水蒸気とのモル比)が目標比SCtagとなるように目標水供給量Fwtagを設定し、設定した目標水供給量Fwtagで改質水が供給されるように改質水ポンプ43を制御することにより行なわれる。エアの供給量の制御は、エア利用率Uaが目標利用率Uatagとなるように目標エア流量Fatagを設定し、設定した目標エア流量Fatagでエアが供給されるようにエアポンプ53を制御することにより行なわれる。
【0034】
本実施形態では、燃料電池スタック21は平板型の単セルSが積層されたものであり、円筒型のセルに比して、単位面積あたりの出力密度が高くなるメリットを有する。一方で、平板型のセルは、円筒型のセルに比して、機械的な強度の面で不利となりやすく、アノードガスの圧力とカソードガスの圧力との差圧(極間差圧)が大きくなり過ぎると、セル(電解質)を破損させてしまうおそれがある。
【0035】
そこで、本実施形態では、極間差圧を監視し、極間差圧が許容範囲を超えて上昇した際には、燃料電池システム10の運転を停止することにより、極間差圧の増大による燃料電池スタック21(単セルS)の故障を未然に防止するようにした。以下、極間差圧を監視する極間差圧監視処理について説明する。図2は、制御装置80のCPU81により実行される極間差圧監視処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、システムが起動したときに実行される。
【0036】
極間差圧監視処理では、制御装置80のCPUは、まず、発電が開始されたか否かを判定する(ステップS100)。発電が開始されたと判定すると、電流センサ71からスタック電流Iを入力し(ステップS110)、上述した原燃料ガスポンプ33のフィードバック制御において設定されたガスポンプデューティDをスタック電流Iと対応付けてRAM83に記憶する(ステップS120)。
【0037】
次に、燃料電池スタック21が定格発電状態(所定発電状態)で所定時間T1(例えば60分)に亘って継続して運転されたか否かを判定する(ステップS130)。この判定は、燃料電池スタック21の発電状態が安定しているか否かを判定するものである。燃料電池スタック21が所定発電状態で所定時間T1に亘って継続して運転されていないと判定すると、ステップS110に戻る。一方、燃料電池スタック21が所定発電状態で所定時間T1に亘って継続して運転されたと判定すると、所定時間T1到達の所定時間T2(例えば30分)前から当該所定時間T1の到達時までのガスポンプデューティDの設定履歴から平均デューティDave(判定用デューティ)を算出する(ステップS150)。
【0038】
次に、基準デューティDbを設定する(ステップS160)。ここで、基準デューティDbは、燃料電池スタック21を所定発電状態で運転するのに通常必要な原燃料ガスポンプ33のデューティであり、例えば、スタック電流I(発電出力)や目標利用率Uftagに基づいて設定することができる。具体的には、基準デューティDbは、スタック電流Iが高いほど大きくなるように、また、目標利用率Uftagが高いほど小さくなるように設定される。なお、本実施形態では、燃料電池スタック21が定格発電状態で発電している場合を考えているから、基準デューティDbは、予め定められた値が用いられてもよい。
【0039】
基準デューティDbを設定すると、設定した基準デューティDbに所定値αを加えたものを閾値Drefに設定し(ステップS160)、平均デューティDaveが閾値Drefよりも大きいか否かを判定する(ステップS170)。平均デューティDaveが閾値Dref以下であると判定すると、アノード側とカソード側との間の極間差圧は許容範囲内であり、正常であると判断し、ステップS110に戻って、発電処理を継続する。
【0040】
一方、平均デューティDaveが閾値Drefよりも大きいと判定すると、アノード側とカソード側との間の極間差圧が許容範囲を超えて増大したと判断し、燃料電池システム10の運転を停止すると共に(ステップS180)、図示しないリモコンに警告表示を出力して(ステップS190)、極間差圧監視処理を終了する。これにより、極間差圧の増大に伴う燃料電池スタック21の故障を未然に防止することができる。なお、燃料電池システム10がネットワークを介して管理サーバに接続されている場合には、燃料電池スタック21の極間差圧が増大した旨の情報を当該管理サーバに送信してもよい。
【0041】
ここで、コーキング(アノードガスに含まれる炭化水素系のガスや一酸化炭素の炭素成分が析出する現象)等によりアノードガス配管25の内壁に付着した付着物が堆積すると、管内が狭まり、原燃料ガス供給管31内における原燃料ガスの圧力損失が増大する。本願の発明者らは、鋭意研究の結果、フィードバック制御により原燃料ガスポンプ33を駆動制御する場合において、アノード側を流れるガスの圧力損失が増大すると、原燃料ガスポンプ33のガスポンプデューティDが上昇し、それによりアノード側とカソード側との間の極間差圧が増大することを見出した。すなわち、図3および図4に示すように、アノード側のガスの圧力損失が増大すると、原燃料ガスポンプ33の二次側の圧力が上昇し、フィードバック制御により原燃料ガスポンプ33を制御する場合には、原燃料ガスポンプ33の二次側の圧力が上昇するにつれて、ガスポンプデューティDが上昇することがわかる。そして、カソード側を流れるエアの流量が一定の場合、図5に示すように、ガスポンプデューティDに対して極間差圧が比例的に上昇していることがわかる。したがって、燃料電池スタック21が定格発電状態(所定発電状態)で継続して運転している場合にはカソード側を流れるエアの流量が概ね一定であるとみなし、原燃料ガスポンプ33のフィードバック制御において、ガスポンプデューティDの上昇を監視することにより、極間差圧が増大したか否かを判定することができる。これにより、原燃料ガス供給管31に圧力センサを設置して当該圧力センサにより原燃料ガス供給管31内における原燃料ガスの圧力を直接監視する等、専用のセンサを用いることなく、簡易な構成により、極間差圧が増大したか否かを判定することができる。
【0042】
以上説明した本実施形態の燃料電池システム10では、流量センサ35により検出される原燃料ガスの流量(燃料流量Fg)が目標流量(目標燃料流量Fgtag)となるようフィードバック制御によりガスポンプデューティDを設定して原燃料ガスポンプ33を駆動制御すると共に、設定したガスポンプデューティDに基づいてアノード側とカソード側との間の極間差圧が増大したか否かを判定する。これにより、専用のセンサを必要としない簡易な構成により、アノード側とカソード側との間の極間差圧が増大したか否かを判定することができる。
【0043】
また、本実施形態の燃料電池システム10では、アノード側とカソード側との間の極間差圧が増大したと判定すると、システムの運転を停止する。これにより、極間差圧の増大に伴う燃料電池スタック21の故障を未然に防止することができる。
【0044】
本実施形態では、平均デューティDaveが閾値Drefよりも大きいか否かに基づいて、アノード側とカソード側との間の極間差圧が増大したか否かを判定するものとした。しかし、平均デューティDaveの変化量に基づいて極間差圧が増大したか否かを判定してもよい。図6は、他の実施形態に係る極間差圧監視処理を示すフローチャートである。なお、図6の極間差圧監視処理の各処理のうち図2と同一の処理については同一のステップ番号を付し、その説明は重複するから省略する。
【0045】
他の実施形態に係る極間差圧監視処理では、ステップS140で平均デューティDaveを算出すると、今回の判定が初回であるか否かを判定し(ステップS300)、初回であると判定すると、図2の極間差圧監視処理と同様に、基準デューティDbを設定すると共に(ステップS150)、閾値Drefを設定し(ステップS160)、平均デューティDaveが閾値Drefよりも大きいか否かを判定する(ステップS170)。一方、今回の判定が初回でなく2回目以降であると判定すると、今回算出した平均デューティDaveから前回算出した平均デューティ(前回Dave)を減じて平均デューティDaveの変化量ΔDを算出し(ステップS310)、算出した変化量ΔDが所定量βよりも大きいか否かを判定する(ステップS320)。ここで、所定量βは、アノード側とカソード側との間の極間差圧が許容範囲を超えて増大したか否かを判定するための閾値である。変化量ΔDが所定量β以下であると判定すると、極間差圧は許容範囲を超えて増大しておらず正常であると判断し、ステップS110に戻る。一方、変化量ΔDが所定量βよりも大きいと判定すると、極間差圧が許容範囲を超えて増大したと判断し、燃料電池システム10の運転を停止すると共に(ステップS180)、警告表示を出力して(ステップS190)、極間差圧監視処理を終了する。これにより、本実施形態と同様に、専用のセンサを用いることなく、アノード側とカソード側との間の極間差圧が増大したか否かを判定することができ、極間差圧の増大に伴う燃料電池スタック21の故障を未然に防止することができる。
【0046】
上述した実施形態では、燃料電池スタック21が所定発電状態(定格発電状態)で発電している状態(エア流量が概ね一定とみなすことのできる運転状態)において、ガスポンプデューティDに基づいてアノード側とカソード側との間の極間差圧を推定するものとした。しかし、エア供給配管51に圧力センサを備え、当該圧力センサにより検出されるカソード側の圧力とガスポンプデューティDに基づき推定されるアノード側の圧力との差分に基づいて極間差圧を推定するようにしてもよい。
【0047】
また、エア供給管51に流量センサを備え、当該流量センサにより検出されるエア流量と目標エア流量Fatatとの差分に基づいてフィードバック制御によりエアポンプ53を制御する燃料電池システムにおいては、ガスポンプデューティDとエアポンプデューディとに基づいてアノード側とカソード側との間の極間差圧を推定するようにしてもよい。
【0048】
図7は、他の実施形態における燃料電池システムの概略構成図である。他の実施形態における燃料電池システム110は、図示するように、燃料電池スタック21において電気化学反応(発電)に使用されなかった未使用燃料の一部を原燃料ガス供給管31に還流させる還流装置190を備える。還流装置190は、アノードオフガス配管127aから分岐すると共に原燃料ガス供給管31におけるゼロガバナ193と原燃料ガスポンプ33との間に接続される還流配管191と、還流配管191に設置されアノードオフガス配管127aから還流させるアノードオフガスの割合を調整するオリフィス192と、を有する。還流配管191が接続された箇所よりも上流側のアノードオフガス配管127aと下流側のアノードオフガス配管127bとには、両者を流れるアノードオフガスの間で熱交換を行なう第1熱交換器121が設置され、アノードオフガス配管127aにおける第1熱交換器121と還流配管191が接続された箇所との間には、アノードオフガスに含まれる水分を凝縮させる第2熱交換器122が設置されている。第2熱交換器122によりアノードオフガス中の水分が凝縮されることにより得られた凝縮水は、改質水タンク42へ供給される。アノードオフガス配管127aにおける第1熱交換器121の入口付近と出口付近とには、それぞれ温度センサ123i,123oが設置され、アノードオフガス配管127aにおける第2熱交換器122の入口付近と出口付近とには、それぞれ温度センサ124i,124oが設置され、アノードオフガス配管127bにおける第1熱交換器121の入口付近と出口付近とには、それぞれ温度センサ125i,125oが設置されている。一般に管内の圧力は、温度と流量のそれぞれ二乗に比例して上昇するため、流量センサ35により検出される燃料流量Fgと温度センサ123i,123o,124i,124o,125i,125oによりそれぞれ検出される温度とに基づいてユニット毎の圧力変化を検出することができる。このように、アノード側のガス(アノードオフガス)が流れる配管に設置された複数のユニット(熱交換器)にそれぞれ温度センサを設置し、流量センサ35により検出される燃料流量Fgに加えて各温度センサにより検出される温度を監視することで、ユニット毎にガスの圧力損失を推定することができ、不良箇所を特定することができる。これにより、不良ユニットの交換がより容易となる。
【0049】
上述した実施形態では、所定時間T2に亘って設定されたガスポンプデューティDの設定履歴から平均デューティDaveを算出し、平均デューティDaveに基づいて極間差圧が増大したか否かを判定したが、ガスポンプデューティDの移動平均に基づいて判定してもよい。また、流量センサ35の公差が小さいものであれば、ガスポンプデューティDをそのまま用いて判定するようにしてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、燃料電池スタック21は、固体酸化物形の燃料電池として構成されたが、例えば、固体高分子形の燃料電池等、他のタイプの燃料電池に適用されてもよい。
【0051】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、燃料電池スタック21が「燃料電池スタック」に相当し、改質器23が「改質部」に相当し、原燃料ガス供給管31が「原燃料ガス供給路」に相当し、原燃料ガスポンプ33が「原燃料ガスポンプ」に相当し、原燃料ガス供給装置30が「原燃料ガス供給装置」に相当し、流量センサ35が「流量センサ」に相当し、制御装置80が「制御装置」に相当する。なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0052】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、燃料電池システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 原燃料供給源、10,110 燃料電池システム、20 発電モジュール、21 燃料電池スタック、22 気化器、23 改質器、24 燃焼器、25 アノードガス配管、26 カソードガス配管、27 アノードオフガス配管、28 カソードオフガス配管、29 モジュールケース、30 原燃料ガス供給装置、31 原燃料ガス供給管、32 開閉弁、33 原燃料ガスポンプ、34 脱硫器、35 流量センサ、40 改質水供給装置、41 改質水供給管、42 改質水タンク、43 改質水ポンプ、50 エア供給装置、51 エア供給管、52 エアフィルタ、53 エアポンプ、60 排熱回収装置、61 貯湯タンク、62 熱交換器、63 循環配管、64 循環ポンプ、65 凝縮水供給管、66 燃焼排ガス排出管、70 パワーコンディショナ、71 電流センサ、72 電圧センサ、80 制御装置、81 CPU、82 ROM、83 RAM、121 第1熱交換器、122 第2熱交換器、123i,123o,124i,124o,125i,125o 温度センサ、127a,127b アノードオフガス配管、190 還流装置、191 還流配管、192 オリフィス、193 ゼロガバナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7